0910-1810/10/\100/頁/JCOPYこのような現状を踏まえながら,配合剤の適正な使用法について考えてみた.II配合剤の種類(配合点眼液製品一覧)海外ではすでに6種類の配合剤が発売されており(表1),日本では2010年にはじめて3種類の配合剤が導入された.いずれも2種類の薬剤の配合であり,2種類の薬効が1剤分の点眼回数で得られるという点を特徴としており,緑内障に対するこれまでの治療のあり方が大きく変わることが予想される.薬剤配合に関しては製剤上の問題もあり,すべての組み合わせが可能なわけではない.現在,緑内障の薬物治療においては,PG関連薬,b遮断薬,炭酸脱水酵素阻I緑内障薬物治療の現状緑内障の治療薬はこの数年で3種類のプロスタグランジン(PG)関連薬が使用できるようになった.加えて2010年はPG関連薬/b遮断薬,b遮断薬/炭酸脱水酵素阻害薬の配合剤3種類が承認され,治療の選択肢が増加した.一方,選択肢が増えたことで,単剤治療からの薬剤切り替えや多剤併用患者の場合,治療の選択がより複雑になったとの指摘がある.緑内障の薬物治療における問題点としては,服薬コンプライアンスが医療従事者が考えているより悪い点,点眼が長期にわたるため,薬剤や防腐剤のオキュラーサーフェスへの配慮を要する点などが指摘されている.(35)1357*MakotoIshikawa&TakeshiYoshitomi:秋田大学大学院医学系研究科医学専攻病態制御医学系眼科学講座〔別刷請求先〕石川誠:〒010-8543秋田市本道1-1-1秋田大学大学院医学系研究科医学専攻病態制御医学系眼科学講座特集●眼科薬物療法の新たな展開あたらしい眼科27(10):1357.1361,2010緑内障治療薬配合剤CombinationTopicalGlaucomaMedications石川誠*吉冨健志*表1配合点眼薬一覧製品名開発社主剤名点眼回数承認年PG関連薬/b遮断薬配合剤XalcomRXalacomRPfizerLatanoprost0.005%Timolol0.5%1日1回2001.8海外2010.4本邦DuotravRAlconTravoprost0.004%Timolol0.5%1日1回2006.4海外2010.4本邦GanfortRAllerganBimatoprost0.03%Timolol0.5%1日1回2006.5海外炭酸脱水酵素阻害薬/b遮断薬配合剤CosoptRMerkDorzolamide2%Timolol0.5%1日2回1999.8海外2010.4本邦AzargaRAlconBrinzolamide1%Timolol0.5%1日2回2008.12海外a2作動薬/b遮断薬配合剤CombiganRAllerganBrimonidine0.2%Timolol0.5%1日2回2007.1海外1358あたらしい眼科Vol.27,No.10,2010(36)には2剤を併用するしかなく,点眼回数も1日2~3回必要であった.b遮断薬と炭酸脱水酵素阻害薬を併用した場合には,単眼回数は3~5回に増加した.しかし配合剤を使用すると,PG関連薬とb遮断薬の薬効は1日1回点眼で,b遮断薬と炭酸脱水酵素阻害薬の薬効は1日2回の点眼で得ることができるようになる(図3).点眼回数が増えると負担を感じる患者が多いので,配合剤の使用によって点眼回数が減ると患者の利便性が増すと考えられる.2.アドヒアランスの向上緑内障の薬物治療は,患者が継続して点眼を行うことが前提条件である.ところが,点眼行動を記録できる器具を用いて患者コンプライアンスを調べた報告では,1日1回の単剤点眼の場合でも,実際に点眼回数が守られていたのは約7割であった1).まして併用治療においては,さらに多くの患者が支持された点眼を遵守できていないと考えるのが自然であろう.最近はOCT(光干渉断層計)をはじめとする検査機器の精度が上がり,わずかな視神経乳頭の異常や視野障害の進行も鋭敏に検出することが可能となった.それに伴い,追加される点眼薬も増加していく傾向にある.患者にとっては,真面目に点眼していても処方される点眼薬の種類が次第に増えて害薬の3者の組み合わせが比較的多く使われている(図1).このうちPG関連薬と炭酸脱水酵素阻害薬の組み合わせは,製剤上の問題から作られていない(図2).III配合剤の利点1.薬剤数と点眼数の軽減配合剤による一番の利点は,2種類の薬効がより少ない点眼回数で得られるため,利便性が高い点である.これまでPG関連薬とb遮断薬の2種類の薬効を得るためb遮断薬a1遮断薬ab遮断薬a2刺激薬PG関連薬エピネフリンピロカルピンCAI図1併用効果が最も期待できる緑内障治療薬の組み合わせ現在,緑内障の薬物治療においては,眼圧下降機序が異なるPG関連薬,b遮断薬,炭酸脱水酵素阻害薬の3者の組み合わせがよく使われる.3回b+PG1回配合剤1点眼回数5回■:配合剤■:CAI■:PG■:bb+CAI2回配合剤26543210図32剤併用と配合剤単剤の点眼数配合剤による一番の利点は,薬効を得るための点眼回数が減少する点である.これまでPG関連薬とb遮断薬の2剤を併用すると点眼回数は最大1日3回,b遮断薬と炭酸脱水酵素阻害薬を併用すると最大5回であった.しかし配合剤を使用すると,PG関連薬とb遮断薬の薬効は1日1回点眼で,b遮断薬と炭酸脱水酵素阻害薬の薬効は1日2回の点眼で得ることができb遮断薬る.a1遮断薬ab遮断薬a2刺激薬エピネフリンCAIピロカルピンCosoptRAzargaRCombiganRXalacomRDuotravRGanfortRPG関連薬図2実際の配合剤の組み合わせ実際の配合剤の組み合わせは,b遮断薬とPG関連薬(XalacomR,DuotravR,GanfortR),b遮断薬と炭酸脱水酵素阻害薬(CosoptR,AzargaR),およびPG関連薬とa2刺激薬(CombiganR)の3種類,6剤である.製剤上の問題から,眼圧下降作用の強いPG関連薬と炭酸脱水酵素阻害薬の組み合わせは作られていない.(37)あたらしい眼科Vol.27,No.10,20101359上皮障害の出現頻度が高くなる.配合剤使用による点眼数の減少は,防腐剤への曝露の減少に直結する.眼表面が防腐剤に曝露する機会が少なくなれば,角結膜上皮障害も軽減すると考えられる.現在わが国で発売されている配合剤3種類中すべてが,b遮断薬を含有している.b遮断薬は角膜知覚を低下させ反射性の涙液分泌を低下させるため,角結膜障害を合併しやすくなることが知られている.b遮断薬のように角膜障害性がある薬物の場合,点眼液中にBACなどの防腐剤が加われば角結膜障害の危険性はさらに上昇することになる.ところが,わが国で発売されている3種類の配合剤のうち,ラタノプロスト/チモロール配合点眼液とドルゾラミド/チモロール配合点眼液はBACを含有している.したがって,長期で使用する場合,オキュラーサーフェスへの影響について十分な配慮が必要である.これら配合剤に薬剤を併用する場合も,BAC非含有製剤,あるいは安全性の高い防腐剤を含有する製剤を選択するなど,少しでも障害性を減らす方向で考える必要がある.トラボプロスト/チモロール配合点眼液は角膜への影響が少ない塩化ポリドロニウムを防腐剤として使用しているが,長期にわたる臨床データがないため今後のオキュラーサーフェスへの影響に注目したい.IV配合剤の課題1.眼圧下降効果合剤を合剤に含まれている成分の単剤と比較した試験では,いずれも合剤で単剤よりも優れた眼圧下降効果が得られている.また,合剤を合剤に含まれている成分の単剤を併用した場合と比較すると,ほぼ同等の眼圧下降効果が得られている.たとえばドルゾラミド/チモロール配合点眼液の場合,点眼回数は1日2回だが,単剤ではドルゾラミド1日3回,チモロール1日2回であり,配合剤の場合はドルゾラミドの点眼回数が減ることになる.ドルゾラミドの点眼回数減少によって眼圧下降効果が減弱することが懸念されたが,配合剤と単剤併用の眼圧下降効果の差はわずか0.4mmHgであり,両者の眼圧下降効果に差はなかった4).ただし,単剤併用治療から配合剤の単剤治療に切り替えた場合,緑内障治療薬に対する反応には個人差があるため,一定期間は短い間隔いくという状況になる.一生点眼を続けるどころか,治療に対するモチベーションそのものが低下し,最終的に脱落することも考えられる.患者自身が病態を理解し積極的に治療に参加する「アドヒアランス」という概念からも,モチベーションの低下は大きな問題である.点眼回数が増えるとアドヒアランスが悪化するという報告もあり,薬剤数と点眼数を軽減できる配合剤はアドヒアランスの向上に有効であると考えられる.治療効果には,点眼薬のもつ薬理学的効果だけでなく患者のアドヒアランスも関わってくる.アドヒアランスを良好に保てば,結果としてさらなる眼圧下降効果も期待される.その意味で,配合剤への期待は大きい.緑内障の病状を把握するうえでは1剤ずつ薬剤を追加し薬効を確認していく姿勢が重要であることはいうまでもないが,患者の利便性やアドヒアランスを考慮すれば配合剤を処方する機会は今後増加すると予想される.3.洗い流し効果の回避同じ時間帯に2種類の点眼薬を点眼する場合,1剤目と2剤目は5分以上の間隔をあけて点眼するのが望ましい.もし間隔を5分間空けないで2剤目を点眼すれば1剤目を洗い流していることになり(洗い流し効果),薬効の低下が懸念される2).間隔が30秒間なら約45%が,2分間なら約15%が洗い流される.しかし,配合剤を使用すれば,このような洗い流しの問題は回避できることになる.年単位の長い時間経過でみた場合,洗い流しのような一見小さな問題が治療効果の差を生み出す可能性がある.4.防腐剤の曝露量の軽減とオキュラーサーフェスへの影響緑内障点眼薬の副作用の一つに,オキュラーサーフェスへの影響がある.PG関連薬のみの単独投与の場合でも,34%にドライアイ症状が出現するという報告がある3).原因の一つとして,点眼液中に含まれる防腐剤,特に塩化ベンザルコニウム(BAC)の影響があげられる.BAC非含有性の緑内障点眼薬を使用すると,角結膜上皮障害が減少するとの報告もある.併用治療は単剤治療と比較して角結膜がBACに曝露する機会も増加し,1360あたらしい眼科Vol.27,No.10,2010(38)V日常臨床での配合剤の使い方1.配合剤への切り替えのタイミング緑内障診療ガイドラインには,「原則として単剤での治療を優先する」と記載されている.現在,単剤治療の主流はPG関連薬で,目標眼圧に達しない場合は他のPG関連薬への切り替え,あるいはb遮断薬や炭酸脱水酵素阻害薬を追加することが一般的である.ここで新たに配合剤という治療選択が加わると,PG関連薬単剤で効果がない場合,b遮断薬や炭酸脱水酵素阻害薬を追加してアドヒアランスを低下させるより,配合剤単剤に切り替えるという場合が多くでてくると予想される(図4).また,視野障害の進行速度が速く,他のPG関連薬に切り替えて様子をみる時間の余裕がない場合も,配合剤単剤への切り替えが優先される可能性があると考えられる.その場合,具体的には,b遮断薬とPG関連薬の配合剤が選択されるであろう.ただし,ここで注意すべきは,PG関連薬の一つであるビマトプロストはラタノプロスト/チモロールマレイン酸塩配合点眼液と比較して眼圧下降効果が同等であるという報告がある点である5).ビマトプロストにもノン・レスポンダーが存在すると考えられすべての患者に有効とは限らないが,視野で有効性を確認する必要があると思われる.2.点眼時間PG関連薬とb遮断薬の配合剤はいずれも1日1回点眼であるが,点眼時間帯は朝と夜のいずれが効果的か,副作用の発現も考慮したうえでの検討が必要である.眼圧下降効果については,夜間はb受容体の活性が低下し房水量が減少するため,b遮断薬を夜点眼しても効果はないとされている.したがって,たとえばPG関連薬を夜1回,b遮断薬を朝夜2回点眼している場合,配合剤に切り替えて朝1回点眼したとすれば,b遮断薬の点眼回数が2回から1回に減少したとしても眼圧下降効果は変わらない可能性がある.しかし,ラタノプロスト/チモロール配合点眼液の場合,朝点眼するよりも夜点眼したほうが効果的であるとの報告もある.一方,トラボプロスト/チモロール配合点眼液については,朝と夜で眼圧下降効果に統計学的有意差がなかったとの報告がある.したがって,b遮断薬を含む配合剤の点眼時間については今後検討の余地がある.3.b遮断薬の全身的作用b遮断薬の循環器系副作用は,心機能が抑制され,血圧や脈拍が低下することであり,不整脈,徐脈,心不全では処方に注意を要する.特に注意するのは呼吸器系の副作用であり,喘息発作を誘発すると生命に関わる場合もある.夜間にb遮断薬を含む配合剤を点眼し喘息発作を誘発した場合,どうしても昼間に比べて対応が遅れがちになる.したがって副作用の面から考えると,b遮断薬を含む配合剤は朝点眼したほうが安全という考えが成り立つ.眼循環の面からも,夜間にb遮断薬を点眼すると眼灌流圧が低下して視野障害の進行に結びつく可能性を考えれば,朝点眼が望ましい.配合剤の登場で,b遮断薬を投与される患者数は増加すると予想される.処方する医師は配合剤にb遮断薬が含まれていることを認識して,副作用に対する配慮を十分に行い,安易な処方を避けなければならないと考える.PG単剤投与PG剤変更配合剤+a(PG+b+CAI)目標眼圧未達目標眼圧達成配合剤薬剤継続図4配合剤の使い方現在,単剤治療の主流はPG関連薬である.これまでは目標眼圧に達しない場合,他のPG関連薬へ切り替えて単剤治療を続けるか,あるいはb遮断薬や炭酸脱水酵素阻害薬を追加し併用治療を開始していた.今後はPG関連薬単剤で効果がない場合まず配合剤単剤に切り替え,さらに眼圧下降が必要な場合は薬剤を追加してPG関連薬,b遮断薬,炭酸脱水酵素阻害薬の組み合わせにもっていく場合が多くなると予想される.(39)あたらしい眼科Vol.27,No.10,20101361り替えは躊躇せざるをえない.このように,配合剤が加わったことで利便性は増したが,薬剤の選択はより複雑になった面はある.現段階では,配合剤を第一選択薬とするか第二選択薬とするか,不明な点はある.しかし,配合剤の登場により新たな治療薬の選択肢が増え,アドヒアランスも向上すると考えられる.文献1)OkekeCO,QuigleyHA,JampelHDetal:Interventionsimprovepooradherencewithoncedailyglaucomamedicationsinelectronicallymonitoredpatients.Ophthalmology116:191-199,20092)ChraiSS,MakoidMC,EriksenSPetal:Dropsizeandinitialdosingfrequencyproblemsoftopicallyappliedophthalmicdrugs.JPharmSci63:333-338,19743)HenryJC,PeaceJH,StewartJAetal:Efficacy,safety,andimprovedtolerabilityoftravoprostBAK-freeophthalmicsolutioncomparedwithpriorprostaglandintherapy.ClinOphthalmol2:613-621,20084)KonstasAG,MikropoulosD,HaidichABetal:Secondlinetherapywithdorzolamide/timololorlatanoprost/timololfixedcombinationversusaddingdorzolamide/timololfixedcombinationtolatanoprostmonotherapy.BrJOphthalmol92:1498-1502,20085)RossettiL,KarabatsasCH,TopouzisFetal:Comparisonoftheeffectesofbimatoprostandafixedcombinationoflatanoprostandtimololoncircadianintraocularpressure.Ophthalmology114:2244-2251,2007障害の進行例や眼圧コントロール不良例でも,ビマトプロストへの切り替えを考慮しても良い場合もあると考えられる.Konstasら(2008)は,ラタノプロスト単剤では効果不十分であった緑内障患者を対象に,ドルゾラミド/チモロール配合剤またはラタノプロスト/チモロール配合剤への切り替え,あるいはラタノプロストへのドルゾラミド/チモロール配合剤の追加を行って眼圧下降効果を前向きに検討した.その結果,ラタノプロスト単剤と比較して,ドルゾラミド/チモロール配合剤またはラタノプロスト/チモロール配合剤は有意に眼圧を下降させ,さらにラタノプロストへのドルゾラミド/チモロール配合剤の追加は最も眼圧を下降させた.ラタノプロスト,ドルゾラミド,チモロールはそれぞれ眼圧下降機序が異なり,これら3剤の組み合わせは眼圧を効果的に下降させると考えられる.配合剤に切り替えて十分な眼圧下降が得られなかった場合は,早めにPG関連薬,b遮断薬,炭酸脱水酵素阻害薬の3者の組み合わせにもっていくことも選択肢の一つである.2.配合剤の使用の注意点と今後の展望視野障害が進行し眼圧コントロールが不良な例では,配合剤への安易な切り替えには懸念がある.多剤併用と同等の眼圧下降効果が期待できなければ,配合剤への切