連載現場発,病院と患者のためのシステム電子カルテシステム医事会計システムを筆頭に,ファイリングシス単体導入の是非テム,オーダリングシステムなど,医療機関にはさまざまな情報システムが,それを得意とするベ杉浦和史*ンダ(システム開発会社)から提供されています.はじめに電子カルテシステムも同様です.これらを組み合わせて使うことになりますが,結果的にマルチベンダ(複数の異なるシステム開発会社)システム連載初回に複数システムを異なるベンダ(システム開となり,システム相互間のスムーズな連携がしに発会社)から目的別に導入し,組み合わせて使う場合のくく,トラブル発生時の対応遅れなど,運用上面問題を紹介しました.最初に医事会計システム,つぎに倒なことが多々発生します.予約システム,検査画像ファイリング,そして電子カル図1異なるベンダのシステムを導入する場合の弊害Rテシステムのような場合です.医療会計システム画像ファイリングシステム操作性の不統一複数のディスプレイ機能の重複情報の重複予約システム電子カルテシステム図1に示すように,それぞれが単独で運用できるようにするため,機能,情報の重複が発生します.また,各ベンダが独自の設計ポリシーで作るため,操作性が統一されていません.トラブル発生時には,どのシステムが原因なのかを特定するまでに時間を要します.他のシステムとの情報授受で引き起こされるトラブルがあるからです.それぞれのシステムにディスプレイが必要なことから,狭い診察机がさらに狭くなってしまうという問題も発生します.複数のディスプレイに表示される情報を見比べ,かつ,どのマウスがどの画面のものなのかを気にしながらの診察も大変です..電子カルテシステムの単体導入図2に示すように,医療機関には診察以外の業務が山(91)0910-1810/13/\100/頁/JCOPYのようにあります.図2多種多様ある院内業務Rこの図を見ると,診察業務を対象にする電子カルテシステムを単独で導入するだけで良いのだろうか?と疑問に思われる方は多いでしょう.しかし残念ながら,院内の業務全般を俯瞰したうえで電子カルテシステムを含む,部分システムの導入を決めるケースは少ないようです.これは,一般的に医療機関には,情報システムの企画,構築,運営管理,導入効果算定に関する知識,経験が少なく,良いことしかいわないベンダ営業の説明を鵜呑みにしがちであることが影響していると思われます.*KazushiSugiura:宮田眼科病院CIO/技術士(情報工学部門)あたらしい眼科Vol.30,No.11,20131583また,主たる導入決定者が医師であることから,守備範囲である診察業務をカバーするシステムに目が行ってしまうのも,電子カルテシステムの単独導入に結びついている一因と考えられます.他院の成功事例が紹介され,見学に招待されることもありますが,見学先では,うまくいっているといわなければ困る立場の方々が対応するので,本当のところは隠れてしまいがちです.とくに,部分的なシステム導入によって,システム化されていない部分との情報授受で発生する手間の増大という実態は聞くチャンスがないかもしれません.診察業務(電子カルテシステム)と情報交換が必要な業務がたくさんあることは図2のとおりですが,これらの業務との情報授受を考慮しないと,運用に入ったときにさまざまな問題が生じてきます.例えば,検査です.オーダすると,その情報はどのシステムが受け取るのでしょう.また,複数の患者さんにオーダを出すと待ちが発生しますが,その順番はわかるようになっているのでしょうか.多種多様ある検査結果をシステムに取り込む手段は?診察の結果,手術が必要になると,ベッドを確保し,術日,術者を決め,手術に必要な書類の作成をしなければなりませんが,それをカバーするシステムとの連携は?等々,考慮しなければならないことが山積しています.ある業務は電子的に処理され,その業務と関連する他の業務は従来どおり紙と手作業になっていると,ストレスのないシームレスな情報の授受ができませんが,これをハンドリングが発生するといいます.ハンドリングは,確実に病院全体の作業効率を下げ,システム導入の効果を薄れさせてしまう要因です.また,すでに導入されているシステムがあると,そのシステムとの情報授受のために仲介,翻訳的な機能が必要になり,変更に弱い複雑な構造を余儀なくされます.目的地まで複数の高速道路を乗り継ぎ,高速道路の切れ目で一般道路も走ることになると,ジャンクションでのルートチェンジに神経を使い,高速道路の出入りが面倒ですが,これと同じ理屈です.部分最適なシステムを寄せ集めても全体最適な統合情報システムにはならないことは,製造業,流通業などシステム化の歴史の長い他の業界では体験をとおして知られていますが,医療業界では依然としてそれがまかりとおっているのが実状です.院内の業務は図2のとおり,多種多様あり,情報授受関係が複雑に入り組んでいることを承知したうえで,どの順番にシステム化していくかの計画を作ってから,順次システム整備を進めるべきでしょう.この手順を踏めば,一般的には電子カルテシステムを単独で導入するという結論は出ないはずです..その他実際に電子カルテシステムを使った医師は,つぎの感想をもらしています.①ボタンが多すぎてどこを押してどうすればいいのか,わかりにくい.②いろいろなウィンドウが開き,どこにどの情報があるのかが把握しにくい.③操作すべきことが多すぎ,時間がかかりすぎる.④使うボタンは非常に限られており,一度も押す必要のないものが多すぎる.⑤画面の立ち上がり時間が遅い(とくに写真や画像を含むデータを扱うとき).これは電子カルテシステムが現場を観察し,作業実態を把握して作っていないことを端的に現しています.ただ,その医師は,「しばらくすると慣れてしまう」ともいっています.これをどうとらえるかです.画面を使って仕事をしていると何だか効率が上がった気分になりますが,不具合を“医師の慣れ”と“医師以外のスタッフの人海戦術”でカバーしてしまい,いつの間にか非効率な作業が改善されることなく引き継がれ,誰も気がつかなくなる由々しき事態になると考えてほしいものです.以上述べてきたことは,連載①病院向けパッケージの基礎知識,連載⑦系統立った院内システムの整備,連載⑩システムを導入すると手間が軽減されるって本当?を併せてご覧いただきますと,さらに理解を深めることができます.☆☆☆1584あたらしい眼科Vol.30,No.11,2013(92)