———————————————————————-Page10910-1810/07/\100/頁/JCLSみ評価の対象となる(図1左).OPD-Scanの良い点は,収差変化の大きい眼でもほとんどの場合測定が可能なことである.ハルトマンシャック(Hartmann-Shack)ではあまり収差変化が大きいと,Hartmann像が解析できず測定不能となることがあるが,OPD-Scanではほとんど経験しない.屈折矯正術後のような収差の多い眼の測定にOPD-Scanは適している.IILASIK術後の高次収差OPD-Scanで解析径6mmの高次収差を測定しようとすると5.5mm程度の瞳孔径は必要となる.近視および近視性乱視LASIKをニデック社のエキシマレーザーEC-5000とマイクロケラトームMK-2000を用いて行った症例のうち,自然瞳孔で5.5mm以上瞳孔径があった症例のみを対象として,LASIKの術前・術後の高次収差を測定したものが図2である.照射方法はスタンダード照射であり,オプチカルゾーン(opticalzone:OZ)6mm,トランジションゾーン(transitionzone:TZ)7mmで行った.術前約0.4μmの高次収差が,術後は平均6Dの矯正で0.7μm以上に増大している.術後1年と比較すると,術後1カ月は有意に大きい値をとり,術後高次収差は3~6カ月で安定することがわかる.OPD-Scanで確実に測定時瞳孔径5.5mmを確保することは全例にはむずかしく,筆者らの施設では以前はフェニレフリンで散瞳した状態で高次収差の測定を行っはじめにLASIK(laserinsitukeratomileusis)術後には近視や乱視が減少するかわりに,高次収差が増加することが多いが,それが術後の訴えとなることは少ない.正常眼と屈折矯正術後眼では高次収差の視機能に与える影響は異なるように思われる.とはいうものの,各種レーザー照射方法を評価するため,高次収差測定は有用な手段である.本稿では,高次収差から考えたLASIKのレーザー照射方法の選択について,筆者の考え方を述べる.IOPDScan測定時の注意点高次波面収差を測定する機器として,ニデック社製のOPD-Scanはユニークな特徴をもっている1).まず,全眼球の屈折度マップを測定して,その後にZernike多項式を用いて波面収差を計算する.屈折度マップが正しく測定されていることが必須であるが,弱点として測定に1秒以上かかるため虹彩の影響を受けやすい点がある(図1).図1右のように,屈折マップの時点で周辺に不自然な屈折の変動があれば,虹彩が測定に影響していることがわかる.この不自然な屈折の変化は,屈折マップ作成にどのエリアまで影響があるのか不明であり,虹彩の影響を受けない測定が最低限必要になる.また,角膜輝点を測定の参照軸にしているのも,ユニークな点である.高次収差測定全般にいえることであるが,測定の軸ズレは致命的なアーチファクトなので,OPD-Scanの場合osetの表示が緑になっている測定の(45)1455*OsamuHieda:バプテスト眼科クリニック〔別刷請求先〕稗田牧:〒606-8287京都市左京区北白川池田町12バプテスト眼科クリニック特集●眼の収差を理解するあたらしい眼科24(11):1455~1460,2007屈折矯正手術(LASIK)と高次収差RelationbetweenHigher-OrderAberrationsandRefractiveSurgery稗田牧*———————————————————————-Page21456あたらしい眼科Vol.24,No.11,2007ていた.図3にLASIK術前後の自然瞳孔での高次収差と,散瞳瞳孔での高次収差の比較を示す.散瞳すると,やや高次収差が大きくなる傾向はあるが,6次収差以外に有意差はなかった.したがって,フェニレフリンで散瞳した状態で高次収差は自然瞳孔のものとほぼ等しいものと考えられた.異なる照射方法を比較評価する場合,対象の瞳孔径によって測定できたりできなかったりするのは評価を複雑にするので,全例で散瞳して,全例を対象にしたほうが正しくかつ効率的に評価が可能であると考える.(46)図1OPDScan(ニデック)で収差解析する際の注意点左は正確に測定できており,o-setが緑になっている.右は虹彩の影響でOPDmapの周辺が乱れており,かつosetが黄色になりアライメントがずれていることを示している.図2LASIK術前後の高次収差(OPD-Scan,解析径6mm)StandardLASIK,n=65,自然瞳孔,全経過中5.5mm以上の症例のみ.Pre*p<0.05**p<0.01平均目標矯正量-5.75±2.54D(-1.5~-12.38D)1.210.80.60.40.20RMSwavefronterror(μm)1年6カ月1カ月図3LASIK術前後の高次収差(OPD-Scan,解析径6mm)StandardLASIK6カ月以上経過後,n=55,同時期の自然瞳孔と散瞳(5%フェニレフリン).p<0.05High平均目標矯正量-4.78±2.16D(-1.5~-10D)1.210.80.60.40.20RMSwavefronterror(μm)Z6Z5Z4Z3:post自然:post散瞳:pre自然:pre散瞳———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.24,No.11,20071457IIIAsphericablation(非球面照射)わが国では,PRK(photorefractivekeratectomy)が認可された2000年にEC-5000のOZ6-TZ7mmのスタンダード照射でLASIKを開始した施設が多いと思われる.その後のバージョンアップでOATZ(optimizedaspherictransitionzone)という非球面照射が使用できるようになった.この照射方法ではTZを8mmにまで拡大しても,切除深度はOZを拡大するほどは増えない.LASIK術後の高次収差の増大は,切除している部分と切除していない部分に起こるカップリング効果で,切除した角膜の周辺部が低矯正になってしまい,球面収差が切除範囲内で増加してしまうことが,原因の一つと考えられている.解析径を一定にすれば,切除範囲を広げることで球面収差の増大は抑えることができる.各社のasphericablationでも非常に切除範囲が広いのが特徴である.術前の角膜非球面係数であるQ値を切除プロフィールに組み込めばより効果的な照射が可能となる.OATZで,解析径4mmであれば確実に球面収差の増加が抑制されていたことを示したのが図4である.全例フェニレフリンで散瞳した状態で測定しており,6mmのマップが正しく測定されているもののみを対象としている.症例数が少ないため,解析径6mmでは有意な差はなかったが,球面収差が抑えられ,それが角膜中央部分でより明らかであることがわかる.IVWavefrontguidedablation全眼球の波面収差から,それを打ち消すような切除プロフィールを作成するのが,wavefront-guidedablationである2).術前の高次収差を矯正するには厳密に測定中心と照射中心を一致させる必要があり,虹彩紋理を認識することにより眼球回旋偏位補正や瞳孔の明暗による瞳孔中心偏位補正をすること(虹彩認識レジストレーション)が必要である.眼球の高次収差が矯正されれば,視機能は飛躍的に改善するものと期待されたが,角膜を切除することによる誘発高次収差が大きく,現時点では高次収差を減少させることはできないが,コマ収差の増大は抑えられる.(47)図4OATZによる4次収差RMS(rootmeansquare)の変化両群間に矯正量および切除深度に差はない.(OATZ4.3±2.0Dn=26,Standard5.0±2.2Dn=30).球面収差を含む4次収差は径4mmでOATZ群の誘発が少ない.RMSwavefronterror(μm)瞳孔径4mm瞳孔径6mm*:p<0.05unpaired?-testp=0.28p=0.007*p=0.04*p=0.23p=0.18p=0.33Pre0.120.10.080.060.040.0200.80.70.60.50.40.30.20.106カ月1カ月Pre6カ月1カ月:OATZ:Standard図5照射方法の違いによる術後高次収差の増加(OPD-Scan,解析径6mm)各群平均SE5.2~6.2Dの矯正,Tukey-KramerのHSD(honestlysignicantdierence)検定,W-G(wavefront-guidedabla-tion),Aspheric(OATZ).-1-0.500.511.52n=51StandardW-GAsphericW-G+虹彩認識p=0.00060.570.370.230.401p=0.0002n=27n=37n=53悪化改善術後?術前高次収差(?m)———————————————————————-Page41458あたらしい眼科Vol.24,No.11,2007乱視がある眼で,乱視を正しく矯正しなければ,正しい球面度数が決定できないように,各眼において,乱視より細かい高次収差を矯正しなければ,正しい乱視度数や球面度数は決定できない.球面収差の増大という問題はあるものの,瞳孔中心の視機能に最も関係がある領域でコマ収差が減少することは,高次収差の矯正のなかでは視機能に最もインパクトがあるものと考えている.また,球面収差も矯正していないわけではないので,著しく術前に球面収差が大きければ,それがさらに大きくなることは防げる.自験例では図5に示すように,B&L社製エキシマレーザーT-217で行ったwavefront-guid-edLASIK,さらにはバージョンアップしたT-217Z100で行った虹彩認識レジストレーションでのwavefront-guidedLASIKでの高次収差増大は,スタンダードLASIKよりも有意に少なかった.しかし,非球面照射との間に差は認められなかった.(48)VTopographyguidedablation眼球の高次収差の原因は,角膜と水晶体のいずれかにある.LASIKは角膜の手術であるので角膜の,特に角膜前面のみの高次収差を矯正するべきであるとする意見もある.Topography-guidedablationは近視と乱視矯正に角膜前面のみの高次収差矯正を付加して行う照射方法である3).しかし,通常角膜乱視が全眼球の乱視でないように,水晶体が角膜の高次収差を代償している場合もあるし,そうでない場合もある(図6).角膜高次収差のみで,眼球高次収差の矯正を行うことは,症例によっては過矯正となり,症例によっては低矯正になってしまう.LASIKの希望者かつ適応者で眼球高次収差が多い眼(解析径6mmで0.5μm以上)17眼で,角膜高次収差と眼球高次収差の関係をみたのが図7である.角膜高次収図6全眼球高次収差と角膜高次収差の関係左では内部収差が角膜収差を代償しており,全眼球の収差は少ない.右は全眼球の収差はほとんど角膜収差に近い.内部角膜眼球———————————————————————-Page5あたらしい眼科Vol.24,No.11,20071459(49)差が眼球高次収差より大きな値であったのはわずか17眼中4眼にすぎなかった.これは,著しく角膜高次収差の大きい,円錐角膜や円錐角膜疑いが適応から外れていることもあるだろうが,全眼球の高次収差が大きい眼の多くが,その原因が角膜前面以外にあることを示唆している.Topography-guidedablationの良い適応は,眼球高次収差が測定できない,非常に収差が多い眼になるのではないだろうか.それも,屈折矯正手術であることを考えると,角膜をいくら平滑にしても,近視や乱視が残ってしまっては目的が達成されないので,エンハンスメントで屈折矯正をするという前提の2段階手術で行うのが良いように思われる.VI高次収差から考えた照射方法図8に現時点で筆者が考える高次収差による照射方法の選択基準を示す.ほとんどの場合がwavefront-guid-edablationで対応可能であり,表をつくる意味があまりなくなっている.まず,角膜高次収差,全眼球高次収差とも大きい眼の場合であるが,角膜高次収差で矯正してもよいようにも思うが上述のようになるべく全眼球収差の矯正を行う.つぎに,角膜高次収差が小さく,全眼球高次収差が大きい場合には,全眼球高次収差で矯正を行うか,水晶体の収差が大きいのであるから,少しでも白内障があり,調節力が低下していればrefractivelensexchangeを行ったうえで,必要であればLASIKを追加する.むずかしいのが,眼球高次収差が少ない場合である.角膜高次収差が多かろうが,少なかろうが視機能に影響するのは全眼球収差なのであるから,全眼球収差がなるべく増えない方法を選択したい.Wavefront-guidedablationの欠点は,術前の高次収差が少なければ高次収差の矯正が少なくなり,スタンダードな照射に近づくことである.その点asphericablationであれば術前高次収差に関係なく,球面収差だけでも抑えられるので高次収差の増加量だけでみれば,矯正量が多くなる5D以降ではasphericが有利となってくる.ただ,レーザー機種によっては,厳密なレジストレーションがwave-front-guidedablationでしか使えないといったasphericablationにとって不利な面も存在する.現時点では,自分自身の経験や,自覚的視機能検査への影響,さらには矯正視力などへの影響を収差ごとにみた結果,wavefront-guidedablationで瞳孔中央部のコマ収差の増大を抑制しておいたほうが,球面収差を多少へらすことより,視機能によい影響があるものと考えている.したがって,全例にwavefront-guidedablationによるカスタムLASIKを行っている.いまだにまとまった論理的な証明はできていないが,今後の課題としたい.おわりに昨年,自分自身LASIKを受けてみた.約1年たって,すでに眼鏡での見え方や生活をすっかり忘れている.高図7全眼球高次収差が多い眼(0.5μm以上)での全眼球高次収差と角膜高次収差の比較(OPD-Scan,解析径6mm)00.20.40.60.811.21.41Higher-orderRMSwavefronterror(?m):CorneaHOAisgreaterthanOcularHOA171615141312111098765432:OcularHOA:CorneaHOA図8高次収差を考えたLASIKの選択Wavefront-guidedablationで行えば,適応範囲が最も広くなる.Topography-guidedWavefront-guidedWavefront-guidedAspheric(照射径拡大)Aspheric(照射径拡大)Wavefront-guidedWavefront-guidedRefractivelensexchange角膜高次収差大角膜高次収差小眼球高次収差大眼球高次収差小———————————————————————-Page61460あたらしい眼科Vol.24,No.11,2007(50)次収差は増大しているが,波面センサーで出てくるシミュレーションほどには見えている像がぼやけていないことは確かであり,高次収差の屈折矯正術後眼に与える影響はいまだ正確に評価できていないことを実感している.文献1)HiedaO,KinoshitaS:MeasuringofocularwavefrontaberrationinlargepupilsusingOPD-Scan.SeminOph-thalmol18:35-40,20032)稗田牧:ウェーブフロント・レーシック(wavefront-guidedLASIK).IOL&RS18:394-399,20043)稗田牧:トポガイドレーシック(CornealTopographt-GuidedLASIK).IOL&RS19:162-167,2005