感染性ぶどう膜炎InfectiousUveitis岩橋千春*大黒伸行**はじめに感染性ぶどう膜炎にステロイドのみを投与すると感染の制御ができず症状が増悪するため,ぶどう膜炎の治療方針をたてる段階で,感染性ぶどう膜炎の存在を常に念頭に置いて,非感染性ぶどう膜炎と注意深く鑑別することが非常に重要である.そのためには,代表的な各種感染性ぶどう膜炎の典型的な所見を知っておくことが手助けとなる.本稿では代表的な感染性ぶどう膜炎としてヘルペスウイルス感染によるヘルペス虹彩毛様体炎,急性網膜壊死,古くて新しい感染症である結核性ぶどう膜炎および梅毒性ぶどう膜炎について,臨床所見とその対処法を概説する.CIヘルペス虹彩毛様体炎ヘルペス虹彩毛様体炎は,2009年に日本眼炎症学会が調査を行ったわが国におけるぶどう膜炎の原因疾患の調査1)においてC4.2%(5位)を占めている疾患群であり,感染性ぶどう膜炎のなかでは日常臨床でもっともよく遭遇する疾患であるといえる.一度感染したヘルペスウイルスが三叉神経節に潜伏感染し,感冒,ストレス,免疫力の低下などを誘因として再活性化が起きることで発症する.従来は単純ヘルペスウイルス(herpesCsimplexvirus:HSV)-1,HSV-2,水痘帯状疱疹ウイルス(vari-cella-zostervirus:VZV)によるものが広く知られていたが,近年,サイトメガロウイルス(cytomegalovirus:CMV)も虹彩毛様体炎の原因の一つであることがポリメラーゼ連鎖反応(polymeraseCchainreaction:PCR)による検査により明らかになった2).これまでCPosner-Schlossman症候群あるいはCFuchs虹彩異色性毛様体炎と診断されていた疾患のなかにCCMV虹彩炎が含まれているものと思われる3).ヘルペス虹彩毛様体炎は片眼性が多く,角膜後面沈着物(keraticprecipitates:KPs)を伴うことが多い(図1).また,眼圧上昇を伴いやすく,続発緑内障に留意する必要がある.HSVによる前部ぶどう膜炎(HSV-ante-rioruveitis:HSV-AU),VZVによる前部ぶどう膜炎(VZV-anterioruveitis:VZV-AU),CMVによる前部ぶどう膜炎(CMV-anterioruveiris:CMV-AU)の臨床的特徴を比較した高瀬らの報告4)によると,HSV-AUとCVZV-AUは共通した特徴を有しており,比較的急性の経過で大きなCKPsがみられることが多い.とくにVZV-AUは前房内フレアが強く,部分的な虹彩萎縮(図2)がみられ,前房内のウイルス量が多いといったように,激しい炎症がみられることが多い.一方,CMV-AUは眼内の炎症は比較的穏やかであるが,角膜内皮密度の減少や眼圧上昇はCHSV-AUとCVZV-AUと比べて顕著であると報告されている.以下にCHSV/VZV-AUとCCMV-AUに分けて臨床所見と治療を述べる.C1.HSV.VZV.AUHSV,VZVともに小児~若年成人期に初感染するこ*ChiharuIwahashi:住友病院眼科**NobuyukiOhguro:JCHO大阪病院眼科〔別刷請求先〕岩橋千春:〒530-0005大阪市北区中之島C5-3-20住友病院眼科C0910-1810/18/\100/頁/JCOPY(49)C1625図1単純ヘルペスウイルス(HSV)虹彩毛様体炎の前眼部写真図2水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)虹彩毛様体炎の前眼部写真大小不同の角膜後面沈着物がみられる.部分的な虹彩萎縮がみられる.図3サイトメガロウイルス(CMV)虹彩毛様体炎の前眼部写真図4急性網膜壊死(ARN)の前眼部写真Coinlesion(→)がみられる.豚脂様角膜後面沈着物がみられる.図5急性網膜壊死(ARN)の眼底写真網膜周辺部に黄白色顆粒状病変を認める.図6結核性強膜炎の前眼部写真図7結核性網膜血管炎の眼底写真ステロイド抵抗性の強膜炎として紹介受診された.周辺網膜に白鞘血管および網膜出血を認める.図8梅毒性ぶどう膜炎図9図8の蛍光眼底造影写真硝子体混濁を伴っている.網膜血管からのびまん性の漏出を認める.–