0910-1810/11/\100/頁/JCOPYマッチさせているだけである.屈折,乳頭径などによってもRNFL厚は影響を受けるが,これらはマッチさせていないので注意が必要である.撮影方法は,眼底写真を撮影するような姿勢で撮影する.信頼性のある解析をするには,良い画像を撮る必要があり,屈折異常の強い眼や,白内障などの中間透光体混濁例,固視不良例,縮瞳例,焦点合わせが不良の場合はじめにRTVue-100(Optovue社)(図1)はスペクトラルドメイン方式の光干渉断層計(OCT)の一つで,深さ方向の分解能は5μm,スキャン速度は26,000Aスキャン/秒である.高分解能と高速化により固視微動によるアーチファクトが低減し,画質が向上し病変の詳細が観察できるようになった.開発後,何回かプログラムのバージョンアップがされており,現在のバージョン4.0ではONH,GCC,RNFL3.45が緑内障スキャンプログラムとして存在する.なかでも緑内障の診断や経過観察に有用と思われるONHおよびGCCスキャンプログラムについて中心に述べる.最近,網膜神経線維層(RNFL)と神経節細胞層と内網状層の3層を合わせて黄斑部神経節細胞複合体(ganglioncellcomplex:GCC)とよんでいる.GCCスキャンプログラムはこのGCC厚を選択的に測定できるプログラムである.最近,他メーカーのOCTでもGCCを測定することができるようになってきているが,最初にGCC厚の自動測定プログラムを搭載したのはRTVue-100である.患者登録の際に人種を選択することができ(図2),日本人を選択することで日本人データベースから年齢をマッチングさせ,測定したRNFLやGCC厚と比較される.正常範囲が緑,95%予測区域から外れた範囲が黄色,99%予測区域から外れる範囲が赤色で表示される(図3).RTVue-100の日本人データベースは,現在,約150眼の情報が入っているが,患者の年齢と性別を(49)801*YoshiyukiKita:東邦大学医療センター大橋病院眼科〔別刷請求先〕北善幸:〒153-8515東京都目黒区大橋2-17-6東邦大学医療センター大橋病院眼科特集●光干渉断層計(OCT)の緑内障への応用あたらしい眼科28(6):801.808,2011RTVue-100RTVue-100北善幸*図1RTVue-100の外観802あたらしい眼科Vol.28,No.6,2011(50)画像判定視神経乳頭から緑内障の判定をする際には,一般的には眼底写真を用いて垂直と水平の陥凹乳頭径比(C/D比)を算出し評価する.しかしながら,乳頭部のどこからが陥凹なのかという明確な定義が現在も存在しないため,同一検者では悪化などの経過を評価できるが,異なる検者間で評価は困難である.ONHプログラムを用いた画像解析による視神経乳頭評価は,discareaやcuparea,rimarea,C/D比などが表示(図3)されるので,これらのパラメータから他覚的な乳頭陥凹の拡大進行が評価でき緑内障診断のみならず,進行判定に有効な可能性がある.また,乳頭部の解析では乳頭辺縁の幅が不均一で陥凹は拡大(乳頭内の色が薄い灰色部は陥凹部を示す)しているのが診断の手がかりとなる.RNFL厚の解析では正常範囲が緑,95%予測区域から外れた範囲が黄色,99%予測区域から外れる範囲が赤色で表示される(図3).RNFL厚を示すTSNITグラフ(360°のRNFL厚をtemporal-superior-nasalinferior-temporalの順に並べたもの)の表示もあり,正などは画像が悪くなる可能性がある.RTVue-100では画質はSSIで表示される.IONHプログラムこれは視神経乳頭および視神経乳頭周囲のRNFL厚の解析プログラムである.視神経乳頭に対しては放射状に長さ3.4mm,12本のラインスキャン(15°間隔)が行われ,RNFL厚に対しては直径1.3.4.9mm間に13本のサーキュラースキャンおよび放射状に12本のラインスキャンが行われることにより,視神経乳頭の形状およびRNFL厚が解析される.乳頭形状の解析では網膜色素上皮層に相当する高反射ラインの起始部を参照面とし,陥凹縁は参照面より150μm前方と定義される(図4).その陥凹縁から視神経乳頭の陥凹面積や辺縁部面積などが計測される.視神経乳頭周囲のRNFLは乳頭中央を中心とした直径3.45mmの円周上の厚みが表示される.常に同一の部位が測定できるので経過観察にも有用である.日本人データーベース中国人データーベース図2人種によるデータベースの違いRNFL厚には人種差があり,同一症例であっても人種の選択を誤るとこのように正常部位の緑の部分が変化するので注意が必要である.(51)あたらしい眼科Vol.28,No.6,2011803常眼ではRNFLは上下側で厚く,耳鼻側で薄いため滑らかな二峰性であるが,緑内障眼では特に神経線維層欠損(NFLD)が存在する部で,局所的あるいは全体が低下して二峰性が失われることが多く診断の手がかりとなる.経過観察時には,RNFL厚を時系列表示することもでき役立つ.ただ,RNFLの測定部位は直径3.45mmで固定されているが,実際,視神経乳頭の大きさには個人差があり,RNFLの測定部位と視神経乳頭縁の距離は一定していない.RNFLは視神経乳頭からの距離が離れるほど薄いとされており,視神経乳頭径に応じRNFLの測定点を変えるほうがよいとも考えられている.④直径3.45mmの円周上のRNFL厚の測定値TSNITグラフ①画質③乳頭陥凹②Bスキャン図3ONHプログラムの解析結果のみかた①画質を表すSSIを確認.50以上が望ましい.②Bスキャンよりセグメンテーションエラーがないか確認.③乳頭陥凹拡大の部位を確認.④乳頭陥凹の拡大部位に一致したRNFLの減少があるか確認.左写真は65歳,女性の左眼原発開放隅角緑内障のカラー眼底写真である.上耳側の乳頭陥凹が拡大しており,神経線維層欠損(NFLD)(矢印)がみられる.右はその解析例である.乳頭内の色が薄い灰色部が陥凹部であり拡大しているのが確認できる(黄矢印).Discareaは1.87mm2,cupareaは0.92mm2,rimareaは0.93mm2,C/D比は0.49と解析されている.RNFL厚が薄くなっており(赤矢印),赤色で示されている.TSNITグラフは二峰性が失われている(黒矢印).これは耳側上方にNFLDが存在し,その部分で,局所的に低下している.RimAreaReferencePlaneRPETipCupAreaRPETip図4視神経乳頭のパラメータの定義網膜色素上皮の断端を結んだ面より150μm前方の面(ReferencePlane)の下方が乳頭陥凹部とRTVue-100では定義されている.804あたらしい眼科Vol.28,No.6,2011(52)Tanら1)は緑内障の進行がみられても網膜の外層厚はあまり変化がないのに対しGCCは薄くなっていくと報告し,緑内障診断において重要なパラメータは黄斑部GCCであるとしている.緑内障診断力も網膜全層厚よりGCC厚のほうが高い1).そのため,RTVue-100では緑内障診断にGCC厚を用いるので網膜全層厚を使用する必要はない.GCCプログラムは黄斑部7×7mmの範囲で長さ7mmのラインスキャンを水平方向に1本,垂直方向に0.5mm間隔で15本スキャンしGCC厚を測定する.視野では約20°の範囲に相当する.GCCと耳側RNFLは有意な強い相関を示す2,3).これは網膜神経線維走行の乳頭黄斑線維束と弓状線維束の遠位部と近位部に相当する部分を測定しているため相関すると考えられる(図6).また,globallossvolume(GLV)とfocalRNFLは他の眼疾患や初期Alzheimer病や多発性硬化症などでも減少するとされており,他の疾患による変化なのか注意する必要がある.IIGCCプログラムGCCプログラムは黄斑部の網膜全層厚とGCC厚(図5),網膜外層厚が自動で測定できる.ただし,中心窩には神経節細胞層は存在しないので省かれる.緑内障眼では進行すると黄斑部網膜全層厚が減少する.さらに,図5黄斑部のOCT像網膜全層とGCC部を示す.ab図6測定部位GCCおよびONHプログラムの測定部位を示す.GCCプログラムでは直径6mmの円内を測定しており緑色の部分に相当する.円の中心は中心窩ではなく耳側に1mmずれている.ONHプログラムでは直径3.45mmの円周上のRNFLを測定しており黄色の線に相当する.a:乳頭黄斑線維束,b:弓状線維束.①画質②Bスキャン③SignificanceMap図7GCCプログラムの解析結果のみかた①画質を表すSSIを確認.50以上が望ましい.②Bスキャンよりセグメンテーションエラーがないか確認.③SignificancemapでGCCの減少を確認.図3と同一症例.Bスキャンで上方GCC(緑色矢印)が下方GCC(黄色矢印)より薄いのがわかる.上半分のGCCは72.14μmと減少し,赤色で表示されている(赤矢印).下半分のGCCは正常範囲である.GCCは視神経乳頭部周囲のRNFLと有意に相関するので,図3の症例のように上耳側のRNFLが薄い症例では上半分のGCCが薄くなる.黒矢印はFLV,GLVを示す.(53)あたらしい眼科Vol.28,No.6,201180522カ月後上下GCCが減少している18カ月後図8GCCの経過下半分のGCCのみならず上半分のGCCも薄くなってきており,悪化傾向があることがわかる.プリントアウト下方に実際にどれだけ薄くなったか示される.Humphrey視野の経過においてもMD値の軽度低下がみられる.abc図9黄斑上膜を伴う緑内障症例乳頭陥凹拡大やRNFLの減少は認める(a)が,GCCの減少はほぼない(b).この症例では黄斑上膜(c,白矢印)を伴っておりそのため,GCC厚が厚く測定されている.歪視のない黄斑上膜は見落とされることがあるので注意が必要である.806あたらしい眼科Vol.28,No.6,2011(54)はなく同等であるが,対象群によって(固視点の近傍の視野欠損や近視眼など)多少違いがある1,3,5,6).画像判定GCC厚は全体の平均と上側および下側の平均しか表示されないが,significancemapに正常範囲が緑,95%予測区域から外れた範囲が黄色,99%予測区域から外れる範囲が赤色で表示されるため,測定範囲の異常部位は判明する(図7).視野検査のようにGCCで経過を追うことも可能である(図8).黄斑上膜がある症例はGCCが正常と評価されることがあり,プリントアウトの結果のみでなく検眼鏡的に黄斑部の診察をする必要がlossvolume(FLV)というパラメータも表示される(図7).GLVはHumphrey視野計でいうmeandeviation(MD)のようなもので,GCCマップ上の全体的なGCCの損失を表示している.FLVは視野計でいうpatternstandarddeviation(PSD)のようなもので,部分的なGCCの損失を表示している.GLVやFLVはGCCよりも緑内障診断力が高いとの報告1,5,6)もある.半視野異常の症例のGCC厚は,視野欠損がある側のGCC厚は正常眼に比べ有意に減少しているが,まだ,視野欠損のない側もGCC厚は正常眼と比較すると有意に減少しており4),GCC厚は初期変化を捉えることができる.GCC厚とRNFL厚を用いた緑内障診断力の比較では有意差abcd図1040歳,男性:原発開放隅角緑内障右眼は.7.75Dの近視.眼底写真(a)では視神経乳頭下方のリムの菲薄化とNFLDがある.Humphrey視野(b)の結果を示す.GCCプログラム(c)では黄斑部下方のGCC厚の減少がある.ONHプログラム(d)では下方の陥凹拡大が確認できる.C/D比は0.55と評価されている.また,眼底写真のNFLDと一致したRNFL厚の減少が確認できる.あたらしい眼科Vol.28,No.6,2011807ある(図9).III症例提示(図10,11)原発開放隅角緑内障の診断をする際にRNFL厚だけでなく,GCC厚と両方を用いることで診断率が上昇する1)といわれており,ONHおよびGCCプログラムの双方を用いることは今後の診療に有用である.おわりに緑内障眼ではRNFL厚やGCC厚が減少するが,実際の外来診療ではまず視神経乳頭の診察をして緑内障を疑う必要がある.今回提示した症例は典型例であり,RNFL厚やGCC厚の測定をしなくても視神経乳頭所見および視野検査の結果から緑内障と診断することは可能である.したがって,OCTは緑内障診療に必須の検査ではない.しかしながら,近視眼では傾斜乳頭などの乳頭形状の特性や強い豹紋状眼底などからリムの萎縮やNFLDもわかりにくく,単なる近視性変化なのか,緑内障性視神経症と診断するべきなのか判別が容易ではない症例も存在する.その際に,OCTは緑内障診断の補助として有用であると思われる.ただ,そのような症例にのみOCTを使用しようと思っても使いこなせるもの(55)abcd図1144歳,女性:原発開放隅角緑内障右眼は.3.25Dの近視.眼底写真(a)では視神経乳頭上方のリムの菲薄化とNFLDがある.Humphrey視野(b)では下方の視野欠損があり上方にはほぼ暗点を認めない.GCCプログラム(c)では視野欠損に対応する黄斑部上方のGCC厚の減少があるだけでなく,視野欠損がほぼない黄斑部下方もGCCが減少している.ONHプログラム(d)では眼底写真のNFLDと一致した特に上方のRNFL厚の減少が確認できる.808あたらしい眼科Vol.28,No.6,2011でもなく,普段から自分の診察した結果とOCTの結果を照らし合わせOCT読影のスキルアップをしながら使用していくことが重要と思われる.文献1)TanO,ChopraV,LuATetal:DetectionofmacularganglioncelllossinglaucomabyFourier-domainopticalcoherencetomography.Ophthalmology116:2305-2314,20092)KitaY,KitaR,NittaAetal:Glaucomatouseyemacularganglioncellcomplexthicknessanditsrelationtotemporalcircumpapillaryretinalnervefiberlayerthickness.JpnJOphthalmol,inpress3)SeongM,SungKR,ChoiEHetal:Macularandperipapillayretinalnervefiberlayermeasurementsbyspectraldomainopticalcoherencetomographyinnormal-tensionglaucoma.InvestOphthalmolVisSci51:1446-1452,20104)TakagiST,KitaY,YagiFetal:Macularretinalganglioncellcomplexdamageintheapparentlynormalvisualfieldofglaucomatouseyeswithhemifielddefects.JGlaucoma,inpress5)RaoHL,ZangwillLM,WeinrebRNetal:Comparisonofdifferentspectraldomainopticalcoherencetomographyscanningareasforglaucomadiagnosis.Ophthalmology117:1692-1699,20106)KimNR,LeeES,SeougGJetal:ComparingtheganglioncellcomplexandretinalnervefibrelayermeasurementsbyFourierdomainOCTtodetectglaucomainhighmyopia.BrJOphthalmol,inpress(56)