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緑内障:緑内障の視神経乳頭形態パターン

2017年8月31日 木曜日

●連載206監修=岩田和雄山本哲也206.緑内障の視神経乳頭形態パターン澤田有秋田大学大学院医学系研究科医学専攻病態制御医学系眼科学講座緑内障は多因子性疾患であり,視神経乳頭はその背景因子の影響を受けて特有な形状を呈する.これまでいくつかの緑内障性視神経乳頭形態分類が提唱されているが,今回はCNicolelaらの分類を紹介する.特徴的な形状の視神経乳頭とその臨床背景は,緑内障がさまざまな病態の集合体であることを示唆している.C●はじめに開放隅角緑内障は多因子性疾患といわれ,発症に関与する因子は症例により異なっている.眼圧は各症例に共通の危険因子であり,そのほかに年齢・性別・人種・家族歴・心血管疾患・高血圧・低血圧・糖尿病・近視などが報告されている.これらの背景因子はその症例の緑内障発症メカニズムに深く関係しており,視神経乳頭はそのメカニズムに特徴的な形態を呈すると考えられている.これまでいくつかの緑内障性視神経乳頭形態分類が報告されているが,そのなかでも有名なのがCNicolelaらの分類であり1),緑内障眼の視神経乳頭を局所障害(FI)型・びまん性障害(GE)型・加齢(SS)型・近視(MY)型のC4型に分けている.C●局所障害(focallyinjured:FI)型耳下側ときに耳上側の局所的リム狭小化がみられるが,そのほかの部分のリムは比較的保たれている.この型は,障害部位がフルオレセイン蛍光眼底造影検査で低蛍光を示すため,当初局所虚血型(focalischemictype)とよばれていたが,虚血は組織障害の結果である可能性もあるため,現在は局所障害型とよばれている.この型は典型的には中高年の女性にみられ,正常眼圧なことも高眼圧なこともある.片頭痛やCRaynaud現象が多く,血管攣縮が緑内障の病態に深くかかわっている可能性がある.組織障害のある部分に視神経乳頭出血が高頻度にみられる.視野障害は,固視点近傍を含む限局性の深い暗点が視神経乳頭耳下側の障害に対応して,おもに上方に出現する.C●びまん性障害(generalizedenlargementoftheopticdisc:GE)型視神経乳頭陥凹が丸く同心円状に拡大し,リムの局所的狭小化がみられない.若年者に多く,ほとんどすべての症例で高眼圧を呈する.このためこの型は,高眼圧によって緑内障性障害が生じるCpureCpressure-relatedopticCdiscCchangeと認識されている.視野障害はびまん性の比較暗点を示し,暗点の境界は不明瞭である.近年COCTを用いた研究で,この型において深い前部篩状板深度が報告され2),若年者の柔軟な篩状板に高眼圧によるストレスがかかり,篩状板の変形が生じていることが示唆された.C●加齢(senilesclerotic:SS)型視神経乳頭陥凹は皿状で浅く,残存しているリムは白色調で,乳頭周囲全周に広い乳頭周囲網脈絡膜萎縮(parapapillaryCatrophy:PPA)がみられる.眼圧は高眼圧・正常眼圧いずれの場合もある.この型の緑内障は高齢者に多く,虚血性心疾患や高血圧を高頻度に合併するため,加齢による視神経乳頭の慢性的な虚血によって引き起こされると考えられている.広範なCPPAも視神経乳頭周囲組織の虚血に関係しているといわれる.視野障害は限局性なことが多いが,暗点の深さは急嶮ではなく,固視点から離れていることが多い.OCTを用いた研究で,SS型の前部篩状板深度は浅く,正常域と大きくオーバーラップしていることが報告された2).このことは,この型では加齢により篩状板の柔軟性が失われ,緑内障性ストレスを受けても陥凹が深くならず,軸索障害は篩状板変形による機械的な障害よりも血流障害などを介して生じていることを示唆している.C●近視(myopicglaucomatousdisc:MG)型視神経乳頭傾斜と耳側コーヌスを有し,耳上側・耳下側に緑内障性リム狭小化を認める.若年男性に多く,日本人を含むアジア人種に頻度が高い.眼圧は高眼圧・正常眼圧いずれの場合もある.視野障害は限局性で,高頻度に固視点近傍の暗点を認める.(69)あたらしい眼科Vol.34,No.8,2017C11430910-1810/17/\100/頁/JCOPY図1緑内障性視神経乳頭の4型とその特徴a:局所障害型.耳下側に局所的リム狭小化がみられるが,そのほかの部分のリムは比較的保たれている.b:びまん性障害型.陥凹が丸く同心円状に拡大し,リムの局所的狭小化がみられない.Cc:加齢型.陥凹は皿状で浅く,残存しているリムは蒼白.視神経乳頭周囲に広い網脈絡膜萎縮を有する.Cd:近視型.乳頭傾斜と耳側コーヌスを有し,耳上側・耳下側に緑内障性リム狭小化を認める.(文献C2より改変)C●おわりに文献多くの緑内障症例は上記C4型の混合型と考えられ,典1)NicolelaCMT,CDranceCSM:VariousCglaucomatousCopticnerveCappearances:ClinicalCcorrelations.COphthalmologyC型的な例は実際にはむしろ少ない.また,いずれの型も103:640-649,C1996病期が進行すると類似してきて,4型に分類するのはむ2)SawadaCY,CHangaiCM,CMurataCKCetCal:LaminaCcribrosaCずかしくなる.それでも,詳細な観察に基づくこの分類depthCvariationCmeasuredCbyCspectral-domainCopticalCは,発表から年月が経った現在でも示唆に富んでおり,coherenceCtomographyCwithinCandCbetweenCfourCglauco-緑内障は眼圧に対する感受性という共通の特徴をもつ,matousCopticCdiscCphenotypes.CInvestCOphthalmolCVisCSciC56:5777-5784,C2015異なる病態の集まりであるという概念を提示している.1144あたらしい眼科Vol.34,No.8,2017C(70)

屈折矯正手術:円錐角膜(疑い)眼に対する後房型有水晶体眼内レンズ挿入術

2017年8月31日 木曜日

監修=木下茂●連載207大橋裕一坪田一男207.円錐角膜(疑い)眼に対する後房型山村陽バプテスト眼科クリニック有水晶体眼内レンズ挿入術ガイドラインでは,円錐角膜疑い眼に対するCLASIKは禁忌で,有水晶体眼内レンズ挿入術は慎重を要するとなっている.眼鏡矯正視力が良好な円錐角膜疑い眼に対する後房型有水晶体眼内レンズ挿入術の治療成績は良好である.今後,円錐角膜眼であっても角膜クロスリンキングや角膜内リングとの組み合わせによって適応が広がるかもしれない.C●眼内レンズ(intraocularlens:IOL)の進歩わが国ではC2010年にCSTAARCSurgical社のCImplant-ableCCollamerCLens(ICL)が,翌年には乱視矯正用のICLがそれぞれ後房型有水晶体眼内レンズ(以下,pha-kicIOL)として認可された.さらにC2014年に光学部中央に貫通孔がついたCICL(KS-AquaPORT)が承認され1),従来必要であった虹彩切開が不要となった(図1).2016年には,夜間の視機能改善効果を期待して光学部径を大きくさせた貫通孔付きCICL(モデル名:EVO+)が登場した.EVOはCEVOLUTION(進化)を,+は光学部が拡大したことを表している.C●円錐角膜疑い眼に対するICL挿入術LaserCinCsituCkeratomileusis(LASIK)などの角膜屈折矯正手術が不適応の強度近視眼のみならず,眼鏡矯正視力が良好な軽度・中等度の円錐角膜や円錐角膜疑い眼に対してもCICLを用いた眼内屈折矯正手術の有用性が報告されている2,3).円錐角膜に対する適応について,LASIKではその疑い症例も含めて禁忌とされているが,phakicCIOL挿入術では円錐角膜疑い(keratoconusCsus-pect:KCS)症例には慎重を要するとガイドラインに記されている4).KCSとは,角膜の突出や菲薄化が明瞭で,FleischerリングやCVogt線条などの臨床上明らかな円錐角膜の特徴的所見を認めないが,角膜形状解析装置の円錐角膜自動診断プログラムでは円錐角膜が疑われる症例をさす.円錐角膜は両眼性疾患であるため,片眼のみが円錐角膜疑いと診断された場合でも,両眼の異常と判断する必要がある.円錐角膜やCKCS眼に対するCLASIKは,重篤な術後合併症のCkeratectasiaを生じる可能性があり,術前スクba図1ImplantableCollamerLens(ICL)a:光学部中央に貫通孔がないICL.Cb:光学部中央に貫通孔があるCICL(KS-AquaPORT).リーニングは重要である.当院では,TMS(トーメーコーポレーション)のCkeratoconusCindex(KCI)やCker-atoconusCseverityCindex(KSI)が陽性の場合にはCICL挿入術を行う.KCIは円錐角膜診断の特異度が,KSIは感度がそれぞれ高い.また,KCIとCKSIが陰性,OPD-Scan(ニデック)の診断プログラムCcornealCnavigatorでCKCやCKCSが検出されたり,Orbscan(Baush&Lomb)の後面カラーコード(20μmスケール表示)で中心3Cmm以内にC4色以上が検出された場合には,Epipolis(epi)-LASIKを行っている.KCS眼に対するCICL挿入術の治療成績(8例C16眼.年齢C36.3C±5.8歳,術前自覚屈折度数C.8.02±1.93D,術前自覚乱視度数.1.13±0.59D)について自験例で検討すると,術後C1年における安全係数(術後平均矯正視力/術前平均矯正視力)はC1.26,有効係数(術後平均裸眼視力/術前平均矯正視力)はC1.18,屈折誤差C±0.5D以内の割合はC93%であった2).(67)あたらしい眼科Vol.34,No.8,2017C11410910-1810/17/\100/頁/JCOPYab図2角膜内リング挿入前後の角膜形状変化a:術前,b:術後C4年.角膜内リング挿入術後,下方角膜の突出が改善されている.●円錐角膜眼に対する角膜内リングとICL挿入術の併用近年,角膜内リング5)や角膜クロスリンキング施行眼に対するCICL挿入術の良好な結果が報告されている.代表症例を供覧する.35歳男性,左眼.角膜内リング挿入術の術前視力は(0.4C×sph.12.5(cyl.3.5CAx110°)で,術後C4年の視力はC0.04(0.9C×sph.11.0(cyl.1.5Ax120°)に改善した.さらにその後のCICL挿入術によって術後C3カ月の視力はC1.5(n.c.)となり,裸眼視力の改善が得られた(図2,3).C図3角膜内リングとICL2本の角膜内リングと,瞳孔中央にCICLの貫通孔がみえる.C●おわりに今後このような治療の組み合わせによってCICL挿入術の適応が広がり,さらなる視機能改善が得られる可能性がある.ただし,現在のガイドラインでは円錐角膜眼に対するCICL挿入術は禁忌で慎重を要するとある点には,十分に注意しておかなければならない.文献1)ShimizuCK,CKamiyaCK,CIgarashiCACetCal:IntraindividualCcomparisonofvisualperformanceafterposteriorchamberphakicCintraocularClensCwithCandCwithoutCaCcentralCholeCimplantationformoderatetohighmyopia.AmJOphthal-molC154:486-494,C20122)山村陽,稗田牧,脇舛耕一ほか:円錐角膜疑い眼に対する後房型有水晶体眼内レンズ挿入術.眼科手術C26:C85-90,C20133)KamiyaK,ShimizuK,KobayashiHetal:Three-yearfol-low-upofposteriorchambertoricphakicintraocularlensimplantationCforCtheCcorrectionCofChighCmyopicCastigma-tismineyeswithkeratoconus.BrJOphthalmolC99:177-183,C20154)屈折矯正手術のガイドライン─日本眼科学会屈折矯正手術に関する委員会答申─.日眼会誌114:692-694,C20105)CoskunsevenCE,COnderCM,CKymionisCGDCetCal:CombinedCintacsCandCposteriorCchamberCtoricCimplantableCCollamerClensCimplantationCforCkeratoconicCpatientsCwithCextremeCmyopia.AmJOphthalmolC144:387-389,C20071142あたらしい眼科Vol.34,No.8,2017C(68)

眼内レンズ:白内障術前後の水晶体・眼内レンズの傾斜と偏心

2017年8月31日 木曜日

眼内レンズセミナー監修/大鹿哲郎・佐々木洋玉置明野369.白内障術前後の水晶体・眼内独立行政法人地域医療機能推進機構中京病院レンズの傾斜と偏心小島隆司慶應義塾大学医学部眼科学教室近年の前眼部三次元光干渉断層計の進歩により,水晶体・眼内レンズの傾斜と偏心が計測可能となった.傾斜・偏心の値は,測定原理や定義によって異なることに留意する必要がある.水晶体後面を描出可能となったことで,術前後の比較など幅広い応用が期待される.●はじめに現在,眼球の収差が測定可能となり,角膜に関しては,前後面の厚みと形状解析から日常臨床でも詳細な検討が可能になってきた.一方,水晶体と眼内レンズに関しては,偏心と傾斜について,おもにCPurkinje-Sanson像やCScheimp.ug画像から算出する方法が報告されている1,2)が,前眼部三次元光干渉断層計(anteriorCseg-mentCopticalCcoherenceCtomography:AS-OCT)によるものでは,虹彩平面との傾きから計測した報告があり3),眼内レンズ(intraocularlens:IOL)に関するものが主であった.近年わが国で開発されたAS-OCT(CASIA2,TOMEY)では,波長C1,310CnmのCsweptCsourceによる横幅C16Cmm,深さ方向スキャン範囲C13Cmmを実現し,水晶体後面までの描出が可能となり,レンズの前後面トレースによる三次元的な傾斜と偏心の計測が可能となっている(図1).C●前眼部OCTを用いた水晶体・IOLの傾斜と偏心の定義CASIA2の傾斜(tilt)と偏心(decentration)の定義を図2に示す.CASIA2では,OCT断層像での傾斜および偏心の測定において,水晶体(またはCIOL)前後面をトレースした曲線の交点を結ぶ線の中心を水晶体(またはCIOL)の中心と定義し,角膜中心線(vertexCnormalCaxis:VNA)と水晶体中心線がなす角をCtiltとして量[°]と方向[°]が示される.また,水晶体の中心点からCVNAに降ろした垂線の長さをCdecentrationとし,量[mm]と方向[°]で示される.生体眼において傾斜・偏心はともに三次元的であるため,1断面からの計測はできず,直行する複数のCOCT断面からの計測値をベクトル計算(65)0910-1810/17/\100/頁/JCOPY図1CASIA2による水晶体形態解析画像左上:前眼部の赤外線画像にC16枚のCOCT画像から計算された水晶体の傾斜・偏心のイメージが黄色のイラストで示される.左下:3DCResult.直行する複数の断面画像による計測値から,ベクトル計算により三次元化した値が求められる.右:OCT画像.任意方向の二次元断面像を表示することができる.にて三次元化して求められる.C●白内障術前後の水晶体とIOLの傾斜と偏心JCHO中京病院にて水晶体再建術を施行し,術前の傾斜の大きかったC1例の結果を図3に示す.水晶体の傾斜は,7.6°C@191°,偏心は0.11mm@178°で,術後のIOLの傾斜は6.6°C@186°,偏心は0.19mm@185°であった.筆者らは,CASIA2による測定値は再現性が高い(ICC*0.9以上)ことを報告しており(第C56回日本視能矯正学会),また,白内障術前後の水晶体とCIOLの傾斜と偏心は高い相関を示し(r=0.727),術前後の値に有意差はなく,IOLの傾斜量は,眼軸長が長いほど,前房深度が深いほど小さいことを報告している(第C70回日本臨床眼科学会).*ICC:intraclasscorrelationcoe.cientsC●今後の臨床応用AS-OCTによる水晶体形態解析では,傾斜・偏心の計測によりCZinn小帯の断裂やCphacodonesisなどCZinn小帯脆弱性の評価が可能と考えられる.また,IOL強膜あたらしい眼科Vol.34,No.8,20171139ab水晶体中心線角膜中心線(vertexnormalaxis)図2CASIA2における傾斜(tilt)と偏心(decentration)の定義a:概念図.b:OCT画像による説明図.tilt:角膜中心線(vertexnormalaxis)と水晶体中心線がなす角.decentration:水晶体(またはCIOL)の中心点から角膜中心線に下ろした垂線の長さ.内固定術によるCIOLの固定状態の定量評価にも有用である.IOLの傾斜・偏心と収差解析結果を合わせて評価することで,より詳細な視機能評価を行うことができると考えられる.C●おわりに水晶体・IOLの傾斜と偏心については,測定原理やそefgd図3白内障術前後の右眼の水晶体形態解析画像a:術前のCOCT画像.Cb:術後のCOCT画像.Cc:前眼部画像にCIOLの傾斜・偏心結果を重ねたイメージ画像.この症例では耳下側に傾斜していることがわかる.d:術前後の計測結果.Ce:術前の水平断面のCOCT画像.Cf:術後の水平断面のCOCT画像.g:eとCfを重ね合わせた画像が示される.の定義の違いにより結果が異なることに留意し,数値を比較する際は注意が必要である.また,正常値を考える際には,水晶体では加齢による変化も考慮する必要があり,IOLでは,水晶体.サイズやCIOLのデザイン,ハプティクスの固定位置,連続円形切.(continuouscur-vilinearCcapsulorhexis:CCC)の大きさ,術後経過期間の影響などにより変化する可能性を考慮する必要がある.先進医療においてCAS-OCTによる水晶体疾患の適応は,現時点で認められていないことも留意されたい.文献1)Schae.elF:Binocularlenstiltanddecentrationmeasure-mentsCinChealthyCsubjectsCwithCPhakicCeyes.CIOVSC49:C2216-2222,C2008,2)deCCastroCA,CRosalesCP,CMarcosCS:TiltCandCdecentrationCofCintraocularClensesCinCvivoCfromCPurkinjeCandCScheimp.ugCimaging.CValidationCstudy.CJCCataractCRefractCSurgC33:418-429,C20073)KumarCDA,CAgarwalCA,CPrakashCGCetCal:EvaluationCofCintraocularClensCtiltCwithCanteriorCsegmentCopticalCcoher-encetomography.CAmJOphthalmol151:406-412,C2011

コンタクトレンズ:カラーコンタクトレンズの色素分析

2017年8月31日 木曜日

提供コンタクトレンズセミナーコンタクトレンズ処方つぎの一歩~症例からみるCL処方~監修/下村嘉一34.カラーコンタクトレンズの色素分析松澤亜紀子川崎市立多摩病院眼科●はじめにカラーコンタクトレンズ(カラーCL)には,虹彩の色を変えるためや黒目を大きく見せるためにさまざまな色素が使用されている.レンズに色素が存在することで眼表面にさまざまな影響を及ぼすことが指摘されている1).本稿ではカラーCLの色素について分析し解説する.●カラーコンタクトレンズの着色法と色素の存在部位電子顕微鏡を用いてカラーCLの切断面を観察すると,その着色方法には3種類ある2).一つ目は色素がレンズ内に埋没しているサンドイッチタイプ(図1a)で,レンズ素材で色素が完全にサンドイッチされているため,レンズ表面から離れたレンズ内に色素が存在する.二つ目はレンズ表面に近い部分に薄い被膜で覆われた色素が存在するラミネートタイプ(図1b)で,このタイプはレンズ素材に色素を練りこんだものを透明なレンズの上にラミネートしているため,色素はレンズ表面に近い部分に存在する.三つ目はレンズ表面に色素が着色されているプリントタイプ(図1c)で,レンズ表面に色素が直接プリントされているため,レンズ表面に色素が露出している.各レンズメーカーは,色素はレンズ表面に露出しない構造であるとうたっており,またすべてのレンズを電子顕微鏡で観察することも現実的ではないため,色素の存在部位を確認することは困難である.そこで,レンズ表面のざらつきが簡単にわかる方法がないかどうか,レンズのこすり洗い試験を行った.方法は,3種類のレンズを生理食塩水で洗浄後に,11名のボランティアにレンズ表面をこすってもらい,vasスコアにてざらつきが強い場合を10とした.結果は,サンドイッチタイプは0.05±0.0,ラミネートタイプは1.7±0.7,プリントタイプは4.5±1.0と明らかに差が認められた.レンズ素材の問題もあるものの,指先でざらつきがわかるほどの違いがあり,眼表面への影響が懸念される結果となった.●色素の成分近年は,「眼ヂカラ強調」「ナチュラル」「愛らしい」「クール」など目元の印象を変化させるためにカラー(63)0910-1810/17/\100/頁/JCOPYレンズ表面(10,000倍)レンズ切断面(5,000倍)a.サンドイッチタイプb.ラミネートタイプc.プリントタイプ:色素部分図1カラーコンタクトレンズの着色法と色素の存在場所(文献1より改変)CLを装用するユーザーが増え,さまざまな色調やデザインのカラーCLが販売されている.キャラクターがプリントされているレンズまであることは驚きであるが,それらの色素には,どのような成分が含まれているのだろうか?エネルギー分散型X線分光器(energydispersiveX-rayspectrometer:EDS)によりカラーCLの色素を構成する元素分析を行ったところ,図2に示すとおり,レンズ模様に一致してチタン,鉄,塩素,酸素などが検出された.マウスへの二酸化チタン気管内投与により腫瘍発生頻度が増加した報告もあり2),レンズ表面に色素が露出している場合,眼表面にさまざまな影響が生じる可能性は否定できない.あたらしい眼科Vol.34,No.8,20171137a.顕微鏡像c.チタン成分(青)d.塩素成分(黄緑)b.光学顕微鏡像e.酸素成分(緑)f.鉄成分(茶)図2エネルギー分散型X線分光器(EDS)によるカラーコンタクトレンズの色素の成分分析レンズのdot部分に一致して,チタン,塩素,酸素,鉄の成分が検出された.a:電子顕微鏡像,b:光学電子顕微鏡像,c~f:EDS元素マッピング像.(文献1より改変)●色素による眼障害色素による眼障害の原因としては,色素がレンズ表面に露出していること,またそれに伴いレンズ表面に凹凸が存在することが考えられる.実際の症例を提示する.[症例1]25歳,女性.数日前からカラーCL装用にて両眼の疼痛が出現.2日目より右眼に白い点が出現し当院受診.カラーCLは1日使い捨てタイプで,雑貨店にて購入した.右眼前眼部写真を図3に示す.角膜上方にSEALs(superiorepithelialarcuatelesions)様の病変があり,その部分に一致して金色の色素が角膜に付着していた.綿棒でこすると容易に除去することができた.この症例は,角膜膜側のレンズ表面に色素が露出しており,上眼瞼で圧迫されたレンズと角膜がこすれることにより色素が角膜に付着したケースである.[症例2]26歳,女性.朝,カラーCL装用時に異物感と疼痛が出現し,当院受診.カラーCLは1日使い捨てタイプ図3症例1の前眼部写真角膜に付着した色素(○印)がみられる.図4症例2の前眼部写真レンズの色素部分に一致した角膜上皮障害が認められる.で,量販店にて購入した.左眼前眼部写真を図4に示す.カラーCLの色素部分に一致して輪状に角膜上皮障害を認める.この症例はレンズ表面の凹凸が顕著であり,角膜表面とこすれて角膜上皮障害を生じたケースである.いずれも厚生労働省から承認されたレンズであるが,残念ながらレンズ自体が眼障害の原因と考えられる.●おわりにカラーCLは,若い女性にとって欠くことのできないファッションアイテムの一つとなっているが,前述のとおり,残念ながらレンズ自体の問題で眼障害が生じているケースもある.すべてのカラーCLが悪いわけではないが,より快適で安全なレンズが流通することで,カラーCLユーザーを眼障害から守れるのではないだろうか.文献1)糸井素純:カラーコンタクトレンズが抱える技術的な問題.日本の眼科85:1144-1148,20142)松澤亜紀子:カラーコンタクトレンズの色素,あたらしい眼科31:1591-1597,20143)IARCOverallEvaluationsofCarcinogenicitytoHumans.Listofallagentsevaluatedtodate(2009).(http://monographs.iarc.fr/ENG/Classi.cation/index.php)ZS984

写真:Map-dot-fingerprint dystrophy

2017年8月31日 木曜日

写真セミナー監修/島﨑潤横井則彦399.Map-dot-.ngerprintdystrophy福岡秀記京都府立医科大学大学院医学研究科視覚機能再生外科学図2図1のシェーマ①瞳孔領を覆う不整形のCdot病変.C図1Map.dot..ngerprintdystrophy図3Map.dot..ngerprintdystrophyDottypeの所見を認める.図4Map.dot..ngerprintdystrophyのフルオレセイン写真変性部位に一致したCdarkareaがある.(61)あたらしい眼科Vol.34,No.8,2017C11350910-1810/17/\100/頁/JCOPYMap-dot-.ngerprintdystrophyは,角膜上皮基底膜ジストロフィやCoganmicrocysticepithelialdystrophyとして知られている.海外の研究では,75%の症例で両眼に(程度に差があることもあるが)同様の所見を認めることが多く,残りC25%では片眼のみ発症と報告されている1).そのほか,50歳以上のC76%の人に存在するという報告や,疫学研究では一般住民の推定6~43%に存在するなどの報告がある1,2).通常は散発性の発症であるが,常染色体優性遺伝形式で少なくともC2世代にわたって発症したC8家系2)が確認されており,TGFBI(transformingCgrowthCfactor,Cbeta-induced)遺伝子(5q31)変異が原因とされている3).このように海外では非常に高い有病率が報告されているが,わが国においては通常診療において見かける頻度は低く,詳しい発症率は不明である.この疾患の特徴として,小児期での発症は少なく,通常大人での発症であり,女性が男性よりも若干多いとされている1).角膜上皮病変はその名前からわかるようにCmap,dot,.ngerprint,もしくはそれらの組み合わせの所見をとる.片眼性の場合にはCmap病変のことが多いとされているが,組織病理学的にはCmap病変は角膜上皮層への厚みの増した延長した基底膜とされる.Dot病変(図1~3)は,角膜上皮内の脂質,細胞質や核の残渣を含む仮性.胞とされ,.ngerprint病変は角膜上皮層内に入り込む細い線状の顆粒状の沈着物の形成により,厚みが増した結果だとされている.これらの病変により,不正乱視などの単眼複視や,接着不良による一時的な再発性角膜びらんによる特徴的な起床時の開瞼時の疼痛などの症状を引き起こすことがある.フルオレセイン染色像では,変性部位に一致して若干隆起していることによる涙液層の菲薄化(negativestainingsign)によりCdarkareaを認める(図4).近年,レーザー共焦点顕微鏡がこの疾患にもCinCvivoで応用されるようになり,map病変ではおもに角膜上皮基底層において高輝度反射の物質が,.ngerprint病変では多数の線状・曲線の低輝度反射線状組織を観察できるなどの報告がなされている4).治療は,症状がない場合には外科的治療の必要がまったくない.何らかの外科的な治療は,むしろ再発性角膜びらんやその他の疾患を引き起こす可能性があるためである.病変部位が角膜上皮基底膜細胞と基底膜の間のヘミデスモゾームを途絶させ,接着不良となるため角膜びらんを引き起こし,難治性の再発性角膜びらんとなることが多い.再発性角膜びらんを合併する症例では,潤滑作用のある点眼・軟膏治療や,感染に注意しながら治療用コンタクトレンズの装用を行う.最近海外では,アルコールでの上皮.離術,注射針やCNd:YAGレーザーによるCanteriorCstromalCpuncture6)が報告されており,これらの治療は初回治療の約C80%の患者に有効とされている.また,MMP(matrixCmetalloproteinase)9inhibitorによる治療法7)なども報告されている.前述の治療を施しても再発を繰り返すなど難治性の場合は,変性上皮の機械的除去や治療的レーザー角膜切除(phototherapeuticCkeratectomy:PTK)が行われることが多い.文献1)WerblinCTP,CHirstCLW,CStarkCWJCetCal:PrevalenceCofCmap-dot-.ngerprintchangesinthecornea.BrJOphthal-molC65:401-409,C19812)LaibsonCPR,CKrachmerCJH:FamilialCoccurrenceCofCdot(microcystic)C,Cmap,C.ngerprintCdystrophyCofCtheCcornea.CInvestOphthalmol14:397-399,C19753)BoutboulCS,CBlackCGC,CMooreCJECetCal:ACsubsetCofCpatientsCwithCepithelialCbasementCmembraneCcornealCdys-trophyChaveCmutationsCinCTGFBI/BIGH3.CHumCMutatC27:553-557,C20064)KobayashiCA,CYokogawaCH,CSugiyamaCK.CInCvivoClaserCconfocalCmicroscopyC.ndingsCinCpatientsCwithCmap-dot-.ngerprint(epithelialCbasementCmembrane)dystrophy.CClinOphthalmolC6:1187-1190,C20125)BuxtonJN,FoxML:Super.cialepithelialkeratectomyintheCtreatmentCofCepithelialCbasementCmembraneCdystro-phy.CACpreliminaryCreport.CArchCOphthalmolC101:392-395,C19836)TsaiCTY,CTsaiCTH,CHuCFRCetCal:RecurrentCcornealCero-sionstreatedwithanteriorstromalpuncturebyneodymi-um:yttrium-aluminum-garnetClaser.COphthalmologyC116:1296-1300,C20097)DursunD,KimMC,SolomonAetal:Treatmentofrecal-citrantCrecurrentCcornealCerosionsCwithCinhibitorsCofCmatrixCmetalloproteinase-9,CdoxycyclineCandCcorticoste-roids.CAmJOphthalmol132:8-13,C2001

転移性腫瘍を疑うとき:眼内・眼窩

2017年8月31日 木曜日

転移性腫瘍を疑うとき:眼内・眼窩ManagementofMetastaticTumorsofIntraocularandOcularAdnexa辻英貴*はじめに眼部への転移性腫瘍はまれではあるが生じ,癌(上皮性悪性腫瘍),がん(悪性腫瘍一般を示す),また悪性リンパ腫などの血液系腫瘍などが原発腫瘍としてある.血液系腫瘍の場合には,転移とはいわずに播種性(多発性)浸潤(侵襲)という表現を用いることも多い.眼部転移性腫瘍で重要なのは問診である.悪性腫瘍の既往の確認を必ず行い,既往歴のある患者に生じた眼部腫瘍では,常に転移の可能性を頭に入れておく.I転移性腫瘍の各部位の特徴1.眼内転移眼球内に他部位に生じたがんが転移を生じたもので,眼内に生じる腫瘍のうち,もっとも頻度が高いのは,ぶどう膜原発の悪性黒色腫などではなく,眼内転移である.眼球においてもっとも転移の多い部位は,血流の豊富なぶどう膜である.中でも脈絡膜への転移が最多であるが,毛様体や虹彩などへの転移も頻度は低いが生じる.視神経乳頭への転移はごくまれにあるが,網膜への単独転移はきわめて少ない.原発部位では,女性では乳癌が圧倒的に多く,男性では肺癌が最多である.肺癌は女性でも乳癌についで多い.なお,乳癌の場合には他部位にも転移があって眼にも生じるという症例がほとんどであるが,肺癌の場合には原発よりも先に眼の転移がみつかることがある.その他の原発としては,前立腺,腎臓,甲状腺,食道,胃,腸,肝臓,膵臓などの癌の他,肺のカルチノイド(用語解説参照)などからも眼内への転移を生じる.白人では皮膚の悪性黒色腫からもみられるが,わが国ではまれであるa.脈絡膜転移図1に乳癌からの脈絡膜転移を示す.臨床所見としては,白~黄色の扁平な隆起をもつ腫瘍が網膜下に存在する.腎臓や甲状腺,カルチノイドなどの場合には赤色調が増すことが多い.フルオレセイン蛍光造影(.uore-sceinangiography:FA)が大切で,腫瘍の網膜色素上皮への浸潤・破壊によるpinpointleakが複数みられ,それらは時間とともに拡大していく所見がみられる.これは腫瘍による色素上皮の破壊を示す.また,腫瘍周囲を漿液性.離が囲み,FAではdarkareaとして観察される.両眼に生じることも少なくなく,乳癌では30%が両眼性(図2)であり,常に両眼の眼底をしっかりと診ることが大切である.b.虹彩転移虹彩への転移もまれにみられ,乳癌では虹彩の中に埋もれる粒状の形をとったり,肺癌では虹彩を破壊して転移腫瘍とその栄養血管が見えるなどの所見を呈する.これは原発腫瘍の増殖する勢いを反映しているものと考えられる.図3に乳癌の虹彩転移,図4に肺癌の虹彩転移の症例をそれぞれ示す.*HidekiTsuji:がん研有明病院眼科〔別刷請求先〕辻英貴:〒135-8550東京都江東区有明3-8-31がん研有明病院眼科0910-1810/17/\100/頁/JCOPY(55)1129図1乳癌からの黄斑部を含む脈絡膜転移FA写真では,砂粒状の蛍光と腫瘍を囲むdarkareaがみられる.右眼左眼図2乳癌からの両眼性・多発性の脈絡膜転移白色~黄色調の転移巣がみられる.図4肺癌からの虹彩転移図3乳癌からの虹彩転移虹彩に多数の透白色の転移結節がみられる.図5肺癌からの視神経乳頭への転移突出した乳白色の転移巣が視神経乳頭にあり,網膜下への浸潤(.),網膜しみ状出血などもみられる.図6両眼に生じた眼内リンパ腫パッチ状,斑状を呈した白~クリーム色の網膜下病変が両眼にみられる.図7乳腺のDLBCLからの片眼性SIOLの症例出血を伴う高度の網膜下浸潤がみられる.図8乳癌からの右眼窩転移図9図1の症例の放射線治療後の眼底写真左の写真は照射11カ月後,右は3年6カ月後である.最低視力VS=0.09(n.c.)から照射およびPEA+IOL後,VS=(1.2)に回復した.右眼Vd=(1.0)左眼Vs=(0.1)a放射線治療後右眼Vd=(1.0)左眼Vs=s.l.+b図10肺癌からの両眼の脈絡膜転移a:左眼は初診時にすでに胞状網膜となっていた.b:40Gy/20frの照射により,右眼の視力は維持できたが,左眼の網膜の復位はならず,視力の回復は不可能であった.■用語解説■カルチノイド(carcinoid):カルチノイドは,小腸などの消化管をはじめ,膵臓,肺,精巣,卵巣,などに生じる腫瘍で,セロトニン,ブラジキニン,ヒスタミン,プロスタグランジンなどのホルモン様物質を産生し,10%以下の割合でカルチノイド症候群とよばれる種々の症状を引き起こす.腫瘍の増殖は遅く,転移を有しながらも10~15年生存する症例もある.緑色腫(chloroma):10歳以下に多くみられる急性骨髄性白血病に伴って生じる骨髄芽球からなる腫瘍塊で,眼窩に生じることもあり,顆粒球肉腫(graulo-cyticsarcoma)ともよばれる.ペルオキシダーゼが多く含まれる場合には割面が緑色調を呈することから命名された.

眼窩内悪性腫瘍

2017年8月31日 木曜日

眼窩内悪性腫瘍OrbitalMalignantTumors兒玉達夫*はじめに眼部腫瘍のなかで唯一,眼窩内腫瘍は眼科医が直接的に腫瘍の性状を確認できない部位にある.眼球突出や複視,眼窩痛などの自覚症状があれば,眼窩内病変を疑い画像検査をオーダーして発見に至るが,まったくの無症状で緩徐な増殖速度で他人から顔貌変化を指摘されたり,脳梗塞などの画像検査で偶然発見されたりすることもある.患者の多い一般外来では,いきなり細隙灯顕微鏡前に患者を座らせ診察を開始することも少なくない.「眼を見て顔を見ず」では眼窩内腫瘍に気づくことはできない.眼腫瘍の診療は患者の顔を診ることから始まる.本稿では頻度の高い眼窩内悪性腫瘍として眼窩リンパ腫と涙腺癌を中心に述べる.I眼窩内腫瘍診療の注意点1.顔貌の観察まず正面視での眼球偏位の有無を観察する.視神経腫瘍や海綿状血管腫のように筋円錐内に好発する眼窩内腫瘍では,眼球は前方に突出する.涙腺腫瘍や副鼻腔.腫などの筋円錐外腫瘍では,眼球は腫瘍の対側に偏位する(図1).眼窩内腫瘍では瞼裂開大だけでなく眼瞼下垂を伴うこともある.瞼裂開大を伴う眼球突出はバセドウ病眼症も疑い,甲状腺関連抗体も精査する.眼球突出の有無は前上方から,あるいは頭部を後屈してもらい後方から左右差を観察する.眼窩腫瘍は片眼性の眼球突出が多いが,バセドウ病眼症であっても片眼性の眼球突出や眼球運動障害は少なくない.眼球偏位観察後は患者の了解を得て,一眼レフカメラによる顔面正面の開閉瞼・上方からの撮影で顔貌を記録する.2.触診眼窩内腫瘍はしばしば眼瞼を前方に圧排するため,眼*TatsuoKodama:島根大学医学部眼科学講座〔別刷請求先〕兒玉達夫:〒693-8501島根県出雲市塩冶町89-1島根大学医学部眼科学講座0910-1810/17/\100/頁/JCOPY(45)1119図2眼窩内悪性リンパ腫右側内眼角部皮下(a)に結節性隆起()があり慢性涙.炎の疑いで紹介された.右眼底鼻側周辺部(b)に腫瘍の眼球外圧迫による隆起性病変を認める().眼窩部MRIの冠状断(c)と軸位断(d).T2強調画像で右眼窩内下鼻側に,内部構造が均一でやや高信号で分葉状の結節性腫瘤が描出されている(c,d).眼球壁への浸潤はみられない.病理診断は,びまん性大細胞型B細胞リンパ腫であった.が高度であっても複視の自覚がなければ視機能上困らないため,発症後数年以上経過して,他者からの指摘で受診することもある.眼窩痛は腺様.胞癌や中悪性度リンパ腫でみられるが,必発ではない.一般に悪性腫瘍は進行が早いため数カ月.1年前からの,良性腫瘍は1年.数年前にかけての緩徐な発症エピソードで語られることが多い.しかしながら,低悪性度リンパ腫は増殖速度が遅く,眼窩炎症性腫瘤は良性でも急激な経過や眼窩痛・圧痛を伴うことがあるため,病歴だけでは悪性・良性の判断は困難である.1年以上前に発症した良性腫瘍であっても,患者が自覚したのが1カ月前であれば,「急激な発症」を訴えることになる.臨床経過は参考程度にとどめておくとよい.4.視機能検査a.矯正視力視神経腫瘍・視神経近傍腫瘍からの圧迫で,視力低下をきたす場合がある.対光反射のチェックを忘れないようにする.b.眼圧測定眼窩内占拠容積が大きい場合,眼窩内圧亢進に伴う続発緑内障をきたすことがある.必要に応じて緑内障検査を追加する.c.Red.greentest,Hessチャート眼球運動障害の有無を記録する.自覚的な複視を訴えない症例でも,眼球運動検査で異常を検出することがある.d.眼球突出度Hertel眼球突出計で左右の値と眼窩縁間距離を記録するが,測定値は再現性に乏しく絶対的なものではない.左右差があることを客観的に確認するために行う.e.細隙灯顕微鏡検査眼窩リンパ腫は眼窩内だけでなく結膜下にも顔を出すことがある(図3).涙腺腫瘍の多くは上耳側の結膜円外部にドーム状の赤色隆起として観察される(図4).他の領域でも結膜円蓋部の膨隆から,直下の眼窩腫瘍の存在を間接的に知ることができる場合もある(図5).結膜浮腫や結膜血管の拡張・蛇行なども記録する.f.眼底撮影眼球圧排による網脈絡膜皺襞がみられる場合がある(図2).視神経圧迫による下行性の視神経萎縮が疑われるときは,OCTで黄斑マップも記録する.5.画像検査眼窩内腫瘍の術前診断においてもっとも重要な情報を与えてくれるが,注意すべきは画像診断を妄信しないことである.放射線科医は実際の患者を診ずに読影を迫られている.眼窩腫瘍の多くは非特異的画像所見を呈することが多く,画像のみで良性・悪性の鑑別は困難である.“炎症性偽腫瘍疑い”という診断名は,「画像だけではよくわかりません」という放射線科医からのメッセージである.放射線科医にとって依頼録が患者情報のすべてであり,眼科医の記載内容によって診断にバイアスが入ることも否定できない.もっとも強調したいのは,「画像はまず自分で読影する習慣をつけて欲しい」ということである.a.眼窩部CTほとんどの病院に設置されており,短時間で眼窩腫瘍の存在の有無を確認するのに有用である.涙腺癌や副鼻腔.胞による骨破壊像や石灰化などの描出に優れる.副鼻腔から波及した.腫や浸潤癌もCT画像で診断可能である.単に「頭部CT」としてオーダーすると眼窩のスライス面が少なく評価困難となる.必ず「眼窩部」と指定して軸位断(横断)と冠状断(前額断)をオーダーする.b.眼窩部MRI軟部組織の描出に優れるので,腫瘍と眼球壁,外眼筋や視神経との位置関係,被膜の有無,内部構造の把握に有用である.眼窩部の軸位断と冠状断に加えて,患側の矢状断を追加する.T1強調画像では脂肪に近いものが高信号,T2強調画像では水分を多く含む組織が高信号に描出される.ガドリウムはT1強調画像で高信号を呈するので,造影検査で腫瘍内構造の観察に用いられる.眼窩内は脂肪が多いので,T2脂肪抑制画像は炎症性病変の評価に有用である.リンパ腫や涙腺癌など細胞密度が高いものは,拡散強調画像(DW1)で高信号,拡散係数画像(ADC-map)で低信号を呈する(図6).(47)あたらしい眼科Vol.34,No.8,20171121図3眼窩MALTリンパ腫左眼結膜下にsalmonpinkmassを認める(a).さらに下方視で上眼瞼を挙上すると結膜円蓋部にも腫瘤形成がみられ(),眼窩内から浸潤してきたことがわかる(b).図4MALTリンパ腫とIgG4関連眼疾患の合併例両側性に上眼瞼の耳側結膜円蓋部からドーム状の腫瘤形成を観察できる(a,b).結膜膨隆部に一致して,眼窩部CT冠状断で両側の涙腺部に内部構造が均一な腫瘤陰影を認める(c).IgG4関連眼疾患に特徴的な眼窩神経の腫大もみられる().図5眼窩MALTリンパ腫左下眼瞼鼻側円蓋部に結節性の膨隆を認める(Ca).MRIでは,結膜膨隆と一致する部位にCT1強調画像冠状断で低信号(Cb),T2強調画像軸位断でやや高信号(Cc)の眼窩腫瘍が描出されている.C図6MALTリンパ腫のMRI画像内部が均一で,両側の眼窩内組織を取り囲むように腫瘍組織が増生している.T1強調画像で軽度低信号(Ca),T2強調画像で軽度高信号を示している(Cb).拡散強調画像では高信号(Cc),拡散係数画像で低信号を呈している(Cd).C接する眼窩腫瘍への取り込みを判定するには不向きである.低悪性度で増殖能の低いリンパ腫では描出されないこともある.C6.血液・生化学検査a.リンパ腫マーカー悪性リンパ腫では病期の進行や悪性度に応じて腫瘍マーカーが上昇する傾向にあるため,診断の参考となる.しかしながら,炎症や感染症,腎機能低下などでも上昇する非特異的マーカーであるため,検査値の評価には既存疾患の影響にも注意を払う必要がある.眼科領域のリンパ腫は他臓器と比較して腫瘍量が小さいため,眼窩内限局のリンパ腫では上昇傾向に乏しい.それゆえ下記の腫瘍マーカーが正常範囲であっても眼窩リンパ腫を否定することにはならない.・可溶性インターロイキンC2受容体(sIL-2R:正常値145.519CU/ml):各種リンパ球に表出される.リンパ腫以外では腎機能障害(透析中),自己免疫疾患,感染症でも上昇がみられる.小児・若年者の正常値は元々高く,3歳以下ではC1,000U/mlを超えるので,小児の眼窩腫瘍検査時には注意を要する.・b2-ミクログロブリン(Cb2MG:正常値<1.6Cmg/l):各種リンパ球に豊富に表出される.リンパ腫以外では腎機能障害,感染症,上皮性悪性腫瘍で上昇する.・乳酸脱水素酵素(LDH:正常値C100.215CIU/l):あらゆる組織に分布し,組織障害で上昇するのでもっともリンパ腫特異性が低い.リンパ腫以外では心筋梗塞や骨格筋障害,貧血,自己免疫疾患,肝炎,各種悪性腫瘍で上昇する.Cb.IgG4良性腫瘍性病変であるCIgG4関連眼疾患では,高IgG4血症(135Cmg/dl以上)が診断基準のC1項目に含まれる.IgG4関連眼疾患では,sIL-2RやCIgEの上昇を伴うことがある.Cc.炎症マーカー熱発や疼痛を伴う眼窩炎症性病変では,しばしば血沈亢進やCCRPの上昇を伴う.II眼窩悪性リンパ腫1.頻度疾患定義の解釈や施設間の差はあるものの,リンパ腫は眼窩腫瘍全体のC10.15%,原発性眼窩腫瘍のC1/4を占め,眼窩内悪性腫瘍で最多である.眼科領域のリンパ腫はほとんど非ホジキンCB細胞リンパ腫であり,以下のC4種でC99%近くを占める.Ca.MALT型リンパ腫(extranodalmarginalzonelymphomaofmucosa.associatedlymphoidtissue:MALT)眼窩リンパ腫のなかで最多のC6割前後を占める低悪性度リンパ腫で,増殖は緩徐である(図3~6).IgG4関連眼疾患のC1割にCMALTが合併するので,血清CIgG4が高値でもリンパ腫の可能性を忘れてはならない(図4).Cb.びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(di.uselargeB.celllymphoma:DLBCL)MALTに次いで多く,3割前後を占める中悪性度リンパ腫である(図2).数週間単位で急速に増大することがあり,初診時にすでに他臓器病変を認めることが少なくない.早期診断・早期治療が必要である.Cc.濾胞性リンパ腫(follicularlymphoma:FL)5%前後を占める低悪性度リンパ腫である.Cd.マントル細胞リンパ腫(mantlecelllymphoma:MCL)5%以下の中悪性度リンパ腫である.C2.診断画像検査および血液・生化学検査(前述)でリンパ腫が疑われた場合,生検による病理組織検査によって診断を確定する.Ca.画像検査MRIとCCT検査では,内部構造が均一で比較的境界明瞭な結節性を呈する(図2~6).低悪性度リンパ腫では通常骨破壊はみられない(図4).悪性リンパ腫と良性病変である特発性眼窩炎症,反応性リンパ過形成,IgG4関連眼疾患は,同じリンパ増殖性疾患であるために類似所見を示すことが多く,画像による鑑別は困難である.全摘出が必要な涙腺腫瘍などの上皮性腫瘍や血管1124あたらしい眼科Vol.34,No.8,2017(50)C腫との判別ができればよい.Cb.組織検査生検時には最低限,HE染色による形態観察と免疫染色目的のホルマリン固定用と,遺伝子再構成検査目的の未固定用の腫瘍組織を確保する必要がある.リンパ腫は放射線治療や化学療法によく反応するため,眼球運動障害をきたさない範囲で可及的に採取すればよい.ほとんどCB細胞性なので,遺伝子再構成はCJHを提出すると再構成を検出しやすい.生検組織量に余裕があれば,未固定細胞でフローサイトメトリー,染色体検査,遺伝子検査を行うと病型診断や予後の情報を得ることができる.逆にいえば,これらの検査体制が備わっていない医療機関で生検することは避けたほうがよい.「リンパ腫の疑い」で再生検手術を受ける患者が可哀想である.病理組織診断はもっとも信頼できる最終確定診断であるが,現実的には臨床所見と合致しない症例も少なからず経験される.リンパ腫のCWHO分類は長年にわたり改訂を繰り返され,現在の新分類は分子生物学的特徴や悪性度・治療反応性といった生物学的病態を反映したものになっているが,それでも分類困難な境界域病変が存在する.組織検査結果に疑問があれば病理診断医とともにプレパラートを鏡検し,診断困難例は他の病理専門施設にセカンドオピニオンを求める姿勢も必要である.C3.病期判定リンパ腫の診断がついたら,治療方針決定のために病変がどの程度全身に広がっているか病期判定が必要である.PET-CT検査に加え,血液腫瘍内科に骨髄検査,消化管内視鏡検査などの全身精査を依頼する.病期分類にはCAnnArbor(アナーバー)分類を用いる(1971年に提唱され,現在もホジキン・非ホジキンリンパ腫の病期分類として使用されている).I期:1カ所のリンパ節領域あるいは節外領域に限局.II期:2カ所以上の領域に病変があるが,横隔膜より上か下に限局.III期:横隔膜の上下に複数の病変を認める.IV期:1つ以上のリンパ節外臓器(肝,骨髄,肺など)にびまん性病変を認める.C4.治療方針明確なガイドラインはない.眼科,血液腫瘍内科,放射線科医が連携して,症例ごとに治療方針を決定する.当院の治療方針を示す.Ca.低悪性度リンパ腫(MALT,FL)限局性(病期CI.CII期)で複視や眼球突出などの眼症状があれば,30CGy前後の放射線照射を行う.腫瘍自体をほとんど摘出できた場合,無症候性,高齢者で化学療法の副作用が懸念される場合は,無治療で経過観察(watchfulCwaiting)を行うことがある.病期CIII期以上であれば,CD20に対するモノクローナル抗体であるリツキサンCR(rituximab:R)を用いた分子標的療法や,リツキサンRを併用したCR-CHOP(cyclophosphamide,doxorubicin,vincristine,prednisolone)などの化学療法を考慮する.Cb.中悪性度リンパ腫(DLBCL,MCL)病期にかかわらず,原則としてCR-CHOPを代表とする化学療法を考慮する.眼症状があれば,局所制御目的にC40CGy超の放射線照射を併用する.全身状態が悪く化学療法に耐えられない場合,緩和照射のみを選択する.CIII涙腺癌1.頻度涙腺腫瘍は眼窩腫瘍のC1/4以下であり,リンパ増殖性病変と上皮性腫瘍の割合はC6:4である.涙腺の上皮性腫瘍のなかでは良性の涙腺多形腺腫がC2/3を占め,1/3が涙腺癌である.涙腺の上皮性悪性腫瘍を総称して涙腺癌と表記したが,腺様.胞癌,多形腺腫源癌が大半を占める.本稿では腺様.胞癌について述べる.C2.診断a.病歴腺様.胞癌のC8割が眼窩痛や複視を訴えるが,多形腺腫では眼窩痛はみられない.腺様.胞癌は腫瘍関連症状を自覚してから眼科を受診するまでの間隔はC1年.数カ月以内と短期間である(多形腺腫は平均C2年以上).Cb.画像検査(図7)CTとCMRI画像で境界明瞭な楕円形腫瘍を呈するものが多く(60.80%),CTでは均一な軟部濃度腫瘤と(51)あたらしい眼科Vol.34,No.8,2017C1125図7涙腺腺様.胞癌眼窩部CCT冠状断で,左側涙腺腫瘍に接した眼窩骨壁の破壊がみられる(a:点線円内).同部位のCMRI画像では,T1強調画像で低信号(b),T2強調画像で不均一な輝度の内部構造の腫瘍が描出されている(c).C

眼瞼の腫瘤:脂腺癌・基底細胞癌

2017年8月31日 木曜日

眼瞼の腫瘤:脂腺癌・基底細胞癌EyelidTumors:SebaceousCarcinoma・BasalCellCarcinoma中山知倫*渡辺彰英*はじめに眼瞼原発悪性腫瘍のなかで頻度の高いものとして,基底細胞癌,脂腺癌,扁平上皮癌といった上皮性の悪性腫瘍がある.欧米と比較してわが国では基底細胞癌の頻度が低く,脂腺癌は高いという特徴があり,脂腺癌と基底細胞癌が二大眼瞼原発悪性腫瘍となっている1).どちらも高齢者に多く,今後症例数の増加が予想される疾患である.I脂腺癌1.臨床像眼瞼の脂腺癌はその名の通り,眼瞼の脂腺であるMeibom腺,Zeis腺から発生する.まれには涙丘より発生することもある.多くはMeibom腺より発生し,そのため,Meibom腺の多い上眼瞼にできることが多い.高齢者に多く,京都府立医科大学附属病院眼科(以下,当科)にて2004~2016年に脂腺癌に対して切除再建術を行った54症例の平均年齢は73.3±14.3歳であった.脂腺癌は基底細胞癌,扁平上皮癌と比較して局所再発やリンパ節転移,遠隔転移が多く,臨床的な悪性度が高い.当科における54症例の検討では,局所再発は11%,転移は14%の症例で認めた.転移先としては耳前リンパ節がもっとも多かった.脂腺癌は腫瘍死の原因となりうる疾患であり,早期発見,早期治療が重要である.脂腺癌は,そのほとんどが瞼板内のMeibom腺より発生するため,眼瞼縁や瞼結膜に認めることが多い.肉眼的所見は大きく二つのタイプに分けられ,黄色調の結節状の病変として眼瞼結膜や眼瞼縁に隆起してくる場合(nodulartype)(図1)と,びまん性の眼瞼肥厚や眼瞼炎,慢性結膜炎のような所見を認める場合(di.usetype)(図2)がある.Di.usetypeは組織学的に腫瘍細胞の上皮内浸潤であるpagetoidspread(図3)を認めることが多い.その他,瞼結膜側に乳頭腫様の増殖(図4)を示す場合や,瞼板内に留まり,硬い腫瘤として触れるのみの場合もある.疫学的には人種差が知られており,脂腺癌は白色人種よりもアジア人に多いことが知られている.また,臨床所見については,アジア人にはnodulartypeがdi.usetypeよりも多いが2),白色人種ではdi.usetypeとnod-ulartypeはほぼ同じ頻度であることがわかっている3).なんらかの遺伝的背景があると推測されるが,脂腺癌についての遺伝子検索はこれまであまり行われておらず,はっきりしたことはわかっていない.2.鑑別脂腺癌の鑑別としては脂腺腺腫と霰粒腫がある.脂腺腺腫は脂腺癌と比較してやや白色調であり,正常のMeibom腺に似た脳回様,あるいは毛糸玉状の紋様をもつ(図5).良性の腺腫であるため,周辺組織の構造を破壊しない.また,一般的には脂腺癌より成長は緩徐である.しかし,実際は脂腺癌と脂腺腺腫を肉眼的所見のみで完全に鑑別することはむずかしく,脂腺腺腫と考*TomomichiNakayama&*AkihideWatanabe:京都府立医科大学大学院医学研究科視覚機能再生外科学〔別刷請求先〕中山知倫:〒602-0841京都市上京区河原町広小路上ル梶井町465京都府立医科大学大学院医学研究科視覚機能再生外科学0910-1810/17/\100/頁/JCOPY(39)1113図1脂腺癌(Nodulartype)図2脂腺癌(Di.usetype)図3Pagetoidspread(HE染色)図4脂腺癌(乳頭腫様の増殖)図5脂腺腺腫図6脂腺癌切除術(単純縫縮+TenzelFlap)表1切除範囲に応じた再建法切除範囲上眼瞼C1/3未満下眼瞼C1/2未満上眼瞼C1/3以上下眼瞼C1/2以上前葉単純縫縮(直接縫合)1.局所皮弁2.眼輪筋皮弁3.植皮4.動脈皮弁(Lateralorbital.ap)5.遊離組織移植後葉外眥切開Z形成Tenzel.ap1.硬口蓋粘膜2.鼻中隔軟骨+粘膜3.耳介軟骨+粘膜4.Hughes.ap全層1.眼瞼全層弁(Switch.ap,Cutler-beard)2.眼瞼全層遊離複合移植図7脂腺癌切除術Hughes法下眼瞼欠損部に上眼瞼の瞼結膜および瞼板組織を用いる.図8基底細胞癌図10基底細胞癌切除術局所皮弁による再建.図9脂漏性角化症

乳幼児の眼内病変:網膜芽細胞腫

2017年8月31日 木曜日

乳幼児の眼内病変:網膜芽細胞腫PediatricIntraocularTumor:Retinoblastoma鈴木茂伸*はじめに乳幼児の眼内悪性腫瘍の代表疾患は網膜芽細胞腫(retinoblastoma)であり,それ以外には毛様体に悪性腫瘍が生じる程度である.成人の眼内腫瘍では転移性腫瘍と悪性黒色腫が代表疾患であるが,乳幼児にはほとんど生じない.本稿ではおもに網膜芽細胞腫について,腫瘍の増大・進行様式と関連づけて臨床所見を示し,各段階での鑑別診断を述べる.最後に治療と遺伝についても要点を述べる.I網膜芽細胞腫1.網膜芽細胞腫の自然史と臨床所見厳密な意味での由来細胞は未解明であるが,未熟な網膜細胞においてRB1遺伝子変異が生じると,その細胞はがん化し,無秩序な増殖を始める.腫瘍がある程度の大きさになると,眼底検査でも検出できるようになり,光干渉断層装置(opticalcoherencetomography:OCT)で網膜のどの層から生じているかを検出できるようになる.腫瘍が増大するに従い,最初は半透明の淡い腫瘍が徐々に白濁し,隆起が明らかになる(図1).2乳頭径程度の腫瘍は石灰化を伴わない.増殖速度は腫瘍により異なるが,経験的に腫瘍径は1カ月で倍ほどに増大する.網膜は眼球外組織に比べると血流が限られているため,この細胞が眼球外に浸潤した場合の倍加速度はさらに早い.網膜芽細胞腫は酸素要求度が高く,血管依存性に増大するが,腫瘍の増大が早く血液の供給が追いつかなくなると腫瘍は壊死を生じ,壊死産物が腫瘍内で凝集して石灰化を生じ(図2),これが本疾患の特徴的所見になっている.腫瘍細胞からは血管増殖因子(vascularendothelialgrowthfactor:VEGF)などが分泌され,腫瘍に栄養を供給する腫瘍血管が増え,腫瘍はやや赤みのある色調になる.腫瘍血管は脆弱な壁構造のため漏出が多く,蛍光眼底造影で蛍光漏出が確認される.また,網膜下に滲出液が貯留することで網膜.離を生じる.VEGFが硝子体腔にも排出されるため,一部の症例では腫瘍表面に増殖膜を生じ,牽引性.離を生じることがある.腫瘍細胞は細胞間接着が弱いため,徐々に崩れて散布する.内境界膜を越えて硝子体腔に散布した細胞は,酸素分圧が低いため壊死するものが多いが,一部生き延びた細胞は腫瘍塊を作り,いわゆる雪玉様の硝子体播種を生じる(図3).また,網膜下腔に散布された細胞は,網膜下液に乗って広がり,網膜下播種を生じる(図4).前部硝子体膜は一つの障壁となっているが,一部の症例では前部硝子体膜を越えて腫瘍細胞が浸潤し,後房から前房浸潤を生じる(図5).腫瘍塊が増大すると,水晶体が後方から圧排され,浅前房による隅角閉塞緑内障を生じる.また,硝子体腔の血管増殖因子濃度が上昇することで虹彩に新生血管を生じ,血管新生緑内障を生じる.眼球内で急速増大した腫瘍が,相対的に血流不足から虚血になると大きな壊死を生じ,壊死産物に対する炎症*ShigenobuSuzuki:国立がん研究センター中央病院眼腫瘍科〔別刷請求先〕鈴木茂伸:〒104-0045東京都中央区築地5-1-1国立がん研究センター中央病院眼腫瘍科0910-1810/17/\100/頁/JCOPY(31)1105図1網膜芽細胞腫の初期病変図2石灰化ごく初期の病変は淡い白色を示し(※),少し大きくなる3乳頭径以上になると,腫瘍内に石灰化を生じることがと白濁し網膜血管の走行変化がみられる(*).多い.図3硝子体播種図4網膜下播種硝子体腔に散布した腫瘍細胞が増殖,腫瘍塊を作り,雪玉網膜下腔に散布した細胞が腫瘍塊を作り,びまん性に網膜様硝子体播種になる.下播種を生じている.図5前房浸潤前房内に水泡様の腫瘍塊がある.本症例では角膜裏面を這うように広がっている.図6網膜細胞腫(retinocytoma)透明感のある腫瘍で,腫瘍血管に乏しく,辺縁に網脈絡膜変性を伴う.表1鑑別疾患のポイント色調形状・性状血管超音波検査FAOCT増大傾向注意すべき所見など年齢,性別網膜芽細胞腫白色ドーム状,石灰化微細な腫瘍血管充実性腫瘍,石灰化蛍光漏出神経網膜の肥厚増大両眼発症,13q-症候群5歳以下,多くは1歳前後網膜細胞腫白色半透明扁平隆起,石灰化,周囲に網脈絡膜変性腫瘍血管なし─漏出なしなだらかな立ち上がり不変──網膜白色病変星細胞過誤腫白色,時に黄白色桑実様もしくは半透明腫瘍血管なし充実性時に漏出神経線維層の肥厚不変(まれに増大)結節性硬化症─有髄神経線維白色隆起なし,辺縁の毛羽立ち透見できず所見なし蛍光ブロック─不変─先天性コロボーマ白色乳頭下方,境界明瞭,軽度陥凹脈絡膜血管なし軽度陥凹脈絡膜フラッシュなし陥凹,脈絡膜欠損不変CHARGE症候群(心疾患など)先天性脈絡膜骨腫黄白色,色素斑不整形,扁平隆起時に新生血管板状の高反射新生血管から漏出脈絡膜無構造腫瘍緩徐増大─思春期以降,女性白色瞳孔胎児血管遺残白色水晶体後面の白色線維膜,毛様体突起伸展,球状水晶体,小眼球網膜血管と異なる走行の血管乳頭から線維血管膜に連なる構造物────先天性トキソカラ白色線維性病変増殖性変化血管の牽引────炎症細胞浸潤─Coats病黄白色(硬性白斑)硬性白斑の著明な網膜.離拡張蛇行,分枝異常充実性腫瘍なし高度の漏出,分枝異常───思春期,男児胞状.離半透明,.離網膜硬性白斑の乏しい網膜.離網膜血管が観察可能充実性腫瘍なし───時に両眼発症原因疾患による図7星細胞過誤腫黄斑部に血管に乏しい半透明隆起病変があり周囲に滲出斑を伴う.図8コロボーマ図9脈絡膜骨腫乳頭下方に白色病変が2個連なる.隆起がなく軽度陥凹し黄白色扁平隆起病変であり,網膜色素上皮が残っている部ている.分は橙色にみえる.図10トキソカラ黄白色炎症性瘢痕であり,牽引を生じている.図11Coats病高度の滲出性変化のため,硬性白斑の集簇が腫瘍のようにみえる.図12無菌性蜂窩織炎眼球内の石灰化病変と,とくに眼窩前方の浮腫所見を認める.眼窩後方は所見が乏しいことが特徴である.

眼底の色素性病変:脈絡膜悪性黒色腫

2017年8月31日 木曜日

眼底の色素性病変:脈絡膜悪性黒色腫MelanocyticTumoroftheOcularFundus:ChoroidalMelanoma古田実*はじめに色素性病変という語句は,通常メラニン色素を伴う病変をさす.すなわち,メラニン産生細胞の腫瘍である.しかし,網膜下血腫が黒く見える時期,逆に病変上の網膜色素上皮(retinalpigmentepithelium:RPE),網膜.離,神経網膜,増殖膜や硝子体混濁に修飾されて本来の色がマスクされていること,さらにメラニン産生細胞であっても無色素性であることもある.簡単には生検できない中で,筆者自身も色素性病変の鑑別は眼科医としての能力を試されているのではないかと感じることがある.眼科外来で得られる画像所見は,専門家とて他の先生と同じである.本稿では脈絡膜悪性黒色腫(脈絡膜メラノーマ)の診断と治療について,なにに注目して,どのように考えるかを概説する.I脈絡膜メラノーマの基礎知識脈絡膜メラノサイトの悪性腫瘍で,成人の原発性眼内腫瘍でもっとも高頻度である.有色人種は白人よりも発症頻度が低く,わが国での新規発症は1年間に100例以下である.全身に生じるメラノーマのうち約5%が眼内に生じ,紫外線や化学薬品と発症との因果関係は明らかではない.発症の平均年齢は60歳で性差はない.II好発部位,形態,色調,大きさ脈絡膜メラノーマは,眼底赤道部より周辺に17%,黄斑から赤道部77%,黄斑に6%の頻度で生じる.形態は,典型的なマッシュルーム型(Bruch膜を超える病変)20%,ドーム状75%,びまん性5%である.色調は人種により異なる可能性があるが,白人では無色素性16%,色素性51%,混合性33%である1).図1に色素性メラノーマの色調がどのように観察されるかを示す.色素性腫瘍ではあっても,メラノーマはRPE下に発育するため,黒く見えないことが多く,網膜面状にメラニンが直接観察できる腫瘍はかなり進行したメラノーマか他の腫瘍であることに注意する.腫瘍の大きさは,旧来から臨床的には厚さ3.0.mm以下がsmall,3.1~8.0.mmがmedium,8.1mm以上はlargeに分類されるが,最近ではTNM分類を使うことが推奨されている(表1).III検眼鏡的鑑別疾患表2に,代表的な眼底色素性病変と所見の特徴を列記した.また,紹介されてくることの多い眼底の黒色病変を図2に示す.メラノーマとの鑑別点は図説に記載したが,もっとも鑑別がむずしい病変は「大きな脈絡膜母斑」である.臨床所見から危険因子を統計的に割り出した研究があるので,参考にするとよい(表3)2).IV診断の確定に必要な検査(図3)1.超音波断層検査脈絡膜メラノーマの大きさの計測と内部反射の評価,および眼球外進展の確認に必須である.病変の最大基底長と厚みを計測し,内部反射が低反射を示すことを確認*MinoruFuruta:福島県立医科大学医学部眼科学講座〔別刷請求先〕古田実:〒960-1295福島市光が丘1福島県立医科大学医学部眼科学講座0910-1810/17/\100/頁/JCOPY(23)1097abcd図1脈絡膜メラノーマは黒く見えないa:20歳台,女性.右眼視神経乳頭下鼻側病変.b:50歳台,女性.右眼上方の大きな病変.黄斑が隠れる.c:60歳台,男性.右眼上方の病変.網膜浸潤しメラニン色素の散布が著明.d:60歳台,女性.左眼下方の病変.網膜.離のため硝子体手術とレーザーを施行されている.表1UICC.AJCC分類脈絡膜メラノーマの厚さと最大基底径によるT分類(第8版)>1544412.1~15.033449.1~12.03333346.1~9.022223343.1~6.01112234≦3.01111224厚さmm最大基底径mm≦3.03.1~6.06.1~9.09.1~12.012.1~15.015.1~18.0>18表2眼内のおもな色素性腫瘍の種類と特徴色素細胞の部位病変の種類おおよその特徴網膜色素上皮肥大腺腫・腺癌先天性,平坦,神経網膜菲薄網膜栄養血管,滲出性網膜.離脈絡膜母斑悪性黒色腫厚さC2.mm以下,ドライ,超音波高反射厚さC3.mm以上,ウェット,超音波低反射視神経乳頭黒色細胞腫厚さC2.mm以下,ドライ,視神経萎縮表3小さな脈絡膜メラノーマの早期診断のための危険因子イニシャル覚え方所見ハザード比将来メラノーマとなった割合%CTCFCSCOCMCUHCHCDCToFindSmallOcularMelanomaUsingCHelpfulHintsDailyThickness厚み>2.mmCFluid網膜.離(+)CSymptoms自覚症状(+)COrangeCpigmentオレンジ色素(+)CMargin腫瘍辺縁<3.mmCtoCtheCopticCdiscCUltrasoundCHollow超音波低反射CHaloCabsent病変辺縁部の萎縮所見CDrusenCabsentドルーゼン(-)C2C3C2C3C2C3C6C─C19C27C23C30C13C25C7C─(文献C2より改変)図2眼底のおもな黒色病変a:先天性網膜色素上皮肥大(con-genitalChypertrophyCofCretinalpigmentCepithelium:CHRPE).OCTで病変は平坦で,神経網膜は菲薄化している.Cb:網膜色素上皮腺腫.網膜上に色素性病変が直接観察され,滲出性網膜.離がある.通常は周辺部に生じる腫瘍である.フルオレセイン蛍光眼底造影では網膜血管によって栄養されていることがわかる.Cc:視神経乳頭黒色細胞腫.OCTで視神経乳頭から生じ,脈絡膜内の病変はない.Cd:周辺部滲出性出血性脈絡網膜症(peripheralCexuda-tiveChemorrhagicCchorioretinopa-thy:PEHCR).周辺部脈絡膜新性血管からの網膜下血腫で,ポリープ様脈絡膜血管症が周辺部に生じたものと考えられている.超音波所見はメラノーマに類似する.1週間経過すれば病変は白色化して血腫であることがわかる.Ce:脈絡膜母斑.網膜.離や自覚症状はない.超音波検査では病変の厚さC2Cmm未満で,内部は高反射である.図3確定診断に必要な画像検査a:60歳台,女性.右眼耳側に厚さC3.8mm,基底径C9mmの色素性病変があり,腫瘍上に薄く網膜.離がある.Cb:同症例の超音波断層像.腫瘍は正常脈絡膜よりも低反射で,脈絡膜が掘れているように見える(→:choroidalCexca-vation).c:同症例のフルオレセイン蛍光眼底造影早期と後期.網膜色素上皮障害が強い.後期には斑状点状の過蛍光がみられる.Cd:同症例のインドシアニン・グリーン蛍光眼底造影早期と後期.早期から網膜血管とは異なる病変内血管が描出され(doubleCcircu-lation),ループ状血管(→)がみられる.腫瘍自体は後期でも低蛍光であり,メラニン色素を含む腫瘍と考えられる.臨床的にはCa~dの所見でも十分に脈絡膜メラノーマの診断が可能である.以下Ce~hのように確認のための放射線学的検査を行う.Ce:別症例のMRICT1強調像.右眼耳側病変は高信号である.Cf:の症例のCMRIT2強調像.病変は低信号である.Cg:の症例のCFDG-PET/CT.SUVmaxはC2.9であり,有意な集積を呈さない.脈絡膜メラノーマでも陰性を示すことが多々ある.h:の症例のC123I-IMPシンチグラムC24時間像.右眼の病変に一致して,強い集積を示す.メラノーマに関してはCPETよりも診断的価値が高い.図4小線源療法を施行した症例a:20歳台,女性.右眼下鼻側に厚さC4.6.mm,基底径C10.mmの脈絡膜メラノーマがある.Cb:小線源治療を他院で施行し,その後にCTTTによる凝固術も追加した.Cc:小線源治療からC3年後.放射線網膜症に対するレーザー治療も行い,腫瘍は平坦化している.d:OCT.網脈絡膜は萎縮している.ーマだけでなくさまざまな悪性腫瘍への臨床応用が期待されている.CVI予後と予後予測因子脈絡膜メラノーマは,肝転移をきたしやすく,遠隔転移した症例のC90%に肝病変がみられる.肝転移の治療は困難であり,分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬を含めたさまざまな薬剤が使える現在でも,最終的には転移率≒死亡率となる.現在の臨床研究のトレンドは,腫瘍遺伝子から転移のリスクを推定することである.C1.古典的予後予測因子腫瘍の大きさはもっとも簡便で信憑性のある因子である.UICC-TMN分類(図3)は,多くの予後研究結果に基づいたもので,腫瘍の厚さ,基底径,毛様体病変の有無,眼外進展の有無と大きさがポイントである7).T1:腫瘍の大きさCcategoryC1(頻度C46%,10年遠隔転移率C15%)T2:腫瘍の大きさCcategoryC2(頻度C27%,10年遠隔転移率C25%)T3:腫瘍の大きさCcategoryC3(頻度C21%,10年遠隔転移率C49%)T4:腫瘍の大きさCcategoryC4(頻度C6%,10年遠隔転移率C63%)大きさ以外に予後に関係する因子として,病理組織学的な細胞型や核分裂頻度,血管や強膜への浸潤の有無などが重要であるが,これらは摘出眼球によって評価される.眼球外進展がある場合には極端に予後が悪くなる.C2.微量検体による予後予測脈絡膜メラノーマ発育の分子機構が解明されてきている.眼球温存療法を選択した場合でも,治療直前に針生検で腫瘍細胞を採取し,染色体検査8)やCgeneCexpres-sionCpro.ling9,10)で高精度な予後推定が可能となってきた.海外では商業ベースでの検査が可能となっているが,わが国では普及していない.おわりに脈絡膜メラノーマの早期診断に立ちはだかる壁は高く,驚くことに初診時の腫瘍の大きさはC30年前と変わりない.数多くある悪性腫瘍のうち,早期診断が進まないのはまれであり歯がゆい.いまや,眼科を受診したことのない人は少数派である.健診や診察中に発見した色素性病変の観察と記録を忘れずに行うことが第一歩であろう.文献1)ShieldsCCL,CFurutaCM,CThangappanCACetal:MetastasisCofCuvealCmelanomaCmillimeter-by-millimeterCinC8033Cconsec-utiveCeyes.CArchOphthalmolC127:989-998,C20092)ShieldsCCL,CFurutaCM,CBermanCELCetal:ChoroidalCnevustransformationCintoCmelanoma:CanalysisCofC2514Cconsecu-tiveCcases.CArchOphthalmol127:981-987,C20093)YoshimuraCM,CKanesakaCN,CSaitoCKCetCal:DiagnosisCofCuvealCmalignantCmelanomaCbyCaCnewCsemiquantitativeassessmentCofCN-isopropyl-p-[123I]-iodoamphetamine.CJpnJOphthalmolC55:148-154,C20114)MashayekhiCA,CShieldsCCL,CRishiCPCetCal:PrimaryCtrans-pupillaryCthermotherapyCforCchoroidalCmelanomaCinC391cases:CimportanceCofCriskCfactorsCinCtumorCcontrol.COph-thalmologyC122:600-609,C20155)ToyamaCS,CTsujiCH,CMizoguchiCNCetCal;WorkingCGroupforCOphthalmologicTumors:Long-termCresultsCofCcarbonCionCradiationCtherapyCforClocallyCadvancedCorCunfavorablylocatedCchoroidalCmelanoma:CusefulnessCofCCT-basedC2-portCorthogonalCtherapyCforCreducingCtheCincidenceCofCneovascularCglaucoma.CIntCJCRadiatCOncolCBiolCPhysC86:C270-276,C20136)KinesCRC,CCerioCRJ,CRobertsCJNCetal:HumanCpapillomaviC-rusCcapsidsCpreferentiallyCbindCandCinfectCtumorCcells.CIntCJCancerC138:901-911,C20167)ShieldsCCL,CKalikiCS,CFurutaCMCetal:AmericanCjointCcom-mitteeConCcancerCclassi.cationCofCuvealCmelanoma(ana-tomicCstage)predictsCprognosisCinC7,731Cpatients:CTheC2013CZimmermanCLecture.COphthalmologyC122:1180-1186,C20158)DamatoCB,CDukeCC,CCouplandCSECetCal:CytogeneticsCofuvealCmelanoma:CaC7-yearCclinicalCexperience.COphthal-mologyC114:1925-1931,C20079)HarbourCJW:ACprognosticCtestCtoCpredictCtheCriskCofCmetastasisCinCuvealCmelanomaCbasedConCaC15-geneCexpres-sionCpro.le.CMethodsMolBiolC1102:427-440,C201410)FieldCMG,CDecaturCCL,CKurtenbachCSCetCal:PRAMECasCanCindependentCbiomarkerCforCmetastasisCinCuvealCmelano-ma.CClinCancerResC22:1234-1242,C2016(29)あたらしい眼科Vol.C34,No.8,2017C1103