監修=木下茂●連載212大橋裕一坪田一男212.円錐角膜に対する角膜内リングの効果菅沼隆之岡眼科クリニック円錐角膜に対する角膜内リング挿入術は,円錐角膜の角膜形状を改善し,不正乱視を軽減することによって眼鏡矯正視力の向上が期待できる.手術による視力低下はみられない安全性の高い術式で,早期に行うほど術後視力の向上と維持が望める.●はじめに円錐角膜は,進行性の疾患で,角膜中央近傍の菲薄化,脆弱化に伴い角膜が前方突出する.部分的な角膜突出の影響で角膜不正乱視が増大し,眼鏡矯正視力(以下,視力)が低下する.重症化に伴い視力低下が強くなり,進行するとCDescemet膜破裂を起こし急性水腫となる.急性水腫や角膜混濁が生じるとコンタクトレンズでの矯正もむずかしくなる.これまで円錐角膜の治療は,コンタクトレンズでの矯正で経過をみながら,重症化したら角膜移植を行うというものであった.現在では,病期の進行予防と維持目的で角膜クロスリンキングが行われ,角膜形状の改善と維持を目的に角膜内リング(intrastromalCcornealCringsegments:ICRS)挿入術が行われている1,2).ICRS挿入術は,元は軽度近視に対する治療として始まったが,近年ではおもに円錐角膜をはじめペルーシド角膜辺縁変性症などの角膜変形疾患に対して,角膜形状の改善のために用いられている.以前はマニュアルでの角膜内トンネル作製の煩雑さやむずかしさがあったが,フェムトセカンドレーザーの開発に伴い,精確で安全な角膜内トンネル作製が可能になり,世界で広く行われるようになっている(図1).C●角膜内リングの種類ICRSは,Intacs,IntacsSK(AdditionCTechnology社)とCKeraring(Mediphacos社)が販売されている.半円弧状のCPMMA(ポリメチルメタクリレート)製のリングで二つのセグメントからなり,円錐角膜の矯正効果はリングの直径が小さいほど,厚いほど,円弧角度が大きいほど強い.KeraringのほうがCIntacsよりリング直径が小さく,矯正効果は強いが,リングが瞳孔領にかかると乱反射などが起こりやすいことと,角膜の菲薄化でリング自体が挿入できない場合があるため,当院ではIntacs,IntacsSK(図2)を採用している.以下,当院での自験例を含め,Intacs,IntacsSKでの治療の実際を紹介する.abIntacsCIntacsSK材質CPMMACPMMA円弧角度C150°C150°断面形状八角形楕円リング内周径C6.8CmmC6.0Cmmリング幅C1.3CmmC1.3Cmm厚さ210~C450Cμm210~C550Cμm図1角膜内リング挿入術後1カ月の前眼部写真角膜C11時部より対称的に挿入.6.0Cmm以上のCopticalzone.図2Intacssegmentの外観とIntacs,IntacsSKの規格a:Intacsは半円弧状のCPMMA製のリングである.Cb:矯正効果はリングの直径が小さいほど,厚いほど強い(Intacs<IntacsSK).C(101)あたらしい眼科Vol.35,No.1,2018C1010910-1810/18/\100/頁/JCOPY表1術前と術後12カ月の眼鏡視力とK.max群A群(0C.7以上)CB群(0C.3~0C.6)CC群(0C.2以下)C全症例C眼鏡視力K-max(D)術前0.900.410.090.39術後C12カ月1.01(Cp=0.26)C0.50(Cp<C0.05)C0.22(Cp=0.01)C0.59(Cp<C0.01)C術前55.0058.5062.5058.10術後C12カ月52.2(Cp<C0.05)54.0(Cp=0.001)55.3(Cp=0.001)52.9(Cp=0.001)経過観察期間A群(0.7以上)B群(0.3~0.6)C群(0.2以下)図4平均眼鏡視力の経過(術前眼鏡視力別)各群で術後より視力が改善した.B群で術後C0.7以上に改善した症例はあったが,C群症例でC0.7以上に改善した症例はなかった.A群:n=20,B群:n=20,C群:n=12.●手術とリング設定手術は角膜内トンネルをフェムトセカンドレーザーで作製し,角膜内リングを挿入するだけのシンプルなものである.角膜内トンネルはC400Cμm以上の深さを確保する必要があるので,術前に前眼部COCTで挿入部の角膜厚がC500Cμm以上あることを確認する.円錐角膜の進行度の評価は症例によるバリエーションが多く,一律にその評価をすることがむずかしいが,不正乱視の増大と視力には相関があり,臨床的な円錐角膜進行度の評価として眼鏡矯正視力が適していると筆者は考えている.挿入するリングの各症例に対する明確な設定やノモグラム3)がないので,IntacsとCIntacsSKの選択,セグメントの厚さ,同一の厚さを挿入するシンメトリーか異なる厚さのアシンメトリーにするか,挿入部位置についても検討しなければならない.これらのリング設定に関して,オーブスキャンなどの角膜形状のデータをCAT社に送り,推奨するリング設定などに関してコンサルトを受けることができる.C●角膜内リングの効果実際の治療効果について,当院の自験例を提示する.対象は円錐角膜でCICRS挿入術を行ったC42例C52眼,平均年齢C33.2歳.イントラレースCiFSレーザー(AMO社)102あたらしい眼科Vol.35,No.1,2018C経過観察期間図3平均眼鏡視力の経過(全体)術後より視力改善した.術後C12カ月経過で視力低下例なし(n=52).Cで角膜内トンネルを作製し,Intacsまたは,IntacsSKの挿入を行った.術前視力別にCA群(0.7以上)20眼,B群(0.3~0.6)20眼,C群(0.2以下)12眼に分類し,術前と術後の視力,最大角膜屈折(K-max)を比較検討(Wilcoxon検定)した.K-maxはCTMS-4(トーメーコーポレーション)で測定した.術前と術後C12カ月の経過を表1に示す.症例全体では視力(図3)とCK-maxは優位に改善した.術前視力別では,視力はCBC群で有意に改善(図4)し,K-maxはABC群すべてで有意に改善した.すべての症例でK-maxが改善し,術後視力は向上もしくは不変で,視力が悪化した症例はなかった.また,重症のCC群でも視力の改善は認めたが,術後視力がC0.7以上になる症例はなかった.C●円錐角膜治療における角膜内リングの適応時期円錐角膜に対するCICRS挿入術は,角膜形状の改善とともに不正乱視が軽減し,視力の改善が望める.手術による視力の低下がない安全性の高い術式で,術前視力が比較的よい軽症の症例ほど術後視力の向上維持が期待できる.重症の急性水腫後や角膜混濁のある症例でも視力改善はあるが,大きな改善は望めない.円錐角膜治療でのCICRS挿入術の手術時期は,視力低下が出はじめる早い段階で行うことが望ましいと考える.文献1)Fernandez-VegaCuetoLetal:Intrastromalcornealringsegmentimplantationin409paracentralkeratoconiceyes.CorneaC35:1421-1426,C20162)FahdDCetal:IntrastromalcornealringsegmentSKformoderateCtoCsevereCkeratoconus:aCcaseCseries.CJCRefractCSurgC28:701-5,C20123)ShettyCRCetCal:DecisionCmakingCnomogramCforCintrastro-malCcornealCringCsegmentsCinCkeratoconus.CIndianCJCOph-thalmolC62:23-28,C2014(102)C