●連載◯271監修=福地健郎中野匡271.OCTen-faceimage法による飯川龍新潟大学大学院医歯学総合研究科眼科学分野網膜神経線維層の評価網膜神経線維層の評価方法の一つであるCOCTen-faceimage法は神経線維束の走行を直接観察する方法であり,臨床の場で標準的に用いられているCOCTによる視神経乳頭周囲網膜神経線維層厚や黄斑網膜神経節細胞層複合体厚の測定といった定量的な検査とは異なっている.日常臨床にも活用でき,患者のCQOL推定に役立つ有用な情報が得られる.●はじめに緑内障は視神経と視野に特徴的変化を有し,眼の機能的,構造的異常を特徴とする疾患であり,診断および治療において,精度ある眼底画像による網膜神経線維層(retinalCnerveC.berlayer:RNFL)の評価が必要である.眼底のCRNFL,網膜神経線維層欠損(retinalnerve.berlayerdefect:NFLD)を観察する方法としておもに臨床で用いられているのは,眼底写真,無赤色光眼底写真(red-free),光干渉断層計(opticalCcoherencetomography:OCT)などである.本稿ではCOCTCen-faceimage法によるCRNFLの観察について,その特徴や利点について述べる.C●En-faceimage法とは―画像作成方法通常のCOCTでは網膜の断層像であるCBスキャン画像図1En-faceimageの作成過程a:視神経乳頭部.b:黄斑部をCILMに沿って平坦化(.attening)した画像.を用いることが多い.En-faceimage法は網膜のCBスキャン画像を連続的に撮影してC3Dイメージを作成し,さらにそこから層別に二次元的画像を再構築する方法である.筆者らの既報1)におけるCen-faceimageの作成方法を紹介する.スウェプトソースCOCTを用いて黄斑と視神経乳頭を中心としたそれぞれC6×6CmmのCcubeCscan(512×256,垂直×水平)撮影を行う.その後,画像閲覧ソフト(EnView,トプコン)で内境界膜(internalClimitingmembrane:ILM)面に沿ったCen-face面を描出(平坦化=.attening)し,RNFLの最表層部における黄斑部,視神経乳頭周囲のCRNFLを観察する(図1).この際,ILMからの深度は,個々の症例においてもっともCRNFLが明瞭に描出されるところとする.得られたC2枚の画像(黄斑部,乳頭部)を大血管をもとに重ね合わせる.この方法で得られた正常眼のCen-faceimageを図2に示す.最近はCOCT血管撮影やCOCTのCwide撮影のレポートにもCen-faceimageが表示されるようになっており,目にする機会が増えている.これらの画像はCILMからある一定の厚み(たとえばトプコンのCHoodreportでは表層からC52μm)を用いて平均化することでCen-face図2正常眼の網膜神経線維の走行視神経から放射状に広がる神経線維,耳側縫線での上下に分かれた神経線維の走行が明瞭に観察できる.(69)あたらしい眼科Vol.40,No.1,2023690910-1810/23/\100/頁/JCOPYabcd図3En-faceimage法による中心10°内視野の推定a:黄斑部と視神経乳頭部のC2枚の画像を重ね合わせて作成したCen-faceimage.Cb:Humphrey10-2プログラムの測定に対応する点を,網膜神経節細胞の変位(RGCdisplacement)を用いて重ね合わせた図.●はCNFLDがある領域,〇はCRNFLが障害されていない領域を表す.Cc:上下逆転させることにより中心C10°内の推定視野を作成.Cd:実際のCHumphrey10-2視野のトータル偏差とパターン偏差.imageを作成している(en-facestabimage).この方法の注意点として,平均化によってCRNFLの微細な変化に関する情報が消失する可能性がある2).それに対して,筆者らの方法はCILMからある一定の距離における断面を観察しており,en-facestabimageとは異なる.筆者らの方法の注意点として,黄斑部の耳側と鼻側ではRNFLの厚みが異なるので,ILMから単一の距離でNFLDを同定するのはむずかしいことと,ILMからの距離によりCNFLDの幅が変化し,結果にばらつきがでることがあげられる3).C●En-faceimage法の利点緑内障診療で用いられるCOCTの視神経乳頭周囲網膜神経線維層厚や黄斑部網膜内層厚の測定はいずれも正常データベースとの比較で異常の有無を判定する定量検査で,客観性や定量性があることが大きな利点である.しかし,正常データベースの範囲を超える強度近視や若年者,高齢者では,正確な結果が得られない可能性があることが欠点である.それに対し,en-faceimage法は対象のCRNFLが高反射になるという原理から,神経線維束の走行を直接観察する定性検査であるという点が異なる.そのため,通常の眼底写真やCOCTなどの画像検査では限界のある強度近視に関しても有用である.En-faceimage法の一番の利点は,黄斑部を含めたCRNFLがより明瞭に描出されることである.とくに,従来の眼C70あたらしい眼科Vol.40,No.1,2023底写真やCOCTによる網膜内層厚解析では不可能だった,視覚に関連した生活の質(QOL)にかかわる乳頭と黄斑を結ぶ領域(乳頭黄斑領域)のCRNFLの残存の有無を,視覚的に容易に検出し,視野がどの程度残存しているかを推定できるのが利点である(図3).C●En-faceimage法の限界この方法の限界として,網膜上膜や網膜硝子体界面など,場合によってはCen-faceimageそのものの取得が困難であること,また視野の推定に関してはあくまで定性的な方法であり,視野感度の推定はできないことなどがあげられる.文献1)IikawaCR,CToganoCT,CSakaueCYCetal:EstimationCofCtheCcentralC10-degreeCvisualC.eldCusingCen-faceCimagesCobtainedCbyCopticalCcoherenceCtomography.CPLoSCOneC15:e0229867,C20202)HoodCDC,CFortuneCB,CMavrommatisCMACetal:DetailsCofCglaucomatousCdamageCareCbetterCseenConCOCTCenCfaceCimagesCthanConCOCTCretinalCnerveC.berClayerCthicknessCmaps.InvestOphthalmolVisSci56:6208-6216,C20153)AlluwimiCMS,CSwansonCWH,CMalinovskyCVECetal:CusC-tomizingCperimetricClocationsCbasedConCenCfaceCimagesCofCretinalCnerveC.berCbundlesCwithCglaucomatousCdamage.CTranslVisSciTechnolC7:5,C2018(70)