脈絡膜の最新の画像検査CurrentStatusofChoroidalAnalysis川野浩輝*園田祥三*I脈絡膜の解剖と血流脈絡膜とは強膜と網膜の間に位置する厚さ0.1~0.3mmの血管と色素に富んだ黒褐色の膜で,眼球の内面の3/4の広い面積を覆っており,最内側のBruch膜(Bruchmembrane)とその外層の血管層からなる.Bruch膜は電子顕微鏡では5層に区別され,網膜側より網膜色素上皮細胞(retinalpigmentepithelium:RPE)の基底板,内側膠原線維層,弾性線維層,外側膠原線維層,毛細血管板内皮細胞の基底板からなり,網膜と脈絡膜の接着や物質代謝に関与し,外血液網膜柵としての重要な機能がある.加齢黄斑変性(age-relatedmaculardegeneration:AMD)の前駆病変として知られているドルーゼンはBruch膜内の膠原線維層内に沈着していることが知られている.血管層はさらに内側から脈絡膜毛細血管板(chorio-capillaris)とSattlerlayer,Hallerlayerに分けられる1).脈絡膜毛細血管板は,厚さ数μm,幅10~20数μmの扁平な有窓型の毛細血管が二次元的に密集した血管網で,栄養の運搬や,網膜で生じた熱を放熱するラジエーターとしての機能があるとされている.その外側の血管層のSattlerlayerとHallerlayerとの間に明確な境界はないが,一般的に大血管は強膜よりに,中等大血管は網膜よりに位置しており,血管層の容積は血流量によって変化している2).近年は脈絡膜の血管面積や血流を定量的に評価しようという試みが数多くなされているが,この脈絡膜血管は眼動脈から分枝した短後毛様動脈から動脈血の供給を受け,一部,長後毛様動脈,前毛様動脈の反回枝からも供給を受けており,静脈血は赤道部にある過静脈から排出されている.脈絡膜の血流は眼血流量の70%以上を占めているが,とくに錐体細胞の密集している後極部の脈絡膜は動脈の占める割合が周辺部よりも大きく,血流が豊富である.赤道部の過静脈付近では巨大な脈絡膜静脈が集中しているが,水平径線上では脈絡膜動脈が占める割合が大きい.さらに周辺部では静脈が90%以上を占める3).このように脈絡膜は動脈と静脈が複雑に入り組んだ血流の豊富な組織であり,さまざまな疾患の病態へ関与しているであろうことは想像にかたくない.しかし,検眼鏡的に評価しやすい網膜血管とは違い,脈絡膜はRPEの裏側にあるために観察がむずかしい組織であった.II脈絡膜の画像検査1.IAが主体であった脈絡膜の評価網脈絡膜血流評価の方法にはフルオレセイン蛍光眼底造影検査(.uoresceinangiography:FA)やインドシアニングリーン蛍光眼底造影検査(indocianinegreenangiography:IA)があり,それぞれおもに網膜,脈絡膜の評価に長年使用されてきた.IAは脈絡膜新生血管(choroidalneovascularization:CNV)や,ポリープ状脈絡膜血管症(polypoidalchoroidalvasculopathy:*HirokiKawano&*ShozoSonoda:鹿児島大学大学院医歯学総合研究科感覚器病学眼科学〔別刷請求先〕園田祥三:〒890-8520鹿児島市桜ヶ丘8-35-1鹿児島大学大学院医歯学総合研究科感覚器病学眼科学0910-1810/17/\100/頁/JCOPY(3)1641図1インドシアニングリーン蛍光眼底造影検査による特徴的な画像a:ポリープ状脈絡膜血管症.明瞭なネットワークとポリープ状病巣が確認できる.b:網膜内血管腫状増殖(RAP).網膜血管とCNVの吻合が明らかである.8,9).“Pachy”とは“厚い”という意味であるが,中でもCSCの特徴(異常に厚い脈絡膜,IAでの脈絡膜血管透過性亢進所見など)をもちながら,CSCにみられる漿液性網膜.離(serousretinaldetachment:SRD)やFAでの明らかな漏出を示さないpachychoroidpig-mentepitheliopathyや,さらにこれらにCNVを生じたpachychoroidneovasculopathyが注目されている.欧米人のneovascularAMDでは高頻度に軟性ドルーゼンがみられ,ドルーゼンが病態に深く関与しているとされているが,アジア人のAMD,とくにPCV例では,ドルーゼンがなく,脈絡膜が厚く,CSCの既往をもつ例が少なくない.こういったアジア人に特有のAMDをpachychoroidneovasculopathyとして,欧米型のneo-vascularAMDと区別することで,両者の表現型の違いを説明できるのではないかと考えられつつある.また,遺伝学的にもpachychoroidneovasculopathyとneovas-cularAMDは異なっていることが示されており10),さらなる病態解明により,治療法の選択に影響するような鑑別となりうる可能性もある.3.厚みから2階調化による質的評価への移行その後,脈絡膜研究は徐々に質的な評価軸へと移行した.筆者らはOCTB-scan像において,脈絡膜は血管腔が黒っぽく,間質が白っぽく描出されることに注目し,2階調化の手法によって,脈絡膜血管腔とそれ以外の成分を分けて解析する方法を考案した11).階調とは色の濃淡の変化のことで,通常のデジタル画像は256階調で表現されるが,これを白と黒に置き換えるのが2階調化である.この手法によって,脈絡膜の血管腔・間質を客観的に定量解析することが可能となった(図2).筆者らはこの方法で健常眼,PCVに対するPDT前後,原田病に対するステロイド加療前後,網膜色素変性(retinitispigmentosa:RP)眼,CSC眼についての報告を行った.一般的に脈絡膜厚は加齢に伴って減少するが,脈絡膜面積においては,間質よりも管腔の減少が大きい12).また,PCV患者にPDTを行うと脈絡膜厚が減少することは知られているが,減少率は間質よりも血管腔のほうが大きく,PDTがおもに脈絡膜血管に対して作用をしていることが再確認された11).原田病ではステロイド大量療法後に脈絡膜厚が減少するが,間質の減少率が管腔よりも大きいことがわかり,脈絡膜内への細胞浸潤がステロイドにより改善するという病理学的検討と一致する結果となった13).RPにおいては自発蛍光でauto.uorescentring(AFring)とよばれるドーナツ状の異常過蛍光がみられ,AFringの外側ではellipsoidzoneと外境界膜(externallimitingmembrane:ELM)が消失し,脈絡膜厚が薄くなっていることが知られている.このAFringの内側と外側で2階調化による構造解析を行うと,AFringの外側では内側に比べて,実質よりも管腔の割合が減少していることがわかった14).これはAFringの外側ではRPEが障害されているために脈絡膜血管構造が維持できないという考察もでき,興味深い結果である(図3).さらに筆者らは,この2階調化にBranchiniらが報告している15)脈絡膜の層別解析を加えての検討も行った.CSCでは脈絡厚が厚いことが知られているが,脈絡膜内層と外層の層別で検討すると,CSC眼では正常眼と比べ,脈絡膜内層では間質比率が拡大し,逆に外層では血管腔比率が拡大していた.CSCにPDTを行うと,脈絡膜厚は減少し正常対照群に近づくが,この際,脈絡膜内層は間質,外層は管腔面積が減少することで正常に近づくことがわかった16).これはCSCにおける脈絡膜毛細管板レベルでの血管閉塞や脈絡膜大血管のうっ血が,(5)あたらしい眼科Vol.34,No.12,20171643図32階調化による網膜色素変性(RP)眼の脈絡膜の構造解析a:RPの自発蛍光ではCAFringとよばれるドーナツ状の異常過蛍光がみられる.Cb:AFringの外側ではCellipsoidzoneと外境界膜(ELM)が消失し,脈絡膜厚が薄くなっている.Cc:2階調化による解析でCAFringの外側の脈絡膜は,網膜色素上皮細胞(RPE)が比較的保たれているCAFringの内側に比べて,実質よりも管腔割合が低下していた.図42階調化による中心性漿液性脈絡網膜症(CSC)眼の脈絡膜の構造解析左段は健常対照眼,中央段はCCSC罹患眼,右段はCCSC眼の僚眼.CSC眼でとくにCHallerlayerの拡張がみられる.図5ポリープ状脈絡膜血管症(PCV)症例のインドシアニングリーン蛍光眼底検査(IA)とOCTangiographyの所見の違いa:OCT水平スキャン像.doublelayersignとして示されるネットワーク血管から連なるポリープ状病巣を示す網膜色素上皮.離(PED)が確認できる.Cb:IA.明瞭なポリープ状病巣と淡く描出されるネットワーク血管が確認できる.c:OCTangiography.ネットワーク血管は高輝度かつ辺縁明瞭であるのに対し,ポリープ状病巣はやや輝度が低く描出される.C図6OCTangiographyで観察される脈絡膜a:通常,OCTangiographyにおいて,描出セグメントを脈絡膜に合わせると,脈絡膜血管は低輝度で描出されてしまう.Cb:脈絡膜が薄い強度近視眼において,描出セグメントを強膜側にずらすと,強膜がスクリーンの役割を果たしCprojectionartifactにより脈絡膜血管が高輝度として描出される.cd図7APachychoroidneo-vasculopathy(53歳,男性).右眼.視力0.5.a:右眼眼底写真.中心窩近傍に網膜出血がある.Cb:OCT水平スキャン像.Dou-bleClayerCsingと,わずかに下液認める.Cc:OCTCangi-ography.明瞭な脈絡膜新生血管(CNV)が確認できる.Cd:インドシアニングリーン蛍光眼底検査(IA).過蛍光領域あり脈絡膜血管透過性亢進を認める.C図7B図7Aの同一症例の左眼CSC.視力1.2a:左眼眼底写真.Cb:OCT水平スキャン像.中心窩付近に下液はないが黄斑の耳上側に漿液性網膜.離(SRD)を認める.Cc:フルオレセイン蛍光眼底検査(FA)(早期と後期).SRDの部位は過蛍光点が時間経過とともに円形に拡大している.耳下側には網膜色素上皮細胞(RPE)萎縮(atrophicCtract)も観察できる.d:IA.散在する過蛍光領域あり脈絡膜血管透過性亢進を認める.はおもに脈絡膜深部の血流を反映すると考えられている.原田病の急性期には,MBRは低下しているが,ステロイド加療後に増加する24).また,CSCの急性期はMBRが増加しており,SRDの消失に伴い低下することが示されている25).前述のとおり,原田病においては急性期に脈絡膜内に炎症細胞浸潤があるためにCLSFGでは血流が低下していると推察される.また,CSCにおいては脈絡膜血管透過性亢進が病態の主体であると考えられており,LSFGもこれを支持する結果であった.これらの結果は,筆者らのC2階調化による研究結果とも合致しており,さまざまな機器や解析方法を組み合わせたmultimodalimagingにより,既存疾患の病態が新たに解明されつつある.CIII代表症例ここまでの検査などを組み合わせることが診断に有用であった代表症例を示す.53歳,男性.両眼のCHallerlayerを中心とした血管拡張のあるCpachychoroidがある.右眼は中心窩付近に網膜出血があり,OCTでは中心窩上方にわずかに下液を認め,CNVを示すCdoublelayerCsignがある.同部位はCOCTCangiographyで明瞭にCCNVが確認できる.IAでは過蛍光領域が散在し,脈絡膜血管透過性亢進所見を認める.左眼は黄斑耳上側に限局したCSRDを認める.同部位にはCFAで拡大する蛍光漏出点があり,さらにその下方のCatrophictractは網膜下液漏出の既往があったことをうかがわせる.IAでは右眼同様に脈絡膜血管透過性亢進が散在している.以上より右眼はCpachychoroidCneovasculopathy,左眼はCCSCと診断とした(図7).両眼ともドルーゼンはなく,いわゆるCpachychoroidをベースとした病態が発症に関与していると考えられ,今後このようなケースを大規模で検討することで,日本人のCAMDの病態解明や,より適した治療法の選択につながるのではないかと期待される.おわりに脈絡膜の構造と血流,その検査法としてのIA,OCT,LSFGが脈絡膜研究にどのように影響を与え,変遷していったかについて述べた.従来評価困難とされ眼球の中の“enigma”であった脈絡膜はさまざまな手法で徐々に解明されつつある.近年,見直されつつあるCPDTもpachychoroidという概念と密接にかかわっており,今後も脈絡膜研究から目が離せない.文献1)猪俣孟:脈絡膜.目の組織・病理アトラス.p126-127,医学書院,20012)佐々由季生・畑快右:脈絡膜の血管構造と血流.大鹿哲郎(編):眼科プラクティスC6眼科臨床に必要な解剖生理.p243-247,文光堂,20053)島田下佳明・米谷新:脈絡膜の血管構造と血流.大鹿哲郎(編):眼科プラクティスC6眼科臨床に必要な解剖生理.p248-253,文光堂,20054)日本ポリープ状脈絡膜血管症研究会:ポリープ状脈絡膜血管症の診断基準.日眼会誌109:417-427,C20055)KoizumiCH,CYamagishiCT,CYamazakiCTCetCal:RelationshipCbetweenCclinicalCcharacteristicsCofCpolypoidalCchoroidalCvasculopathyCandCchoroidalCvascularChyperpermeability.CAmJOphthalmolC155:305-313,C20136)MarukoCI,CIidaCT,CSuganoCYCetCal:SubfovealCretinalCandCchoroidalCthicknessCafterCvertepor.nCphotodynamicCthera-pyCforCpolypoidalCchoroidalCvasculopathy.CAmCJCOphthal-mol151:594-603,C20117)SpaideCRF:EnhancedCdepthCimagingCopticalCcoherenceCtomographyCofCretinalCpigmentCepithelialCdetachmentCinCage-relatedCmacularCdegeneration.CAmCJCOphthalmolC147:644-652,C20098)WarrowCDJ,CHoangCQV,CFreundCKB:PachychoroidCpig-mentepitheliopathy.RetinaC33:1659-1672,C20139)PangCCE,CFreundCKB:PachychoroidCneovasculopathy.CRetinaC35:1-9,C201510)MiyakeM,OotoS,YamashiroKetal:Pachychoroidneo-vasculopathyCandCage-relatedCmacularCdegeneration.CSciCRepC5:16204,C201511)SonodaCS,CSakamotoCT,CYamashitaCTCetCal:ChoroidalCstructureinnormaleyesandafterphotodynamictherapydeterminedCbyCbinarizationCofCopticalCcoherenceCtomo-graphicimages.InvestOphthalmolVisSciC55:3893-3899,C201412)SonodaCS,CSakamotoCT,CYamashitaCTCetCal:LuminalCandCstromalareasofchoroiddeterminedbybinarizationmeth-odCofCopticalCcoherenceCtomographicCimages.CAmCJCOph-thalmol159:1123-31,C201513)KawanoH,SonodaS,YamashitaTetal:Relativechang-esinluminalandstromalareasofchoroiddeterminedbybinarizationCofCEDI-OCTCimagesCinCeyesCwithCVogt-Koy-anagi-HaradaCdiseaseCafterCtreatment.CGraefesCArchCClinCExpOphthalmolC25:421-426,C201614)KawanoCH,CSonodaCS,CSaitoCSCetCal:ChoroidalCstructureCalteredCbyCdegenerationCofCretinaCinCeyesCwithCretinitisC1648あたらしい眼科Vol.34,No.12,2017(10)-