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緑内障点眼薬3 種類2 製剤から4 種類2 製剤への 配合点眼薬切替─多施設共同観察試験

2023年11月30日 木曜日

《原著》あたらしい眼科40(11):1476.1480,2023c緑内障点眼薬3種類2製剤から4種類2製剤への配合点眼薬切替─多施設共同観察試験上田晃史*1,4坂田礼*2,4安達京*3宮田和典*1白土城照*2大内健太郎*5相原一*2,4*1宮田眼科病院*2四谷しらと眼科*3アイ・ローズクリニック*4東京大学医学部附属病院*5大塚製薬株式会社CAMulticenterObservationalStudyofSwitchingFixed-CombinationEyeDropsfromTwoFormulationsofThreeEyeDropstoTwoFormulationsofFourEyeDropsfortheTreatmentofGlaucomaKojiUeda1,4),ReiSakata2,4),MisatoAdachi3),KazunoriMiyata1),ShiroakiShirato2),KentaroOuchi5)andMakotoAihara2,4)1)MiyataEyeHospital,2)YotsuyaShiratoEyeClinic,3)EyeRoseClinic,4)TheUniversityofTokyoHospital,5)OtsukaPharmaceuticalCo.,Ltd.C目的:FP受容体作動薬(以下,FP)と炭酸脱水酵素阻害薬・b遮断薬配合点眼薬(以下,CAI/b)の併用療法を,カルテオロール/ラタノプロスト配合点眼薬(以下,CAR/LAT)とブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬(以下,BRM/BRZ)の併用療法へ変更した際の有効性と安全性を検討すること.対象および方法:2カ月以上FPとCA/bを併用してC15CmmHg以上で管理されていた患者を対象とした.FP+CAI/bをCCAR/LAT+BRM/BRZへ変更し,変更前と変更後C3カ月目の眼圧を比較検討した.結果:原発開放隅角緑内障C42眼,高眼圧症C2眼を検討対象とし,点眼変更前後の眼圧はそれぞれC17.5±2.2CmmHg,15.4±3.2CmmHgで,変更後にC2.0±2.8CmmHg(p<0.001)の眼圧下降を認めた.1例で皮疹を認めた.結論:点眼変更によって,重篤な副作用は認めずに眼圧は有意に低下した.CPurpose:ToCevaluateCtheCsafetyCandCe.cacyCofCswitchingCfromCprostaglandinCFreceptor(FP)agonistCandCcarbonicanhydraseinhibitor/bblocker.xedcombination(CAI/b)eyedropstocarteolol/latanoprost.xedcombi-nation(CAR/LAT)andCbrimonidine/brinzolamideC.xedcombination(BRM/BRZ)eyeCdropsCforCtheCtreatmentCofCglaucoma.CMethods:ThisCstudyCinvolvedCglaucomaCorCocularChypertensionCpatientsCwithCanCintraocularCpressure(IOP)of≧15CmmHgwhohadbeentreatedwithFPreceptoragonistandCAI/beyedropsforatleast2monthsbeforeswitchingtoCAR/LATandBRM/BRZeyedrops.IOPatpreswitchandat3-monthspostswitchwascom-pared.CResults:ThisCstudyCinvolvedC42CpatientsCwithCprimaryCopenCangleCglaucomaCandC2CpatientsCwithCocularChypertension.CMeanCIOPCwasC17.5±2.2CmmHgCbeforeCswitchCandC15.4±3.2CmmHgCatC3-monthsCpostCswitch,CthusCshowingasigni.cantdecreaseof2.0±2.8CmmHg(p<0.001).Askinrashwasobservedin1case.Conclusion:IOPsigni.cantlydecreasedafterswitchingfromFPreceptoragonistandCAI/btoCAR/LATandBRM/BRZ,andnoserioussidee.ectswereobserved.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)40(11):1476.1480,C2023〕Keywords:眼圧,カルテオロール/ラタノプロスト配合点眼薬,ブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬,原発開放隅角緑内障.intraocularpressure,carteolol/latanoprost.xedcombination,brimonidine/brinzolamide.xedcom-bination,primaryopenangleglaucoma.Cはじめにを行っていくため1,2),病期の進行とともに点眼数が増えて緑内障点眼治療は目標眼圧をめざして単剤や多剤併用点眼いく.そしてC2本以上の点眼薬を使用する際には,点眼アド〔別刷請求先〕坂田礼:〒113-8655東京都文京区本郷C7-3-1CRC棟A北C339(秘書室)東京大学医学部附属病院眼科Reprintrequests:ReiSakata,M.D.,Ph.D.,TheUniversityofTokyoHospital,7-3-1HongoBunkyo-ku,Tokyo113-8655,JAPANC1476(106)8週間以上カルテオロール・ラタノプロスト配合点眼液+ブリモニジン・ブリンゾラミド配合懸濁性点眼液観察期間12週間・有害事象処方変更日12週後(±4週:8~16週)・眼圧・眼圧・患者背景図1対象患者8週以上プロスタグランジン点眼液(FP)と炭酸脱水酵素阻害・Cb遮断配合点眼液(CAI/Cb)を併用し,眼圧15CmmHg以上で管理されていた原発開放隅角緑内障または高眼圧症患者に対して,両点眼薬をカルテオロール・ラタノプロスト配合点眼液(CAR/LAT)とブリモニジン・ブリンゾラミド配合懸濁性点眼液(BRM/BRZ)へ変更しC12週間の経過観察を行った.ヒアランスを維持させるために配合点眼薬を選択することが推奨されている3).配合点眼薬のメリットとして,1日の点眼回数が減ることや洗い流し効果を軽減させるための点眼間隔を開ける必要がないことなどがある.配合点眼薬は,FP受容体作動薬(以下,FP)とCb遮断薬の組み合わせ(以下,FP/Cb),炭酸脱水酵素阻害薬とCb遮断薬の組み合わせ(以下,CAI/Cb)が当初認可されたが,2019年にCa2刺激薬とCb遮断薬の配合点眼薬(以下,Ca2/b),2020年に炭酸脱水酵素阻害薬とCa2刺激薬(以下,CAI/Ca2)の配合点眼薬がそれぞれ上市された.CAI/Ca2の登場により,CFP/bと併用することでC2製剤C4成分の治療が可能となった.このCFP/Cb+CAI/a2の配合点眼薬は,最小限の点眼本数で最大に近い効果を得ることと,点眼アドヒアランス維持の両立が期待できる組み合わせである.CFP/b配合点眼薬のCb遮断薬はチモロールまたはカルテオロールが配合されているが,FP/チモロールC1回点眼では,本来のチモロールC2回点眼あるいは持続タイプのゲル化チモロールC1回点眼と比較して終日での眼圧下降は劣る可能性が高い.一方,FP/カルテオロールC1回点眼は,基剤としてアルギン酸を含有し,持続的な作用が維持できるカルテオロールと同様であるため,1回点眼でも終日の眼圧下降が維持できる.今回,原発開放隅角緑内障(primaryCopenCangleCglau-coma:POAG)または高眼圧症患者を対象として,FPとチモロール含有CCAI/CbのC2製剤C3成分の併用療法を,カルテオロール/ラタノプロスト配合点眼薬(以下,CAR/LAT)とブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬(以下,BRM/BRZ)のC2製剤C4成分の併用療法へ変更した際の有効性と安全性を検討した.CI対象および方法研究デザインは,国内C3施設による多施設共同後ろ向き観察研究である.組み入れ基準として,8週間以上CFPとCAI/bを併用し,15CmmHg以上で管理されていたCPOAGまたは高眼圧症患者のうち,2021年C9月C30日までにさらなる眼圧下降が必要とされ,両点眼薬をCCAR/LATとCBRM/BRZの併用療法に変更した患者を対象とした(図1).除外基準は,1)緑内障手術(レーザー含む)の既往のある患者,2)処方変更前にビマトプロスト点眼液を使用していた患者,3)処方変更後に他の緑内障点眼薬を併用,あるいは緑内障手術(レーザー含む)を実施した患者,4)点眼薬を遵守できなかった患者とした.処方変更日と処方変更C12週後(C±4週:8.16週)に,Goldmann圧平眼圧計で測定した眼圧を,対応のあるCt検定を用いて比較検討した.両眼とも選択基準を満たした症例については処方変更日の眼圧値が高い眼を有効性評価対象眼とし,眼圧が両眼とも同じ場合は右眼とした.主要評価項目は,処方変更日から処方変更C12週後までの眼圧下降値(平均)とし,副次評価項目は,同じ期間の眼圧値,眼圧下降率,そして期間中の安全性の評価とした.眼圧下降値および眼圧下降率の取扱いは以下のとおりとした.・眼圧下降値=(処方変更日の眼圧測定値)C.(12週時の眼圧測定値)・眼圧下降率(%)=(12週時の眼圧下降値)/(処方変更日の眼圧測定値)×100本検討はヘルシンキ宣言の教義を遵守し,宮田眼科病院の倫理委員会(承認CID:CS-368-017)によって承認された.本研究は,新たに試料・情報を取得することはなく,既存の診療録のみを用いた調査研究であるため,研究対象者から文書または口頭による同意取得は行わず,あらかじめ情報を通知もしくは公開し,研究対象者などが拒否できる機会を保障する方法(オプトアウト)による手続きを行った.統計解析は,SASVersion9.4(SASInstituteInc.)を使用し,両側で有意水準は5%とした.表1患者背景合計眼数44眼処方変更日時点での年齢C65.0±11.2歳性別男性:26人,女性:18人表2点眼変更前のFPとCAI/bの組み合わせ症例数(割合)ラタノプロスト+ドルゾラミド塩酸塩・チモロールマレイン酸塩23(C52.3%)タフルプロスト+ドルゾラミド塩酸塩・チモロールマレイン酸塩10(C22.7%)トラボプロスト+ドルゾラミド塩酸塩・チモロールマレイン酸塩5(1C1.4%)ラタノプロスト+ブリンゾラミド・チモロールマレイン酸塩4(9C.1%)タフルプロスト+ブリンゾラミド・チモロールマレイン酸塩1(2C.3%)トラボプロスト+ブリンゾラミド・チモロールマレイン酸塩1(2C.3%)25II結果2044名C44眼(POAG42眼,高眼圧症C2眼)が検討対象となった.患者背景を表1,点眼変更前のCFPとCCAI/Cbの処方の組み合わせを表2に示す.処方変更日から変更C12週後までの平均眼圧値は,それぞれC17.5C±2.2CmmHg(95%信頼区間,平均眼圧(mmHg)151016.8,18.1),15.4C±3.2CmmHg(95%信頼区間,14.5,16.4)で,変更後の平均眼圧下降値はC2.0C±2.8CmmHg(p<0.001)であった(図2).眼圧下降率は,11.4C±15.6%(p<0.001)であった.処方変更C12週目で処方変更日の眼圧値からC10%,20%,30%以上の眼圧下降率を達成した症例数は,それぞ50処方変更日処方変更後12週時れC29眼(66%),15例(34%),3例(7%)であった.点眼変更後,発疹(全身だが詳細不明)を認めた症例がC1例あったが,重篤な副作用は認められなかった.CIII考按本検討ではCFPとCCAI/Cbの併用療法で管理していた緑内障・高眼圧症の患者に対して,CAR/LATとCBRM/BRZへの併用療法に変更したところ,3カ月目で平均C2.0CmmHg(11.4%)と有意な眼圧下降を示した.点眼変更後に発疹を認めた症例があったが,点眼中止後に回復を認め,容認性も良好と考えられた.今回の研究結果からC2製剤C3成分を,Ca2を加えたC2製剤C4成分に変更することで,点眼本数や点眼回数を増やすことなく治療の強化を行うことが可能であることが示された.緑内障進行を遅延させる確実な方法は眼圧下降しかないが,眼圧をC1CmmHg下げることでも視野進行を抑制することができるとされている5).点眼治療において,第一選択薬として用いられることが多いCFPは,単剤のなかでもっとも眼圧下降効果が強い点眼薬であるが,多くの患者はこれを含めた多剤併用管理となっていることが多い2).FPに他点眼図2点眼変更前後の眼圧値処方変更日から処方変更C12週時までの眼圧値(平均)は,それぞれC17.5C±2.2CmmHg,15.4C±3.2CmmHgで,眼圧下降値(平均)はC2.0C±2.8CmmHg(p<0.001)であった.薬を追加して治療強化を行っていく場合,ほとんどの研究において追加後に有意な眼圧下降効果を認めているが6.10),点眼本数が増えるほど,点眼アドヒアランスが落ちることが懸念される.したがって,治療強化の際には配合点眼薬を選択して患者の負担軽減を図る必要がある.今回使用したCCAR/LATと,LATの眼圧下降効果を比較した研究では,CAR/LATがCLATより強力な眼圧下降を認めており,1日C1回点眼のまま治療を強化できることが示されている11).また,BRM/BRZはCbを含有しない配合点眼薬として,全身既往歴のある患者にも処方する場面が増えてくると考えられが,BRM/BRZの第CIII相臨床試験12)ではBRZ単独療法からCBRM/BRZへの変更によって,3.7C±2.1mmHgの眼圧下降が得られており(変更前C20.7+/.2.0mmHg,変更後C18.2+/.2.8CmmHg),対照であるCBRZ群に比べ有意な眼圧下降が得られている.今回は点眼変更後にC44例中C15例(34%)の症例で,点眼変更前からC20%以上の眼圧下降,そしてC3例(7%)でC30%以上の眼圧下降を認めている.この理由として,チモロールがカルテオロールに変更になったこと,新規のCa2が加わったこと,そして処方内容を一新したことによって点眼アドヒアランスが上がったことなどが考えられる.FPとチモロール点眼薬C2回の併用とCFP/チモロール配合点眼薬C1回の眼圧下降効果を検討したメタ解析13)では,多剤併用のほうが配合点眼薬よりも眼圧下降効果が高いことが示されているが,この理由は言及したとおりである.また,チモロールは長期連用で眼圧下降効果が減弱するいわゆるCtachyphylaxisがあるため14),切替前にチモロールの効果が減弱していた可能性も否定できない.また,第一選択治療としてのCa2の眼圧下降率はC20.25%とされており15),FP単剤にCBRMを追加した場合も有意な眼圧下降を認め(変更前眼圧C16.0C±4.0mmHg,追加後眼圧C14.6C±3.2CmmHg)8),これが眼圧下降に影響した可能性がある.さらに,点眼切り替えで処方内容が一新されたことで患者への説明がしっかりと行われ,患者の点眼への意識が一時的に高まったことも眼圧下降によい影響を及ぼしたと考えられた.副作用について,点眼変更後,発疹を認めた症例がC1例あったが,点眼中止に至るような副作用は認めなかった.処方変更後に加わったCa2は,点眼開始後しばらくしてからアレルギー性結膜炎が発症する場合もあるが,今回は調査期間が短かったためこのような症例はなかった.本研究の限界として,患者の選択バイアスがあったことをあげる.まず今回はC2製剤C3成分で眼圧C15CmmHg以上の患者を対象としたため点眼変更の有効性をはっきりと認めたが,一方でわが国では,点眼使用下でC15CmmHg未満で管理されている緑内障患者が多いのも事実である.そのような患者に対する点眼治療強化についての知見は少なく,仮に点眼変更の効果がない場合は,低侵襲緑内障手術などの手術療法に切り替えていかざるをえない.このような問題点は今後検討し解決していく必要があると考えられた.つぎに,処方変更後C12週まで経過を追えた患者を対象とした研究であったことから,12週までになんらかの理由で点眼が中止された症例の検討が行えていない.また,今回の検討では点眼変更前後で非選択的Cb遮断薬を使用している.カルテオロールはCISA(intrinsicsympathomimeticactivity)作用を有し16),チモロールよりも循環器系への影響が少ないが,非選択性Cb遮断薬自体は喘息や慢性閉塞性肺疾患に対しては処方禁忌であり,このような患者における点眼処方の組み立て方は別途検討が必要である.最後に,点眼変更前後のCFPやCCAIが統一されていない問題があげられる.点眼変更前はC61%がラタノプロストであったが,CAIはC14%しかブリンゾラミドを使用していなかった.前後で同じ成分で切り替えていない症例も含まれたため,今回示した眼圧下降幅(率)も過小あるいは過大評価されている可能性は否定できない.しかし,本研究は,緑内障の日常診療でよく遭遇する処方の組み合わせを想定し,それを現状でもっとも効率的な組み合わせのC2製剤C4成分に切り替えた後の有効性や安全性を検討することを主眼としたため,今回の結果はおおむね実臨床を反映した結果であると考えられた.まとめると,2製剤C3成分のCFPとCCAI/Cbの併用療法から,2製剤C4成分のCFP/CbとCCAI/Ca2の併用療法に変更したところ,ほとんどのケースで問題なく切り替えを行うことができ,3カ月目で有意な眼圧下降を認めた.緑内障点眼治療において治療を強化する際,点眼回数を増加させずに点眼アドヒアランスを維持したままさらなる眼圧下降が得られる配合点眼薬C2製剤を組み合わせる処方は有効であると考えられる.利益相反:上田晃史FII,坂田礼FII,RII,安達京FII,宮田和典FIV,RIV,白土城照FII,大内健太郎E,相原一FII,RIII文献1)日本緑内障学会緑内障診療ガイドライン改訂委員会:緑内障診療ガイドライン(第C5版).日眼会誌C126:85-117,C20222)DjafariCF,CLeskCMR,CHarasymowyczCPJCetal:Determi-nantsCofCadherenceCtoCglaucomaCmedicalCtherapyCinCaClong-termCpatientCpopulation.CJCGlaucomaC18:238-243,C20093)内藤知子:緑内障配合薬のアップデート.あたらしい眼科C38:173-174,C20214)LeskeCMC,CHeijlCA,CHusseinCMCetal:FactorsCforCglauco-maCprogressionCandCtheCe.ectCoftreatment:theCearlyCmanifestCglaucomaCtrial.CArchCOphthalmolC121:48-56,C20035)朴華,井上賢治,井上順治ほか:多施設による緑内障患者の治療実態調査C2020年版─正常眼圧緑内障と原発開放隅角緑内障.あたらしい眼科C38:945-950,C20216)LiF,HuangW,ZhangX:E.cacyandsafetyofdi.erentregimensCforCprimaryCopen-angleCglaucomaCorCocularhypertension:aCsystematicCreviewCandCnetworkCmeta-analysis.ActaOphthalmolC96:277-284,C20187)MaruyamaCK,CShiratoS:AdditiveCe.ectCofCdorzolamideCorCcarteololCtoClatanoprostCinCprimaryCopen-angleCglauco-ma:aCprospectiveCrandomizedCcrossoverCtrial.CJCGlauco-maC15:341-345,C20068)宮本純輔,徳田直人,三井一央ほか:0.1%ブリモニジン酒石酸塩点眼液追加投与後の眼圧下降効果と副作用.あたらしい眼科C33:729-734,C20169)MizoguchiCT,COzakiCM,CWakiyamaCHCetal:AdditiveCintraocularCpressure-loweringCe.ectCofCdorzolamide1%/timolol0.5%C.xedCcombinationConCprostaglandinCmono-therapyCinCpatientsCwithCnormalCtensionCglaucoma.CClinCOphthalmolC5:1515-1520,C201110)松浦一貴,寺坂祐樹,佐々木慎一:プロスタグランジン薬,Cbブロッカー,炭酸脱水酵素阻害剤のC3剤併用でコントロール不十分な症例に対するブリモニジン点眼液の追加処方.あたらしい眼科31:1059-1062,C201411)YamamotoCT,CIkegamiCT,CIshikawaCYCetal:Randomized,Ccontrolled,CphaseC3CtrialsCofCcarteolol/latanoprostC.xedCcombinationCinCprimaryCopen-angleCglaucomaCorCocularChypertension.AmJOphthalmolC171:35-46,C201612)相原一,関弥卓郎:ブリモニジン/ブリンゾラミド配合懸濁性点眼液の原発開放隅角緑内障(広義)または高眼圧症を対象とした第III相臨床試験─ブリンゾラミドとの比較試験.あたらしい眼科C37:1299-1308,C202013)QuarantaL,BiagioliE,RivaIetal:ProstaglandinanalogsandCtimolol-.xedCversusCun.xedCcombinationsCorCmono-therapyCforopen-angleCglaucoma:aCsystematicCreviewCandCmeta-analysis.CJCOculCPharmacolCTherC29:382-389,C201314)BogerWP:Shortterm.“escape”andClongterm“drift”.CtheCdissipationCe.ectsCofCtheCbetaCadrenergicCblockingCagents.SurvOphthalmolC28:235-240,C198315)GeddeCSJ,CVinodCK,CWrightCMMCetal:PrimaryCopen-angleglaucomapreferredpracticepattern.OphthalmologyC128:71-150,C202116)佐野靖之,村上新也,工藤宏一郎ほか:気管支喘息患者に及ぼすCb遮断点眼薬の影響CCarteololとCTimololとの比較.現代医療C16:1259-1264,C1984***

原発閉塞隅角病における網膜血管密度に対する 水晶体再建術の影響

2023年9月30日 土曜日

《原著》あたらしい眼科40(9):1238.1243,2023c原発閉塞隅角病における網膜血管密度に対する水晶体再建術の影響北村優佳力石洋平澤口翔太新垣淑邦古泉英貴琉球大学大学院医学研究科医学専攻眼科学講座CEvaluationofRetinalVascularDensityafterCataractSurgeryinPrimaryAngleClosureGlaucomaYukaKitamura,YoheiChikaraishi,ShotaSawaguchi,YoshikuniArakakiandHidekiKoizumiCDepartmentofOphthalmology,GraduateSchoolofMedicine,UniversityoftheRyukyusC目的:原発閉塞隅角病(PACD)における水晶体再建術後の視神経乳頭周囲血管密度(p-VD)および黄斑部血管密度(m-VD)の変化を評価すること.対象および方法:2020年C6.12月に琉球大学病院にて水晶体再建術を行ったPACD症例C13例C21眼を対象とした.疾患の内訳は原発閉塞隅角症(PAC)がC10眼,原発閉塞隅角症疑い(PACS)が11眼,原発閉塞隅角緑内障(PACG)がC0眼であった.術前,術後C1週,1カ月,3カ月,6カ月の眼圧,前眼部形状変化,網膜血管密度を評価した.光干渉血管断層撮影を用いて視神経乳頭を中心としたC4.5×4.5Cmmの上方,耳側,下方,鼻側部位の網膜血管密度をCp-VDとして測定し,中心窩を中心としたC6×6Cmmの上方,耳側,下方,鼻側,中央部位の網膜血管密度をCm-VDとして測定した.結果:水晶体再建術後,眼圧は術後C1カ月で有意に下降した.p-VDは術後C1週で下方において有意に増加した.その後,上方・下方では術後C1週から術後C1カ月で有意に減少したが,術後C6カ月ではその変化は消失した.m-VDは術前後で一貫して変化しなかった.結論:PACおよびCPACSにおける水晶体再建術後の網膜血管密度変化は一過性かつ限局的であり網膜への影響が小さいことが示唆された.CPurpose:ToCevaluateCchangesCinCperipapillaryCvasculardensity(pVD)andCmacularCvasculardensity(mVD)CafterCcataractCsurgeryCinCprimaryCangle-closuredisease(PACD).CSubjectsandMethods:Twenty-oneCeyesCofC13CPACDpatientswereincluded.Teneyeshadprimaryangleclosure(PAC),11eyeshadprimaryangleclosuresus-pect(PACS),and0eyeshadprimaryangle-closureglaucoma(PACG).Usingopticalcoherencetomographyangi-ography,pVDandmVDweremeasuredina4.5×4.5Cmmareacenteredontheopticdiscanda6×6Cmmareacen-teredConCtheCcentralCfovea.CEvaluationCwasCperformedCpreoperativelyCandCatC1Cweek,C1Cmonth,C3Cmonths,CandC6CmonthsCpostoperatively.CResults:AtC1-weekCpostoperative,CpVDCincreasedCsigni.cantlyCinCtheCinferiorCarea,CandCthenCdecreasedCsigni.cantlyCinCtheCinferiorCandCsuperiorCareasCfromC1-weekCtoC1-monthCpostoperative.CHowever,CthoseCchangesCdisappearedCatC6-monthsCpostoperative.CNoCchangeCinCmVDCwasCobservedCbetweenCtheCpre-andCpostoperativeCperiods.CConclusions:TheCchangesCinCretinalCvascularCdensityCafterCcataractCsurgeryCinCPACCandCPACSweretemporaryandlimited.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)40(9):1238.1243,C2023〕Keywords:原発閉塞隅角症,水晶体再建術,血管密度,光干渉断層血管撮影,眼圧.primaryangleclosure,cata-ractsurgery,vesseldensity,opticalcoherencetomographyangiography,intraocularpressure.Cはじめにい(primaryCangleCclosuresuspect:PACS)などのCPACG緑内障診療ガイドライン(第C5版)では原発閉塞隅角緑内の前駆病変のすべてを包括する呼称として,新たに原発閉塞障(primaryangleclosureglaucoma:PACG)と,原発閉塞隅角病(primaryangleclosuredisease:PACD)という用語隅角症(primaryCangleclosure:PAC)や原発閉塞隅角症疑が定義された1).PACDの治療は根本的には閉塞隅角の解除〔別刷請求先〕北村優佳:〒903-0215沖縄県中頭郡西原町字上原C207琉球大学大学院医学研究科医学専攻眼科学講座Reprintrequests:YukaKitamura,M.D.,DepartmentofOpthalmology,GraduateSchoolofMedicine,UniversityoftheRyukyus,207Uehara,Nishihara-cho,Nakagami-gun,Okinawa903-0215,JAPANC1238(116)表1患者背景(平均値±標準偏差)症例13例21眼年齢(歳)C63.85±7.56C性別男性3例C5眼(2C3.8%)女性10例C16眼(C76.2%)病型PAC11眼(52.4%)PACS10眼(47.6%)PACG0眼(0%)術前眼圧(mmHg)C15.57±3.22緑内障・高眼圧症治療薬の使用14眼(66.7%)術前屈折値(D)C0.41±3.26C前眼部COCT所見ACD(mm)C2.08±0.26TISAC500(mmC2)C0.08±0.03PAC:原発閉塞隅角症,PACS:原発閉塞隅角症疑い,PACG:原発閉塞隅角緑内障,ACD:前房深度,TISA:trabecularCirusCspacearea.が必要であり,Azuara-Blancoら2)が瞳孔ブロック機序の存在するCPACDに対し水晶体再建術の有効性を報告し,わが国でも水晶体再建術が第一選択になりつつある.しかし,水晶体再建術は,術後合併症として.胞様黄斑浮腫や糖尿病網膜症の進行,加齢黄斑変性の発症など,手術侵襲による網膜への影響が示唆されている3).光干渉断層計(opticalCcoher-encetomography:OCT)を用いた検討では,水晶体再建術後に黄斑部の網膜厚や脈絡膜厚,体積が増加し,加齢黄斑変性が発症する可能性が報告されており4,5),網脈絡膜変化の原因として,手術侵襲による血液網膜関門の破綻,網膜血管密度の増加,硝子体牽引,術中術後の低眼圧,炎症による機序などが提唱されているが3),水晶体再建術後における眼底変化の正確な病態や機序はいまだ不明である.網膜血流を測定する方法として非侵襲的に網脈絡膜循環を描出する光干渉断層血管撮影(OCTangiography:OCTA)があり,近年,網脈絡膜疾患だけでなく,緑内障においても網膜血流との関連が報告されている6).2018年にCInら7)はOCTAを用いて開放隅角緑内障(primaryCopenCangleCglau-coma:POAG)患者の線維柱帯切除術後に,視神経乳頭周囲の網膜血管密度を測定し,眼圧下降により網膜血管密度が増加したことを報告した.一方で,PACD眼では水晶体再建術後に眼圧が下降することが示されている8.10)が,これまでPACD眼における水晶体再建術後の網膜血管密度の評価はされていない.本研究ではCOCTAを用いてCPACD眼における水晶体再建術後の網膜血管密度の変化を後ろ向きに評価した.図1TISA500AOD500,角膜後面,AOD500と平行に強膜岬(SS)から引いた線および虹彩表面で囲まれた面積I対象および方法2020年C6.12月に,琉球大学病院にて水晶体再建術を行った患者のうち,術後C6カ月まで経過観察が可能であり,かつCOCTAで評価が可能であったCPACD患者C13例C21眼(男性C3例C5眼,女性C10例C16眼,年齢C63.85C±7.56歳)を対象とした.PACDは,前眼部所見および隅角所見から,Inter-nationalSocietyofGeographicandEpidemiologicalOpthal-mology(ISGEO)分類11)に従い定義した.PACGに関しては,MD(meandeviation)値C.6CdB未満を対象とした.疾患の内訳はPACが10眼,PACSが11眼,PACGが0眼であった.水晶体再建術は緑内障専門医C3人が全症例でC2.4Cmm耳側角膜切開にて行った.屈折値は等価球面度数を用いて求めた.症例の詳細を表1に示す.検討項目は眼圧,前房深度(anteriorCchamberdepth:ACD),隅角形状および網膜血管密度とした.眼圧はノンコンタクトトノメーターを用いて,3回測定した平均値を採用した.ACDと隅角形状は前眼部COCT(CASIA2,トーメーコーポレーション)を用いて測定し,角膜後面から水晶体前面または眼内レンズ前面までの距離をCACDと定義した.また,角膜後面の強膜岬(scleralspur:SS)からC500Cμmの点から垂直に下した虹彩までの距離であるCAOD(angleopen-ingdistance)500,角膜後面,AOD500と平行にCSSから引いた線および虹彩表面で囲まれた面積のCtrabecularCirisCspacearea(TISA)500を隅角形状として評価した(図1).網膜血管密度はスウェプトソースCOCTA(SS-OCTA)(DRI-OCTTriton,トプコン)を用いて,網膜表層の視神経乳頭周囲血管密度(peripapillaryCvesseldensity:p-VD)および黄斑部血管密度(macularCvesseldensity:m-VD)を評価した.p-VDは視神経乳頭周囲を中心とした4.5C×4.5CmmC図2OCTAを用いた網膜血管密度の測定a:視神経乳頭周囲血管密度(p-VD).b:黄斑部血管密度(m-VD).平方をスキャンしCETDRS(EarlyCTreatmentCDiabeticCReti-nopathyStudy)サークル内の直径C3Cmmの範囲を上方,耳側,下方,鼻側の部位で測定(図2a),m-VDは黄斑部中心窩を中心としたC6C×6Cmm平方をスキャンしCETDRSサークル内の直径C3Cmmの範囲を,上方,耳側,下方,鼻側,中央の部位で測定した(図2b).網膜血管密度の解析はCSS-OCTAに内蔵されている自動解析ソフトで行った.各項目は,水晶体再建術の術前,水晶体再建術後C1週,1カ月,3カ月,6カ月で測定した.網膜硝子体疾患を有する症例,取得した画像が不鮮明で解析困難な症例は除外した.統計解析は対応のある一元配置分散分析を使用し,すべての時点での比較を行い,最終的にCBonferroni法で補正した.p<0.05の場合に,統計学的に有意と判断した.本検討はヘルシンキ宣言に則り行い,琉球大学の人を対象とする生命科学・医学系研究倫理審査委員会の承認を得た(承認番号:1267).CII結果屈折値は術前でC0.41C±3.26D,術後C1週でC.0.49±0.66Dであり,術前と比較して有意差はみられなかった.眼圧の経過を図3aに示す.眼圧は術前でC15.57C±3.22mmHg,術後C1週でC14.94C±2.80mmHg,術後C1カ月でC14.31±2.65mmHg,術後C3カ月でC14.69C±2.56CmmHg,術後C6カ月でC14.55C±2.51CmmHgであり,術前と比較して術後1カ月のみ有意に眼圧が下降した(p<0.05).全症例のうち,14眼は術前に緑内障・高眼圧症治療薬が投与されていた.また,術後の観察期間中はすべての症例で緑内障・高眼圧症治療薬は使用されなかった.前眼部COCTにおけるCACDとCTISA500の結果を図3bに示す.ACDは術前でC2.08C±0.26mm,術後C1週でC3.56C±0.30Cmm,術後C1カ月でC3.72C±0.21Cmm,術後C3カ月でC3.76C±0.22Cmm,術後C6カ月でC3.79C±0.19Cmmであり,すべての時点で術前と比較して深くなった(p<0.01)(図3b-1).TISA500は術前でC0.08C±0.03Cmm2,術後C1週でC0.14C±0.06Cmm2,術後C1カ月でC0.16C±0.06Cmm2,術後C3カ月でC0.15C±0.05Cmm2,術後C6カ月でC0.15C±0.06Cmm2であり,すべての時点で術前より有意に開大した(p<0.01)(図3b-2).p-VDとCm-VDの経過を図4に示す.p-VDは視神経乳頭上方において,術前でC46.48%,術後C1週でC48.70%,術後C1カ月でC45.35%,術後C3カ月でC45.99%,術後C6カ月で45.33%であった.術後C1週と比較して術後C1カ月,術後C3カ月,術後C6カ月で有意に低下がみられた(p<0.05)が,術前と比較して術後各測定時点での変化はなかった.視神経乳頭下方では,術前でC46.68%,術後C1週でC49.82%,術後C1カ月でC46.07%,術後C3カ月でC46.32%,術後C6カ月でC47.07%であった.術後C1週と比較し術後C1カ月,術後C3カ月で有意に低下した(p<0.05)が,術前との比較では術後C1週で有意に増加した(p<0.05)のみであった.視神経乳頭耳側では,術前でC49.06%,術後C1週でC48.67%,術後C1カ月で48.34%,術後C3カ月でC48.04%,術後C6カ月でC47.94%,視神経乳頭鼻側では,術前でC45.01%,術後1週でC44.61%,術後C1カ月でC44.64%,術後C3カ月でC44.26%,術後C6カ月でC44.43%であり,術前後,および術後の経過中に変化はみられなかった(図4a).m-VDはすべての測定時点,測定部位において有意な変化はなかった(図4b).CIII考按本研究ではCPACD眼における水晶体再建術後の眼圧,前房深度,隅角形状,p-VDおよびCm-VDの変化を術後C6カ月まで評価した.水晶体再建術により前房深度は深くなり,TISAは拡大した.術後C1カ月時点で眼圧は有意に下降したが,その後は有意な変化はみられなかった.また,視神経乳頭周囲において,術後C1週で一部の領域で網膜血管密度の上昇がみられたが,その後,網膜血管密度は低下した.術後C6カ月の時点では,視神経乳頭周囲,黄斑部のいずれの領域においても,網膜血管密度は術前と差がなかった.水晶体再建術後の網膜血管密度の変化は,既報では眼圧のa*眼圧(mmHg)20181614121086420術前術後術後術後術後1週1カ月3カ月6カ月平均値±標準偏差*:p<0.05,Bonferroni法b-1***b-2***4.5*0.25*0.500術前術後術後術後術後術前術後術後術後術後1週1カ月3カ月6カ月1週1カ月3カ月6カ月平均値±標準偏差平均値±標準偏差ACD:前房深度TISA500:TrabecularIrusSpaceArea500*:p<0.01,Bonferroni法*:p<0.01,Bonferroni法4TISA500(mm2)0.23.532.52ACD(mm)0.150.11.510.05図3水晶体再建術前後における眼圧,ACD,TISAの経過a:水晶体再建術前後における眼圧の変化.Cb-1:水晶体再建術前後におけるCACDの経過.Cb-2:水晶体再建術前後におけるCTISAの経過.C*b5550454035a55p-VD(%)50453025201510403530術前術後術後術後術後術前術後術後術後術後1週1カ月3カ月6カ月1週1カ月3カ月6カ月上方耳側下方鼻側上方耳側下方鼻側中央平均値±標準偏差平均値±標準偏差p-VD:視神経乳頭周囲血管密度m-VD:黄斑部血管密度*:p<0.05,Bonferroni法図4水晶体再建術前後における網膜血管密度の経過a:水晶体再建術前後におけるCp-VDの経過.Cb:水晶体再建術前後におけるCm-VDの経過.変動,あるいは術後の炎症による影響が指摘されていHiltonら14)は水晶体再建術後の眼圧レベル低下により拍動る3,12,13).PACD眼に対する水晶体再建術は,前房容積の拡性眼血流が改善することを報告した.また,POAG患者に大による眼圧の低下を引き起こすと考えられており10),対する線維柱帯切除術後C3カ月における報告7)では,眼圧は下降し,視神経乳頭周囲血管密度が増加したと報告されている.また,観察期間中,視神経乳頭周囲血管密度は術後C1週でわずかに減少したが,その後は徐々に増加し術後C3カ月で術前と比較して有意な増加がみられた.眼圧下降と視神経乳頭血管密度の増加は有意に関連していたと述べられている.本研究においてもCPACD眼は水晶体再建術後,ACDは深くなり眼圧は術後C1週で不変,1カ月で下降した.本研究ではp-VD,m-VDは術後C1週で一部増加したのみで,眼圧下降がみられた術後C1カ月での増加はなく,眼圧と関連した変化はみられなかった.Zhaoら12)は水晶体再建術後の黄斑部の網膜血管密度増加を報告しており,彼らのコホートでは水晶体再建術後にC2.80C±1.12CmmHgの眼圧下降がみられているが,本研究では術後C1カ月時点でC0.87C±2.09CmmHgと下降幅が小さかった.既報では術前の眼圧が低い症例は水晶体再建術後の眼圧下降が低いことが示唆されており10),本検討の対象眼は,術前に緑内障・高眼圧症治療薬を使用されている症例がC21眼中C14眼あり,眼圧上昇をきたしている症例は少なかったため,眼圧の下降幅が小さく,網膜血管密度に影響をおよぼさなかった可能性がある.水晶体再建術については,Pilottoら15)が術後の局所的な炎症反応により血管系の変化が起こることを示唆している.Zhouら3)は術後の網膜血管密度増加を報告しているが,その原因として,炎症反応によりプロスタグランジンの放出が誘発され,血液-房水関門の崩壊を引き起こし,房水に他の炎症メディエーターが蓄積され,硝子体に拡散することで網膜血管系の一時的な拡張と,網膜毛細血管の開通を引き起こすことを提唱している.また,合併症のない水晶体再建術後の炎症反応は術後C1週からC1カ月の間に最大となり,2.6カ月後にはベースラインに戻ると報告されている5).本研究の結果も術後C1週時点でのCp-VD増加,その後のCp-VD低下という網膜血管密度変化と術後炎症の転機は,既報と合致するものであった.これまで水晶体再建術後にCOCTAにて視神経乳頭周囲血管密度および黄斑部血管密度を測定した既報3)と,黄斑部血管密度のみを測定した既報12,13)では,術後にすべての追跡期間で血管密度の増加がみられている.本研究では,既報3,12,13)と異なり,p-VDの増加は限定的で,m-VDは有意な変化はなかった.原因として本研究の対象がCPACD眼であることや,既報3,12,13)と比較し若年であり,水晶体核硬度が低かった可能性や,手術時の切開幅が本研究ではC2.4Cmmと既報3)のC2.8Cmm切開より小さいことなどから,炎症惹起が少なかったことが考えられる.超音波乳化吸引装置による累積使用エネルギー値と網膜血管密度変化は相関することが報告されており3),柔らかい水晶体核や極小切開水晶体再建術は,網膜血管密度への影響が小さい可能性が示唆される.また,m-VDはCp-VDに比べて血管密度が低く,眼圧変化や炎症の影響を受けにくい可能性があるが,水晶体再建術後に網膜の部位別に血管密度変化の比較を行った報告はなく,まだ十分には検討されていない.最後に,本研究の限界としてつぎの二点があげられる.1点目は対象についてである.今回は,条件を満たす症例がいなかったためCPACGは含まれず,PACSおよびCPACが対象となった.緑内障性視神経症は網膜血管密度へ影響を及ぼすことが推察され,PACGを含む検討では異なる結果となった可能性がある.2点目は術前後の拡大率の違いである.今回はCOCTA測定時に屈折値補正は行っていないが,術前後の屈折値の変化により,OCTA撮像範囲が変化した可能性が考えられる.本研究では術前と比較し術後の屈折値に有意差はなかったものの,対象症例では遠視眼が多く,術前後の拡大率の違いが結果に影響を与えた可能性も推察される.これら二点は本研究の限界であり,今後はさらなる多数例での観察と屈折値を考慮した測定が必要であると考える.今回,PACDにおける水晶体再建術後の網膜血管密度の変化を検討した.既報3,12,13)と同じく術後C1週時点ではp-VDの増加がみられたが,m-VDの増加はみられず,網膜血管密度の変化は限定的であった.本研究におけるCPACD眼に対する侵襲がきわめて少ない極小切開水晶体再建術は,前房深度増大とCTISA増加の有用性と,網膜血流や網膜血管密度への影響が軽微であることを示す結果となった.水晶体再建術における網脈絡膜血管に対する影響は,OCTAにおける網膜血管の層別解析や脈絡膜血流の解析によるさらなる検討が必要である.文献1)日本緑内障学会緑内障診療ガイドライン作成委員会:緑内障診療ガイドライン(第C5版).日眼会誌C126:85-177,C20222)Azuara-BlancoCA,CBurrCJ,CRamsayCCCetal:E.ectivenessCofCearlyClensCextractionCforCtheCtreatmentCofCprimaryangle-closureCglaucoma(EAGLE):aCrandomisedCcon-trolledtrial.LancetC388:1389-1397,C20163)ZhouCY,CZhouCM,CWangCYCetal:Short-termCchangesCinCretinalCvasculatureCandClayerCthicknessCafterCphacoemul-si.cationsurgery.CurrEyeResC45:31-37,C20204)NodaY,OgawaA,ToyamaTetal:Long-termincreaseinCsubfovealCchoroidalCthicknessCafterCsurgeryCforCsenileCcataracts.AmJOphthalmolC158:455-9Ce1,C20145)FalcaoMS,GoncalvesNM,Freitas-CostaPetal:Choroi-dalCandCmacularCthicknessCchangesCinducedCbyCcataractCsurgery.ClinOphthalmolC8:55-60,C20146)AkilH,HuangAS,FrancisBAetal:Retinalvesseldensi-tyCfromCopticalCcoherenceCtomographyCangiographyCtoCdi.erentiateearlyglaucoma,pre-perimetricglaucomaandnormaleyes.PLoSOneC12:e0170476,C20177)PaulCJF,CRaufCB,CHarryCAQCetal:TheCde.nitionCandCclassi.cationCofCglaucomaCinCprevalenceCsurveys.CBrJOpthalmolC86:238-242,C20028)InJH,LeeSY,ChoSHetal:PeripapillaryvesseldensityreversalCafterCtrabeculectomyCinCglaucoma.CJCOphthalmolC2018;8909714,C20189)VuCAT,CBuiCVA,CVuCHLCetal:EvaluationCofCanteriorCchamberCdepthCandCanteriorCchamberCangleCchangingCafterCphacoemulsi.cationCinCtheCprimaryCangleCcloseCsus-pectCeyes.COpenCAccessCMacedCJCMedCSciC7:4297-4300,C201910)MelanciaD,AbegaoPintoL,Marques-NevesC:CataractsurgeryCandCintraocularCpressure.COphthalmicCResC53:C141-148,C201511)CarolanJA,LiuL,Alexee.SEetal:IntraocularpressurereductionCafterphacoemulsi.cation:ACmatchedCcohortCstudy.OphthalmolGlaucomaC4:277-285,C202112)ZhaoCZ,CWenCW,CJiangCCCetal:ChangesCinCmacularCvas-culatureCafterCuncomplicatedCphacoemulsi.cationCsur-gery:OpticalCcoherenceCtomographyCangiographyCstudy.CJCataractRefractSurgC44:453-458,C201813)KrizanovicA,BjelosM,BusicMetal:MacularperfusionanalysedCbyCopticalCcoherenceCtomographyCangiographyCafteruncomplicatedCphacoemulsi.cation:bene.tsCbeyondCrestoringvision.BMCOphthalmolC21:71,C202114)HiltonEJ,HoskingSL,GherghelDetal:Bene.ciale.ectsofCsmall-incisionCcataractCsurgeryCinCpatientsCdemonstrat-ingreducedocularblood.owcharacteristics.Eye(Lond)C19:670-675,C200515)PilottoE,LeonardiF,StefanonGetal:EarlyretinalandchoroidalCOCTCandCOCTCangiographyCsignsCofCin.ammationCafterCuncomplicatedCcataractCsurgery.CBrJOphthalmolC103:1001-1007,C2019***

選択的レーザー線維柱帯形成術(SLT)の1 年間の治療成績

2023年8月31日 木曜日

《第33回日本緑内障学会原著》あたらしい眼科40(8):1093.1096,2023c選択的レーザー線維柱帯形成術(SLT)の1年間の治療成績内匠哲郎*1,3井上賢治*1國松志保*2石田恭子*3富田剛司*1,3*1井上眼科病院*2西葛西・井上眼科病院*3東邦大学医療センター大橋病院眼科COne-YearTreatmentOutcomesafterSelectiveLaserTrabeculoplastyTetsuroTakumi1,3)C,KenjiInoue1),ShihoKunimatsu-Sanuki2),KyokoIshida3)andGojiTomita1,3)1)InouyeEyeHospital,2)NishikasaiInouyeEyeHospital,3)DepartmentofOphthalmology,TohoUniversityOhashiMedicalCenterC目的:選択的レーザー線維柱帯形成術(SLT)の治療成績を検討した.対象および方法:SLTを施行したC199例199眼を対象とし,1年間の経過を調査した.病型は広義原発開放隅角緑内障C168眼,落屑緑内障C26眼などであった.術前平均投薬数はC4.5剤であった.術前と術C12カ月後までの眼圧を比較した.SLT後に薬剤変更,緑内障観血的手術施行,SLT再施行,眼圧下降率C20%未満がC3回続いた場合を死亡と定義し,生存率を検討した.術後の合併症を調査した.結果:眼圧は術前C19.9C±6.4CmmHg,術C6カ月後C15.5C±5.3CmmHg,術C12カ月後C15.5C±5.1CmmHgで有意に下降した(p<0.0001).生存率はC6カ月後C30%,12カ月後C24%だった.一過性眼圧上昇以外の合併症は認めなかった.結論:SLT施行後,眼圧は有意に低下したが,その効果は経過観察に伴い低下した.平均眼圧はC1年間で約C20%下降した.CPurpose:Toinvestigatethetreatmentoutcomesfor1yearafterselectivelasertrabeculoplasty(SLT)C.Meth-ods:InCthisCstudy,CweCinvestigatedCtheCtreatmentCoutcomesCinC199CeyesCofC199glaucomaCpatients(i.e.,Cprimaryopen-angleglaucoma:168eyes;exfoliationglaucoma:26eyes;othertypeglaucoma:5eyes)at6monthsand1yearCafterCSLT.CInCallCsubjects,CtheCaverageCnumberCofCglaucomaCmedicationsCusedCbeforeCSLTCwasC4.5,CandCweCcomparedIOPbeforeSLTandat6upto12-monthspostoperative.Thefailurecriteriawerechanged/addedmedi-cations,CglaucomaCsurgery,CandCre-operationCofCSLT,CandCtheCsurvivalCratesCandCcomplicationsCafterCSLTCwereCinvestigated.Results:MeanIOPatbaselineandat6-and12-monthspostoperativewas19.9±6.4CmmHg,15.5±5.3CmmHg,CandC15.5±5.1CmmHg,Crespectively(p<0.0001)C,CthusCshowingCaCsigni.cantCdecreaseCofCIOPCatC6CandC12CmonthsafterSLT.Thesurvivalrateat6-and12-monthspostoperativewas30%Cand24%,respectively,andnocomplicationsCotherCthanCtransientCincreasedCIOPCwereCobserved.CConclusion:AfterCSLT,CIOPCsigni.cantlyCdecreased,yetthee.ectdeclinedovertime,andmeanIOPdecreasedbyapproximately20%Cat1-yearpostopera-tive.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C40(8):1093.1096,C2023〕Keywords:選択的レーザー線維柱帯形成術,眼圧,生存率,合併症,緑内障.selectivelasertrabeculoplasty,in-traocularpressure,survivalrate,complication,glaucoma.Cはじめに1979年にCWiseらは,隅角全周の線維柱帯色素帯にアルゴンレーザーを照射するレーザー線維柱帯形成術(argonClasertrabeculoplasty:ALT)によって眼圧下降が得られることを報告した1).ALTは線維柱帯構造全体に作用し,周辺虹彩前癒着が生じる,線維柱帯の器質的変化が生じ眼圧が上昇するなどの問題点がその後指摘された2,3).選択的レーザー線維柱帯形成術(selectivelasertrabeculo-plasty:SLT)は線維柱帯の有色素細胞を選択的に破砕し,線維柱帯細胞を活性化して房水流出を改善し眼圧を下降させる方法4)で,照射するエネルギー量が少なく,反復照射可能で合併症も少ないことから薬物療法と観血的治療の中間の治療として期待されている5.7).井上眼科病院(以下,当院)ではC2010年に菅原ら8)が〔別刷請求先〕内匠哲郎:〒101-0062東京都千代田区神田駿河台C4-3井上眼科病院Reprintrequests:TetsuroTakumi,M.D.,Ph.D.,InouyeEyeHospital,4-3Kanda-Surugadai,Chiyoda-ku,Tokyo101-0062,CJAPANCSLTの治療成績を報告したが,症例数がC39例C47眼,経過観察期間が約C6カ月間であった.今回経過観察期間をより長期として,当院の治療成績を後ろ向きに検討した.CI対象および方法当院通院中の緑内障患者でC2019年C1月.2021年C3月にSLTを施行した199例199眼(男性97例97眼,女性102例C102眼)を対象とし,1年間の経過を調査した.年齢はC67.2±12.4歳(平均C±標準偏差),26.93歳であった.前投薬数は点眼薬と内服薬(内服薬は錠数にかかわらずC1剤とした)を合わせて,4.5C±1.1剤で,内訳は点眼薬・内服薬未使用1眼,1剤2眼,2剤9眼,3剤22眼,4剤52眼,5剤79眼,6剤C34眼であった.なお,アセタゾラミド内服を行っていた症例はC53例であった.術前CHumphrey視野中心30-2プログラムCSITA-standardのCmeandeviation(MD)値は.13.2±6.2CdB(C.28.58.1.01CdB)であった.異なる日に計測した連続する術前2回の眼圧の平均値はC19.9C±6.4mmHg(9.5.45.0CmmHg)であった.緑内障の病型は広義原発開放隅角緑内障(primaryCopenangleCglaucoma:POAG)168眼,落屑緑内障(exfoliationglaucoma:XFG)26眼,原発閉塞隅角緑内障(primaryCangleCclosureglaucoma:PACG)2眼,ステロイド緑内障C1眼,ステロイド以外の続発緑内障(secondaryCopenangleCglaucoma:SOAG)2眼であった.SLTの適応は点眼・内服治療を行っている,もしくは点眼・内服治療にアレルギーがあり使用できない患者(点眼薬・内服薬未使用)で,視野障害の進行を認め,さらなる眼圧下降が必要な患者とした.周辺虹彩前癒着などがあり,全周に十分照射できなかったと考えられる患者や,不慣れな術者のため通常以上の過剰照射を行ったと考えられる患者は除外した.SLT施行後からC12カ月後までの間の眼圧測定がC3回未満の症例は除外した.また,視野障害が進行しすでに中期.後期緑内障の患者,今後も進行が速いと予測される患者に対しては観血的手術の提案も行い,観血的治療およびSLTの有効性およびリスクに関し十分かつ丁寧に説明を行った.患者にはインフォームド・コンセントをとり,文書にて同意を得た.SLTのレーザー装置はエレックス社製タンゴオフサルミックレーザーを使用した.照射条件は,0.4CmJより開始し,気泡が生じる最小エネルギーとした.全例隅角全周に照射した.照射前と照射後にアプラクロニジン塩酸塩点眼薬を投与した.SLT施行後も点眼薬,内服薬は原則として継続使用とした.術前眼圧と術C1.2週間後,1カ月後,3カ月後,6カ月後,9カ月後,12カ月後の眼圧を比較した.SLT後に薬剤の変更または投薬数を増加,緑内障観血的手術施行,SLTを再度施行,あるいは眼圧下降率C20%未満がC3回続いた場合を死亡と定義し,Kaplan-Meier法により生存率を検討した.また,SLTの治療成績に影響を与える因子(年齢,性別,術前眼圧,緑内障病型,術前投薬数)をCCox比例ハザードモデルを用いて検討した.調査期間内に両眼CSLTを施行した症例では,先にCSLTを施行した眼を解析した.SLT術前後の眼圧の比較にはCANOVA,Bonferroni/Dunn検定を用いた.統計学的検討における有意水準はCp<0.05とした.本研究は井上眼科病院の倫理審査委員会で承認を得た.研究情報を院内掲示などで通知・公開し,研究対象者などが拒否できる機会を保障した.CII結果1照射エネルギーはC0.7C±0.2CmJ(0.4.1.1CmJ),照射数はC117.8±17.9発(88.199発)であった.術後眼圧の推移を図1に示す.術前眼圧(199眼)19.9C±6.4mmHgから1.2週間後(178眼)にはC18.4C±6.9CmmHg,1カ月後(78眼)にはC17.3±7.2mmHg,3カ月後(88眼)にはC15.4C±4.1CmmHg,6カ月後(61眼)にはC15.5C±5.3CmmHg,9カ月後(51眼)にはC15.1C±3.6mmHg,12カ月後(47眼)にはC15.5C±5.1CmmHgと,眼圧は術前と比較し,1.2週間後以外の各時点で有意に下降した(1カ月後Cp<0.05,3,6,9,12カ月後Cp<0.0001).Kaplan-Meier法による累積生存率はC6カ月後でC30%,12カ月後でC24%であった(図2).SLT6カ月後までに死亡した症例の内訳は,眼圧下降率C20%未満C84眼,薬剤追加または変更C24眼,緑内障観血的手術(線維柱帯切除術)28眼,SLT再施行C3眼であった.12カ月後までに死亡した症例の内訳は眼圧下降率C20%未満C89眼,薬剤追加または変更C28眼,緑内障観血的手術(線維柱帯切除術)30眼,SLT再施行4眼であった.SLT12カ月後の点眼薬・内服薬使用状況は,変更なしC44眼,SLT施行前より減少C3眼であった.また,生存した症例のC12カ月間の平均受診回数はC6.2C±1.9回であった.Cox比例ハザードモデルによる分析では,年齢,性別(女性を基準とする),術前眼圧,緑内障病型(POAGを基準とする),術前投薬数は治療成績に影響を与える有意な因子ではなかった(表1).SLT施行C1.2週間後にC5mmHg以上の眼圧上昇をC199眼中C12眼(6.0%)で認めたが,薬剤の変更・追加あるいは経過観察のみで下降を得た.その他に重篤な合併症を認めなかった.CIII考按本研究は術前点眼数がC4.5C±1.1剤と多剤併用症例(術前C4剤以上使用例がC82.9%)に対しCSLTを隅角全周に施行した結果である.同様に多剤併用例に対しCSLTの効果を報告したCMikiら9),齋藤ら10)の報告との比較を表2に示した.術30**p<0.00011**p<0.0525****.8****眼圧値(mmHg)累積生存率.6.4.20024681012時間(月)図2Kaplan-Meier法による累積生存率図1術後平均眼圧の推移表1SLTの治療成績に影響を与える因子ハザード比95%信頼区間p値性別(女性を基準とする)C0.8790.656.C1.178C0.3876年齢C0.9970.986.C1.009C0.6421術前投薬数C1.0310.900.C1.181C0.6637術前眼圧C0.9950.968.C1.023C0.7276緑内障病型(広義原発開放隅角緑内障を基準とする)落屑緑内障C0.9150.200.C3.831C0.6947原発閉塞隅角緑内障C0.6530.157.C2.716C0.5578ステロイド緑内障C0.4730.061.C3.647C0.4725ステロイド以外の続発緑内障C1.1430.261.C5.007C0.8590表2術前多剤使用例に対するSLTの成績MikiAら9)齋藤ら10)本研究症例数75眼34眼199眼術前眼圧C薬剤数C23.9±6.2CmmHgC3.4±1.3剤C20.9±3.4CmmHgC3.5±0.7剤(3.C5剤)C19.9±6.4CmmHg4.5±1.1剤(0.C6剤)照射範囲全周半周全周死亡定義下降率C20%未満光覚喪失SLT再施行緑内障観血的手術Out.owpressure下降率C20%未満投薬数増加SLT再施行緑内障観血的手術下降率C20%未満投薬変更/増加SLT再施行緑内障観血的手術生存率(1C2カ月後)14.2%23.2%24%前薬剤数は本研究がもっとも多く,Mikiらの報告9)では続発緑内障が約C3割含まれ本研究と患者背景が異なるため術前眼圧がやや高いこと,齋藤らの報告10)では術前眼圧は本研究と同程度であるが照射範囲が隅角半周であること,また両報告とも死亡定義が一部異なるといった違いがあるが,生存率は本研究とほぼ同等であった.Mikiらの報告9)ではSOAGやCXFGよりCPOAGで成功率が高い傾向と,術前点眼数が増えると成功率が下がる傾向を指摘している.齋藤らの報告10)では過去の報告とのCSLT治療成績を比較しており,隅角半周照射の報告ではあるものの,術前投薬数が少ないほど眼圧下降率は良好なものが多かった.新田ら11)は正常眼圧緑内障に対する第一選択治療としてのCSLTの有用性を報告しており,また近年,未治療の緑内障に対する初期治療としてのCSLTの成績が海外からも報告され7),薬剤数が少ないほどCSLT後の眼圧下降率,生存率が良好という報告が多い7,11).本研究でも治療成績に影響を与える因子を検討したがいずれも有意ではなかった.その理由は不明であり,本研究からはCSLTがどのような症例に有効かを証明できなかった.本研究ではCSLT後に重篤な合併症を認めなかったものの,SLT施行C1.2週間後にC5CmmHg以上の眼圧上昇をC6.0%で認めた.一過性の眼圧上昇はC4.27%と報告されている12).本研究で一過性の眼圧上昇を認めたC12眼のうち,広義POAGが8眼(POAG全168眼のうち4.8%),XFGが4眼(XFG全C26眼のうちC15.4%)と割合としてはCXFGのほうが多かった.POAGとCXFGに対するCSLTの治療成績を直接比較した報告では,早期眼圧上昇や術後炎症の割合は有意差がなかったが13),XFGに対するCSLT後の眼圧上昇に対し観血的手術を要した報告も存在する12).また,隅角色素沈着が高度な例での眼圧上昇が報告されており12),XFGに対するSLTでは,色素沈着の程度に応じ照射パワーを調整する,術後経過観察を頻回に行うなどしてより注意する必要があると考えられた.本研究の限界として,後ろ向き研究であること,全例で未治療時のベースライン眼圧を把握できていないこと,そのため狭義CPOAGおよび正常眼圧緑内障とに区別できなかったこと,正常眼圧緑内障単独では治療成績を検討できていないこと,複数の医師がCSLTを行い症例選択や治療プロトコールが厳密に決定されていないことなどがあげられる.また,眼圧は各観察ポイントを設定したが,観察ポイントに来院していない症例ではそのポイントの眼圧値のデータが欠損となった.たとえばC12カ月後では,生存しているが眼圧値がない症例がC2眼であった.12カ月後に薬剤変更のため死亡したC1例は眼圧値があるので合計C47眼で眼圧を検討した.本研究では多剤併用緑内障症例に対するCSLTの術後C1年間の成績を報告した.平均眼圧は術後C6カ月およびC1年で約20%下降を認めた.一過性の眼圧上昇以外の重篤な合併症を認めなかったことおよび入院を要さない治療であることから,事前の十分な説明のもと,施行を考えてよい治療法と考えられた.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)WiseCJB,CWitterSL:ArgonClaserCtherapyCforCopen-angleglaucoma:ACpilotCstudy.CArchCOphthalmolC97:319-322,C19792)HoskinsCHDCJr,CHetheringtonCJCJr,CMincklerCDSCetal:CComplicationsCofClaserCtrabeculoplasty.COphthalmologyC90:796-799,C19833)LeveneR:MajorCearlyCcomplicationsCofClaserCtrabeculo-plasty.OphthalmicSurgC14:947-953,C19834)LatinaCMA,CParkC:SelectiveCtargetingCofClaserCmesh-workcells:invitroCstudiesofpulsedandCWlaserinter-actions.ExpEyeResC60:359-371,C19955)KramerTR,NoeckerRJ:ComparisonofthemorphologicchangesCafterCselectiveClaserCtrabeculoplastyCandCargonClaserCtrabeculoplastyCinChumanCeyeCbankCeyes.COphthal-mologyC108:773-779,C20016)LatinaCMA,CSibayanCSA,CShinCDHCetal:Q-switchedC532CnmNd:YAGClasertrabeculoplasty(selectiveClasertrabeculoplasty):aCmulticenter,Cpilot,CclinicalCstudy.COph-thalmologyC105:2082-2088,C19987)GazzardG,KonstantakopoulouE,Garway-HeathDetal:CSelectivelasertrabeculoplastyversuseyedropsfor.rst-lineCtreatmentCofCocularChypertensionCandCglaucoma(LiGHT):amulticentrerandomisedcontrolledtrial.Lan-cetC393:1505-1516,C20198)菅原道孝,井上賢治,若倉雅登ほか:選択的レーザー線維柱帯形成術の治療成績.あたらしい眼科C27:835-838,C20109)MikiA,KawashimaR,UsuiSetal:TreatmentoutcomesandCprognosticCfactorsCofCselectiveClaserCtrabeculoplastyCforCopen-angleCglaucomaCreceivingCmaximal-tolerableCmedicaltherapy.JGlaucomaC25:785-789,C201610)齋藤代志明,東出朋巳,杉山和久:原発開放隅角緑内障症例への選択的レーザー線維柱帯形成術の追加治療成績.日眼会誌C111:953-958,C200711)新田耕治,杉山和久,馬渡嘉郎ほか:正常眼圧緑内障に対する第一選択治療としての選択的レーザー線維柱帯形成術の有用性.日眼会誌C117:335-343,C201312)BettisCDI,CWhiteheadCJJ,CFarhiCPCetal:IntraocularCpres-surespikeandcornealdecompensationfollowingselectivelasertrabeculoplastyinpatientswithexfoliationglaucoma.CJGlaucomaC25:e433-e437,C201613)KaraCN,CAltanCC,CYukselCKCetal:ComparisonCofCtheCe.cacyCandCsafetyCofCselectiveClaserCtrabeculoplastyCinCcaseswithprimaryopenangleglaucomaandpseudoexfo-liativeglaucoma.KaohsiungJMedSciC29:500-504,C2013***

ブリモニジン点眼薬とブリンゾラミド点眼薬からブリモニジン/ ブリンゾラミド配合点眼薬への変更後の長期経過

2023年8月31日 木曜日

《第33回日本緑内障学会原著》あたらしい眼科40(8):1085.1088,2023cブリモニジン点眼薬とブリンゾラミド点眼薬からブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬への変更後の長期経過塩川美菜子*1井上賢治*1國松志保*2石田恭子*3富田剛司*1,3*1井上眼科病院*2西葛西・井上眼科病院*3東邦大学医療センター大橋病院眼科CLong-TermE.cacyofSwitchingtoBrimonidine/BrinzolamideFixedCombinationfromConcomitantUseMinakoShiokawa1),KenjiInoue1),ShihoKunimatsu-Sanuki2),KyokoIshida3)andGojiTomita1,3)1)InouyeEyeHospital,2)NishikasaiInouyeEyeHospital,3)DepartmentofOphthalmology,TohoUniversityOhashiMedicalCenterC目的:ブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬(以下,BBFC)のC1年間の効果と安全性を後向きに調査する.対象および方法:ブリモニジン点眼薬とブリンゾラミド点眼薬の併用治療からCBBFCへ変更した原発開放隅角緑内障,高眼圧症C116例を対象とした.変更前と変更C12カ月後までの眼圧,Humphrey視野のCmeandeviation(MD)値を比較した.副作用と脱落例を調査した.結果:眼圧は変更前C14.3C±2.9CmmHg,変更3,6,9,12カ月後がC14.0C±3.1,C14.0±3.1,14.2C±3.2,14.1C±3.2CmmHgで維持された.MD値は変更前C.10.12±6.11CdB,12カ月後C.9.63±6.13CdBで同等だった.副作用はC8例(6.9%)で出現し,掻痒感,結膜充血などだった.脱落例はC32例(27.6%)あった.結論:BBFCは,1年間にわたり併用治療と同等の眼圧,視野を維持でき,安全性もほぼ良好だった.CPurpose:ToCretrospectivelyCinvestigateCtheC1-yearCoutcomesCandCsafetyCofCbrimonidine/brinzolamideC.xedcombination(BBFC)inpatientswithprimaryopen-angleglaucoma(POAG)orocularhypertension.PatientsandMethods:Thisretrospectivestudyinvolved116patientswithPOAGorocularhypertensionwhosetreatmentwasswitchedCfromCtheCconcomitantCuseCofCbrimonidineCandCbrinzolamideCtoCBBFC.CIntraocularpressure(IOP)andCmeandeviation(MD)IOPvaluesusingtheHumphreyvisual.eldtestprogramwerecomparedatbaselineanduptoC12CmonthsCpostCswitch.CAdverseCreactionsCandCdropoutsCwereCalsoCinvestigated.CResults:IOPCwasCfoundCtoCbeCmaintainedat3,6,9,and12monthspostswitch(i.e.,14.0±3.1,C14.0±3.1,C14.2±3.2,CandC14.1±3.2CmmHg,respec-tively)comparedwithatbaseline(14.3C±2.9mmHg)C.TheMDIOPvalueatbaselineandat12monthspostswitchwere.10.12±6.11CdBand.9.63±6.13CdB,respectively,thusillustratingnosigni.cantdi.erencebetweenthetwo.In8(6.9%)ofthe116patients,adversereactionssuchasitching,conjunctivalhyperemia,andotherdidoccur,andin32(27.6%)ofthe116patients,administrationwasdiscontinued.Conclusion:BBFCe.ectivelymaintainedIOPandvisual.eldsequivalenttothoseofconcomitanttherapyovera1-yearperiod,andtheoverallsafetywassatis-factory.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C40(8):1085.1088,C2023〕Keywords:ブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬,眼圧,副作用,変更,長期.brimonidine/brinzolamide.xedcombination,intraocularpressure,adversereaction,switching,long-term.CはじめにsiveCglaucomasurgery:MIGS),チューブシャント手術な緑内障は進行性,非可逆性の視神経症で,現在のところエどが普及してきているものの,緑内障の主たる治療が薬物治ビデンスのある唯一の治療は眼圧下降である1).近年,レー療であることは現時点では変わらない.内服薬であれば多剤ザー線維柱帯形成術や低侵襲緑内障手術(minimallyCinva-を一度に服用することが可能であるが,点眼薬の場合はC5分〔別刷請求先〕塩川美菜子:〒101-0062東京都千代田区神田駿河台C4-3井上眼科病院Reprintrequests:MinakoShiokawa,M.D.,Ph.D.,InouyeEyeHospital,4-3Kanda-Surugadai,Chiyoda-ku,Tokyo101-0062,CJAPANC以上の点眼間隔をあけなければならず,薬剤数が多いほど時間がかかり日常生活に大きな負担を強いることとなる.緑内障診療においては点眼治療の継続率が悪いことが課題である2)が,多剤併用症例では使用点眼薬剤数が増加するに従ってアドヒアランスが低下することも報告されている3).点眼指導,アドヒアランスの向上が疾患の進行抑制に重要であることが緑内障診療ガイドラインにも記されている1).アドヒアランス向上をめざして配合点眼薬が開発され,わが国では現在C9種類の配合点眼薬が使用可能となった.なかでもブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬(アイラミド)はC2020年C6月に発売されたCb遮断薬を含まない数少ない配合点眼薬の一つで,心疾患,慢性閉塞性呼吸器疾患,高齢者などCb遮断薬使用が禁忌または望ましくない患者への有用性が期待される.井上眼科病院(以下,当院)ではブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬をC3.6カ月使用時の効果と安全性について検討し報告した4,5).今回はブリモニジン点眼薬とブリンゾラミド点眼薬の併用治療からブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬へ変更後C1年間の眼圧下降効果と安全性を検討したので報告する.CI対象および方法対象は当院に通院中の原発開放隅角緑内障と高眼圧症で,2020年C6月.2021年C6月にC0.1%ブリモニジン点眼薬とC0.1%ブリンゾラミド点眼薬の併用治療からC0.1%ブリモニジン/0.1%ブリンゾラミド配合点眼薬に変更したC116例C116眼とした.方法はブリモニジン点眼薬とブリンゾラミド点眼薬併用治療からCwashout期間を設けずにブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬へ変更した症例について,診療録より後ろ向きに調査した.変更前と変更C3,6,9,12カ月後の眼圧変化,変更前と変更C12カ月後のCHumphrey視野検査(30-2SITAstandardプログラム)のCmeandeviation値(MD値)の変化,副作用と脱落例を検討項目とした.眼圧については眼圧変化量をC2mmHg以上下降,2mmHg未満の変化,2mmHg以上上昇に分けた調査も行った.統計学的解析はC1例C1眼で行った.両眼該当症例は投与前眼圧の高い眼,眼圧が同値の場合は右眼,片眼該当症例は患眼を解析に用いた.変更前と変更C3,6,9,12カ月後の眼圧変化の解析にはCANOVAとCBonferroniCandDunn検定を用いた.変更前と変更C12カ月後のCMD値の比較にはCWil-coxonの符号順位検定を用いた.統計学的検討における有意水準はp<0.05とした.本研究は井上眼科病院倫理審査委員会で承認を得た.研究情報は院内掲示などで通知・公開し,研究対象者などが拒否できる機会を保証した.II結果1.患者背景116例中,男性はC62例,女性はC54例,平均年齢はC65.5C±11.8歳(33.89歳)であった.病型は狭義原発開放隅角緑内障C96例,正常眼圧緑内障C17例,高眼圧症C3例であった.平均使用薬剤数はC4.3C±0.7剤(3.6剤)だった.配合剤はC2剤とカウントした.C2.眼圧変化眼圧変化を図1に示す.変更前平均眼圧はC14.3C±2.9mmHg,変更C3カ月後C14.0C±3.1CmmHg,6カ月後C14.0C±3.1mmHg,9カ月後C14.2C±3.2CmmHg,12カ月後C14.1C±3.2mmHgで,変化なく維持された.12カ月後の眼圧変化量は,変更前と比べてC2CmmHg以上下降C25例(29.4%),2CmmHg未満C37例(43.5%),2CmmHg以上上昇C23例(27.1%)だった(図2).2CmmHg未満C37例の内訳はC2CmmHg未満の上昇がC12例,不変C9例,2CmmHg未満の下降がC16例だった.C3.MD値MD値の変化を図3に示す.変更前CMD値はC.10.12±6.11dB,変更C12カ月後C.9.63±6.13CdBで変化はみられなかった(p=0.2895).C4.副作用・脱落副作用はC116例中C8例(6.9%)で出現した.内訳は掻痒感がC2例で変更C1カ月後,3カ月後に出現,結膜充血がC2例で変更C3カ月後,5カ月後に出現した.霧視が変更C3カ月後に,角膜障害が変更C4カ月後に,アレルギー性結膜炎が変更C6カ月後に,眼瞼炎が変更C9カ月後に各C1例出現した.8例中C6例は投与を中止した.中止により症状は改善した(表1).脱落はC116例中C32例(27.6%)あった.内訳は眼圧上昇が9例,薬剤追加がC8例,副作用がC6例,併用薬による副作用がC5例,白内障手術がC2例,転院がC2例だった.CIII考按ブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬はわが国で行われた臨床試験において良好な眼圧下降と安全性が報告された6,7).市販後のブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬の効果については,当院だけでなく他施設からも報告されている8.10).短期的検討としてCOnoeらは,ブリンゾラミドとブリモニジンの併用治療からブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬への変更したC22例を対象に行った研究で,眼圧は変更前がC15.0C±4.1CmmHg,変更C3カ月後がC14.8CmmHgで同等で,3カ月後の角膜上皮障害の軽度の悪化がみられたものの結膜充血に変化はなかったと報告した8).高田らは併用治療から配合点眼薬へ変更したC33例を対象とし,眼圧は変更前がC13.5C±2.3CmmHg,変更C3カ月後がC12.9C±3.1CmmHgで有意差はなく,副作用はなかったと報告した9).当院で行20NS18162mmHg以上下降眼圧(mmHg)25例,29.4%121014.3±2.914.0±3.114.0±3.114.2±3.214.1±3.28n=116n=115n=99n=92n=85642n=850変更前変更変更変更変更3カ月後6カ月後9カ月後12カ月後図1変更前後の眼圧眼圧は変更前後で変化はなかった(NS).C図2変更12カ月後の眼圧変化量2CmmHg未満(3C7例)の内訳は,2CmmHg未満上昇12例,不変9例,C2CmmHg未満下降16例だった.0NS副作用表1変更後の副作用発現時期継続・中止MD値(dB)-53カ月後継続1例-10結膜充血2例3カ月後継続1例5カ月後中止1例霧視1例3カ月後中止-20変更前変更12カ月後角膜障害1例4カ月後中止図3変更前後のMD値アレルギー性結膜炎1例6カ月後中止MD値は変更前後で変化はみられなかった(p=眼瞼炎1例9カ月後中止-15-10.12±6.11(n=80)-9.63±6.13(n=52)0.2895).った併用治療から配合点眼薬への変更後C3カ月の調査でも,眼圧は変更前はC14.2C±3.0mmHg,変更C3カ月後はC14.9C±4.4CmmHgで変化はなかった4).長期的効果で山田らは併用治療から配合点眼薬に変更した8例C15眼を対象として,眼圧は変更前C12.9C±2.1CmmHg,変更C3カ月後C13.6C±2.3mmHg,変更C6カ月後C12.6C±1.7CmmHgで有意差はなく,副作用として霧視がC2例,眼瞼皮膚炎がC1例出現したと報告した10).当院ではC102例を対象にブリンゾラミドとブリモニジンの併用治療からブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬へ変更C6カ月後の調査を行い,眼圧は変更前がC14.4C±3.0mmHg,変更C6カ月後がC13.9C±2.8CmmHgと同等,副作用はC7例,6.9%に出現し,結膜充血がC3例,掻痒感がC2例,霧視がC1例,アレルギー性結膜炎を伴う眼瞼炎がC1例あったと報告した5).今回はC1年間の調査でわが国における既報はないものの,3カ月,6カ月後と同様にブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬へ変更後も眼圧は変わらず維持され,併用治療と同等副作用はC8例(6.9%)で出現したが,6例は投与中止により症状が改善した.の効果を得られた.変更C12カ月後の眼圧変化量はC2CmmHg以上下降がC29.4%,2CmmHg未満がC43.5%,2CmmHg以上上昇がC27.1%であった.併用治療よりも眼圧下降が得られた症例のなかには,点眼本数が減ったことにより点眼遵守が良好となった症例がある可能性が示唆された.一方,配合剤のデメリットとして,1剤の点眼忘れがC2成分の眼圧下降効果減少を招くことがあげられる.眼圧が上昇した症例のなかにはもともとアドヒアランスが不良で,点眼本数が減っても点眼遵守につながらなかった症例も含まれている可能性がある.今後は点眼状況の聴取などアドヒアランスに重点をおいた前向き調査も検討の必要があると考えた.MD値はC1年間では変更前後に変化はなかった.さらに長期的な経過観察が必要であるが,緑内障は疾患の性質上,治療により目標眼圧に達していても視野障害が悪化する症例は存在するため11),長期になるほど点眼薬との関連を考察することは困難となることも予想される.副作用はC8例(6.9%)に出現し,内訳は掻痒感,結膜充血,霧視,角膜障害,アレルギー性結膜炎,眼瞼炎であった.わが国で行われたブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬の臨床試験では,ブリモニジンからの変更で副作用の出現が12.9%6),ブリンゾラミドからの変更でC8.8%7),内訳はいずれも霧視,結膜充血,角膜障害,アレルギー性結膜炎,眼刺激などで,重篤な副作用はなかったと報告されている.当院で行ったC6カ月の調査における副作用の出現はC6.9%5)で,今回はC1年の調査であったが副作用の発現頻度の増加はなく内訳も既知のものだった.長期使用による新たな事象もみられず比較的安全に使用できる点眼薬であることが示唆された.脱落がC32例(27.6%)あった.内訳は眼圧上昇,薬剤追加,副作用,併用薬による副作用,白内障手術,転院だった.眼圧上昇のC9例中C6例は他の薬剤を追加,3例は患者の希望によりブリモニジンとブリンゾラミドの併用治療に戻した.薬剤追加したC8例は眼圧に変化はないものの,さらなる眼圧下降を期待して他の点眼薬を追加していた.副作用による脱落6例はブリモニジンとブリンゾラミドの併用治療に戻し,ブリモニジンかブリンゾラミドを中止した症例だった.併用薬による副作用C5例は結膜充血,アレルギー性結膜炎,眼瞼炎で併用していたリパスジルの副作用を疑い,リパスジルを中止した症例だった.配合点眼薬のデメリットとして含有する2成分のどちらの成分の副作用か不明になることがある.利便性やアドヒアランスの問題はあるものの,最初にブリモニジンとブリンゾラミド併用治療を行い,十分に効果と安全性を確認してから配合点眼薬へ変更するほうが患者の理解も得やすいかもしれない.ブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬はC1年間にわたり併用治療と同等の眼圧下降効果が得られ安全性も良好で,とくにCb遮断薬の使用が望ましくない患者に対する緑内障治療に有用であると考えられた.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)日本緑内障学会緑内障診療ガイドライン改訂委員会:緑内障診療ガイドライン(第C5版).日眼会誌C126:85-177,C20222)KashiwagiCK,CFuruyaT:PersistenceCwithCtopicalCglauco-maCtherapyCamongCnewlyCdiagnosedCJapaneseCpatients.CJpnJOphthalmolC58:68-74,C20143)DjafariCF,CLeskCMR,CHayasymowyczCPJCetal:Determi-nantsCofCadherenceCtoCglaucomaCmedicalCtherapyCinCaClong-termCpatientCpopulation.CJCGlaucomaC18:238-243,C20094)井上賢治,國松志保,石田恭子ほか:ブリモニジン/ブリンゾラミド配合点眼薬の処方パターンと短期効果.あたらしい眼科39:226-229,C20225)InoueK,Kunimatsu-SanukiS,IshidaKetal:Intraocularpressure-loweringCe.ectsCandCsafetyCofCbrimonidine/Cbrinzolamide.xedcombinationafterswitchingfromothermedications.JpnJOphthalmolC66:440-441,C20226)相原一,関弥卓郎:ブリモニジン/ブリンゾラミド配合懸濁性点眼液の原発開放隅角緑内障(広義)または高眼圧症を対象とした第CIII相臨床試験─ブリモニジンとの比較試験.あたらしい眼科37:1289-1298,C20207)相原一,関弥卓郎:ブリモニジン/ブリンゾラミド配合懸濁性点眼液の原発開放隅角緑内障(広義)または高眼圧症を対象とした第III相臨床試験─ブリンゾラミドとの比較試験.あたらしい眼科37:1299-1308,C20208)OnoeCH,CHirookaCK,CNagayamaCMCetal:TheCe.cacy,CsafetyCandCsatisfactionCassociatedCwithCswitchingCfrombrinzolamide1%CandCbrimonidine0.1%CtoCaC.xedCcombi-nationCofbrinzolamide1%CandCbrimonidine0.1%CinCglau-comapatients.JClinMedC10:5228,C20219)高田幸尚,住岡孝吉,岡田由香ほか:ブリモニジン酒石酸塩・ブリンゾラミド併用使用から配合点眼薬へ変更後の短期の眼圧変化.眼科64:275-280,C202210)山田雄介,徳田直人,重城達哉ほか:ブリモニジン酒石酸塩・ブリンゾラミド配合点眼薬の有効性について.臨眼C76:695-699,C202211)CollaborativeCNormal-TensionCGlaucomaStudyCGroup:CThee.ectivenessofintraocularpressurereductioninthetreatmentCofCnormal-tensionCglaucoma.CAmCJCOphthalmolC126:498-505,C1998***

スクリーニング目的で得られた角膜ヒステリシスの値と 緑内障性眼底変化の有無

2023年7月31日 月曜日

《第33回日本緑内障学会原著》あたらしい眼科40(7):963.967,2023cスクリーニング目的で得られた角膜ヒステリシスの値と緑内障性眼底変化の有無瀧利枝丸山勝彦杉浦奈津美八潮まるやま眼科CCornealHysteresisValuesObtainedbyOcularResponseAnalyzerforScreeningExaminationswithorwithoutGlaucomatousFundusChangeToshieTaki,KatsuhikoMaruyamaandNatsumiSugiuraCYashioMaruyamaEyeClinicC目的:スクリーニング目的で行ったCOcularResponseAnalyzer(ORA)での眼圧検査で測定された角膜ヒステリシス(CH)の値を,眼底の緑内障性変化のある群とない群で比較すること.対象および方法:一定期間内にスクリーニングとしてCORAを用いて眼圧を測定し,かつ,眼底写真撮影と光干渉断層計(OCT)検査が行われている眼を対象とした.眼底写真とCOCTの結果から眼底の緑内障性変化の有無を判定し(あり群,なし群),両群のCCHの値を比較した(t-検定).結果:127例(平均年齢C53.5C±18.0歳),192眼が解析対象となった.あり群はC53眼,なし群はC139眼だった.あり群となし群のCCHはそれぞれC9.6C±1.4(6.8.13.3)mmHg,10.2C±1.2(6.9.13.3)mmHgとなり,あり群のほうが有意に低かった(p=0.003).結論:眼底に緑内障性の変化がある眼では,ない眼に比べCCHは低値だが,分布は重複する.CPurpose:ToCinvestigateCcornealChysteresisCvaluesCobtainedCbyCOcularResponseCAnalyzer(ORA)(Reichert)Cforscreeningexaminationpurposeswithorwithoutglaucomatousfunduschange.SubjectsandMethods:Weret-rospectivelyanalyzedthemedicalrecordsofeyesinwhichintraocularpressure(IOP)wasmeasuredbyORAforscreeningexaminations,andfundusphotographsandopticalcoherencetomographyimageswereobtained.Cornealhysteresis(CH)wascomparedbyt-testbetweeneyeswith(positivegroup)andwithout(negativegroup)glauco-matousCfundusCchange.CResults:ThisCstudyCinvolvedC192CeyesCofC127patients(meanage:53.5C±18.0years)C.CInCtheCpositivegroup(n=53eyes)andCtheCnegativegroup(n=139eyes)C,CtheCmean±standarddeviation(range)ofCCHwas9.6±1.4CmmHg(6.8to13.3mmHg)and10.2C±1.2CmmHg(6.9to13.3mmHg)C,respectively(p=0.003)C.CCon-clusions:OurC.ndingsCrevealedCthatCtheCmeanCCHCwasClowerCinCtheCpositiveCgroupCeyesCthanCinCtheCnegativeCgroupeyes,however,therewasanoverlapinthemeasureddistributions.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C40(7):963.967,C2023〕Keywords:OcularResponseAnalyzer,角膜ヒステリシス,スクリーニング,緑内障,眼圧.OcularResponseAnalyzer,cornealhysteresis,screeningexamination,glaucoma,intraocularpressure.Cはじめにライカート社のCOcularResponseCAnalyzer(ORA)は,緑内障の発症1.3),あるいは進行4.9)に影響するとされる角膜ヒステリシス(cornealhysteresis:CH)が測定できる眼圧計である.また,ORAは非接触型眼圧計であるため日常診療でスクリーニング用眼圧計として使用されることもあり,スクリーニング目的でCORAを用いた場合でも約C8割の症例で信頼性のある測定結果が得られることがわかっている10).これまでのCCHと緑内障の関係を論じた研究は,すでに診断がついている患者を選択して対象としたものが多く,緑内障点眼薬による治療介入後の測定値を解析した報告も少なくない.また,不特定多数に対するスクリーニング検査で測定されたCCHでの検討は行われていない.さらに,ほとんどの〔別刷請求先〕丸山勝彦:〒340-0822埼玉県八潮市大瀬C5-1-152階八潮まるやま眼科Reprintrequests:KatsuhikoMaruyama,M.D.,Ph.D.,YashioMaruyamaEyeClinic,2F,5-1-15Oze,Yashio-shi,Saitama340-0822,JAPANC報告は視野異常を有する緑内障眼を対象としているが,緑内障性視神経症の病態は視野異常が検出される前から存在し,眼底に特徴的な変化が観察されることがわかっている11).本研究の目的は,スクリーニング目的で行ったCORAによる眼圧検査で測定されたCCHの値を,眼底の緑内障性変化がある眼とない眼で比較することである.CI対象および方法2021年C3月C1日.5月C15日に,八潮まるやま眼科でスクリーニングとしてCORAG3(ライカート社)を用いて眼圧測定を行ったC747例(男性C287例,女性C460例,平均年齢C53.5±20.4歳,レンジC6.94歳),1,488眼(右眼C745眼,左眼C743眼)の中で,WaveformScore6以上の結果が得られ,眼底写真撮影と光干渉断層計(opticalCcoherenceCtomogra-phy:OCT)検査が行われている眼を対象とした.レーザー治療を含む内眼手術歴のある眼や,緑内障点眼薬を使用中の眼は対象から除外した.ORAは患者に応じて開瞼を補助しながらC3回測定を行い,平均値を解析に使用した.なお,同一眼に別の日にも測定を行っている場合には初日の結果を解析に用いた.眼底写真は無散瞳眼底カメラCAFC-330(ニデック)を用い,散瞳下,あるいは無散瞳下で後極部を画角C45°で撮影した.OCTはCRS-3000Advance(ニデック)を用い,同様に散瞳下,あるいは無散瞳下で黄斑マップを撮影後,緑内障解析を行った.なお,OCT測定時の信号強度指数の値は問わなかった.同一検者(丸山)が診療録データの眼底写真とCOCT結果を読影し,眼底の緑内障性変化の有無を判定した.眼底の緑内障性変化は,眼底写真で視神経乳頭陥凹拡大や乳頭辺縁部の菲薄化,それに伴う網膜神経線維層欠損と,OCT網膜内層厚解析で神経線維の走行に沿った菲薄化を認め,かつ,網膜神経線維層欠損を生じうる緑内障以外の眼底疾患(網膜静脈分枝閉塞症,糖尿病網膜症,高血圧性眼底,腎性網膜症など)が除外できることにより判定した.眼底読影の結果,緑内障性変化の有無が明らかな眼のみを抽出し,緑内障性変化を認める眼(あり群)と認めない眼(なし群)で,等価球面度数,最高矯正視力(logMAR)を比較した(t-検定).また,ORAで測定されたCGoldmann圧平眼圧計に相当する眼圧値(IOPg),CHをもとに補正された眼圧値(IOPcc),CHの分布の差を検討し(F-検定),数値を比較した(t-検定).なお,緑内障以外の他の疾患があっても,明らかに緑内障性変化を合併していると思われる眼はあり群と判定した.本研究は日本医師会倫理審査委員会の承認を得て行った(承認番号CR3-8).CII結果スクリーニングとしてCORAを用いて眼圧測定を行った1,488眼の中で,WaveformScoreがC6以上の結果が得られた眼はC1,245眼あり,その中で内眼手術歴のある眼はC663眼あった.残りのC582眼の中で,読影可能な眼底写真撮影とOCT検査が行われている眼はC341眼あったが,緑内障性変化の有無が判定できない眼がC149眼あり,最終的にC127例(平均年齢C53.5C±18.0歳,レンジC9.87歳,男性C46例,女性C81例),192眼が解析対象となった.あり群はC40例C53眼,なし群はC89例C139眼だった.なお,2例は片眼があり群に,片眼はなし群に組み入れられていた.すべての眼にオートレフケラトメータ(ARK-1s,ニデック)を用いた屈折検査と,視力検査が行われていた.あり群となし群の屈折(等価球面度数)はそれぞれC.2.11±4.15D(レンジC.17.13.+4.00D),.2.13±3.07D(レンジC.8.75.+5.00D)であり,差はなかった(p=0.98).また,最高矯正視力(logMAR)もそれぞれC.0.01±0.11(レンジC.0.18.0.30),.0.03±0.14(レンジC.0.30.0.70)と差はなかった(p=0.26).あり群,なし群のIOPg,IOPcc,CHのヒストグラムを図1に示す.いずれのパラメータもあり群となし群の間に分布の差はなかった(IOPg:p=0.17,IOPcc:p=0.16,CH:p=0.09).あり群,なし群のCIOPg,IOPcc,CHの箱ひげ図を図2に示す.あり群となし群のCIOPgはそれぞれC15.7C±3.3CmmHg(レンジC10.2.24.3CmmHg),16.2C±3.9CmmHg(レンジC8.1.29.8CmmHg)で差はなかった(p=0.42).また,IOPccはそれぞれC17.0C±2.7CmmHg(レンジC12.8.24.0CmmHg),16.8C±3.2CmmHg(レンジC10.5.28.3CmmHg)となり,やはり差はなかった(p=0.65).一方,CHはC9.6C±1.4CmmHg(レンジC6.8.13.3CmmHg),10.2C±1.2CmmHg(レンジC6.9.13.3CmmHg)となり,あり群のほうがなし群より有意に低かった(p=0.003).CIII考按本研究は,スクリーニング目的で行ったCORAでの眼圧検査で測定されたCCHの値を,眼底の緑内障変化の有無で比較した初めての報告である.測定値への影響を除外するため,内眼手術や緑内障点眼薬による治療介入が行われていない眼を対象に検討を行った.その結果,眼底に緑内障性の変化がある眼では,ない眼に比べCCHは全体としては低値だが,測定値のレンジは重複することがわかった.これまでのCCHと緑内障の関係を論じた研究は,すでに診断がついている症例を選択して対象としたものが多い.Abitbolら1)は,点眼治療中の緑内障眼C58眼(開放隅角C88%,閉塞隅角C12%,正常眼圧緑内障なし)と正常眼C75眼のCHを比較した結果,緑内障眼C8.77C±1.4CmmHg(レンジC5.0.11.3CmmHg)に対して正常眼はC10.46C±1.6CmmHg(レンジ4030201006.97.98.99.910.911.912.9(mmHg)図1OcularResponseAnalyzerで測定された各パラメータのヒストグラムa:IOPg,b:IOPcc,c:角膜ヒステリシス(CH).あり群:眼底に緑内障性変化を認めるC53眼.なし群:眼底に緑内障性変化を認めないC139眼.7.08.09.010.012.013.09.911.913.915.917.919.921.923.925.927.9(mmHg)c509.911.913.915.917.919.921.923.925.927.9(mmHg)b50a50あり群なし群4034眼数眼数眼数4030201003020100~38~~~~~~~~~~10.012.014.016.018.020.022.024.026.010.012.014.016.018.020.022.024.026.0~~~~~~~~~~~~~~~~~~~(mmHg)IOPg(mmHg)IOPcc(mmHg)CH353535303030252525202020151515101010555000あり群なし群あり群なし群あり群なし群図2あり群,なし群のIOPg,IOPcc,角膜ヒステリシス(CH)の箱ひげ図あり群:眼底に緑内障性変化を認めるC53眼.なし群:眼底に緑内障性変化を認めないC139眼.7.1.14.9CmmHg)と,緑内障眼のほうが有意に低かったとしている.また,Hirneisら2)は,点眼治療中の片眼性の原発開放隅角緑内障C18例と僚眼のCCHを比較しており,緑内障眼C7.73C±1.46mmHgに対して僚眼はC9.28C±1.42CmmHg(レンジ未記載)と,緑内障眼のほうが有意に低値だったとしている.さらにCKaushikら3)は,すでに診断がついた緑内障外来を受診中のCGlaucomaClikedisc101眼,高眼圧症C38眼,原発閉塞隅角症C59眼,原発開放隅角緑内障(狭義)36眼,正常眼圧緑内障C18眼の眼圧,ならびにCCHをはじめとする角膜の特徴を正常コントロール71眼と比較している(全症例手術歴や点眼使用なし).その結果,原発開放隅角緑内障(狭義),正常眼圧緑内障のCCHはそれぞれC7.9CmmHg(レンジ未記載,95%信頼区間C6.9.8.8CmmHg),8.0CmmHg(95%信頼区間C7.2.8.8CmmHg)であり,正常眼C9.5CmmHg(95%信頼区間C9.2.9.8CmmHg)に比べ,有意に低かったと報告している.本研究でもあり群のCCHはなし群より低い結果となったが,既報では測定値のレンジやC95%信頼区間をみてみると緑内障眼は対象全体が低めに測定されているのに対し,本研究ではあり群となし群の測定値のレンジは重複した.その理由として,本研究でのあり群の臨床背景が影響していると考えられる.本研究では組み入れの条件に視野異常の有無を問わなかったため,あり群のなかに前視野緑内障が含まれていたと予想され,また,内眼手術歴や点眼治療中の眼を除外しているため,多くの未発見,あるいは未治療の症例が解析対象となった.これらの要因が関与して後期の症例が除外され,早期の症例が多く含まれたため,本研究のあり群のCCHは既報より高く測定された可能性がある.スクリーニングとしてCCHが測定された不特定多数の症例を対象とした本研究の結果には意義がある.緑内障の危険因子の一つとしてCCHが低いことは緑内障診療ガイドラインに明記されているが12),日常臨床での緑内障の発見の機会を考えたとき,スクリーニングとして視力,眼圧,前眼部細隙灯,眼底などの諸検査を行って,緑内障が疑われる場合は適宜検査を追加して診断をすすめていくのが通例である.スクリーニング用眼圧計としてCORAを用いた場合,CHの測定値が低ければ緑内障の存在を疑う根拠になるが,測定値のレンジは正常眼と重複することから,それだけでは不十分であり,他の検査結果も加味して総合的に緑内障を疑う必要があることが確認できた.本報告は単一施設での後ろ向き研究であり,結果の解釈には各種バイアスの影響を考慮しなければならない.まず,眼底所見の読影に関して本研究にはいくつかの特徴があるため,結果の解釈に制限がある.たとえば,他院からのデータがあれば当院を受診した際に改めて眼底写真やOCTを撮影していないことも多く,眼底写真とCOCTは緑内障が疑われた全例に行われたわけではない.また,読影は一人の検者が行っているため,所見の見逃しや判定の偏りが生じることは否定できない.さらに,視神経乳頭の立体観察を全例で行っているわけではないため,眼底写真やCOCTでも判定困難なごく早期の陥凹拡大を見逃している可能性がある.OCTの測定結果の精度を問わなかった影響も考えられるが,今回は精度によらず緑内障性変化の有無が明らかに判定できる症例のみを対象としたので影響は少ないと考えられる.本研究でCOCTの乳頭周囲網膜神経線維層厚解析を用いなかった理由は,黄斑疾患の除外のためCOCTで乳頭部の撮影を行っていなくても黄斑部の撮影を行っている症例が多くあり,それらの症例を解析対象に加えなければとくに正常眼の眼数が著しく減少してしまうからであるが,乳頭周囲網膜神経線維層厚解析の結果を加味していないことにより診断の精度が低下している可能性はある.さらにまた,読影対象となった眼のうちC4割強は判定不能のため除外したことなどが結果に影響した可能性がある.眼底所見の読影以外でも,結果に影響を及ぼす可能性のあるいくつかの要素がある.本研究の結果は,ORAでCWave-formScoreがC6以上の結果が得られ,内眼手術歴のない未治療の眼に限定したものである.さらに,ORAの測定条件が一定ではないことも影響していると思われる.たとえば,閉瞼が強い症例や瞼裂が狭い症例,睫毛が長い症例などに対して開瞼の補助を行う明確な基準はなく,今回の測定値はそのときの検者の判断に任せた結果である.今回は,3名の検者が測定を担当したが,検者ごとの結果は明らかではない.さらに,本研究はデザインの特性から,眼底の緑内障性変化の有無に影響する背景因子の交絡は排除できない.屈折や最高矯正視力には群間の差はなかったものの,緑内障の有病率は年齢とともに高い12)ことを反映し,年齢が結果に影響を与えている可能性はある.本研究の対象には片眼はあり群,片眼はなし群に組み入れられた症例がC2例存在しており,単純な比較は困難と考え検討は行っていないが,あり群はなし群より明らかに年齢の高い眼が多く含まれている.しかし,本研究の目的はスクリーニングとして測定されたCCHの値を眼底の緑内障性変化がある眼とない眼で比較することであり,交絡因子が影響している前提で,臨床像としての結果と解釈できると考える.このようにいくつかの問題点はあるが,スクリーニングとしてCCHの情報が加われば緑内障検出の精度の向上が期待できる.そして,将来的には緑内障の早期発見や進行の危険因子を有する患者の早期発見に貢献でき,重症化の回避などによる医療経済的効果に繋がる可能性があると考えられる.今後,さらに多数例を対象とした多施設での検証が必要である.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)AbitbolCO,CBoudenCJ,CDoanCSCetal:CornealChysteresisCmeasuredCwithCtheCOcularCResponseCAnalyzerCinCnormalCandCglaucomatousCeyes.CActaCOphthalmolC88:116-119,C20102)HirneisC,NeubauerAS,YuAetal:Cornealbiomechan-icsCmeasuredCwithCtheCocularCresponseCanalyserCinCpatientsCwithCunilateralCopen-angleCglaucoma.CActaCOph-thalmolC89:e189-e192,C20113)KaushikCS,CPandavCSS,CBangerCACetal:RelationshipCbetweencornealbiomechanicalproperties,centralcornealthickness,CandCintraocularCpressureCacrossCtheCspectrumCofglaucoma.AmJOphthalmolC153:840-849,C20124)DeCMoraesCCG,CHillCV,CTelloCCCetal:LowerCcornealChys-teresisisassociatedwithmorerapidglaucomatousvisual.eldprogression.JGlaucomaC21:209-213,C20125)MedeirosCFA,CMeira-FreitasCD,CLisboaCRCetal:CornealChysteresisCasCaCriskCfactorCforglaucomaCprogression:aCprospectivelongitudinalstudy.OphthalmologyC120:1533-1540,C20136)ZhangCC,CTathamCAJ,CAbeCRYCetal:CornealChysteresisCandprogressiveretinalnerve.berlayerlossinglaucoma.AmJOphthalmolC166:29-36,C20167)SusannaCN,Diniz-FilhoA,DagaFBetal:AprospectivelongitudinalCstudyCtoCinvestigateCcornealChysteresisCasCaCriskfactorforpredictingdevelopmentofglaucoma.AmJOphthalmolC187:148-15,C20188)AokiCS,CMikiCA,COmotoCTCetal:BiomechanicalCglaucomaCfactorCandCcornealChysteresisCinCtreatedCprimaryCopen-angleCglaucomaCandCtheirCassociationsCwithCvisualC.eldCprogression.InvestOphthalmolVisSciC62:4,C20219)MatsuuraM,HirasawaK,MurataHetal:TheusefulnessofCorvisSTTonometryandtheOcularResponseAnalyz-erCtoCassessCtheCprogressionCofCglaucoma.CSci.CRepC7:40798;doi:10.1038/srep40798,C201710)杉浦奈津美,丸山勝彦,瀧利枝ほか:スクリーニング用眼圧計としてCOcularCResponseCAnalyzerG3を用いた際の測定値の信頼度の検討.あたらしい眼科C39:959-962,C202211)WeinrebCRN,CFriedmanCDS,CFechtnerCRDCetal:RiskCassessmentCinCtheCmanagementCofCpatientsCwithCocularChypertension.AmJOphthalmolC138:458-467,C200412)日本緑内障学会緑内障診療ガイドライン改訂委員会:緑内障診療ガイドライン第C5版.日眼会誌126:85-177,C2022***

原発開放隅角緑内障に対する線維柱帯切除術の中期成績 ─経過眼圧と視野変化

2023年7月31日 月曜日

《第33回日本緑内障学会原著》あたらしい眼科40(7):950.957,2023c原発開放隅角緑内障に対する線維柱帯切除術の中期成績─経過眼圧と視野変化柴田真帆豊川紀子黒田真一郎永田眼科CMid-termOutcomesofTrabeculectomyforPrimaryOpenangleGlaucoma-Follow-upIntraocularPressureandVisualFieldChangesMahoShibata,NorikoToyokawaandShinichiroKurodaCNagataEyeClinicC目的:原発開放隅角緑内障に対する線維柱帯切除術後の経過眼圧と視野進行抑制効果について検討する.対象および方法:2012.2016年に永田眼科で原発開放隅角緑内障に対して線維柱帯切除術後を施行したC92眼のうち,術後C2年以上経過観察し,術前後にCHumphrey視野をC3回以上施行した症例で経過中水疱性角膜症,加齢黄斑変性の発症,追加緑内障手術を施行した症例を除くC26眼を対象とした.経過眼圧C12CmmHg以下群(15眼)とC12CmmHg超過群(11眼)で術前後CMDスロープを後ろ向きに比較検討した.結果:経過眼圧C12CmmHg以下群と超過群の平均術後観察期間はそれぞれC60.4,68.7カ月,両群とも術後有意な眼圧下降を認め,経過中の平均眼圧下降率はそれぞれC46.9,44.0%であった.術前後CMDスロープ比較において,12CmmHg以下群ではC30-2,10-2視野とも術後有意に改善したが,12CmmHg超過群ではC30-2視野で統計的有意な改善がなかった.術前後視力比較でC12CmmHg以下群では中心視野障害の強い症例で視力低下傾向があった.結論:経過眼圧C12CmmHg以下群で術後CMDスロープは有意に改善したが,視力低下の傾向があった.CPurpose:ToCinvestigateCtheCfollow-upCintraocularpressure(IOP)andCtheCe.cacyCofCtheCsuppressionCofCtheCdeteriorationCofCvisual.eld(VF)postCtrabeculectomyCforCprimaryCopenangleCglaucoma(POAG).CSubjectsandmethods:WeCretrospectivelyCreviewedCtheCmedicalCrecordsCofCPOAGCpatientsCwhoCunderwentCtrabeculectomyCbetweenCJanuaryC2012CandCDecemberC2016CatCNagataCEyeCClinicCandCwhoCcouldCbeCobservedCforCmoreCthanC2-yearspostoperativewithmorethan3reliablepre-andpostoperativeVFs.WeexcludedpatientswhodevelopedblurredCkeratoconus,Cage-relatedCmacularCdegeneration,CorCunderwentCadditionalCglaucomaCsurgeryCduringCtheCcourseofthestudy.Analyzedwere26eyes(Group1:15eyeswithanIOPof≦12mmHg;Group2:11eyeswithanCIOPCof>12CmmHg).CPre-andCpostoperativeCIOP,CglaucomaCmedications,Cmeandeviation(MD),CMDCslope,Candvisualacuity(VA)wasinvestigatedandcomparedbetweenthetwogroups.Results:InGroup1andGroup2,themeanCpostoperativeCfollow-upCperiodCwasC68.7CandC60.4Cmonths,Crespectively,CandCtheCmeanCpostoperativeCIOPCreductionCrateCwas44.0%Cand46.9%,Crespectively,CthusCshowingCsigni.cantCIOPCreductionCpostCsurgeryCinCbothCgroups.CInCtheCpre-andCpostoperativeCMDCslopeCcomparisons,CthereCwasCsigni.cantCpostoperativeCMDCslopeCimprovementinboththe30-2and10-2VFtestinGroup1,buttherewasnostatisticallysigni.cantimprovementinCtheC30-2CVFCtestCinCGroupC2.CInCtheCpre-andCpostoperativeCVACcomparisons,CVACtendedCtoCdecreaseCinCtheCpatientswithcentralVFdefectsinGroup1.Conclusions:Therewasasigni.cantimprovementinthepostopera-tiveMDslopeinGroup1,butVAtendedtodecreaseinthepatientswithcentralVFdefects.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)40(7):950.957,C2023〕Keywords:線維柱帯切除術,MDスロープ,眼圧.trabeculectomy,meandeviationslope,intraocularpressure.C〔別刷請求先〕柴田真帆:〒631-0844奈良市宝来町北山田C1147永田眼科Reprintrequests:MahoShibata,M.D.,Ph.D.,NagataEyeClinic,1147Kitayamada,Horai,Nara-city,Nara631-0844,JAPANC950(102)はじめに線維柱帯切除術(trabeculectomy:LET)は優れた眼圧下降効果とともに,視野障害の進行を緩徐化することが多数報告1.5)されている.緑内障治療の目的は眼圧を十分に下降させ進行を遅延もしくは抑制することにあるが,病期や病型に応じて目標眼圧は異なり,進行した緑内障では目標眼圧をより低く設定する必要がある.AdvancedGlaucomaInterven-tionCStudy6)では,進行した開放隅角緑内障に対する治療後非進行群の平均眼圧はC12.3CmmHgであったと報告されている.今回,LET後の経過眼圧による視野進行の違いを検討するため,原発開放隅角緑内障(primaryopenangleglau-coma:POAG)に対するCLET後の,経過眼圧C12CmmHg以下群と超過群における視野進行抑制効果について後ろ向きに比較検討した.CI対象および方法2012年C1月.2016年C12月に永田眼科において,POAGに対しCLETを施行した連続症例C92眼のうち,術後C2年以上経過観察し,術前後にCHumphrey視野検査CSITA-stan-dard30-2もしくは10-2を信頼性のある結果(固視不良<20%,偽陽性<33%,偽陰性<33%)でC3回以上測定できた症例で,経過中に視力や視野に影響のあった症例(水疱性角膜症・加齢黄斑変性症発症眼,追加緑内障手術施行眼)を除いたC26眼を対象とした.26眼について診療録から後ろ向きに,術前後の眼圧,緑内障治療薬数,Humphrey視野Cmeandeviation(MD)値,MDスロープ,目標眼圧をC12mmHg以下としたC6年生存率を検討した.さらにC26眼を経過眼圧によりC2群に分け,経過中の観察時点でC2回連続して12CmmHgを超えない群を「経過眼圧C12CmmHg以下群」,12mmHgを超える群を「12CmmHg超過群」とした.このC2群間で術前後の眼圧,緑内障治療薬数,眼圧下降率,MDスロープ,視力変化を比較検討した.LETの術式を以下に示す.上方円蓋部基底結膜切開後,C3.5Cmm×3.5mmの外層強膜弁(1/3層強膜)を作製した.0.04%マイトマイシンCCをC4分塗布し生理食塩水で洗浄後,強膜床にC3.5CmmC×2.5Cmmの内層強膜弁を作製し切除,強角膜切除窓を作製し周辺虹彩切除後,強膜弁をC2.4針縫合,結膜を角膜輪部で水平縫合し閉創した.検討項目は,術前の眼圧と緑内障治療薬数,術後1,3,6,12,18,24,30,36,42,48,54,60,66,72カ月目の眼圧と緑内障治療薬数,12CmmHg以下C6年生存率,眼圧下降率,術前後のCMD値とCMDスロープ,logMAR視力とした.緑内障治療薬数は,炭酸脱水酵素阻害薬内服はC1剤,配合剤点眼はC2剤として計算し,合計点数を薬剤スコアとした.生存率における死亡の定義は,緑内障治療薬の有無にかかわらず術後C3カ月以降C2回連続する観察時点でC12CmmHgを超えた時点とした.術後のレーザー切糸とニードリングは死亡に含めず,眼圧値は処置前の値を採用した.解析方法として,術後眼圧と薬剤スコアの推移にはCone-wayanalysisofvariance(ANOVA)とCDunnettの多重比較による検定を行い,生存率についてはCKaplan-Meier法を用いて生存曲線を作成した.経過眼圧C12CmmHg以下群と超過群における患者背景の群間比較にはCt検定,Fisherの直接確立計算法を用い,群間の眼圧・薬剤スコア・眼圧下降率経過の比較にはCtwo-wayANOVAによる検定を行った.術前後CMDスロープ,logMAR視力の比較には対応のあるCt検定を用いた.有意水準はp<0.05とした.本研究はヘルシンキ宣言に基づき,診療録を用いた侵襲を伴わない後ろ向き研究のためインフォームド・コンセントはオプトアウトによって取得され,永田眼科倫理委員会の承認を得て実施した(承認番号C2021-005).CII結果表1に全症例C26眼の患者背景を示す.平均年齢はC64.8C±13.1歳,術前平均薬剤スコアC3.7C±1.0による術前平均眼圧はC21.9C±6.6CmmHg,術前平均CMD値はCHumphrey30-2でC.19.2±7.3dB,術前後観察期間はそれぞれC86.7C±77.4カ月,C63.9±12.9カ月(すべて平均C±標準偏差)であった.26眼中,眼内レンズ(intraocularlens:IOL)眼をC15眼含み,手術既往のなかった症例はC2眼であり,他は白内障もしくは緑内障手術既往眼であった.図1にC26眼の眼圧,薬剤スコア経過を示す.術C6年後の平均眼圧はC12.4C±6.8CmmHg,平均薬剤スコアはC0.8C±1.5であり,眼圧,薬剤スコアとも術後すべての観察期間で有意に減少した(p<0.01,ANOVA+Dunnett’stest).図2にCKaplan-Meier生命表解析を用いた生存曲線を示す.成功基準をC12CmmHg以下とした場合,術C6年後の生存率は46.3%であった.表2にC26眼における術前後CMDスロープ比較を示す.CHumphrey30-2(14眼)において平均CMDスロープ値は術前.1.24±1.6から術後C.0.07±0.51CdB/年,10-2(17眼)において術前.1.76±1.7から術後C.0.19±0.38CdB/年となり,術後有意にCMDスロープが改善した(p<0.05,CpairedCttest).表3にC26眼を経過眼圧によりC2群に分けたC12CmmHg以下群C15眼と超過群C11眼の患者背景を示す.術前眼圧に群間で有意差があったが,その他年齢,術前薬剤スコア,MD値,術前後観察期間,IOL眼の割合,手術歴に有意差はなかった.観察期間中にニードリングを必要とした症例の割合に2群で有意差があった.図3にC12CmmHg以下群と超過群の眼圧経過を示す.両群ともすべての観察期間で術後有意に下降し(p<0.01,表1患者背景眼数26眼年齢C64.8±13.1歳(C37.C83歳)男:女17:9術前眼圧C21.9±6.6CmmHg(1C3.C40mmHg)術前薬剤スコアC3.7±1.0(2.5)術前MD3C0-2(n)C.19.2±7.3CdB(C.0.62.C.31.94dB)(2C2眼)10-2(Cn)C.26.1±7.9CdB(C.1.15.C.33.98dB)(2C0眼)術前観察期間C86.7±77.4カ月(1C4.C263カ月)術後観察期間C63.9±12.9カ月(3C6.C72カ月)IOL:aphakia:phakia15:1:1C0眼白内障・緑内障手術歴なし2眼緑内障手術既往(重複あり)LOT21眼CLET5眼(range)(mean±SD)薬剤スコアは炭酸脱水酵素阻害薬内服をC1剤,配合剤点眼をC2剤とした.MD:meandeviation,IOL:眼内レンズ挿入眼,aphakia:無水晶体眼,phakia:有水晶体眼,LOT:トラベクロトミー,LET:トラベクレクトミー.薬剤スコア眼圧(mmHg)3020100pre1122436486072(mean±SD)6420(mean±SD)観察期間(月)眼数262626262626262626232323231915図1眼圧・薬剤スコア経過眼圧,薬剤スコアとも術後すべての観察期間で有意に減少した(*p<0.01,ANOVA+Dunnett’stest).C100ANOVA+Dunnett’stest),経過眼圧C12CmmHg以下群の経過中平均眼圧はC9.2CmmHg,超過群ではC14.2CmmHgであっC806046.3%4020001020304050607080生存期間(月)図212mmHg以下6年生存率12CmmHg以下C6年生存率はC46.3%であった.生存率(%)た.図4に薬剤スコアの経過を示す.両群ともすべての観察期間で術後有意に減少した(p<0.01,ANOVA+Dunnett’stest)が,経過には群間で差があり(p<0.001,two-wayANOVA),12CmmHg以下群は有意に経過中点眼数が少なかった.図5に眼圧下降率の経過を示す.両群の眼圧下降率に有意差はなく(p=0.13,two-wayANOVA),12CmmHg以下群の経過中平均眼圧下降率はC46.9%,超過群ではC44.0%であ表2術前後MDスロープ術前視野術後視野術前(dB/年)術後(dB/年)p値観察期間(月)観察期間(月)*C115±95C57±1530-214眼C.1.24±1.6C.0.07±0.51C0.019(8.95)(36.87)*C87±71C56±2010-217眼C.1.76±1.7C.0.19±0.38C0.0005(20.235)(15.84)*:pairedttest(meanC±SD)(range)表3患者背景(12mmHg以下群と超過群)12mmHg以下12mmHg超過p値眼数15眼11眼年齢C69.0±10.3歳C59.2±14.8歳C0.06*男:女9:78:3C0.38+術前眼圧C18.5±3.9CmmHgC26.6±6.5CmmHgC0.0005*術前薬剤スコアC3.5±0.9C4.0±1.0C0.18*術前MD3C0-2(n)C.20.1±4.7CdB(1C3dB)C.17.8±10.1CdB(9dB)C0.16*10-2(Cn)C.26.5±5.4CdB(1C3dB)C.25.4±11.2CdB(7dB)C0.82*術前観察期間C96.2±76.8カ月C73.9±80.2カ月C0.48*術後観察期間C60.4±15.8カ月C68.7±4.9カ月C0.07*IOL:aphakia:phakia9:0:6眼6:1:4眼C0.49+白内障・緑内障手術歴なし2眼0眼C0.21+緑内障手術既往(重複あり)LOT12眼8眼CLET2眼3眼ニードリング1眼7眼C0.002+*:t-test,+:Fisher’sexacttest(meanC±SD)薬剤スコアは炭酸脱水酵素阻害薬内服をC1剤,配合剤点眼をC2剤とした.MD:meandeviation,IOL:眼内レンズ挿入眼,aphakia:無水晶体眼,phakia:有水晶体眼,LOT:トラベクロトミー,LET:トラベクレクトミー.C26.6±6.53025201535+1059.9±2.90pre1361218243036424854606672(mean±SD)観察期間(月)眼圧(mmHg)12mmHg以下1515151515151515151212121210812mmHg超過1111111111111111111111111197図3眼圧経過両群とも術後有意に下降したが(*p<0.01,ANOVA+Dunnett’stest),眼圧経過には有意差があった(+p<0.001,twowayANOVA).経過眼圧C12CmmHg以下群の経過中平均眼圧はC9.2CmmHg,超過群ではC14.2CmmHgであった.65432薬剤スコア1.3±1.9+0.4±1.110観察期間(月)図4薬剤スコア経過両眼とも術後スコアは有意に減少した(*p<0.01,ANOVA+Dunnett’stest)が,経過には有意差があった(+p<0.001,twowayANOVA).C51.8±4.36050403020100眼圧下降率(%)NS1361218243036424854606672(mean±SE)観察期間(月)図5眼圧下降率経過両群の眼圧下降率に有意差はなく(p=0.13,twowayANOVA),12CmmHg以下群の経過中平均眼圧下降率はC46.9%,超過群ではC44.0%であった.った.図6に術前後CMDスロープの散布図と平均値比較を示す.CHumphrey30-2(図6a)において,平均CMDスロープ値は12mmHg以下群で術前C.1.03±1.10から術後C.0.03±0.47dB/年に有意に改善した(p=0.04,pairedCttest)が,超過群では術後統計的に有意な改善がなかった(p=0.11,pairedttest).術前後の視野観察期間に群間で有意差はなかった(術前,術後それぞれCp=0.19,0.38,ttest).Humphrey10-2(図6b)において,12CmmHg以下群,超過群とも術後有意にCMDスロープが改善した(それぞれCp=0.003,0.002,CpairedCttest).術前後の視野観察期間に群間で有意差はなかった(術前,術後それぞれCp=0.98,0.54,ttest).図7に術前後ClogMAR視力の散布図と平均値比較を示す.12CmmHg以下群では術前後でClogMAR視力値に有意差があり(p=0.04,pairedCttest),術後視力低下傾向であった.超過群では術前後で有意差がなかった(p=0.31,pairedCttest).白内障進行による視力低下例を各群にC1眼ずつ認めた.両群の術後観察期間に有意差はなかった(p=0.17,ttest).12CmmHg以下群においてClogMAR値の差がC0.2より大きく悪化を示した症例は,術前強度近視眼(術前CHum-phrey10-2:C.31.32CdB,経過中平均眼圧:8.8CmmHg),術前中心視野障害例C2例(術前CHumphrey10-2:それぞれC.29.89CdB,C.30.31dB,経過中平均眼圧:それぞれC10.9mmHg,8.4CmmHg),または術後低眼圧黄斑症(経過中平均眼圧:7.1mmHg)であった.CIII考按POAGに対するCLET後の視野進行抑制効果について経過a:30-222術後MDslope(dB/年)術前(dBC/年)術後(dBC/年)p値術前視野観察期間(月)術後視野観察期間(月)12CmmHg以下群6眼C.1.03±1.10C.0.03±0.47C0.04*C154±92(50.2C63)C53±15(36.73)12CmmHg超過群8眼C.1.40±2.03C.0.10±0.57C0.11*C87±91(8.2C13)C60±16(36.87)*:pairedttest(meanC±SD)(range)b:10-22術後MDslope(dB/年)術前視野術後視野術前(dB/年)術後(dB/年)p値観察期間(月)観察期間(月)0.003*C86±69C53±2112CmmHg以下群11眼C.2.26±1.87C.0.25±0.33(20.234)(15.80)C0.002*C87±79C56±1912mmHg超過群6眼C.0.85±0.39C.0.07±0.47(22.235)(40.84)*:pairedttest(meanC±SD)(range)図6術前後MDスロープa:Humphrey30-2において,12CmmHg以下群では術後有意にCMDスロープが改善したが,超過群では統計的有意な改善がなかった.b:Humphrey10-2において,12CmmHg以下群,超過群とも術後有意にCMDスロープが改善した.術前logMAR視力術前術後p値術後視野観察期間(月)12CmmHg以下群C0.18±0.3C0.37±0.5C0.04*C54±1912CmmHg超過群C0.52±0.6C0.58±0.6C0.31*C64±16*:pairedttest(meanC±SD)(mean±SD)図7術前後logMAR視力12CmmHg以下群では術前後でClogMAR視力値に有意差があった.白内障進行による視力低下例(丸で囲む)を各群にC1眼ずつ認めた.眼圧C12CmmHg以下群と超過群で後ろ向きに比較検討した.今回対象となった症例群C26眼全体では,平均眼圧は術前C21.9±6.6CmmHgからC6年後にC12.4C±6.8CmmHgと有意に下降し,12CmmHg以下C6年生存率はC46.3%,術前後CMDスロープ比較ではCHumphrey30-2で術前C.1.24±1.6dB/年から術後.0.07±0.51CdB/年と術後有意なCMDスロープの改善があり,これらは既報1.5)の術後成績と同等であった.しかし,経過眼圧C12CmmHg以下群C15眼と超過群C11眼で視野進行抑制効果を比較検討すると,12CmmHg以下群(経過中平均眼圧C9.4CmmHg)ではCHumphrey30-2,10-2とも術後有意なMDスロープの改善があったのに対し,超過群(経過中平均眼圧C14.2CmmHg)では,Humphrey30-2で術後有意なCMDスロープの改善がなかった.開放隅角緑内障に対する眼圧管理の重要性を示した多施設共同臨床試験の一つCAdvancedCGlaucomaCInterventionCStudy6)では,進行した開放隅角緑内障に対する治療後非進行群の平均眼圧はC12.3CmmHg,進行群の平均眼圧はC14.7CmmHgもしくはそれ以上であったと報告されている.今回の研究では経過眼圧C12CmmHg以下群で術後CHumphrey30-2の変化がC.0.03±0.47CdB/年とほぼ非進行であり,経過眼圧C12CmmHg超過群では術後CMDスロープの有意な改善が得られなかったことから,今回の結果はこれと矛盾しないものと考えられた.一方CHumphrey10-2においては,経過眼圧C12CmmHg以下群も超過群も術後中心視野が維持された結果となった.中心視野,とくに耳側傍中心視野は緑内障性視野障害が進行しても保たれやすいという報告2,7,8)があり,これは視神経乳頭や乳頭黄斑線維束,黄斑部の組織的構造的特徴によるものである可能性もあるが,今回の検討は中期経過による結果のため長期経過の検討が必要と考える.今回の症例群には緑内障手術・白内障手術既往眼を含み,視野進行抑制効果の評価方法として術前後のCMDスロープを使ったトレンド解析で比較したが,既報6)と矛盾のない結果が得られた.これらのことから,進行したPOAGではC12CmmHg以下の眼圧を目標として治療することが望ましいことが示されたと考える.術後視力変化の比較では,経過眼圧C12CmmHg以下群は超過群に比較し,低下傾向であった.LET後の視力低下に関する報告は少なくない.海外の報告9.11)では術後視力低下症例は術前中心視野障害例や合併症症例であったと報告されている.わが国の全国濾過胞感染調査のデータを用いたKashiwagiら12)の報告でも,術前の視野障害末期例や術後合併症発症例が視力低下と関連するとされている.LET後の視力変化について病型別に評価した庄司13)の報告でも,POAGにおいてCLET後視力不良例は術前の視機能(Hum-phrey10-2のCMD値)が低く,術後脈絡膜.離の割合が高かったと報告されている.今回の研究では術前中心視野障害例や術後低眼圧遷延症例で術後視力低下傾向を認めたことから,これは既報9.13)と矛盾のない結果と考えられた.一方経過眼圧C12CmmHg超過群で術後統計的に有意な視力低下を認めなかったことについて,信頼性のある視野検査結果が施行可能であった症例群ではあるもの,術前からClogMAR値C1.0を超える視力障害例を含むため,術後視力低下の評価に反映されにくかった可能性もあると考えられた.今回の症例群では,経過眼圧C12CmmHg以下群と比較し超過群で術前眼圧が有意に高く,術後ニードリングを必要とした症例の割合が有意に高かったが,わが国の全国濾過胞感染調査のデータを用いたCSugimotoら14)の報告において,ニードリングと術前高眼圧は濾過手術の不成功因子であると報告され,これと矛盾のない結果と考えられた.経過中の晩期合併症として,経過眼圧C12CmmHg以下群に濾過胞からの房水漏出をC2眼に認めたが,濾過胞感染はなく結膜縫合のみ施行した.本研究にはいくつかの限界がある.本研究は後ろ向き研究であり,その性質上結果の解釈には注意を要する.術式選択の適応,術後眼圧下降効果不十分症例に対する追加点眼や追加手術介入の適応と時期は,病期に基づく主治医の判断によるものであり,評価判定は事前に統一されていない.また,対象が少数例で術後中期経過であることから,今後多数例,長期での検討が必要であると考える.今回の研究でCMDスロープ比較は術前後にCHumphrey視野検査C30-2がC3回以上測定できた症例ついて検討したが,当院における初回視野検査結果を含むことから,術前CMDスロープの結果に学習効果の影響があり,視野進行判定にはC5回の視野測定が必要であるとの報告15)があり,視野進行判定が不十分であった可能性がある.また,術後視力変化の検討において,LET後の視力低下には術前CHumphrey視野C10-2の中心窩閾値が関連することが報告13)されており,今回の研究では未測定であったことから今後の検討項目にする必要があると考える.今回の検討の結果,POAGに対するCLET後の中期経過において,経過眼圧C12CmHg以下群では超過群に比較し術後MDスロープの有意な改善を認め,進行したCPOAGに対する術後目標眼圧はC12CmmHg以下が望ましいことが示唆された.また,視野進行抑制効果の一方で,術前中心視野障害の強い症例や術後低眼圧遷延症例では術後視力低下傾向があることが示された.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)BertrandCV,CFieuwsCS,CStalmansCICetal:RatesCofCvisualC.eldClossCbeforeCandCafterCtrabeculectomy.CActaCOphthal-molC92:116-120,C20142)ShigeedaCT,CTomidokoroCA,CAraieCMCetal:Long-termCfollow-upCofCvisualC.eldCprogressionCafterCtrabeculectomyCinCprogressiveCnormal-tensionCglaucoma.COphthalmologyC109:766-770,C20023)CaprioliJ,DeLeonJM,AzarbodPetal:TrabeculectomycanCimproveClong-termCvisualCfunctionCinCglaucoma.COph-thalmologyC123:117-128,C20164)JunoyCMontolioCFG,CMuskensCRPHM,CJansoniusNM:CIn.uenceofglaucomasurgeryonvisualfunction:aclini-calcohortstudyandmeta-analysis.ActaOphthalmolC97:C193-199,C20195)FujitaCA,CSakataCR,CUedaCKCetal:EvaluationCofCfornix-basedCtrabeculectomyCoutcomesCinCJapaneseCglaucomaCpatientsCbasedConCconcreteClong-termCpreoperativeCdata.CJpnJOphthalmolC65:306-312,C20216)TheCAdvancedCGlaucomaCInterventionStudy(AGIS):7.CTheCrelationshipCbetweenCcontrolCofCintraocularCpressureCandvisual.elddeterioration.TheAGISInvestigators.AmJOphthalmolC130:429-440,C20007)WeberCJ,CSchultzeCT,CUlrichH:TheCvisualC.eldCinCadvancedglaucoma.IntOphthalmolC13:47-50,C19898)HoodCDC,CRazaCAS,CdeCMoraesCCGCetal:GlaucomatousCdamageCofCtheCmacula.CProgCRetinCEyeCResC32:1-21,C20139)SteadCRE,CKingAJ:OutcomesCofCtrabeculectomyCwithCmitomycinCCCinCpatientsCwithCadvancedCglaucoma.CBrJOphthalmolC95:960-965,C201110)LawCSK,CNguyenCAM,CColemanCALCetal:SevereClossCofCcentralvisioninpatientswithadvancedglaucomaunder-goingCtrabeculectomy.CArchCOphthalmolC125:1044-1050,C200711)FrancisCBA,CHongCB,CWinarkoCJCetal:VisionClossCandCrecoveryCafterCtrabeculectomy.CArchCOphthalmolC129:C1011-1017,C201112)KashiwagiK,KogureS,MabuchiFetal:Changeinvisu-alacuityandassociatedriskfactorsaftertrabeculectomywithCadjunctiveCmitomycinCC.CActaCOphthalmolC94:Ce561-e570,C201613)庄司信行:緑内障手術で視力を守るために.あたらしい眼科39:1036-1076,C202214)SugimotoCY,CMochizukiCH,COhkuboCSCetal:IntraocularCpressureCoutcomesCandCriskCfactorsCforCfailureCinCtheCCol-laborativeBleb-relatedInfectionIncidenceandTreatmentCStudy.OphthalmologyC122:2223-2233,C201515)ChauhanCBC,CGarway-HeahtCDF,CGoniCFJCetal:PracticalCrecommendationsformeasuringratesofvisualchangeinglaucoma.BrJOphthalmolC92:569-573,C2008***

ラタノプロスト,カルテオロール併用からラタノプロスト/ カルテオロール配合点眼薬への変更3 年間の調査

2023年7月31日 月曜日

《第33回日本緑内障学会原著》あたらしい眼科40(7):946.949,2023cラタノプロスト,カルテオロール併用からラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬への変更3年間の調査坂田苑子*1井上賢治*1塩川美菜子*1國松志保*2石田恭子*3富田剛司*1,3*1井上眼科病院*2西葛西・井上眼科病院*3東邦大学医療センター大橋病院眼科CThree-YearSafetyandE.cacyofSwitchingtoLatanoprost/CarteololFixedCombinationfromConcomitantuseSonokoSakata1),KenjiInoue1),MinakoShiokawa1),ShihoKunimatsu-Sanuki2),KyokoIshida3)andGojiTomita1,3)1)InouyeEyeHospital,2)NishikasaiInouyeEyeHospital,3)DepartmentofOphthalmology,TohoUniversityOhashiMedicalCenterC目的:ラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬(LCFC)のC3年間の効果と安全性を後向きに検討した.対象および方法:ラタノプロストとカルテオロール中止後CLCFCに変更した原発開放隅角緑内障,高眼圧症C43例を対象とした.変更前と変更後C6カ月ごとの眼圧とC12カ月ごとの視野をC3年間評価した.中止例を調査した.結果:眼圧は変更12カ月後C14.7±1.9CmmHg,24カ月後C14.5±2.3CmmHg,36カ月後C13.8±2.7CmmHgで,変更前C15.0±2.6CmmHgと同等だった.Humphrey30-2視野CMD値は変更C36カ月後(.7.22±4.37CdB)のみ変更前(.6.95±4.58CdB)に比べて進行した.中止例はC14例(32.6%)で,副作用C5例(結膜炎C2例,結膜充血,異物感,眼瞼炎各C1例)などだった.結論:併用からCLCFCへの変更後C3年間で眼圧に有意な差は認めず,安全性はおおむね良好だった.CPurpose:ToCretrospectivelyCinvestigateCtheCsafetyCandCe.cacyCofClatanoprost/carteololC.xedCcombination(LCFC)administeredovera3-yearperiod.PatientsandMethods:Thisretrospectivestudyinvolved43patientswithprimaryopen-angleglaucomaorocularhypertensionwhoswitchedtoLCFCfromtheconcomitanttherapyoflatanoprostCandCcarteolol.CIntraocularpressure(IOP)andCvisual.eld(VF)wereCevaluatedCatCbaselineCandCforC3CyearsCpostswitch(i.e.,CIOPCatCbaselineCandCeveryC6months;VFCatCbaselineCandCeveryC12months).CDropoutCpatientsCwereCinvestigated.CResults:AtCbaselineCandCatC12,C24,CandC36CmonthsCpostCswitch,CIOPCwasC15.0±2.6CmmHg,C14.7±1.9CmmHg,C14.5±2.3CmmHg,CandC13.8±2.7CmmHg,Crespectively,CthusCillustratingCnoCsigni.cantCdi.erenceCinCIOPCpostCswitchCfromCthatCatCbaseline.CTheCVFCmeanCdeviationvalue(Humphrey30-2)progressedConlyCafter36-months(.7.22±4.37CdB)comparedCwithCthatCatbaseline(.6.95±4.58CdB).COfCtheC43Cpatients,C14(32.6%)droppedout,andadversereactionsoccurredin5ofthedropoutpatients(conjunctivitisin2patients,andconjunctivalChyperemia,CforeignCbodyCsensation,CandCblepharitisCinC1Cpatienteach).CConclusions:ThereCwasCnoCsigni.cantCchangeCinCIOPCatC3CyearsCafterCswitchingCfromCconcomitantCtherapyCtoCLCFC,CandCtheCsafetyCofCusingCLCFCwasfoundtobesatisfactory.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)40(7):946.949,C2023〕Keywords:ラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬,眼圧,副作用,視野障害,長期.latanoprost/carteolol.xedcombination,intraocularpressure,adversereaction,visual.elddefects,long-term.Cはじめに緑内障診療ガイドライン第C5版では,緑内障点眼薬治療において目標眼圧に達していない場合は点眼薬の変更あるいは追加することが推奨されている1).点眼薬の追加を繰り返すと,多剤を併用することになる.多剤併用患者では,点眼薬数が増加するに従ってアドヒアランスが低下することが報告されている2)ので,アドヒアランスを考慮する必要がある.アドヒアランス向上をめざして配合点眼薬が開発された.ラタノプロスト点眼薬と持続性カルテオロール点眼薬を含有するラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬が,2017年C1〔別刷請求先〕坂田苑子:〒101-0062東京都千代田区神田駿河台C4-3井上眼科病院Reprintrequests:SonokoSakata,M.D.,InouyeEyeHospital,4-3Kanda-SurugadaiChiyoda-kuTokyo101-0062,JAPANC946(98)月より使用可能となった.そこで筆者らは,ラタノプロスト点眼薬と持続性カルテオロール点眼薬を併用使用している患者で,両点眼薬を中止してラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬へ変更した際のC3カ月間3),1年間4)の眼圧下降効果と安全性について報告した.これらの報告でラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬の良好な眼圧下降効果,高い安全性,患者のアドヒアランスの向上が示された.しかし,緑内障点眼薬治療は長期にわたるため,長期的な効果と安全性の検討が必要である.そこで,今回これらの報告3,4)と同じ患者を対象としてラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬のC3年間の眼圧下降効果,視野への影響,安全性を後ろ向きに検討した.CI対象および方法2017年C1.9月に井上眼科病院に通院中の外来患者で,ラタノプロスト点眼薬(キサラタン,ファイザー)(夜C1回点眼)と持続性カルテオロール点眼薬(ミケランCLA,大塚製薬)(朝C1回点眼)をC1カ月間以上併用治療している原発開放隅角緑内障と高眼圧症患者を対象とした.炭酸脱水酵素阻害薬,a1遮断薬,Ca2作動薬,ROCK阻害薬の併用も可能とするが,点眼薬変更前からC1カ月間以上同一薬剤で治療中の場合に限定した.ラタノプロスト点眼薬と持続性カルテオロール点眼薬を中止し,washout期間なしでラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬(ミケルナ,大塚製薬)(朝C1回点眼)に変更した.使用中のほかの点眼薬は継続とした.眼圧の変化,視野への影響,有害事象を評価した.眼圧に関しては,変更前と変更C6,12,18,24,30,36カ月後のGoldmann平眼圧計で測定した眼圧を調査し比較した.変更36カ月後の眼圧変化量を調査した.具体的には変更C36カ月後の眼圧が変更前と比べてC2CmmHg以上下降,2CmmHg未満の変化,2CmmHg以上上昇のC3群に分けた.視野への影響は,変更前と変更C12,24,36カ月後に施行したCHumphrey視野検査プログラム中心C30-2CSITAStandardのCmeandeviation(MD)値を調査し比較した.自動視野計データファイリングシステムCBeeFilesを使用し,変更前から変更C36カ月後までの視野のCMDスロープを算出し,進行の有無を内蔵ソフトで判定した.変更C36カ月後までの副作用,投与中止例を調査した.統計学的解析はC1例C1眼で行った.両眼該当症例は投与前眼圧の高い眼,眼圧が同値の場合は右眼,片眼該当症例は患眼を解析に用いた.変更前と変更C6,12,18,24,30,36カ月後の眼圧,変更前と変更C12,24,36カ月後のCMD値の比較にはCANOVA,BonferroniCandDunn検定を用いた.統計学的検討における有意水準は,BonferroniandDunn検定において補正を行ったため眼圧の比較はCp<0.0024,MD値の比較はp<0.0083とした.本研究は井上眼科病院倫理審査委員会で承認された.研究情報を院内掲示などで通知・公開し,研究対象者などが拒否できる機会を保証した.CII結果対象はC43例C43眼で,性別は男性C21例,女性C22例,年齢はC67.9C±11.1歳(平均値C±標準偏差),38.90歳だった.病型は原発開放隅角緑内障(狭義)25例,正常眼圧緑内障17例,高眼圧症C1例だった.使用点眼薬数はC2.5C±0.7剤,2.4剤だった(表1).MD値はC.6.95±4.58CdB,C.16.53.+0.75CdBだった.眼圧は変更C6カ月後C14.7C±2.2mmHg,12カ月後C14.7C±1.9mmHg,18カ月後C14.4C±2.5CmmHg,24カ月後C14.5C±2.3mmHg,30カ月後C13.8C±2.3CmmHg,36カ月後C13.8C±2.7mmHgで,変更前C15.0C±2.6CmmHgと統計学的に有意な差を認めなかった(図1).変更C36カ月後の眼圧変化量は,変更前と比べてC2CmmHg以上下降C11例(38.0%),2CmmHg未満C15例(51.7%),2mmHg以上上昇C3例(10.3%)だった(図2).MD値は変更C12カ月後C.7.12±4.05CdB,24カ月後C.7.20C±4.37CdB,36カ月後C.7.22±4.37dBで,変更前C.6.95±4.58CdBと比べてC36カ月後のみが有意に進行していた(p=0.0004)(表2).変更C36カ月後までのCMDスロープが得られた症例はC21例で,MDスロープが有意に悪化していたのはC4例(19.0%)だった.副作用はC5例(11.6%)で出現し,内訳は変更C5日後に異物感,変更C3カ月後に眼瞼炎,変更C6カ月後に結膜充血,変更C14カ月後に結膜炎,変更C32カ月後に結膜炎の各C1例だった.投与中止例はC14例(32.6%)で,内訳は副作用C5例,転医C3例(変更C12カ月後,変更C27カ月後,変更C32カ月後),眼圧上昇C2例(変更前C16CmmHgが変更C3カ月後C22CmmHg,変更前C18CmmHgが変更C19カ月後C21CmmHg),白内障手術施行C2例(変更C19カ月後,変更C22カ月後),来院中断C1例(変更C29カ月後),被験者都合C1例(変更C9日後)だった.副作用が出現した症例では,異物感と結膜充血の症例はラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬を中止し,ラタノプロスト点眼薬と持続性カルテオロール点眼薬に戻したところ症状は消失した.眼瞼炎の症例は,ラタノプロスト点眼薬のみに変更したところ症状は消失した.結膜炎の症例は,2例ともラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬を中止したところ症状は消失した.そのうちのC1例は眼圧が上昇したため,その後ラタノプロスト点眼薬と持続性カルテオロール点眼薬を併用使用した.変更C3カ月後に眼圧が上昇した症例では,ラタノプロスト点眼薬と持続性カルテオロール点眼薬に戻したところ眼圧はC14CmmHgに下降した.変更C19カ月後に眼圧が上昇した症例では,リパスジル点眼薬を追加したと表1対象の使用薬剤薬剤数使用薬剤症例数C2ラタノプロスト+カルテオロールC25Cラタノプロスト+カルテオロール+ブリンゾラミドC73ラタノプロスト+カルテオロール+ブリモニジンCラタノプロスト+カルテオロール+ドルゾラミドC32ラタノプロスト+カルテオロール+ブナゾシンC1Cラタノプロスト+カルテオロール+ブリンゾラミド+ブリモニジンC24ラタノプロスト+カルテオロール+ブリンゾラミド+ブナゾシンC3CmmHg20181614121086420n=39変更前変更6カ月後表2変更前後のMD値MD値(dB)変更前(n=31)C.6.95±4.58変更C12カ月後(n=22)C.7.12±4.05変更C24カ月後(n=23)C.7.20±4.37変更C36カ月後(n=21)C.7.22±4.37BonferroniandDunn検定,*p<0.0083ころ眼圧はC15CmmHgに下降した.CIII考按(文献C3より作成)CNSn=3814.4±2.5n=3313.8±2.3n=3613.8±2.7n=31n=29変更変更変更変更変更12カ月後18カ月後24カ月後30カ月後36カ月後図1変更前後の眼圧BonferroniandDunn検定.2mmHg以上上昇(3例,10.3%)*図2変更36カ月後の眼圧変化量今回ラタノプロスト点眼薬と持続性カルテオロール点眼薬を中止して,ラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬へ変更したところ,36カ月間にわたり眼圧は変更前と比べて統計学的有意差はなく,安定した値であった.良田らはプロスタグランジン関連点眼薬とCb遮断点眼薬を中止して,ラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬へ変更したところ,眼圧は変更前(13.8C±1.3mmHg)と変更C3カ月後(13.7C±2.4CmmHg)で同等だったと報告した5).今回の調査では,変更前後の薬剤成分が同一であることが眼圧の維持に寄与したと考えられる.しかし,変更により眼圧が上昇し,ラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬が中止となった症例もC2例存在したので,変更後の注意深い経過観察が必要である.今回の変更と同様の組み合わせによる長期的な効果と安全性の報告はない.筆者らはラタノプロスト点眼薬とチモロール点眼薬を中止して,ラタノプロスト/チモロール配合点眼薬に変更した症例のC3年間の効果と安全性を報告した6).変更前後の眼圧は変更前と変更C6,12,18,24,30カ月後は同等で,変更C36カ月後は変更前に比べて有意に下降していた.変更C36カ月後の眼圧を変更前と比べるとC2CmmHg以上下降C13%,2CmmHg未満C77%,2CmmHg以上上昇C10%だった.今回も変更C36カ月後の眼圧を同様に比較するとC2mmHg以上下降C38.0%,2CmmHg未満C51.7%,2CmmHg以上上昇C10.3%だった.眼圧が上昇したり下降したりする症例もあり,変更後も眼圧の推移には注意を要する.今回の症例での変更前後のCMD値の比較では,変更前と変更C12,24カ月後は同等だったが,36カ月後には有意に進行していた.CollaborativeCNormalCTensionCGlaucomaStudy(CNTGS)においても,治療により眼圧下降C30%を達成していてもC3年間で約C20%の症例で視野障害が進行している7).そのため変更C36カ月後のCMD値の進行は今回の点眼薬の変更が原因ではないと考えられる.今回のC36カ月間の検討でもC19.0%の症例でCMDスロープが有意に悪化していた.長期的な経過観察におけるCMD値の進行はある程度は仕方がないと考える.しかし,今回の症例では,ラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬に変更後に視野障害進行により中止となった症例はなく,臨床的には視野への影響はおおむね良好である.投与中止例は今回はC32.6%だった.ラタノプロスト/チモロール配合点眼薬への変更の報告6)での投与中止例はC38.3%で,ラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬とラタノプロスト/チモロール配合点眼薬はほぼ同等の安全性を有すると考えられる.今回の症例での副作用は異物感,眼瞼炎,結膜充血,結膜炎で,ラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬の特定使用成績調査の中間解析結果8)に報告されている副作用と類似していた.また,今回の副作用はいずれも重篤ではなく,ラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬の中止により症状が速やかに消失したので,安全性は良好であると考えられる.しかし,変更C12カ月後以降にも結膜炎がC2例出現しており,長期に使用してから副作用が出現する可能性もある.長期的に慎重に経過観察を行う必要がある.ラタノプロスト点眼薬と持続性カルテオロール点眼薬をラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬に変更後のC36カ月間の経過を後ろ向きに調査した.眼圧はC36カ月間にわたり安定し,安全性はおおむね良好だった.このような点眼薬の変更は副作用が出現しないかぎりアドヒアランスの面からも有効で,推奨できる.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)日本緑内障学会緑内障診療ガイドライン改訂委員会:緑内障診療ガイドライン(第C5版).日眼会誌C126:85-177,C20222)DjafariCF,CLeskCMR,CHayasymowyczCPJCetal:Determi-nantsCofCadherenceCtoCglaucomaCmedicalCtherapyCinCaClong-termCpatientCpopulation.CJCGlaucomaC18:238-243,C20093)InoueK,ShiokawaM,IwasaMetal:Short-terme.cacyandCsafetyCofCaClatanoprost/carteololC.xedCcombinationCswitchedCfromCconcomitantCtherapyCtoCinCpatientsCwithCprimaryCopen-angleCglaucomaCorCocularChypertention.CJGlaucomaC27:1175-1180,C20184)正井智子,井上賢治,塩川美菜子ほか:ラタノプロスト+カルテオロールからラタノプロスト/カルテオロール配合点眼薬への変更による長期投与.あたらしい眼科C36:804-809,C20195)良田浩氣,安樂礼子,石田恭子ほか:カルテオロール/ラタノプロスト配合点眼液の眼圧下降効果の検討.あたらしい眼科C36:1083-1086,C20196)InoueK,OkayamaR,HigaRetal:E.cacyandsafetyofswitchingCtoClatanoprost0.005%-timololCmaleate0.5%C.xed-combinationCeyedropsCfromCanCun.xedCcombinationCfor36months.ClinOphthalmolC8:1275-1279,C20147)CollaborativeCNormal-TensionCGlaucomaStudyCGroup:CThee.ectivenessofintraocularpressurereductioninthetreatmentofnormal-tensionglaucoma.AmJOphthalmolC126:498-505,C19988)山本哲也,真鍋寛,冨島さやかほか:カルテオロール塩酸塩/ラタノプロスト配合点眼液(ミケルナ配合点眼液)の使用実態下における安全性と有効性特定使用成績調査の中間解析結果.臨眼C75:449-461,C2021***

線維柱帯切開術眼外法と眼内法の術後成績比較 西

2023年5月31日 水曜日

《原著》あたらしい眼科40(5):693.696,2023c線維柱帯切開術眼外法と眼内法の術後成績比較西田崇下川翔太郎藤原康太小栁俊人村上祐介園田康平九州大学大学院医学研究院眼科学分野CComparisonofPostoperativeOutcomesbetweenTrabeculotomyAbExternoCandAbInternoCTakashiNishida,ShotaroShimokawa,KohtaFujiwara,YoshitoKoyanagi,YusukeMurakamiandKoh-HeiSonodaCDepartmentofOphthalmology,GraduateSchoolofMedicalSciences,KyushuUniversityC目的:線維柱帯切開術眼外法(LOT-ext)とマイクロフックを用いた眼内法(LOT-int)の術後C2年間の成績を比較した.対象および方法:2017年C1月.2018年C12月に九州大学病院においてCLOT-extおよびCLOT-intを白内障手術と同時に行った患者を後ろ向きに抽出し,術後C1年以上経過観察できたC39例C39眼(LOT-ext:20眼,LOT-int:19眼)を対象とした.術後C6,12,18,24カ月時点での術後眼圧値,および術後合併症の有無について両術式間で比較した.結果:術後の平均眼圧下降値および平均眼圧下降率は術式間で差はなかった.また,生存時間分析でも術後眼圧値は術式間で差はなかった.術後合併症は,LOT-extでニボーを伴う前房出血(p=0.001)および術後C1カ月以内の眼圧スパイクが有意に多かった(p=0.002).結論:LOT-extとCLOT-intの眼圧下降効果に違いはなかった.LOT-extは術後前房出血の頻度および術後眼圧スパイクがCLOT-intより多くみられ,術後管理により注意を要する.CPurpose:ToCcompareCtheCpostoperativeCoutcomesCbetweentrabeculotomy(LOT)abexterno(LOT-ext)andCLOTabinternoCusingamicrohook(μLOT-int).CSubjectsandMethods:Weretrospectivelyinvestigated39eyesof39patientswhounderwentLOT-extCorμLOT-intCwithcataractsurgeryatKyushuUniversityHospitalfromJanu-ary2017toDecember2018andwhowerefollowedupformorethan1-yearpostoperative.At6-,12-,18-,and24-monthsCpostoperative,Cintraocularpressure(IOP)andCsurgery-relatedCcomplicationsCwereCcomparedCbetweenCthetwomethods.Results:Our.ndingsrevealednodi.erenceinpostoperativeIOPbetweenthetwotechniques,yetCpostoperativeCcomplicationsCwereCsigni.cantlyChigherCinCLOT-extCwithCanteriorCchamberChemorrhageCwithniveau(p=0.001)andCIOPCspikesCwithinC1-monthpostoperative(p=0.002)C.CConclusions:OurC.ndingsCrevealedCnodi.erenceinIOPreductionbetweenLOT-extCandμLOT-int,yetLOT-extChadahigherfrequencyofpostopera-tiveanteriorchamberhemorrhagewithneveauandpostoperativeIOPspikesthanLOT-int,thusrequiringmoreattentioninpostoperativemanagement.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C40(5):693.696,C2023〕Keywords:緑内障,線維柱帯切開術,眼内法,眼外法,眼圧,術後合併症.glaucoma,trabeculotomy,abinterno,abexterno,IOP,postoperativecomplications.Cはじめに線維柱帯切開術眼外法(trabeculotomyCabexterno:LOT-ext)は,1960年にCSmithによって初めて報告された1).LOT-extは線維柱帯切除術(trabeculectomy:LEC)と比較すると眼圧下降は劣るが術後合併症は少なく,初期.中期緑内障のよい手術適応として,とくにわが国で多く行われている2).隅角異常を伴う小児緑内障や角膜混濁を伴う症例では隅角観察,線維柱帯の同定が困難であるため,LOT-extが必要である.一方,近年,結膜切開を行わないCLOTとして,マイクロフックやCiStentを用いた線維柱帯切開法眼内法(trabeculotomyCabinterno:LOT-int)などの低侵襲緑内障手術(minimallyCinvasiveCglaucomasurgery:MIGS)が報告されており3,4),LOT-extに比べて手技が簡便であることからCLOT-intが選択されるケースが近年増加している.しかし,両者の術式選択に際する明確な基準はなく,LOT-extとCLOT-intの手術成績を比較した報告は少ない5).そこで,筆者らは九州大学病院におけるCLOT-extとCLOT-intの手術成績を後ろ向きに比較した.〔別刷請求先〕村上祐介:〒812-8582福岡市東区馬出C3-1-1九州大学大学院医学研究院眼科学分野Reprintrequests:YusukeMurakami,M.D.,Ph.D.,DepartmentofOphthalmology,GraduateSchoolofMedicalSciences,KyushuUniversity,3-1-1Maidashi,Higashi-ku,Fukuoka812-8582,JAPANCI対象および方法本研究はヘルシンキ宣言の理念に従い行われ,九州大学医系地区部局臨床研究倫理審査委員会の承認を得て実施した(2019-056).2017年C1月.2018年C12月に九州大学病院において,白内障手術とCLOT-extもしくは谷戸氏マイクロフックを用いたCLOT-intを併用して行った患者について後ろ向きにカルテ情報を取得し,手術後C1年以上の経過観察が可能であったものを対象とした.同一患者で両眼ともCLOTを行っている場合は先に手術を行った眼を対象とした.術式の選択には明確な基準はなく,患者ごとに各術者の判断で決定した.LOT-extはおもに緑内障専門医が選択しており,LOT-intは緑内障非専門医がより積極的に選択している傾向があった.LOT-extは,白内障手術後に円蓋部基底の結膜切開(6-8時)後に,4C×3Cmmの強膜四角フラップ・3C×3Cmmの内側フラップを作製し,線維柱帯を露出させた.トラベクロトームを2方向に挿入し,線維柱帯を約C120°切開した.LOT-intは,白内障手術を角膜切開で行ったあとに隅角鏡で線維柱帯を確認し,角膜切開創またはサイドポートより谷戸氏マイクロフックを挿入し,鼻側.上方および鼻側.下方の線維柱帯を計C120.180°切開した.術後成績の検討項目は術後眼圧を用いた.術後C6,12,18,24カ月における両術式の眼圧下降値,眼圧下降率について比較した.術後C18,24カ月時点では追跡可能であった患者を対象とし,再手術を行った症例は再手術を行う時点までを対象とし再手術以降は対象から除いた.また,Kaplan-Meier法を用いて生存時間分析を行った.術後の眼圧値によりC3段階の基準を設け(基準1:21mmHg未満,基準C2:18mmHg未満,基準C3:15mmHg未満)を設け,術後C6,12,18,24カ月時点で基準以上になった時点を死亡と定義した.また,追加手術を行った場合も死亡と定義した.Logrank検定を行い術式間に生存率の差があるかを検討した.眼圧測定は非接触式眼圧計の測定結果を用いた.緑内障点眼数は配合薬の点眼はC2本,炭酸脱水酵素阻害薬を内服している場合は点眼スコアC1としてカウントした.また,術後合併症については既報5)を参考にニボーを形成する前房出血の有無,眼圧スパイク(術後C1カ月以内の眼圧C30CmmHg以上)の有無,2段階以上の視力低下の有無,低眼圧(術後眼圧C4mmHg以下)の有無,術後の緑内障再手術の有無についてデータを取得した.LOT-extとCLOT-int群間の患者背景,平均術後眼圧下降値・平均眼圧下降率の比較,および術後合併症の比較には,Wlicoxonの順位和検定またCFisherの正確検定を用いた.II結果LOT-extはC19症例,LOT-intはC20症例であった.手術時の平均年齢はCLOT-extでC69.5歳,LOT-intでC68.4歳で両群間に差はなかった.両術式間で性別,術前眼圧,術前視力,術前緑内障点眼数,術前CMD値,緑内障病型の割合に有意差は認めなかった(表1).術後眼圧下降値の平均値±標準偏差は術後6,12,18,24カ月時点においてCLOT-extでC.2.2±3.7CmmHg,C.3.2±4.9mmHg,C.3.6±4.7CmmHg,C.3.5±4.3CmmHg,LOT-intでC.3.5±6.2CmmHg,C.3.7±4.9CmmHg,C.5.7±8.1CmmHg,C.5.0±4.5CmmHgであった.各時点において両術式間で眼圧下降値に有意差を認めなかった(図1a).術後眼圧下降率の平均値±標準偏差は術後C6,12,18,24カ月時点においてCLOT-extでC10.2C±22.6%,14.3C±27.6%,17.5C±20.9%,C17.4±17.6%,LOT-intでC14.6C±28.5%,19.6C±22.3%,C27.2±29.0%,24.2C±18.6%であった.眼圧下降率においても各時点において両術式間で眼圧下降値に有意差を認めなかった(図1b).術後眼圧値による死亡の定義を眼圧C21CmmHg以上,18mmHg以上,15CmmHg以上として生存時間分析を行った(図2).眼圧C21CmmHg以上を死亡と定義した場合,平均生存期間±標準誤差はCLOT-extでC1.9C±0.08年,LOT-intで1.9年C±0.06年であった.眼圧C18CmmHg以上を死亡と定義した場合,平均生存期間±標準誤差はCLOT-extでC1.8C±0.09年,LOT-intでC1.9年C±0.06年であった.眼圧C15CmmHg以上を死亡と定義した場合,平均生存期間±標準誤差はCLOT-extでC1.7C±0.13年,LOT-intでC1.7年C±0.13年であった.いずれの定義においても術式間で生存率に有意な差はなかった.いずれにおいても両術式で生存率に有意差を認めなかった(図2).術後合併症について表2に示す.ニボーを伴う前房出血はLOT-extにおいてC73.7%,LOT-intにおいてC20.0%であり有意にCLOT-extで多かった(p=0.002).眼圧スパイクはLOT-extでC57.9%,Lot-intでC10.0%であり有意にCLOT-extで多かった.低眼圧,視力低下,緑内障再手術については両群で有意差を認めなかった.CIII考察本研究ではCLOT-extとCLOT-intの両術式間で術後C2年においても,術後眼圧に有意差は認めなかった.本研究と同様に,LOT-extと谷戸氏マイクロフックを用いたCLOT-intの術後C1年時点の成績を比較したCMoriらの報告では,両術式で眼圧下降効果に差はなかった5).また,LOT-extとCKahookCDualBladeを用いたCLOT-intとの術後成績を比較した廣岡らの報告でも,両術式で眼圧下降効果に差はなかっ表1手術時の患者背景眼外法(n=19)眼内法(n=20)CpvalueC年齢(歳)(*)(†)C69.5±8.6C68.4±11.1C0.75性別(男/女)C12/7C11/9C0.75眼圧(mmHg)(*)C14.7±5.6C15.3±6.8C0.98緑内障点眼数(本)(*)C3.3±1.2C3.6±1.1C0.48炭酸脱水酵素阻害薬内服症例(†)C1C2C0.58HFA30-2MD値(dB)(*)C.14.0±8.3C.10.9±8.7C0.18矯正視力(logMAR)(*)C.0.17±0.43C.0.16±0.35C0.82角膜厚(μm)(*)C527±36C509±39C0.32眼軸長(mm)(*)C24.7±1.9C24.6±1.3C0.74病型開放隅角緑内障(†)12(63.2%)14(70.0%)C0.74続発緑内障(†)7(36.8%)6(30.0%)C0.74C平均値C±標準偏差,HFA:HumphreyCFieldAnalyzer,(*)Wilcoxonの順位和検定,(†)Fisherの正確検定.Cap=0.73p=0.68p=0.70p=0.45bp=0.72p=0.61p=0.39p=0.51平均術後眼圧下降率(%)806040200-20-40平均眼圧下降値(mmHg)-5-10-15-20-25-3061218246121824術後期間(月)術後期間(月)図1術後眼圧下降値と術後眼圧下降率a:平均術後眼圧下降値の経過.b:平均術後眼圧下降率の経過.a基準1b基準2c基準31.01.01.00.80.80.8生存率(%)0.60.40.60.40.60.40.20.20.20000.51.01.52.000.51.01.52.000.51.01.52.0観察期間(年)観察期間(年)観察期間(年)線維柱帯切開術眼外法線維柱帯切開術眼内法図2生命表解析(Kaplan-Meier法)による線維柱帯切開術の2年生存率死亡の定義として,基準C1はC21mmHg,基準C2はC18mmHg,基準C3はC15CmmHgを超えた時点または追加手術を行った場合と定義した.表2術後合併症の割合眼外法(n=19)眼内法(n=20)p値(*)ニボーを伴う前房出血(%)(*)眼圧スパイク(%)(*)低眼圧(%)(*)視力低下(%)(*)緑内障再手術(%)14(C73.7)11(C57.9)2(C10.5)14(C73.7)0(0)4(C20.0)C2(C10.0)C3(C15.0)C8(C40.0)C3(7C.7)C0.0010.0021.00.0530.23(*)Fisherの正確検定.たと結論づけている6).一方で,LOT-extとCTrabectomeを用いたCLOT-intの術後眼圧の比較を行ったCKinoshita-Nakanoらの報告では,術後C1年および術後C2年時点においてCLOT-extの眼圧下降が有意に大きかった(7).短期的な眼圧下降効果にはデバイスごとの違いがある可能性があり,今後さらなる検討が必要である.術後合併症についてはCLOT-extでニボーを伴う前房出血および眼圧スパイクが有意に多い結果となった.LOT-extにおけるニボーを伴う前房出血はC20.91%5,6,8)と幅広く報告されており,本研究ではC73.7%に前房出血を認めた.一方で谷戸氏マイクロフックを用いたCLOT-intにおけるニボーを伴う前房出血はC16%と報告されており5),本研究では20%であった.前房出血は房水静脈からの血液逆流によるもので,術終了時の眼圧との圧較差により生じる.LOT-extでニボーを伴う前房出血の頻度が高かった要因としては,ロトームによる線維柱帯切開後に眼圧が大きく下降するため,フラップ縫合までの時間に血液逆流が多く生じること,また症例によっては創部からの漏出が術後一過性にあり5),血液逆流が遷延した可能性が考えられた.本研究ではCLOT-extにおいて眼圧スパイクも有意に多く認めた.本研究では術後1カ月以内の早期における眼圧スパイクを対象としており眼圧スパイクをきたした症例では全例薬物投与(炭酸脱水酵素阻害薬内服,緑内障点眼)により眼圧スパイクは速やかに改善した.本研究において,術後C2年の時点でCLOT-intとCLOT-extの眼圧下降効果に両群間で有意差はなかった.LOT-extは術後前房出血および一過性眼圧スパイクを生じる割合が多く,術後管理により注意を要する.文献1)SmithR:ACnewCtechniqueCforCopeningCtheCcanalCofCSch-lemm.CPreliminaryCreport.CBrCJCOphthalmolC44:370-373,C19602)TaniharaH,NegiA,AkimotoMetal:Surgicale.ectsoftrabeculotomyCabCexternoConCadultCeyesCwithCprimaryCopenCangleCglaucomaCandCpseudoexfoliationCsyndrome.CArchOphthalmolC111:1653-1661,C19933)TanitoCM,CSanoCI,CIkedaCYCetal:Short-termCresultsCofCmicrohookCabCinternoCtrabeculotomy,CaCnovelCminimallyCinvasiveCglaucomaCsurgeryCinCJapaneseeyes:initialCcaseCseries.ActaOphthalmologicaC95:e354-e360,C20174)Arriola-VillalobosCP,CMartinez-de-laCCasaCJM,CDiaz-ValleCDCetal:CombinedCiStentCtrabecularCmicro-bypassCstentCimplantationandphacoemulsi.cationforcoexistentopen-angleCglaucomaCandcataract;aClong-termCstudy.CBrJOphthalmolC96:645-649,C20125)MoriCS,CMuraiCY,CUedaCKCetal:ACcomparisonCofCtheC1-yearCsurgicalCoutcomesCofCabCexternoCtrabeculotomyCandmicrohookabinternotrabeculotomyusingpropensityscoreanalysis.BMJOpenOphthalmolC5:e000446,C20206)廣岡一行,合田衣里奈,木内良明:線維柱帯切開術CabexternoとCKahookCDualBladeを用いた線維柱帯切開術の術後成績.日眼会誌124:753-758,C20207)Kinoshita-NakanoE,NakanishiH,Ohashi-IkedaHetal:CComparativeCoutcomesCofCtrabeculotomyCabCexternoCver-susCtrabecularCablationCabCinternoCforCopenCangleCglauco-ma.JpnJOphthalmolC62:201-208,C20188)FukuchiCT,CUedaCJ,CNakatsueCTCetal:TrabeculotomyCcombinedCwithCphacoemulsi.cation,CintraocularClensCimplantationandsinusotomyforexfoliationglaucoma.JpnJOphthalmolC55:205-212,C2011***

ブリモニジン酒石酸塩0.1%点眼液 使用成績調査のまとめ

2022年8月31日 水曜日

《原著》あたらしい眼科39(8):1139.1147,2022cブリモニジン酒石酸塩0.1%点眼液使用成績調査のまとめ川口えり子*1坂本祐一郎*1末信敏秀*1新家眞*2*1千寿製薬株式会社*2神奈川歯科大学附属横浜クリニックPost-MarketingStudyof0.1%BrimonidineTartrateOphthalmicSolutionErikoKawaguchi1),YuichiroSakamoto1),ToshihideSuenobu1)andMakotoAraie2)1)SenjuPharmaceuticalCo.,Ltd,2)KanagawaDentalUniversityYokohamaClinicCブリモニジン酒石酸塩点眼液(アイファガン点眼液C0.1%)の安全性および有効性を検討するため,承認後の使用成績調査にて,最長C24カ月にわたりプロスペクティブな観察を行った.副作用発現率はC15.43%(720/4,666例)であり,おもな副作用はアレルギー性結膜炎をはじめとする眼局所の事象であった.眼圧評価対象C2,625例における投与開始時の平均眼圧はC16.5C±4.7CmmHgであった.投与開始C3カ月.24カ月までの平均眼庄下降率はC13.5.15.2%であり,いずれの観察時点においても有意な眼圧下降が認められた(p<0.0001).また,病型,併用薬剤,切替薬剤にかかわらず,投与開始以降有意な眼圧下降を示した.ブリモニジン酒石酸塩点眼液の安全性および有効性に問題は認められず,有用であると考えられた.CPurpose:Toevaluatethesafetyande.cacyofbrimonidinetartrateophthalmicsolution(AIPHAGANCRCOph-thalmicSolution0.1%)forthetreatmentofglaucoma.PatientsandMethods:Inthisprospective,observational(uptoC24months)post-marketingCstudyCconductedCinCJapan,CaCtotalCofC4,666CglaucomaCpatientsCwereCincluded.CResults:OfCtheC4,666Cpatients,CtheCincidenceCrateCofCadverseCdrugreactions(ADRs)was15.43%(n=720patients),themainADRswereoculartopicaleventssuchasallergicconjunctivitis.Themeanintraocularpressure(IOP)inthe2,625patientswhowereincludedinanalysesofthechangesofIOPwas16.5±4.7CmmHgatbaseline.InCaddition,CAIPHAGANRCOphthalmicCSolution0.1%Csigni.cantlyCreducedCIOPCatCallCobservationalpoints(p<0.0001)C,andtheaveragerateofIOPreductionfrom3-to24-monthspoststartofadministrationrangedfrom13.5%to15.2%.Moreover,thelevelofIOPreductionwasnotin.uencedbyglaucomatype,concomitantdisorder,ordrugusedbeforeswitching.Conclusion:Our.ndingssuggestthatAIPHAGANCROphthalmicSolution0.1%issafeande.ectiveforthetreatmentofglaucoma.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C39(8):1139.1147,C2022〕Keywords:ブリモニジン,アイファガン点眼液C0.1%,安全性,有効性,眼圧.brimonidine,AIPHAGANoph-thalmicsolution0.1%,safety,e.cacy,intraocularpressure.はじめに緑内障は,わが国の失明原因の第C1位1)であり,緑内障診療ガイドライン2)では,「視神経と視野に特徴的変化を有し,通常,眼圧を十分に下降させることにより視神経障害を改善もしくは抑制しうる眼の機能的構造的異常を特徴とする疾患」と定義されている.治療方法には薬剤治療,レーザー治療,手術治療などがあるが,通常,緑内障治療薬の単剤投与より開始され,さらなる眼圧下降を求めて作用機序の異なる緑内障治療薬との併用や他の治療が実施される.ブリモニジン酒石酸塩はアドレナリンCa2受容体に選択的に作用し,房水産生の抑制およびぶどう膜強膜流出路を介した房水流出の促進により眼圧を下降させると考えられており3),わが国においては,2012年C1月にC0.1%ブリモニジン酒石酸塩(アイファガン点眼液C0.1%)として承認された.本剤は,それまでの緑内障治療薬とは異なる作用機序を有していたため,製造販売後においてはプロスタグランジン関連薬をはじめとする種々の緑内障治療薬と組み合わせて使用されることが想定された.また,緑内障以外の既往症や併用薬などのため,臨床試験では除外対象となっていた患者にも,承認後は広く投与される.このような上市後の使用実態に即〔別刷請求先〕川口えり子:〒541-0048大阪市中央区瓦町C3-1-9千寿製薬株式会社信頼性保証本部医薬情報企画部Reprintrequests:ErikoKawaguchi,MedicalInformationPlanningDepartment,Safety&QualityManagementDivision,SenjuPharmaceuticalCo.,Ltd.,3-1-9Kawara-machi,Chuo-ku,Osaka541-0048,JAPANCして本剤の有効性および安全性を検証することを目的として使用成績調査を実施した.CI調査の方法と成績1.調査方法「医薬品の製造販売後の調査及び試験の実施の基準に関する省令」(厚生労働省令第C17l号)に則り,中央登録方式によるプロスペクティブな観察研究を実施した(2012年C12月.2017年C12月).本剤の使用成績調査(以降,本調査)にかかる契約を締結した医療機関にて,目標症例数C3,000例として,2012年C12月.2015年C9月に初めて本剤投与を開始した緑内障または高眼圧症患者を登録対象とした.観察期間はC12カ月以上,最長C24カ月であり,調査項目は,患者背景(性別,年齢,合併症,既往歴,眼手術歴,前治療薬),併用薬,併用療法,眼科検査結果(投与開始前およびC3カ月ごとの眼圧,視野検査),有害事象とした.なお,本調査は介入を行わない観察研究であるため,本剤投与以前の緑内障治療内容,併用薬,併用療法,眼科検査機器や測定方法に制限は設けなかった.本調査は,独立行政法人医薬品医療機器総合機構による審査を経て実施した.C2.評価方法安全性については,本剤投与開始以降,少なくともC1回以上の観察が可能であった症例を対象として,副作用発現状況を評価した.また,本剤の特徴的な副作用である「アレルギー性結膜炎」については,「性別」「年齢」「アレルギー性疾患既往の有無」「角膜障害の有無」「結膜疾患の有無」「眼瞼疾患の有無」「他の緑内障治療薬の有無」「b遮断薬併用の有無」「緑内障治療薬以外の併用薬の有無」および「併用薬剤数」を共変量として,強制投入法によるロジスティクス多変量解析を行い,アレルギー性結膜炎発現のリスクを検討した.有効性については,眼圧評価対象症例の投与前眼圧と投与24カ月までのC3カ月ごとの眼圧値を対応のあるCt検定で評価した(Bon.eroni補正).眼圧推移対象症例は,投与開始からC360日以上,緑内障治療内容を変更することなく,本剤を継続投与した症例とした.評価眼はC1例C1眼とし,両眼投与症例においては投与開始時点の眼圧が高い方の眼(同値である場合は右眼)とした.さらに,本剤投与期間中に同一の測定法(Humphrey視野計,中心C30-2プログラムのSITA-StandardまたはCSITA-Fast)にて,5回以上視野検査を実施した眼を対象として,測定法ごとにC1年当たりのCmeandeviation(MD)値の変化量をCLinearMixedModelで推定した.すべての解析について,有意水準は両側5%とした.C3.結果全国C481の医療機関にてC4,886例が登録され,安全性評価対象症例としてC4,666例,眼圧評価対象症例としてC2,625例を収集した(図1).安全性評価対象症例の患者背景は表1に示したとおりであり,平均年齢はC68.7歳,原発解放隅角緑内障がもっとも多かった.また,最終観察時点である投与24カ月まで投与継続された症例はC3,074例であったことから,本調査における投与継続率はC65.9%であった.一方,最終観察時点までに投与中止に至ったC1,592例の中止理由は,再診なしC678例,副作用C520例,効果不十分C182例,有害事象C82例,その他C130例であった.C4.安全性副作用発現率はC15.43%(720/4,666例)であった.このうち,重篤な副作用はC11例C12件(眼圧上昇C4件,視野障害の進行C2件,糖尿病網膜症の増悪,糖尿病,糖尿病性腎症の悪化,脳血栓症,右大腿骨骨折および左上腕骨骨折各C1件)が認められたが,本剤と明確な関連があると判定された事象はなかった.おもな副作用(発現率C0.1%以上)は表2に示したとおりであり,アレルギー性結膜炎C241例(5.17%)をはじめ,結膜充血C102例(2.19%),眼瞼炎C88例(1.89%),結膜炎C50例(1.07%),点状角膜炎C48例(1.03%)など,眼局所における事象が多く認められた.眼局所以外では,浮動性めまいC21例(0.45%)および傾眠C14例(0.30%)が主たる事象であった.なお,アレルギー性結膜炎,結膜充血,霧視,浮動性めまいなど,自覚的な事象では,副作用による中止率が高い傾向にあった(表2).ロジスティクス多変量解析は,安全性評価対象症例C4,666例のうち,共変量とした背景因子に「不明」を含むC251症例を除いたC4,415例を対象とした.背景因子ごとのアレルギー性結膜炎の発現状況については,「性別」「アレルギー性疾患既往の有無」「結膜疾患の有無」および「緑内障治療薬以外の併用薬の有無」のC4因子で有意差が認められ,性別では「女性」,アレルギー性疾患既往の有無および結膜疾患の有無では「あり」のオッズ比が高かった.表には示していないが,結膜疾患の内訳としては,86.3%(909/1,053症例)において眼乾燥(Sjogren症候群を含む)あるいはアレルギー性結膜炎(季節性アレルギーおよび眼のアレルギーを含む)が認められ,それぞれの罹患症例におけるアレルギー性結膜炎の発現率は,眼乾燥でC6.77%(p=0.0400),アレルギー性結膜炎でC14.47%(p<0.0001)であり,非罹患症例に比して発現率が有意に高かった(Cc2検定).一方,「緑内障治療薬以外の併用薬の有無」では,「あり」のオッズ比が,「なし」より低かった(表3).C5.有効性図2に示したとおり,眼圧評価症例C2,625例の投与前眼圧はC16.5mmHg,投与C3.24カ月までの眼圧はC13.5.13.9mmHgであり,観察期間を通して安定した眼圧下降が認められた(p<0.0001).眼圧変化量は.2.9.C.2.6CmmHg,眼図1症例構成全国C481の医療機関にて登録されたC4,886例のうち,本剤投与後C1回以上観察のあったC4,666例を安全性評価対象症例として,副作用発現状況を確認した.また,本剤投与開始後,緑内障治療内容を変更することなく,360日以上継続投与した2,625例を眼圧評価対象症例として,3カ月ごとの眼圧推移を確認した.表1患者背景項目分類症例数(n=4,666)性別男2,118(45.4%)女2,548(54.6%)年齢(歳)平均±標準偏差C68.7±13.0最小値.最大値7.97病型*1原発開放隅角緑内障2,017(43.2%)正常眼圧緑内障1,926(41.3%)原発閉塞隅角緑内障165(3.5%)続発緑内障277(5.9%)高眼圧症185(4.0%)その他95(2.0%)合併症(眼)あり2,502(53.6%)なし2,164(46.4%)合併症(眼部以外)あり1,431(30.7%)なし2,440(52.3%)不明795(17.0%)眼手術歴あり1,671(35.8%)なし2,958(63.4%)不明37(0.8%)併用薬あり4,123(88.4%)なし533(11.4%)不明10(0.2%)併用療法あり178(3.8%)なし4,454(95.5%)不明34(0.7%)*1:本剤投与開始時点で緑内障・高眼圧症に罹患していなかったC1例を除外した.(131)あたらしい眼科Vol.39,No.8,2022C1141表2おもな副作用および中止状況副作用*1*2発現症例数(発現率%)中止症例数*3(中止率%)眼部665(C14.25)C.アレルギー性結膜炎241(C5.17)209(C86.72)結膜充血102(C2.19)90(C88.24)眼瞼炎88(C1.89)65(C75.58)結膜炎50(C1.07)36(C72.00)点状角膜炎48(C1.03)18(C37.50)霧視26(C0.56)23(C88.46)眼の異常感24(C0.51)19(C79.17)眼圧上昇22(C0.47)5(C22.73)眼乾燥21(C0.45)4(C19.05)眼そう痒症18(C0.39)17(C94.44)眼痛12(C0.26)10(C83.33)アレルギー性眼瞼炎10(C0.21)9(C90.00)眼刺激9(C0.19)6(C66.67)眼の異物感9(C0.19)9(C100.00)結膜濾胞8(C0.17)8(C100.00)視野欠損8(C0.17)1(C12.50)角膜びらん7(C0.15)5(C71.43)眼瞼紅斑6(C0.13)5(C83.33)眼瞼浮腫6(C0.13)5(C83.33)虹彩炎5(C0.11)0(C0.00)(その他)46(C.)C.眼部以外63(C1.35)C.浮動性めまい21(C0.45)19(C90.48)傾眠14(C0.30)10(C71.43)(その他)44(C.)C.*1:副作用名はCICH国際医療用語集CMedDRA/JCVersion20.1のCPT(基本語)を用いて分類した.*2:発現率C0.1%以上の事象を対象とした.*3:中止症例に複数の副作用が発現していた場合,すべての副作用の中止例数として計数した.圧変化率は.15.2.C.13.5%であった.このうち,本剤を新規で単剤投与したC357例の投与前眼圧はC17.2CmmHg,投与3.24カ月の眼圧はC13.8.14.2CmmHg,眼圧変化量はC.3.3..3.1mmHg,眼圧変化率はC.17.2.C.16.1%であった.その他,病型別,併用薬剤別,切替薬剤別で眼圧推移を検討した結果,投与後のすべての時点で有意な眼圧低下が認められた(図3~6).1年当たりのCMD値の変化量について,評価眼はC194例194眼(SITA-Standard群:54眼,SITA-Fast群:140眼)であった.測定法ごとの推定変化量はCSITA-Standard群は0.19CdB(標準誤差C0.14,p=0.1829),SITA-Fast群はC.0.08CdB(標準誤差C0.11,p=0.4507)であり,両群ともに有意な変化は認められなかった.CII考察本調査で認められた副作用の多くは眼局所における非重篤C1142あたらしい眼科Vol.39,No.8,2022な事象であった.ブリモニジン点眼投与時における代表的な事象である眼局所アレルギー反応の発現率は,既報においてはC9.25.7%である4.6).本調査においても,主たる眼局所事象はアレルギー反応であり,うちアレルギー性結膜炎の発現率はC5.17%であった.多変量解析によるアレルギー性結膜炎のリスク分析においては,結膜疾患あり,アレルギー性疾患既往あり,女性の集団におけるオッズ比が,1.805(p=0.0099),2.112(p=0.0087),1.810(p<0.0001)と有意に高かった.多変量解析対象症例で認められた主たる結膜疾患は,眼乾燥あるいはアレルギー性結膜炎であり,罹患症例における発現率が高かった.Manniら5)は,ブリモニジン点眼(0.2%)による眼局所アレルギー反応は,点眼薬に対するアレルギー既往を有する患者に多く認められ,また,眼局所アレルギー反応を示した患者では涙液量が有意に減少していたことを報告しており,類似した結果であったと考える.なお,女性のオッズ比が高かった要因としては,女性におけるアレルギー性疾患の既往あるいは結膜疾患の合併率が,それぞれ,60.7%あるいはC65.4%であり,男性における合併率(39.4%あるいはC34.6%)に比して高かったことに起因すると推察された.一方,緑内障治療薬以外の併用薬ありのオッズ比はC0.573(p=0.0427)であり,併用薬なしに比して有意に低かったが,おもな併用薬は人工涙液,角膜保護薬,ステロイド薬,抗アレルギー薬であった.このうち,ステロイド薬あるいは抗アレルギー薬の併用がアレルギー性結膜炎の発症あるいは増悪を抑制しうることは想像できるものの,他の併用薬による影響については,さらなる検討が必要と考える.このような併用薬による影響については,Cb遮断薬の点眼併用によるブリモニジン点眼起因の眼局所アレルギー反応の低減について言及されている7.9).そこで,多変量解析の変数としてCb遮断薬の点眼併用有無を組み入れたが,併用例におけるオッズ比はC1.114(p=0.5439)であり,低減傾向は認められなかった.これは,本調査が使用成績調査という性質上,併用薬に制限を設けておらず,本剤投与期間中に併用薬の変更が生じた症例が含まれるなど,既報と条件が異なるためと考えられた.一方,全身的な副作用としては,浮動性めまいC21例(0.45%)および傾眠C14例(0.30%)が代表的であったが,その発現率は,アドレナリンCa2受容体刺激作用を有する血圧降下剤(メチルドパ水和物錠,クロニジン塩酸塩錠,グアナベンズ酢酸塩錠)を上回るものではなかった3).以上のように,本調査においては,新たな安全性リスクを認めなかったが,最長C24カ月の観察期間においてC34.1%(1,592/4,666例)が本剤による治療から離脱しており,このうちC11.1%(520/4,666例)が副作用発現を理由として本剤投与を中止していた.Sherwoodら8)は,ブリモニジン点眼(0.2%)の12カ月観察における有害事象による投与中止率がC30.6%で(132)表3アレルギー性結膜炎の多変量解析結果背景因子オッズ比95%信頼区間p値男1C..性別女C1.810C1.348-2.430<0.0001*40歳未満C1C..年齢40歳以上C65歳未満C65歳以上C75歳未満C5.618C5.885C0.771-40.954C0.807-42.907C0.08860.080375歳以上C3.273C0.447-23.976C0.2432アレルギー性疾患既往*1なしCありC1C1.805C.1.153-2.826C.*0.0099角膜障害*2なしCありC1C1.121C.0.700-1.795C.0.6351結膜疾患*3なしCありC1C2.112C.1.208-3.690C.*0.0087眼瞼疾患*4なしCありC1C2.412C.0.957-6.081C.0.0619他の緑内障治療薬*5なしCありC1C0.599C.0.348-1.031C.0.0644Cb遮断薬の併用*5なしCありC1C1.114C.0.786-1.580C.0.5439緑内障治療薬以外の併用薬*5なしCありC1C0.573C.0.335-0.982C.*0.0427なしC1C..1剤C1.424C0.745-2.722C0.2847併用薬剤数*52剤C3剤C1.352C0.651C0.629-2.907C0.250-1.694C0.43960.37934剤以上C0.896C0.322-2.498C0.8340*1:本剤投与開始時点で以下のいずれかを合併している,または既往のある症例.アレルギー性結膜炎,アレルギー性眼瞼炎,アトピー性白内障,季節性アレルギー,アトピー性皮膚炎,アレルギー性皮膚炎,接触皮膚炎,アレルギー性鼻炎,薬疹,喘息.*2:本剤投与開始時点で以下のいずれかを合併している症例.角膜炎,角膜障害,眼乾燥,眼球乾燥症,Sjogren症候群,点状角膜炎,角膜びらん,潰瘍性角膜炎,真菌性角膜炎,角膜症,角膜浮腫,角膜白斑,角膜混濁,眼部単純ヘルペス,角膜血管新生,円錐角膜,角膜変性,角膜ジストロフィー,角膜瘢痕,ヘルペス眼感染.*3:本剤投与開始時点で以下のいずれかを合併している症例.眼乾燥,Sjogren症候群,眼球乾燥症,アレルギー性結膜炎,季節性アレルギー,眼のアレルギー,結膜炎,結膜充血,細菌性結膜炎,眼充血,結膜弛緩症.*4:本剤投与開始時点で以下のいずれかを合併している症例.アレルギー性眼瞼炎,眼瞼炎,眼瞼湿疹,マイボーム腺機能不全,眼瞼内反,眼瞼けいれん,眼瞼皮膚弛緩症,瞼板腺炎,霰粒腫,麦粒腫.*5:アレルギー性結膜炎発現症例では,当該事象発現までに眼部に使用した薬剤(発現時点で投与を中止していた薬剤を含む),未発現症例では,本剤投与期間中に眼部に使用したすべての薬剤を対象とした.あったと報告しており,本調査における投与中止率は既報をた,投与開始C3カ月後までの眼圧下降率は,全症例でC14.6上回るものではなかった.しかし,緑内障治療は永続を前提%,原発開放隅角緑内障でC15.9%,正常眼圧緑内障でC12.0とすることに鑑みると,本剤による治療中止後の治療選択肢%であり,いずれも統計学的に有意であった.緑内障治療のを用意しておくことも肝要であると考えられた.目的は,患者の視覚の維持,それに伴う生活の質の維持であ有効性について,2,625例における投与開始から投与C24り,現在,エビデンスの伴う唯一確実な治療法は眼圧下降でカ月までの眼圧推移の検討においては,病型,併用薬剤,切ある2).すなわち,視野障害に対する眼圧下降効果について替薬剤など,いずれの因子の影響も認められなかった.まは,1CmmHgの眼圧下降によりC10%視野障害の進行が抑制25全体(n=2,625)新規単剤投与(n=357)20(*有意差あり)眼圧(mmHg)15100投与期間(月)投与前投与C3カ月投与C24カ月眼圧眼圧変化量t検定変化率眼圧変化量t検定変化率(mmHg)(mmHg)(mmHg)(p)(%)(mmHg)(mmHg)(p)(%)眼圧評価対象症例C16.5±4.7C13.8±3.7C.2.7<C0.0001C.14.6C13.6±3.7C.2.7<C0.0001C.14.5新規単剤投与症例C17.2±5.0C13.8±3.9C.3.1<C0.0001C.17.1C14.0±3.8C.3.2<C0.0001C.17.2C図2眼圧推移(全体・新規)眼圧推移対象症例(全体)およびアイファガンを新規単剤投与した症例(新規)では,投与開始後,安定した眼圧下降を認め,24カ月時点の眼圧下降率は全体.14.5%,新規C.17.2%であった.C30POAG(n=1,136)NTG(n=1,182)PACG(n=69)SG(n=114)25眼圧(mmHg)OH(n=121)(*有意差あり)2015100投与前投与前投与C3カ月投与C24カ月眼圧(mmHg)眼圧(mmHg)変化量(mmHg)t検定(p)変化率(%)眼圧(mmHg)変化量(mmHg)t検定(p)変化率(%)CPOAGCNTGCPACGCSGCOHC18.0±4.6C14.0±2.9C16.6±5.8C20.2±6.7C22.5±3.8C14.9±3.8C12.2±2.7C13.4±3.7C15.3±4.9C18.0±3.5C.3.2.1.8.3.5.5.2.4.4<C0.0001C<C0.0001C<C0.0001C<C0.0001C<C0.0001C.15.9C.12.0C.16.7C.23.4C.18.0C14.6±3.8C12.1±2.6C13.4±3.1C14.9±4.8C18.0±3.3C.3.1.2.0.3.3.5.3.4.6<C0.0001C<C0.0001C=0.0004C<C0.0001C<C0.0001C.15.4C.12.5C.14.8C.21.8C.19.3POAG:原発開放隅角緑内障,NTG:正常眼圧緑内障,PACG:閉塞隅角緑内障,SG:続発緑内障,OH:高眼圧症.図3眼圧推移(病型別)病型にかかわらず安定した眼圧下降を認め,24カ月時点の眼圧下降率は,POAG15.4%,NTG12.5%,PACG14.8%,SG21.8%,OH19.3%であった.投与前投与C3カ月投与C24カ月眼圧眼圧変化量t検定変化率眼圧変化量t検定変化率(mmHg)(mmHg)(mmHg)(p)(%)(mmHg)(mmHg)(p)(%)PG関連薬C16.0±4.2C13.4±3.1C.2.7<C0.0001C.14.9C13.2±3.2C.2.6<C0.0001C.14.5Cb遮断薬C15.4±4.3C13.3±3.2C.2.3<C0.0001C.12.1C13.1±3.2C.2.3<C0.0001C.12.0CCAIC19.2±3.8C15.7±3.3C.3.3C0.0006C.16.0C15.0±3.0C.3.6C0.0167C.16.7PG関連薬:プロスタグランジン関連薬,Cb遮断薬:交感神経Cb受容体遮断薬,CAI:炭酸脱水酵素阻害薬.図4眼圧推移(併用薬剤別1)併用薬の種類にかかわらず安定した眼圧下降を認め,24カ月時点の眼圧下降率は,PG関連薬C14.5%,Cb遮断薬C12.0%,CAI16.7%であった.C25PG関連薬+β遮断薬(n=122)PG関連薬・β遮断薬配合剤(n=289)PG関連薬+CAI(n=99)20眼圧(mmHg)b遮断薬・CAI配合剤(n=73)15(*有意差あり)100投与前投与期間(月)投与前投与C3カ月投与C24カ月眼圧(mmHg)眼圧変化量(mmHg)(mmHg)t検定(p)変化率(%)眼圧変化量(mmHg)(mmHg)t検定(p)変化率(%)PG関連薬+b遮断薬CPG関連薬・Cb遮断薬配合剤CPG関連薬+CAICb遮断薬・CAI配合剤C16.8±5.4C16.1±4.5C17.3±4.7C17.4±5.7C14.0±4.8C13.5±3.7C14.7±3.4C14.2±3.6C.3.0.2.7.2.5.3.2<C0.0001C<C0.0001C<C0.0001C<C0.0001C.15.8C.15.2C.12.6C.15.2C13.7±4.0C13.0±3.2C14.9±4.5C13.7±3.4C.2.9.3.0.1.8C.3.7<C0.0001C<C0.0001C0.0003C<C0.0001C.15.6.16.9.9.8C.16.9図5眼圧推移(併用薬剤別2)2剤あるいは配合剤を併用した場合も有意な眼圧下降を認め,24カ月時点の眼圧下降率は,PG関連薬+b遮断薬C15.6%,PG関連薬・Cb遮断薬配合剤C16.9%,PG関連薬+CAI9.8%,Cb遮断薬・CAI配合剤C16.9%であった.(*有意差あり)PG関連薬(n=189)b遮断薬(n=103)CAI(n=113)遮断薬(n=66)投与期間(月)投与前投与C3カ月投与C24カ月眼圧(mmHg)眼圧(mmHg)変化量(mmHg)t検定(p)変化率(%)眼圧(mmHg)変化量(mmHg)t検定(p)変化率(%)PG関連薬Cb遮断薬CCAICa1遮断薬C15.1±4.0C16.9±4.4C15.9±4.7C14.9±3.6C13.5±3.3C14.0±3.1C13.6±4.7C12.9±2.8C.1.5.2.7.2.1.1.9<C0.0001C<C0.0001C<C0.0001C<C0.0001C.7.8C.14.2C.12.8C.12.1C12.8±3.2C14.0±3.3C13.3±3.6C13.2±3.2C.2.2.2.9.2.5.1.5C<C0.0001C<C0.0001C<C0.0001C0.0103C.12.5C.15.8C.13.9C.7.9a1遮断薬:交感神経Ca1受容体遮断薬.図6眼圧推移(切替薬剤別)他剤単剤からアイファガン単剤,他剤併用のうちC1剤またはC1成分をアイファガンへ切り替えた症例を含む.切替薬剤の種類にかかわらず有意な眼圧下降を認め,24カ月時点の眼圧下降率は,PG関連薬C12.5%,Cb遮断薬C15.8%,CAI13.9%,Ca1遮断薬C7.9%であった.され10),日本人に多くみられる正常眼圧緑内障11)では,30%の眼圧下降により視野障害の進行が抑制される12).本調査における本剤投与の開始は,主として追加あるいは他剤からの切替であり,2.6.2.9mmHgの眼圧低下が認められた.また,正常眼圧緑内障においてもC1.7.2.0CmmHgの眼圧低下が認められたことから,第二選択薬として,目標眼圧の達成に貢献できるものと考えられた.CIII結論本調査の結果,承認時までに得られていない安全性に関する新たなリスクは認められなかった.有効性においては,病型,併用薬,切替薬剤に関係なく,投与C24カ月まで安定した眼圧下降効果が得られることが確認できた.以上より,本剤は使用実態下においても有用な薬剤であると考えられ,緑内障治療において重要な役割を果たすことが期待される.謝辞:本調査にご協力を賜り,貴重なデータをご提供いただきました全国の先生方に,深謝申し上げます.利益相反:川口えり子,坂本祐一郎,末信敏秀(カテゴリーE:千寿製薬)文献1)MorizaneCY,CMorimotoCN,CFujiwaraCACetal:IncidenceCandCcausesCofCvisualCimpairmentCinJapan:theC.rst-nation-wideCcompleteCenumerationCsurveyCofCnewlyCcerti.edCvisuallyCimpairedCindividuals.CJpnCJCOphthalmolC63:26-33,C20192)日本緑内障学会緑内障診療ガイドライン作成委員会:緑内障診療ガイドライン(第C5版)3)独立行政法人医薬品医療機器総合機構ホームページ(医療用医薬品情報検索)https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/CiyakuSearch/4)SchumanCJS,CHorwitzCB,CChoplinCNTCetal:AC1-yearCstudyCofCbrimonidineCtwiceCdailyCinCglaucomaCandCocularChypertension.ArchOphthalmolC115:847-852,C19975)ManniCG,CCentofantiCM,CSacchettiCMCetal:DemographicCandclinicalfactorsassociatedwithdevelopmentofbrimo-nidineCtartrate0.2%-inducedCocularCallergy.CJCGlaucomaC13:163-167,C20046)BlondeauCP,CRousseauJA:AllergicCreactionsCtoCbrimoni-dineCinCpatientsCtreatedCforCglaucoma.CCanCJCOphthalmolC37:21-26,C20027)MotolkoMA:ComparisonCofCallergyCratesCinCglaucomaCpatientsCreceivingCbrimonidine0.2%CmonotherapyCversusC.xed-combinationCbrimonidine0.2%-timolol0.5%Cthera-py.CurrMedResOpinC24:2663-2667,C20088)SherwoodMB,CravenER,ChouCetal:Twice-daily0.2%CbrimonidineC.0.5%CtimololC.xed-combinationCtherapyCvsCmonotherapyCwithCtimololCorCbrimonidineCinCpatientsCwithCglaucomaCorCocularChypertension.CArchCOphthalmolC124:1230-1238,C20069)新家眞,福地健郎,中村誠ほか:ブリモニジン/チモロール配合点眼剤の原発開放隅角緑内障(広義)および高眼圧症を対象とした長期投与試験.あたらしい眼科C37:345-352,C202010)HeijlCA,CLeskeCM,CBengtssonCBCetal:ReductionCofCintra-ocularpressureandglaucomaprogression.ArchOphthal-molC120:1268-1279,C200211)IwaseA,SuzukiY,AraieMetal:Theprevalenceofpri-maryCopen-angleCglaucomaCinJapan:theCTajimiCstudy.COphthalmologyC111:1641-1648,C200412)CollaborativeCNormal-TensionCGlaucomaStudyCGroup:CComparisonCofCglaucomatousCprogressionCbetweenCuntreatedCpatientsCwithCnormal-tensionCglaucomaCandCpatientsCwithCtherapeuticallyCreducedCintraocularCpres-sures.AmJOphthalmolC126:487-497,C1998***

緑内障患者の配合剤への変更によるアドヒアランスの検討

2022年8月31日 水曜日

《第32回日本緑内障学会原著》あたらしい眼科39(8):1125.1129,2022c緑内障患者の配合剤への変更によるアドヒアランスの検討迫菜央子辻拓也西原由華佐々木研輔春田雅俊吉田茂生久留米大学医学部眼科学講座CExaminationofTreatmentAdherenceAfterChangingtoCombinationEyeDropsinGlaucomaPatientsNaokoSako,TakuyaTsuji,YukaNishihara,KensukeSasaki,MasatoshiHarutaandShigeoYoshidaCDepartmentofOphthalmology,KurumeUniversitySchoolofMedicineC目的:PG関連薬/Cb遮断薬配合剤(PG/Cb),a2刺激薬/炭酸脱水酵素阻害薬配合剤(Ca2/CAI)への変更によるアドヒアランスを検討する.対象および方法:対象はCPG関連薬,Cb遮断薬/炭酸脱水酵素阻害薬配合剤,Ca2刺激薬を点眼している患者C21例C30眼.病型は原発開放隅角緑内障C13眼,落屑緑内障C7眼,続発緑内障C2眼,正常眼圧緑内障C2眼,血管新生緑内障C2眼,高眼圧症C2眼,原発閉塞隅角緑内障C1眼,小児緑内障C1眼であった.PG/CbおよびCa2/CAIへの変更前後の視力,眼圧などを検討した.変更前後でアンケートを行った.結果:点眼忘れの回数は変更前C0.33C±0.71回から変更C1カ月後C0.10C±0.29回と有意に減少した(p=0.04).副作用は掻痒感C1例,結膜炎C2例,霧視C3例であった.75%の患者は変更後がよいと回答した.変更前,変更後C1,3カ月で視力,眼圧に有意差はなかった.結論:変更後は高い満足度が得られ,アドヒアランス向上が期待できる.CPurpose:ToCinvestigateCtreatmentCadherenceCafterCchangingCtoCtheCcombinationCofCPG/bandCa2/CAICeyeCdropsCinCglaucomaCpatients.CSubjectsandMethods:ThisCstudyCinvolvedC30CeyesCofC21CglaucomaCpatientsCwhoCwereinstilledwithPGpreparation,b/CAIanda2agonist.Ofthe31eyes,therewere13primaryopen-angleglau-comaeyes,7exfoliationglaucomaeyes,2secondaryglaucomaeyes,2normal-tensionglaucomaeyes,2neovascu-larizationglaucomaeyes,2ocularhypertensioneyes,1primaryangle-closureglaucomaeye,and1childhoodglau-comaCeye.CVisualacuity(VA)andCintraocularpressure(IOP)preCandCpostCswitchingCtoCPG/bandCa2/CAICwereCexamined.CACpatientCquestionnaireCwasCconductedCpreCandCpostCswitch.CResults:TheCmeanCnumberCofCpatientsCwhoCforgotCtoCinstillCwasCreducedCfromC0.33±0.71CatCbeforeCswitchingCtoC0.10±0.29CatC1CmonthCthechange(p=0.04)C.CSideCe.ectsCwereitching(1patient)C,conjunctivitis(2patients)C,CandCblurredvision(3patients)C.COfCtheC21Cpatients,75%saidthattheswitchwasgood,andnodi.erenceinVAandIOPwasobservedpostswitch.Conclu-sion:AfterchangingtoPG/banda2/CAIcombinationeyedrops,highsatisfactionwasobtainedandadherencetotreatmentimproved.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C39(8):1125.1129,C2022〕Keywords:ブリモニジン酒石酸塩/ブリンゾラミド配合点眼液,眼圧,副作用,アドヒアランス.brinzolamide/Cbrimonidine.xedcombination,intraocularpressure,sidee.ects,adherence.Cはじめにエビデンスに基づいた唯一確実な緑内障治療は眼圧下降であり,点眼加療が果たす役割は大きい.しかし,緑内障は多くの場合きわめて慢性的に経過する進行性の疾患で,治療効果を実感しにくいこともあり,長期にわたってアドヒアランスを維持することがむずかしい1).とくに多剤点眼が必要な患者においては,配合点眼液を使用して点眼回数や眼局所の副作用を軽減し,アドヒアランスとCQOLの向上をめざすべきと考える.アイラミド配合懸濁性点眼液(千寿製薬)は交感神経Ca2受容体刺激薬(以下,Ca2刺激薬)であるブリモニジン酒石酸塩と炭酸脱水酵素阻害薬(carbonicCanhydraseinhibitor:CAI)であるブリンゾラミドの配合点眼液で,国内では初めてとなる薬剤の組み合わせである.プロスタグランジン関連〔別刷請求先〕辻拓也:〒830-0011福岡県久留米市旭町C67久留米大学医学部眼科学講座Reprintrequests:TakuyaTsujiCM.D.,DepartmentofOphthalmology,KurumeUniversitySchoolofMedicine,67Asahi-machi,Kurume-city,Fukuoka830-0011,JAPANC薬点眼液(以下,PG関連薬),交感神経Cb受容体遮断薬/CAI配合点眼液(以下,Cb遮断薬/CAI配合点眼液),a2刺激薬の多剤点眼を処方されている患者では,PG関連薬/Cb遮断薬配合点眼液,Ca2刺激薬/CAI配合点眼液に処方を変更することで,1日の点眼回数をC5回からC3回へ減らすことができる.今回,久留米大学病院眼科でCPG関連薬,Cb遮断薬/CAI配合点眼液,Ca2刺激薬を含む多剤点眼を処方されていた緑内障患者にこの処方変更を試み,視力,眼圧,角結膜,自覚症状,アドヒアランスへの影響を調査したので報告する.CI対象および方法久留米大学病院眼科にてC2020年C8月.2021年C1月に,PG関連薬,Cb遮断薬/CAI配合点眼液,Ca2刺激薬を含む多剤点眼を処方されていた緑内障患者で,十分なインフォームド・コンセントののち,PG関連薬/Cb遮断薬配合点眼液,Ca2刺激薬/CAI配合点眼液への処方変更を希望したC21例C30問診表(変更前)問1①最近1か月で点眼を忘れてしまったことはありますか?□はい何回忘れましたか?□1回ぐらい□2回ぐらい□3回ぐらい□4回以上ちなみにどの点眼でしたか?()□いいえ②前の質問で「はい」を選択した方へ。1.忘れる時間帯はいつが多いですか?□朝□昼□夕方□寝る前2.理由は何ですか?□点眼する時間帯□点眼回数□点眼本数□さし心地□点眼瓶の操作性(さしにくい)□副作用□忙しい□その他()問2現在の眼の症状は如何ですか?①充血は?(ない012345ある)②刺激は?(ない012345ある)③かゆみは?(ない012345ある)④痛みは?(ない012345ある)⑤かすみは?(ない012345ある)⑥眼のくぼみは?(ない012345ある)⑦まつ毛の伸びは?(ない012345ある)眼を対象とした.なお,PG関連薬からCPG関連薬/Cb遮断薬配合点眼液への処方変更は,変更前後でCPG関連薬が同一成分となるように処方した.変更前にCROCK阻害薬も処方されていた場合は,変更後も使用を継続した.本研究は久留米大学医に関する倫理委員会の承認を得て行い(研究番号C21023),対象症例の診療録を後ろ向きに調査した.薬剤スコアは緑内障点眼薬C1成分をC1点,アセタゾラミド内服C1錠につきC1点とした.矯正視力は,変更前,変更後C1カ月,変更後C3カ月に測定し,それぞれClogMAR視力に変換して統計処理を行った.眼圧は変更前,変更後C1カ月,変更後C3カ月にCGoldmann圧平眼圧計(GoldmannCapplanationtonometer:GAT)を用いて測定した.診療録を用いて変更後に新たに生じた副作用を調査するとともに,変更前,変更後C1カ月の角膜・結膜スコアをそれぞれC3点満点で評価した.アンケート調査は回答結果を主治医には伝えないことを事前に説明したうえで,変更前,変更後C1カ月に診療に直接関与しない研究補助員が聴取した.アンケートの質問項目を問診表(変更後)問1①点眼を変更して、最近1か月で点眼を忘れてしまったことはありますか?□はい何回忘れましたか?□1回ぐらい□2回ぐらい□3回ぐらい□4回以上□いいえ②前の点眼に比べて点眼忘れは減りましたか?□減った□変わらない□増えた③その理由をお聞かせください。④前の質問で「はい」を選択した方へ。1.忘れる時間帯はいつが多いですか?□朝□昼□夕方□寝る前2.理由は何ですか?□点眼する時間帯□点眼回数□点眼本数□さし心地□点眼瓶の操作性(さしにくい)□副作用□忙しい□その他()問2変更する前と比べて、眼の症状に変化はありましたか?①充血は?(ない012345ある)②刺激は?(ない012345ある)③かゆみは?(ない012345ある)④痛みは?(ない012345ある)⑤かすみは?(ない012345ある)⑥眼のくぼみは?(ない012345ある)⑦まつ毛の伸びは?(ない012345ある)問3①変更する前と後ではどちらが良いですか?□変更した後の方が良い□同じ□変更する前の方が良い②その理由をお聞かせ下さい(複数回答可)□1日の点眼回数が少ない□充血しない□しみない□かゆくない□痛くない□かすまない□点眼瓶が使いやすい□薬代が安い□その他図1変更前,変更後1カ月のアンケート図1に示す.変更前,変更後C1カ月,変更後C3カ月の視力,眼圧の比較にはCANOVA,変更前,変更後C1カ月の角膜・結膜スコア,自覚症状の比較には対応のあるCt検定,変更前,変更後C1カ月の点眼忘れの回数の比較にはCWilcoxonCsigned-rankCtestを用いた.統計解析ソフトはCJMP(Ver16.1)を使用し,すべての解析において危険率C5%未満を有意差ありと判断した.CII結果対象はC21例C30眼で,性別は男性C12例C17眼,女性C9例13眼であった.平均年齢はC68.8C±5.0歳であった.平均薬剤スコアはC4.6C±0.2点であった.Humphrey自動視野計中心プログラムC24-2の平均Cmeandeviation値はC.12.7±2.6CdBであった.病型の内訳は,原発開放隅角緑内障C13眼,落屑緑内障C7眼,続発緑内障C2眼,正常眼圧緑内障C2眼,血管新生緑内障C2眼,高眼圧症C2眼,原発閉塞隅角緑内障C1眼,小児緑内障C1眼であった(表1).logMAR視力は変更前C0.16C±0.56,変更後C1カ月C0.17C±0.58,変更後C3カ月C0.19C±0.60,GATによる眼圧は変更前Ca1.91.713.4±2.3CmmHg,変更後C1カ月C13.0C±3.4CmmHg,変更後C3カ月C14.0C±3.3CmmHgであった.視力,眼圧ともに,変更前,変更後C1カ月,変更後C3カ月の間で有意差を認めなかった(図2a,b).PG関連薬とCb遮断薬ごとの内訳では,タフルプロストからタフルプロスト/チモロールへの変更はC12眼表1対象(21例30眼)病型原発開放隅角緑内障落屑緑内障続発緑内障正常眼圧緑内障血管新生緑内障高眼圧症原発閉塞隅角緑内障小児緑内障13眼7眼2眼2眼2眼2眼1眼1眼性別(男/女)12例17眼C/9例13眼年齢C68.8±5.0歳薬剤スコアC4.6±0.2点Humphrey自動視野計中心プログラム24-2CMD値C.12.7±2.6CdBCNS20b1.5NS1510眼圧(mmHg)1.31.10.90.70.50.3logMAR視力50.1-0.1-0.30変更前変更後1カ月変更後3カ月変更前変更後1カ月変更後3カ月NSc20-0.5d20NS15101510眼圧(mmHg)眼圧(mmHg)5500変更前変更後1カ月変更後3カ月変更前変更後1カ月変更後3カ月図2視力,眼圧の推移a:logMAR視力,Cb:GAT,Cc:タフルプロスト/チモロールへ変更したC12眼のCGAT,Cd:ラタノプロスト/チモロールへ変更したC13眼のCGAT.すべてにおいて変更前,変更後C1カ月,3カ月で有意差はなかった.(117)あたらしい眼科Vol.39,No.8,2022C1127a充血b刺激c掻痒感5NS5NS5NS4443331.71.721.2±1.7221.01.00.81.20.5±1.70.6±1.0111000-1-1-1変更前変更後1カ月変更前変更後1カ月変更前変更後1カ月d疼痛e霧視fくぼみNS54NS55443331.51.51.3±1.22220.30.70.2±0.7111000-1-1-1変更前変更後1カ月変更前変更後1カ月変更前変更後1カ月g睫毛の伸び5NS4321.01.80.5±1.210-1変更前変更後1カ月Pairedt-test図3自覚症状の変化すべての項目において変更前,変更後C1カ月で有意差はなかった.図4変更前後でどちらがよいかで,GATは変更前C13.0C±2.7CmmHg,変更後C1カ月C12.5C±3.0CmmHg,変更後C3カ月C13.5C±1.5CmmHgといずれも有意差はなかった(図2c).ラタノプロストからラタノプロスト/チモロールへの変更はC13眼で,GATは変更前C13.8C±2.2CmmHg,変更後C1カ月C12.9C±2.3CmmHg,変更後C3カ月C14.3±5.0CmmHgといずれも有意差はなかった(図2d).トラボプロストからトラボプロスト/チモロール,ラタノプロストからラタノプロスト/カルテオロールへの変更はそれぞれC2眼であり,統計解析は行わなかった.点眼変更後に新たに副作用を認めた症例はC6例(28.5%)あった.内訳は掻痒感C1例(4.8%),結膜炎C2例(9.5%),霧視C3例(14.3%)であった.掻痒感を自覚したC1例ではアイラミド配合懸濁性点眼液の中止を余儀なくされた.角膜スコアは,変更前C0.53C±0.92点,変更後C1カ月C0.43C±0.84点で,変更前後で有意差を認めなかった.結膜スコアは,変更前にC1点以上だった症例はC1眼のみで,変更前のC2点から変更後C1カ月でC1点になった.変更前,変更後C1カ月での自覚症状のアンケート結果を図3に示す.充血,刺激,かゆみ,痛み,かすみ,眼のくぼみ,まつげの伸びのすべての項目で,変更前後で有意差を認めなかった.変更後C1カ月のアンケートでは,「変更後が変更前よりもよい」がC75%,「変更前が変更後よりもよい」がC15%,「変更前後で同じ」がC10%であった(図4).患者の自己申告による点眼忘れの回数は,変更前C0.33C±0.71回,変更後C1カ月C0.09C±0.29回で,変更後に有意に点眼忘れの回数が減少した(p=0.043).III考按緑内障診療ガイドライン(第C4版)では,緑内障の多剤点眼は副作用の増加やアドヒアランスの低下につながることがあり,アドヒアランスの向上のために配合点眼液の使用も考慮すべきと提言している1).今回,久留米大学病院眼科で,PG関連薬,Cb遮断薬/CAI配合点眼液,Ca2刺激薬を含む多剤点眼を処方されていた緑内障患者に対し,配合点眼液をCb遮断薬/CAIのC1種類からCPG関連薬/Cb遮断薬とCa2刺激薬/CAIのC2種類に増やすことで,点眼数および点眼回数を減らすことを試みた.本研究では処方変更の前後で,視力,眼圧に有意な変化を認めなかった.ブリモニジン酒石酸塩とブリンゾラミドの薬剤の組み合わせにおいて,配合点眼液と単剤併用の比較で眼圧下降効果は同等であったことが報告されている2).また,PG関連薬とCb遮断薬の薬剤の組み合わせにおいて,トラボプロスト/チモロール,タフルプロスト/チモロールの配合点眼液ではそれぞれの単剤併用と比べて眼圧下降効果は同等であったが3,4),ラタノプロスト/チモロールの配合点眼液では単剤併用と比べて眼圧下降効果が劣っていたと報告されている5).チモロールの単剤がC1日C2回点眼であるのに対し,配合点眼液ではチモロールがC1日C1回点眼となるため眼圧下降効果が減弱する可能性が指摘されている6).今回の処方変更でもCb遮断薬の点眼回数が変更前のC2回から変更後はC1回と減っているが,処方変更後も同等の眼圧下降効果が得られたのは,点眼忘れの回数が有意に減少するなどアドヒアランスが改善したことも一因としてあるのではないかと思われる.配合点眼液による点眼回数の減少は,アドヒアランスの向上だけでなく,点眼液に含まれる防腐剤などによる角結膜上皮障害を軽減する効果も期待される.ただし,本研究での角膜・結膜スコアは変更前後で明らかな有意差を認めなかった.また,アンケート調査でも,充血,刺激,かゆみ,痛み,かすみ,眼のくぼみ,まつげの伸びのすべての項目で,自覚症状は変更前後で明らかな有意差を認めなかった.今回の処方変更に対するアンケート調査で,「変更後のほうがよい」と答えた症例はC75%であり,そのおもな理由は点眼回数の減少であった.一方で,「変更前のほうがよい」と答えた症例もC15%あり,そのおもな理由は霧視であった.緑内障点眼の耐えられない副作用の一つとして霧視をあげている報告もあり7),もともと懸濁液を含まない多剤点眼からアイラミド配合懸濁性点眼液を含む処方に変更する場合は,点眼後に一過性に霧視を自覚する可能性があることについて十分に説明する必要があると思われる.緑内障の点眼加療は,単剤投与から始めて目標眼圧に達しなければ薬剤変更あるいは追加を行うことが基本であるが,実際の臨床では多剤点眼を処方されている緑内障患者も多い.本研究の結果から,PG関連薬/Cb遮断薬配合点眼液およびCa2刺激薬/CAI配合点眼液への処方変更による点眼数および点眼回数の減少は,点眼加療の効果とアドヒアランスを維持したうえで,患者の満足度向上にもつながる可能性があると思われる.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)日本緑内障学会緑内障診療ガイドライン作成委員会:緑内障ガイドライン(第C4版).日眼会誌122:5-53,C20182)Gandol.CSA,CLimCJ,CSanseauCACCetal:RandomizedCtrialCofbrinzolamide/brimonidineversusbrinzolamideplusbri-monidineforopen-angleglaucomaorocularhypertension.AdvTherC31:1213-1227,C20143)InoueCK,CSetogawaCA,CHigaCRCetal:OcularChypotensiveCe.ectandsafetyoftravoprost0.004%/timololmaleate0.5%C.xedCcombinationCafterCchangeCofCtreatmentCregimenCfromb-blockersandprostaglandinanalogs.ClinOphthal-molC6:607-612,C20124)桑山泰明,DE-111共同試験グループ:0.0015%タフルプロスト/0.5%チモロール配合点眼液(DE-111点眼液)の開放隅角緑内障および高眼圧症を対象としたオープンラベルによる長期投与試験.あたらしい眼科C32:133-143,C20155)QuarantaL,BiagioliE,RivaIetal:ProstaglandinanalogsandCtimolol-.xedCversusCun.xedCcombinationsCorCmono-therapyCforopen-angleCglaucoma:aCsystematicCreviewCandCmeta-analysis.CJCOculCPharmacolCTherC29:382-389,C20136)WebersCA,BeckersHJ,ZeegersMPetal:TheintraocuC-larpressure-loweringe.ectofprostaglandinanalogscom-binedCwithCtopicalCbeta-blockertherapy:aCsystematicCreviewCandCmeta-analysis.COphthalmologyC117:2067-2074,C20107)ParkCMH,CKangCKD,CMoonCJCetal:NoncomplianceCwithCglaucomaCmedicationCinCKoreanpatients:aCmulticenterCqualitativestudy.JpnJOphthalmolC57:47-56,C2013***