———————————————————————-Page10910-1810/08/\100/頁/JCLSえばVDT(visualdisplayterminals)作業時の瞬目減少のように,開瞼持続時間がBUTを超えると上皮に障害が生じる.一方,ムチンは,涙液とのインターフェイスにあたる表層上皮の表面にも発現して1),積極的に上皮の濡れ性を維持し(上皮の涙液保持機能),結果として,涙液の安定性維持に寄与している.したがって,涙液と上皮の関係においては,一方が障害されると他方が障害されて,悪循環が生じる.2006年度のドライアイの新定義2)によれば,ドライアイとは,「さまざまな要因による涙液および角結膜上皮の慢性疾患であり,眼不快感や視機能異常を伴う」と定義される.つまり,ドライアイの病態の構築は,眼表面における涙液と上皮の悪循環(涙液および角結膜上皮の慢性疾患)と,さらにその上流の悪循環をもたらすさまざまな要因(リスクファクター,増悪因子,あるいは上流にある原疾患といえるもの)の2段構えとして捉えることができる(図1).つまり,この構築に立てば,ドライアイの治療には,眼表面の悪循環に対するものと,上流にあるリスクファクターの一つひとつに対するものとがある.IIドライアイの中心メカニズムと治療の切り口眼表面において涙液と上皮の関係に悪循環が生じようとしても,それを解消しようとする自己修復システム(Reexloop-涙腺システム)が働く(図1).すなわち,はじめに点眼治療を基本とする他の眼疾患,たとえば,緑内障,角膜感染症,アレルギー性結膜疾患などに比べると,ドライアイに対する点眼治療の選択肢は限られており,現在,わが国においては,人工涙液,増粘剤を含む点眼液,ヒアルロン酸,ステロイドといったものしかない.また,ドライアイに対する内服治療も一般的ではない.そしてこのことが,たとえば涙液減少型ドライアイにおいては,涙点閉鎖に成功した重症例のほうが軽症例に比べてむしろ管理しやすい場合があるといった矛盾を生じている.ドライアイの涙液異常に対して,水分,油分,ムチンをはじめとする涙液成分を補いうる新しい点眼液の登場が待たれるなか,緑内障の薬物治療で経験してきたように,今後は,ドライアイにおいても,病態に応じたさまざまな薬物治療の選択が可能となることが期待される.そこで,本稿では,ドライアイの病態生理を考えながら,ドライアイの薬物治療の現状と期待される新しい治療薬について紹介してみたい.I眼表面の悪循環とドライアイの新しい考え方涙液層は,単純な水の層ではなく,油層やムチンの働きによってその表面張力が下げられて安定しており,開瞼維持を強いられる状況においても,少なくとも涙液層の破綻までの間(breakuptime:BUT)は,上皮は涙液に覆われてその乾燥が防がれている.したがって,たと(17)291*NorihikoYokoi:京都府立医科大学大学院視覚機能再生外科学〔別刷請求先〕横井則彦:〒602-0841京都市上京区河原町通広小路上ル梶井町465京都府立医科大学大学院視覚機能再生外科学特眼科薬物治療トレンド2008あたらしい眼科25(3):291296,2008ドライアイMedicationforDryEye横井則彦*———————————————————————-Page2292あたらしい眼科Vol.25,No.3,2008(18)IIIドライアイの慢性症状とリスクファクターを結ぶメカニズムドライアイの症状である眼不快感,視機能異常を生じさせる背景には,さまざまな疾患が存在するが,それらとドライアイの慢性症状を橋渡しするメカニズムとして,おもに5つが考えられる(図3)3).それらを列挙すると,①瞬目による摩擦,②涙液減少,③涙液の安定性の低下,④炎症,⑤涙液動態の障害となる.そして,ドライアイ治療の基本となる点眼治療は,①⑤のすべてに奏効しうる.すなわち,人工涙液やその保水性により涙液の安定化にすぐれたヒアルロン酸は,①③のメカニズムの軽減に奏効し,その効果は,人工涙液に比べてヒアルロン酸で大きい.一方,一般に,点眼後は,眼表面の水分量が増加するため,点眼液が眼表面から消失するまでの間は,涙液のクリアランスが促進されて,ウォッシュアウト効果を生み,その意味において,点眼治療は,④,⑤のメカニズムの軽減にも奏効する可能性がある.しかし,点眼後の眼表面の水分量の増加がせいぜい10分程度しか得られないことを考えると,ドライアイの治療は,どうしても頻回点眼によらざるをえないことがわかる.また,④のメカニズムは,現在,欧米においてドライアイの核となる考え方の眼表面の異常は,三叉神経-中間神経-涙腺神経を通じて涙腺に反射性の涙液分泌を生じさせ,眼表面の水分貯留量を増加させることによって涙液を量的に安定化させ,眼表面の悪循環を解消しようとする.したがってSchir-merテストI法が低値の涙液分泌減少眼では,この修復システムが十分に働かず,その機能障害の程度に応じて悪循環が解消されずに残り,結果として,慢性の上皮障害や症状を生じる.ドライアイの基本治療として頻回点眼が奏効するのは,それが自己修復システムの機能障害を補うことによって悪循環を軽減するためである.しかし,先に述べたように悪循環の上流にはさまざまなリスクファクターが存在するため,眼表面の慢性の上皮障害や症状は,結局,これらのリスクファクターと反射性涙液分泌の力比べによって決定される(図2).また,ドライアイの診断基準2)によれば,ドライアイは,SchirmerテストI法,BUT,角結膜上皮障害によって診断されるため,もし,上流のリスクファクターが看破されなければ,こられの異常値だけからドライアイと診断され,治療が選択されることになる.つまり,上流のリスクファクターに目を向けて,それらを一つひとつ減らすことを考えないことには,十分な治療効果が得られない(図2)ことに注意したい.今後のドライアイ治療について考えてみると,眼表面のさらに上流のリスクファクターにもっと目が向けられるようになり,その治療の選択肢が増えてくるのではないかと筆者は考えている.図1ドライアイの中心メカニズム眼表面の悪循環の上流にさまざまなリスクファクターが存在し,悪循環を解消するシステムとしてReexloop-涙腺システムがある.角膜上皮障害濡れ性の低下悪循環涙液障害Reflexloop-涙腺システムReflextear知覚神経安定性の低下眼表面の涙液量緑内障点眼液リスクファクター炎症浸透圧上昇ドライアイ健常眼反射性涙液分泌リスクファクター治療の切り口眼表面の水分貯留量を増やすリスクファクターを減らす図2眼表面の力関係とドライアイ治療の切り口さまざまなリスクファクターが眼表面をドライアイに傾けようとするが,唯一反射性涙液分泌がこれに抗する.したがって,ドライアイの治療には,リスクファクターを減らすか,点眼治療によって眼表面の涙液貯留量を増やすかの切り口がある.———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.25,No.3,2008293(19)の,あるいは,現在臨床試験中のものとして,以下のようなものがある.a.ムスカリン受容体作動薬唾液腺のムスカリン性アセチルコリン受容体(M3型)の作動薬(イノシトールリン脂質代謝促進)として,塩酸セビメリン水和物(商品名:エボザックR,サリグレンR)の内服薬があり,Sjogren症候群の口腔乾燥症状に有効であることが知られている.また,この治療により,涙液分泌も促進されることが報告されている7).しかし,発汗増多,胃腸症状,頻尿などの副作用のほかに,抗コリン作用薬剤の併用による効果の減弱や,心疾患,閉塞性肺疾患などがある場合に,服用上の注意が必要である.同様の薬剤にピロカルピン塩酸塩(サラジェンR)がある.b.P2Y2受容体作動薬P2Y2レセプター作動薬であるdiquafosoltetrasodi-um(INS365,DE-089)は,角結膜上皮細胞に分布するクロールイオンを介した水輸送,あるいは杯細胞からのムチン放出を促すとされ,その2%点眼液が,涙液の水分,ムチンの分泌を促進し,プラセボに比べて有意に角結膜染色,Schirmerテスト値,自覚症状の一部を改善したという8).本薬剤は将来,ヒアルロン酸などの他のドライアイ点眼液と併用可能な薬剤としても期待できる一つであるが,これに対しては,抗炎症という治療の切り口がある4).一方,今回のテーマと異なるため,触れるにとどめるが,①の瞬目時の摩擦は,眼瞼と眼表面の摩擦によるため,そのメカニズムが,症状に強く関与する例では,外科治療の切り口もありうる3,5).さらに,⑤のメカニズム(あるいは,⑤によってもたらされる④のメカニズム)は,涙液減少眼でなければ,結膜や眼瞼の弛緩がその病態に強く関与するため,ここでも外科治療の切り口がありうる.以上のように上流のメカニズムを突き詰めてゆくと,点眼治療の向かうべき方向が見えてくるのではないかと思われる.そこで,以下には,②,③,④のメカニズムを考えながら,現在臨床試験中のものも含めて代表的な薬物治療を紹介してみたい.1.涙液減少に対する薬物治療(②のメカニズム)先に述べたように反射性涙液分泌は,眼表面の悪循環を解消するシステムとして働くため,その良否は眼表面の健常性を知る一つの目安となりうる.一般に,反射性涙液分泌量と眼表面の涙液貯留量との間にはある程度の相関があり,涙液貯留量の少ない眼では,一般にSchir-merテストI法も低値を示しやすい.涙液減少に対する薬物治療としては,涙液分泌を増やす治療と眼表面の水分量を増加させる点眼治療がある.そして,後者が一般に用いられ,防腐剤フリーの人工涙液とヒアルロン酸点眼液の組み合わせが主流であると思われる.特に,ヒアルロン酸は,その3次元構造に基づく保水性によって,眼表面でより長く滞留しながら6),涙液層を安定させ上皮障害の改善をもたらす.また,欧米では,カルボキシメチルセルロース(CMC),ヒドロキシメチルセルロース(HPMC),ポリビニルアルコール(PVA),コンドロイチン硫酸などさまざまな高分子を含む多種多様なOCT(over-the-counter)薬としてのドライアイ用点眼液がある.涙液分泌を促す薬物治療として,現在利用できるも図3ドライアイの慢性症状とリスクファクターを結ぶメカニズム症状と上流のリスクファクターを結ぶメカニズムとして5つが考えられる.(文献3より引用,改変)上皮障害眼表面の知覚低下個人の要求度加齢慣れ(慢性)反射性涙液分泌不定愁訴(慢性症状)上皮障害症状を増やす仕組み症状を減らす仕組み⑤涙液動態の障害①瞬目時の摩擦(眼瞼縁・眼瞼結膜─眼表面間)④眼表面の炎症②涙液減少+③涙液の安定性低下リスクファクター(背景疾患)———————————————————————-Page4294あたらしい眼科Vol.25,No.3,2008(20)d.ムチンに対する薬物治療(1)アルブミン涙液中に少なからず含まれるアルブミンを用いた点眼治療が,重症の涙液減少型ドライアイにおけるフルオレセインやローズベンガルの染色所見を有意に改善した(BUTや症状の改善はなし)との報告11)があり,ムチンの欠乏を代償する可能性があるとされる.(2)15(S)-HETE15(S)-HETE[15-(S)-hydroxy-5,8,11,13-eicosatet-raenoicacid]は,気道上皮のムチンの産生を促すとされ,点眼でウサギ角膜上皮のムチン様糖蛋白を増加させると報告されている12).現在,臨床試験が進められている.(3)Gefarnate,Rebamipide,Ecabetsodiumこれらはメカニズムは明確ではないが,胃潰瘍治療薬としての効果からムチン産生薬としての応用が期待されている薬物である.Gefarnateは,ラットの培養角膜上皮において,ムチン様糖蛋白の発現を促し,ウサギ結膜の杯細胞密度を増加させ,乾燥に基づく角膜上皮障害を抑制したという報告13)がある.Rebamipideは,N-アセチルシステインの点眼により作製したウサギのドライアイモデルに対して,角結膜上を被覆するムチン様の物質の増加とローズベンガル染色の改善を認めたと報告され14),ヒトを対象とした臨床試験も進められている.Ecabetsodiumでも臨床試験での有意な結果が限定的ではあるが報告されている.3.眼表面の炎症に対する薬物治療(④のメカニズム)ドライアイに関連する炎症には,マイボーム腺機能不全の原因となる後部眼瞼縁炎やマイボーム腺炎,あるいは,Sjogren症候群に代表される結膜上皮や涙液の炎症があり,後者の炎症は,疾患特異的な炎症以外にドライアイ涙液の安定性の低下やそれに続く,涙液の浸透圧の上昇に続発するとされる.炎症は,近年,ドライアイ治療の切り口の一つとして欧米を中心に重視されている4)が,少なくともSjogren症候群の病態には強く関与していると考えられる.のではないかと思われる.2.涙液の安定性低下に対する薬物治療(③のメカニズム)涙液層のいずれの層が障害されても,涙液の安定性が低下して眼表面に悪循環を生じうる.したがって,涙液層の安定性低下に対する薬物治療は,涙液層の中の異常を示す層に対して向けられるのが理想的である.一方,点眼液に含まれる防腐剤は,その界面活性作用により,③のメカニズム(涙液の安定性を低下)を介して眼表面に悪影響をもつため,ドライアイの点眼治療において,防腐剤はできるだけ避けるのが望ましい.a.涙液の液層に対する薬物治療涙液を安定させるためには,涙液の水のボリュームを増加させる治療の切り口があるが,これについては,先に述べた.b.涙液油層に対する薬物治療涙液油層の量および質の低下は,涙液の安定性を低下させ,眼表面に悪循環を生じさせるが,この背景となる疾患は,マイボーム腺機能不全(Meibomianglanddys-function:MGD)である9).MGDでは,一般に,マイボーム腺開口部の閉塞が第一の異常であるが,この背景には開口部周囲の炎症があり,これが導管上皮の過剰角化を招いてMGDの要因となる.MGDに対しては,減少した涙液油層を補う油性点眼治療や,マイボーム腺の油脂の分泌を促す治療,マイボーム腺炎を含む後部眼瞼縁炎に対する治療がある.もちろん,温罨法や清拭,圧出といった薬物治療以外の併用もなされる.c.油性点眼油は水をキャリアーとするため,油性点眼は,水層が確保されているタイプのドライアイ,すなわち,涙液減少型の軽症例や蒸発亢進型ドライアイに適応があると考えられる.涙液油層は疎水性と親水性の脂質から構成されるため,油性点眼も両脂質が配合されるべきであるが,2%のひまし油(主成分はリシノール酸,長期に用いれば消炎効果があり,眼瞼炎にも奏効するとされる)と5%のポリオキシエチレンひまし油を混合して油性点眼液として用いると,非炎症性の閉塞性MGDに有効との報告がある10).———————————————————————-Page5あたらしい眼科Vol.25,No.3,2008295(21)d.必須脂肪酸サプリメント多価不飽和脂肪酸である必須脂肪酸には,n-3(オメガ3)とn-6(オメガ6)の2系統があるが,これらは体内では合成できず,一方から他方が作られることもなく,ともに食事から摂取しなければならないとされる.オメガ3脂肪酸には,aリノレン酸,エイコサペンタエン酸(EPA),ドコサヘキサエン酸(DHA)があり,aリノレン酸から他は合成され,これらは,サケやマグロなどに多く含まれる.一方,オメガ6脂肪酸には,リノール酸,gリノレン酸,アラキドン酸があり,リノール酸から他は合成されうる.生体にとってこれらのバランスが重要であるとされ,現代人の食生活では,オメガ6の過剰とオメガ3の不足が生じがちであるといわれている.いずれの系統も抗炎症作用をもち,ドライアイやMGDへの効果が示されている19,20).4.その他─上皮障害に対する薬物治療ドライアイの上流のメカニズムとなりうる涙液減少や涙液の安定性の低下,あるいは炎症を切り口とせず,上皮障害の改善を促す治療がある.5.血清点眼血清には,上皮成長因子,フィブロネクチン,神経成長因子,ビタミンAなどの上皮修復を促す成分が含まれるため,ドライアイにおける上皮の創傷治癒を促し,それを介した眼表面ムチンの発現を促進して,涙液安定性に寄与する可能性がある.実際,血清点眼が,人工涙液に比べ,涙液の安定性,眼表面の染色スコア,刺激症状を有意に改善するとの報告がある21).また,ドライアイ以外にも,血清点眼の遷延性上皮欠損,上輪部角結膜炎,神経麻痺性角膜炎への有効性が示されている.おわりにドライアイを増悪させるリスクファクターとしての上流の疾患群と眼表面を橋渡しするドライアイの病態生理に基づいて,薬物治療の切り口を概観してみたが,現在,いくつかの切り口があるにしても,わが国における薬物治療は,特に炎症に対しては欧米ほどには積極的ではない.これは,欧米に比べ,眼瞼縁の炎症性疾患が少a.テトラサイクリン系薬剤テトラサイクリンやその誘導体であるミノサイクリン,ドキシサイクリンは,細菌に対して静菌的に働くとともにそのリパーゼ活性を抑制して,MGDに奏効するといわれる.これらの薬剤は,抗菌作用以外に抗炎症作用や血管新生抑制作用を有し,さまざまな投薬方法が報告されているが,欧米に多い酒さに伴う眼瞼縁炎への有効性が多く報告されている.ドキシサイクリンの消炎作用は,特に注目されており,少量長期投与(20mg,2回/日,2カ月)で,慢性の難治性MGDにも効果があるという15).また,マクロライド系抗生物質(クラリスロマイシンなど)にも同様の消炎効果を期待しうる.b.副腎皮質ステロイドドライアイの中心メカニズムに存在しうる炎症に対する副腎皮質ステロイドの効果が報告されている.長期投与による緑内障や白内障などの副作用を考えると,ドライアイに対しては,フルオロメトロンなどの低力価ステロイドの短期的使用が望ましいと思われるが,フルオロメトロンと人工涙液の4週間の点眼により,人工涙液単独に比べて症状や染色所見が軽度であることが報告されている16).また,防腐剤フリーのメチルプレドニゾロン点眼もドライアイの炎症に奏効し,1日34回,2週間の点眼で,それまでの点眼治療に反応しないSjogren症候群の眼刺激症状,角膜染色,糸状物を改善したという17).c.シクロスポリンA(CsA)炎症の切り口から長期投与可能な点眼液として,CsA点眼液(RestasisR:0.05%ユニドーズ懸濁点眼液,1日2回点眼)が2002年12月より米国で処方薬としてドライアイ治療に用いられている.本点眼液は,6カ月の臨床試験で,中等度から重度のドライアイの人工涙液併用の必要性を有意に減らし,自覚症状および角膜上皮障害やSchirmerテスト値を改善したとされる18).奏効機序は,涙腺や結膜へのリンパ球の浸潤抑制によるとされ,結膜上皮の免疫炎症マーカー(HLA-DR),アポトーシスマーカー(Fas),炎症性サイトカイン(IL-6),Tリンパ球浸潤を減少させるとともに杯細胞密度を増加させることが示されている.———————————————————————-Page6296あたらしい眼科Vol.25,No.3,2008(22)2030-2035,200211)ShimmuraS,UenoR,MatsumotoYetal:Albuminasatearsupplementinthetreatmentofseveredryeye.BrJOphthalmol87:1279-1283,200312)JacksonRS2nd,VanDykenSJ,McCartneyMDetal:Theeicosanoid,15-(S)-HETE,stimulatessecretionofmucin-likeglycoproteinbythecornealepithelium.Cornea20:516-521,200113)NakamuraM,EndoK,NakataKetal:Gefarnatestimu-latessecretionofmucin-likeglycoproteinsbycornealepi-theliuminvitroandprotectscornealepitheliumfromdes-iccationinvivo.ExpEyeRes65:569-574,199714)UrashimaH,OkamotoT,TakejiYetal:Rebamipideincreasestheamountofmucin-likesubstancesonthecon-junctivaandcorneaintheN-acetylcysteine-treatedinvivomodel.Cornea23:613-619,200415)YooSE,LeeDC,ChangMH:Theeectoflow-dosedoxycyclinetherapyinchronicmeibomianglanddysfunc-tion.KoreanJOphthalmol19:258-263,200516)AvundukAM,AvundukMC,VarnellEDetal:Thecom-parisonofecaciesoftopicalcorticosteroidsandnon-steroidalanti-inammatorydropsondryeyepatients:aclinicalandimmunocytochemicalstudy.AmJOphthalmol136:593-602,200317)MarshP,PugfelderSC:Topicalnonpreservedmethyl-prednisolonetherapyforkeratoconjunctivitissiccainSjogrensyndrome.Ophthalmology106:811-816,199918)SallK,StevensonOD,MundorfTKetal:Twomulti-center,randomizedstudiesoftheecacyandsafetyofcyclosporineophthalmicemulsioninmoderatetoseveredryeyedisease.CsAPhase3StudyGroup.Ophthalmolo-gy107:631-639,200019)RashidS,JinY,EcoierTetal:Topicalomega-3andomega-6Fattyacidsfortreatmentofdryeye.ArchOph-thalmol26:219-225,200820)PinnaA,PiccininiP,CartaF:Eectoforallinoleicandgamma-linolenicacidonmeibomianglanddysfunction.Cornea26:260-264,200721)KojimaT,IshidaR,DogruMetal:Theeectofautolo-gousserumeyedropsinthetreatmentofseveredryeyedisease:aprospectiverandomizedcase-controlstudy.AmJOphthalmol139:242-246,2005ないことや,ドライアイの炎症説にそれほどの力点がおかれていないこと,あるいは,わが国ではシクロスポリンA点眼液がドライアイに適用となっていないといった現状を反映したものと考えられる.いずれにしても,涙液分泌の減少(すなわち,自己修復システムとしての反射性涙液分泌が少ないことを意味する)が眼表面にとって最大のリスクファクターであることから,重症例に対する涙点閉鎖術ほどには効果がないにしても,軽症から中等症のドライアイに対して,点眼回数を積極的に減らしてくれるような薬物治療の登場が待たれるところである.文献1)堀裕一:ムチンと眼の乾き.あたらしい眼科22:289-294,20052)島潤(ドライアイ研究会):2006年ドライアイ診断基準.あたらしい眼科24:181-184,20073)横井則彦:眼の不定愁訴と結膜弛緩症.臨眼61:1985-1992,20074)PugfelderSC:Anti-inammatorytherapyofdryeye.OculSurf1:31-36,20035)横井則彦,荒木美治,渡辺彰英:眼瞼とオキュラーサーフェスの接点.眼科手術20:329-337,20076)YokoiN,KomuroA:Non-invasivemethodsofassessingthetearlm.ExpEyeRes78:399-407,20047)OnoM,TakamuraE,ShinozakiKetal:TherapeuticeectofcevimelineondryeyeinpatientswithSjogrensyndrome:arandomized,double-blindclinicalstudy.AmJOphthalmol138:6-17,20048)TauberJ,DavittWF,BokoskyJEetal:Double-masked,placebo-controlledsafetyandecacytrialofdiquafosoltetrasodium(INS365)ophthalmicsolutionforthetreat-mentofdryeye.Cornea23:784-792,20049)横井則彦:蒸発亢進型ドライアイの病態,原因,およびその治療.日本の眼科78:721-726,200710)GotoE,ShimazakiJ,MondenYetal:Low-concentrationhomogenizedcastoroileyedropsfornoninamedobstruc-tivemeibomianglanddysfunction.Ophthalmology109: