監修=大橋裕一連載MyboomMyboom第29回「加藤弘明」本連載「Myboom」は,リレー形式で,全国の眼科医の臨床やプライベートにおけるこだわりを紹介するコーナーです.その先生の意外な側面を垣間見ることができるかも知れません.目標は,全都道府県の眼科医を紹介形式でつなげる!?です.●は掲載済を示す(●は複数回)連載MyboomMyboom第29回「加藤弘明」本連載「Myboom」は,リレー形式で,全国の眼科医の臨床やプライベートにおけるこだわりを紹介するコーナーです.その先生の意外な側面を垣間見ることができるかも知れません.目標は,全都道府県の眼科医を紹介形式でつなげる!?です.●は掲載済を示す(●は複数回)自己紹介加藤弘明(かとう・ひろあき)京都府立医科大学視覚機能再生外科学私は2004年に京都府立医科大学を卒業し,同大学附属病院で2年間のスーパーローテート研修を行った後に,眼科学教室に入局しました.入局後,大学病院で1年間,関連病院で5年間,眼科の臨床経験を積んだ後,2012年から母校の大学院に進学し,ドライアイに関する研究を行っています.今回は,私の専門かつMyboomであるドライアイにまつわるお話をさせていただきます.ドライアイを選んだ理由私が,ドライアイに興味をもつようになったのは,大学病院での研修中に,横井則彦准教授のドライアイ外来で勉強させていただいているときでした.横井先生の診療では,涙液や角結膜の所見から病態を推測し,治療を進めていく過程が完璧といえるほどの美しい論理で構成されていて,当時,ドライアイについてなにもわかっていなかった私にとって,それはまるで魔法のように思えました(これが,他大学の先生方がおっしゃる「横井ワールド」の魅力なのかもしれません).そんな横井先生が外来をされている様子はとても楽しそうで,「横井先生が見ている世界を見てみたい」と思うようになったのが,私がドライアイを専門にしたいと思ったきっかけでした.一つ目の転機―シドニーでの講演―2009年の夏,ある転機が訪れました.横井先生から,シドニーのドライアイのシンポジウムに呼ばれたので,(91)0910-1810/14/\100/頁/JCOPY一緒に行ってみないかというお誘いがありました.私の分の旅費も主催者側がサポートしてくれるとのことであり,「外国に無料で行ける?!これは行くしかない!」というやや不純な動機もありながらも,「行きます」と返事したところ,何日かして主催者の先生からメールをいただきました.ただ出席するだけと思っていたシンポジウムでしたが,若手研究者が集まって行うsessionで涙液油層のダイナミクスについて講演してほしいとのことでした.「話が違う!」と思いながらも,結局引き受けることにしたのですが,横井先生に相談したところ,まずはこれを読みなさいと,多量の英語論文を紹介されました.英語の論文を読んで,それを英語でスライドにまとめるなんてやったこともなかったため,泣きそうになりながら必死でスライドを作ったのを覚えています.今から思えば,このときの勉強が涙液の基礎研究に関する知識を深める良い機会になったと思います.シンポジウムは,世界中の涙液・ドライアイの研究者(とその弟子の若手研究者)が集まって,お互いの研究分野の話をしてコラボレーションの機会を作ろうというコンセプトのものでした.シンポジウムに参加して驚いたのは,参加者のうち,横井先生と私を含めて臨床家は3人だけで,あとはすべて基礎研究の先生たちばかりでした.しかも生物系の研究者だけでなく,物理や化学を専門とする研究者が多く,シンポジウムの内容は,私がそれまでに参加してきたものとは趣向が大きく異なるものでした.涙液は物理学者や化学者から見ても,とても興味深い性質をもつものだったようで,そのとき,私がそれまでにもっていたものとまったく異なる涙液の見方があることを知り,私の中の涙液のイメージが大きく変わっていくことに,とても興奮を覚えました.なお,万端(?)な準備のおかげで,シンポジウムでの私の講演は大きな問題なく終了し,その日の夕方の飲あたらしい眼科Vol.31,No.6,2014865写真1シドニーの日本食レストランにてシンポジウムで出会った友人たちと.み会では,若手研究者同士で親睦を深めました(写真1).このときに出会った研究者たちとは,その後も海外学会で出会うことがあり,彼らは今でも本当に大切な友人です.昨年のTFOSの後には,ブルガリアの友人が横井先生と私を連れて,ブルガリアを案内してくれました(写真2).おそらく日本人が誰も行ったことがないだろう多くの場所に連れていってくれて,横井先生と私は,その友人とのシドニーでの出会いに本当に感謝したことを覚えています.また,このシドニーでのシンポジウムに参加して以降,私は涙液に関する物理・化学・数学の論文も読むようになりました.生物系の論文だけでは知ることのできないドライアイの姿を垣間見ることができ,私はますますドライアイにハマっていきました.二つ目の転機―新しいドライアイ点眼液の登場―その後,私のドライアイ人生に二つ目の転機が訪れました.それは新しいドライアイ点眼の登場です.2010年12月にジクアスR,2012年1月にムコスタRが発売され,約15年ぶりの新しいドライアイ点眼の登場に関係者は大いに盛り上がりました.2剤とも眼表面のムチンを増やすというこれまでにない画期的な作用をもち,おもに基礎研究の中でしか議論がなされていなかったドライアイとムチンの関係について,臨床の場からも新しい知見が生まれるかもしれないという,臨床の研究者にとって,ワクワクする時代の幕が開けました.当初は2剤とも,臨床において同じような薬効を示すだろうと予測されていましたが,いざこれらの点眼を使写真2ブルガリアのRoseValleyにあるカザンラク近郊の町にてブルガリアの友人たちと横井先生と.用してみると,まったく異なる効果を示すことがわかってきました.詳細についてはまだいえない部分はありますが,この2剤の薬効の違いが,今まで考えられてきたドライアイの病態の構図を大きく書き換えるものになるだろうと予想していて,今まさにドライアイの世界が大きく変わろうとしている時代の真っ只中に自分はいるのだと思うと,本当に心が躍る感じがします.おわりにとりとめのないお話をしてしまったかもしれませんが,私はドライアイを通じて,多くの人と出会い,自分の中にある世界がとても大きく広がったと感じています.私の中でドライアイはまだまだMyboomであり続けていくと信じていますし,他の多くの先生たちにもドライアイがMyboomだといってもらえるようになるように,ドライアイの世界をもっともっと面白くしていきたいと考えています.次のプレゼンターは富山大学の宮腰晃央先生です.宮腰先生ともドライアイつながりで知り合った仲で,富山大学で角膜外来の看板を背負って頑張っておられます.一体どんなMyboomを紹介してくださるのか,とても楽しみです.よろしくお願いいたします.注)「Myboom」は和製英語であり,正しくは「Myobsession」と表現します.ただ,国内で広く使われているため,本誌ではこの言葉を採用しています.866あたらしい眼科Vol.31,No.6,2014(92)