シリーズ⑱シリーズ⑱タブレット型PCの眼科領域での応用三宅琢(TakuMiyake)永田眼科クリニック第18章眼科医療におけるポータブル記録機器としての活用■スマートフォンの記録機器としての意義第18章で取り上げる端末は,私が代表を務めるGiftHandsの活動や外来業務で扱っているスマートフォンの“iPhone5S(米国AppleInc)”やポータブルマルチメディアプレイヤー“iPodtouch(米国AppleInc)”のiOSバージョン7.0.2です.この章ではこれらデバイスの記録機器としての活用法とその意義について,実際に利用した医師の声とともに紹介していきます.■私のスマートフォン活用法「前眼部撮影編」近年,スマートフォンやタブレット型のPCの内科領域でのベットサイドケアや在宅医療における有用性に関する検討が多く報告されています.眼科領域においてもスマートフォンを用いた撮影機器としての利用が報告され1),国内ではスマートフォンを用いた蛍光眼底撮影が検討されています(周藤ら:網膜硝子体学会2012).私はスマートフォンを臨床業務へ導入することで,導入前には不可能であった多くの所見を記録し,医療スタッフ間で共有することが可能になりました.本章では実際の活用法を紹介したいと思います.①標準カメラアプリの活用スマートフォンの背面カメラを細隙灯の接眼レンズに簡易的に固定することで,前眼部の動画撮影を行うことが可能です(図1).背面カメラの解像度および感度の向上に伴い,とても明るく解像度の高い動画の撮影が可能となり,撮影後にスクリーンショット機能(iPhoneではホームボタンとスリープボタンの同時押し)を用いることで静止画像として所見を保存することが可能です.また,同じ無線LAN環境にタブレット型PCが存在すれば,クラウドサービスを介してシームレスにタブレット型PCのアルバム内にスマートフォンで撮影した画像が表示されるため患者説明に利用することが可能となります(図2).図1スマートフォンの背面カメラを細隙灯の接眼レンズの前方に簡易的に固定して,前眼部所見を撮影している様子図2患者説明用にスマートフォンで前眼部所見を動画撮影してスクリーンショットで静止画とした後発白内障の所見(89)あたらしい眼科Vol.30,No.11,201315810910-1810/13/\100/頁/JCOPY図3スマートフォンの背面カメラを利用した動画撮影モードにおいて背面ライトを点灯させて,20Dのレンズ越しに撮影された眼底所見スマートフォンを臨床業務に導入した若手の医師たちの声には,つぎのようなものがあります.「上級医に相談する際に,撮影機器のない外勤先で担当した症例でも動画を見せて相談できるのでとても安心です.」「上級医が診察する際にスマートフォンで撮影してもらい,上級医が実際に見ている所見を共有することができるので,とても勉強になります.」スマートフォンを記録機器として利用することで,施設間での記録機器の差にかかわらず所見の撮影や保存を行えることは,若手の医師にとって安心して診療を行う上でとても重要なことだといえます.また,私が実際に活用しているiPhone5sでは,標準機能として撮影動画に対してスローモーションエフェクトを適応することが可能であり,今後,涙液動態などを評価するのにも利用できる可能性があると考えています.②背面ライトの活用スマートフォンの背面カメラにおける動画撮影モードでは,背面カメラの横のフラッシュ撮影用のライトを常時点灯することが可能です.ライトを点灯した状態で動画撮影を行えば,非接触型倒像鏡用の20Dレンズなどと組み合わせることで眼底所見の診察および撮影が可能です(図3).また,前眼部撮影と同様にスクリーンショットで静止画像としたうえで,適切なサイズに画像をトリミングすることで簡易的なパノラマ眼底撮影を行うことも可能です.実際に眼底撮影にスマートフォンを用いた医師の声にはつぎのようなものがあります.「これまで記録のむずかしかったNICUの子供の眼底所見を画像として記録できるため,若い先生を教育するときにも利用できてとても助かります.」「虐待を疑われる児童の眼底を診察する際に,簡単かつ経時的に記録を画像で残せるのでとても安心です.」おもにベッドサイドで行われる小児の眼底診察の所見を,簡単に動画や静止画で記録できることはとても重要だと考えられます.③スマートフォンによる記録機器導入の意義スマートフォンによる前眼部所見や眼底所見の撮影および記録は,ポータブルの細隙灯と20Dレンズなどがあれば場所を問わず行うことが可能です.このことは,今後,眼科領域での在宅医療やベットサイド診療において,極めて大きな意味をもつと考えられます.スマートフォンなどのデバイスが記録機器として活用されることで,眼科医療の世界がより安全で快適なものになると私は信じています.本文の内容や各種セミナーの詳細に関する質問などはGiftHandsのホームページ「問い合わせのページ」よりいつでも受けつけていますので,お気軽に連絡ください.GiftHands:http://www.gifthands.jp/文献1)BarsamA,AllanBD:Excimerlaserrefractivesurgeryversusphakicintraoculsrlensesforthecorrectionofmoderatetohighmyopia.JCataractRefractSurg36:12401241,20101582あたらしい眼科Vol.30,No.11,2013(90)