●連載抗VEGF治療セミナー監修=安川力髙橋寛二11.標準治療と個別化医療柳靖雄東京大学滲出型加齢黄斑変性(AMD)の抗VEGF療法における標準治療(ラニビズマブ0.5mgの場合には毎月投与,アフリベルセプト2.0mgの場合には8週ごとの投与)と個別化治療(必要時投与PRN[prorenata]およびT&E[treatandextend])にはメリットとデメリットがある.実臨床の現場では標準治療より個別化医療が選択されていることが多く,わが国ではPRNが,米国ではT&Eが選択されることが多いが,最適な個別化治療の方法はいまだ模索段階にある.はじめに滲出型加齢黄斑変性(age-relatedmaculardegeneration:AMD)の治療の目標は,治療導入期で視機能を改善し,長期にわたり視機能を維持することである.大規模臨床試験の結果からは,ラニビズマブ(ルセンティスR)で良好な視力予後を得るためには,毎月画一的に投与することが望ましいことが示されている1~3).一方,アフリベルセプト(アイリーアR)では,導入期では3回の毎月投与を行い,その後2カ月に1度投与を行うことによって,多数の症例で良好な視力予後が得られることが示されている4).個別化医療は治療薬に対する反応性を個別に評価し,治療薬の投与方法を改変する投与方法である.AMDでは治療薬に対する反応がさまざまであり,まだ初診時の所見から適切な治療プロトコールを計画することは困難である.さらに,治療反応性を規定するような遺伝子の候補はいくつか報告されているものの,治療を行う際の一般的な検査と考えるには時期尚早である.このため,AMDの個別化治療においては初期治療(導入期の治療)が行われた後に経過観察により再発のタイミングを観察することで個々の症例に適切な投与を行うことが一般的である.方法はPRNとT&Eである(図1).PRNについてPRN〔prorenata(ラテン語:必要時投与の意味.頓用などの意味にも使われる)〕とは導入期で病態の安定(滲出性変化のコントロール,黄斑のドライ化)が得られた後に,毎月1度の経過観察に基づいて投与を決定する方法である(図2).PRNは厳密に行うことが肝要であり良好な視力を得るためには,SpectraldomainOCT(91)0910-1810/14/\100/頁/JCOPYで定性的に滲出性変化を検討し,滲出性変化を認めた場合にはなるべく早めに追加投与を行うプロトコールがよいと認識されている3).患者ごとに個別の対応が可能であり,過剰な治療が避けられ,投与回数を少なくできる点がこの方法のメリットであると考えられる.しかしながら,滲出性変化が出現してから投与を行うため,事後対応的な要素(reactivecomponent)を含んだ治療と位置づけられる.短期間の滲出性変化であっても網膜への障害は避けられないため,毎月の投与と比較して視力予後は若干劣っている.さらに,実臨床における問題点は滲出性がみられた時点で投与を行えない場合があることや,滲出の残存,再発を認めても自覚症状,視力の悪化がなければ投与を躊躇する場合があることも問題点と考えられる.また,長期にわたって継続的に診療を行うことが必要であり,多くの患者を診療する施設では外来診療患者数が増え,適切な患者管理が行えなくなっていることも問題点である.このため過小投与になる傾向があり,長期の視力予後が悪くなる可能性に留意しなければならない.滲出性変化が見られれば,治療:事後対応的投与予防的投与黄斑のドライ化治療,診療間隔の延長滲出性変化の残存もしくは出現診療,治療期間の短縮(カ月)1023456789101112PRN(asneeded)Bi-monthly*TreatandExtend黄斑がドライ化:診療,注射間隔の延長*TreatandExtend滲出性の残存が見られた場合図1加齢黄斑変性の維持期の個別化治療あたらしい眼科Vol.31,No.12,20141829図2PRNの症例T&EについてT&Eは来院時には必ず抗VEGF薬の投与を行い,投与時の所見に基づいて次回の治療日を決定するプロセスを数回経て,最終的に患者ごとの適切な固定投与間隔を決定する方法である(図3).定まった方法が存在しないが,海外で行われている一般的な治療5)では,黄斑に滲出性変化が消失しドライ化が得られるまで毎月投与を継続し,滲出性変化が消失した後は,来院,投与間隔を2週間ずつ延長する.ただし,投与間隔を延長した後に滲出の再発が認められた場合には,来院,投与間隔を2週間ずつ短縮,つまり,黄斑のドライ化が得られていた間隔まで短縮する.何度か延長と短縮を行い,再発がみられない適切な投与間隔を決定し,滲出性変化をきたす前に抗VEGF薬を定期的に投与する.予防的治療(proactivetreatment)を行い,病態悪化を避けることを目標にしている.実際には適切な投与間隔を決定するまでに事後対応的な要素がまったく含まれないということではないが,再発がみられない適切な投与間隔をみつければ,期間を固定して予防的に投与することが可能であ1830あたらしい眼科Vol.31,No.12,2014図3T&Eの症例る.投与間隔は,最小で4週間,最大で8~12週間とすることが多い.また,投与間隔の調整は投与時のOCT検査による滲出性変化以外に新規の出血も考慮して行う.PRNと比較しての最大のメリットは,病状の悪化する前に投与可能であることであり,このため,年間の投与回数は比較的多くなるが良好な視力を維持できる可能性がある.また,T&EではPRNと比較すると病状の悪化を告げられる患者の精神的負担が軽減される点,投与間隔の個別化や来院回数の減少が可能である点,投与日があらかじめ決定されているため患者,付添人のスケジュール調整や医療機関の来院,投与当日のスケジュール管理が比較的容易となる点もメリットである.さらに院内フローも視力,OCT検査を終えた後に,検査結果に基づいて次回の来院,注射日を決定した後に注射を行えるため,PRNと比較してシンプルである.文献1)BrownDM,KaiserPK,MichelsMetal:ANCHORStudyGroup:Ranibizumabversusverteporfinforneovascularage-relatedmaculardegeneration.NEnglJMed355:1432-1444,20062)RosenfeldPJ,BrownDM,HeierJSetal;MARINAStudyGroup:Ranibizumabforneovascularage-relatedmaculardegeneration.NEnglJMed355:1419-1431,20063)MartinDF,MaguireMG,YingGSetal:CATTResearchGroup:Ranibizumabandbevacizumabforneovascularage-relatedmaculardegeneration.NEnglJMed364:1897-1908,20114)Schmidt-ErfurthU,KaiserPK,KorobelnikJFetal:Intravitrealafliberceptinjectionforneovascularage-relatedmaculardegeneration:ninety-six-weekresultsoftheVIEWstudies.Ophthalmology121:193-201,20145)GuptaOP,ShienbaumG,PatelAHetal:Atreatandextendregimenusingranibizumabforneovascularage-relatedmaculardegenerationclinicalandeconomicimpact.Ophthalmology117:2134-2140,2010(92)