———————————————————————-Page10910-1810/08/\100/頁/JCLS屋の柱時計がはっきり見え,すぐに携帯電話のメールが打てたと感激された.1週間後,右眼の白内障手術を行い,術後半年以上が経過したが,現在も眼鏡を使わず快適な生活を送られている.最初の症例で,多焦点眼内レンズの素晴らしさを経験すると,患者のみならず術者の満足度は非常に高い.多焦点眼内レンズは,これまでの単焦点眼内レンズにない特徴を有し,適応を守って使用すると,非常に有用な眼内レンズである.今回は,1カ月以上経過を追うことのできた17例28眼のレストアの術後成績を紹介するとともに,その特徴,適応,説明のポイントなどについても述べる.Iレストアの特徴アポダイズ回折型多焦点眼内レンズ,レストアは光学部6mmの中心に径3.6mmのアポダイズ回折領域,周囲に屈折領域をもつレンズである(図1).回折領域には12段の回折ステップがあり,それぞれの回折ステップの高さは,中心から周辺に向かうに従って高さが1.3μmから0.2μmに減じている.これは,アポダイズテクノロジーとよばれ,薄暮,夜間時に瞳孔が大きくなった場合でも,遠見時のコントラスト低下を少なくして,グレアやハローを軽減できる仕組みになっている.しかし,逆に,夜間に瞳孔が大きくなると,読書や編み物などの近見作業に支障をきたすことがある.多焦点眼内レンズ術後の患者からのクレームは,グレはじめに多焦点眼内レンズには,回折型と屈折型の2種類があるが,屈折型に比べ回折型レンズのほうが,近見視力は良いとされる.2007年6月に,厚生労働省の認可を受け,2008年2月より発売となったアポダイズ回折型レンズ,アクリソフ・レストア(AcrySofRReSTORR)(以下,レストア)は,多焦点眼内レンズに特徴的なグレア・ハローを軽減するとともに,薄暮時,夜間に瞳孔が散大しても,遠方が見やすくなるような工夫がなされている1).多焦点眼内レンズの使用は,厚生労働省により先進医療として認められたが,その費用が高額であること,有用性がまだ十分に認知されていないことなどから,一般眼科医にとっての導入は,ハードルが高いのが現実である.しかし,LASIK(laserinsitukeratomileusis)を中心とする屈折矯正手術が一般に普及し,その手術数が順調に伸びている現在,すでに屈折矯正手術の一部となった白内障手術で,そのqualityoflifeを格段に上げることのできる多焦点眼内レンズは,今後,さらに広まっていくことが考えられる.当院では,これまで多焦点眼内レンズを使用する機会がなかったが,2007年11月から,適応を十分に検討し,徐々にレストアを導入した.最初の症例は59歳,女性.定年後はゴルフを中心としたアウトドア生活を希望される方であった.屈折度数は両眼7.0Dで,軽度の皮質白内障の方である.左眼手術翌日,朝起きると部(25)10717700024627特集●多焦点眼内レンズあたらしい眼科25(8):10711075,2008レストアの術後成績PostoperativeResultsafterReSTORRImplantation藤田善史*———————————————————————-Page21072あたらしい眼科Vol.25,No.8,2008(26)多焦点眼内レンズの適応を決める際,術前の角膜乱視は,しっかり確認する必要がある.術前角膜乱視が1.0D以内であれば,遠方および近方の視力が0.7以上出る確率は高いが,1.5Dを超えると術後の裸眼視力が低下し,患者の満足度に影響する.そのため,術前の角膜乱視は,1.0D以内を適応とするのが良いとされる2).術前の角膜乱視が大きい場合,術後にLASIKなどの屈折矯正手術を前提に適応としても良いが,初期に選ぶ症例は,術前角膜乱視が少ない方を選択したほうが賢明である.今後,レストアについては,さらに乱視矯正ができるよう柱面成分を加えた新しいタイプも市場に出てくると期待される.また,術後裸眼視力は,角膜不正乱視があっても低下するため,トポグラフィと波面収差解析は行っておくべきである.術前屈折については,遠視の方が最も良い適応である.遠視の方は,遠見時,近見時ともに眼鏡を装用していることが多く,眼鏡から開放される喜びは大きい.一方,軽い近視で,近見時に眼鏡をはずし十分に見えている方は,術後も良好な近見視力を期待するため,術前術後の見え方の違いに不満をもつことがある.レストアの近見加入度数は+4.0Dで,眼鏡に換算すると+3.2Dであり,近くが良く見える距離は30cm前後であることを,術前に患者に確認してもらう必要がある.高度近視の方も適応になるが,核白内障で近視が進行している方は,意外に近見がよく見えているので注意が必要である.また,高度近視の方は,拡大効果を利用し,裸眼で新聞や雑誌を近づけて良く見えていることがあり,ハードコンタクトレンズ装用者は,コンタクトレンズにより角膜乱視が矯正されて視力が良いこともあるため,術前の遠見近見の視力検査を十分に行って適応を決定する必要がある.緑内障,網膜,視神経疾患などがあり,術後の視力が十分に期待できない場合は,レストアは勧められない.術前に,すべての網膜,視神経疾患を除外することはできないが,術後矯正視力が1.0以上得られない場合は,遠見,近見とも満足度が低くなるため,術後視力がきちんと得られる方を選択すべきである.レストアは両眼挿入を行うことで,相加作用があるため,基本的に片眼への挿入は避けたほうが良い.しかアやハローとコントラスト感度の低下による見えにくさである.回折型眼内レンズは,屈折型に比べハロー・グレアは少ない利点があるが,コントラスト感度は,単焦点眼内レンズに比べると少し低下するため,注意が必要である.IIレストアの適応多焦点眼内レンズは遠見と近見に焦点を合わせ,白内障術後,眼鏡への依存度を少なくし,qualityoflifeの向上を目指している.表1に,レストアの適応を示すが,その適応となるのは,白内障手術後,眼鏡をなるべくかけたくないという希望を有する方である.手術後,多焦点眼内レンズは,視力が安定するまでに時間がかかることもあるため,十分に医師と話し合うことができる理解力ある方が適応となり,術後トラブルを起こさないよう注意が必要である.患者のパーソナリティは重要である.術前に多くの質問を行う神経質な方は,術後に不満を訴えることが多く,避けたほうが良い.屈折領域アポダイズ回折領域(3.6mm)図1アポダイズ回折型眼内レンズ,レストア表1レストアの適応眼鏡をかけたくない医師との信頼関係があり,理解力がある術前角膜乱視は1.0D以下角膜不正乱視が少ない術前屈折は遠視か正視,ときに高度近視緑内障や網膜,視神経疾患がない———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.25,No.8,20081073(27)う.レストアは,回折構造により光エネルギーバランスが減弱するため,コントラスト感度が低下し,グレア・ハローが起こることも説明しておく.さらに,術後,50cmから1mの中間距離が,見えにくく感じることもあり,パソコン操作,楽譜などを見るためには,眼鏡が必要となることも伝えておく.IVレストアと眼内レンズ挿入術手術術式は,通常の白内障手術に準じるが,術後惹起乱視を,なるべく少なくするため,極小切開白内障手術を行うことが勧められる.レストアの場合,Cカートリッジをインジェクターに装し,2.2mmから2.4mmの切開創から挿入することが可能である.筆者は,すべて2.4mm耳側角膜切開で,左手のフェイコチョッパーで眼球を固定し,レストアを挿入している(図2).プランジャーを押し込んでレストアを眼内に挿入するが,ときに勢いよくレンズが出て,破などの合併症をひき起こすことがあるため,挿入には十分気をつける.レストア挿入後は,レンズ光学中心と顕微鏡ライトの角膜反射がずれないようレストアのセンタリングに注意する(図3).Vレストアの術後成績2007年11月からレストアの使用を開始し,術後1カ月以上経過を追うことのできた17例28眼を対象に検討を行った.レストアを両眼に使用した症例は11例22し,調節力のある若い方の片眼白内障は,レストアの適応である.以前は,白内障による視力低下があっても,単焦点眼内レンズ挿入により,術後,調節力がなくなる不便さのため,手術を遅らせる傾向にあった.しかし,手術後,遠見,近見の2つの焦点を有するレストアは,調節力を完全に回復させるものではないが,従来に比べて,格段にqualityoflifeを向上させるレンズである.IIIレストア説明のポイント(表2)多焦点眼内レンズは先進医療として認められたが,高額の診療費が必要であり,患者からの要求度は高い.適応の選択をしっかり行うとともに,インフォームド・コンセントが重要である.レストアを患者に勧める場合は,患者が,過度の期待をしないよう利点と欠点について,はっきり説明する必要がある.多焦点眼内レンズという言葉のイメージから,患者は,遠くから近くまで,すべての距離を不自由なく見ることができるレンズと勘違いするかもしれない.このような誤解を生じないよう,レストアは,遠見と近見の2点にしか焦点が合わないレンズであることを知ってもら表2レストア説明のポイント遠見と近見の2点に焦点が合うレンズコントラスト感度の低下グレア・ハローの存在距離により眼鏡が必要図2左手のフェイコチョッパーで眼球を固定し,レストアを挿入図3術直後,レストアのセンタリングを確認———————————————————————-Page41074あたらしい眼科Vol.25,No.8,2008(28)は7/28(25.0%)で,非常に良い結果であった(図6).今回の結果は,両眼遠見裸眼視力で88%が0.7以上,両眼近見裸眼視力ですべて0.4以上とした宮島らの報告3)とほとんど同じ成績で,レストアの遠見,近見視力の良さを示している.2.患者満足度(術後1カ月)術後1カ月に,4段階で満足度を調査した.大変満足と満足を合わせると14/17(82.4%)で,不満足な方が2名あった(図7).1名は,高度近視の方で,遠見視力は良いのだが,近見視力が出にくく,以前のハードコンタクトレンズのほうが近くは良く見えたという理由で不満足と答えた.しかし,術後3カ月が経過すると,近見視力も改善し,再度,満足度について確認すると,近くもよく見えるようになり満足と回答した.もう1名は,眼,片眼に使用した症例は6例6眼であった.平均年齢は55.7歳(2274歳)で,男女比は男性8名,女性9名である.検討項目は,術前後の裸眼視力,矯正視力,近見裸眼視力,術後の患者満足度,グレア・ハロー,眼鏡装用率である.1.術前後の視力経過術後の裸眼視力は,術翌日より経過とともに改善し,術後1カ月で0.7以上の視力は26/28(92.9%),1.0以上の視力は20/28(71.5%)であった(図4).術後1カ月の矯正視力は,1.0以上の視力が25/28(89.3%)であった(図5).一方,近見裸眼視力も術後,しだいに向上し,術後1カ月で0.7以上は22/28(78.6%),1.0以上:1.0以上:0.7以上1.0満:0.4以上0.7満:0.4満n=287/28(25.0%)15/28(53.6%)1009080706050403020100(%)術前翌日1週間1カ月7/28(25.0%)15/28(53.6%)図6術前後の近見裸眼視力=17:大変満足:満足:普通:不満足図7患者満足度(術後1カ月)25/28(89.3)1009080706050403020100(%)術前翌日1週間1カ月:1.0以上:0.7以上1.0満:0.4以上0.7満:0.4満n=2825/28(89.3%)図5術前後の矯正視力術前満満満=2820/28(71.5%)6/28(21.4%)図4術前後の裸眼視力———————————————————————-Page5あたらしい眼科Vol.25,No.8,20081075(29)おわりにレストアを導入し8カ月になるが,使い始めたときは,術後の遠見,近見視力が患者にとって満足できるものか大変に不安であった.しかし,術後1カ月の患者の満足度調査で82.4%の方が満足され,グレア・ハローも気にならず,眼鏡への依存度も少ないという結果を得ることができた.レストアの導入をする際に,大切なことは,患者の選択と術前の説明をしっかり行っておくことである.これからも,先進医療として認められた多焦点眼内レンズが普及し,白内障患者のqualityoflifeが向上することに期待する.文献1)ChoiJ,SchwiegerlingJ:Opticalperformancemeasure-mentandnightdrivingsimulationofReSTOR,ReZoom,andTecnisMultifocalintraocularlensesinamodeleye.JRefractSurg24:218-222,20082)HayashiK,HayashiH,NakaoFetal:Inuenceofastig-matismonmultifocalandmonofocalintraocularlens.AmJOphthalmol130:477-482,20003)ビッセン宮島弘子,林研,平容子:アクリソフApodized回折型多焦点眼内レンズと単焦点眼内レンズ挿入成績の比較.あたらしい眼科24:1099-1103,2007神経質な女性の方で,術前に,かなりレストアの挿入に迷われた方であった.術後1カ月で,両眼の近見裸眼視力が0.6で,新聞の字も読めるが,読むのに疲れるという理由で不満足と回答された.術後3カ月でも,眼鏡なしで,もう少し近くが良く見えると期待していたのに不満であると回答された.本人の性格にもよるが,術後,眼鏡装用が必要なこともあることの説明が足らなかった症例であった.3.グレア・ハロー(術後1カ月)術後1カ月後のグレア・ハローの調査では,17名中1名(5.9%)が少し気になると答えたが,ほとんどの方は,あるが気にならないという回答であった(図8).4.眼鏡装用率(術後1カ月)眼鏡を装用されている方は,17名中3名(17.7%)あった(図9).1名は,65歳の女性画家で,キャンバスで油絵を書く際に,その距離に合わせて眼鏡を装用している方,1名は,30歳の女性で術後3カ月の時点で,乱視を矯正した眼鏡をかけたほうが車の運転をしやすいし読書もしやすいという方,1名は,60歳の女性で,パソコンをする際に眼鏡をかけたほうが良いという方であった.3名の方は,それぞれの理由で眼鏡を適宜装用しているが,レストアに対する満足度は高かった.1(5.9%)12(70.6%)4(23.5%)n=17:全く気にならない:あるが気にならない:少し気になる図8グレア・ハロー(術後1カ月)14(82.3%)3(17.7%)n=17:装用:未装用図9眼鏡装用率(術後1カ月)