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My boom 50.

2016年3月31日 木曜日

監修=大橋裕一連載.MyboomMyboom第50回「木村亜紀子」本連載「Myboom」は,リレー形式で,全国の眼科医の臨床やプライベートにおけるこだわりを紹介するコーナーです.その先生の意外な側面を垣間見ることができるかも知れません.目標は,全都道府県の眼科医を紹介形式でつなげる!?です.●は掲載済を示す(●は複数回)連載.MyboomMyboom第50回「木村亜紀子」本連載「Myboom」は,リレー形式で,全国の眼科医の臨床やプライベートにおけるこだわりを紹介するコーナーです.その先生の意外な側面を垣間見ることができるかも知れません.目標は,全都道府県の眼科医を紹介形式でつなげる!?です.●は掲載済を示す(●は複数回)自己紹介木村亜紀子(きむら・あきこ)兵庫医科大学眼科私は平成6年卒,30歳で結婚,31歳で出産,娘が3歳の時に臨床復帰してからは,ずっと大学に席を置いています.三村治教授がママさん女医にも大学で活躍の場を,とお考えになり,教授の励ましのもと,もう21年が過ぎ,現在は准教授をしています.専門は,みんなが苦手意識をもつ斜視弱視,神経眼科!私は大好きで,この分野に賭けています!!臨床・研究のMyboom留学経験もない子育てママさん女医の私には,大学は無理だと思っていましたが,専門分野に的を絞ることで,見えなかったことが見えてきて,深く知りたいと思うことが増えました.オタクの中のオタクとなるべく精進中であります.私が熱心に取り組んでいるのは麻痺性斜視,とくに上下・回旋斜視,他施設で敬遠されがちな中枢性斜視などです.車椅子で検査にも時間のかかる患者さんは敬遠されがちですが,私たちの所では大歓迎されます.顎台に顎が乗らなくても全然問題なし!「他の検査に移りますー!」といった具合です.重症であればあるほど,「私の所に来てくださってありがとう!きっと,ここに来て良かったと思ってもらおう!頑張るぞ!」内心,テンションは上がっています.博士論文はマウスや細胞を使っての基礎研究でしたが,出産後大学に復帰してからは基礎研究に携わる能力はなく,臨床一本に絞りました.だから,患者さんを治すこと自体が私の実績になると考えて臨んでいます.Prospectiveに計画を立ててみることもありますし,retrospectiveにみることもあります.手術件数が増えるにつれ,自分の手術の欠点を知るために,手術成績をまとめては発表し論文にしてきました.手術成績をまとめることはとても大切なことだと感じています.患者さんに自分のデータでお話することができますし,改善点が見つかるうえ,他の論文と比較することができます.今年の臨眼は,prospectiveに斜視術後の乱視についてORTの近藤さんがまとめてくれました.甲状腺眼症,筋無力症など,一般眼科医が苦手とする疾患にも重点を置いて,ウエルカムでみることを身上としています.プライベートのMyboom娘の朝ごはんとお弁当作りに命をかけています!赤ちゃんのころからみていると,食べ物が体を作っていくのを目の当たりにしてきました.こんな小さな体に農薬が入ったら,私に農薬が入るのと全然ちがうやんか!と感じ,無農薬の四つ葉の宅配を頼むようになりました.安いからって中国の野菜買わんとこ,値段が高くても品質にこだわって作ってはるとこのを買おう,などと意識が変わりました.娘を置いて外食には行きたくないので,友達や後輩と食事に行きたい時は家に来てもらいます(写真1).酔っ払って寝てしまう人もいます.年に2回BBQを開催,ひたすらお肉を食べます(写真2).娘が0歳児からの仲良し家族と3カ月ごとにわが家で宴会をしています(写真3).もう15年!それでも,もっと会いたくなったら,マドモアゼルの会としてママ3人でイタリアンレストランで食事をします(陽子がイタリア領事館の通産省トップだから).子供たちは子供たちで,学校が違うのにずっと仲良しで続いており,男性陣も怖い嫁を持った者同士気が合うようです.(77)あたらしい眼科Vol.33,No.3,20164070910-1810/16/\100/頁/JCOPY 写真1後輩たちとわが家で写真3仲良し家族で宴会写真2お肉ばかり食べるBBQ娘は食が細かったので,娘が好きなものがわかると一生懸命作りました.焼きたてのパンを喜んで食べているのをみて,朝からパンを焼きました.今もときどき,明日はママのパンが食べたいと言ってくれます.そうしたら,朝からパンを焼きます.娘も大きくなり体型などを気にするようになり,晩はうどんや雑炊にして,その分,朝にステーキからデザートまでのフルコースを食べます.娘は反抗期なので,私のことをバーカ,デブ,ご飯へたくそー!と言いますが,本心,やはり愛おしくってかわいいです.不思議です.夫は余りかわいくありません.こうやって書いてくると,娘の健やかな成長をただただ願う普通のママやんか,とがっかりしました(もっと特別なことがあると思っていた).次は滋賀医科大学の村木早苗先生です.私の大切な親友です.早苗さんのログハウスでBBQをさせていただいたこともあります!大型犬の愛犬の話が出るかな?よろしくお願いします!注)「Myboom」は和製英語であり,正しくは「Myobsession」と表現します.ただ,国内で広く使われているため,本誌ではこの言葉を採用しています.☆☆☆408あたらしい眼科Vol.33,No.3,2016(78)

硝子体手術のワンポイントアドバイス 154.癒着が強固な黄斑上膜のOCT所見(初級編)

2016年3月31日 木曜日

硝子体手術のワンポイントアドバイス●連載154154癒着が強固な黄斑上膜のOCT所見(初級編)池田恒彦大阪医科大学眼科●はじめに網膜との癒着が強固な黄斑上膜については,本シリーズ(第29回)でも記載したことがある.癒着な強固な部位は,一般に網膜がやや白色調で,神経線維層の走行が乱れていることが多い.黄斑上膜は器質化した神経線維層に食い込むようになっていることも多く,このような症例ではOCTによる術前評価がある程度可能である.●自験例の提示63歳,男性.右眼に特発性黄斑上膜を認め,矯正視力は0.5に低下していた.術前のOCTでは中心窩の上方~上鼻側の網膜皺襞が著明で(図1),この部位のOCT画像では,神経線維層が不規則に黒く描出されていた(図2).中心窩を含む断面は比較的層状構造が保持されていた(図3).術中,黄斑上膜を.離しようとしたが,膜.離のきっかけがつかみにくかったため,BBGを塗布し,黄斑上膜のやや下耳側から直接.離を開始した.中心窩は癒着が比較的緩く,容易に.離できたが(図4),中心窩の鼻側から上方には癒着の強固な部位が認められ,.離中に出血が生じた(図5).中心窩の黄斑上膜は.離できていたので,無理はせずに,癒着の強固な部位の残存黄斑上膜を可能な範囲で硝子体カッターにて切除し,手術を終了した.術1カ月後,皺襞は徐々に伸展し,矯正視力は0.4から0.8に改善した(図6,7).●OCTによる黄斑上膜と網膜の癒着の評価一般に黄斑上膜と網膜の間に間隙のある症例では.離が容易であるが,今回の提示例のように神経線維層が不規則に黒く描出される症例では,神経線維層自体が器質化しており,癒着が強固であることが多い.乳頭に近くなる程神経線維層は黒く厚めに描出されるが,その中の濃淡に差がみられる症例や,凹凸の著明な症例では注意を要する.図1自験例の右眼図2術前のOCT所見(1)図3術前のOCT所見(2)術前眼底写真中心窩上方は神経線維層が不規則に黒く描出され中心窩を含む断面は比較的層状構造が保持されて中心窩の上方~上鼻ていた.いた.側に皺襞を認める.図4術中所見(1)図5術中所見(2)図6術後の右眼図7術後のOCT所見中心窩は癒着が比較的緩中心窩の鼻側から上方眼底写真肥厚した内境界膜と思われる膜状組織の残存を認く,容易に.離できた.には癒着の強固な部位皺襞は徐々に伸展める.が認められ,.離中にし,矯正視力は0.8出血が生じた.に改善した.(75)あたらしい眼科Vol.33,No.3,20164050910-1810/16/\100/頁/JCOPY

新しい治療と検査シリーズ 230.OCTアンジオグラフィー(網膜)

2016年3月31日 木曜日

あたらしい眼科Vol.33,No.3,20164030910-1810/16/\100/頁/JCOPYの部分を一定の厚さで選んで(たとえば網膜内境界膜を基準としてそこから何μm外層方向まで,というように指定する),そこに含まれる情報を抽出して表示すれば,あたかも眼底写真を見るかのような画像を(しかも任意の深さで)得ることができる.こうして得られた画像はEnface画像(“Enface”は「前から見る」の意)とよばれる.OCTAでは,OCTを用いて,同じ場所で,時間のずれたB-scanを複数枚撮影する.このとき得られた時間のずれたOCT像を比較すると,同じ場所の信号強度はほとんど一致しているが,血流のある部分だけは信号強度に変化があらわれる.OCTAではまずその部分を強調して表示する.この血流が強調されたB-scanを上の方法で3D構築すれば,血管が強調された立体的な眼底像を作成でき,さらにEnface表示すれば,眼底の血管構造をそれぞれの深さで,くっきりと描き出すことができる.この画像は見た感じは造影検査に類似していて,眼科医には大変理解しやすい..使用方法検査方法は多少撮影時間が長い以外は通常のOCTとほぼ同じである.Optovue社のAvantiOCTを用いた場合,1回の撮影に要する時間は約0.3秒である.新しい治療と検査シリーズ(73).バックグラウンド眼底の血流検査としてフルオレセイン蛍光眼底造影検査(fluoresceinangiography:FA),インドシアニングリーン赤外蛍光造影検査(indocyaninegreenangiogra-phy:ICGA)が行われるが,患者負担が大きく,ショックなどの可能性もあり,造影剤を用いない検査が求められていた.光干渉断層計(opticalcoherencetomogra-phy:OCT)が普及し,OCTを用いた新たなテクノロジーが発展してきたことで,非侵襲的に眼底の血管構造を描出できるOCTアンジオグラフィー(opticalcoher-encetomographyangiography:OCTA)が可能となった..OCTアンジオグラフィーの原理と検査法3D-OCTではOCTのB-scan(網膜断面像)を眼底の一定面積分,撮影してゆき,隣同士のB-scan画像をつなぎ合わせていくことにより,立体的な眼底像を作成することができる.この画像を前から見れば眼底写真のような眼底像が得られるはずだが,実際にはOCTでは眼底の浅いところから深いところまでの情報が入り混じってわかりにくくなっている.そこで,眼底の一定の深さ230.OCTアンジオグラフィー(網膜)プレゼンテーション:吉田宗徳名古屋市立大学大学院医学研究科視覚科学コメント:吉田茂生九州大学大学院医学研究院眼科学分野ab図1正常のOCTA像(Opto-vue社AvantiOCT,3×3mm)a:網膜表層血管(superficialcapillaryplexus:SCP),b:網膜深層血管(deepcapillaryplexus,DCP).OCTAではこのように網膜血管を2層に分けて表示可能である.毛細血管の微小な構造まで,よく描出されている.あたらしい眼科Vol.33,No.3,20164030910-1810/16/\100/頁/JCOPYの部分を一定の厚さで選んで(たとえば網膜内境界膜を基準としてそこから何μm外層方向まで,というように指定する),そこに含まれる情報を抽出して表示すれば,あたかも眼底写真を見るかのような画像を(しかも任意の深さで)得ることができる.こうして得られた画像はEnface画像(“Enface”は「前から見る」の意)とよばれる.OCTAでは,OCTを用いて,同じ場所で,時間のずれたB-scanを複数枚撮影する.このとき得られた時間のずれたOCT像を比較すると,同じ場所の信号強度はほとんど一致しているが,血流のある部分だけは信号強度に変化があらわれる.OCTAではまずその部分を強調して表示する.この血流が強調されたB-scanを上の方法で3D構築すれば,血管が強調された立体的な眼底像を作成でき,さらにEnface表示すれば,眼底の血管構造をそれぞれの深さで,くっきりと描き出すことができる.この画像は見た感じは造影検査に類似していて,眼科医には大変理解しやすい..使用方法検査方法は多少撮影時間が長い以外は通常のOCTとほぼ同じである.Optovue社のAvantiOCTを用いた場合,1回の撮影に要する時間は約0.3秒である.新しい治療と検査シリーズ(73).バックグラウンド眼底の血流検査としてフルオレセイン蛍光眼底造影検査(fluoresceinangiography:FA),インドシアニングリーン赤外蛍光造影検査(indocyaninegreenangiogra-phy:ICGA)が行われるが,患者負担が大きく,ショックなどの可能性もあり,造影剤を用いない検査が求められていた.光干渉断層計(opticalcoherencetomogra-phy:OCT)が普及し,OCTを用いた新たなテクノロジーが発展してきたことで,非侵襲的に眼底の血管構造を描出できるOCTアンジオグラフィー(opticalcoher-encetomographyangiography:OCTA)が可能となった..OCTアンジオグラフィーの原理と検査法3D-OCTではOCTのB-scan(網膜断面像)を眼底の一定面積分,撮影してゆき,隣同士のB-scan画像をつなぎ合わせていくことにより,立体的な眼底像を作成することができる.この画像を前から見れば眼底写真のような眼底像が得られるはずだが,実際にはOCTでは眼底の浅いところから深いところまでの情報が入り混じってわかりにくくなっている.そこで,眼底の一定の深さ230.OCTアンジオグラフィー(網膜)プレゼンテーション:吉田宗徳名古屋市立大学大学院医学研究科視覚科学コメント:吉田茂生九州大学大学院医学研究院眼科学分野ab図1正常のOCTA像(Opto-vue社AvantiOCT,3×3mm)a:網膜表層血管(superficialcapillaryplexus:SCP),b:網膜深層血管(deepcapillaryplexus,DCP).OCTAではこのように網膜血管を2層に分けて表示可能である.毛細血管の微小な構造まで,よく描出されている. 表1蛍光眼底造影とOCTAの比較蛍光眼底造影OCTA造影剤使用ありなし撮影の簡便さやや煩雑簡便深さ別解析できないできる撮影範囲広い狭い解像度普通高い蛍光漏出,プーリングなどの機能的解析できるできない蛍光漏出などによる画像の不鮮明化ありなし時系列による評価できるできないデータ解析においては,網膜浮腫などが存在することによってsegmentation(どの深さの情報を抽出するかということ)がうまくいかないことも多く,この場合は手動でsegmentationを行う必要がある.得られた画像はFAなどとよく似ていて,一般には解釈はそれほどむずかしいものではないが,OCTA特有の性質があり,必ずしも造影検査と所見は一致しない.データ解釈にはこの点をよく考慮する必要がある..本方法のよい点OCTAのよい点としては,まず造影剤を使わないことがある.造影剤不要ということは,撮影の手間や時間も少なくてすみ,患者負担が大幅に軽減される.そこで,検査を頻回に行うことも可能となる.次に,OCTAでは眼底の任意の深さの血管構造のみを抽出できることである.網膜血管は表層毛細血管層(superficialcapillaryplexus:SCP)と深層毛細血管層(deepcapillaryplexus:DCP)に分かれているが,OCTAではこの2層を分けて表示できる.また,加齢黄斑変性などでみられる脈絡膜新生血管(choroidalneovascularization:CNV)を網膜血管や脈絡膜血管とは区別して表示できる.OCTAでは造影検査と違って造影剤の漏れなどの影響がないので,FAでは漏出した造影剤でかくれてしまう新生血管などの血管でも血管構造を鮮明に描き出せる.得られる画像は非常に精細で造影検査に少しも引けをとらない.近い将来,造影検査の多くはOCTAにとって代わられる可能性が高いと思われる.文献1)JiaY,TanO,TokayerJetal:Split-spectrumamplitudedecorrelationangiographywithopticalcoherencetomography.OpticsExpress20:4710-4725,20122)SpaideRF,KlancnikJMJr,CooneyMJ:Retinalvascularlayersimagedbyfluoresceinangiographyandopticalcoherencetomographyangiography.JAMAOphthalmol133:45-50,20153)IshibazawaA,NagaokaT,TakahashiAetal:Opticalcoherencetomographyangiographyindiabeticretinopathy:Aprospectivepilotstudy.AmJOphthalmol160:35-44,20154)JiaY,BaileyST,WilsonDJetal:Quantitativeopticalcoherencetomographyangiographyofchoroidalneovascularizationinage-relatedmaculardegeneration.Ophthalmology121:1435-1444,20145)TakaseN,NozakiM,KatoAetal:Enlargementoffovealavascularzoneindiabeticeyesevaluatedbyenfaceopticalcoherencetomographyangiography.Retina35:23772383,20156)SuzukiN,HiranoY,YoshidaMetal:Microvascularabnormalitiesonopticalcoherencetomographyangiographyinmacularedemaassociatedwithbranchretinalveinocclusion.AmJOphthalmol161:126-132,2016.「OCTアンジオグラフィー(網膜)」へのコメント.近年の眼科画像診断技術の進歩は目覚ましい.補償構造を描出できるが,網膜浮腫など層構造に乱れがあ光学適用眼底走査型レーザー検眼鏡(scanninglaserる場合,正確な層別構造の描出がむずかしくなる.一ophthalmoscopy:SLO),手術顕微鏡OCTなどと並方,網膜血管からの漏出は判別できないが,FAではんで,OCTアンジオグラフィー(OCTA)は画期的な漏出した造影剤によって不明瞭になりがちな新生血管画像診断技術で,網脈絡膜血管を造影剤なしで描出でを鮮明にとらえることができる.きる.その原理はOCT信号の位相や強度変化をもと現時点では中心窩近傍の血管構造しか描出できないに,三次元網膜血管構造を視覚化するものである.現が,今後技術革新に伴い,FA同様のより広い画角の時点では,蛍光眼底造影検査(FA)と比較して,種々撮影が可能となっていくであろう.吉田宗徳先生も述の長短所があることを理解しつつ使用する必要があべられているように,将来的には,FAの多くがる.OCTであるため,網脈絡膜の任意の深さの血管OCTAにとって代わられる可能性はあると思われる.404あたらしい眼科Vol.33,No.3,2016(74)

眼瞼・結膜:眼瞼縁の上皮の特殊性

2016年3月31日 木曜日

眼瞼・結膜セミナー監修/稲富勉・小幡博人12.眼瞼縁の上皮の特殊性小幡博人自治医科大学眼科学講座眼瞼縁の上皮は,マイボーム腺開口部の後方で,皮膚の表皮から結膜の粘膜上皮に移行し,その境界は粘膜皮膚移行部(muco-cutaneousjunction:MCJ)とよばれている.近年,MCJの後方で眼球に接触する瞼縁内側(lidwiper部)の上皮は,重層化した非角化型上皮に房状の杯細胞や上皮の陰窩に杯細胞を有する特殊な上皮であることが報告された.瞼縁内側の上皮に杯細胞が豊富であるということは,瞬目時に眼表面の潤滑剤の役割を果たしている可能性がある.●従来の眼瞼縁の上皮の考え方眼瞼の上皮は,眼瞼縁の後方(内側)で,皮膚の表皮から結膜の粘膜上皮に移行する.その場所は,マイボーム腺開口部の後方で,粘膜皮膚移行部(muco-cutaneousjunction:MCJ)とよばれている.MCJは,フルオレセイン染色を行うと明瞭となり,“Marxline”という呼称がある.すなわち,眼瞼の上皮は,皮膚の表皮と瞼結膜の上皮の2種類に大別されるというのが一般的な考えである.●瞼縁の上皮は特殊一方,古くから,眼瞼皮膚の表皮と瞼結膜の粘膜上皮の間のtransitionzoneの上皮はmarginalconjunctivaとよばれ,肥厚した重層扁平上皮であると記載されてい図1上眼瞼の瞼縁上皮眼瞼の上皮には,眼瞼皮膚の表皮(a)と瞼結膜の上皮(c)の間に,もう1種類特殊な上皮(b)がある.その特殊な上皮とはMCJ(粘膜皮膚移行部)の後方で,眼球と接する瞼縁内側の部分(lidwiper部)である.87歳,女性.る1).近年,ドイツのKnopらは,この瞼縁の上皮を詳細に観察し,特殊な上皮であることを報告した2,3).その特徴は,上皮細胞が8~15層と重層性が増していること,角化していないこと,房状(クラスター状)の杯細胞や上皮が陥入した陰窩に杯細胞が存在することなどである.また,結膜の杯細胞は,ゲル形成ムチンであるMUC5ACを分泌するが,この瞼縁に存在する杯細胞はMUC5ACが陰性の杯細胞も存在するという3).すなわち,眼瞼の上皮は,皮膚の表皮と瞼結膜の上皮の間には,もう1種類特殊な上皮があると報告した.筆者は今まで瞼縁にこのような組織構造があることを認識したことはなかったが,手元のいくつかの標本を見直したところ,Knopらの報告が正しいことを確認したc.瞼結膜上皮=重層立方上皮+杯細胞b.瞼縁上皮=非角化型重層上皮+杯細胞MCJマイボーム腺眼輪筋a.眼瞼皮膚=角化型重層扁平上皮(71)あたらしい眼科Vol.33,No.3,20164010910-1810/16/\100/頁/JCOPY ababマイボーム腺杯細胞c(図1).眼瞼皮膚の表皮は,角化型の重層扁平上皮である(図2a).この表皮はマイボーム腺開口部の後方で角化がなくなり,重層性が増し,杯細胞が多数観察される(図2b).これが,瞼縁内側の特殊な上皮である.そして,瞼板側の瞼結膜になると,重層性が低下し,杯細胞を含む重層立方(円柱)上皮となる(図2c).各上皮の特徴をまとめると表1のようになる.●瞼縁の上皮とLidwiper2002年,Korbらは,ドライアイ症状を伴う瞼縁の上皮障害をlid-wiperepitheliopathy(LWE)と呼称した4).つまり,眼瞼の瞬目を車のワイパーに見立て,眼表面に接する瞼縁の上皮障害をLWEとした.そして,Knopらは,瞼縁内側の特殊な上皮はlidwiper部の上皮であり,ここに杯細胞が多いことは潤滑剤(lubricant)の役割を果たし,合目的であると推測した2,3).瞼縁内側,すなわちlidwiper部の上皮細胞の形態や杯細胞の数は症例により異なるようである.ドライアイで涙液が減少するとlidwiper部の杯細胞が減少するの図2瞼縁の上皮の拡大像図1a,b,cの上皮の拡大像を示す.a:眼瞼皮膚の表皮.角化型の重層扁平上皮である.表層の細胞は扁平である.顆粒層にケラトヒアリン顆粒がみられる.b:瞼縁内側の上皮.重層性が増した角化のない上皮の中に房状の杯細胞()が多数観察される.重層扁平上皮のようにみえるが,表層の細胞は扁平ではない.c:瞼結膜の上皮.重層立方(円柱)上皮で,杯細胞が散在する.表1眼瞼の上皮の特徴眼瞼皮膚瞼縁の上皮瞼結膜厚さ50μm80~150μm30~40μm細胞層の数6~8層8~15層3~4層角化ありなしなし表層細胞の形態扁平立方立方~円柱杯細胞─++++~++(文献2より改変)か,あるいは,lidwiper部の杯細胞が減少するからドライアイ症状が出現するのか,などさまざまな疑問の解決が今後の課題である.文献1)BronAJ,TripathiRC,TripathiBJ:Theconjunctiva.In:Wolff’sAnatomyoftheEyeandOrbit.8thed(ed.byBronAJ,TripathiRC,TripathiBJ),p51-70,Chapman&HallMedical,London,19972)KnopE,KnopN,ZhivovAetal:Thelidwiperandmuco-cutaneousjunctionanatomyofthehumaneyelidmargins:aninvivoconfocalandhistologicalstudy.JAnat218:449-461,20113)KnopN,KorbDR,BlackieCAetal:Thelidwipercontainsgobletcellsandgobletcellcryptsforocularsurfacelubricationduringtheblink.Cornea31:668-679,20124)KorbDR,GreinerJV,HermanJPetal:Lid-wiperepitheliopathyanddry-eyesymptomsincontactlenswearers.CLAOJ28:211-216,2002402あたらしい眼科Vol.33,No.3,2016(72)

抗VEGF治療:アフリベルセプトによるポリープ状脈絡膜血管症の鎮静化

2016年3月31日 木曜日

●連載抗VEGF治療セミナー監修=安川力髙橋寛二26.アフリベルセプトによるポリープ状丸子一朗東京女子医科大学眼科脈絡膜血管症の鎮静化わが国における滲出型加齢黄斑変性のうち,もっとも多いとされる病型であるポリープ状脈絡膜血管症(PCV)に対するアフリベルセプト硝子体内注射は,滲出の減少だけでなく,ポリープ状病巣そのものの閉塞も期待できる治療である.本稿ではPCVに対するアフリベルセプトの治療効果について概説する.はじめに滲出型加齢黄斑変性(age-relatedmaculardegeneration:AMD)は黄斑部に脈絡膜新生血管(choroidalneovascularization:CNV)をきたす疾患で,欧米では50歳以上の中途失明者のもっとも主要な原因であり,日本でも急増している.AMDはフルオレセイン蛍光眼底造影(fluoresceinangiography:FA)およびインドシアニングリーン蛍光眼底造影(indocyaninegreenangiography:IA)により,典型的加齢黄斑変性(typicalage-relatedmaculardegeneration:tAMD),ポリープ状脈絡膜血管症(polypoidalchoroidalvasculopathy:PCV),および網膜血管腫状増殖(retinalangiomatousproliferation:RAP)の3つに大きく分類される.近年の報告で欧米の白人とは異なり,日本人ではPCVの割合が高いことがわかってきており,人種差の関与が示唆されている1).ポリープ状脈絡膜血管症PCVは1990年にYannuzziら2)が提唱した疾患概念であり,現在では脈絡膜異常血管網とその先端にポリープ状病巣をもつものと定義されており,基本的には網膜色素上皮下に病変が存在する.現在のAMDの治療ガイドラインに従えば,PCVに対しては光線力学的療法(photodynamictherapy:PDT)および抗VEGF(vascularendothelialgrowthfactor)治療の単独または併用療法を行うことになっている3).一方で,PDTはポリープ状病巣の閉塞の効果は高いものの視力改善効果は乏しいこと,抗VEGF薬は視力改善効果が高いがポリープ閉塞効果は低いことが示されており,まだ治療法としては不十分である.アフリベルセプトアフリベルセプトはこれまでの抗VEGF薬と異なり,VEGFをブロックするだけでなく,胎盤増殖因子(pla(69)0910-1810/16/\100/頁/JCOPYcentalgrowthfactor:PlGF)もブロックすることで,血管新生や炎症を抑制する働きが期待されている.また,アフリベルセプトはVEGFとの親和性も高く,VEGFとの結合後の持続性もこれまでの薬剤よりも長いとされている.これらのことからPCVに対する高い治療効果が期待されている.Yamamotoら4)は杏林大学,福島県立医科大学,東京女子医科大学の3大学における未治療PCV症例87例90眼に対するアフリベルセプトの1年成績を報告している.治療法はアフリベルセプトの単独治療で,導入期3回投与の後に維持期として2カ月ごとの固定投与を行っている(維持期悪化時は追加投与あり).それによると,1年後の視力はベースラインと比較して22眼(24.4%)で改善,64眼(71.1%)で維持され(3段階以上の変化で定義),平均視力も小数視力換算でベースライン0.5治療前治療後図1アフリベルセプト治療前後の眼底および造影検査治療前後で比較すると眼底検査では橙赤色病巣は縮小し,IAではポリープ状病巣が消失している.あたらしい眼科Vol.33,No.3,2016399 治療前治療後図2アフリベルセプト治療前後のOCT図1と同日のOCTでは網膜内の滲出性変化が改善しているだけではなく,治療後脈絡膜はやや薄くなっている.中心窩下脈絡膜厚は治療前257μmから234μmに減少していた.から1年後0.7に改善していた.治療後滲出所見の消失(drymacula)が得られたのは,3カ月後72眼(80%),1年後64眼(71.1%)であった.期間中,アフリベルセプトの平均投与回数は7.1回で,硝子体内注射による眼内炎や網膜.離の合併はなく,脳血管イベントなどの深刻な合併症もなかった.また,投与1年後のIAにおける評価で,ポリープ状病巣は55.4%で消失,32.5%で縮小が得られており,アフリベルセプトではこれまで抗VEGF薬で課題となっていたポリープ閉塞効果も比較的高く,PCVの鎮静化に有効な薬剤であることが示された.最近の話題一方で,アフリベルセプトの脈絡膜に対する効果も報告されている.脈絡膜は血管に富む組織であり,その血流量は全眼球の約8割を占めるとされ,視機能に少なからず影響を与えていると考えられているが,これまでIA以外で直接的に脈絡膜を評価する方法はなかった.近年,光干渉断層計(opticalcoherencetomography:OCT)による脈絡膜観察が試みられ,現在ではスペクトラルドメインOCTや1,050nm帯の長波長光源を用い400あたらしい眼科Vol.33,No.3,2016たスウェプトソース方式によるOCTを用いることで比較的簡単に観察可能である.脈絡膜は加齢や屈折の影響を受けることや,個体差があるため単純に評価することはむずかしいが,AMDにおいて現在では一般的にPCVでは厚く,RAPでは薄いとされている.Koizumiら5)はアフリベルセプト投与されたAMD144眼の脈絡膜変化の1年経過を報告している.これによると,いずれのAMDの病型でも脈絡膜は薄くなることが示され,PCV86眼においては平均中心窩下脈絡膜厚がベースライン271μmから1年後に235μmに減少していた.これらの結果はアフリベルセプトが網膜色素上皮下にまで浸透し,脈絡膜に作用していることを示しており,主病変が網膜色素上皮下にあるPCVに対してこれまで以上にポリープ閉塞やdrymaculaをもたらした一因かもしれない.おわりにPCVに対するアフリベルセプトの効果について概説した.アフリベルセプトは日本人に多いPCVにこれまでの抗VEGF治療よりも高い有効性を示しており,これはVEGFだけでなくPlGFをブロックしていること,アフリベルセプトとVEGFの親和性が高いこと,網膜色素上皮を通り越して脈絡膜にまで影響を及ぼしていることなどが関与していると考えられる.一方で,1年以上の長期経過による変化や,固定投与ではないtreat&extend法を採用した場合の結果など,まだ不明な点は多く,今後さらなる研究が進むことを期待したい.文献1)MarukoI,IidaT,SaitoMetal:Clinicalcharacteristicsofexudativeage-relatedmaculardegenerationinJapanesepatients.AmJOphthalmol144:15-22,20072)YannuzziLA,WongDW,SforzoliniBSetal:Polypoidalchoroidalvasculopathyandneovascularizedage-relatedmaculardegeneration.ArchOphthalmol117:1503-1510,19993)髙橋寛二,小椋祐一郎,石橋達朗ほか;厚生労働省網膜脈絡膜・視神経萎縮症調査研究班加齢黄斑変性治療指針作成ワーキンググループ:加齢黄斑変性の治療指針.日眼会誌116:1150-1155,20124)YamamotoA,OkadaAA,KanoMetal:One-yearresultsofintravitrealafliberceptforpolypoidalchoroidalvasculopathy.Ophthalmology122:1866-1872,20155)KoizumiH,KanoM,YamamotoAetal:Subfovealchoroidalthicknessduringaflibercepttherapyforneovascularage-relatedmaculardegeneration:12-monthresults.Ophthalmology2015inpress(70)

緑内障:プロスタグランジン関連点眼薬+β遮断点眼薬+炭酸脱水酵素阻害点眼薬から配合点眼薬への変更

2016年3月31日 木曜日

●連載189緑内障セミナー監修=岩田和雄山本哲也189.プロスタグランジン関連点眼薬+b遮断点眼薬+井上賢治井上眼科病院炭酸脱水酵素阻害点眼薬から配合点眼薬への変更プロスタグランジン関連点眼薬,b遮断点眼薬,炭酸脱水酵素阻害点眼薬の3剤併用症例において,このうち2剤を配合点眼薬に変更すると,おおむね眼圧は維持され,安全性も良好である.しかし,眼圧が上昇する症例や副作用が出現する症例もあり,変更後の注意深い経過観察が必要である.●はじめに緑内障診療ガイドラインでは,緑内障薬物治療は点眼薬単剤からはじめ,目標眼圧を設定し,達成しなければ点眼薬の変更あるいは追加を行う.これを繰り返すと多剤併用となる.配合点眼薬が使用可能となる前は,眼圧下降効果と安全性からプロスタグランジン(prostaglandin:PG)関連点眼薬,b遮断点眼薬,炭酸脱水酵素阻害(carbonatedehydrataseinhibitor:CAI)点眼薬の3剤併用が多かった.この3剤のうち2剤を配合点眼薬(表1)に変更するとアドヒアランスが向上すると考えられ,実際にこのような変更が多く行われてきた.その場合にPG/チモロール配合点眼薬+CAI点眼薬とCAI/チモロール配合点眼薬+PG関連点眼薬の組み合わせがある(図1).●3剤併用から配合点眼薬+1剤への変更のメリット,デメリット①1日の点眼回数3剤併用はPG関連点眼薬(1回),b遮断点眼薬(1~2回),CAI点眼薬(2~3回)で合計4~6回である.PG/チモロール配合点眼薬(1回)+CAI点眼薬は3~4回,CAI/チモロール点眼薬(2回)+PG関連点眼薬は3回である.ドルゾラミド使用症例では,ドルゾラミド/表1国内で使用可能な緑内障配合点眼薬(2015年8月現在)薬剤商品名薬剤成分ラタノプロスト/チモロールザラカムRラタノプロスト+チモロールトラボプロスト/チモロールデュオトラバRトラボプロスト+チモロールタフルプロスト/チモロールタプコムRタフルプロスト+チモロールドルゾラミド/チモロールコソプトRドルゾラミド+チモロールブリンゾラミド/チモロールアゾルガRブリンゾラミド+チモロールプロスタグランジン/炭酸脱水酵素阻害チモロール配合点眼薬点眼薬b遮断点眼薬プロスタグランジン炭酸脱水酵素阻害関連点眼薬点眼薬プロスタグランジン炭酸脱水酵素阻害/関連点眼薬チモロール配合点眼薬図1PG関連点眼薬,b遮断点眼薬,CAI点眼薬の3剤併用から配合点眼薬+1剤への変更方法(67)あたらしい眼科Vol.33,No.3,20163970910-1810/16/\100/頁/JCOPY チモロール配合点眼薬への変更で点眼回数が減少する.②眼圧下降効果と安全性2剤から配合点眼薬への変更で,眼圧下降の減弱が懸念される.PG/チモロール配合点眼薬では1日1回点眼のため,本来1日2回点眼のチモロールの効果が,またドルゾラミド/チモロール配合点眼薬では1日2回点眼のため,本来1日3回点眼のドルゾミラドの効果が減弱する.一方,ブリンゾラミド/チモロール配合点眼薬は1日2回点眼のままで効果の持続が期待できる.過去の4論文ではこれら2つの組み合わせの眼圧下降効果と安全性は同等だったが,眼圧が上昇した症例も存在した1~4).筆者らは3剤併用から配合点眼薬+1剤に変更となった112例の2年間の眼圧下降効果と安全性を後ろ向きに調査した1).ラタノプロスト/チモロール配合点眼薬+CAI点眼薬へ変更した55例とドルゾラミド/チモロール配合点眼薬+PG関連点眼薬へ変更した57例の変更6,12,18,24カ月後の眼圧は,各々変更前と同等だっ(mmHg)眼圧21.018.015.0ラタノプロスト/チモロール配合点眼薬+CAI点眼薬へ12.09.0変更ドルゾラミド/6.0チモロール配合点眼薬+PG3.0関連点眼薬へ変更0.0変更前変更6カ月後変更12カ月後変更18カ月後変更24カ月後図2PG関連点眼薬,b遮断点眼薬,CAI点眼薬の3剤併用から,ラタノプロスト.チモロール配合点眼薬+CAI点眼薬あるいはドルゾラミド.チモロール配合点眼薬+PG関連点眼薬への変更前後の眼圧(文献1より引用)た(図2).眼圧下降効果不十分や副作用出現による薬剤中止症例は2群で同等だった(表2).③薬剤ラインアップPG関連点眼薬を含む配合点眼薬は,国内ではビマトプロストの配合点眼薬はない.ビマトプロストを含む症例ではCAI/チモロール配合点眼薬への変更のほうがよい.④薬剤費用(2015年8月現在)先発品のみで1カ月間に1本使用する場合は,PG関連点眼薬(1,849~2,519円),b遮断点眼薬(1,389~1,798円),CAI点眼薬(1,486~2,254円)で,3剤併用の合計は4,724~6,571円である.PG/チモロール配合点眼薬(2,650~3,188円)+CAI点眼薬は4,136~5,442円,CAI/チモロール配合点眼薬(2,254~3,163円)+PG関連点眼薬は4,103~5,682円である.文献1)InoueK,SoedaS,TomitaG:Comparisonoflatanoprost/timololwithcarbonicanhydraseinhibitoranddorzolamide/timololwithprostaglandinanaloginthetreatmentofglaucoma.JOphthalmol2014:975429.doi:10.1155/2014/975429,20142)福島亜矢子,井上俊洋,川井尚子ほか:開放隅角緑内障における緑内障点眼薬配合剤への切り替え効果の前向き検討.眼臨紀8:88-93,20153)NakakuraS,TabuchiH,BabaYetal:Comparisonofthelatanoprost0.005%/timolol0.5%+brinzolamide1%versusdorzolamide1%/timolol0.5%+latanoprost0.005%:a12-week,randomizedopen-labeltrial.ClinOphthalmol6:369-375,20124)早川真弘,澤田有,阿部早苗ほか:ドルゾラミド塩酸塩/チモロールマレイン酸塩配合点眼薬液への切り替え経験.あたらしい眼科30:261-264,2013表2PG関連点眼薬,b遮断点眼薬,CAI点眼薬の3剤併用から,ラタノプロスト.チモロール配合点眼薬+CAI点眼薬あるいはドルゾラミド.チモロール配合点眼薬+PG関連点眼薬への変更後の投与中止症例(文献1より引用)ラタノプロスト/チモロール配合点眼薬+CAI点眼薬へ変更ドルゾラミド/チモロール配合点眼薬+PG関連点眼薬へ変更p値眼圧下降効果不十分20.0%(11例)24.6%(14例)0.6522副作用7.3%(4例)14.0%(8例)0.3612副作用の種類刺激感(1例)掻痒感(1例)異物感(1例)点状表層角膜症(1例)霧視(3例)刺激感(3例)胸痛(1例)喘息(1例)398あたらしい眼科Vol.33,No.3,2016(68)

屈折矯正手術:有水晶体眼内レンズ挿入術後の眼軸長変化

2016年3月31日 木曜日

屈折矯正手術セミナー─スキルアップ講座─屈折矯正手術セミナー─スキルアップ講座─監修=木下茂●連載190大橋裕一坪田一男190.有水晶体眼内レンズ挿入術後の山村陽バプテスト眼科クリニック眼軸長変化LASIK術後5年の眼軸長は,矯正量によらずほとんど変化しないが,有水晶体眼内レンズ挿入術後は,LASIK術後に比べ眼軸長が延長しやすい可能性がある.眼軸長の延長は屈折矯正手術後の再近視化が生じる原因になるため,長期の経過観察が重要である.●はじめにエキシマレーザーを用いた屈折矯正手術が2000年にわが国で認可されてから10年以上経過し,現在ではlaserinsitukeratomileusis(LASIK)が主流に行われている.また,LASIKが適応外の強度近視眼に対して,有水晶体眼内レンズを用いた屈折矯正手術も近年登場し,2010年にimplantablecollamerlens(ICL,STAARSurgical社)挿入術が認可された1).McBrienら2)は成人発症の近視や成人の近視進行について硝子体長の延長が原因であると報告し,小児期だけでなく成人後も眼軸長が延長することが以前より指摘されている.したがって,屈折矯正手術を施行した場合に,術後の眼軸長がどの程度変化するかについては非常に興味深いところである.眼軸長の延長は術後の再近視化につながる可能性もあり,屈折矯正術後の長期的な治療成績を検討するうえでも,眼軸長変化を検討することは重要であると考えられる.本稿では,筆者らが検討したLASIK術後と有水晶体眼内レンズ挿入術後の眼軸長変化の結果について紹介する3).●LASIK術後とICL挿入術後の眼軸長変化患者背景については,LASIK施行症例を術前自覚屈折度数(等価球面度数).6D未満[LASIK(>.6D)群]と.6D以下[LASIK(≦.6D)群]に分類し,有水晶体眼内レンズ挿入術(ICL群)の3者で比較した(表1).年齢はLASIK(>.6D)群が35.9±8.3歳,LASIK(≦.6D)群が33.8±7.6歳,ICL群が36.4±9.4歳,自覚屈折度数はそれぞれ.4.14±1.28D,.8.00±1.19D,.11.81±2.16D,術前眼軸長はそれぞれ25.63±0.89mm,27.00±0.80mm,28.00±0.51mmであった.眼軸長はIOLMaster(CarlZeissMeditec社)を用いて術前と術後1,2,3,4,5年時に測定した.結果は,LASIK(>.6D)群では術後眼軸長に変化がなく,LASIK(≦.6D)群では術後3年以降は変化がなかったが,ICL群では術後1年以降毎年延長していた(図1).また,術後5年の眼軸長変化量はLASIK(>.6D)群が0.04±0.07mm,LASIK(≦.6D)群が0.04±0.08mm,ICL群が0.13±0.12mmで,ICL群はLASIK群よりも有意に眼軸長が延長していた(図2).ただし,ICL群は術前の自覚屈折度数が小さく,眼軸長もLASIK群よりも長いなど患者背景をマッチさせていないため,今回の検討だけでICL群がLASIK群よりも延長しやすいと結論付けることはできないが,少なくともその可能性は示唆される結果となっていた.●眼軸長に関する報告強度近視眼の眼軸長変化に関する報告は多くはないが,Sakaら4)は,年齢48.4±12.2(22~84)歳,屈折度表1患者背景LASIK(>.6D)群LASIK(≦.6D)群ICL群p値症例数26例44眼21例34眼8例16眼年齢(歳)35.9±8.333.8±7.636.4±9.40.45術前自覚屈折度数(D).4.14±1.28.8.00±1.19.11.81±2.16<0.01術前眼軸長(mm)25.63±0.8927.00±0.8028.00±0.51<0.01(65)あたらしい眼科Vol.33,No.3,20163950910-1810/16/\100/頁/JCOPY 2925.6325.5525.5625.5725.5825.5927.0026.8626.8826.926.9126.928.0028.0828.1228.1528.1928.21pre123450.328.52827.5眼軸長(mm)LASIK(>-6D)27LASIK(≦-6D)26.52625.5ICL2524.5*p<0.0524**p<0.01期間(年)図1術後の眼軸長変化術後眼軸長はLASIK(>.6D)群では変化がなく,LASIK(≦.6D)群では術後3年以降は変化がなかったが,ICL群では術後1年以降,毎年延長していた.数.13.0±4.3(.6.0~.26.5)D,眼軸長29.35±1.80(26.45~34.43)mmの強度近視眼を対象として,2年間の眼軸長変化についてIOLMasterを用いて検討した結果,眼軸長は0.12±0.17(.0.12~1.1)mm延長し,眼軸長が長いほど延長しやすかったと報告している.また,40歳以上の一般住民を対象とした久山町研究では,近視性網膜症の有病率は加齢とともに増加し,眼軸長26.0mm未満では0.1%であったのに対し,眼軸長28.0mm以上では53.7%であったと報告されている5).したがって,眼軸長の延長は再近視化だけでなく近視性網膜症の発症にも関与している可能性があるため,とくにLASIK適応外となるような強度近視眼に対してICL挿入術を施行した場合には,網膜症の発症についても十分に留意し,長期の経過観察をしていく必要がある.眼軸長変化量(mm)☆☆☆0.250.20.150.1LASIK(>-6D)LASIK(≦-6D)ICL0.05**p<0.010術式図2術後5年の眼軸長変化量術後5年の眼軸長変化量は,LASIK(>.6D)群が0.04±0.07mm(.0.14~0.23mm),LASIK(≦.6D)群が0.04±0.08mm(.0.10~0.26mm),ICL群が0.13±0.12mm(.0.05~0.32mm)で,ICL群はLASIK群よりも有意に眼軸長が延長していた.文献1)日本眼科学会屈折矯正手術に関する委員会:屈折矯正手術のガイドライン─日本眼科学会屈折矯正手術に関する委員会答申─.日眼会誌114:692-694,20102)McBrienNA,AdamsDW:Alongitudinalinvestigationofadult-onsetandadult-progressionofmyopiainanoccupationalgroup.Refractiveandbiometricfindings.InvestOphthalmolVisSci38:321-333,19973)山村陽,稗田牧,脇舛耕一ほか:屈折矯正手術後5年の眼軸長変化.眼科手術28:417-421,20154)SakaN,MoriyamaM,ShimadaNetal:ChangesofaxiallengthmeasuredbyIOLmasteduring2yearsineyesofadultswithpathologicmyopia.GraefesArchClinExpOphthalmol251:495-499,20125)AsakumaT,YasudaM,NinomiyaTetal:PrevalenceandriskfactorsformyopicretinopathyinaJapanesepop-ulation:theHisayamaStudy.Ophthalmology119:17601765,2012LASIK(>-6D)LASIK(≦-6D)ICL396あたらしい眼科Vol.33,No.3,2016(66)

眼内レンズ:灌流ハイドロダイセクション法

2016年3月31日 木曜日

眼内レンズセミナー監修/大鹿哲郎・佐々木洋352.灌流ハイドロダイセクション法増田洋一郎東京慈恵会医科大学葛飾医療センター眼科本法は,カニューラによる注水ではなく,灌流スリーブからの灌流動圧によって皮質を.から分離する手技である.本手技における最高眼内圧は灌流ボトル高に依存するため,従来のハイドロダイセクションにより発生しうる高眼圧起因性合併症を回避でき,低侵襲白内障手術をめざすうえで意義ある手技と考えられる.●はじめに白内障手術時の眼内圧最高値は,カニューラを用いて行うハイドロダイセクション時であるといわれており1),ときに重篤な合併症につながることが報告されている.とくに.内の圧上昇による後.破損,後房圧上昇による前部硝子体膜破損は,眼内炎の主要な要因になることが危惧され,極力回避したい合併症である2,3).広く行われているカニューラハイドロダイセクション法の最大眼内圧は,注入水量,切開創の大きさ,粘弾性物質の種類,術者の技量など多くのパラメータにより変化しうるが,灌流ハイドロダイセクション法の最大眼内圧はボトル高に依存し,ハイドロダイセクション.超音波乳化吸引.皮質吸引のすべての過程で,ボトル高依存圧以下の眼内圧での手術を可能とする.そのため,本法は低侵襲白内障手術に貢献する手技といえる4).abc図1後部水晶体の皮質分離手技a:中央溝掘り後.b,c:分割操作.二分割された核の周辺部の壁を大きく開く,核後面を持ち上げる,分割を維持しながら眼内液を吸引することでスリーブからの灌流を誘発する,などの操作を行う.(63)0910-1810/16/\100/頁/JCOPY●実際の手順実際の手技を説明する.超音波チップを前房内に挿入後,前方水晶体皮質を可能な範囲で除去してから,中央の溝掘りを行う.深い溝を掘った後,溝の両末端で超音波チップとフックを用いて繰り返し分割操作を行う.この分割操作の際,①核の周辺部の壁を大きく開く,②核の後面を持ち上げる,③分割を維持しながら眼内液を吸引することでスリーブからの灌流を誘発する,という操作(図1)を行うことにより,水晶体後部の皮質.後.間に灌流が流れる間隙ができ,後.側のハイドロダイセクションが完成する.次に,超音波チップを連続円形切.(continuouscurvilinearcapsulorrhexis:CCC)縁から前.下に挿入し,水晶体前方から皮質..間を灌流すabc図2前部水晶体の皮質分離手技a,b:左側の核片に対する前部水晶体皮質分離.超音波チップをCCC縁から前.下に挿入し,吸引をかけながら灌流スリーブから灌流を誘発する.c:右側の核片にも同様に前部水晶体皮質分離を行った後,灌流ハイドロダイセクション効果が完成し,核を回転させることが可能となる.あたらしい眼科Vol.33,No.3,2016393 abcd図3部分灌流ハイドロダイセクション法a:Zinn小帯に可能なかぎり負担をかけないよう,右利き術者の場合,核処理を行いやすい左側下方の前部水晶体皮質分離のみを行う.b~d:左側下方の核分割,乳化吸引処理を部分的に行い,その後残存核に対して順次灌流ハイドロダイセクション法にて皮質分離を丁寧に行っていく.る操作を行う(図2a,b).この際,残存皮質を吸引除去し,サイドポートのフックを軽く押し下げ眼内液を流出させると,灌流スリーブからの灌流液が前.下に流入し,より効果的となる.対側の水晶体にも同様の手技を行うことで前部水晶体皮質の分離が完成し,灌流ハイドロダイセクション効果により水晶体が回転することとなる(図2c).●手技のポイントこの手技のポイントは,水晶体前面の皮質をできるだけ除去すること,溝掘り後の核分割操作と灌流誘発を何度も繰り返すこと,前.下の灌流時は時間をかけて待つことであり,もしハイドロダイセクション効果が不十分であれば一連の作業をやり直す必要がある.前部水晶体皮質分離の際,チップ挿入側のハイドロ効果を効率的に得るためには,ケルマンチップのような曲がりのチップを使用すると行いやすくなる.また,軟らかい核の場合は中央の溝掘り後の分割操作は不要であり,前部水晶体の皮質分離のみでハイドロダイセクション効果を得ることができる.Zinn小帯脆弱例などZinn小帯にできるだけ負担をかけたくない症例では,部分的な灌流ハイドロダイセクション手技を行っていくとよい.中央の溝掘りを丁寧に行った後,分割時に核の周辺部を押し開くことはせず,核の後面を持ち上げる操作と眼内液吸引による灌流誘発をゆっくりと繰り返して後部水晶体皮質分離を行う.核の乳化吸引が行いやすい部位の前.下に灌流液を流して前部水晶体皮質を.から分離しやすくし,核を回転させず,その部分の核を分割して乳化吸引処理を行う(図3).同様の手技で,残存している核の前.下に灌流液を流入させていき,ハイドロダイセクション効果を得た残存核を移動させて乳化吸引していくと,Zinn小帯への負担を最小限に核処理を行うことが可能である.本原稿をご校閲くださいました常岡寛教授,大木孝太郎先生,岩城久泰先生,加藤能利子先生に深謝いたします.文献1)KhingC,OslerRH:Intraocularpressureduringphacoemulsification.JCataractRefractSurg32:301-308,20062)MiyakeK,OtaI,IchihashiSetal:Newclassificationofcapsularblocksyndrome.JCataractRefractSurg24:1230-1234,19983)KawasakiS,TasakaY,SuzukiTetal:Influenceofelevatedintraocularpressureontheposteriorchamber-anteriorhyaloidmembranebarrierduringcataractoperations.ArchOphthalmol129:751-757,20114)MasudaY,TsuneokaH:Hydrodissection-freephacoemulsificationsurgery:mechanicalcorticalcleavingdissection.JCataractRefractSurg40:1327-1331,2014

写真:虹彩癒着

2016年3月31日 木曜日

写真セミナー監修/島﨑潤横井則彦382.虹彩癒着加藤久美子三重大学大学院医学系研究科臨床医学系講座眼科学図2図1のシェーマ①角膜上皮下にカルシウム沈着②虹彩前癒着③虹彩後癒着図1当科初診時の前眼部写真角膜上皮下にカルシウム沈着を認めた.瞳孔縁全周の虹彩後癒着と全周にわたる虹彩前癒着が認められた.図4サルコイドーシスの患者の前眼部写真虹彩上にBusacca結節(矢印),瞳孔縁にKoeppe結節(矢頭)を認め,虹彩は水晶体.に癒着している.図3初診時の前眼部OCT虹彩の前面と角膜とが完全に癒着している.角膜上皮下のカルシウム沈着は高輝度を呈している.(61)あたらしい眼科Vol.33,No.3,20163910910-1810/16/\100/頁/JCOPY ぶどう膜炎の患者において虹彩癒着はよくみられる所見である.虹彩は豊富な血流を有しており,眼炎症の首座となりやすい.前眼部の炎症では虹彩,毛様体血管の透過性亢進が起こり,フィブリンが析出する.このフィブリンは生体糊となり,虹彩と隣接する組織との癒着を引き起こす1).虹彩根部と角膜周辺部が癒着することを「虹彩前癒着」,虹彩裏面と水晶体が癒着することを「虹彩後癒着」とよぶ.前眼部炎症の原因としてぶどう膜炎があげられるが,サルコイドーシスや原田病などの肉芽腫性ぶどう膜炎,急性前部ぶどう膜炎,Behcet病などの非肉芽腫性ぶどう膜炎のいずれにおいても虹彩癒着は発症しうる.肉芽腫性ぶどう膜炎では,Koeppe結節などが原因となって虹彩後癒着が生じることが多いとされている2).虹彩癒着でも,瞳孔縁が水晶体.に癒着する虹彩後癒着については,通常の細隙灯顕微鏡検査で容易に診断できる.一方,虹彩前癒着の診断には,隅角鏡を使用した隅角検査が必要となる.隅角鏡の挿入は患者にとって負担を伴う検査であるが,ぶどう膜炎患者で眼圧が上昇している場合はもちろんのこと,初診時にぶどう膜炎を疑った際には隅角検査を行うべきである.前眼部OCTを用いると非接触かつ非侵襲的に隅角の評価ができるので診断が容易である.虹彩癒着の治療では,虹彩癒着が起こりやすい前眼部炎症では,虹彩癒着予防のために十分な消炎をかけるだけではなく,適切な瞳孔管理を行うことが重要である.アトロピン点眼により散瞳状態で瞳孔を固定するよりは,トロピカミド・フェニレフリン塩酸塩点眼液を1日数回点眼することで瞳孔を動かすほうがよい.瞳孔縁全周に虹彩癒着が起こる完全虹彩後癒着では,瞳孔ブロックが起こり急激な眼圧上昇を起こすため,速やかなレーザー虹彩切開術が必要となる.また,虹彩前癒着が広範囲に形成されてしまった場合,治療が困難な高眼圧症となる.点眼による眼圧コントロールが不良な場合には線維柱帯切開術や線維柱帯切除術などの手術治療が行われるが,治療に苦慮することが多い3).筆者は右眼に角膜混濁と水疱性角膜症,全周にわたる虹彩前癒着,虹彩後癒着により瞳孔閉鎖をきたした症例を経験した(図1~3).約20年前に眼Behcet病と診断され,右眼の視力低下が起きたが,左眼があるので右眼が見えなくなってもよいと考え,自己判断で通院を中断,約20年かけて写真のような状態になった.レーザー虹彩切開術を他院で施行されており,眼圧上昇はなく,また積極的な治療希望もなく経過観察を希望された.文献1)園田康平:虹彩癒着,虹彩結節.所見から考えるぶどう膜炎(園田康平,後藤浩編),眼科臨床エキスパート,p7580,医学書院,20132)真下永:虹彩結節・隅角結節・虹彩癒着の種類と鑑別.ぶどう膜炎を斬る!(園田康平編),専門医のための眼科診療クオリファイ13,p16-19,中山書店,20123)岩尾圭一郎:ぶどう膜炎続発緑内障.緑内障治療のアップデート(杉山和久,谷原秀信編),眼科臨床エキスパート,p68-76,医学書院,2015392

眼科と皮膚科の境界領域に対するそれぞれの見解 結膜炎:感染とアレルギーの見分け方

2016年3月31日 木曜日

特集●眼瞼・結膜アレルギーあたらしい眼科33(3):383.389,2016特集●眼瞼・結膜アレルギーあたらしい眼科33(3):383.389,2016眼科と皮膚科の境界領域に対するそれぞれの見解結膜炎:感染とアレルギーの見分け方DifferentialDiagnosisofInfectionsandAllergicConjunctivitis杉浦佳代*福田憲*はじめに結膜炎はさまざまな原因で生じ,日常診療で診る機会の非常に多い疾患である.結膜炎の原因としては,アレルギー性結膜疾患がもっとも多いが,細菌性,ウイルス性,クラミジアなどの感染性結膜炎も少なくない.これらの疾患は治療方針が異なるため,しっかり鑑別する必要がある.また,アレルギー性結膜疾患の治療中に感染を合併することもあり,その場合は治療を変更しなくてはならない.本稿ではアレルギー性結膜疾患と感染性結膜炎との鑑別のポイントや,治療中の感染の合併例などについて述べる.Iアレルギー性結膜疾患の診断アレルギー性結膜疾患は,I型アレルギー反応によって生じる結膜の炎症性疾患で,アレルギー性結膜炎,アトピー性角結膜炎,春季カタル,巨大乳頭結膜炎の4つが含まれる.各病型の診断は,増殖性病変,アトピー性皮膚炎,あるいは縫合糸・コンタクトレンズなどの異物の有無によってなされる(図1).アレルギー性結膜疾患であるという診断は,臨床所見やアレルギー検査などの診断根拠の組み合わせにより①臨床診断,②準確定診断,③確定診断の3群に分類される(表1)1).アレルギー性結膜疾患に特有な臨床症状のみで診断したものが臨床診断で,準確定診断は臨床症状に加えI型アレルギー素因が証明されたものである.アレルギー素因の証明には全身と眼局所があり,全身の反応としてはスクラッチテストなどの皮膚反応や血液検査で抗原特異的IgEが陽性であること,眼局所の反応としては涙液中総IgE抗体の増加である.涙液中総IgE抗体の測定はイムノクロマト法による測定キットが発売され,日常診療においても比較的簡便に短時間で測定できるようになった.確定診断例は臨床症状に加えて,眼局所でのI型アレルギー反応の証明,すなわち眼脂や結膜擦過物中の好酸球が検出された症例であるが,病型によっては陽性率が低いことが問題である2).アレルギー性結膜疾患のみならず感染性結膜炎の確定診断においても,結膜の擦過細胞診や擦過物の鏡検・培養・PCR(polymerasechainreaction)検査などによって好酸球や感染微生物などを同定することでなされるが,日常診療ですべての結膜炎症例に施行することは難しい.典型的な花粉性結膜炎の症例,すなわち毎年特定の花粉などの飛散時期に鼻炎を伴って起こる結膜炎に対しては,必ずしも全例に涙液中IgEの測定や好酸球の証明をする必要性はなく,臨床診断で十分診断可能と思われる.アレルギー性か感染性結膜炎か鑑別に迷う症例においては,上述したアレルギー検査やアデノウイルスあるいはヘルペスウイルス迅速診断キットなどの検査を用いて,より確実に診断することが重要である.これらの補助検査は特異度が高く陽性であれば診断の助けになるが,感度は100%ではないために陰性の場合も否定できるものではないことを念頭におくべきである.以下にアレルギー性結膜疾患と感染性結膜炎の鑑別のポイントを述べる.*KayoSugiura&KenFukuda:高知大学医学部眼科学講座〔別刷請求先〕福田憲:〒783-8505南国市岡豊町小蓮高知大学医学部眼科学講座0910-1810/16/\100/頁/JCOPY(53)383 眼掻痒,充血などの自覚症状結膜増殖なし結膜増殖あり季節性あり季節性なし異物なし異物ありアトピー性皮膚炎ありアトピー性角結膜炎(AKC)アトピー性皮膚炎なし春季カタル(VKC)巨大乳頭結膜炎(GPC)季節性アレルギー性結膜炎(SAC)通年性アレルギー性結膜炎(PAC)アトピー性皮膚炎なし眼掻痒,充血などの自覚症状結膜増殖なし結膜増殖あり季節性あり季節性なし異物なし異物ありアトピー性皮膚炎ありアトピー性角結膜炎(AKC)アトピー性皮膚炎なし春季カタル(VKC)巨大乳頭結膜炎(GPC)季節性アレルギー性結膜炎(SAC)通年性アレルギー性結膜炎(PAC)アトピー性皮膚炎なし図1アレルギー性結膜疾患の診断表1アレルギー性結膜疾患診療ガイドラインによる診断基準臨床症状アレルギー素因全身局所眼アレルギー検査臨床診断■準確定診断■あるいは■確定診断■△△■■:必須,△:検査が望ましいII鑑別診断,とくに感染性結膜炎との鑑別結膜炎患者を診た場合,まずアレルギー(非感染)性か感染性かを鑑別する.感染性結膜炎の原因としては,細菌,ウイルス(アデノウイルス,エンテロウイルス,コクサッキーウイルス,単純ヘルペスウイルス),クラミジアなどがあげられる.自覚症状や眼所見のみでは鑑別が困難な場合もあり,患者の年齢,職業,発症様式,流行性,罹患側,結膜炎の既往歴などをしっかり問診することが重要である(表2).また,いきなり細隙灯顕微鏡で眼所見を診察するのではなく,リンパ節腫脹やアトピー性皮膚炎などの眼外症状を確認することである程度疾患を予測することが可能である.耳前リンパ節腫脹を認める場合はウイルス性やクラミジア結膜炎が疑われる.問診および眼外症状の確認が終わると細隙灯顕微鏡による診察となるが,眼脂や結膜乳頭および結膜濾胞の有無や性状も結膜炎の鑑別に役立つ所見である.同じアレルギー性結膜疾患であるが,アレルギー性結膜炎の眼脂は白色水様性であるが,春季カタルでは粘液性となる.アデノウイルスなどのウイルス性結膜炎では漿液線維素性眼脂が多量にみられ,細菌性結膜炎では黄色の膿性眼脂がみられることが多い(図2).診断に迷う場合は,眼脂をギムザ染色して観察することによって,浸潤細胞の主体が好中球かリンパ球,あるいは好酸球なのかによって細菌性,ウイルス性,アレルギー性かの推察ができる.また,下眼瞼の結膜濾胞を確認することも大切で,アレルギー性結膜炎では結膜.に小濾胞を,クラミジア性結膜炎では結膜.に充実性の混濁した巨大濾胞を認める(図3).一方,細菌性結膜炎では結膜濾胞は認めない.アデノウイルス結膜炎も瞼結膜から円蓋部にかけて濾胞を形成する.春季カタルでは,落屑状の点状表層角膜症(superficialpunctatekeratopathy:SPK)やシールド潰瘍などの特徴的な角膜障害をきたすことが有名であるが3),アデノウイルス結膜炎でも春季カタルに似た角膜障害を生じることがある.図4と図5に角膜傷害をきたしたアデノウ384あたらしい眼科Vol.33,No.3,2016(54) 表2結膜炎患者の鑑別のための問診のポイント主訴アレルギー性結膜炎:掻痒感が強い感染性結膜炎:眼脂や異物感を訴えることが多い発症様式アレルギー:両眼性花粉飛散時期やダニの繁殖時期に多い感染性:両眼発症でも左右で発症時期に差があることも多いEKCやプール熱などの流行性,同じ症状の患者との接触歴職業アレルギー性:職場での暴露抗原ウイルス性:幼稚園・学生・学校関係者・医療従事者か眼外症状アレルギー:鼻炎,喘息やアトピー性皮膚炎などのアトピー素因感染性:咽頭炎や感冒様症状,リンパ節腫脹,泌尿器症状dabc図2眼脂による結膜炎の鑑別アレルギー性結膜炎(a)は水様性,細菌性結膜炎(b)は膿性の強い眼脂,春季カタル(c)は粘液性,流行性角結膜炎(d)では漿液線維素性の眼脂がみられることが多い. 386あたらしい眼科Vol.33,No.3,2016(56)abcd図3結膜濾胞による結膜炎の鑑別下眼瞼結膜には,アレルギー性結膜炎(a)では小さな濾胞がみられるが,細菌性結膜炎(b)では濾胞はみられない.クラミジア(c)では巨大な癒合した濾胞,アデノウイルス結膜炎(d)でも下眼瞼全体に濾胞がみられる.ab図4ウイルス性結膜炎(a)と春季カタル(b)による角膜上皮障害の鑑別咽頭結膜熱による角膜傷害(a)では,落屑状点状表層角膜症に小さな上皮びらんが多発し,上眼瞼には偽膜がみられる.春季カタルによる落屑状点状表層角膜症(b)では,上眼瞼には巨大乳頭がみられる.abcd図3結膜濾胞による結膜炎の鑑別下眼瞼結膜には,アレルギー性結膜炎(a)では小さな濾胞がみられるが,細菌性結膜炎(b)では濾胞はみられない.クラミジア(c)では巨大な癒合した濾胞,アデノウイルス結膜炎(d)でも下眼瞼全体に濾胞がみられる.ab図4ウイルス性結膜炎(a)と春季カタル(b)による角膜上皮障害の鑑別咽頭結膜熱による角膜傷害(a)では,落屑状点状表層角膜症に小さな上皮びらんが多発し,上眼瞼には偽膜がみられる.春季カタルによる落屑状点状表層角膜症(b)では,上眼瞼には巨大乳頭がみられる. あたらしい眼科Vol.33,No.3,2016387(57)abc図5ウイルス性結膜炎(a,b)と春季カタル(c)による角膜びらんの鑑別3症例とも類円形の角膜上皮びらんが認められるが,流行性角結膜炎の2症例(a,b)では,上眼瞼には巨大乳頭はなく,偽膜が認められる.春季カタル(c)で上眼瞼には石垣状の巨大乳頭が認められる.ab図6角膜プラーク下にブドウ球菌感染を生じたアトピー性角結膜炎角膜プラークの範囲を超えた角膜実質に浸潤(▲)を認め,上方からの血管侵入も強いこと(a)から感染を疑い,プラークを除去すると角膜実質に強い浸潤病巣を認め(b),多数の好中球とブドウ球菌が検出された.(文献4より転載)abc図5ウイルス性結膜炎(a,b)と春季カタル(c)による角膜びらんの鑑別3症例とも類円形の角膜上皮びらんが認められるが,流行性角結膜炎の2症例(a,b)では,上眼瞼には巨大乳頭はなく,偽膜が認められる.春季カタル(c)で上眼瞼には石垣状の巨大乳頭が認められる.ab図6角膜プラーク下にブドウ球菌感染を生じたアトピー性角結膜炎角膜プラークの範囲を超えた角膜実質に浸潤(▲)を認め,上方からの血管侵入も強いこと(a)から感染を疑い,プラークを除去すると角膜実質に強い浸潤病巣を認め(b),多数の好中球とブドウ球菌が検出された.(文献4より転載) 388あたらしい眼科Vol.33,No.3,2016(58)部への血管侵入が増強することが鑑別のポイントである4).これらの自覚および他覚所見を認め,感染が疑われる場合には,すぐに角膜プラークを.離して角膜実質の状態を確認し,潰瘍底の擦過およびプラークそのものを鏡顕し培養検査を行うべきである.感染を確認すれば,免疫抑制点眼薬およびステロイド点眼薬は中止し,速やかに感受性のある抗微生物薬の治療に変更する.筆者らの経験では,感染の活動性がある時期はステロイド点眼薬などのアレルギーに対する治療を弱めてもアレルギー炎症は増強しない印象がある.逆に感染の治療後に巨大乳頭や落屑状SPK,角膜プラークなどアレルギー炎症の増強を示唆する所見を認めたときは,感染が鎮静化した徴候として,感染症の再燃に注意しつつ慎重にアレルギーの治療を再開している.感染症の活動性があるときになぜアレルギー炎症が増悪しないかの科学的根拠は得られていないが,サイトカイン・ケモカインバランタクロリムスの免疫抑制点眼薬はT細胞のカルシニューリンを阻害することによって免疫抑制作用を発揮する.したがって,ウイルス感染症,単純ヘルペスウイルス感染症に注意する必要がある.ステロイド点眼薬は,T細胞のみならずほとんどすべての免疫担当細胞に作用するため,ウイルス以外にも細菌,真菌感染にも注意が必要である.とくにアトピー性皮膚炎を合併している症例では,黄色ブドウ球菌の皮膚および結膜での保菌率が高いことが知られており,注意する必要がある.また,稀ではあるが角膜プラークの下に細菌あるいは真菌感染を合併する症例を経験する.筆者が経験した症例では,感染を合併するとそれまでと異なった眼痛および眼脂を訴えた.厚い角膜プラークが堆積するとその下の角膜実質の状態がわかりづらくなるが,細隙灯顕微鏡で角膜プラークの範囲を超えて角膜実質の浸潤を認めること(図6)や,プラークの下のdebrisの存在(図7),また病巣abcd図7春季カタルの治療中に真菌感染をきたした症例非感染時(a)と角膜プラーク下の真菌感染時(b).角膜プラーク下にdebrisを認め,また上方輪部から血管侵入を認め,プラークを除去すると,プラーク下の実質は一部融解し(c),混濁していた.プラーク裏面には真菌を認めた(d).(文献4より転載)abcd図7春季カタルの治療中に真菌感染をきたした症例非感染時(a)と角膜プラーク下の真菌感染時(b).角膜プラーク下にdebrisを認め,また上方輪部から血管侵入を認め,プラークを除去すると,プラーク下の実質は一部融解し(c),混濁していた.プラーク裏面には真菌を認めた(d).(文献4より転載) あたらしい眼科Vol.33,No.3,2016389(59)スの変調や浸潤細胞が好酸球から好中球へとシフトすることなどが原因ではないかと推察している.文献1)日本眼科アレルギー研究会:アレルギー性結膜疾患診療ガイドライン(第2版),日眼会誌114:829-870,20102)庄司純,内尾英一,海老原伸行ほか:アレルギー性結膜疾患診断における自覚症状,他覚所見および涙液総IgE検査キットの有用性の検討.日眼会誌116:485-493,20123)KumagaiN,FukudaK,FujitsuYetal:Treatmentofcor-neallesionsinindividualswithvernalkeratoconjunctivitis.AllergolInt54:51-59,20054)福田憲:アレルギー性結膜疾患.MBOCULI7:49-57,2013