‘記事’ カテゴリーのアーカイブ

眼科医のための先端医療 131.眼免疫疾患に対する樹状細胞療法の可能性

2011年11月30日 水曜日

監修=坂本泰二監修=坂本泰二第131回◆眼科医のための先端医療山下英俊眼免疫疾患に対する樹状細胞療法の可能性服部貴明臼井嘉彦(東京医科大学眼科)樹状細胞は,細胞周囲に特異的な樹状突起をもつことにその名前が由来する免疫細胞です.この樹状細胞は体内に侵入した異物を捕食し,その異物の特徴をリンパ球に伝えることで,リンパ球が特徴を認識して異物を攻撃します.このように免疫を惹起するうえで,樹状細胞は欠かせない役割を担っています.近年,樹状細胞に関する研究が活発に行われ新しい知見が次々と発見されています.さらにこの細胞を用いて癌治療,ワクチンなどへの臨床応用が始まりつつあります.本稿では,樹状細胞ならびに制御性樹状細胞について解説し,眼科領域における樹状細胞の基礎研究から得た知見や臨床応用への可能性について述べていきます.樹状細胞1990年以前では樹状細胞は生体内にごく少数しか存在しないために,詳細な機能は解明できていませんでした.しかし,Inabaら1)の発見により骨髄細胞をGMCSF(granulocyte/macrophage-colonystimulatingfactor)とともに培養することで樹状細胞をinvitroで大量角膜上皮角膜実質図1Langerin蛍光標識マウスを用いた角膜内でのLangerhans細胞の分布解析角膜上皮内のみでなく角膜実質内にもLangerin陽性細胞(Langerhans細胞:黄色く標識された細胞)が存在している(青色は核染色).Bar=100μm.(73)に作製することが可能となり,研究が飛躍的に進みました.近年では,樹状細胞に特異的に発現する分子が特定されており,遺伝子改変技術を用いて,樹状細胞を特異的に欠損するマウスや,樹状細胞が特異的に蛍光標識されたマウスなどが開発され,実際の体内での樹状細胞の分布や働きが解明されつつあります.筆者らは,Langerinとよばれる樹状細胞に特異的に発現する分子が蛍光標識されたマウスを用いて,角膜内の樹状細胞,特にLangerhans細胞の分布を検討し,角膜上皮のみでなく角膜実質にもこれらの細胞が存在していることを解明しました2)(図1).さらに,樹状細胞はドライアイから脈絡膜新生血管までさまざまな眼科疾患の病態に関与していることが報告されています3.5).制御性樹状細胞このような樹状細胞に関する研究により,通常の樹状細胞と異なりリンパ球の活性化を促さず,むしろリンパ球の活性を抑制し免疫反応を制御する“制御性樹状細胞”の存在が明らかになってきました.筆者らは,この制御性樹状細胞を用いて実験的自己免疫性ぶどう膜炎の発症を抑制可能かどうか検討しました.Satoら6)の開発した方法によりマウス骨髄細胞から,GM-CSF,IL(インターロイキン)-10,TGF(形質転換成長因子)-bを用いて制御性樹状細胞を作製しました.自己抗原であるIRBP(interphotoreceptorretinoidbindingprotein)を強化免疫したマウスに作製した樹状細胞を投与したところ,ぶどう膜炎の発症が有意に抑制されました7)(図2).さらに筆者らは,この制御性樹状細胞をマウス角膜移植モデルに用いて,拒絶反応についても検討を行い,拒絶反応を抑制する結果を得ています.無処置群制御性樹状細胞投与群図2制御性樹状細胞による実験的自己免疫性ぶどう膜炎の抑制制御性樹状細胞を投与した群では,コントロール群に比較し,網膜の層構造の乱れも少なく,ぶどう膜炎が抑制されている.あたらしい眼科Vol.28,No.11,201115850910-1810/11/\100/頁/JCOPY おわりにおわりに文献1)InabaK,InabaM,RomaniNetal:Generationoflargenumbersofdendriticcellsfrommousebonemarrowculturessupplementedwithgranulocyte/macrophagecolony-stimulatingfactor.JExpMed176:1693-1702,19922)HattoriT,ChauhanSK,LeeHetal:CharacterizationofLangerin-expressingdendriticcellsubsetsinthenormalcornea.InvestOphthalmolVisSci52:4598-4604,20113)NakaiK,FainaruO,BazinetLetal:Dendriticcellsaugmentchoroidalneovascularization.InvestOphthalmolVisSci49:3666-3670,20084)ZhengX,dePaivaCS,LiDQetal:DesiccatingstresspromotionofTh17differentiationbyocularsurfacetissuesthroughadendriticcell-mediatedpathway.InvestOphthalmolVisSci51:3083-3091,20105)ForresterJV,XuH,KuffovaLetal:Dendriticcellphysiologyandfunctionintheeye.ImmunolRev234:282304,20106)SatoK,YamashitaN,YamashitaNetal:Regulatorydendriticcellsprotectmicefrommurineacutegraft-versushostdiseaseandleukemiarelapse.Immunity18:367379,20037)UsuiY,TakeuchiM,HattoriTetal:Suppressionofexperimentalautoimmuneuveoretinitisbyregulatorydendriticcellsinmice.ArchOphthalmol127:514-519,2009■「眼免疫疾患に対する樹状細胞療法の可能性」を読んで■本稿に取り上げられている樹状細胞に関した研究成いたものです.このコンセプトを用いた脳脊髄膜炎へ果により,本年のノーベル生理学賞をSteinman博士の治療は動物実験で成功していましたが,ぶどう膜炎が受賞されることが,2011年の10月3日に発表されについてはなされていませんでした.私は,実験的ぶました.本稿が提出されたのは,それ以前でしたのどう膜炎はきわめて強い炎症反応が起こるので,樹状で,ノーベル賞受賞を知っていたはずはないのです細胞による免疫反応制御だけでは,炎症抑制はむずかが,今回はきわめてタイムリーなテーマになりまししいのではないかと考えていましたが,臼井嘉彦先生た.報道されているように,Steinman博士はノーベたちは樹状細胞による免疫反応制御で十分にぶどう膜ル賞受賞発表の数日前に亡くなりました.通常ノーベ炎の抑制が可能であることを示しました.ぶどう膜炎ル賞は故人には授与されませんが,今回は授与されるに至る過程の一部を制御すれば,それ以後の強い炎症ことになったことや,Steinman博士が受賞対象となが完全に抑えられるという論理的なアプローチであった樹状細胞を用いた治療によって癌と闘っていたこり,見事な結果だといえます.激しい炎症に目を奪わとは,今回のノーベル賞を人々の記憶に強くとどめるれて,炎症すべての局面を抑えるステロイドのようなことになるでしょう.治療が必要と感じた私が誤りでした.さて,Steinman博士の癌治療で用いられた方法は,近年,抗TNF(腫瘍壊死因子)-a抗体薬などの生樹状細胞を操作することで癌細胞に対する免疫反応を物学的製剤の登場で,ぶどう膜炎の治療成績が飛躍的起こすという方法であり,広い意味の癌ワクチン療法に向上しました.しかし,新しい治療法が現れると,にあたります.その場合の樹状細胞の役割は,免疫をそれを回避した新しい病態が出現するのは避けられま強化するというもので,一般にはこのコンセプトで樹せん.その意味からも,今回の樹状細胞を用いた免疫状細胞が治療に用いられることが多いです.ところ反応抑制治療は,将来のぶどう膜炎治療において重要が,今回服部貴明先生たちが述べられている方法は,な位置を占める可能性が高いものといえます.樹状細胞により免疫反応を抑えるという逆の作用を用鹿児島大学医学部眼科坂本泰二☆☆☆1586あたらしい眼科Vol.28,No.11,2011(74)

新しい治療と検査シリーズ 202.コラーゲン液状涙点プラグ

2011年11月30日 水曜日

新しい治療と検査シリーズ新しい治療と検査シリーズプレゼンテーション:小島隆司慶應義塾大学医学部眼科学教室コメント:山口昌彦愛媛大学大学院感覚機能医学講座視機能外科学分野(眼科学).バックグラウンド涙点プラグは安全で確実なドライアイ治療方法として中等度から重症ドライアイに対して広く用いられている.わが国で入手可能な涙点プラグは素材という観点から大きく分けて2種類ある.1つめが従来からあるシリコーン製の固形のプラグで,2つめが今回紹介する新しくわが国で開発されたコラーゲン製の液状プラグである.固形プラグは確実な涙点閉鎖を得ることができるのがメリットであるが,肉芽の形成,涙点の位置によってはプラグが角膜および結膜に擦れて上皮障害を起こしたり,異物感などの症状を起こすデメリットがある.また,サイズ選択が必要で,サイズ不適合により早期に脱落してしまったり,肉芽形成を起こしたりする可能性がある..新しい治療法従来までコラーゲンプラグは固形状で,棒状のプラグを鑷子で涙点に挿入していたが,挿入しにくく,また完全な涙小管閉塞が得られるか確証がなかった.これを克図1コラーゲン液状涙点プラグキープティアR(71)0910-1810/11/\100/頁/JCOPY服したのがわが国で開発された液状涙点プラグキープティアR(高研,東京)である(図1).これは3%アテロコラーゲンを成分とする液状涙点プラグである.キープティアRは体温で温められることによって白色のゲルとなり涙点,涙小管閉鎖を起こすとされている.治療の有効性は濱野らによって報告されている1)..実際の使用方法製品は温度の上昇によるゲル化を防ぐために冷蔵保存(2.10℃)が必要である.対象となる患者があれば,キープティアRの箱を冷蔵庫から出し,シリンジをプラスチックの容器からも出して15分ほど室温に置いてから注入用の27ゲージ鈍針を装着し注入する.1本300μlで2涙点分である.シリンジに半分の量の場所に目印がつけてあり,そこまでが1涙点分である.挿入手技は通水検査などと同じで容易である.処置ベッドで行うと患者が動きにくく行いやすいが,スリット下で行うことも可能である.挿入途中で片方の涙点からのキープティアRの流出があったり,挿入している涙点から逆流がある場合は1涙点分注入していなくてもその時点で注入をやめる.注入は基本的に上下涙点に対して行う.注入後はキープティアRの流出を避けるために閉瞼させホットアイマスクを装着して15分ほど待つ.その後患者に起きてもらって眼周囲に付着したコラーゲンゲルを取り除く.キープティアRを使用していると,思いのほか効果が短時間でなくなってしまう患者に遭遇する.また注入直後にもかかわらず涙液メニスカスが十分高くならない場合にも遭遇したため,筆者らはアテロコラーゲンが完全にゲル化するまでに流出してしまう可能性があることを考えた.そこでキープティアRをあらかじめ温めて(ゲル化させて)注入する方法(プレヒーティング法,2011年角膜カンファランス)を報告し,この方法を用いるとあたらしい眼科Vol.28,No.11,20111583 通常の方法よりも持続効果が長続きし患者の自覚症状スコアもより改善することが示された.ただし,このキープティア通常の方法よりも持続効果が長続きし患者の自覚症状スコアもより改善することが示された.ただし,このキープティアに用いられているアテロコラーゲンは37℃付近でゲル化が始まり,それより温度が高くなり39℃を超えるとゲルの三次元構造が今度は崩壊しはじめて,また液状になってしまう.この変化は不可逆性であり,プレヒーティング法は温度が高くなりすぎると逆効果になってしまうので,行う際は十分注意が必要である..本治療の良い点液状涙点プラグによる治療の最大のメリットは肉芽形成,異物感がまったくない点である.またサイズ選択も必要ないため,さまざまなサイズを用意しておく必要がなく,開業医の先生にとっても使いやすいと思われる.一方,欠点としては,コラーゲンはその性質ゆえに時間とともに分解,流出してしまうために効果が一時的であることである.筆者らの印象では効果は1.2カ月ほどと考えている.このため,重症ドライアイを合併するSjogren症候群患者やGVHD(graft-versus-hotdisase)患者などには不向きである.一方,一時的な効果のプラグと考えて,冬場のドライアイの悪化に対して一時的に使用したり,LASIK(laserinsitukeratomileusis)術後ドライアイに対して使用するなどの方法がよいと思われる.また,コンタクトレンズ装用の際にドライアイ症状を訴える患者も良い適応である2).越智らはSchirmer試験が6mm以上の患者では自覚症状,涙液貯留量,角結膜染色スコアが改善したが5mm以下では改善しなかったと報告している3).このことよりキープティアRは軽度ドライアイに向くプラグであることがわかる.また,固形プラグには少し心理的に抵抗があって躊躇されているけれど,涙点プラグの効果があるかどうかを試したいというような患者にとっても良いプラグではないかと思われる.文献1)濱野孝,林邦彦,宮田和典ほか:アテロコラーゲンによる涙道閉鎖─涙液減少症69例における臨床試験.臨眼58:2289-2294,20042)濱野孝:ドライアイとコンタクトレンズ,特集コンタクトレンズ診療.眼科51:1765-1769,20093)越智理恵,白石敦,原祐子ほか:アテロコラーゲン液状プラグ(キープティアR)の治療効果とその適応.臨眼65:301-306,2011.本方法に対するコメント.コラーゲンプラグは,シリコーンプラグのデメリッである.ただ,筆者も本文で述べているように,プレトを補う反面,シリコーンプラグのように持続的な効ヒーティング法の精度を保つには,温度管理を慎重に果を期待できないのが現状である.液状プラグのキー行わなければならず,同手法の課題といえる.今後,プティアRは,注入の手順を遵守すれば,これまでのドライアイ罹患率はますます上昇すると予想され,涙コラーゲンプラグよりも持続的な効果が期待できる.点プラグ治療の適応も拡大していくものと思われる.筆者は,キープティアRの温度反応特性に着目し,プ液状プラグの安全性とシリコーンプラグの効果持続性レヒーティング法というユニークな手法を考案して,を兼ね備え,さらに簡便に行える,そんな理想的な涙注入直後からの固形化を図って効果を上げているよう点プラグの開発が待ち望まれる.☆☆☆1584あたらしい眼科Vol.28,No.11,2011(72)

緑内障:電子媒体を活用した正常眼圧緑内障の長期管理

2011年11月30日 水曜日

●連載●連載137緑内障セミナー監修=岩田和雄山本哲也137.電子媒体を活用した正常眼圧緑内障の新田耕治長期管理福井県済生会病院眼科/金沢大学医薬保健研究域視覚科学(眼科)眼圧変化に乏しい正常眼圧緑内障患者の膨大な経過観察データを電子カルテやファイリングソフトによって一元的に管理することは種々の所見の変化をすばやくとらえることができ,治療方針を決定するうえで大変有用である.超慢性疾患で根治的療法が存在しない緑内障を未治療の段階で診断した場合,長期にわたり管理していかなければならない.特に15mmHg以下のlowteensの正常眼圧緑内障(NTG)では健常範囲内を推移するので眼圧の日々変動に埋もれ薬物治療の効果を判定しにくいことがあり,眼圧測定と視野検査を単調にくり返していると緑内障進行の判断が遅れてしまうことがある.近年は緑内障診断機器の充実に伴い,種々のデータ管理が必要となってきた.緑内障患者の膨大なデータを電子カルテやファイリングソフトによって一元的に管理することは治療方針を決定するうえで大変有用であると考える.NTGの進行症例では,①大きな眼圧日々変動や不十分な眼圧下降,②視神経乳頭陥凹拡大による乳頭上血管の明らかな屈曲変化やさらなるrimの菲薄化,③網膜2002.102005.10神経線維層欠損(NFLD)の拡大,④乳頭出血(DH)の出現や頻発,⑤視野障害の悪化,などの所見がみられる.当院では2002年に電子カルテを導入して以降,さまざまな面で電子カルテの恩恵を被っている.電子カルテの場合,画像を何枚でも保存できるので,黄斑中心の広角眼底写真・乳頭中心の高倍率眼底写真・乳頭ステレオ写真など同一患者の眼底写真を異なる条件で撮影して保存しておくと将来の緑内障進行判定に役立つ.紙カルテのころには,撮影した35mmスライドは別の棚にまとめて保管していたので,わざわざ棚にある多数のスライドから探し出すことは煩雑であった.図1の上段のように電子カルテ上にカラー写真を並べて観察すれば,DHをくり返し,徐々に下方のrimが菲薄化し乳頭上の血管の走行が屈曲したことがはっきりと観察できる.これは下方の乳頭の陥凹拡大を表すものである.2008.82009.42011.10図1乳頭出血をくり返し網膜神経線維層欠損が拡大し急速に視野障害が進行した症例上段のようにカラー写真を並べて観察すれば,乳頭出血(DH)DHDHをくり返し,徐々に下方のrimが菲薄化し乳頭上の血管の走行が屈曲したことがわかる.これは下方の乳頭の陥凹拡大を表すものである.中段のように,網膜神経線維層欠損(NFLD)の幅が2002年10月と比較して2011年7月にNFLDが両方とも黄斑側および反対側に拡大し,眼圧が一桁台で推移するも,下2002.122004.92006.82007.112009.102010.42011.12011.6段のように視野障害が比較的急速に進行している(MDslope:.0.69dB/y).DHDH2002.102011.7………………………………….(69)あたらしい眼科Vol.28,No.11,201115810910-1810/11/\100/頁/JCOPY 2001..2007..meanIOP:10.2mmHg2007..2011..meanIOP:8.1mmHgBaselineIOP:15mmHgMDslope:..1.14dB/yMDslope:..0.16dB/y…………………………………………..IOP(mmHg)MD(dB)washout……2001..2007..meanIOP:10.2mmHg2007..2011..meanIOP:8.1mmHgBaselineIOP:15mmHgMDslope:..1.14dB/yMDslope:..0.16dB/y…………………………………………..IOP(mmHg)MD(dB)washout……広角眼底写真を定期的に撮影しておけば,当院にて導入しているNIDEK社製の電子カルテNAVIS(NidekAdvancedVisionInformationSystem)のファイリングシステムには眼底写真の青成分のみ(無赤緑色),緑成分のみ(無赤青色),赤成分のみ(無青緑色)をそれぞれ抽出し白黒眼底写真に瞬時に加工できる.NFLDの境界が鮮明に観察できる青成分のみを抽出して白黒に加工した眼底写真を電子カルテ上に並べれば,図1の中段のように,2002年10月と比較して2011年7月にNFLDの幅が黄斑側および反対側に拡大していることを明瞭に確認できる.NFLDの拡大する症例はDHが出現しやすく,DHをくり返すことが多いので視野障害が比較的急速に進行するサインであり,眼圧下降治療をさらに強化する必要がある.電子カルテを導入していない施設でも眼底カメラを一眼レフデジタルカメラに交換し,眼底写真をUSBメモリーに出力してphotoshopなど画像編集ソフトを利用すれば赤緑写真や白黒写真に加工してNFLDの程度を把握できる.電子化したデータを活用してNTGを厳重に管理したいものである.直径4mm以上の瞳孔の症例は無散瞳で乳頭ステレオ写真を撮影でき,3Dモデル動画や経過観察用に開発された時系列動画ソフトにて撮影ごとの画像の回旋を補正して経時変化が閲覧できるようにもなった.以前は赤青エンピツで紙図2点眼の種類を変更し眼圧がさらに下降したことにより視野進行が緩徐になったNTG症例ベースライン眼圧が15mmHgであった初診時42歳,女性のNTG.2001.2007年はレボブノロールやブナゾシンを使用し,平均眼圧10.2mmHg,MDslope:.1.14dB/yearであった.2007年以降はレボブノロール・ブナゾシンをともに中止し,ラタノプロストやドルゾラミドを開始した.その結果,平均眼圧8.1mmHg,MDslope:.0.16dB/yearと視野進行が緩徐になった.カルテに乳頭のシェーマを書き残していたがその手間が不要となり,乳頭での微細な形状の変化をすばやく発見できるようになったと思われる.視野検査結果の一覧や視野障害の進行速度を示すMD(meandeviation)slopeやVFI(visualfieldindex)slopeなどをファイリングソフトの使用により簡単に表示でき,図2のように2007年以降に眼圧がさらに下降し,MDslopeが.1.14dB/yearから.0.16dB/yearへ緩徐になったことが容易に確認できる.これまで使用してきた点眼薬も入力すれば症例ごとに視野変化と治療の変遷を一覧することができるようになった.今後さらに電子カルテやファイリングソフトが使いやすいものに進化していけば,緑内障の長期管理に関してはさらに有用性が増すものと期待される.文献1)NittaK,SugiyamaK,HigashideTetal:Doestheenlargementofretinalnervefiberlayerdefectsrelatetodischemorrhageorprogressvisualfieldlossinnormal-tensionglaucoma?JGlaucoma20:189-195,20112)新田耕治,杉山和久,棚橋俊郎:境界明瞭な網膜神経線維層欠損を有する正常眼圧緑内障における乳頭出血出現や網膜神経線維層欠損拡大と視野進行との関連.日眼会誌115:839-847,2011☆☆☆1582あたらしい眼科Vol.28,No.11,2011(70)

屈折矯正手術:超音波生体顕微鏡(UBM)によるICLTMのサイズ決定

2011年11月30日 水曜日

屈折矯正手術セミナー─スキルアップ講座─屈折矯正手術セミナー─スキルアップ講座─●連載138大橋裕一坪田一男138.超音波生体顕微鏡(UBM)によるICLTMの小島隆司名古屋アイクリニックサイズ決定Implantablecollamerlens(ICLTM)は毛様溝に固定される後房型の有水晶体眼内レンズである.毛様溝間距離と水平角膜径は相関が弱いために直接測定が望まれる.筆者らは超音波生体顕微鏡(UBM)を用いて毛様溝間距離を直接測定し,重回帰分析によりICLTMサイズ回帰式を決定した.それをもとにICLTM挿入を行うと,従来の方法よりも適切な術後vaultが形成されることがわかった.Implantablecollamerlens(ICLTM)は毛様溝に固定される後房型有水晶体眼内レンズである.有効性,安全性,予測性にすぐれ,現在は高度近視のLASIK(laserinsitukeratomileusis)非適応患者がおもに対象となっているが,今後適応範囲が広がる可能性も考えられる.後房に挿入する特性上,合併症として水晶体混濁(前.下混濁)や瞳孔ブロックによる急性緑内障発作がある.これらの合併症を避けるために,ICLTM手術においてはレンズサイズの決定が非常に重要である.レンズサイズが相対的に大きいと,虹彩が裏側から持ち上げられ狭隅角になる.またレンズサイズが相対的に小さいと,ICLTMが水晶体に近くなり,白内障の発症リスクが高くなる.従来はICLTMのサイズは,メーカー(STAARSurgical社)が用意したノモグラムから算出していた.これは水平角膜径(whitetowhite:WTW)と前房深度から適切サイズを算出する方法である.筆者らも初期はこのノモグラムを使用して,ほとんどの症例では問題がなかったが,なかに非常に高いvault(ICLTMと水晶体前面.距離)や非常に低いvaultを経験したこともあり,この方法に限界を感じていた.実際にこれまでに,WTWは毛様溝間距離(sulcustosulcus:STS)との相関がない,もしくは低いことが報告されている1).そこに広角測定が可能な超音波生体顕微鏡(ultrasoundbiomicroscopy:UBM)が発売された.これによって前眼部が一画面で解析可能になり,STSが明瞭に測定できるようになった.まず筆者らは,視能訓練士をトレーニングし十分にUBMの操作に熟練させた.その状態で,2検者による再現性や同一検者による再現性を評価し報告した2).同一検者で健常眼10眼をそれぞれ10回測定した際の,平均変動係数は0.62±0.20%であ(67)った.これにより同一検者の再現性は高いことが示された.一方,2検者間の再現性は3.4±2.4%であり,Bland-Altmanplotにおいても2検者に差を認めたことから,何が原因かをさらに調査したところsulcusの最終端を決定するところでわずかに個人差が生じており,複数の検者で測定を行う際は,同じ画像を提示して同じ値を測定できるようになるまで検者をトレーニングする必要があると思われた.つぎの段階として,筆者らはすでにICLTM手術を受けた患者に着目して,挿入したレンズ径と術後vaultから,最適なvaultを形成させるには,どのサイズが適切であったか逆算した.この算出には,レンズを水中で押し縮めた際の距離の1.14倍vaultが高くなる(STAARSurgical社内データ)ことを利用した.最適なvaultは一般的に術後所見として適切とされている1角膜厚みとして500μmとした.たとえば,12mmのレンズを挿入して,術後vaultが800μmであったならば,もう少し短いレンズを挿入するべきで,計算としては12+(0.5.0.8)/1.14=11.74と計算され,11.7mmのレンズを入れれば丁度vaultが0.5mmに収まったはずであると計算した.ただし,これには固定位置がまったく同じであるという仮定が含まれている(実際にはICLTMサイズは0.5mmステップで作製されているのでこのようなレンズを注文することはできない).このようにして今までに手術が終わった患者で,最適サイズを計算した.その後,さまざまな眼パラメータを説明変数の候補としてステップワイズ重回帰分析を施行した.UBMで測定されるパラメータとしては,STSだけでなく新しいパラメータとしてSTSL(STSのラインと水晶体前面までの距離)を含めた(図1).STSLを考慮したのは,vaultは単純にSTSとレンズサイズの相対的な関係だけでなく,水あたらしい眼科Vol.28,No.11,201115790910-1810/11/\100/頁/JCOPY TMサイズを計算する回帰式は,以下のように示された3).最適ICLTMサイズ(mm)=3.611+0.468STS+0.784ACD+1.09STSL(K式)つぎにK式を用いて,サイズを決定し新規の53名101眼の患者にICLTMを挿入した.その結果,平均のvaultは0.71±0.20mm(0.29.1.33mm),0.15mm以上1.0mm以下のmoderatevaultに収まった割合が89眼(88.1%)で,lowvaultは1例もなく,1.0mm以上のhighvaultは12眼(11.9%)であった.またSTAARSurgical社の提供するノモグラムやDoughertyらが報告しているノモグラム4)で予測vaultを計算すると,moderatevaultに入る割合がK式において有意に高いことがわかった.現在でも筆者らはICLTMのサイズ決定ではUBMを用いているが,この方法を行う際にはいくつかの注意点がある.まず,UBMで毛様溝を決定する場合,虹彩裏面の高反射のラインの最終端をsulcusとする.第2に複数の検者が測定を行う場合は,前述したように検者間の差が起こらないように事前にトレーニングするべきである.筆者らの回帰式はVumaxII(Sonomed社)を用1580あたらしい眼科Vol.28,No.11,2011図1超音波生体顕微鏡(UBM)で測定した毛様溝間距離(STS)とSTSlineと水晶体前面の距離(STSL)いた回帰式であるために,他のUBMでこの回帰式のまま使用できるか,修正が必要かどうかは検証が必要である.もう一つの限界として,ICLTMは0.5mmステップでサイズが作製されている.このためどうしてもlowvaultを避けるため,大きめのサイズを選択してしまう傾向がある.11.9%の症例でhighvaultになったのはこの影響と思われる.今後は新たな症例を回帰式に組み入れて,常にICLTMのサイズ決定を最適化してICLTM手術が隅角や水晶体への影響の少ない手術となるようにしていきたい.文献1)KawamoritaT,UozatoH,KamiyaKetal:Relationshipbetweenciliarysulcusdiameterandanteriorchamberdiameterandcornealdiameter.JCataractRefractSurg36:617-624,20102)YokoyamaS,KojimaT,HoraiRetal:Repeatabilityoftheciliarysulcus-to-sulcusdiametermeasurementusingwide-scanning-fieldultrasoundbiomicroscopy.JCataractRefractSurg37:1251-1256,20113)KojimaT,YokoyamaS,ItoMetal:Optimizationofanimplantablecollamerlenssizingmethodusinghigh-frequencyultrasoundbiomicroscopy.AmJOphthalmol,inpress4)DoughertyPJ,RiveraRP,SchneiderDetal:Improvingaccuracyofphakicintraocularlenssizingusinghigh-frequencyultrasoundbiomicroscopy.JCataractRefractSurg37:13-18,2011(68)

多焦点眼内レンズ:多焦点眼内レンズ挿入眼の脳順応

2011年11月30日 水曜日

●連載●連載監修=ビッセン宮島弘子23.多焦点眼内レンズ挿入眼の脳順応柴琢也東京慈恵会医科大学眼科多焦点眼内レンズは特殊な光学的構造を有するため,最良の視機能を獲得するまでに一定の期間を要する.これは術後に多焦点眼内レンズの特殊な見え方に対して,患者の脳が次第に順応していくことにより,多焦点眼内レンズの機能を使えるようになっていくものと推察される.また,特殊な視覚訓練を行うことによって,順応期間を短縮し,順応度を向上させようという研究もされている.近年の白内障手術は目覚しい進歩を遂げており,超音波白内障手術とfoldable眼内レンズ(IOL)による小切開白内障手術によってほぼ完成された術式となっている.IOLの分野においては,着色,非球面,極小切開対応,大光学径,乱視矯正などのさまざまな付加価値を有するIOLがすでに臨床使用されている.多焦点IOLもそのうちの一つであるが,2005年頃より新世代の多焦点IOLを用いた白内障手術が欧米を中心に開始され,わが国でも2007年より順次使用可能になった.さらに2008年には先進医療として承認され,現在までに数多く使用されている.多くの付加価値IOLは,正しく使用すれば有する付加価値により視機能低下をきたすことは少ない.それに比べて多焦点IOLは,付加価値を有するが故に(この場合は二重焦点であるということ),単焦点IOLとは術後経過に相違がある.そこで本稿では,多焦点IOLの術後経過について脳順応の観点から考察する.脳順応多焦点IOLの術後経過について考察する前に,脳順応について述べる.神経系は外界の刺激などによって常に解剖学的・機能的に変化しており,このことは神経可塑性とよばれている.神経可塑性は,①発生・発育段階に認めるもの,②加齢・外傷などにより損失した神経回路が,回復する際に認めるもの,③記憶・学習などにより獲得するものの3つに大別される.このうち③の神経可塑性が,多焦点IOL挿入眼の脳順応を考える際に重要になる.脳科学の分野では,神経可塑性を獲得するために行う事柄を知覚学習(perceptuallearning:PL)とよび,特に視覚領域に限定した事柄に対しては視覚的知覚学習(visualperceptuallearning:VPL)という言葉(65)を用いている.たとえば,超音波エコーを一瞥して胎児の性別を判定することは,多くの眼科医には不可能であろう.しかし同じ映像を見ても,熟練した産婦人科医にはこれが可能になる.当然であるが産婦人科医が眼科医よりも視機能が良好であるという報告はなく,これはトレーニングを重ねて獲得されたものである.このトレーニングがまさにVPLである1).現在までにPLについては多くの研究が行われているにもかかわらず不明な点も多いが,PLは神経可塑性に関係するものと考えることが通説となっている.つまり脳の神経回路が組み換えられていくことで,特定の行動を効率よく行えるようになるということである.先述の例でいえば,産婦人科医はエコー画像から胎児の性別を判断するトレーニングを重ねることによって自身の診断能力を向上させていくことは,該当する視覚野のネットワークが適切に組み換わっていくことによって獲得されるということである.さらにいえば,産婦人科医は小児期からこのトレーニングを行っている訳ではないということより,解剖学的な成長によらなくてもPLは有効であるといえよう.多焦点IOLの術後経過多焦点IOL挿入術後の経過は,単焦点IOLに比べてどのような違いがあるのであろうか.単焦点IOLに比べて多焦点IOL挿入眼のコントラスト感度は,術後1カ月目ではすべての周波数領域で低下しているが,術後3カ月目では高周波領域のみが有意に低下しており,術後6カ月以降では両IOL挿入眼に有意差を認めなかったとの報告がある2).さらに多焦点IOL挿入後の最良の遠方視力,近方視力が得られるまでの期間は,単焦点IOL挿入眼に比べて延長するとの報告も散見される3.5).これらの報告では,その理由の一つに脳順応が関与してあたらしい眼科Vol.28,No.11,201115770910-1810/11/\100/頁/JCOPY いることを推察している.そこで脳順応が関与している可能性があるのであれば,これを積極的に利用して多焦点IOL挿入眼の術後視機能を向上させようという試みもされている.Kaymakらは,多焦点IOL挿入術後から,特殊な視覚訓練を行うことにより最良の遠方視力,近方視力が得られるまでの期間を短縮することが可能であったと報告しているいることを推察している.そこで脳順応が関与している可能性があるのであれば,これを積極的に利用して多焦点IOL挿入眼の術後視機能を向上させようという試みもされている.Kaymakらは,多焦点IOL挿入術後から,特殊な視覚訓練を行うことにより最良の遠方視力,近方視力が得られるまでの期間を短縮することが可能であったと報告している.さらに,検査指標の照度やコントラストによってその期間は異なり,より見えづらい条件のほうが最良視力獲得までの期間が必要であるとも述べている6).多焦点IOLの術後経過の脳科学的推察前述の報告を脳科学的に推察すると,以下のようである.多焦点IOL挿入術を施行された患者は,今まで経験したことのない視機能を獲得することになる.経験したことがないために手術直後は,多焦点IOLの性能を発揮しきれない.しかし覚醒時には視覚刺激を常に受けているため,これが結果的に無意識のVPLとなっている.その結果,VPLの積み重ねによって,多焦点IOLを介した視覚情報の処理を行うための神経回路が適切に組み換えられていくことで,効率よく視覚判断を行うことができるようになっていく.この現象は,簡易なものから早く達成されていく.さらに,積極的にVPLを行うことによって,この期間を短縮できるようになる.おわりに多焦点IOL挿入術後の脳順応に関して,従来の臨床報告を脳科学的に推察したが,実際に脳活動を計測して,脳順応の関与の証明はいまだされていない.この分野は,患者の術後満足度向上に重要であり,今後さらなる研究が必要であろう.文献1)CarmelD,CarrascoM:Perceptuallearninganddynamicchangesinprimaryvisualcortex.Neuron57:799-801,20082)Montes-MicoR,AlioJL:Distanceandnearcontrastsensitivityfunctionaftermultifocalintraocularlensimplantation.JCataractRefractSurg29:703-711,20033)GoesFJ:VisualresultsfollowingimplantationofarefractivemultifocalIOLinoneeyeandadiffractivemultifocalIOLinthecontralateraleye.JRefractSurg24:300-305,20084)PalominoBautistaC,CarmonaGonzalezD,CastilloGomezAetal:Evolutionofvisualperformancein250eyesimplantedwiththeTecnisRZM900multifocalIOL.EurJOphthalmol19:762-768,20095)MesterU,HunoldW,WesendahlTetal:FunctionaloutcomesafterimplantationofTecnisRZM900andArrayRSA40multifocalintraocularlenses.JCataractRefractSurg33:1033-1040,20076)KaymakH,FahleM,OttGetal:IntraindividualcomparisonoftheeffectoftrainingonvisualperformancewithReSTORRandTecnisRdiffractivemultifocalIOLs.JRefractSurg24:287-293,2008☆☆☆1578あたらしい眼科Vol.28,No.11,2011(66)

眼内レンズ:眼内レンズ強膜縫着術後の逆瞳孔ブロック

2011年11月30日 水曜日

郎西村哲哉関西医科大学附属滝井病院眼科303.眼内レンズ強膜縫着術後の逆瞳孔ブロック眼内レンズ(IOL)縫着術後に逆瞳孔ブロックをきたす症例がある.眼球運動に伴って,IOL後方の眼内液が前房に流入するが,硝子体腔に戻る際には虹彩がIOLに対して弁状に働いてそれを阻止するため(逆瞳孔ブロック),前房が異常に深くなる.硝子体手術後の無硝子体眼に発生しやすい.IOLが後方に移動し,遠視化する場合には,レーザー虹彩切開術が有効である.●逆瞳孔ブロックとは?逆瞳孔ブロックとは,虹彩中間周辺部が後方偏位し,瞳孔縁もしくは虹彩中間周辺部で虹彩が水晶体と接触し,前房圧が後房圧を上まわり,深前房をきたす病態をさす.若年者の強度近視眼に多く,瞬目や運動負荷による後房から前房への房水の移動により誘発されるとされている1.4).通常の瞳孔ブロックが,後房→前房への経路のブロックであるのに対し,その逆方向のブロックなので,逆瞳孔ブロックとよばれる.虹彩裏面の摩擦により色素顆粒が散布され,色素性緑内障をきたすことがある.また,深前房に伴う遠視化をきたすこともある.●眼内レンズ縫着術後の逆瞳孔ブロックこれと同様の病態が,眼内レンズ(IOL)縫着術後に図2硝子体手術既往眼にIOL縫着を行った症例(61歳,男性)術後から屈折度に2.0.3.0Dの変動がみられた.a:逆瞳孔ブロック発生時の前眼部所見とPentacamR所見.前房が異常に深く(6,000μm),虹彩が後方に弯曲し,瞳孔縁がIOLに圧着されている.視力は(0.8×sph+2.25D(cyl.1.50DAx70°).b:LI術後の所見.前房深度は4,018μmと正常化し,虹彩の後方弯曲および瞳孔とIOLの圧着は解除された.視力は(0.9×sph.1.50D(cyl.1.00DAx90°)で,遠視化も改善された.ab発生することがある5.7).IOL縫着術後の逆瞳孔ブロックは硝子体切除後の無硝子体眼に発生しやすい.後房.硝子体腔の眼内液は眼球運動に伴って,容易に前房内に図1逆瞳孔ブロックの発生機序後房.硝子体腔の眼内液は眼球運動に伴って生じた水流により,容易に前房内に流入するが,それが硝子体腔に戻ろうとする際に,虹彩がIOLに対して弁状に働き,それを阻止するため,前房が異常に深くなって逆瞳孔ブロックが発生すると考えられる.6,000μm4,018μm(63)あたらしい眼科Vol.28,No.11,201115750910-1810/11/\100/頁/JCOPY 流入するが,それが硝子体腔に戻ろうとする際に,虹彩がIOLに対して弁状に働き,それを阻止するため,前房が異常に深くなる(図1).無症状のことも多いが,IOLが後方に移動すると,屈折が遠視側に変化するので,患者は視力低下(裸眼視力の低下,視力の変動,眼鏡が合わない,など)を訴える.矯正視力は良好であるが,屈折の遠視化と,異常な深前房,虹彩の後方弯曲および瞳孔縁がIOLに圧着されている所見に注意する必要がある(図2).診断には超音波生体顕微鏡(UBM)2.4),多機能型前眼部解析測定装置(PentacamR)4,7),前眼部OCT(光干渉断層計)6)などが有用である.●治療隅角からの前房水流出,毛様体からの房水産生により自然緩解することが多いが,頻回に逆瞳孔ブロックを生じて,視力が動揺する場合には治療が必要である.散瞳することにより逆瞳孔ブロックはいったん解除され,前房深度は正常になるが,縮瞳してくると再びブロックが発生するので,散瞳剤による効果は一時的である.安定的にブロックを解除するにはレーザー虹彩切開術(LI)が有効である(図2)5.7).症状がない場合でも,虹彩裏面とIOLの接触により色素が散布され,色素性緑内障をきたす可能性があるので,長期にわたる経過観察が必要である.文献1)KarickhoffJR:Pigmentarydispersionsyndromeandpigmentaryglaucoma:anewmechanismconcept,anewtreatment,andanewtechnique.OphthalmicSurg23:269-277,19922)HaargaardB,JensenPK,KessingSVetal:Exerciseandirisconcavityinhealtheyes.ActaOphthalmolScand79:277-282,20013)AdamRS,PavlinCJ,UlanskiLJ:Ultrasoundbiomicroscopicanalysisofirisprofilechangeswithaccommodationinpigmentaryglaucomaandrelationshiptoage.AmJOphthalmol138:652-654,20044)YipLW,SothornwitN,BerkowitzJetal:Acomparisonofinteroculardifferencesinpatientswithpigmentdispersionsyndrome.JGlaucoma18:1-5,20095)井上康,馬場哲也,永山幹夫ほか:眼内レンズ毛様体扁平部縫着術後に発症した逆瞳孔ブロック.眼科46:18991903,20046)HigashideT,ShimizuF,NishimuraAetal:Anteriorsegmentopticalcoherencetomographyfindingsofreversepapillaryblockafterscleral-fixatedsuturedposteriorchamberintraocularlensimplantation.JCataractRefractSurg35:1540-1547,20097)木村元貴,津田メイ,西村哲哉ほか:眼内レンズ縫着術後の逆瞳孔ブロックにレーザー虹彩切開術を施行した3例.臨眼64:1341-1346,2010

コンタクトレンズ:コンタクトレンズ基礎講座【ハードコンタクトレンズ編】 フルオレセインパターン判定法(3)

2011年11月30日 水曜日

コンタクトレンズ基礎講座【ハードコンタクトレンズ編】糸井素純329.フルオレセインパターン判定法(3)道玄坂糸井眼科医院臨床でフルオレセインパターンを観察していると,そのパターンは千差万別で,判断に迷うことがある.今回のセミナーでは,一般の眼科医でも頻繁に遭遇するであろうと考えられるケースで,比較的間違った判断がされることが多いフルオレセインパターンについて解説する.●Dimpleveil理想的なハードコンタクトレンズ(HCL)のフィッティングでは,瞬目に伴い,上眼瞼とともに,レンズが上方に移動し,その後,緩やかに下方に移動し,角膜中央部で安定する.この一連の動きのなかで,レンズ下の涙液はいったん流出し,新たな涙液が流入する.この瞬目に伴うレンズ下の涙液の流れが悪いと,酸素供給が低下するのみならず,角膜上皮などの老廃物や空気などがレンズ下に滞留する.HCLの後面カーブが角膜形状に対してスティープで,レンズ下の涙液交換が不完全なときに,複数のairbubbleがレンズ下に留まり,それにより角膜に圧痕が生じることがある.フルオレセインで観察すると,その部位が粒状の角膜ステイニングとして観察される.これをDimpleveil(図1)という.HCLの後面カーブが角膜形状に対して,若干スティープなときに観察されることが多い.Dimpleveilが観察されるときは,HCLのベースカーブをフラットに変更すると,消えていくことが多い.角膜上皮障害は伴わないので,投薬の必要はない.●強度角膜乱視強度角膜乱視の理想的なフルオレセインパターンは,中央部は蝶ネクタイの形状で,弱主経線方向の最周辺部(ベベル部分)で涙液クリアランスが十分に確保されている状態である(図2).トライアルレンズの第一選択は,弱主経線よりは2.3段階スティープに,中間値よりは2.3段階フラットなベースカーブを選択すると,理想とするフィッティングが得られやすい.(61)0910-1810/11/\100/頁/JCOPY図1Dimpleveil図2強度角膜乱視の理想的なフルオレセインパターン図3MZ加工レンズ前面の周辺部に溝を作製.強度角膜乱視では強主経線と弱主経線の角膜のカーブの差が大きいために,強主経線方向のレンズエッジの浮きが大きくなり,センタリングが不安定になりやすい.スティープなベースカーブを選択すると下方固着,下方偏位を生じやすく,フラットなベースカーブを選択するあたらしい眼科Vol.28,No.11,20111573 と上方固着,上方偏位を生じやすい.臨床的にはスと上方固着,上方偏位を生じやすい.臨床的にはスを生じているケースが多い.角膜中央部でのフルオレセインパターンが理想的な蝶ネクタイ状にもかかわらず,センタリングが下方安定しやすいときは,レンズ前面のエッジから約1mm内側の部分に溝を掘ると良いセンタリングが得られやすい(図3).強度角膜乱視眼に対して,エッジリフトが低く,ベベル幅が狭いデザインのHCLを処方すると,弱主経線方向の最周辺部で,エッジ部分による機械的刺激による上皮障害を生じやすく,下方固着,下方偏位も生じやすいので,エッジデザインは涙液クリアランスが良好のもの(エッジリフトが高く,ベベル幅が広い)を選択するとよい.通常の球面HCLをトライして,うまくいかない場合は,後面トーリックHCL,あるいは,バイトーリックHCLを選択すると良いセンタリングが得られやすい.●3時9時ステイニング3時9時ステイニングはHCL装用者に特有の合併症と考えられている.発症原因はHCL装用による局所の乾燥(涙のブレークアップ),あるいは,レンズエッジによる機械的な障害である.両者が関与するケースも少なくない.この2つの発症原因はレンズフィッティングの観点からすると,相反する部分もあり,発症原因の鑑別を誤ると治療に苦渋する.3時9時ステイニングではフルオレセインパターンを詳細に観察し,発症原因を見きわめ,適切な対応をとる必要がある.図43時9時ステイニングのフルオレセインパターン4時方向にレンズエッジによる角膜上皮障害が観察される.3時9時ステイニングが生じたHCLでフルオレセインパターンを確認する.その際に,重要なのがレンズエッジと病変部位の関係である(図4).まずレンズエッジ部分のフルオレセインが適量であるか,病変部位でブレークアップが生じていないかを確認する.つぎにHCLを指でまぶたの上から鼻側,耳側,下方,上方へと軽く移動させ,病変部位でレンズエッジによるこすれや圧迫などの機械的障害を生じていないかを確認する.そして,自然な状態で瞬目させて,HCLの移動に伴い,レンズエッジが病変部位に接触していないか,あるいは,局所で涙のブレークアップが生じていないかを確認する.その際に,レンズが瞬目に伴い適切に動いているか,下方固着を起こしていないかも確認する.下方固着を起こしていると,4時8時方向にレンズエッジによる機械的障害を生じやすい.1574あたらしい眼科Vol.28,No.11,2011(00)

写真:全層角膜移植術後のEpithelial Downgrowth

2011年11月30日 水曜日

330.全層角膜移植術後のEpithelial堀田芙美香江口洋徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部・Downgrowth眼科学分野図2図1のシェーマ▲(矢頭)で示した点線はepithelialdowngrowthの先端.図1全層角膜移植術後のepithelialdowngrowth(61歳,男性)内皮面に上皮が伸展し,正常部との境界が線状になっている.図4図3のシェーマ▲(矢頭)で示した点線はepithelialdowngrowthの先端.図3図1と同一症例の再移植後再手術後もepithelialdowngrowthが再発し,最終的に移植片機能不全となった.(59)あたらしい眼科Vol.28,No.11,201115710910-1810/11/\100/頁/JCOPY EE入・増殖する状態である.前房内に侵入した上皮は角膜後面や虹彩上で増殖・伸展し,角膜内皮機能不全から角膜浮腫をきたし,隅角まで伸展すると,虹彩前癒着や難治性の続発緑内障を誘発することがある1).細隙灯顕微鏡では,角膜後面の白い線や虹彩上のガラス状の膜様物として認められる.図1,3は全層角膜移植術(penetratingkeratoplasty:PK)後に発症したepithelialdowngrowthを表している.PK後のepithelialdowngrowthの発症率は0.25%と報告されており2),移植片の後面に白い境界線を伴った膜様物がみられる.類似した所見を呈する内皮型拒絶反応が鑑別すべき病態としてあげられるが,内皮型拒絶反応ではrejectionline(Khodadoustline)が出現し,拒絶反応の進行に伴って移動する.Rejectionlineが通過した部分は移植片の実質浮腫を伴い,未通過の部分は伴わないが,epithelialdowngrowthで伸展の境界を挟んで実質の所見に違いが出ることは少ない.Epithelialdowngrowthの危険因子は,複数回の内眼手術,不完全な創閉鎖(創口への脱出虹彩または硝子体や水晶体遺残物の嵌頓),縫合部からの房水漏出などである.そのため,水晶体.内・.外摘出術が白内障手術の主流であった1970年代までは術後合併症としての報告が散見されたが,近年の小切開白内障手術において術後合併症として報告されることは稀となった.しかし,LASIK(laser-assistedinsitukeratomileusis)や角膜内皮移植術(Descemet’sstrippingautomatedendothelialkeratoplasty:DSAEK)の術後合併症として報告されるようになり3,4),今後も注意が必要な病態と考えられる.進行したepithelialdowngrowthに奏効する治療法はなく,できるだけ早期に発見することが重要である.発見した場合,原因となる病態を解除した後に,可能であれば伸展した上皮を除去すべきだが,予後は不良である.本症例は難治性の続発緑内障をきたし,線維柱帯切除術や経強膜毛様体レーザー凝固術を施行したが,移植片機能不全となった.文献1)WeinerMJ,TrentacosteJ,PonDMetal:Epithelialdowngrowth:a30-yearclinicopathologicalreview.BrJOphthalmol73:6-11,19892)SugarA,MeyerRF,HoodCI:Epithelialdowngrowthfollowingpenetratingkeratoplastyintheaphake.ArchOphthalmol95:464-467,19773)WrightJD,NeubaurCC,StevensG:Epithelialingrowthinacornealgrafttreatedbylaserinsitukeratomileusis:Lightandelectronmicroscopy.JCataractRefractSurg26:49-55,20004)ShulmanJ,KropinakM,RitterbandDCetal:FailedDescemet-strippingautomatedendothelialkeratoplastygrafts:Aclinicopathologicanalysis.AmJOphthalmol148:752-759,20091572あたらしい眼科Vol.28,No.11,2011(00)

眼窩炎症性疾患

2011年11月30日 水曜日

特集●目が赤いあたらしい眼科28(11):1565.1569,2011特集●目が赤いあたらしい眼科28(11):1565.1569,2011OrbitalInflammatoryDisease前久保知行*中馬秀樹*はじめに眼窩の炎症性疾患はさまざまな原因により生じ,甲状腺眼症やWegener肉芽腫症,サルコイドーシスのような免疫介在性の疾患や眼窩蜂巣炎,眼窩アスペルギルス症など感染性疾患がある.特発性眼窩炎症(idiopathicorbitalinflammation)は眼窩付属器に非特異的な炎症が生じるもので,以前は炎症性偽腫瘍とよばれていた.炎症が,特に外眼筋に起こるものを特発性眼窩筋炎といい,特発性眼窩炎症の亜形として考えられている.眼窩炎症性疾患の特徴は,急性発症であり,進行も急速であることが多く,疼痛を強く訴える.外眼筋を侵すと複視を生じ,眼球突出もみられる.今回は,「目が赤い」症例における鑑別のうえで重要な眼窩疾患の特徴的所見といくつかの代表的な疾患について,まとめて解説する.I症状多くの症例で充血,眼球周囲痛,眼違和感,流涙,複視を訴える.また,腫脹や炎症の波及に伴い視神経障害が生じると視力障害,視野障害,色覚障害などを訴える.症状の進行は急性に発症し,急激な進行を呈するものも多く,注意が必要である.II検査1.眼窩評価触診により圧痛の評価を行う.眼瞼外上方に痛みが認められれば,涙腺疾患である可能性がある.眼球突出を評価することは重要であり,Hertel眼球突出計での評価が有効である.日本人の平均値は約15mmとされている1)が,個体によるばらつきが大きいため,左右差(患側が2mm以上突出)を参考にする.眼窩内の腫瘍性病変を評価するために閉瞼してもらい,眼球を後方に圧迫し,抵抗があるかを評価する.両眼を評価し,抵抗に左右差があれば陽性と考え,腫瘍性病変を疑う.2.眼瞼評価最も一般的な所見は眼瞼浮腫である.しかし,これは非特異的な反応である.眼瞼の評価のうえで重要となるのは,上方視から下方視と眼球運動に伴い,眼球に合わせ上眼瞼が下降するかを評価することである.Lidlagは甲状腺眼症で特異的にみられる所見で,上方視より下方視を素早く施行させたときに上眼瞼の下降が遅れる.この所見を認める場合には甲状腺眼症を強く疑う.3.視神経視力障害や視野障害などの変化は,視神経障害の後期の所見である.早期の視神経障害を鋭敏に評価するために,RAPD(relativeafferentpupillaydefect;相対的入力瞳孔反応異常)を評価することが重要である.4.眼球運動炎症により外眼筋が障害されると運動制限が生じる.*TomoyukiMaekubo&HidekiChuman:宮崎大学医学部感覚運動医学講座眼科学分野〔別刷請求先〕前久保知行:〒889-1692宮崎県宮崎郡清武町大字木原5200宮崎大学医学部感覚運動医学講座眼科学分野0910-1810/11/\100/頁/JCOPY(53)1565 その障害が単眼性か両眼性か,眼球運動痛が存在するか,そして眼球運動痛はどの方向で増強するかが重要である.5.採血検査・画像評価採血検査については,病歴聴取や眼科的検査において鑑別診断を行い,必要な検査を計画する.基本的にはCRP(C反応性蛋白),血沈,血算は必須である.甲状腺眼症を疑うときには抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(抗TPO抗体),抗サイログロブリン抗体(抗TG抗体)抗甲状腺刺激ホルモン(抗TSH)レセプター抗体を評価(,)する.また,鑑別診断のうえでANCA(antineutrophilcytoplasmicantibody)も診断に必要となることがある.画像評価については,超音波,眼窩部CT(コンピュータ断層撮影),眼窩部MRI(磁気共鳴画像)を行う.超音波は眼窩内に腫瘍性変化がみられるときに異常の有無の評価を行うのには適しているが,詳細な評価は困難である.緊急時には,まず眼窩部CTを撮影し,さらに病変性状の評価を必要とする場合には眼窩部MRIを検討する.それぞれの疾患の放射線学的特徴と眼科的所見,経過などを考慮し,必要があれば生検を検討する.III各疾患について1.甲状腺眼症甲状腺眼症における眼症状は,急性期の炎症性変化として結膜充血(筋付着部),眼瞼後退(図1),眼窩部痛がみられる.Lidlag(Graefe徴候)所見は甲状腺眼症に特異的であり,診断に有用である.慢性期は,眼球突出(図2),眼球運動制限,高眼圧がみられる.眼球運動障害は外眼筋の肥大,伸転障害を生じ,複視を訴える.侵される外眼筋としては下直筋が最も多く,内直筋,上直筋,外直筋の順の頻度で障害される.すなわち上転障害が最も多く,つぎに外転障害が多い(図3).甲状腺眼症の診断では,多くの場合甲状腺機能亢進症の既往があるため,診断に有用となるが,眼症状のみが先行する場合も少なくない.甲状腺ホルモン検査〔FT3(遊離トリヨードサイロニン),FT4(遊離サイロキシン),TSH〕にて甲状腺機能の状態を判定する.しかし,眼症状を主訴に初診した甲状腺眼症患者のTSH,FT3,1566あたらしい眼科Vol.28,No.11,2011図1甲状腺眼症―正面視時の眼瞼後退(Dalrymplesign)図2甲状腺眼症―眼球突出図3甲状腺眼症―眼窩部CT両下直筋,右上直筋に肥厚を認める.FT4の約半数は甲状腺機能正常(euthyroidGraves)とされる2)ため,甲状腺機能亢進症がないからといって,甲状腺眼症は否定できない.そのため,甲状腺自己抗体である抗TSHレセプター刺激抗体(TSAb),抗TPO抗体,抗TG抗体の評価を優先する.しかし,甲状腺眼症における抗体陽性率は3つのうちいずれか1つが陽性である率も75%にとどまる.そのため,血液検査で異常がなかったとしても,否定することはできず,眼所見から診断する必要がある.治療においては急性期と慢性期で区別し,治療にあたることが重要である.急性期には消炎が中心となるが,治療選択において炎症の活動性の指標としてMouritsらのclinicalactivityscore3)が提唱されており,副腎ステロイド,放射線治療の選択に参(54) 考とされる.2.特発性眼窩炎症特発性眼窩炎症は眼窩付属器の炎症性疾患で,外眼筋,眼瞼,涙腺,視神経周囲,眼窩先端部などさまざまな部位に炎症を認める.そのなかで,外眼筋を障害するものを特発性眼窩筋炎,視神経周囲に炎症を生じるものを特発性視神経周囲炎とよぶ.臨床的な特徴は,突然の発症であり,強い発赤,腫脹,疼痛を伴う(図4,5).眼球運動痛,複視,眼瞼下垂もみられる.特発性眼窩炎症の診断において重要となるのは鑑別診断である.眼窩筋炎との鑑別では,頻度の高い疾患として,甲状腺眼症があげられる.原因は異なるものの,ともに炎症性疾患であるため,臨床症状が類似する.そのため,自己抗体の評価ならびに甲状腺眼症で特異的にみられる,Graefe徴候を認めるかどうかも重要な鑑別となる.腫瘤性炎症との鑑別で重要となるのがmucosa-associatedlymphoidtissue(MALT)リンパ腫である.ステ図4特発性眼窩炎症図5特発性眼窩筋炎―眼窩部CT全外眼筋の肥厚を認める.ロイドの投与による診断的治療については,特発性眼窩炎症とMALTリンパ腫の奏効率に差がなく,鑑別には利用できない.そのため,必要があれば積極的に生検を検討する.眼窩先端部の病変においては,眼窩真菌症との鑑別が重要となる.眼窩真菌症は副鼻腔よりの浸潤であるため,副鼻腔の画像評価が重要になるとともに,糖尿病,易感染状態などの背景があることが多く,診断に注意する.また,難治性の場合や副鼻腔内に変化を認める際にはWegener肉芽腫症4)などのANCA関連性疾患に注意しなければならない.特発性眼窩炎症はさまざまな原因や病態で発症する.その背景として自己免疫や免疫不均衡が関与するものと考えられるが,不明な点もいまだ多い.治療の中心はステロイドとなり,多くの症例で早期に改善する.しかし,症例によっては抵抗性で,免疫抑制剤も併用される.特発性眼窩炎症とされている疾患群のなかに,多様な病態があるものと推測される.3.IgG4関連病変(図6,7)近年,特発性眼窩炎症の一部の症例で免疫グロブリン(Ig)G4陽性の形質細胞が浸潤していることが知られる5)ようになり,眼付属器リンパ増殖性病変における新たな話題となっている.IgG4関連疾患は,自己免疫性膵臓炎の患者で血清IgG4陽性形質細胞が浸潤していることが報告され,硬化性唾液腺炎や後腹膜線維症などが合併することがわかってきた.眼窩領域においては慢性硬化性涙腺炎,Mikulicz病との関連が指摘されている.本疾患の眼症状はステロイドによく反応するとされるが,全身臓器の合併症をもつことがあり,全身精査を行わなければならない.両側の涙腺腫脹を認めた場合には,本疾患も念頭に置き,IgG測定とともに生検によるIgG4染色も検討する必要がある.4.眼窩蜂巣炎眼窩蜂巣炎は急性涙.炎,急性涙腺炎,副鼻腔炎,麦粒腫などの細菌性炎症が眼窩内に波及するものや敗血症による眼窩内への転移,外傷による異物感染によるものがある.培養の提出も必須であるが,結果が出てから抗生物質(55)あたらしい眼科Vol.28,No.11,20111567 図6IgG4関連Mikulicz病―両側涙腺腫大(矢印)図8眼窩蜂窩織炎結膜充血,結膜浮腫を認める.の投与を行うのでは遅い.画像診断を行い,培養提出を行った後,すぐに抗生物質の投与を始める.ここで外傷性眼窩蜂巣炎の一例を紹介する(図8,9).70代男性,畑仕事中に転倒し,左眼窩部内上縁を受傷した.当日,近医を受診され,受傷部の処置のみを行われ帰宅されたが,翌日より激しい充血,眼痛を生じ,当院へ紹介となった.眼窩部CTで眼窩先端部近傍に異物所見を認め,当日に異物(竹)除去術を行った.皮膚創が小さく,軽度であったとしても眼窩内への異物刺入は十分に注意しなければならない.5.眼窩真菌症(図10)眼窩真菌症は稀な疾患であるが重症化しやすく,失明1568あたらしい眼科Vol.28,No.11,2011図7IgG4関連Mikulicz病―眼窩部MRI図9外傷性眼窩蜂巣炎の一例―眼窩部CT矢印部に異物(竹)を認めた.のみならず死に至る重要な疾患である.眼窩先端部病変において,ステロイドの投与を検討する際には必ず真菌症の所見がみられないか確認し,除外しなければならない.眼窩真菌症では,前部に炎症がある場合に眼瞼の発赤,腫脹,結膜充血が認められる.深部にみられる際には眼球運動障害,眼球突出を認め,視神経障害を生じると視力低下を呈する.眼窩真菌症は,外傷以外では糖尿病や免疫不全状態の患者に起こり,また,慢性副鼻腔炎の既往や鼻・副鼻腔の手術歴が重要となる.原因菌はアスペルギルスが最も多く,接合菌,カンジダ,クリプトコックスなどの報告がみられる.臨床症状から眼窩真菌症が疑わしい場合は,早期に眼窩部CT,MRIを撮影し,血清学的検査を行うとともに可能であれば病巣より(56) 図10左眼窩アスペルギルス症の一例―造影頭部CT眼窩内側壁より肉芽腫性病変を認めた(矢印).の培養,病理評価を行う.その場合には鼻腔からのアプローチを耳鼻科に依頼することも必要となる.治療に関しては,抗真菌薬の全身投与とともにアムホテリシンB(AMPH-B)の球後注射も有効との報告がある5).抗真菌薬の使用においては深在性真菌症のガイドライン作成委員会よりのガイドライン2007が参考になる.浸潤性の強いアスペルギローマの場合には,眼窩内容除去術まで必要とし,徹底した病巣掻爬を行わなければならない.6.涙腺炎涙腺炎は感染性のものと非感染性のものに大別できる.臨床所見としては上眼瞼外側の腫脹や発赤,球結膜の上耳側から円蓋部にかけての充血がみられる.感染性の原因になるものとして,細菌(黄色ブドウ球菌,肺炎球菌,梅毒)やウイルス(ムンプスウイルス,帯状疱疹ウイルス)などがあげられる.細菌性感染の場合,涙腺からの排出導管を介した逆行性感染と敗血症に合併するものがある.非感染性のものにはサルコイドーシス,Mikulicz症候群などがあげられる.まず,感染性による涙腺炎か否かを考え,眼脂培養を提出する.感染性涙腺炎においては抗菌薬,抗ウイルス薬を使用する.非感染性涙腺炎に対してはステロイド投与を行うが,鑑別が困難な際にはまず抗菌薬の投与を行い反応不良の場合,生検を検討する.おわりに眼窩内炎症による「目が赤い」症例は,ときに急激な進行を認め,重症化するものがある.症状,眼科的検査により鑑別を行い,必要な検査を迅速に計画し,治療へと進む必要がある.さまざまな原因を常に頭に入れ,治療に対し,抵抗性であった際にはもう一度,診断を検討し直すことも重要となる.文献1)中山智彦,若倉雅登,石川哲:今日の日本人の眼球突出度について.臨眼46:1031-1035,19922)長内一,大塚賢二,中村靖ほか:甲状腺眼症242例における臨床的血液学的検討.あたらしい眼科15:10431047,19983)MouritsMP,KoornneefL,WiersingaWFetal:ClinicalcriteriafortheassessmentofdiseaseactivityinGraves’ophthalmology:anovelapproach.BrJOphthalmol73:639-644,19894)TarabishyAB,SchulteM,PapaliodisGNetal:Wegener’sgranulomatosis:clinicalmanifestations,differentialdiagnosis,andmanagementofocularandsystemicdisease.SurvOphthalmol55:429-444,20105)CheukW,YuanHK,ChanJK:Chronicsclerosingdacryoadenitis:PartofthespectrumofIgG4-relatedsclerosingdisease?AmJSurgPathol31:643-645,20076)WakabayashiT,OdaH,KinoshitaNetal:RetrobulbaramphotericinBinjectionsfortreatmentofinvasivesinoorbitalAspergillosis.JpnJOphthalmol51:309-311,2007(57)あたらしい眼科Vol.28,No.11,20111569

循環障害

2011年11月30日 水曜日

特集●目が赤いあたらしい眼科28(11):1559.1563,2011特集●目が赤いあたらしい眼科28(11):1559.1563,2011VascularDisorders児玉俊夫*はじめに結膜は結膜血管の拡張あるいは血流が増大すると充血が生じる.発症メカニズムに基づいてDuke-Elderは結膜の充血を能動的充血(activehyperaemia)と受動的充血(passivehyperaemia)に分類している1).能動的充血とは,結膜に作用する何らかの原因により結膜血管の血流が増大することによって生じる充血である.その原因として,Duke-Elderは異物による刺激,眼局所感染,アレルギー疾患など直接血管に作用して血管拡張をもたらす因子をあげている.一方,受動的充血は二次的に生じる充血で,その原因として①機械的な圧迫による静脈のうっ血と②血液自体の粘度が高くなる血液過粘稠度症候群があげられる(図1).これらの循環障害による充血は結膜充血と毛様充血が同時に発症しており,結膜の血管の怒張を伴っていることも多い.上記の分類を踏まえて結膜の循環障害による充血について解説したい.I機械的な圧迫による静脈のうっ血眼窩の血管系は内頸動脈が海綿静脈洞内を通って眼動脈などに分岐して各眼組織に血液を供給する.そして静脈系は上眼静脈と下眼静脈により海綿静脈洞に還流される.すなわち,眼窩の血流は海綿静脈洞の病変に左右されることになる.頸動脈海綿静脈洞瘻(CCF)は海綿静脈洞に内,外頸動脈のどちらかから動脈血が流入する疾患である.すなわち,本来低圧である海綿静脈洞に動脈血が流入して静受動的充血機械的な圧迫による血液過粘稠度症候群静脈のうっ血頸動脈海綿静脈洞瘻多発性骨髄腫眼窩先端部症候群マクログロブリン血症眼窩腫瘍Eisenmenger症候群図1結膜循環障害の原因脈圧が上昇する.そのために上眼静脈が逆流して還流障害を生じるために,CCFの三主徴である拍動性の眼球突出,眼窩部の血管雑音および眼球結膜の充血がみられる2).眼窩部の還流障害は結膜血管の怒張・蛇行のみならず,網膜血管の循環障害を発症する(図2).さらに,眼窩のうっ血は眼球内で渦静脈の逆流をもたらしてSchlemm管における流出抵抗が増大するために眼圧上昇をひき起こす.そのため強い結膜充血をみて緑内障発作と誤診されることがある.CCFはその原因により頭蓋底骨折に伴って瘻孔を生じる外傷性CCFと非外傷性である特発性CCFに分類される.三主徴が揃っていればCCFの診断は可能であるが,診断確定には画像診断が必要である.Magneticresonanceimaging(MRI)やMRangiography(MRA)で上眼静脈の拡張(図3)や海綿静脈洞が拡張している所見があれば確定診断となる.眼窩腫瘍や甲状腺眼症などの眼窩占拠性病変,特に眼窩先端部に腫瘤性病変が存在する場合には,眼窩静脈の*YoshioKodama:松山赤十字病院眼科〔別刷請求先〕児玉俊夫:〒790-0826松山市文京町1松山赤十字病院眼科0910-1810/11/\100/頁/JCOPY(47)1559 ab図2CCFの前眼部と眼底a:64歳,女性.右眼の急性緑内障発作として紹介された.初診時,右眼矯正視力は1.2,右眼眼圧は26mmHgで結膜血管の怒張を伴う強い充血を認めた.前房深度は正常で角膜浮腫および瞳孔散大は伴っていなかった.右眼の外転制限を認め,聴診により眼窩部の血管雑音を認めたために神経内科に紹介して画像検査が施行され,CCFと診断された.b:32歳,男性.交通事故により頭蓋底骨折を発症した.脳神経外科で精査の結果,外傷性CCFと診断された.左眼視力低下のために眼科を紹介され,結膜血管の怒張がみられ,眼底にも網膜血管の怒張,蛇行を認めた.ab図3CCFの画像a:64歳,女性のMRI(T1強調画像).上眼静脈の怒張がみられる(矢印).b:64歳,女性のMRA.右海綿静脈洞から右眼窩にかけて血流輝度が認められる(矢頭).うっ血により結膜充血だけでなく軽度の結膜浮腫を生じ占拠性病変では,ときに重症の結膜浮腫をきたすことがる(図4).本症例は有痛性の眼筋麻痺を生じ,MRIである(図5).その原因として,眼窩静脈瘤や血管腫が破眼窩先端部から眼窩先端部に至る腫瘤が認められ,さら裂して巨大な血腫を形成した場合には,眼窩静脈の還流にステロイド治療が奏効したことから臨床的にTolosa-がほとんどなくなるために結膜浮腫が顕著となる.しかHunt症候群と考えている.眼窩部のほとんどを占めるしその原疾患の治療に成功すれば結膜浮腫は速やかに消1560あたらしい眼科Vol.28,No.11,2011(48) a図4Tolosa.Hunt症候群の前眼部と画像a:61歳,女性.右眼窩部痛を伴う右眼瞼腫脹で紹介された.右眼結膜の軽度充血と浮腫を認め,上転障害を伴っていた.b:MRI.T1強調画像で内直筋と篩骨洞の間に腫瘤が認められ眼窩先端部に及んでいる(矢印).c:MRI.ガドリニウム造影検査で強い造影効果が認められる(矢頭).眼窩先端部に発生した偽腫瘍によるTolosa-Hunt症候群と考え,入院してプレドニゾロン60mgより漸減投与を行った.ステロイド投与後数日で眼窩部痛は消失し,治療後1カ月半で眼窩腫瘍は小さくなった.bc退する.II血液過粘稠度症候群血液過粘稠度症候群は多発性骨髄腫やマクログロブリン血症において異常産生されたグロブリン蛋白により血液の粘稠度が著しく亢進して血液の循環障害を生じる疾患群である.多発性骨髄腫は骨髄において腫瘍性形質細胞が増殖する疾患で,原発性マクログロブリン血症はリンパ球B細胞が形質様細胞まで分化した段階で腫瘍化したものであり,いずれも単クローン性の免疫異常グロブリンであるM蛋白が産生されている.血液過粘稠度症候群は血漿蛋白の異常な上昇だけではなく,白血病や真性赤血球増多症でも異常な血球数の増多により発症しうる.特殊な例としてEisenmenger症(49)候群(用語解説参照)に続発する血液過粘稠度症候群により著明な結膜充血をきたした症例を紹介する(図6).そのメカニズムとしてEisenmenger症候群では肺高血圧症により心室中隔欠損などのシャントを通して酸素化されていない血液が流入するために,動脈血の酸素飽和度は低下して全身性チアノーゼを生じる.その結果,代償性の赤血球増多症を発症して,同時に過粘稠度症候群を生じることから続発的に結膜充血を呈すると考えられる1,3)(図7).血液過粘稠度症候群では血液粘度の増大または循環速度の低下によりSludging現象(汚泥のごとく血液がどろどろ流れる状態)がみられる.今回は提示できないが,細隙灯顕微鏡で結膜血管をみると血管の中で赤血球が凝集して流れていく状態を観察することができる.血液のあたらしい眼科Vol.28,No.11,20111561 abcd図5眼窩血腫の術前,術後a:5歳,女児.眼外傷の既往はなく,半月前より急に右眼眼球突出が始まり,結膜浮腫が生じたために紹介されて入院となった.初診時の右眼視力は眼前手動弁で右眼眼球突出および結膜充血と浮腫が著明であり,右眼眼球運動は不能であった.b:術前のMRI.T1強調画像で右眼眼球後方に腫瘤病変を認めた.c:術中写真.腫瘍摘出を試みたところ内容が黒色の血液である眼窩血腫(矢印)が認められたため,血腫吸引を行った.d:術後の前眼部.術後3カ月で右眼眼球突出は改善し,結膜浮腫は消失した.眼窩出血の原因は不明だが,眼窩静脈瘤や血管腫からの自然出血と考えられた.図6Eisenmenger症候群の前眼部(近畿大学医学部堺病院眼科中尾雄三先生より提供)症例は54歳,女性.心カテーテル検査時の色素希釈法でR→Lシャント率は44%で逆シャントを形成していることが考えられ,Eisenmenger症候群と診断された.動脈血のガス分析を行うとPao2(動脈血酸素分圧):24.2Toor(正常値80.100Torr),Sato2(動脈血酸素飽和度):44%(94.99%)と著明に低下していた.血液検査では赤血球数:723×104(373.495×104),ヘマトクリット:68.1%(34.43%),ヘモグロビン:23.2g/dl(10.15g/dl),血小板数:6.9×104(13.7.37.8×104)と続発性赤血球増多症を合併していた.1562あたらしい眼科Vol.28,No.11,2011(50) 先天性心疾患肺高血圧症による左右シャントの逆転低酸素血症先天性心疾患肺高血圧症による左右シャントの逆転低酸素血症赤血球増多症過粘稠度症候群結膜充血図7Eisenmenger症候群における結膜充血過粘稠な状態が続くと網膜循環においては網膜静脈のソーセージ様拡張や網膜中心静脈閉塞症様の眼底変化を示す(図8).以上,循環障害によって発症する結膜充血はまれではあるが,その背後に重篤な全身疾患が潜んでいることがあるために眼局所のみにその原因を求めるのではなく,詳細な問診の聴取をもとに必要であれば血液検査や画像■用語解説■Eisenmenger症候群(アイゼンメンジャー症候群):心室中隔欠損,心房中隔欠損や動脈管開存など先天性心疾患では通常,左-右シャントにより動脈血が静脈側に流れ込むが,肺血流量が増加する状態が長期間にわたると肺血管床が閉塞して肺高血圧症を発症する.肺高血圧の持続により左-右シャントの減少,そして右左シャントの逆シャントが出現すると全身性チアノーゼを呈するEisenmenger症候群が発症する.治療は困難で肺動脈拡張薬の投与や在宅酸素療法が中心となり,原因である心疾患の手術は禁忌である.根治療法は心肺同時移植のみといわれている3,4).図8多発性骨髄腫の眼底71歳,男性.内科で多発性骨髄腫と診断され,左眼視力低下で紹介された.網膜静脈のソーセージ様拡張(矢印)・蛇行および網膜静脈閉塞症がみられた.診断を行って原疾患を明らかにする必要がある.謝辞:Eisenmenger症候群の貴重な症例をご提供いただいた近畿大学医学部堺病院眼科中尾雄三先生に感謝申し上げます.文献1)Duke-ElderS:ChapterII.Anomaliesofthecirculation.SystemofOphthalmology,Vol.8,Diseaseoftheoutereye.Part1Diseaseofconjunctivaandassociateddiseaseofthecornealepithelium(Duke-ElderSed),p9-46,HenryKimpton,London,19652)森和夫:海綿静脈洞.NeurolMedChir(Tokyo)19:757-769,19793)丹羽公一郎,立野滋:心疾患に伴う肺高血圧症(先天性心疾患,左心疾患に伴う肺高血圧症)特にEisenmenger症候群.呼吸器科16:199-206,20094)中村芳郎:3.続発性肺高血圧症.最新内科学大系39,心外膜疾患と肺性心,心膜病,心外傷,心身症,全身疾患に伴う心臓病(井村裕夫,尾形悦郎,高久史麿,垂井清一郎編),p259-267,中山書店,1991(51)あたらしい眼科Vol.28,No.11,20111563