‘記事’ カテゴリーのアーカイブ

眼瞼・結膜:マイボーム腺梗塞

2019年5月31日 金曜日

眼瞼・結膜セミナー監修/稲富勉・小幡博人小幡博人50.マイボーム腺梗塞埼玉医科大学総合医療センター眼科マイボーム腺梗塞とは,マイボーム腺の導管内で,脂質,角化物,細菌などが固まったものである.マイボーム腺梗塞と内麦粒腫の鑑別がむずかしいことがあり,両者の病態はオーバーラップしていると考えられる.マイボーム腺梗塞の病理組織所見から,固まりは凝集物(concretion)であり,マイボーム腺梗塞の英語表記はmei-bomianglandinfarctionではなく,meibomianglandconcretionが適当であると考えられる.●マイボーム腺梗塞とはマイボーム腺梗塞とは,マイボーム腺分泌物の性状変化(固形化)や脱落上皮などにより導管が閉塞し,圧出されずに内容物が濃縮,固形化したものである1).マイボーム腺の走行と一致して透明なものや黄白色の沈着物として観察される(図1,2).通常は無症状であるが,大きいものでは異物感や美容目的から除去を希望され来院することがある.●マイボーム腺梗塞の病理図2の症例の固形物のヘマトキシリン・エオジン図1透明なマイボーム腺梗塞(21歳,女性)透明なものは脂質の固まりであると考えられる.図3マイボーム腺梗塞の病理組織像(図2の症例)a:HE染色では細胞成分はほとんどなく,主として角化物である.青い小さい点状物は球菌であると推測される.b:グラム染色を施行すると,グラム陽性球菌であることが判明した.(HE)染色標本を作製し観察すると,細胞成分はほとんどなく,主として角質であることがわかる2)(図3a).一部にヘマトキシリンに染まる球菌と考えられる所見もみられる.グラム染色を施行するとグラム陽性球菌であることがわかる(図3b).グラム染色を施行しても細菌がみられないこともあり,細菌の関与はあるものとないものがあると思われる.●マイボーム腺梗塞と内麦粒腫の鑑別マイボーム腺梗塞と内麦粒腫と鑑別がむずかしい例がある(図4).マイボーム腺梗塞の病理組織所見で角化と図2黄白色のマイボーム腺梗塞(42歳,男性)a:眼瞼縁に近い瞼結膜直下に白色の固形物がみられる.b:針による瞼結膜の切開と指による圧出によって固形物が摘出された.図4内麦粒腫かマイボーム腺梗塞か診断に迷う例(47歳,男性)a:二つのマイボーム腺の中に黄白色の固形物と瞼結膜の充血がみられる.b:綿棒で圧迫するとマイボーム腺開口部から固形物が出てきた.(95)あたらしい眼科Vol.36,No.5,20196650910-1810/19/\100/頁/JCOPY細菌の増殖細菌のリパーゼ↑遊離脂肪酸↑炎症↑脂質の組成変化瞼板内という導管上皮の過角化解剖学的特徴排出低下凝集物図5マイボーム腺梗塞の発症機序(仮説)マイボーム腺内で細菌が増殖すると,直接的な反応として炎症が起こるばかりではなく,細菌が産生するリパーゼによって生じた遊離脂肪酸による炎症で導管上皮の過角化を生じるのではないかと推測している.そして,角化物は分泌物の排出低下をきたし,瞼板という固い結合組織のなかで凝集物となるのではないかと推測される.細菌の存在がみられたことから,両者の病態はオーバーラップしていると考えられる.すなわち,炎症の程度,生体反応,治療などの結果,治癒してしまえば麦粒腫,なんらかの機序で内容物が残ったものがマイボーム腺梗塞ではないかと推測している.●マイボーム腺梗塞の発症機序マイボーム腺梗塞の発症機序は不明であり,推論になるが,マイボーム腺分泌物である脂質の性状変化,ブドウ球菌やPropionibacteriumacnesなどの細菌の増殖,マイボーム腺導管上皮の過角化などが原因と考えている(図5).マイボーム腺内で細菌が増殖すると,細菌に対する反応として炎症が起こるのはもちろん,細菌が産生するリパーゼ(脂質分解酵素)によって脂質が分解され,生じた遊離脂肪酸が炎症を惹起し,導管上皮の過角化を起こすのではないかと推測している.●マイボーム腺梗塞の英語表記梗塞の意味を広辞苑で調べると,「1.ふさがって通じないこと,2.動脈が血栓などのためにふさがり,血流が流れなくなって,その動脈の支配する細胞・組織が壊死に陥る病変.心筋梗塞・脳梗塞など」と書かれている.梗塞は英語でinfarctionだが,マイボーム腺梗塞の英語表記がmeibomianglandinfarctionかというと,いくら調べてもそういう病名はない.日本眼科学会の用語集(Web-2018年版)でも検索したが,マイボーム腺梗塞という用語はなかった.マイボーム腺梗塞は病理組織所見から凝集物と考えられ,マイボーム腺梗塞の英語表記はmeibomianglandconcretionが適当であると考えられる.文献1)福島敦樹,上野脩幸:マイボーム腺梗塞.眼科学(大鹿哲郎編),第2版,文光堂,p30,20112)小幡博人:Meibom腺梗塞と霰粒腫.いますぐ役立つ眼病理(石橋達朗編),眼科プラクティス8,文光堂,p41-43,2006☆☆☆666あたらしい眼科Vol.36,No.5,2019(96)

抗VEGF治療:加齢黄斑変性と自発蛍光

2019年5月31日 金曜日

●連載監修=安川力髙橋寛二64.加齢黄斑変性と自発蛍光菅野幸紀石龍鉄樹福島県立医科大学眼科学講座滲出型加齢黄斑変性(AMD)の治療経過中,黄斑浮腫や漿液性網膜.離の遷延による網膜色素上皮(RPE)機能低下や,抗CVEGF治療中のCRPE萎縮の進行の把握には眼底自発蛍光(FAF)が有用である.萎縮型CAMDでは地図状萎縮の範囲の把握や進行予測にCFAFを活用している.滲出型,萎縮型CAMDの治療経過におけるFAFの有用性について解説する.眼底自発蛍光眼底自発蛍光(fundusauto.uorescense:FAF)はおもに網膜色素上皮(retinalpigmentCepithelium:RPE)の機能を評価する検査法である.リポフスチンをはじめとした視細胞代謝産物が特定の波長の光に励起され蛍光を発することを利用し,黄斑部蛍光の変化からCRPEの機能低下や欠損をとらえることができる.一般的には,CabRPE機能が低下し蛍光物質が蓄積,沈着すると過蛍光になり,さらに病態が進みCRPE細胞が脱落すると低蛍光となる.臨床的に過蛍光を示すものとして,リポフスチンがCRPE内に蓄積するCStargardt病や黄斑部網膜下に蓄積するCBest病が有名である.両疾患ともに,疾患が進行し黄斑部萎縮に至ると低蛍光となる.中心性漿液性脈絡網膜症や加齢黄斑変性(age-relatedCmaculardegeneration:AMD)における漿液性網膜.離(serousCab図1加齢黄斑変性に対する抗VEGF治療後の萎縮76歳,女性.治療前(Ca)の右眼視力(0.08).抗CVEGF治療を継続しC18カ月後(Cb)の右視力(0.2).脈絡膜新生血管(CNV)からの滲出は消失しているが,眼底自発蛍光(FAF)で低蛍光斑が拡大しており,萎縮が進行していることが分かる.(93)C0910-1810/19/\100/頁/JCOPY図2軟性ドルーゼン退縮後の地図状萎縮71歳,男性.初診時(Ca)の左眼視力(0.7).黄斑部に軟性ドルーゼンが多発している.ドルーゼンの多くは眼底自発蛍光(FAF)で過蛍光を呈している.経過観察中ドルーゼンは徐々に退縮し,7年後(Cb)には中心窩を含む地図状萎縮(GA)が出現している.左視力(0.3).FAFでCGAは境界明瞭な低蛍光斑としてとらえられ,ドルーゼンは過蛍光,低蛍光のものが混在している.あたらしい眼科Vol.36,No.5,2019C663abcd図3萎縮型AMDの地図状萎縮75歳,男性.初診時(Ca)の左眼視力(0.6).中心窩にCGAを認める.4年後(Cb),7年後(Cc),10年後(Cd)と経過とともに地図状萎縮(GA)は拡大している.眼底自発蛍光(FAF)でCGAは境界明瞭な低蛍光斑としてとらえられる.GAの縁は過蛍光を呈している.retinaldetachment:SRD)が遷延すると,SRD範囲が過蛍光を呈する.これはCSRDにより視細胞外節貪食が滞ることでリポフスチンの中間代謝産物がマクロファージに貪食され,.離範囲内に沈着するためと考えられている1).加齢黄斑変性と自発蛍光軟性ドルーゼンは滲出型CAMD,萎縮型CAMDの前駆病変として重要であるが,FAFでドルーゼンを観察すると過蛍光,低蛍光を示すものが混在しており,経過中にも蛍光は変化する.ドルーゼン様の所見を示し,滲出型および萎縮型CAMDの進行に関与する所見としてCreticularpseudodrusen(RPD)がある.光干渉断層計では,軟性ドルーゼンはCRPE下に沈着が存在するのに対して,RPDはCRPE上に沈着がみられる.FAFではRPE由来の蛍光をブロックするため特徴的な網目状の低蛍光を呈する.滲出型CAMDにおけるCFAFでは,脈絡膜新生血管(choroidalneovascularization:CNV)の低蛍光,SRD範囲に一致した過蛍光が観察される.CNVの低蛍光は,CNVの存在によりその上部のCRPEが機能障害をきたしていることによると考えられ,典型CAMDのCCNVやポリープ状脈絡膜血管症(polypoidalCchoroidalCvasculopa-thy:PCV)のポリープや異常血管網にみられる.PCVのポリープは低蛍光を示すが,周囲はリング状の過蛍光を呈することが多い2).滲出型CAMDの治療経過中,黄C664あたらしい眼科Vol.36,No.5,2019斑浮腫やCSRD,網膜色素上皮.離が長期に持続すると,RPEの機能が低下し網脈絡膜萎縮に至る.この萎縮の検出にCFAFは有用である.萎縮領域は境界明瞭な低蛍光病巣となる.抗CVEGF治療を行い滲出が抑えられていても,治療経過中に萎縮病変が拡大する例があり,FAFによる観察が必要である(図1).とくに網膜血管腫状増殖(RAP)の症例では,その傾向が強い3).眼底所見では,萎縮型CAMDの地図状萎縮(geograph-icatrophy:GA)はCRPEの欠損として観察される.多くの場合,多発する軟性ドルーゼンが先行し,ドルーゼンの退縮に伴いCRPE細胞が喪失しCGAが進行する(図2).多発ドルーゼンでは萎縮病巣の判別が困難な場合もあるが,FAFでは萎縮病巣の判別が容易である.FAFで境界明瞭な低蛍光斑がみられる.また病変部の周囲は過蛍光を呈しており,この過蛍光はCGAの拡大が進行性であることを示唆しているとされる(図3)4).文献1)SpaideRF:Auto.uorescenceCfromCtheCouterCretinaCandCsubretinalspace.RetinaC28:5-35,C20082)YamagishiCT,CKoizumiCH,CYamazakiCTCetal:FundusCauto.uorescenceCinCpolypoidalCchoroidalCvasculopathy.COphthalmologyC119:1650-1657,C20123)McBainCVA,CKumariCR,CTownendCJCetal:GeographicCatrophyCinCretinalCangiomatousCproliferation.CRetinaC31:C1043-1052,C20114)HwangCFC,CChanCJW,CChangCSCetal:PredictiveCvalueCofCfundusCauto.uorescenceCforCdevelopmentCofCgeographicCatrophyCinCage-relatedCmacularCdegeneration.CInvestCOph-thalmolVisSciC37:2655-2661,C2006(94)

緑内障:緑内障性視野障害と視覚障害認定基準改定

2019年5月31日 金曜日

●連載227監修=山本哲也福地健郎227.緑内障性視野障害と視覚障害山崎芳夫東海大学医学部付属東京病院眼科認定基準改定身体障害者福祉法の施行規則が一部改正され,Goldmann視野計での求心性視野狭窄や輪状暗点の定義が明瞭となり,また自動視野計による判定も可能となったが,空間和や静的動的視野乖離などの新たな問題により動的視野計測と静的視野計測での等級判定の差異が生じている.●はじめに2018年C4月に身体障害者福祉法の施行規則が一部改正された.旧基準ではCGoldmann視野計のCI/4Cisopterで中心視野がC10°以内のみが求心性視野狭窄と定義され,I/2isopterにより視能率が算出され等級判定が行われ,I/4isopterの面積が同一でもCisopterがC10°を超える症例はC5級判定に留まっていた.また,I/4isopterで残存する中心視野がC10°以内であれば輪状暗点とされるが,病期が進行し輪状暗点が穿破し島状に残存する症例や,中心視野と周辺視野にわずかに連続性があれば輪状暗点ではないと判定され等級が下がる例もあり,判定基準の曖昧さが指摘されていた1).これに対し,新基準では主観的なCisopterの形状判定が介入せず,I/4Cisop-terの周辺視野角度とCI/2isopterの中心視野角度による単純計算で等級判定が可能となった.また自動視野計を用いて両眼開放CEstermanテストとC10-2プログラムの視認点数により周辺視野と中心視野の評価がなされ,客観的な等級判定が可能となった.しかし,同一症例に対してCGoldmann視野計と自動視野計の判定結果が異なるという新たな問題に直面している.以下に自験例を提示する.C●症例167歳,女性,原発開放隅角緑内障.視力右眼(1.2),左眼(0.07).図1に示すCGoldmann視野計では右眼は中心視野と周辺視野がわずかに連続し,左眼は中心視野が消失している.周辺視野角度は,右眼は中心と周辺が分離しているため中心のみで評価されC16°,左眼は残存する外下と下方向の視野角度の和はC70°.中心視野角度は,右眼はC8方向の視野角度の総和はC8°,左眼は中心10°以内に視野はなくC0°.両眼中心視野角度はC6°となり(91)視野障害等級はC2級に該当する.一方,図2の自動視野計では,中心視野のC10-2プログラムのC26CdB以上の視認点数は右眼C12点,左眼C0点であるが,両眼開放Estermanテストの視認点がC92点であるため視野障害等級はC5級となり,Goldmann視野計より等級判定が下がる.C●症例243歳,女性,若年性緑内障.視力は右眼(手動弁),左眼(0.7).図3に示すCGoldmann視野計では右眼は中心視野が消失し,左眼は周辺視野が広く保たれるも中心視野に欠損を認める.周辺視野角度は,右眼は視標が視認されずC0°,左眼はC8方向すべてに視野が残存し暗点を除く角度の総和はC223°となり,両眼による視野がC1/2以上欠損のC5級となる.一方,図4の自動視野計では,両眼開放CEstermanテストの視認点がC58点で,中心視野のC10-2プログラムのC26CdB以上の視認点数が右眼C0点,左眼C0点であるため視野障害等級はC2級となり,Goldmann視野計より等級が上がる結果となる.C●考按二つの症例のCGoldmann視野計と自動視野計による等級判定結果に差異が生じた原因は,視覚の生理学的特性にある.周辺視野の評価を行う自動視野計の両眼開放CEster-manテストの視標サイズはGoldmann視野計のCIII(16CmmC2)と同じで,視標輝度はC4(1,000asb)を採用している.一方,Goldmann視野計で周辺視野評価は,視標サイズはCI(1/4CmmC2)で視標輝度は同じC1,000asbであり,視標の輝度は等しいが面積は大きく異なる.視覚生理学的に,視標の面積(A)と輝度(L)には「LC×Ak=一定」の「空間和(spatialsummation)」の関係が成あたらしい眼科Vol.36,No.5,2019C6610910-1810/19/\100/頁/JCOPYⅤ/4Ⅲ/4Ⅰ/4Ⅰ/4Ⅰ/2Ⅴ/4Ⅲ/4Ⅰ/4Ⅴ/4Ⅲ/4Ⅰ/2Ⅰ/4Ⅰ/3Ⅴ/4Ⅲ/4Ⅰ/4左眼右眼図1症例1のGoldmann視野検査結果図2症例1の両眼開放Estermanテストと10.2プログラムの検査結果立する(k:係数)2).空間和のメカニズムは,視標輝度が閾下レベルでも多数の視細胞への刺激が神経節細胞に集まり,閾下刺激が加算され,神経衝動が成立して視標を閾値として認知すると理解されている.症例C1では両眼に残存するCGoldmann視野計では認知されない感度低下野まで「空間和」のメカニズムにより両眼開放Estermanテストで視認され,その結果,自動視野計では等級判定が低い結果となった.一方,静的視野計測と動的視野計測を比較すると,同じ刺激強度の視標であれば,動的刺激が静的刺激より閾値が低下し視認しやすく,その乖離は4~5CdBと報告されている.この現象は正常眼でも観察され「静的動的視野乖離(statokineticdissociation:SKD)」3)と呼ばれ,動的視標のCsuccessivelateralspatialsummationによると考えられている.病的視野のCSKDには動的視標の空間和が関与することが推察されている.空間和は中心視野より周辺視野が大きく,緑内障眼では正常眼と比較し,さらに空間和が大きいことが知られている4).症例2では左眼の周辺視野が広く残存し,Goldmann視野計の周辺視野角度が大きく,自動視野計と比較し「静的動的視野乖離」の影響を受け,低い等級判定となっている.左眼右眼図3症例2のGoldmann視野検査結果図4症例2の両眼開放Estermanテストと10.2プログラムの検査結果このように,Goldmann視野計による動的視野計測と自動視野計による静的視野計測では測定原理が異なるため,症例により判定結果が異なることを理解したうえで,後期緑内障患者への視野障害認定を行うことが必要である.文献1)公益財団法人日本眼科学会視覚障害者との共生委員会,公益社団法人日本眼科医会身体障害認定基準に関する委員会との合同委員会:視覚障害認定基準の改定に関する取りまとめ報告書.厚生労働省社会・援護局傷害保険福祉部「第C1回視覚障害の認定基準に関する検討会」(2017年C1月C23日)資料C3,2016.https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/000014C9292.html2)松尾治亘,遠藤成美:視野.視機能(大塚任・鹿野信一編),臨床眼科全書1,p67-128,金原出版,19693)FankhauserCF,CSchmidtT:DieCoptimalenCBedingungenCfurdieUntersuchungderraumlichenSummationmitste-henderCReizmarkeCnachCderCMethodeCderCquantitativenCLichtsinnperimetrie.COphthalmologicaC139:409-423,C19604)FellmanRL,LynnJR,StaritaRJetal:ClinicalimportanceofCspatialCsummationCinCglaucoma.In:PerimetryCupdate,1988-89:ProceedingsoftheVIIIthInternationalPerimet-ricSocietymeeting,Vancouver(Canada),May9-12,1988(editedbyHeijlA,SwansonWH),p313-324,KuglerandGhedini,Berkeley,1989C662あたらしい眼科Vol.36,No.5,2019(92)

屈折矯正手術:モダンレーシック

2019年5月31日 金曜日

監修=木下茂●連載228大橋裕一坪田一男228.モダンレーシック稗田牧京都府立医科大学病院眼科2000年代後半,カスタム照射,フェムトセカンドレーザーフラップが普及してからのレーシックは,それ以前と区別してモダンレーシックとよばれる.技術革新により矯正精度,安全性がさらに改善し,深刻な術後不満はC1%未満となった.新たな屈折矯正手術も出てきているが,総合的にみてモダンレーシックは屈折矯正手術の主流でありつづけている.C●はじめに1991年,ギリシャのパリカリスが世界で最初に行ったレーシックは,レーザーとマイクロケラトームを使って,角膜上皮に大きな欠損を作らずに角膜形状を変化させる画期的な術式であった.これによりCphotorefrac-tivekeratectomy(PRK)術後の疼痛や角膜上皮下混濁といった問題が解決された.レーシックの適応は拡大し,1990年代末には最強度近視や角膜形状異常眼にも適応された結果,角膜拡張症という問題が起こった.わが国に導入されたC2000年代には,フラップ下の角膜実質C250Cμm以上は残し,術前の角膜形状検査も慎重を期してなされるようになった.本稿ではC2000年代以降のレーシックの進歩について述べることで,モダンレーシックについて明らかにしたい.C●照射方式の充実近視矯正をする場合,エキシマレーザー照射は角膜を球面と仮定して,中央を周辺より多く削ることでなされる.形状を変化させるため,当初モナリンフォーミュラ1)が用いられた.レーザーの直径をCSmm,矯正量をCDdiopterとすると,切除深度はおおよそCSC2D/3μで計算できる.照射直径がC6Cmmで近視C3D矯正であれば(6C×6×3)/3=36Cμmとなる.当初はC4Cmm径でレーザー照射がなされたが安定性がなく,6Cmm以上の照射径が必要とされている.1999年には世界で最初の波面収差ガイドレーシックがCSeilerらによってなされ2),カスタム屈節矯正の時代に入った.波面センサー(図1)により各眼の波面収差を面状に測定し,それを打ち消すような照射をデザインする.ある点における波面の理想面からのズレがCXμmだとすると,3C×Xμmの切除を行うことで無収差を目標とした矯正ができる.当初は視力C4.0のスーパービジョンが期待されたが,レーザー照射による誘発収差もあり,(89)C0910-1810/19/\100/頁/JCOPY図1波面センサーiDesign(J&Jvision)の外観瞳孔C7mm内にC1,000以上の測定点があり,不正乱視の測定が可能である.図2レーザーケラトーム用のフェムトセカンドレーザーFS60(J&Jvision)レーシックのフラップのほか,角膜リング,角膜移植にも応用可能である.無収差にすることはできていない.波面収差ガイド照射は,矯正精度の改善や術後視機能の改善に効果があり,あらゆる眼に適応可能で,広く用いられている.C●フラップ作製技術の進歩レーシックで使用されるマイクロケラトームは,使い捨てブレードで毎秒C100回以上も振動させることで,透明角膜に平滑な切開面を作り出すことができる.使い捨てのブレードは完全に同じものではないので,作製されたフラップの厚みには変動がある.また,フラップの厚みも中央と周辺で差が出るため,フラップ作製による誘発収差も変動がある.2000年代半ばからフェムトセカンドレーザーを用いたレーザーケラトーム(図2)がレーシックに導入された.レーザーで作られるC10Cμm程度の空隙を連ねて透明角膜を自由に切開することができる.レーザーケラトームの利点としては,厚みが均一な再現性のあるフラップが作製できるようになったことである3).ブレードのケラトームでは,まれであるが不完全フラップで手術を延期せざるをえないことがあったが,レーザーでああたらしい眼科Vol.36,No.5,2019C659DobleimageGlareHaloStarburst図3PROWLstudyで用いられた自覚症状の写真写真を示すことで,症状の認識が統一される.(FDAのホームページのCLASIKQualityofLifeCollaborationProjectから転載)れば日をおかずその場で再度フラップを作製することができる.波面収差ガイドのカスタム照射,フェムトセカンドレーザーを使ったレーザーケラトームの導入で,レーシックはCNASAの宇宙飛行士も受けることのできる手術として安定期に入り,モダンレーシックとよばれるようになった.C●モダンレーシックの成績2008年以降のレーシックの成績をモダンレーシックとしてC97論文をレビューした報告がなされている4).それによると,全体の術後成績は裸眼視力C0.5以上が99.5%〔米国食品医薬品局(FoodCandCDrugCAdminis-tration:FDA)基準は>85%,以下カッコ内はCFDA基準〕,矯正精度C1.0D以内はC98.6%(>75%),矯正視力2段階低下はC0.61%(<5%),不満症例はC1.2%と,当初CFDAが示したクリアすべき基準を大きく上回る成績だった.CPatient-ReportedOutcomesWithLaserInSituKer-atomileusis(PROWL)はCFDAが研究主体となり,PROWL-1では海軍の施設を,PROWL-2ではレーシックを行っているC5施設を選択して約C300人ずつ,計C600人を対象に行われた臨床研究である5).また,インターネットを介して症状のカテゴリーを写真(図3)でわかりやすく示して回答を得た.両方の研究をまとめると,術後C3カ月でC96%が手術に満足しC4%が不満であった.症状は術前C7割の人が感じていたものが,PROWL-1で5割,PROWL-2でC6割に減少していた.術後はとくに患者のC1%未満がいずれかの症状のため通常の活動を行うことが困難と答えていた.ただし,この通常活動に困難を伴うほどの不満例のリスク要因については,不満例が少なすぎて解析不能であった.C●おわりに近年,フェムトセカンドレーザーのみによるCsmallCincisionClenticuleextraction(SMILE)という小切開で近視および近視性乱視を矯正する方法がCFDAで認可されたことで,エキシマレーザーを使用するレーシックやPRKとの使い分けが議論されている.SMILEの弱点としては,センタリングをマニュアル操作で行い眼球回旋補正ができないこと,高次収差矯正ができないこと,切除量が多くなること,追加矯正が困難なことである.不正乱視矯正ではエキシマレーザーシステムが有利である.総合的にみて,現時点でもモダンレーシックは屈折矯正手術のもっとも精確かつ安全な手術の一つで,主流の位置を占め続けている.文献1)MunnerlynCCR,CKoonsCSJ,CMarshallJ:Photorefractivekeratectomy:aCtechniqueCforClaserCrefractiveCsurgery.CJCataractRefractSurgC14:46-52,C19882)MrochenCM,CKaemmererCM,CSeilerT:Wavefront-guidedClaserinsitukeratomileusis:earlyresultsinthreeeyes.JRefractSurgC16:116-121,C20003)SchallhornSC,TanzerDJ,KauppSEetal:ComparisonofnightCdrivingCperformanceCafterCwavefront-guidedCandCconventionalCLASIKCforCmoderateCmyopia.COphthalmologyC116:702-709,C20094)SandovalCHP,CDonnenfeldCED,CKohnenCTCetal:ModernClaserCinCsituCkeratomileusisCoutcomes.CJCCataractCRefractCSurgC42:1224-1234,C20165)EydelmanCM,CHilmantelCG,CTarverCMECetal:SymptomsCandCSatisfactionCofCPatientsCinCtheCPatient-ReportedCOut-comesCWithCLaserCInCSituKeratomileusis(PROWL)Stud-ies.JAMAOphthalmol135:13-22,C2017660あたらしい眼科Vol.36,No.5,2019(90)

総説:日本糖尿病眼学会学術奨励賞平成29年(第11回)「福田賞」 糖尿病網膜症における脈絡膜厚と糖尿病治療の関与

2019年5月31日 金曜日

あたらしい眼科36(5):647~652,2019c日本糖尿病眼学会学術奨励賞平成29年(第11回)「福田賞」糖尿病網膜症における脈絡膜厚と糖尿病治療の関与CorrelationbetweenChoroidalThicknessandSystemicTreatmentsforDiabetesMellitusinDiabeticRetinopathy加瀬諭*はじめに糖尿病網膜症(diabeticretinopathy:DR)は,わが国および欧米においても依然成人の失明の主要な原因である1).DRの病態は,網膜血管壁の構造変化と血液網膜関門の破壊による眼循環障害である2,3).他方,糖尿病(diabetesmellitus:DM)における脈絡膜循環障害は,DRの病態に関与する可能性が示唆されている4~6).近年,光干渉断層計(opticalCcoherenceCtomogra-phy:OCT)の進歩によって脈絡膜を非侵襲的かつ定量的に評価することが可能となり,DM眼における脈絡膜の解剖学的変化が次々と報告されている.しかしながら,DRにおける脈絡膜厚の解析結果は,施設により脈絡膜厚の減少あるいは増加を示し,依然見解の一致はみられていない7).また,脈絡膜厚は年齢,眼軸長,日内変動8,9),肥満10),血糖血圧治療11),DR治療12,13)によっても変化することが報告されている.いうまでもなくDRはCDM合併症の一病態であり,全身の循環動態の影響を強く受ける.同様に,全身状態が脈絡膜厚にも影響を及ぼし,その変化は多因子に起因する可能性がある.脈絡膜厚の肥厚あるいは菲薄化に関与する組織学的因子として,一つには脈絡膜血管が重要である.脈絡膜血管層は,脈絡毛細管板,中血管層(Sattler’slayer),大血管層(Haller’slayer)のC3層に分けられる.近年,CenhanceddepthCimaging(EDI)-OCT画像を用いて脈絡膜血管の形態学的特徴をもとに,層別に脈絡膜厚を測定する方法が報告され14),DR眼においても脈絡膜層別解析がなされてきた15).しかしながら,筆者らの知る限りではCDMの治療状況と脈絡膜厚の関連,併せてCDR未治療眼の脈絡膜各層において,DM治療によりいずれの層が形態学的影響を受けるのかを明らかにした報告はない.本稿では,筆者らの行ってきたCDM患者における脈絡膜厚解析の成果を報告し,後半にその変化の機序について考察する.CI糖尿病患者における研究成果1.糖尿病と中心窩下脈絡膜厚の関連はじめに筆者らは中心窩下脈絡膜厚に着目した研究を行った.手稲渓仁会病院眼科を受診したCDM患者C86例172眼(男性C55例,女性C31例),および年齢を調整した正常対照C43例C57眼(男性C15例,女性C28例)を対象とした.両群の性差,眼軸長に有意差はなかった.全例でCEDI-OCTにて,解剖学的なCfovealbulgeの位置を参考に中心窩下脈絡膜厚(centralCchoroidalthickness:CCT)を,キャリパーを使用してマニュアルにて計測した.DM患者はCDM治療状況にしたがってC2群に分けた.本研究開始時まで経口血糖降下薬あるいはインスリン治療を継続的に受けていた症例はCDM治療群,それらの治療を受けてない症例,運動療法,食事療法のみの症例はCDM無治療群として分類した.内訳はCDM治療群C61例(平均CHbA1c,7.6±1.3%,平均罹病期間C9.5±8.5年),DM未治療群C25例(DM治療中断C9例:平均HbA1c,11.3±2.9%,平均罹病期間C9.9±5.4年,完全なCDM未治療C16例:平均CHbA1c,9.5±1.9%)であった.HbA1c値はCDM未治療群に比較しCDM治療群において有意に低値を示した(p<0.05).さらに,このC2群を国際重症度分類に基づくCDRの病期に応じてC4群ずつ*SatoruKase:北海道大学大学院医学研究院眼科学教室〔別刷請求先〕加瀬諭:〒060-8638北海道札幌市北区北C14条C5丁目北海道大学大学院医学研究院眼科学教室(77)あたらしい眼科Vol.36,No.5,2019NPDR治療群NPDR未治療群PDR治療群PDR未治療群図1代表例の糖尿病網膜症における中心窩下脈絡膜厚非増殖糖尿病網膜症(NPDR)と増殖糖尿病網膜症(PDR)を各C2例示す.DM治療群では,NPDRは正常に近いCCTを示し(262Cμm),未治療群ではCCCTは菲薄化の傾向を示す(152Cμm).DM未治療群のCPDRのCCCTは(276μm),治療群CPDR(224Cμm)よりもCCCTは肥厚する傾向を示す.に細分類した.すなわち,網膜症なし(nonDR:NDR),軽症/中等症非増殖糖尿病網膜症(mild/moderatenon-proliferativePDR:mNPDR),重症非増殖糖尿病網膜症(severeNPDR:sNPDR),増殖糖尿病網膜症(PDR)のC4群である.DM治療群とCDM無治療群の合計ではNDR57眼,mNPDR64眼,sNPDR19眼,PDR23眼であった.以上の計C8群に分類し,対照群と比較検討した.除外基準は,レーザー網膜光凝固,抗血管内皮増殖因子(vascularendothelialgrowthfactor:VEGF)薬硝子体注射,トリアムシノロンアセトニド局所注射,硝子体切除術などのあらゆる眼部治療歴,等価球面度数において.5D以上の近視,円柱度数においてC3D以上の乱視,26Cmm以上の眼軸長,ほかの眼底疾患を有するものとした.はじめに,全例を対象にCDMの罹患の有無とCCCTの関連を検討した.DM群では平均CCCTがC259Cμm,正常ではC275Cμmで,DM群でやや菲薄化していることが示唆されたが両群に有意差はなかった.次に,DRの病期とCCCTの関連も検討したが,有意差はなかった.次に筆者らは,DR患者をCDM治療の有無およびCDR重症度別に細分類したC8群で,CCTとの関連を検討した.図1に代表症例のCCCTを示す.興味深いことに,DM未治療のCmNPDRでCCCTが有意に減少していた(図1)16).一方,DM治療群では,いずれもCCCTに有意差はなかった.加えてCDM治療状況と中心窩網膜厚との関連も検討した.CCTにおいて有意差のみられたmNPDR群において,DM治療群と未治療群の中心窩網膜厚は各々平均C249Cμm,244Cμmであり,両群に有意差はなかった.2.糖尿病と脈絡膜層厚の関連Kruskal-Wallistest,p<0.01Steel-Dwasstest,p<0.05次に,筆者らは脈絡膜層別の変化に着目した.2013Ca**年C12月~2016年C12月に手稲渓仁会病院眼科で,EDI-500CCT全層厚(mm)OCTを施行可能であったCDM患者C134例C268眼(男性40090例,女性C44例,平均年齢C61.6C±12.2歳)と,年齢お300よび眼軸長をマッチングさせた正常者C72例C91眼(男性29例,女性C43例,平均年齢C60.2C±14.1歳)を対象とし200100た.DM治療群は,NDR,mNPDR,sNPDR,PDRに細分類し,それぞれC50,89,18,19眼,DM未治療もNDR,mNPDR,sNPDR,PDRで,それぞれC24,14,22,32眼であった.脈絡膜断層画像は,以前の報告に詳細に記載されているように14),スペクトラルドメインOCT(CirrusCHDOCT,CarlCZeissMeditec)のCEDI-OCTにより得られた画像で解析した.上述の脈絡膜血0controlNDRmNPDRsNPDRPDRNDRmNPDRsNPDRPDRDM治療群DM未治療群Kruskal-Wallistest,p<0.01Steel-Dwasstest,p<0.05b**400CCT外層厚(mm)管のC3層構造は,網膜と比較してその境界は明確ではない.脈絡膜全層,内層(脈絡毛細管板+中血管層),および外層(大血管層)に関するCCCTデータは,前述のように14),中心窩を通るCEDI-OCT水平スキャンを用い300200100て手動で収集した.結果として,対照群と比較してCDM未治療群のCmNPDR眼において,脈絡膜全層厚は有意に減少していた(p<0.05,図2).脈絡膜内層厚についてはCDM治療群,DM未治療群とも,対照群と比較して有意差はなかった.脈絡膜外層厚について対照群と比較して,DM未治療群のCmNPDR眼では有意に減少し(p<0.05,図2),DM未治療群のCsNPDR眼で有意に増加していた(p<0.05,図2).CII糖尿病における脈絡膜厚変化の病態生理本研究では,対照群に比較し,DM未治療のCmNPDR群で脈絡膜外層厚が有意に減少し,DM未治療のsNPDR群で脈絡膜外層厚が有意に増加することを示した17).筆者らはこれまで,DM未治療のCmNPDRでは脈絡膜全層厚は有意に減少し,PDRでは脈絡膜全層厚は増加する傾向を示した16).このことからCCCTの変化は,脈絡膜外層厚の変化を反映していた可能性がある.しかしながら,DM治療群のCCCTは健常対照群と比較して有意な変化がなかったこと,HbA1c値はCDM未治療群に比較しCDM治療群において有意に低値を示したことから,糖尿病脈絡膜症に関連するCCCTの変化に影響を及ぼす因子には,DRの重症度と血糖コントロールが含まれることが示唆された.DRの重症度とCCCTとの関係は依然として見解が一(79)0controlNDRmNPDRsNPDRPDRNDRmNPDRsNPDRPDRDM治療群DM未治療群図2糖尿病網膜症における脈絡膜層別解析結果脈絡膜全層厚では初期糖尿病網膜症で有意に菲薄化し,進行期網膜症で有意に肥厚していた(Ca).脈絡膜外層厚では対照群と比較して,DM未治療群のCmNPDR眼では有意に減少し(p<0.05),DM未治療群のCsNPDR眼で有意に増加していた(p<0.05)(b).NDR:網膜症なし,mNPDR:軽症/中等症非増殖糖尿病網膜症,sNPDR:重症非増殖糖尿病網膜症,PDR:増殖糖尿病網膜症.致していない.多くの著者らは,DM患者のCCCTがmNPDR,PDRおよび糖尿病黄斑浮腫で有意に菲薄化していることを報告している15,18,19).これらは,レーザードップラ血流計およびインドシアニングリーン蛍光眼底造影で実証された,DRの重症化に伴う脈絡膜の血流速度低下を支持する結果に矛盾しない6,20).一方,Kimらは,DR眼においてはCCCTが肥厚する可能性があることを報告した21).筆者らの研究では,DMの治療状況によらずデータを収集した際には,DRの重症度とCCTには有意な相関がなかった.しかしながら,DM患者をCDM治療群と未治療群に細分したところ,未治療群にのみCCCTの有意な変化がみられた16).これらの結果は,慢性的な高血糖が脈絡膜循環系の障害を促進すあたらしい眼科Vol.36,No.5,2019C649る因子となり得ることを示唆している.加えて,DRのCCTは多くの眼局所因子によって影響を受けることも知られている.既報では,汎網膜光凝固12,22),抗CVEGF療法13),硝子体内トリアムシノロンアセトニド23)は,CCTに影響を与えることが報告された.これらの影響を排除するために,本研究ではいかなる眼科的治療歴もないCDM眼のみを評価した.前述のように,DM患者には脈絡膜の変化が存在することは明らかであるが,臨床研究の結果は不整合である.さらに筆者らが知る限り,DR未治療眼の脈絡膜各層のうちいずれの層が形態学的影響を受けるのかについての報告はない.Adhiらは,DR眼における脈絡膜の形態学的特徴と血管層解析を行い,眼科治療歴を有するPDRおよび糖尿病黄斑浮腫眼において脈絡膜内層厚が有意に減少することを報告した15).剖検眼を用いた組織学的研究では,DR患者における脈絡膜血管の基底膜の肥厚4),および脈絡毛細管板の脱落5)が明らかになった.これらの変化はCDR眼における脈絡膜の形態学的変化を反映している可能性がある.しかしながら今回の結果は,DM未治療群において脈絡膜内層厚ではなく,外層厚に有意な変化が示された.Adhiらの報告との相違は,一つには脈絡膜厚測定時におけるCDR治療歴の有無が関与している可能性がある.また,DM患者群の分類方法の相違も脈絡膜層別厚の結果に影響を及ぼしたかもしれない.Adhiらは,患者をC3群(黄斑浮腫のないCNPDR,黄斑浮腫のないCPDR,DME)に分類したのに対し15),筆者らは,DRの重症度分類をNDR,mNPDR,sNPDR,PDRのC4群に分類した.CIII糖尿病網膜症における脈絡膜厚変化の病理学的機序本研究では,DM未治療群においてCDR早期で脈絡膜外層厚が菲薄化することが明らかになった.脈絡膜は豊富なニューロンによる神経支配を有する血管構造を有しており,おもに自律神経系の制御下にある.Zenginらは,ニコチン経口摂取後に有意に脈絡膜厚が減少することを見出し,それはニコチンの血管収縮作用による脈絡膜血流減少の結果であると報告した24).Sariらは,脈絡膜の交感神経支配はおもにCa1-アドレナリン受容体を介し,当該拮抗薬の投与により脈絡膜厚が増加することを報告した25).これらの研究により,自律神経系の関与が脈絡膜厚の変化に関与することが示唆された.したがって,本研究で判明した脈絡膜外層厚の菲薄化は,一つには自律神経系の調節が関与した可能性がある.今後,DRに伴う脈絡膜における自律神経系の調節機構を解明する必要がある.さらに本研究において,DM未治療群ではCDR早期とは対照的にCsNPDRで脈絡膜外層厚が肥厚することも明らかになった.この機序として筆者らは,DRにおけるVEGFの増加が,脈絡膜血管拡張,脈絡膜血流上昇,あるいは血管透過性亢進をもたらすことで,脈絡膜外層厚を増加させたと仮定した.これらの変化が,脈絡膜間質あるいは血管領域のどちらに依存するのかはC2階調化法によって評価できる可能性がある26).Guptaらは,同手法を用いてCDRで脈絡膜がより肥厚し,それがおもに血管領域の変化によるものであることを報告した27).ただし,異なるCDR重症度群では有意差はなく,また当該研究ではCsNPDR群が欠如していたため,本研究結果を裏付ける理由とはならなかった.今後の詳細なC2階調化法によるCDR重症度別の解析が必要である.CIV糖尿病脈絡膜厚研究の限界一つには上述したように,糖尿病網膜症の脈絡膜厚はさまざまな全身的因子,局所因子で変化する.したがって,標的とする候補因子をなるべく少数に絞り,ほかの要因を可能な限り除去する試みが必要である.たとえば,筆者らの研究では,全身の糖尿病治療歴と脈絡膜厚の関連を検討する場合に,treatmentnaive(本研究ではいかなる眼科的治療歴もないCDM眼)の糖尿病網膜症症例を収集し,検討を行った.実際は,大学病院クラスの集団では,すでに何らかの眼科的な治療が介入されている症例が多く,統計誤差を解消するためのCtreatmentnaiveな網膜症について,十分な症例数を収集することは困難かもしれない.次の限界として,糖尿病網膜症の重症度との相関を検討する場合に,各群にほぼ同数の症例数を収集することはきわめて困難である点があげられる.三つ目は,脈絡膜層別解析では近年,網膜下液がある症例では測定誤差が生じる危険があるとの報告がある28).現状では,このような症例を除外すべきであろう.四つ目は,症例によっては実臨床において網脈絡膜の評価としてCEDI-OCTあるいはCswept-sourceCOCT(SS-OCT)による異なる測定法が行われている場合がある.EDI-OCTとCSS-OCTの脈絡膜厚の測定結果の誤差について,さらなる検証が必要である.V今後の糖尿病における脈絡膜厚解析Murakamiらは,SS-OCTを用いて脈絡膜血管病変の徴候とCDRとの関連を評価した.その結果,DM患者のHaller層では脈絡膜血管の狭窄または脈絡膜血管の断端(stumpofchoroidalvessels)を有する眼でCCCTが肥厚していることを報告した29).組織学的解析では,DRの脈絡膜血管では肥厚した基底膜,動脈硬化病変を示しており,脈絡膜動脈ではときには管腔の閉塞を伴っていた5).これらの脈絡膜病変は,脈絡膜血管および脈絡膜間質の病変が主として脈絡膜外層厚へ影響する可能性があることを示している.加えて,今後の課題の一つとして,treatmentnaiveな症例において,糖尿病の全身治療の開始後にCCCT,脈絡膜外層がいかに変化するか,時間軸を基盤に変化を追うことも重要な検討である.併せて,近年糖尿病眼の脈絡膜外層の評価として,OCTのCenface画像を用いた検討も試みられている30).このような解析が,糖尿病脈絡膜症の病態生理の解明に重要な検討となるであろう.おわりにDM患者の脈絡膜外層厚はCDR早期に菲薄し,進行期に肥厚する二峰性の変化を示した.DRにおける脈絡膜外層厚の測定は,無治療のCDM患者における網膜症の重症度の評価に有用である可能性がある.謝辞:本研究に際しては,データの収集・解析において,手稲渓仁会病院眼科・視能訓練士の遠藤弘毅氏に多大なる協力を賜りました.ここに深謝いたします.文献1)KempenCJH,CO’ColmainCBJ,CLeskeCMCCetal:TheCpreva-lenceCofCdiabeticCretinopathyCamongCadultsCinCtheCUnitedCStates.ArchOphthalmolC122:552-563,C20042)Cunha-VazCJ,CFariaCdeCAbreuCJR,CCamposAJ:EarlyCbreakdownCofCtheCblood-retinalCbarrierCinCdiabetes.CBrJOphthalmolC59:649-656,C19753)CiullaCTA,CHarrisCA,CLatkanyCPCetal:OcularCperfusionCabnormalitiesCinCdiabetes.CActaCOphthalmolCScandC80:C468-477,C20024)HidayatCAA,CFineBS:DiabeticCchoroidopathy.CLightCandCelectronmicroscopicobservationsofsevencases.Ophthal-mologyC92:512-522,C19855)CaoCJ,CMcLeodCS,CMergesCCACetal:ChoriocapillarisCdegenerationCandCrelatedCpathologicCchangesCinChumanCdiabeticeyes.ArchOphthalmolC116:589-597,C19986)ShiragamiCC,CShiragaCF,CMatsuoCTCetal:RiskCfactorsCforCdiabeticCchoroidopathyCinCpatientsCwithCdiabeticCretinopa-thy.CGraefesCArchCClinCExpCOphthalmolC240:436-442,C20027)MelanciaCD,CVicenteCA,CCunhaCJPCatal:DiabeticCcho-roidopathy:aCreviewCofCtheCcurrentCliterature.CGraefesCArchClinExpOphthalmolC254:1453-1461,C20168)MrejenCS,CSpaideRF:OpticalCcoherencetomography:Cimagingofthechoroidandbeyond.SurvOphthalmolC58:C387-429,C20139)SezerCT,CAltinisikCM,CKoytakCIACetal:TheCchoroidCandCopticalCcoherenceCtomography.CTurkCJCOphthalmolC46:C30-37,C201610)YumusakE,OrnekK,DurmazSAetal:Choroidalthick-nessinobesewomen.BMCOphthalmolC16:48,C201611)JoCY,CIkunoCY,CIwamotoCRCetal:ChoroidalCthicknessCchangesCafterCdiabetesCtypeC2CandCbloodCpressureCcontrolCinahospitalizedsituation.RetinaC34:1190-1198,C201412)ZhangCZ,CMengCX,CWuCZCetal:ChangesCinCchoroidalCthicknessCafterCpanretinalCphotocoagulationCforCdiabeticretinopathy:aC12-weekClongitudinalCstudy.CInvestCOph-thalmolVisSciC56:2631-2638,C201513)RayessCN,CRahimyCE,CYingCGSCatal:BaselineCchoroidalCthicknessCasCaCpredictorCforCresponseCtoCanti-vascularCendothelialCgrowthCfactorCtherapyCinCdiabeticCmacularCedema.AmJOphthalmolC159:85-91,C201514)BranchiniCLA,CAdhiCM,CRegatieriCCVCetal:AnalysisCofCchoroidalmorphologicfeaturesandvasculatureinhealthyeyesusingspectral-domainopticalcoherencetomography.OphthalmologyC120:1901-1908,C201315)AdhiCM,CBrewerCE,CWaheedCNKCetal:AnalysisCofCmor-phologicalCfeaturesCandCvascularClayersCofCchoroidCinCdia-beticretinopathyusingspectral-domainopticalcoherencetomography.JAMAOphthalmolC131:1267-1274,C201316)KaseCS,CEndoCH,CYokoiCMCetal:ChoroidalCthicknessCinCdiabeticCretinopathyCinCrelationCtoClong-termCsystemicCtreatmentsCforCdiabetesCmellitus.CEurCJCOphthalmolC26:C158-162,C201617)EndoCH,CKaseCS,CTakahashiCMCetal:AlterationCofClayerCthicknessCinCtheCchoroidCofCdiabeticCpatients.CClinCExpCOphthalmolC46:926-933,C201818)RegatieriCCV,CBranchiniCL,CCarmodyCJCetal:ChoroidalCthicknessCinCpatientsCwithCdiabeticCretinopathyCanalyzedCbyCspectral-domainCopticalCcoherenceCtomography.CRetinaC32:563-568,C201219)UnsalE,EltutarK,ZirtilogluSetal:Choroidalthicknessinpatientswithdiabeticretinopathy.ClinOphthalmolC8:C637-642,C201420)NagaokaCT,CKitayaCN,CSugawaraCRCetal:AlterationCofCchoroidalCcirculationCinCtheCfovealCregionCinCpatientsCwithCtype2diabetes.BrJOphthalmolC88:1060-1063,C200421)KimCJT,CLeeCDH,CJoeCSGCetal:ChangesCinCchoroidalCthicknessCinCrelationCtoCtheCseverityCofCretinopathyCandCmacularedemaintype2diabeticpatients.InvestOphthal-molVisSciC54:3378-3384,C201322)ZhuCY,CZhangCT,CWangCKCetal:ChangesCinCchoroidalCthicknessCafterCpanretinalCphotocoagulationCinCpatientsCwithtype2diabetes.RetinaC35:695-703,C201523)SonodaS,SakamotoT,YamashitaTetal:E.ectofintra-vitrealtriamcinoloneacetonideorbevacizumabonchoroi-dalthicknessineyeswithdiabeticmacularedema.InvestOphthalmolVisSciC55:3979-3985,C201424)ZenginCMO,CCinarCE,CKucukerdonmezC:TheCe.ectCofCnicotineonchoroidalthickness.BrJOphthalmolC98:233-237,C201425)SariCE,CSariCES,CYaziciCACetal:TheCe.ectCofCsystemicCtamsulosinhydrochlorideonchoroidalthicknessmeasuredbyenhanceddepthimagingspectraldomainopticalcoher-encetomography.CurrEyeResC40:1068-1072,C201526)SonodaCS,CSakamotoCT,CYamashitaCTCetal:LuminalCandCstromalareasofchoroiddeterminedbybinarizationmeth-odCofCopticalCcoherenceCtomographicCimages.CAmCJCOph-thalmolC159:1123-1131,C201527)GuptaP,ThakkuSG,SabanayagamCetal:Characterisa-tionCofCchoroidalCmorphologicalCandCvascularCfeaturesCinCdiabetesanddiabeticretinopathy.BrJOphthalmolC101:C1038-1044,C201728)WongCSS,CVuongCVS,CCunefareCDCetal:MacularC.uidCreducesCreproducibilityCofCchoroidalCthicknessCmeasure-mentsConCenhancedCdepthCopticalCcoherenceCtomography.CAmJOphthalmolC184:108-114,C201729)MurakamiCT,CUjiCA,CSuzumaCKCetal:InCvivoCchoroidalCvascularlesionsindiabetesonswept-sourceopticalcoher-encetomography.PLoSOneC11:e0160317,C201630)WangJC,LainsI,ProvidenciaJetal:Diabeticchoroidop-athy:choroidalCvascularCdensityCandCvolumeCinCdiabeticCretinopathywithswept-sourceopticalcoherencetomogra-phy.AmJOphthalmolC184:75-83,C2017☆☆☆

眼内レンズ:初心者のための新しい核分割手技:Hole-assisted-Chop法

2019年5月31日 金曜日

眼内レンズセミナー監修/大鹿哲郎・佐々木洋390.初心者のための新しい核分割手技:宮本奈緒美秋元正行大阪赤十字病院眼科Hole-assisted-Chop法水晶体超音波乳化吸引術において核分割は重要なステップである.Phaco-chop法はもっとも効率のよい核分割法であるが,経験の浅い術者にとっては習得が困難である.今回,筆者らはCphaco-chop法導入前の初心者でも比較的導入しやすい新たな水晶体核分割法(Hole-assisted-chop法)を考案した.●核分割の歴史と本術式1991年,Gimbelらが開発した十字に溝を掘って核を分割するCdivideandconquer法1)は,溝の深さを確認しながら実施でき習得しやすいため,現在でも幅広い術者に受け入れられている.一方で,溝を掘る手技は超音波時間が比較的長く,超音波効率が悪い.1993年に永原らの発案したCphaco-chop法2)は手術時間が比較的短く,現在でも効率のよい核分割法として知られている3,4).永原らの発案したものは水晶体核を二次元的に分割するhorizontal法として知られているが,のちに硬めの核に有効な奥行きを意識するCvertical法などさまざまな変法が開発・解釈されている.しかし,phaco-chop法を習得するには,深さがとらえにくく,左手で前.切開縁を割いてしまうなど,手術初心者が陥りやすい落し穴がある.Divideandconquer法からCphaco-chop法へ移行するため,第C2,3分割のみ部分的にCphaco-chopするなど,段階的に習得する方法がもっぱら行われている.筆者らはCdivideCandconquer法からCphaco-chop法へ移行するためには,おもに左手フックの動作が異なるため,新しい動作の習得が必要であると考え,今回新たな水晶体核分割法「hole-assisted-chop法」の発案に至った.C●手術方法先にChydrodissectionをしっかり行い,超音波チップで表面の皮質だけでなく赤道部の皮質もある程度除去しておき,水晶体核を.内で滑らかに回転できるようにしておく.やや弱い条件の超音波を用いて水晶体の前.切開縁内側C180°対側に超音波チップでC2個の縦穴を作製する(図1).6時方向に設置した穴から深くCchopperを挿入し,12時方向の穴から超音波チップを挿入して,通常のphaco-chop法に準じて第C1分割を施行する.2個の縦穴を新たな赤道部と見立てることで,前.切開縁を傷つけることなく比較的容易に安全に核分割を行うことができる.最初は後.まで穿孔しないように,やや弱い超音波設定で始めて,慣れてきたら徐々に通常の条件に近づけていく.上記方法にて,phaco-chop法を習得する前の白内障手術初心者の専攻医C3人を対象として本法を学習させた.図1Hole.assisted.Chop法の実際やや弱い条件の超音波(初めは縦振動C15程度,慣れてくればC40程度で実施)を用いて水晶体の前.切開縁付近C180°対側にC2個の縦穴()を作製する.2つの穴を水晶体の新しい赤道部と見立てることで,挟みこみ,分割が容易となる.(87)あたらしい眼科Vol.36,No.5,2019C6570910-1810/19/\100/頁/JCOPY表1専攻医Aにおける各方法の有効性の検討第C1分割法(n=7)超音波時間CDE比溝堀り法C56.14C6.63Hole-assisted-chop法C47.71C6.70Phaco-chop法C40.80C5.61CDE:cumulativedissipatedenergy図2縦穴を4方向に作製する場合2個の縦穴()作製に加えて,もうC2個の縦穴()を水晶体の前.切開縁付近に作製する.核硬化の進んだ症例(右図)でも,縦穴を全部でC4方向に作製することで分割を効果的にすることができた.●術後結果専攻医C3人に本法を学習させたのちに,通常のCpha-co-chop法を導入したところ,3人ともCphaco-chop法を導入する際も抵抗なく移行することができた.また,専攻医CAにおいてCphaco-chop法に移行する前に第C1分割を溝掘り法と本法で行った症例群,また本法での学習を経たのちにすべての分割において通常のphaco-chop法に移行した症例群とで(第2,3分割はどの群も通常のCphaco-chop法を行った),それぞれ超音波時間とCcumulativeCdissipatedenergy(CDE)比を後方視的に検討したが,3群間において優位な差は認めなかった(表1).今後,術者や症例数を増やし,hole-assistedchop法の有効性に関してさらなる検討を進めていきたい.C●おわりにHole-assisted-chop法は,phaco-chop法の習得を容易にする可能性があるといえる.また,核硬化がきつく,通常のCphaco-chop法では処理が困難な場合でも,溝を掘るかわりに前.切開縁付近に縦穴をC4方向に作製することで分割を効果的にすることができた(図2).このように本法は専攻医だけでなく,上級医にも応用できる有効な術式であると考える.文献1)GimbelHV:DivideCandCconquerphacomulsi.cation:CdevelopmentCandCvariations.CJCCatarctCRefractCSurgC17:C281-291,C19912)NagaharaK:C“PhacoCChop,”.lmCpresentedCatCtheC3rdCAmerican-InternationalCCongressConCCatarct,CIOLCandCRefractiveSurgery,Seatle,Washington,USA,June19933)DeBryCP,COlsonCRJ,CCrandallAS:CompariosnCofCenergyCrequiredCforCphaco-chopCandCdivideCandCconquerCphacoemulsi.cation.CJCCatarctCRefractCSurgC24:689-692,C19924)WongCT,CHingoraniCM,CLeeV:Phacoemulsi.cationCtimeCandCpowerCrequirementsCinCphacoCchopCandCdivideCandCconquerCnucleofractisCtechniques.CJCCatarctCRefractCSurgC26:1374-1378,C2000

コンタクトレンズ:コンタクトレンズの酸素透過性

2019年5月31日 金曜日

提供コンタクトレンズセミナーコンタクトレンズ処方さらなる一歩監修/下村嘉一55.コンタクトレンズの酸素透過性佐野研二あすみが丘佐野眼科●コンタクトレンズ用材料の気体透過性コンタクトレンズ(CL)用材料が,ガス透過性,とくに酸素透過性をそのもっとも大事な機能として必要としていることは今さら言うまでもないだろう.かつては,低酸素透過性のCLを長時間装用したり,就寝時にはずすのを忘れたりすると,角膜は容易に浮腫と角膜上皮障害,それに伴う角膜潰瘍,感染症を起こしたものである.つまり,CLの酸素透過性が悪いと角膜への十分な酸素供給が阻害され,その正常な生理機能が保てなくなるのである.さらに,もっと正確に言うならば,大気中の酸素を吸収して二酸化炭素を放出しながら生命を維持する動物のガス交換が必要な部分に何らかのデバイスを装着する場合,生体の正常機能を保つためには,酸素はもとより二酸化炭素や,窒素の透過性も適度に確保されなければならない.しかしながら,実際には,これらの気体透過性能は,ガス透過性高分子材料によってまちまちである.CL用材料の高分子学的デザインによって,それらを適正なバランスにもっていくことも不可能ではないだろうが,臨床的にはそこまで精密な気体選択性も要求されず,もっとも重要な酸素の透過性能の向上をもって,CL用材料の性能を推しはかっているのが現状である.●CLの酸素透過係数(Dk値)CL用材料の酸素透過性能は,いわゆる酸素透過係数で表され,酸素の材料への溶解しやすさの指標である溶解度係数(mlO2/(ml×mmHg)と,材料の中の酸素の移動のしやすさの指標である拡散係数(cm2/sec)の積で表される.いわゆるDk値と呼ばれるものであり,単位は(cm2/sec)・(mlO2/(ml×mmHg))となる.一般にCL用材料内(とくにハードCL用材料内)で,酸素分子は熱運動をしながら移動していくため,非含水性材料においては,酸素分子に比べ熱運動の小さい高分子の側鎖の長さ(間隙の大きさ)を大きくすることや,回転エネルギーの小さなシロキサン結合をもつシリコーン(Si)を導入し,Siの回りで側鎖を自由に回転させることにより,酸素の拡散係数を向上させている(図1).また,表面エネルギーが小さいフッ素を含有させること(85)により,材料の酸素溶解度係数を上げる手法もよく取られている1)(図2).含水性材料(いわゆるソフトCL用材料)においては,材料内の水分,とくに高分子側鎖とは水素結合していない「自由水」に酸素分子が溶解して運ばれると考えられており,これまで材料の高含水化が図られてきた(図3).最近では,非含水性材料(ハードCL)と含水性材料(ソフトCL)のアドバンテージを併せもったシリコーンハイドロゲル材料によるCLが台頭してきている.●CL用材料の酸素透過係数の測定方法平成17年4月1日に出された厚生労働省医薬食品局長通知によると,非含水性CL用材料の酸素透過係数は,レンズまたはレンズと同一の原材料の平板を用いて,電極法またはクーロメトリー法によって測定するとある.また,含水性CL用材料の酸素透過係数は,飽和膨潤させたレンズまたはレンズと同一の原材料の平板を用いて,電極法によって測定するとある.それぞれ,報告値に対しての再現性の許容差は±20%以内でなければならないこととなっている.筆者も東京医科歯科大学医用器材研究所(現・生体材料工学研究所)において電極法による高分子材料の酸素透過係数を測定した経験があるが,サンプルの微妙な厚さの違い,室温などの変化などによって測定値が相当ばらつく.また,被験サンプルを気体が通るとき,その前面と後面には大きな抵抗があるため,サンプルの厚さによって酸素の透過性が変わってくる.正確な測定のためには測定者の熟練と,いくつかの厚さの異なるサンプルを測定し,測定値を補正することが重要となってくる.●CLの酸素透過率酸素透過率とは,酸素透過係数=Dk値をレンズの厚みで割ったもので,Dk/t値ともよばれ,その単位はcm・ml/cm3・sec・mmHgで表される.臨床上,CLの酸素透過性能を比較する場合は酸素透過率を用いることが多い.同じDk値をもった材料からなるCLでも,臨床上は薄いレンズの方が角膜表面により多くの酸素分子を送り込むことができ,より安全と考えられるからであたらしい眼科Vol.36,No.5,20196550910-1810/19/\100/頁/JCOPYSiOOSiDk値×10-11(cm2/sec)(mlO2/ml×mmHg)Si図1シリコーン系材料シリコーン系ポリマーでは,Siのまわりの側鎖の回転エネルギーがきわめて低く,容易に回転する側鎖の間隙を酸素分子が効率よく移動する.7060504030201000102030405060708090100含水率(%)図3含水性ソフトコンタクトレンズにおける含水率と酸素透過係数の関係ハイドロゲル材料の含水率が上がると酸素透過係数も上昇する.ある.しかしながら,多くの酸素透過率の値はレンズ中央部の厚みで計算されたものであり,たとえば強度近視用のレンズなど周辺部が厚くなっている場合などでは実態に合わないといった議論がある.今後,Dk/t値の屈折度数,すなわちレンズデザインを考慮した補正方法に対するディスカッションが必要である.●CL用材料の酸素透過性と水濡れ性酸素透過性を高めるため,シリコーン系材料や含フッF広い間隙FFCFFCFCH図2フッ素系材料フッ素原子はあらゆる元素のなかでもっとも電気陰性度が高く,分極率が小さいため,これを用いた高分子の表面エネルギーはきわめて低く,側鎖間の感激は広くなり,酸素溶解係数が高くなる.素材料の導入が図られる一方,両者の強い撥水性からCL表面の水濡れ性が低下するというジレンマも生じる.高酸素透過性高分子をCLとして使用するためには,レンズ表面に親水性モノマーを重合させたり2),生体適合性が高く親水性のMCPポリマー3,4)をレンズソリューションに含有させたり,材料の一部として重合させたりする試みが行われている.こうしたCLの親水化技術の進歩が,さらに新しい高酸素透過性高分子のCL用材料としての可能性を広げつつある.文献1)佐野研二,所敬,鈴木禎ほか:フッ素系非含水性ソフトコンタクトレンズ用素材の研究.日コレ誌36:196-200,19942)佐野研二,勝山晴美,小林里津子ほか:親水性モノマーを表面にグラフト重合させた新しい酸素透過性ハードコンタクトレンズ.あたらしい眼科16:851-853,19993)門磨義則,中林宣男,増原英一ほか:ホスホリルコリン基を有するポリマーの合成と溶血性.高分子論文集35:423-427,19784)石原一彦:生体構造に啓発されたポリマーバイオマテリアルの創製.生体材料18:33-40,2000PAS117

写真:角膜浮腫を伴う水晶体起因性ぶどう膜炎

2019年5月31日 金曜日

写真セミナー監修/島﨑潤横井則彦420.角膜浮腫を伴う水晶体起因性加藤久美子三重大学大学院医学系研究科ぶどう膜炎神経感覚医学講座眼科学図2図1のシェーマ①残留水晶体②角膜下方を中心とした浮腫図1前眼部所見角膜下方を中心とした角膜浮腫があり,前房内に残留水晶体を認めた.図3図1の症例の細隙灯顕微鏡所見図4初診から4カ月後の角膜内皮顕微鏡検査の結果残留水晶体を認めた.角膜内皮細胞密度はC700/mmC2と著しく低下していた.(83)あたらしい眼科Vol.36,No.5,2019C6530910-1810/19/\100/頁/JCOPY水晶体起因性ぶどう膜炎は,水晶体蛋白に対する自己免疫反応により炎症が惹起されることで発症する1).手術または外傷により水晶体.が損傷することにより発症することが多い.細隙灯顕微鏡検査では,前房内炎症のみを呈する軽症なものから,豚脂様角膜後面沈着物,虹彩後癒着,前房蓄膿,角膜浮腫を呈するものなど多彩な臨床像がみられる2).Huiらによれば,細隙灯顕微鏡検査だけでは必ずしも残留水晶体を視認することはできず,37.5%の患者においては隅角鏡を用いた診察が必要であった3).また,この報告では,白内障手術後に残留水晶体によるぶどう膜炎が発症するまでの平均期間はC38日であったが3),術後C15年が経過して診断された症例報告もある4).わが国の成書では,この疾患における角膜浮腫に関する記述は少ないが,Huiらの報告では,約C7割の患者で角膜浮腫が認められたという3).角膜浮腫を呈した症例の中には,著しく角膜内皮が減少した症例や,角膜移植を必要とした症例が含まれていた3,4).本疾患の初期治療はステロイド局所投与による消炎であるが,残留した核片が大きい場合や,炎症が強い場合には速やかな外科的摘出が必要となる.また,本疾患は白内障術後に発症するものであるため,術後眼内炎が鑑別すべき重大な疾患となる.残存水晶体の除去で炎症が鎮静化すれば本症である可能性が高いが,疑わしい症例では,前房水を採取し,細菌検査や細胞診,PCR(poly-merasechainreaction)法を行うのがよいだろう.症例は,2年C11カ月前に白内障手術を受けた患者である(図1,2).術後,複数回にわたり霧視が出現し,近医でぶどう膜炎と診断され,そのつどベタメタゾン点眼液を使用することで霧視は改善していた.しかしながら,今回はベタメタゾン点眼液を使用しても霧視が改善しなかったため当科紹介となった.初診時視力は(0.4),細隙灯顕微鏡検査では角膜下方を中心に角膜浮腫が認められ,前房内に水晶体の核片を認めた(図3).眼底三次元画像解析では.胞様黄斑浮腫が認められた.これまでに複数回のぶどう膜炎発作を起こしていること,ステロイド局所投与に反応しない角膜浮腫があったことから,ただちに水晶体核片を除去した.除去後,ベタメタゾン点眼とブロムフェナク点眼を併用し,角膜浮腫はC2週間で消失,.胞様黄斑浮腫は約C2カ月で消失し,視力は(1.2)となった.手術からC4カ月後の角膜内皮顕微鏡検査では,角膜内皮密度がC700/mmC2と,僚眼のC1/4にまで減少しており(図4),これは複数回にわたるぶどう膜炎発作や,核片による物理的な刺激により角膜内皮細胞が障害されたためと考えられた.角膜浮腫を伴う水晶体起因性ぶどう膜炎について紹介した.水晶体.損傷を伴わない,水晶体再建術後の残留水晶体によるぶどう膜炎はまれな合併症であり,また残留水晶体の確認は必ずしも容易ではないが,白内障手術後にぶどう膜炎を繰り返す患者をみた場合の鑑別診断として考慮すべきである.角膜浮腫を伴う症例では,水疱性角膜症に至る可能性を考慮し,角膜浮腫が強い,あるいは前眼部の炎症が遷延するような症例では,速やかな残留水晶体除去術が必要である.文献1)雑喉正泰:疾患別治療戦略と処方の実際ぶどう膜疾患水晶体起因性ぶどう膜炎.眼科薬物治療CACtoZ(根木昭編),眼科プラクティスC23,p162-163,文光堂,20082)肱岡邦明:水晶体起因性眼内炎.所見から考えるぶどう膜炎(園田康平,後藤浩編),p172-174,医学書院,20133)HuiCJI,CFishlerCJ,CKarpCCLCetal:RetainedCnuclearCfrag-mentsCinCtheCanteriorCchamberCafterCphacoemulsi.cationCwithCanCintactCposteriorCcapsule.COphthalmologyC113:C1949-1953,C20064)KangHM,ParkJW,ChungEJ:Aretainedlensfragmentinducedanterioruveitisandcornealedema15yearsaftercataractsurgery.KoreanJOphthalmolC25:60-62,C2011

総説:日本糖尿病眼学会学術奨励賞平成29年(第11回)「福田賞」 OCT angiographyにて抽出される増殖糖尿病網膜症における新生血管の特徴

2019年5月31日 金曜日

あたらしい眼科36(5):637~646,2019c日本糖尿病眼学会学術奨励賞平成29年(第11回)「福田賞」OCTangiographyにて描出される増殖糖尿病網膜症における新生血管の特徴CharacteristicsofRetinalNeovascularizationinProliferativeDiabeticRetinopathyImagedbyOpticalCoherenceTomographyAngiography石羽澤明弘*はじめに糖尿病網膜症において,網膜硝子体界面の新生血管の出現は増殖糖尿病網膜症(proliferativediabeticretinop-athy:PDR)の診断の決め手となる重要所見である.検眼鏡的には,新生血管は微細,もしくは比較的太い血管を含む不規則なネットワークを形成し,網膜表面に這うように,または硝子体腔に突出した異常血管組織として観察される1).しかしながら,検眼鏡的観察のみでは網膜内最小血管異常(intraretinalmicrovascularabnor-malities:IRMA)との鑑別に苦慮すること,またレーザー痕などの背景網膜の状況によって新生血管の形態的変化を十分に観察しにくいことは,一般診療においてよく経験する懸念事案である.よって実臨床では,フルオレセイン蛍光眼底造影検査(.uoresceinangiography:FA)が糖尿病網膜症の病期分類に広く用いられ,蛍光漏出の程度から新生血管の有無と活動性の判断がなされている.しかし,FAは侵襲的であり,アナフィラキシーショックなどの重篤な合併症はごくまれではあるものの,全身状態不良なケースが少なくない糖尿病患者では頻回の施行がためらわれるのが実情である.一方,今日の非侵襲的眼科検査の代表である光干渉断層計(opticalcoherencetomography:OCT)は,網脈絡膜,硝子体の断層画像を,短時間で簡便に得られるため,とくに糖尿病黄斑浮腫の診療においては必須の検査として広く普及している.このOCTを用いて,新生血管を含む血管線維膜の断層像(Bスキャン)を撮影し,網膜硝子体界面の特徴を報告した論文が散見される2~4).しかし,B-scan画像では血管構造そのものを描出できる訳ではないため,新生血管の構造変化を直接評価することは困難である.近年,血管組織内のOCT信号の位相変化や強度変化をもとに,血流の三次元画像を表示するOCTangiogra-phy(OCTA)と総称される技術が考案され,網脈絡膜の微小血管構造の三次元画像化が可能となってきた.筆者らはOCTAを用いて,糖尿病網膜症における代表的な網膜最小血管病変,すなわち毛細血管瘤,網膜無灌流領域,IRMAそして新生血管を鮮明に描出できることを示し,臨床上有用性であることをいち早く報告した(図1)5).とくに新生血管は蛍光漏出の影響を受けないため,その形態的特徴を明瞭に観察でき,また変化を定量的に示すことができる可能性がある.一方で,蛍光漏出所見が得られないことは,とくに新生血管の活動性の評価という点でOCTAの致命的な欠点であるという指摘もなされてきた.この問題を解決すべく,筆者らはPDRにおける新生血管の形態所見に注目し,FAでの蛍光漏出との関係性について検討した6).I方法本研究は旭川医科大学において倫理委員会の承認のもと,被験者の同意のうえで行われた横断観察研究である.新規または過去に糖尿病網膜症国際重症度分類に基づいてPDRの診断がなされ,信号強度が60以上の高画質なOCTA画像が得られた患者を対象とした.被験者には,視力,眼圧,眼底写真,OCT検査を含む眼科一般検査を施行した.また,bodymassindex(BMI),血圧,HbA1c値,糖尿病罹病期間も記録した.硝子体*AkihiroIshibazawa:旭川医科大学眼科学教室〔別刷請求先〕石羽澤明弘:〒078-8510北海道旭川市緑が丘東2条1-1-1旭川医科大学眼科学教室(67)あたらしい眼科Vol.36,No.5,2019図1糖尿病網膜症のOCTAa:網膜表層血管網の毛細血管瘤().b:視神経乳頭近傍の網膜無灌流領域(*)と網膜内最小血管異常(▽).c:視神経乳頭上に一塊として形成された新生血管().いずれも毛細血管レベルで鮮明に異常血管が描出されている.(文献5より許可を得て改変転載)手術の既往,中等度以上の白内障や硝子体出血などの中間透光体混濁,抗血管内皮増殖因子(vascularendothe-lialgrowthfactor:VEGF)抗体の投与既往のある眼は除外した.新生血管は発生場所によって分類し,視神経乳頭上またはその辺縁から1乳頭径以内のものをneo-vascularizationatdisc(NVD),それ以外をneovascu-larizationelsewhere(NVE)と定義した.複数の新生血管がある例では,OCTAが撮影可能であった一つの新生血管のみを対象とした.未治療のPDR患者(14名)は全例でFAを行った.すでにPDRと診断されていた19名では,汎網膜光凝固術(panretinalphotocoagula-tion:PRP)が全例で施行されていた.この既治療患者のうち16名にFAを行った.OCTA画像の撮影には,RTVueXRAvanti(Optovue社)を用いた.後極部のNVEの撮影には,AngioReti-namodeで3×3mmの画角を選択し,患者固視点は固定してスキャン位置のみを動かして撮影した.NVDと視神経乳頭近傍のNVEの撮影には,AngioDiscmodeを選択し,3×3mmまたは4.5×4.5mmの画角を用いた.スキャン位置は,眼底観察において明らかな血管線維膜のある部位,またはFAにて蛍光漏出のある部位を含む領域とした.En-faceOCTA画像として新生血管を最大限に抽出し,網膜表層血管の映り込みを最小限にするため,OCTAのセグメンテーション上限は新生血管より上方の硝子体腔に,下限は内境界膜の直下に手動で調整した.新生血管の.owareaの測定には内蔵のソフトウェア(RTVue,version2015.100.0.35)を用いた.12眼においては,PRP治療前とPRP治療後(2カ月後)に同一部位の新生血管を撮影し,.owareaを定量した.統計には連続変数にMann-WhitneyUtestを用い,カテゴリ変数にはc2検定,またはFisherの正確確率検定を用いた.PRP前後の.owareaの定量値の比較には,Wilcoxonの符号順位検定を用いた.II結果本研究では,PDR患者33名(男性22名,女性11名)40眼を解析した.年齢は32~74歳,20眼が未治療PDR,残り20眼はすでにPRPが施行されていた.未治療群と既治療群において,年齢,性別,BMI,血圧,HbA1c値,糖尿病罹病期間に有意差は認められなかった.既治療眼におけるPRPからの期間は,6カ月~20年と幅があった.OCTAにおける新生血管の形態的特徴については,大きく二つの特徴的形態に分類された(図2).すなわち,新生血管の内部または辺縁に微細な異常血管が増殖した領域(exuberantvascularproliferation:EVP)があるタイプ(EVP[+]),または,剪定されたような血管のループ構造のみを認めEVPが存在しないタイプ(EVP[.])であった.未治療20眼では,FAにてNVD/NVEから著明な蛍光漏出を早期相より認め,OCTAでは19眼(95%)でEVP[+]と判定された(図3).一方,既治療20眼では13眼(65%)がEVP[+]であり,未治療群でEVP[+]と判定される例が有意に多かった(p=0.043).既治療群のうちEVP[+]の13眼では,FAにて依然として活動性のある蛍光漏出をきたし,PRPの追加が必EVP[+]EVP[-]図2OCTAで描出される新生血管の二つの特徴的形態a:未治療PDR眼のNVD.視神経乳頭上に異常血管を確認できるが()詳細な形態は不明である.b:aと同一部位のOCTA.NVDの形態が鮮明に描出され,で囲まれた部分に微細な異常血管が密に増殖したEVP領域を認める.c:PRP治療後1年が経過したPDR眼.部位に新生血管を認めるが,レーザー痕により詳細が十分観察できない.d:cと同一部位のOCTA.新生血管は剪定されたループ状のフィラメント構造をしており,EVP領域を認めない.(文献6より許可を得て改変転載)要と判断されたが,残りの7眼(35%)ではNVD/NVE(30/30)が著明な蛍光漏出をきたしたのに対し,EVPは剪定されたループ状の血管構築のみがOCTAで認め[.]のNVD/NVEでは83.3%(5/6)でわずかな蛍光られた.これらのEVP[.]の7眼では,検眼鏡的に血漏出を認めるのみであった.上記の結果より,FA早期管成分に乏しい白色の線維膜が観察され,FA早期相で相での旺盛な蛍光漏出をきたすNVD/NVEにおけるはわずかな蛍光漏出のみであった(図4).OCTAでのEVP検出感度は96.8%(30/31),特異度はFAが施行された36眼において蛍光漏出の観点から100%(5/5)であった.また,既治療眼において,EVP解析すると,NVD/NVEは全例で後期相(5分後以上)[+]眼におけるPRPからの経過年数(平均3.1年)はにて蛍光漏出を認めた.一方,早期相(造影後30秒~1EVP[.]眼(平均11.1年)に比較して有意に短かった分)については,EVP[+]のNVD/NVEでは100%(p=0.026).図3未治療PDR眼のFAとOCTAa~d:FA早期相において,旺盛な蛍光漏出をきたす活動性の高いNVD/NVEを認める().e~h:a~dの四角形破線部に対応した部位のOCTA(3×3mmまたは4.5×4.5mm画角).未治療のNVD/NVEではEVPを認める().i~l:e~hのOCTA画像における新生血管の中央を通るスライスのBスキャン.EVP[+]の12眼(未治療の8眼と,既治療だが活動性のNVD/NVEがある4眼)において,PRP(PRP追加を含む)を施行後(2カ月後)の時点で,再度FAとOCTAを撮影した.PRP後のNVD/NVEはFAでの漏出が減少し,OCTAでは剪定された構造となりEVP領域の減少を認めた(図5).また,NVD/NVEの.owareaは平均0.70mm2から,PRP後は平均0.47mm2へ有意に減少した(p=0.019).11眼においては.owareaは減少したが,1眼においてはPRP後に.owareaが増加していた(図6).症例提示:51歳,女性.PRP後にNVDの.owareaが増加した左眼の経時的変化を提示する(図7,8).初診時のFAでは明らかなNVDを認めなかったが,OCTAでは乳頭耳側辺縁にvascularsproutが確認された.3カ月後,このsproutからNVDが発育しEVP[+]であるため,PDRの診断にてPRPを開始した.その後,NVDは剪定された形状へ変化し,EVP領域の減少も認めたが,PRP終了(2カ月後)の時点でNVDはレーザーの施行されていない黄(文献6より許可を得て改変転載)斑部へ向かって進展していた.その3カ月後(図8),発生当初のNVDは比較的太い主幹血管のみを残して剪定された構造をとっていたが,黄斑近傍に進展した新生血管にはEVP領域の残存を認めた.III考按本研究において,OCTAによって描出されるPDRの新生血管は,EVPの有無により二つの形態に大別されることが明らかになった.EVP[+]の新生血管は未治療PDRのほぼ全例に認められ,FA早期相において旺盛な蛍光漏出をきたすのに対し,EVP[.]のループ状に剪定された新生血管は血管成分に乏しい白色の線維血管膜となった既治療PDRにおいて認められ,蛍光漏出も軽度であった.未熟な(幼若な)新生血管は成熟した(古い)新生血管に比して,FAにおいてより早期に旺盛な蛍光漏出をきたすことが報告されており7),実臨床でもFAの漏出の程度で活動性を判定している.したがって,上記の結果はOCTAにてEVPの有無を判定することにより,新生血管の活動性を推測できる可能性があ図4既治療PDR眼のFAとOCTAa,b:PRPを約C10年前に施行されたCPDR眼.Cc,d:a,bの部分のCOCTA.NVDはフィラメント状であり,EVPを認めない.Ce,f:FA早期相での蛍光漏出はごく軽度.(文献C6より許可を得て改変転載)FA早期OCTAaPRP前bPRP開始後2カ月図5汎網膜光凝固術(PRP)前後のNVDa:PRP開始前.FA早期相で新生血管から旺盛な蛍光漏出を認め,OCTAではCEVPを認める().b:PRP開始後2カ月.FAでは蛍光漏出が減少し,新生血管はフィラメント状に剪定されたループ構造()になっている.ることを示唆している.また,PDR眼における眼内CVEGF濃度は活動性に相関しており,PRPによって低下することは周知の事実である8,9).さらに,抗CVEGF抗体投与による新生血管からの蛍光漏出の減少や,血管径の減少も多数報告されている10,11).本研究におけるCPRP前後の検討でも,PRP後のCEVP減少とCFAでの蛍光漏出の減少は一致しており,EVPの減少は眼内CVEGF濃度の低下を予測できるかもしれない.これまでの組織学的検討から,PDRの新生血管においてCangio-.broスイッチという概念が提唱されている12,13).すなわち,抗CVEGF抗体の投与により線維血管膜において内皮系マーカーであるCCD34が減少し,(文献C6より許可を得て改変転載)一方で平滑筋のアクチンやコラーゲンなどが増加へスイッチすることが報告されている13).OCTAにおけるEVP領域は未熟性の高い発育部位に相当し,VEGF抑制の影響を強く受ける一方で,EVPのない剪定された形状の新生血管は,より線維化した増殖組織に相当すると考えられる.さらに,SpaideはCOCTAで描出される脈絡膜新生血管(choroidalneovascularizaiotn:CNV)の形態的特徴について興味深い提言をしている14).未治療のCCNVはVEGFなどのサイトカインによって増生(本研究のEVPに相当)をしているが,抗CVEGF療法によってpericyteに乏しい未熟な部分が退縮する.一方,peri-cyteが比較的豊富な血管は残存し,そこに血流が集中eb(mm2)FlowAreaofNeovascularization21.81.61.41.210.80.60.40.20図6PRP前後でのNVD/NVEの.owareaを定量a,b:PRP前(Ca)のCNVEのC.owareaはC1.82CmmC2であったが,PRP後(Cb)にはC0.95CmmC2へ減少した.c,d:PRP前(Cc)のCNVDのC.owareaはC1.89CmmC2.PRP後(Cd)にはC0.84CmmC2へ減少した.e:PRP前後を検討したC12眼中,11眼でC.owareaはCPRP後に減少したが,1眼で増加を認めた().(文献C6より許可を得て改変転載)cdAfter図7PRP後に.owareaが増加した1眼のNVDの臨床経過a:51歳,女性.左眼(初診時)の眼底写真.Cb:初診時のCFA早期相.明らかな新生血管は認められない.Cc:初診時,視神経乳頭下方のCOCTA(aの部).Vascularsproutを認めている().d:6週間後CNVDが発育してきた.Ce:初診からC3カ月後,二つのCsproutがつながり,EVP[+]のCNVDとなった.この時点でCPRPを下方から反時計回りに開始した.Cf,g:2~4週間でCNVDは剪定され,EVPが減少してきた().h~j:PRP終了後~2カ月後,NVDは黄斑へ向かって進展していった().(文献C6より許可を得て改変転載)図8図7の症例のPRP終了後3カ月のモンタージュOCTAa:眼底写真.白色の増殖膜が視神経乳頭から黄斑にかけて残存している.Cb:aの矢印部位のCOCTBスキャン.厚い増殖膜を認め(▽),後部硝子体.離を認めない.Cc:同部位におけるC3C×3CmmOCTA画像C3枚から作成したモンタージュ画像.発生当初のCNVDは比較的太い主幹血管となり(),ほかの部位はフィラメント状に剪定されている.一方で,黄斑に向かって進展した領域には,一部CEVPの残存を認めている().するためシェアストレスにより血管径の増大をきたす.抗CVEGF抗体の効果が減弱すると未熟な血管の増生は再発し,抗CVEGF療法によってまた退縮する.上記のサイクルを繰り返すことにより,残存した新生血管は非生理的な吻合をした短絡血管様に変化していくと述べている.本研究におけるCNVD/NVEのCEVPの変化,とくに代表症例におけるCNVDの発芽から進展,退縮をたどる過程は,上記CCNVの過程に酷似しており,OCTAを用いることでCPDRにおける新生血管の詳細な形態変化を経時的に初めてとらえることができたと考えている.おわりにOCTAは撮影画角が狭く,周辺部の新生血管検出に(文献C6より許可を得て改変転載)は不向きであることが当初の問題であった.しかし,急速な機器開発によってその問題は解消されつつある.とくにCswept-sourceOCTを用いたモンタージュ撮影により,高解像度を保持したまま広画角のCOCTA画像を,比較的簡便に得られるようになってきている15)(図9).高画質なCOCTA画像からは,EVPの有無を判断することができるため,FAによる蛍光漏出所見の代用として非侵襲的に活動性を判定できる可能性がある.OCTAは「平成C30年度診療報酬改定」によって保険点数が付与され,ますますの普及が期待される.本研究の成果が,FAの代替手段としてのCOCTAの利用価値を高め,糖尿病網膜症診療をより安全で,より精度の高いものにする一助となれば幸いである.稿を終えるにあたり,学術奨励賞選考委員会委員の先図9未治療PDRの広角パノラマOCTASwept-sourceOCTTriton(Topcon)を用いて,9C×9Cmm(512C×512画素)OCTA画像C3枚からパノラマ画像を作成した.血管アーケード内外の無灌流領域,網膜内細小血管異常(),新生血管()が鮮明に描出されている.また,新生血管はCEVP[+]であると判断できる.(石羽澤明弘:今,OCTangiographyでわかること・わからないこと4.糖尿病網膜症.眼科59:229-236,2017より改変引用)生方,第C23回糖尿病眼学会総会会長の今泉寛子先生に深く感謝申し上げます.また,多くのご指導,ご支援をいただいている旭川医科大学眼科学講座吉田晃敏教授(学長),糖尿病網膜症外来をはじめとする医局員の先生方,数理情報科学講座高橋龍尚先生,美しい画像を提供して下さる視能訓練士の方々に厚くお礼申し上げます.利益相反:石羽澤明弘(カテゴリーCF:ニデック,カールツァイスメディテック,トプコン,カテゴリーCR:トプコン,ニデック,中央産業貿易,参天,ノバルティス,カールツァイス,興和,千寿)文献1)GradingCdiabeticCretinopathyCfromCstereoscopicCcolorCfun-dusCphotographs–anCextensionCofCtheCmodi.edCAirlieCHouseCclassi.cation.CETDRSCreportCnumberC10.CEarlyCTreatmentCDiabeticCRetinopathyCStudyCResearchCGroup.COphthalmologyC98:786-806,C19912)ChoH,AlwassiaAA,RegiatieriCVetal:Retinalneovas-cularizationsecondarytoproliferativediabeticretinopathycharacterizedCbyCspectralCdomainCopticalCcoherenceCtomography.RetinaC33:542-547,C20133)MuqitMM,StangaPE:Fourier-domainopticalcoherencetomographyCevaluationCofCretinalCandCopticCnerveCheadCneovascularisationinproliferativediabeticretinopathy.BrJOphthalmolC98:65-72,C20144)LeeCCS,CLeeCAY,CSimCDACetal:ReevaluatingCtheCde.nitionCofCintraretinalCmicrovascularCabnormalitiesCandCneovascularizationelsewhereindiabeticretinopathyusingopticalCcoherenceCtomographyCandC.uoresceinCangiogra-phy.AmJOphthalmolC159:101-110,C20155)IshibazawaCA,CNagaokaCT,CTakahashiCACetal:OpticalCcoherenceCtomographyCangiographyCinCdiabeticCretinopa-thy:ACprospectiveCpilotCstudy.CAmCJCOphthalmolC160:C35-44,C20156)IshibazawaA,NagaokaT,YokotaHetal:CharacteristicsofCretinalCneovascularizationCinCproliferativeCdiabeticCreti-nopathyimagedbyopticalcoherencetomographyangiog-raphy.InvestOphthalmolVisSciC57:6247-6255,C20167)MillerH,MillerB,ZonisSetal:Diabeticneovasculariza-tion:permeabilityCandCultrastructure.CInvestCOphthalmolCVisSciC25:1338-1342,C19848)AielloLP,AveryRL,ArriggPGetal:Vascularendotheli-alCgrowthCfactorCinCocularC.uidCofCpatientsCwithCdiabeticCretinopathyCandCotherCretinalCdisorders.CNCEnglCJCMedC331:1480-1487,C19949)OgataCN,CNishikawaCM,CNishimuraCTCetal:UnbalancedCvitreousClevelsCofCpigmentCepithelium-derivedCfactorCandCvascularendothelialgrowthfactorindiabeticretinopathy.AmJOphthalmolC134:348-353,C200210)AveryCRL,CPearlmanCJ,CPieramiciCDJCetal:Intravitrealbevacizumab(Avastin)inCtheCtreatmentCofCproliferativeCdiabeticCretinopathy.COphthalmologyC113:1695,Ce1-e15,C200611)SpaideRF,FisherYL:Intravitrealbevacizumab(Avastin)Ctreatmentofproliferativediabeticretinopathycomplicatedbyvitreoushemorrhage.RetinaC26:275-278,C200612)KuiperCEJ,CVanCNieuwenhovenCFA,CdeCSmetCMDCetal:CTheangio-.broticswitchofVEGFandCTGFinprolifera-tivediabeticretinopathy.PloSOneC3:e2675,C200813)El-SabaghCHA,CAbdelgha.arCW,CLabibCAMCetal:Preop-erativeCintravitrealCbevacizumabCuseCasCanCadjuvantCtoCdiabeticvitrectomy:histopathologicC.ndingsCandCclinicalCimplications.OphthalmologyC118:636-641,C201114)SpaideRF:OpticalCcoherenceCtomographyCangiographyCsignsCofCvascularCabnormalizationCwithCantiangiogenicCtherapyforchoroidalneovascularization.AmJOphthalmolC160:6-16,C201515)石羽澤明弘:OCTangiographyによる糖尿病網膜症の評価.CDiabetesFrontierC28:291-297,C2017☆☆☆

II.視路病変編 自閉症スペクトラムの視覚特性

2019年5月31日 金曜日

II.視路病変編自閉症スペクトラムの視覚特性VisualImpairmentinAutismSpectrumDisorder松下賢治*はじめに自閉症スペクトラム(autismCspectrumdisorder:ASD)は近年非常に注目されている一連の精神疾患の総称である.その数は増加傾向にあり,米国で放送されている「セサミストリート」という教育番組でもその疾患を取りあげている.新たに登場する自閉症(autism)をもつ子供のキャラクターである「Julia」は,制作段階において十分に時間をかけて創り出されたとされている.セサミストリート制作スタッフは疾患の特性を詳細に調べており,その中にCASDの視覚特性が正確に表現されている.また,Juliaのパペットを操る担い手は自閉症をもつ母親であり,その動きはリアルそのものである.この視覚特性はあまり眼科では取りあげられていないが,その社会的重要性から今後眼科医も無視できない分野になると思われる.CI発達障害とは何か現在用いられている意味での「発達障害」が話題になりはじめて,まだ長い年月は経っていない.以前は発達の遅れが明らかな比較的重度の障害を意味するものとして「発達障害」が使われていたが,現在は注意欠陥多動性障害(attentionCde.citChyperactivitydisorder:ADHD)や高機能自閉症(high-functioningCautismspectrumdisorders:HFASD,アスペルガー症候群)などの一連の障害をまとめる概念として用いられている.それぞれの障害のおもな特性を図1に示す.2013年に米国精神医学会(AmericanCPsychiatricAssociation:APA)が作成する精神疾患の分類と診断の手引(Diag-nosticCandCStatisticalCManualCofCMentalDisorders:DSM)が改訂され,第C5版(DSM-5)が発表された.DSM-5での根本的な変更は,自閉性障害,アスペルガー症候群,特定不能の広汎性発達障害(pervasiveCdevel-opmentalCdisorder-notCotherwisespeci.ed:PDD-NOS),小児期崩壊性障害,Rett障害という亜型分類を撤廃し,autismspectrumdisorders(ASD)という単一の疾患としてまとめたことと,ASDの症状の定義を,①対人,社会的コミュニケーション障害と,②限局性反復性行動にまとめたことである.さらにわれわれ眼科医に関連する点として,診断基準の副次項目に感覚反応の亢進あるいは低下という項目が新たに追加された1,2).CIIASDは多い疾患なのかわが国におけるCASDの有病率は診断基準の違いのため単純な比較は困難だが,1996年はC0.21%3),2005年はC0.27%4),2012年はC4.48%5)と近年増加している.また,DSM改訂前の世界におけるCASDの有病率は1~2.6%と報告されているが6,7),2014年米国疾病コントロールセンターは全米のCASD有病率はC68人にC1人であるというデータを発表しており8),世界中でCASDと診断される人が急増している.*KenjiMatsushita:大阪大学大学院医学系研究科脳神経感覚器外科学講座眼科学〔別刷請求先〕松下賢治:〒565-0871吹田市山田丘C2-2大阪大学大学院医学系研究科脳神経感覚器外科学講座(眼科学)C0910-1810/19/\100/頁/JCOPY(61)C631図1発達障害とは(発達障害の理解と対応,p.3,中山書店,2014より改変)図2自閉症スペクトラムの特徴(SESAMESTREETより転載)表1自閉症スペクトラムの視覚特性=図4Meares.Irlensyndrome(MIS)表2症例—