●シリーズ⑭後期臨床研修医日記東京大学医学部眼科学教室寺尾亮東京大学医学部附属病院眼科・視覚矯正科では現在,計7名の専門研修医が研修に励んでいます.天野史郎教授をはじめ各専門の先生方の指導のもと,日々勉強に勤しんでいます.そんな当院での研修医生活の一端をご紹介させていただきたいと思います.研修制度1年目の専門研修医は大学病院で研修をします.各学年の専門研修医のうちの数名が大学病院に配属されており,学年間で協力し合いながら日々の業務をやりくりしています.研修開始の最初はオーベンの先生に付いて診療を行い,眼科の診察方法や基本的な知識などを手とり足とり教わります.専門研修医は「独り立ち試験」に合格すると自分の外来を持つことができ,独りで外来・入院患者さんを受け持つようになります.朝朝は早いです.患者さんが8時から朝食が開始となるので,それまでに朝の診察を済ませなければなりません.病棟患者さんはすべて研修医で担当を分担しており,多い時は独りで10.20人を受け持つことがあります.診察時間から逆算すると患者さんの起床時間より早くに診察を開始しないと終わらない時もあります.多くの症例を経験すること,限られた時間のなかで診察をテキパキとこなすことはとても大切なことと思いますので,朝眠い眼を擦りながら患者さんの眼を診ています.外来朝の診察が終わった後は,休む時間もなく外来が始まります.初診・再診患者さんを受け持ち,専門の先生方に診てもらいながら外来診療をしています.大学病院ではさまざまな疾患の患者さんがいらっしゃるので大変勉強になるのですが,外来を始めて半年程度の僕は上級医(81)0910-1810/11/\100/頁/JCOPY▲眼科病棟にて(左から東,寺尾,杉本,譚,清水)の先生のように上手く捌くことができません.しっかり診ようとすると診察時間が長くなって滞ってしまったり,早くまわそうとすると所見に漏れが出てしまったり,まだまだ半人前です.手術手術日はいつもより朝早く病院に来なければなりません.朝一の手術が始まる前に機材や薬剤の準備をします.手術は4列同時に行っていますので,術中どの列でも人手が足りているか眼を配りながら各列のサポートをします.実際にはオーベンの先生の手術に助手や器械出しとして参加し,もちろん自分執刀の手術もあります.外来と同様手術もバラエティに富んでおり一つひとつの手術が勉強になります.「自分がoperatorだったらこうする」と頭のなかで思いながら介助を行い,手術がスムーズに進むように心がけています(実際にスムーズになっているかはわかりませんが).「使い勝手の良い」助手・器械出しになることをモットーに手術に臨んでいます.自分執刀のときはオーベンの先生に指導していただきながら行います.まだ手を動かすようになったばかりであたらしい眼科Vol.28,No.11,20111593▲医局カンファランスすが,自分の思い描いたように上手くいかず悩むばかりです.カンファランス毎週水曜日の夜はカンファランスがあります.翌週の手術予定症例のプレゼンや珍しい症例の経過報告,臨床検討会,勉強会などをしています.大勢の先生とdiscussionができる機会があるというのも大学病院ならではのメリットだと思います.おっとそんなことを思っている間に,ゆっくりと瞼が下がってきている研修医が….眼瞼下垂の患者さんの気持ちを体験しようとしているのでしょうか.段々とウトウトもしてきていますね.左右に揺れている頭の影が大画面プロジェクターに映っています.眼振のある白内障症例の手術が今日行われていたことを皆に教えてくれているのでしょう.研修医とは体を張った大変な仕事です.夜外来,手術の後は病棟業務に向かいます.病棟患者さんの診察をして,翌日手術の患者さんの診察やムンテラをします.症例によっては術前の眼底スケッチも描きます.一日の業務を終えた後,やっと自分の仕事に取りかかることができます.その日の外来や手術でわからなかったことを調べたり,参考書を読んだりなどします.また学会で発表をする機会を頂くことが多いので,それに向けての準備などをします.しかし夜になるとすでに疲労困憊なのでなかなか仕事が捗りません.朝早起きしてやったほうが仕事の効率が良くなるかな,と思うこともあるのですが,朝は朝で診察が早くから始まるのでそれも困難です.オーベンの先生方はこんな忙しいスケジュー1594あたらしい眼科Vol.28,No.11,2011▲眼底スケッチを描く筆者ルのなかいつ論文を書いているのか,尊敬も然ることながら不思議でたまりません.休日土日は決まった業務はありませんが,有志で初診症例勉強会を開催しています.1週間に当科を受診した初診症例をチェックしてくださる先生がおり,レクチャーをしてくれます.どのような症例にはどんな検査が必要か,どういった治療方針を考えるべきかなどについてカルテを見ながら検討します.もちろん自分の診た症例もチェックされているので気が抜けません.まだまだ勉強が足りないなぁと毎週思い知らされます.おわりに当院での研修生活について一通りご紹介させていただきました.医局全体の雰囲気はとても良く,働きやすい環境だと思います.バリバリ働きたい人はがっつりと,段階を踏んでゆっくりと成長していきたい人は一段一段着実に,家庭のあるなどの人はその人の環境事情に合わせて,と個人のペースに沿って研修を行うことができ,懐が非常に深くどの研修医も居心地よく感じています.まだまだ未熟な点ばかりですが,一日でも早く「眼科医」になれるようにこれからも日々精進していきたいと思います.〈プロフィール〉寺尾亮(てらおりょう)平成20年筑波大学医学専門学群卒業,同学附属病院で初期臨床研修.平成22年4月より東京大学医学部眼科学教室専門研修医.(82)ら感じていましたが,今回の文章を読んでそのことが更によくわかりました.われわれの教室では研修医の先生たちが更に充実した研修が受けられることを目指して,外来,病棟,手術室での教育,そして診療終了後の自分が診た症例の検討,そして勉強会,クルズス,などのシステムの充実,視能訓練士などのパラメディカルスタッフの拡充に取り組んでいます.われわれの教室への参加をお待ちしております.(東京大学医学部眼科学・教授天野史郎)教授からのメッセージ☆☆☆(83)あたらしい眼科Vol.28,No.11,20111595