0910-1810/11/\100/頁/JCOPY下の組織,病変の観察にも優れている.また,EDIがlinescanのみの撮影であるのに対し,rasterscan,cubescanが可能で,一定面積の走査ができるため比較的大きな病変であっても病変全体を見ることができたり,黄斑部以外の病変でも取り逃がしたりすることが少ない.従来のOCTと比べ白内障による影響も少ないとの報告もある.しかし,現在はまだ高侵達OCTは市販されておらず,筆者らもTopcon社から提供された試作機を用いている.この試作機はswept-sourceを使用していて,中心波長1,050nm,垂直方向の解像度は8μm,スキャンスピードは100,000A-scan/秒である.撮影方法は市販のSD-OCTと同様にlinescan,radialscan,rasterscan,cubescan(6×6mm,512×128A-scans)があり,走査長は最大12mm,またB-scan画像を最大5,096枚まで重ね合わせることによって,よりコントラストが高い画像を得ることも可能である.同時に眼底写真も撮影できるので,眼底上での正確な位置も把握可能である(図1).Cubescanで撮影した画像は従来のSD-OCTと同様に三次元画像や冠状断でも観察することが可能である.撮影は無散瞳下でも可能であるが,筆者らはより鮮明な画像を得るために散瞳下で行うことが多い.II正視,近視の脈絡膜脈絡膜は4層構造をなしていて内側からBruch膜,2つの脈絡膜実質層,上脈絡膜層となっている.強度近視はじめに加齢黄斑変性やポリープ状脈絡膜血管症,脈絡膜腫瘍などの脈絡膜に所見のある疾患では脈絡膜観察が必須であり,従来はインドシアニングリーン蛍光造影検査(ICGA)が用いられてきた.しかし,ICGAは結果が二次元的であること,定量性に欠けること,検査が侵襲的であることなどの欠点があった.光干渉断層計(OCT)は保険収載されたことにより,多くの施設で採用され今や網膜画像診断には欠かせない器械となっている.これまで,OCTで診断できる疾患のメインは網膜疾患や緑内障であったが,近年,脈絡膜の非侵襲的,定量的観察にも用いられるようになった.それが,市販されているspectral-domainOCT(SDOCT)を用いたEDI(enhanceddepthimaging)や従来のOCTよりも長波長の光源を用いた高侵達OCTである.I高侵達OCTとはEDIが従来のSD-OCTを用い,上下反転した画像を得ることで脈絡膜を観察するのに対し,高侵達OCTは従来のOCTと比較して波長の長い光源(1,000?1,060nm)を用いることで組織への侵達度を高め脈絡膜を観察する.技術的な面からほとんどがswept-source方式を採用している.従来の波長840nmの光源を用いるtime-domainOCT(TD-OCT)やSD-OCTと比較して,組織への侵達度が高く脈絡膜だけでなく,網膜色素上皮(19)1239*KaoriSayanagi:淀川キリスト教病院眼科〔別刷請求先〕佐柳香織:〒533-0032大阪市東淀川区淡路2-9-26淀川キリスト教病院眼科特集●黄斑疾患の病態解明に迫る光干渉断層計あたらしい眼科28(9):1239?1242,2011近視,正常眼の脈絡膜OCT所見ChoroidalImagesObtainedbyHigh-PenetrationOCTinNormalandMyopicEyes佐柳香織*1240あたらしい眼科Vol.28,No.9,2011(20)に観察ができるようになった.そのため脈絡膜厚を各機器に内蔵されたキャリパーを用いて正確に測定できるようになり,正常眼だけでなく,さまざまな疾患の脈絡膜厚が報告されるようになった.脈絡膜の構造に関しても今後は報告されると思われるが,現状では解像度が従来のOCTと比較して低いことや,血管走行のバリエーションが多く多数例の観察が必要であるためか,まだ報告はほとんどない.本稿でも以下は脈絡膜厚を中心に述べる.III正視,近視の脈絡膜厚これまで正視眼の脈絡膜厚は,組織学的検討により170?220μmとされてきた.Ramrattanらは生下時に200μm,90歳で80μmであるとしている2).しかし,それらの検討は摘出眼でなされていること,組織の切片作製の際に組織が収縮する可能性があることから生体眼眼では病理所見上,脈絡膜血管の閉塞や消失,線維組織への置換が生じ,正視眼と比較して脈絡膜が菲薄化するといわれている.動物モデルでは脈絡膜毛細血管板の密度や血管径が低下し,種々の造影検査では脈絡膜循環の低下も証明されている.従来のOCTでも強度近視で網脈絡膜萎縮が高度な症例では脈絡膜を鮮明に描出でき,脈絡膜の菲薄化も観察できた.Ikunoらは近視性脈絡膜新生血管の患眼と健眼での脈絡膜をSD-OCTを用いた通常の撮影方法で得られた画像で比較し,患眼の黄斑下と黄斑1.5mm下方の脈絡膜厚は健眼と比較して優位に薄いことを報告している1).しかし,正視眼や強度近視でも萎縮がないあるいは軽度な症例では,従来のOCTでは脈絡膜のごく浅い部分までしか観察できない.EDIや高侵達OCTの出現により,そのような症例においても強膜脈絡膜境界まで鮮明図1撮影した結果画面本試作機はTopcon社製の市販SD-OCTとほぼ同じ仕様である.左にHP-OCT,右に眼底写真が表示される.症例は37歳,正視眼である.(21)あたらしい眼科Vol.28,No.9,20111241と報告している9).最近では基準点での測定だけでなく,網膜厚と同様に脈絡膜厚のthicknessmapの作成も可能になってきた.筆者らも初代の高侵達OCTならびに試作ソフトウェアを用いて正視,近視だけでなく,さまざまな疾患でETDRS(EarlyTreatmentDiabeticRetinopathyStudy)型の脈絡膜厚マップを作成した.その結果でもやはり鼻側脈絡膜は耳側よりも薄くなっていた.筆者らのグループでは高侵達OCT(波長1,060nm)を用いてでの正確な脈絡膜厚かどうか疑問であった.OCTを用いた脈絡膜厚は網膜色素上皮から強膜脈絡膜境界までの長さを指し,通常は機器に内蔵されたキャリパーを用いてマニュアルで測定する(図2).最初にOCTで測定した正視眼の脈絡膜厚を報告したのはSpaideらで,EDIを用い黄斑下脈絡膜厚を測定,その厚さは287±76μmで年齢と負の相関にあると報告した3).ManjinathらはSD-OCTの新しいソフトウェアを用いて画像を反転させずに測定し,黄斑下脈絡膜厚は272±81μmで年齢と負の相関を示したと報告した4).高侵達OCTを用いた報告では,Ikunoらが1,060nmの波長を用いて測定し354±111μmで年齢と相関がある5),Esmaeelpourらが同じく1,060nmの波長で341±95μmで眼軸長,年齢,性別のいずれとも相関はなし6),Hirataらは同様に191.5±74.2μmで眼軸長と年齢と相関がある7),とそれぞれ報告している.近視眼ではFujiwaraらがEDIで測定し,厚さは93.2±62.5μmで年齢,等価球面値,近視性脈絡膜新生血管の既往の有無と負の相関を示していると報告した8).高侵達OCTではDrexlerらのグループが1,060nmの波長で213±58μmで眼軸長と負の相関を示すと報告している(遠視眼は358±96μm)6).どちらの報告でも近視眼の脈絡膜厚は正視眼と比較し有意に薄かった.部位別の脈絡膜厚は,いずれの報告でも正視,近視にかかわらず耳側が厚く鼻側が薄いとされている.Ikunoらは上下の比較もしており,下側が有意に上側より薄い図2脈絡膜厚測定脈絡膜厚は網膜色素上皮から強膜脈絡膜境界までと通常定義される.現在は器械に内蔵されたキャリパーを用いて測定することが多い.図3正視眼のHD?OCT像上が37歳(図1と同症例),下が78歳である.脈絡膜厚が下の症例では上の症例より薄くなっているのがわかる.網膜厚はほぼ同じである.図4近視眼のHD?OCT像上が18歳,下が54歳である.年齢が上がると脈絡膜厚が薄くなるのがわかる.また図2の正視と比較しても脈絡膜が薄いのがわかる.1242あたらしい眼科Vol.28,No.9,2011(22)らに高まればICGAの代わりとして非侵襲的な脈絡膜循環の評価ができるかもしれない.謝辞:最後に初代高侵達OCT(筑波モデル)ならびに三次元構築ソフトをご提供いただいた筑波大学安野嘉晃先生,第二代高侵達OCT(トプコンモデル)をご提供いただいた株式会社トプコン,症例提供と今回の執筆にあたりご指導下さった生野恭司先生,OCTを撮影して下さった城友香理先生に心から感謝いたします.文献1)IkunoY,JoY,HamasakiT,TanoY:Ocularriskfactorsforchoroidalneovascularizationinpathologicmyopia.InvestOphthalmolVisSci51:3721-3725,20102)RamrattanRS,vanderSchaftTL,MooyCMetal:MorphometricanalisisofBruch’smembrane,thechoriocapillaris,andthechoroidinaging.InvestOphthalmolVisSci35:2857-2864,19943)MargolisR,SpaideRF:Apilotstudyofenhanceddepthimagingopticalcoherencetomographyofthechoroidinnormaleyes.AmJOphthalmol147:811-815,20094)ManjunathV,TahaM,FujimotoJGetal:ChoroidalthicknessinnormaleyesmeasuredusingCirrusHDopticalcoherencetomography.AmJOphthalmol150:325-329,20105)IkunoY,KawaguchiK,NouchiTetal:ChoroidalthicknessinhealthyJapanesesubjects.InvestOphthalmolVisSci51:2173-2176,20106)EsmaeelpourM,PovazayB,HermannBetal:Threedimensional1,060nmOCT:Choroidalthicknessmapsinnormalsandimprovedposteriorsegmentvisualizationincatarastpatients.InvestOphthalmolVisSci,inpress7)HirataM,TsujikawaA,MatsumotoAetal:Macularchoroidalthicknessandvolumeinnormalsubjectsmeasuredbyswept-sourceopticalcoherencetomography.InvestOphthalmolVisSci,inpress8)FujiwaraT,ImamuraY,MargolisRetal:Enhanceddepthimagingopticalcoherencetomographyofthechoroidinhighlymyopiceyes.AmJOphthalmol148:445-450,20099)IkunoY,TanoY:Retinalandchoroidalbiometryinhighlymyopiceyeswithspectral-domainopticalcoherencetomography.InvestOphthalmolVisSci50:3876-3880,200910)IkunoY,MarukoI,YasunoYetal:Reproducibilityofretinalandchoroidalthicknessmeasurementsinenganceddepthimagingandhigh-penetrationopticalcoherencetomography.InvestOphthalmolVisSci52:5536-5540,2011強度近視6眼(平均等価球面値?9.6±2.3D,平均眼軸長27.4±1.3mm)と正視10眼のETDRS脈絡膜厚マップを作成した.作成は高侵達OCTのrasterscanで撮影後,網膜色素上皮層と脈絡膜強膜境界と思われるlineをマニュアルでトレースし,試作ソフトウェアを用いてマップを作成した.強度近視眼の中心6mm円内の脈絡膜体積は6.3±2.3mm3であり,正視眼8.3±2.2mm3より有意に小さいものであった.中心窩脈絡膜厚は286±120μm.3mm円鼻側は268±120μm,上側が297±112μm,耳側が294±113μm,下側が295±116μmで耳側と上側は正視眼と比較して有意に短いものであった.6mm円鼻側は229±99μm,上側は307±110μm,耳側は296±103μm,下側は298±107μmで,耳側,鼻側,下側は有意に正視眼より短いものであった.この試みは他のいくつかのグループでもなされている6,7).脈絡膜厚測定の問題点として,網膜厚測定と異なり,網膜色素上皮から強膜脈絡膜境界までをマニュアルでトレースする必要があるため,正確性,再現性に欠ける可能性があった.しかしIkunoらはマニュアルによる測定であっても,EDI,高侵達OCTのいずれも高い再現性を示すことを報告し,またEDIと高侵達OCTで測定した脈絡膜厚に高い相関関係があることも示している10).この報告から,おそらくマニュアル測定であっても正確性,再現性に問題がないことが推察されるが,今後,自動測定が可能になればさらに便利で有用になると思われる.おわりに脈絡膜厚の意義に関してはいまだ不明な点が多い.個体によるバリエーションが大きいこと,厚さを変化させる要因が多岐にわたると考えられることのためである.しかし,加齢黄斑変性や中心性漿液性脈絡網膜症,原田病などいくつかの疾患と関連があること,また治療によって脈絡膜厚が変化することが報告されていることから,今後は疾患のリスクファクターや治療のバロメーターとして使用できる可能性がある.特に脈絡膜厚マップの作成に時間がかからなくなれば適応疾患も広がると考えられる.また,冠状断像に関しても,今後解像度がさ