●連載210210.フェムトセカンドレーザー白内障手術におけるハイドロダイセクション監修=木下茂大橋裕一坪田一男増田洋一郎東京慈恵会医科大学葛飾医療センター眼科フェムトセカンドレーザー白内障手術(FLACS)における水晶体内ガス発生は,ハイドロダイセクションによりCcapsularblocksyndrome(CBS)の合併症リスクを増大させることが指摘されている.一方で超音波チップスリーブ孔からの灌流をハイドロダイセクションに応用する灌流ハイドロダイセクション法は,CBSのリスクを回避でき,低侵襲にCFLACSでハイドロダイセクションを行うことが可能である.●はじめにフェムトセカンドレーザー白内障手術(femtosecondlaserCassistedCcataractCsurgery:FLACS)は,正確な前.切開の作製,水晶体核の切開・細分化を低侵襲に行える手技である.しかし,FLACSにおける問題点も指摘されており,その一つがレーザー照射によって発生するガスに起因する合併症である.水晶体内のレーザー誘発性ガスは,その大部分が水晶体.内に留まるため,.内から解放されない限り.内圧を上昇させ続ける.その状態で従来の徒手的にシリンジに陽圧をかけて行うハイドロダイセクション(以下,ハイドロ)を施行すると,.内に注入された灌流液が水晶体を前方へ挙上させ,水晶体-前.切開縁ブロック(図1a)をきたしやすく,注水を続けることでさらに.内圧を上昇させ(図1b),いわゆる術中CcapsularCblockCsynC-drome(CBS)を発症させる1)(図1c).しかし,超音波チップスリーブ孔からの灌流を応用した灌流ハイドロダイセクション法は,ハイドロ施行前に溝掘り・核分割を最初に行い,①.内にトラップされたガスの大部分を吸引除去し.内圧を減圧できること(図2a),②水晶体核前後のバイパス形成により水晶体-前.切開縁ブロックを予防できること,③ハイドロ施行時に超音波チップからの意図的な吸引によって誘発されるスリーブ側孔から吸引流量と同量の灌流を用いてハイドロを行うため,灌流液の自然落下もしくは流量に依存せず灌流圧をコントロールしている水晶体乳化吸引術(phacoemulsi.cationandaspiration:PEA)装置では眼内圧を減圧して,流量に依存して能動的に灌流圧をコントロールしているCPEA装置では眼内圧を変化させずにハイドロを行える(図2b)ことから,ハイドロによる高眼圧性合併症のリスク回避に非常に適した手技であるといえる2).C●灌流ハイドロダイセクションの手技実際の手技を解説する.超音波チップを前房内に挿入後,前方水晶体皮質を可能な範囲で除去する.この目的は,後.側からハイドロを行った際の灌流の通路を作り,前.側のハイドロ効果を得やすくするためである.その後,水晶体中央の溝掘りを行い,核分割を行う(図2a).この際に水晶体.内からガスが脱臼し,.内圧を減少させることが可能となる.眼内視認性確保のためこのガスを吸引除去する.核分割時にチップとフックで分割状態を維持しながら意図的にフットペダルをポジショ図1FLACSにおけるcapsularblocksyndrome(CBS)a:レーザー照射により発生した水晶体.内ガスとハイドロダイセクション時の注水が.内圧を上昇させることで水晶体を前方へ移動させ,水晶体C-前.切開縁ブロックを生じる.Cb:注水を続けることで,.内圧が急激に上昇する.Cc:.内圧上昇に耐えきれなくなった後.が破損し,CBSを発症する.C(93)あたらしい眼科Vol.34,No.11,2017C15770910-1810/17/\100/頁/JCOPY表1PEA装置による灌流ハイドロ設定(例)PEA装置ポンプチップスリーブ吸引圧灌流圧流量超音波CSignaturePROCVenturiC20G20G(黄)C170CmmHgC50CcmH2OC─C0CConstellationCVenturiC20Gmicro(紫)C200CmmHgC60CcmH2OC─C0CCenturionCPeristalticC20Gultra(赤)C350CmmHgC36CmmHgC45Ccc/minC0図2灌流ハイドロダイセクション手技(後.側)a:前方水晶体皮質除去・中央溝掘り・分割時に.内ガスを後.側から前房へ脱臼させ,.内圧を減少させることができる.前房側に移動してきたガスは吸引除去される.Cb:灌流ハイドロダイセクション:分割状態を維持しながら超音波チップからの意図的吸引により吸引流量と同量の誘発灌流により後.側からハイドロを行う.その際ハイドロダイセクションを行いたい後.部分へスリーブ側孔を向けることが重要である.必要に応じて溝掘りされた部分の数カ所で同様の操作を行う.C図4灌流ハイドロダイセクション手技(前.側)a,b:以上の手技だけでは前.下接着が解除できずハイドロ効果が不十分の場合には,スリーブ側孔を前.切開縁へ向け,意図的吸引によりスリーブ側孔からの灌流を誘発して前.下の灌流ハイドロを行う.ンC2(灌流・吸引)にし,超音波チップから眼内液を吸引することで,吸引流量と同量の灌流をスリーブ側孔から後.へ流す操作を行う(図2b).この操作が灌流ハイドロ法である.手技のポイントは,灌流液を流し込みたい後.部分にスリーブ側孔を向けること,灌流が回るまでゆっくりとした操作で行うことである.灌流ハイドロはそのエネルギーとなる動圧と動力が重要であり,それは流量とスリーブ孔面積に依存する.灌流ハイドロは,フットペダルでダイレクトに吸引圧を上昇させることで流量をコントロールできるベンチュリーポンプマシンで行いやすい.灌流ハイドロ設定値の例を提示する(表1).以上の手技でハイドロが完成することが多いが(図1578あたらしい眼科Vol.34,No.11,2017図3ハイドロダイセクション完成3),前.側の接着が解除されていない場合はスリーブ側孔を前.切開縁へ向け,意図的吸引で誘発されたスリーブ灌流を水晶体前方から皮質..間に流す操作を行う(図4).C●おわりに灌流ハイドロ法は,眼内圧上昇を回避できる手技のため,CBS予防のみならず,浅前房,創口不全,術中虹彩緊張低下症候群(intraoperativeC.oppyCirisCsyn-drome:IFIS)症例によるハイドロ時虹彩脱出予防,前部硝子体膜への圧負荷による破損予防など,従来法の圧上昇起因性合併症の回避にも有用であり,この手技による特異的な合併症もない.そのため灌流ハイドロ法はユニークで,低侵襲で安全で再現性の高い手技といえる.謝辞:本原稿をご校閲くださいました常岡寛名誉教授,大木孝太郎先生,高橋現一郎先生,岩城久泰先生,渡邊朗先生,岡本俊紀先生,加藤能利子先生,桐山明子先生に深謝いたします.文献1)RobertsTV,SuttonG,LawlessMAetal:Capsularblocksyndromeassociatedwithfemtosecondlaser-assistedcata-ractCsurgery.CJCCataractCRefractCSurgC37:2068-2070,C20112)MasudaCY,CIwakiCH,CKatoCNCetCal:IrrigationCdynamicCpressure-assistedhydrodissectionduringcataractsurgery.CClinOphthalmolC11:323-328,C2017(94)