●連載218監修=岩田和雄山本哲也218.緑内障診療からみる木ノ内玲子旭川医科大学医学部医工連携総研講座,同大眼科学講座遠隔医療川井基史旭川医科大学眼科学講座ICT(informationandcommunicationtechnology)の進歩・普及はめざましく,また急速である.医療においてもICTをうまく利用することで,遠隔地の患者に専門医療を提供でき,通院回数を減らす効果が期待できる.緑内障診療から見る眼科遠隔医療の実際について紹介し,また,遠隔医療の現在の問題点についても言及する.●はじめに緑内障の診断には,陳旧性網膜静脈閉塞症や,他の視神経疾患の除外,病型分類のための隅角検査や前房炎症の有無の確認などが必要で,現在のところ遠隔診療のみでの診断はむずかしい.旭川医科大学では地域の眼科医をサポートする形で,緑内障診療に遠隔医療システムを利用している1).●リアルタイム遠隔診療仮想プライベートネットワーク(virtualprivatenet-work:VPN)を利用し,地方病院の眼科医から患者のリアルタイムの診察画像(細隙灯顕微鏡所見など)を送信してもらい,遠隔地の患者の診療を行うものである(図1).利点としては遠隔診療したうえで,患者と直接コミュニケーションが取れることである.事前に聞いていた情報ではつかめなかった印象がとらえられ,問診の追加や手術の決断が可能である.手術を決定した際は,“こちらで引き受けさせてもらいます”といった説明ができるので,患者との信頼関係構築に役立ち,また,遠隔地から外来受診してもらうことなく,直接入院が可能となる.このシステムを緑内障の術後管理に利用することもある2).リアルタイム診療では,診療報酬を相談側と折半できるという利点もある.リアルタイム診療の欠点としては,設備投資や通信費といった経費に加え,相談側と相談を受ける側との時間調整の手間があげられる.●遠隔相談システムインターネットの遠隔相談システムで,地方病院の眼科医からの相談を受けるものである.リアルタイムではないので,相談をする側も答える側も余裕をもって利用できる.地方に派遣している眼科医を支援する機能を果たしており,さまざまな専門分野の相談が寄せられる3).緑内障では,光干渉断層計や視野などの画像を添付して(85)0910-1810/18/\100/頁/JCOPY図1リアルタイム遠隔診療カメラ画像やスリット画像を切り替えて利用できる.の診断や治療方針の相談があり,専門医の意見が求められたりする(図2).欠点としては,セキュリティの確保のため管理者(旭川医大遠隔医療センター)に負担がかかる点である.相談は個人情報を除いた情報でやり取りを行い,パスワードでログインする形態をとっているが,個人情報の厳格化で,個人の名前だけでなく,虹彩紋理も個人識別符号と定義されたため,一層の注意が必要となってきている.●インターネットを利用した眼底写真検診インターネット上の「ウェルネットリンク」を利用して,眼底写真の検診を行っている(図3).「ウェルネットリンク」は旭川医大の遠隔医療センターが運営するネット上の健康医療情報管理システムで,バイタルデータの管理や健康診断結果の管理ができるようになっている.ウェルネットリンク上の画像を見て,診察が必要と判断された人には二次検査を受けるように案内を出している.現在,この検診は北海道留萌市の協力のもと,臨床研究として行っている.あたらしい眼科Vol.35,No.8,20181091図2遠隔相談システム画像や病歴などを載せ,相談したい医師や専門グループを指定する.図4モバイルを利用した医師間のコミュニケーション簡便で迅速な連絡が可能である.●医療関係者間コミュニケーションアプリを利用したモバイル端末での相談モバイル端末(スマートフォン)での情報のやり取りは,簡便かつ汎用性があり,医療での活用も進められてきている.救急の場面では,CTなどの画像を迅速に専門医のモバイル端末に送信することで,専門医がどこに居ようともコンサルトが可能で,迅速に指示をもらうことができる.1092あたらしい眼科Vol.35,No.8,2018図3眼底写真検診眼底画像をクリックすると拡大した眼底画像がみられる.読影結果を入力し回答する.当院では医療コミュニケーションアプリ「Join」(アルム)を研究として導入しており,外科救急と眼科診療で活用している(図4).このアプリケーションはLINEのようなコミュニケーション様式となっており,診療相談や情報共有,業務連絡に使われている.アプリケーションで使用する患者画像情報はモバイル端末に残らず,クラウドに保存される.また,画像情報に個人情報は載せないようにして,運用している.●今後無散瞳眼底カメラによる写真を遠隔地でスクリーニングし,要精査の人には医療施設で光干渉断層計をはじめとした検査を受けてもらい,眼科医はどこにいてもデータから緑内障と診断することが,技術的には遠くない将来に可能となる.ソフト面で追いつかなければならない課題として,個人情報の取り扱いルールの明確化,ネットセキュリティの確保,責任の所在の明確化,診療報酬,対面診療の意義の明確化などがあげられる.患者も医療者側も遠隔医療の恩恵を受けられるよう,課題を解決していく必要がある.文献1)石子智士,木ノ内玲子,花田一臣ほか:【遠隔医療を推進する旭川医科大学の取り組み】眼科における遠隔医療の意義.日遠隔医療会誌10:4-7,20142)山口亨,石子智士,木ノ内玲子ほか:遠隔医療システムを活用した眼科術後管理の有用性.日遠隔医療会誌9:33-38,20133)花田一臣,石子智士,守屋潔ほか:遠隔医療支援システムを活用した眼科遠隔医療の運用実績.日遠隔医療会誌9:125-128,2013(86)