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Paul Glaucoma Implant の短期臨床経験(予報)

2025年9月30日 火曜日

《原著》あたらしい眼科42(9):1206.1210,2025cPaulGlaucomaImplantの短期臨床経験(予報)千原悦夫千原智之千照会千原眼科CShort-termClinicalOutcomesafterPaulGlaucomaImplantSurgery-APreliminaryReportEtsuoChiharaandTomoyukiChiharaCSensho-kaiEyeInstituteC2023年C11月.2024年C12月の間に新しい緑内障ロングチューブインプラントであるCPaulCGlaucomaCImplant(PGI)を難治性緑内障の17例17眼に挿入し,その眼圧下降に関する手術成績を187眼のBaerveldtCGlaucomaImplant(BGI)の成績と比較した.術前C4.4剤の抗緑内障内服・点眼薬の使用下にC35.5±9.2CmmHgであった眼圧がC3カ月後にはC13.4±5.2CmmHg,6カ月後にはC16.8±6.0CmmHgに下がり,BGIの手術成績と遜色なかった.術後低眼圧による浅前房や脈絡膜.離はC11.8%にとどまった.PGIは術後深刻な低眼圧を起こす可能性が低く,眼圧の下降効果はBGIと有意差がないので今後有望な緑内障インプラント手術になると思われる.CPurpose:Toassessandcomparetheshort-termsurgicaloutcomesbetweenthePaulGlaucomaImplant(PGI,AdvancedCOphthalmicInnovations),CaCnewClong-tubeCglaucomaCdrainageCdevice,CandCtheCBaerveldtCGlaucomaImplant(BGI)forthereductionofintraocularpressure(IOP).SubjectsandMethods:Inthisstudy,wereviewedthepreliminaryoutcomesin17eyesof17refractoryglaucomapatientsinwhichPGIsurgerywasperformedfromNovember2023toDecember2024.Surgicaloutcomeswerecomparedwiththosein187eyesthatunderwentBGIsurgery.CResults:Preoperatively,CtheCmeanCIOPCunderCtheCuseCofC4.4CantiglaucomaCmedicationsCwasC35.5±9.2CmmHg.At3and6monthspostoperatively,meanIOPhaddecreasedto13.4±5.2CmmHgand16.8±6.0CmmHg,respectively,comparativetotheIOPreductionsobservedintheeyesthatunderwentBGIsurgery.TheincidenceofCpostoperativeCcomplications,CsuchCasCaCshallowCanteriorCchamberCandCchoroidalCdetachmentCdueCtoChypotony,Cremainedat11.8%.Conclusion:Our.ndingsshowthatPGIsurgerye.ectivelyreducesIOPtoalevelcomparablewiththatofBGIsurgery,andwithalowriskofpostoperativecomplications.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)42(9):1206.1210,C2025〕Keywords:ポール緑内障インプラント,難治性緑内障,濾過手術,術後成績,合併症.PaulCGlaucomaCImplant,Crefractoryglaucoma,.lteringsurgery,surgicaloutcome,complications.Cはじめに緑内障の観血手術は濾過手術と流出路手術に大別されるが,近年はいずれの手術も変革の時期を迎えている.濾過手術に関して,過去にはゴールドスタンダードといわれてきたトラベクレクトミーの手術件数が世界的に激減した.米国を例にとるとC9年ごとに手術件数が半減しており,1994年にはC63,278件であったものがC2003年にはC36,758件になり,2012年にはC18,007件へとC7割以上減った.この傾向は米国だけでなく,中国,カナダ,オーストラリア,韓国などでも同じである1,2).2021年には米国CMedicareのチューブ手術がC13,360件に対し,トラベクレクトミーはC8,320件まで減り,数の上でもチューブ手術に凌駕された3).このように激減する理由はいくつかあるが,術後処置が煩雑であることに加え,また,術後合併症が非常に多いということも理由の一つにあげられる,わが国で行われたCCBIITSstudyの結果に示されるように,術後C5年内の濾過胞感染の頻度はC2.2%であり4),手術後視力が低下する可能性はC43.9%にも達する5,6).濾過手術後の低眼圧は術後視力低下の一要因であるが7),その術後低眼圧の頻度はC30.9%に達し8),眼内炎による失明の頻度はC5年でC0.24.0.36%と報告されている9).濾過胞によ〔別刷請求先〕千原悦夫:〒611-0043京都府宇治市伊勢田町南山C50-1千照会千原眼科Reprintrequests:EtsuoChihara,M.D.,Sensho-kaiEyeInstitute,Minamiyama50-1,Iseda,Uji,Kyoto611-0043,JAPANC1206(126)る合併症はC5年で終わるものではなく,濾過胞がある限り10年,20年と続くものであり,患者の負担ははかり知れない.1968年のCCairnsによる報告以来C60年にわたって合併症を防ぐために種々の工夫がなされ結膜縫合法,強膜弁の形や縫合方法,5-フルオロウラシル(.uorouracil:FU)やマイトマイシンCC(MitomycinC:MMC)をはじめとする瘢痕抑制薬が導入され,術式は改善されてきたはずであるが,未だに日本における失明原因のなかで緑内障が占める割合が圧倒的な一位であるという事実10)は,従来の方法による緑内障治療の限界を示すものである.このようにトラベクレクトミーには種々の問題があるので,その欠点を補うためのデバイスとして緑内障インプラントが発達した,古くは馬の毛から始まる種々のCSetonが試みられたのであるが成功せず,その後チューブが開発されてきた.現代型のチューブとプレートからなるデバイスを開発したのはCMoltenoであり,その他にもCACTSEB,White,Krupin-Denver,Jacob,Drake,などが開発されては消えていった.現在日本で使われているのはプレートがない第C2世代としてCPreserFloとCEx-PRESSがあり,プレートとチューブがある第3世代としてはAhmedCGlaucomaCValve(AGV),BaerveldtCGlaucomaImplant(BGI),AhmedClearPath(ACP)が使用されている.これらのインプラント類の改良は現在も続いており,従来型で細かな修正がされる一方,新しいデザインのものが開発されており,PaulCGlaucomaImplant(PGI)もそのうちの一つである.今回はPGIの治療成績について検討した.CI国内未承認の医療器材の扱いPGIは国内未承認のデバイスであるので,筆者らは使用にあたって厚労省の未承認薬・医療器機の個人輸入に関する通達:薬生監麻発0331第1号(令和2年9月11日改正)と指導に従い,京都府庁薬務課を介して近畿厚生局に薬監証明を提出してデバイスを入手した.CIIPGIについてPGIはシンガポールのCPaulChew教授が開発し,2018年に販売開始されたチューブとプレートからなる第C3世代の緑内障治療用のロングチューブであり11),現在日本における医療材料としての認可をめざして申請中である.すでにヨーロッパのCCEマークを取得し,米国食品医薬品局(foodCandCdrugadministration:FDA)の認可を得ており,日本眼科学会雑誌を含めて多くの報告がなされている12,13).いわゆるCnon-valvedimplantに属し,材質はシリコーンであるのでCBGIと同類であるが,いくつかの改良がなされている.第一の特徴はチューブの内径が細いということでCAGVではチューブの外径はC0.635Cmmと内径はC0.305Cmmで断面積が0.0706CmmC2になっているのに対しPGIは外径が0.467Cmm,内径がC0.127Cmmで断面積がC0.0127CmmC2となっている.ちなみにCPreserFloの外径はC0.350Cmm,内径がC0.07Cmmで断面積がC0.0038CmmC2である.PGIは通常C6-0プロリン糸を挿入して使用するが,その場合の残存空間である有効断面積はC0.0071Cmm2となる.このことがロングチューブの問題点の一つであった術後低眼圧の軽減につながった.第二の特徴は改良されたプレートの形状である.エンドプレートの大きさは横幅がC21.9Cmm,縦幅がC16.1Cmm,厚さがC0.95mmとなっており,BGIにおけるC32mm,15mm,0.9mm,あるいはCAGVにおけるC13mm,26mm1.0mmとは異なった形状をしている(図1).表面積はCBGI350がC350Cmm2,AGVFP7がC184CmmC2なのに対してCPGIはC342CmmのC1タイプである.エンドプレートはCABCStudyで示されたように大きいほど眼圧下降効果が強いと考えられており14),PGIはCBGIとほぼ同じのプレート面積をもつのでこれに近い眼圧下降効果があると考えられている.プレートの形状にも工夫がされており,筋肉などで覆われる部分は濾過腔が形成されにくいと考えられているので,直筋の下に入り込む部分が少なくなるようにデザインしてある,実際の眼圧下降に寄与する部分を有効面積(e.ectiveCsurfacearea:ESA)というが,この面積はCBGI350がC246.85CmmC2,AGVがC184CmmC2であるのに対してCPGIはC305.42CmmC2でもっとも大きい.第三の特徴はプレート内に作られた房水貯留空間である.これに似たコンセプトはCMolteno3でみられるようなCridgeで囲まれた房水貯留部分であるが,PGIではプレート表面から膨隆することなく陥凹するようになっている.プレート周囲に形成される被.はエラスチンを含み,収縮能があるので,縮むことによってプレート上に空間を作るように作用すると思われる.CIII対象と方法対象は,少なくともC1回の緑内障手術を受け,眼圧コントロールができないいわゆる難治性緑内障で,緑内障のタイプは落屑緑内障(exfoliationglaucoma:EXG)4眼,EXGを除く続発緑内障C5眼,血管新生緑内障(neovascularCglauco-ma:NVG)3眼,先天緑内障C1眼,原発開放隅角緑内障C4眼である.本研究はヘルシンキ宣言に則り,さらに院内倫理審査委員会(institutionalCreviewboard:IRB)(座長天野)の承認(C2023-R3)を受けるともに,被検者に対してはインプラント手術によって起こりうる事態を説明し,インフォームド・コンセントを取得して治療にあたった.基礎データは表1に示すとおりである.男女比は男性C9名・女性C8名,経過観察期間はC187C±118日である.挿入部図1PaulGlaucomaImplantの概観図表1PGIとBGI手術を受けた症例の基礎データ年齢手術既往数術前点眼内服数術前小数視力屈折(Diopter)視野(MD)CPGICnC17C17C17C17C6C9平均±SDC63.2±17.9C2.5±1.4C4.4±1.5C0.44±0.47C.4.0±2.5C.16.3±11.2CBGICnC187C187C187C140C28C75平均±SDC62.8±14.5C2.6±1.9C4.2±1.2C0.54±0.46C.3.4±4.0C.17.5±10.8CANOVACpC0.912C0.770C0.449C0.381C0.703C0.757MD:meanCdeviation,PGI:PaulCGlaucomaCimplant,SD:standardCdeviation,BGI:BaerveldtCGlaucomaImplant,ANOVA:analysisofvariance.位は外耳側C11眼,鼻下側C4眼,鼻上側C1眼,耳下側C1眼,毛様溝挿入C14眼,前房挿入C1眼,経扁平部硝子体腔内挿入2眼である.全例保存強膜を使用し,結膜瘢痕の強さは高度3眼,中等度C5眼,軽度C7眼,なしC2眼である.右眼C6,左眼11,屈折はC11眼が偽水晶体あるいは無水晶体眼でデータがなく,残りのC6眼はC.4.0±2.5Dの近視であった,視野はC8眼がC0.05以下の視力で測定困難であり,残りのC9眼はHumphrey視野検査のCmeandeviation(MD)がC.16.3±11.2CdBで,最終観察時における眼圧はC15.1C±9.5CmmHgであった.術前角膜内皮細胞密度はC1,870C±542/mm2である.PGIの術式:①麻酔は局所麻酔であり,2%キシロカインを結膜下とCTenon.下に注射した.筋肉を触る際には痛みが強いので直筋の周囲には念入りに麻酔を行った.②原則,耳上側(耳上側が瘢痕化して使えない場合は鼻下側を第二選択にした)100°の輪部切開を行い,2直筋を露出してC4-0絹糸による牽引糸を通糸する.③強膜を露出して十分に周囲組織を廓清し,PGIのプレート部分をここに挿入し,チューブ内にC6-0プロリン糸を挿入してからプレートを強膜に縫着固定する.筆者らはプレートの前縁が輪部からC7.8Cmm後ろに来るようにしており,固定糸としてC5-0ダクロン糸を用いているがオリジナルは8-0ナイロン糸を使用している.④チュ.ブを前房に入れる場合は輪部からC2Cmm毛様溝に入れる場合はC2.5Cmm後方でマークし,25CG針で虹彩にあたらないように針の方向に注意しながら眼内に刺入する.前房挿入の場合は粘弾性物質を使うことはないが,毛様溝挿入の場合は粘弾性物質で虹彩を前方移動させる.⑤チューブを刺入口から目的の部位に挿入する.PGIはBGIやCACPとは異なり,チューブの結紮やCSherwoodCslitの作成を必要としない.⑥つぎにチュ.ブを強膜に固定し,保存強膜でパッチする(保存強膜以外のパッチ材料で被覆したり,強膜内トンネルを使用したりする報告もあるが筆者らは経験がないので記載を割愛した).⑦その後ステントを輪部に固定し,結膜を修復して手術を終わる.ステントは術後の眼圧を見ながら抜去する.今回一例を除きすべて抜去し,その平均はC34C±25日であった.CIV手術成績2023年11月から2024年12月までの1年間に17例17表2PGIとBGI手術を受けた症例の術前術後眼圧経過術前1カ月後3カ月後6カ月後12カ月後CPGICnC17C16C14C11C3眼圧値C35.5±9.2C18.2±8.4C13.4±5.2C16.8±6.0C12.0±2.8CBGICnC187C184C176C170C152眼圧値C33.9±10.9C19.3±10.8C16.2±6.3C14.4±5.3C14.0±4.7CANOVACpC0.561C0.692C0.115C0.155C0.455図2血管新生緑内障でPGIとなった症例Optos(Nikon東京)による眼底写真.汎網膜光凝固の凝固斑と高度の血管白鞘化を認める.眼のCPGI手術を行い,類似手術であるCBGI187眼の手術成績と比較した.術後眼圧経過を表2に示す.術後C1年までの眼圧はCANOVAで有意差を認めない.経過中に緑内障再手術に至ったものはなく,点眼数は術前C4.4C±1.5剤からC1年後にはC0.67C±1.2剤に減った.術後短期合併症としては浅前房がC2/17(11.8%),脈絡膜.離がC2/17(11.8%)認められ,前房への大量出血(前房洗浄を要したもの)がC1/17(5.9%),6カ月以内にC30CmmHg以上の高眼圧を起こしたものがC3/17(17.6%),.胞状黄斑浮腫がC1/17(5.9%)認められ,後期合併症としては水疱性角膜症をC1/17(5.9%)認めた.実際の症例を供覧する(図2,3).患者はC64歳,女性.2004年より両眼の糖尿病網膜症にて某眼科病院に通院し両眼の白内障手術,汎網膜光凝固,トリアムシノロン結膜下注射による治療を受けてきた,2022年11月,左眼に網膜中心静脈閉塞(centralCretinalCveinCocclu-sion:CRVO)を発症し,5回にわたる抗血管内皮増殖因子(vascularCendothelialCgrowthfactor:VEGF)薬硝子体内注図3PGIの術中写真チューブにC6-0プロリン糸を挿入している.射で治療されていたが,2023年C11月C14日に左眼の視力低下を訴え,左眼視力(0.04),虹彩に血管新生を認め,左眼眼圧C32CmmHgとなって血管新生緑内障の診断のもとに当院を紹介された.初診時にはアセタゾラミド内服,ラタノプロスト点眼でC35CmmHg,HbA1c8.2%であり,2023年C12月にCPGIを左眼毛様溝に挿入した.第C20病日にC24CmmHgとなりステント抜去.第C80病日には無点眼下に眼圧C15mmHg,左眼視力=0.03.7カ月後に左眼アフリベルセプト硝子体腔内注射,眼圧6mmHg.11カ月後には,左眼視力=0.01(0.03),眼圧は無点眼下にC8CmmHgで,瞳孔は正円であり,インプラントに関する合併症を認めない.CV考按PGIのチューブは細い.このことが術後眼圧を高くしないかが危惧されたが,表2に示すように術後眼圧データをみる限りその心配はあたらないように思われる.角膜内皮障害についてCPaulChew教授は「チューブが細いので前房に挿入しても内皮損傷の程度は軽い」としているが,今回はほとんどの症例で毛様溝挿入を行ったので,内皮の脱落がどのようになるかは今後の課題である.チューブが細いことによって眼内に差し込む場合の操作性も気になるところであるが,PGIの場合はチューブ内にC6-0プロリン糸が入っているので剛性が上がり,操作において違和感を覚えることは少なかった.逆に,細いので周囲組織への損傷は少ない印象であり,毛様溝挿入に伴う出血の頻度はC1/17と少なかった.安全性については症例を増やさなければ断定的なことはいえないが,17例という少数の経験に関する限り大きな問題はなかった.利益相反:トーメー(株)およびCAOI(シンガポール):FII文献1)Arora,CKS,CRobinCAL,CCorcoranCKJCetal:UseCofCVariousCGlaucomaCSurgeriesCandCProceduresCinCMedicareCBene.ciariesCfromC1994CtoC2012.COphthalmologyC122,1615-1624,C20152)BolandCMV,CCorcoranCKJ,CLeeAY:ChangesCinCperfor-manceofglaucomasurgeries1994through2017basedonclaimsCandCpaymentCdataCforCUnitedCStatesCMedicareCBene.ciaries.OphthalmolGlaucomaC4,C463-471.C20213)WilliamsPJHussainZ,PaauwMetal:Glaucomasurgeryshiftsamongmedicarebene.ciariesafter2022reimburse-mentchangesintheunitedstates.JGlaucoma33:59-64,C20244)YamamotoCTCSawadaCA,CMayamaCCCetal:TheC5-yearCincidenceCofCbleb-relatedCinfectionCandCitsCriskCfactorsCafterC.lteringCsurgeriesCwithCadjunctiveCmitomycinC:CcollaborativeCbleb-relatedCinfectionCincidenceCandCtreat-mentstudy2.OphthalmologyC121:1001-1006,C20145)KashiwagiK,KogureS,MabuchiFetal:Changeinvisu-alacuityandassociatedriskfactorsaftertrabeculectomywithCadjunctiveCmitomycinCC.CActaCOphthalmolC94:Ce561-e570,C20166)BindlishCR,CCondonCGP,CSchlosserCJDCetal:E.cacyCandCsafetyCofCmitomycin-CCinprimaryCtrabeculectomy:.ve-yearfollow-up.OphthalmologyC109,C1336-1341,C20027)ChiharaCE,CChiharaT:OcularChypotensionCandCepiretinalCmembraneCasCriskCfactorsCforCvisualCdeteriorationCfollow-ingCglaucomaC.lteringCsurgery.CJCGlaucomaC30:515-525,C20218)HigashideCT,COhkuboCS,CSugimotoCYCetal:PersistentChypotonyCaftertrabeculectomy:incidenceCandCassociatedCfactorsCinCtheCCollaborativeCBleb-RelatedCInfectionCInci-denceCandCTreatmentCStudy.CJpnCJCOphthalmolC60:309-318.C20169)YamadaH,SawadaA,KuwayamaYetal:Blindnessfol-lowingbleb-relatedinfectioninopenangleglaucoma.JpnJOphthalmolC58:490-495.C201410)MatobaCR,CMorimotoCN,CKawasakiCRCetal:ACnationwideCsurveyCofCnewlyCcerti.edCvisuallyCimpairedCindividualsCinCJapanCforCtheC.scalCyearC2019:impactCofCtheCrevisionCofCcriteriaCforCvisualCimpairmentCcerti.cation.CJpnCJCOphthal-molC67:346-352,C202311)KohCV,CChewCP,CTrioloCGCetal:TreatmentCoutcomesCusingCtheCPAULCGlaucomaCImplantCtoCcontrolCintraocularCpressureCinCeyesCwithCrefractoryCglaucoma.COphthalmolCGlaucomaC3:350-359,C202012)KarapapakCM,COlgunA:E.cacyCandCsafetyCofCtheCpaulCglaucomaCimplantCinCtheCtreatmentCofCrefractoryCprimaryCcongenitalglaucoma.JpnJOphthalmolC68:571-577,C202413)ElhusseinyCAM,CKhaledCOM,CChauhanCMZCetal:initialCresultsCofCtheCPaulCAhmedComparison(PAC)StudyCinCrefractoryCchildhoodCglaucoma.CAmCJCOphthalmolC271:C71-78,C202414)ChristakisCPG,CZhangCD,CBudenzCDLCetal:Five-yearCpooleddataanalysisoftheAhmedBaerveldtComparisonStudyCandCtheCAhmedCVersusCBaerveldtCStudy.CAmCJOphthalmolC176:118-126,C2017***

輪部型春季カタルの臨床所見に関する解析

2025年9月30日 火曜日

《原著》あたらしい眼科42(9):1202.1205,2025c輪部型春季カタルの臨床所見に関する解析田野貴実子池田文原田一宏内尾英一福岡大学医学部眼科学教室CAnalysisofClinicalFindingsofLimbalVernalKeratoconjunctivitisKimikoTano,Ayaikeda,KazuhiroharadaandEiichiUchioCDepartmentofOphthalmology,FukuokaUniversitySchoolofMedicineC目的:輪部型春季カタル(VKC)の臨床所見の解析.対象および方法:2010年C6月.2023年C4月に,福岡大学病院眼科にてCVKCと診断され,角膜輪部所見を認めたC11例(男性C7例,女性C4例)21眼を対象とし,診療録をもとに解析した.臨床所見は,アレルギー性結膜疾患ガイドラインの臨床評価基準の重症度でC0-3点にスコア化した.結果:輪部型CVKCの女性患者はC36%を占めていた.21眼中C3眼は混合型であった(11例中C2例).11例中C8例は全身性アレルギー疾患を合併していた.初診時平均年齢C12.3±22.7歳.初診時視力(logMAR)は.0.08±0.27.初診時臨床所見のスコアは,輪部腫脹C2.00±0.76点,Trantas斑C0.81±0.91点,治療後は,輪部腫脹C0.21±0.41点,Trantas斑C0.05C±0.22点で改善を認めていた.初回治療はタクロリムス点眼薬単剤がC5例,タクロリムス点眼薬と抗アレルギー点眼薬の併用がC4例,シクロスポリン点眼薬と抗アレルギー点眼薬の併用がC2例であった.結論:眼瞼型に比べ女性の割合が高かった.全身性アレルギー疾患を有する割合が高かった.全例免疫抑制点眼薬の使用により改善が得られ,輪部型VKCの治療反応性は眼瞼型のCVKCと同様に良好だった.CPurpose:Toanalyzetheclinical.ndingsoflimbalvernalkeratoconjunctivitis(VKC).Patientsandmethods:CWeretrospectiveanalyzedthemedicalrecordsof21eyesof11patients(7males,4females)withVKCandcorne-allimbal.ndingsseenatFukuokaUniversityHospitalbetweenJune2010andApril2023.Clinical.ndingswerescoredfrom0to3accordingtheAllergicConjunctivalDiseaseGuidelines.Results:OfthelimbalVKCcases,36%werefemale.Ofthe21treatedeyes,3(n=2cases)wereofmixed-typeVKC.Ofthe11cases,8(82%)hadsys-temicallergicdiseases.Atbaseline,meanpatientagewas12.3±22.7yearsandmeanvisualacuity(logMAR)was.0.08±0.27.CTheCmeanCpre-andCpost-treatmentCclinicalCscoresCforClimbalCswellingCandCHorner-TrantasCdots,Crespectively,were2.00±0.76CandC0.21±0.41,CandC0.81±0.91CandC0.05±0.22.Initialtreatmentconsistedoftacrolim-useyedropsalonein5cases,acombinationoftacrolimuseyedropsandanti-allergyeyedropsin4cases,andacombinationCofCcyclosporineCeyeCdropsCandCanti-allergyCeyeCdropsCinC2Ccases.CConclusion:TheCproportionCofCfemaleswashigherinlimbal-typeVKCthanintarsal-typeVKC.Thepercentageofpatientswithsystemicallergicdiseaseswashigh.Immunosuppressanteyedropse.ectivelyalleviatedsymptomsinallcases,includingthelimbalVKCcases.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)42(9):1202.1205,C2025〕Keywords:春季カタル,輪部型春季カタル,アレルギー性結膜炎,タクロリムス点眼液.vernalCkeratoconjuncti-vitis,limbalvernalkeratoconjunctivitis,allergicconjunctivitis,tacrolimus.Cはじめに春季カタル(vernalkeratoconjunctivitis:VKC)は学童期の男児に多く発症し,しばしば寛解・増悪を繰り返す重症アレルギー性結膜疾患の一つである.病型は眼瞼の巨大乳頭増殖を特徴とする眼瞼型,角膜輪部結膜に増殖がみられる輪部型,眼瞼型と輪部型の所見の両方の所見を認める混合型に大別される.治療は抗アレルギー薬点眼が主であるが,中等症以上では免疫抑制点眼薬を,重症例に対してはステロイド点眼薬の投与や内服・瞼結膜下注射,外科的治療などが考慮される1).〔別刷請求先〕田野貴実子:〒814-0180福岡市城南区七隈C7-45-1福岡大学医学部眼科学教室Reprintrequests:KimikoTano,M.D.,DepartmentofOphthalmology,FukuokaUniversitySchoolofMedicine,7-45-1Nanakuma,jonan,Fukuoka814-0180,JAPANC1202(122)0910-1810/25/\100/頁/JCOPY(122)C12020910-1810/25/\100/頁/JCOPY輪部型CVKCは熱帯地域では多いが,わが国では少なく,輪部型CVKCに関する報告も少ない.今回,福岡大学病院眼科(以下,当院)で経験した輪部型CVKCの臨床所見,治療内容,反応性について解析したので報告する.CI対象と方法2010年C6月.2023年C4月に,当院を受診してCVKCと診断され,特徴的な角膜輪部所見を認めたC11例C21眼(男性C7例,女性C4例)を対象とし,診療録をもとに後方視的に解析した.初診時臨床所見は,アレルギー性結膜疾患ガイドライン(第3版)1)の臨床評価基準の重症度をもとに,所見なし,軽度,中等度,高度のC4段階に分類しC0.3点にスコア化した(表1).治療後臨床所見はC2023年C7月時点でもっとも直近の診療録をもとに解析した.治療前後のCTrantas斑,輪部腫脹のスコアをCWilcoxson符号順位和検定で解析した.また,VKCの治療内容についても解析を行った.眼圧の平均と臨床スコアの解析は,年少かつ診察困難で初診時眼圧と再診時臨床所見が不明な症例を除外し,10例C19眼で行った.本研究は福岡大学臨床研究審査委員会において承認されて行われた(2017M140).CII結果男女比は男性C7例(64%),女性C4例(36%)であった.病型は輪部型がC18眼(86%)で混合型がC3眼(14%)であり,輪部型単独例が大部分を占めた(図1).初診時平均年齢C12.3±22.7歳と学童期に多かったが,18歳以上の成人もC2例含まれていた.全身アレルギー疾患の合併はアトピー性皮膚炎と喘息両方の合併がC2例,アトピー性皮膚炎単独の合併例がC6例,喘息単独の合併例がC1例であり,全体のC82%が全身性アレルギー疾患を合併する結果となった(図2).初診の月は春(3.5月)がC2例,夏(6.8月)がC4例,秋(9.11月)がC0例,冬(12.2月)がC5例と,冬がもっとも多かった.観察期間はC1週間からC105カ月であり,中央値はC6カ月であった.21眼の初診時平均視力(logMAR)はC.0.08±0.27と視力良好であり,19眼の初診時平均眼圧はC13C±3CmmHgと正常範囲内であった.初診時臨床所見の平均スコアは,輪部腫脹C2.00C±0.76点,Trantas斑C0.81C±0.91点,治療後臨床所見の平均スコアは,輪部腫脹C0.21C±0.41点,Trantas斑C0.05C±0.22点と大幅な改善がみられた(図3).治療前後のCTrantas斑,輪部腫脹のスコアをCWilcoxson符号順位和検定で解析したところ,ともにp<0.05と統計学的に有意差を認めた.当院受診後の初回治療は全例で免疫抑制点眼薬を使用し,前医でステロイド点眼薬を使用していた症例は中止とした.タクロリムス点眼薬単剤での治療例がC5例(46%),タクロリムス点眼薬と抗アレルギー点眼薬の併用例がC4例(36%),シクロスポリン点眼薬と抗アレルギー点眼薬の併用例がC2例(18%)であった(図4).再発または増悪をきたした症例はC11例中C4例あり,そのうちC2例は初回治療をシクロスポリン点眼薬と抗アレルギー点眼薬を併用した症例であった.このC2例に関してはシクロスポリン点眼薬をタクロリムス点眼薬に変更し,再発症例C4例中C3例はステロイド点眼薬または軟膏を追加し軽快が得られた.CIII考按本研究の全症例は難治例として当院へ紹介されたが,免疫抑制点眼薬の使用により全例で臨床所見スコアの改善が得られ,軽快した.Stefanらの報告2)では,ルワンダにおけるVKC患者C366例中C91.5%が輪部型のCVKCであり,輪部型VKCに対する免疫抑制点眼薬はステロイド点眼による治療と比較して有意差はなく,ともに臨床所見,視力の改善を認めたと報告した.当院でも輪部型CVKCに対する免疫抑制点眼薬の効果は良好であり,輪部型CVKCの治療反応性は眼瞼型のCVKCと同様にC3.6)良好といえる.VKCの輪部型は男女同数程度であるといった報告7)もある.本報告でも男女比はC7:4であり,当院での眼瞼型CVKCクラスター解析8)の男女比C35:6に比べて女性の割合が高い結果となった.わが国では近年,地球温暖化に伴い亜熱帯化が進んできている.わが国においても今後は輪部型CVKCの症例数,女性のCVKC症例数が増加をきたす可能性が示唆される.また,輪部型病変単独の患者はC21眼中C18眼と多くを占め,混合型は少数だった.混合型も含め,全例で中.高度の角膜障害は認めなかった.患者は初診時から良好な視力を保っていたが,落屑様点状表層角膜炎やシールド潰瘍,角膜瘢痕等の角膜障害を認めなかったことによると考える9).角膜輪部は解剖学的に房水の産生や循環経路の近傍に存在するが,初診時より眼圧は全例で正常範囲内であった.本報告では全身性アレルギー疾患の合併がC82%と高い割合だった.輪部型CVKCの多い熱帯地方ではやはり全身アレルギー疾患の合併例が多数を占めるという報告もあれば,5%程度と関連性は低いといった報告も散見され7,9.11),コンセンサスは得られていない.日本と同じく温帯地方に位置するイタリアの報告では,VKCのうちC53.8%が輪部型であり,全体のC48.7%が全身アレルギー疾患を合併していた12).温帯地方では熱帯地方と異なり,同じ輪部型でも全身性アレルギー疾患とのかかわりが強い可能性があると考えられる.少なくともわが国においては,どの型のCVKCであったとしても全身性アレルギー性疾患の合併は多数であると著者らは考えている.(123)あたらしい眼科Vol.42,No.9,2025C1203表1臨床所見重症度スコア点数輪部腫脹Trantas斑C0所見なし所見なしC1範囲がC1/3周未満1.C4個C2範囲がC1/3周以上,2C/3周未満5.C8個C3範囲がC2/3周以上9個以上混合型なし18%14%アトピー性皮膚炎+喘息18%喘息9%アトピー性皮膚炎輪部型55%86%アトピー性皮膚炎+喘息アトピー性皮膚炎喘息なし輪部型混合型図1VKCの病型内訳図2輪部型VKC患者の全身アレルギー疾患内訳輪部型がC18眼(86%),混合型がC3眼(14%)であった.全身アレルギー疾患の合併はアトピー性皮膚炎と喘息両方の合併がC2例,アトピー性皮膚炎単独の合併がC6例,喘息単独の合併がC1例であった.C20181614121086420輪部腫脹治療前輪部腫脹治療後Trantas斑治療前Trantas斑治療後3点2点1点0点図3治療前後の輪部所見スコアグラフの縦軸は症例数(眼)であり,治療前後で輪部腫脹・Trantas斑ともにスコアの改善がみられた.また,ルワンダの報告13)では輪部型CVKCの全例に角膜輪示唆されている.インドの熱帯地方の報告11)では患者の発部濾胞に加えて輪部色素沈着を認めたが,当院では輪部色素生率がもっとも高かったのは乾季のC5月であった.本報告で沈着を認めた症例はなかった.人種的な背景の違いが推測さは,日本の高温多湿な時期にあたるC6.9月を雨季,それ以れる.外のC10.5月を乾季とすると,乾季での当院の初診患者はTuftらの報告7)では熱帯地方のCVKCと乾季との関連性が11人中C7人であることを考えると,わが国においても輪部(124)シクロスポリン点眼薬+抗アレルギー点眼薬18%タクロリムス点眼薬+抗アレルギー点眼薬36%タクロリムス点眼薬単剤タクロリムス点眼薬+抗アレルギー点眼薬図4初回治療内訳タクロリムス点眼薬単剤46%シクロスポリン点眼薬+抗アレルギー点眼薬当院受診後の初回治療は,タクロリムス点眼薬単剤での治療がC5例(46%),タクロリムス点眼薬と抗アレルギー点眼薬の併用がC4例(36%),シクロスポリン点眼薬と抗アレルギー点眼薬の併用がC2例(18%)であった.型のCVKCは乾季に発生しやすい可能性が示唆される.春季カタルはその名のとおり春に増悪することが多い疾患であることが知られる.春での増悪がもっとも多かったため,上記の結果になったと推論もできるが,本報告では初診がC3.5月であった患者は2人にとどまり,12.2月の冬がC5人と最多であった.クリニックでの治療が奏効せず当院へと紹介となったため,初診の時期がずれ込んだ可能性がある.以上より,輪部型CVKCの免疫抑制点眼薬の治療反応性は良好であったが,男女比率や季節性は眼瞼型と輪部型で異なる病態を示す可能性がある.また,同じ輪部型でも熱帯地方と温帯地方では臨床像が異なることが示唆された.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)宮崎大,内尾英一,海老原伸行ほか:アレルギー性結膜疾患診療ガイドライン(第C3版).日眼会誌C125:741-778,C20212)DeSmedtS,NkurikiyeJ,FonteyneYetal:Topicalciclo-sporinCinCtheCtreatmentCofCvernalCkeratoconjunctivitisCinCRwanda,CCentralAfrica:aCprospective,Crandomized,Cdou-ble-masked,controlledclinicaltrial.BrJOphthalmolC96:C323-328,C20123)三島彩加,佐伯有祐,内尾英一:春季カタルにおける長期予後の解析.あたらしい眼科36:111-114,C20194)OhashiCY,CEbiharaCN,CFujishimaCHCetal:ACrandomized,Cplacebo-controlledCclinicalCtrialCofCtacrolimusCophthalmic(125)suspension0.1%CinCsevereCallergicCconjunctivitis.CJCOculCPharmacolTherC26:165-174,C20105)鳥山浩二,原祐子,岡本茂樹ほか:春季カタルに対するC0.1%タクロリムス点眼液の使用成績.眼臨紀C6:707-711,C20136)品川真有子,南場研一,北市伸義ほか:春季カタルにおけるタクロリムス点眼薬の長期使用成績.臨眼71:343-348,C20177)TuftCSJ,CCreeCIA,CWoodsCMCetal:LimbalCvernalCkerato-conjunctivitisCinCtheCtropics.COphthalmologyC105:1489-1493,C19988)FujitaCH,CUenoCT,CUchioCECetal:Classi.cationCofCSub-typesCofCVernalCKeratoconjunctivitisCbyCClusterCAnalysisCBasedConCClinicalCFeatures.CClinCOphthalmolC17:3271-3279,C20239)ArifAS,AaqilB,SiddiquiAetal:CornealcomplicationsandCvisualCimpairmentCinCvernalCkeratoconjunctivitisCpatients.JAyubMedCollAbbottabadC29:58-60,C201710)UkponmwanCU:VernalconjunctivitisinNigerians:109consecutivecases.TropDoctC33:242-245,C200311)SabooUS,JainM,ReddyJCetal:Demographicandclini-calCpro.leCofCvernalCkeratoconjunctivitisCatCaCtertiaryCeyeCcareCcenterCinCIndia.CIndianCJCOphthalmolC61:486-489,C201312)LambiaseCA,CMinchiottiCS,CLeonardiCACetal:Prospective,CmulticenterCdemographicCandCepidemiologicalCstudyConCvernalkeratoconjunctivitis:ACglimpseCofCocularCsurfaceCinCItalianCpopulation.COphthalmicCEpidemiolC16:38-41,C200913)DeCSmedtCSK,CNkurikiyeCJ,CFonteyneCYSCetal:VernalkeratoconjunctivitisinschoolchildreninRwanda:clinicalpresentation,CimpactConCschoolCattendance,CandCaccessCtoCmedicalcare.OphthalmologyC119:1766-1772,C2012あたらしい眼科Vol.42,No.9,2025C1205

結膜アミロイドーシスの免疫組織学的分類と臨床的特徴

2025年9月30日 火曜日

《原著》あたらしい眼科42(9):1196.1201,2025c結膜アミロイドーシスの免疫組織学的分類と臨床的特徴弓削皓斗*1福岡秀記*1渡辺彰英*1長峯理子*1宮川文*1小西英一*1外園千恵*1*1京都府立医科大学眼科学教室*2京都府立医科大学病理診断科/人体病理学教室CImmunohistochemicalClassi.cationandClinicalFeaturesofConjunctivalAmyloidosisHirotoYuge1),HidekiFukuoka1)AkihideWatanabe1),MichikoNagamine2),AyaMiyagawa2),EiichiKonishi2)andCChieSotozono1)1)DepartmentofOphthalmology,KyotoPrefecturalUniversityofMedicine,2)DepartmentofSurgicalPathology,KyotoPrefecturalUniversityofMedicineC目的:結膜アミロイドーシスを免疫組織染色を用いて病型分類し,その臨床的傾向と特徴を検討する.方法:2008.2020年の京都府立医科大学での電子カルテの記載をもとに,病理生検で結膜アミロイドーシスと診断された症例C12例を対象とし,各項目についての検討と免疫染色による病型分類を行った.結果:症例は12例12眼(男5例/女7例),年齢は平均C69.1歳(中央値C66.5歳)であった.主訴は眼瞼腫脹がもっとも多く,つぎに充血であった.免疫染色による病型分類の結果は判断困難であったC1例を除いて,すべてCALアミロイドーシス(11例/12例)であり,その中で原因となる前駆体蛋白質はCm鎖が9例,l鎖がC2例であった.沈着の部位は下方結膜(67%)にもっとも多く,耳側結膜にはみられなかった.結膜上の部位別分類では眼瞼結膜C5例/眼球結膜C4例/円蓋部C3例であった.全体のC25%で眼瞼下垂を合併し,原因として上眼瞼へのアミロイドの沈着が疑われた.またC25%で切除術後に眼瞼内反症を生じ,手術後の結膜.短縮が影響していると考えられた.当科より内科に照会されたC4例はすべて限局性であり,1例は当科受診前に全身性と診断されていた.結論:結膜アミロイドーシスでは他臓器と同様にCALアミロイドーシスが多く,また結膜アミロイドーシスが眼瞼下垂や術後眼瞼内反症と関連する可能性を示す結果となった.まれな疾患であるが,臨床で遭遇する可能性があり,適切な診断と治療のためにさらなる研究が求められる.CPurpose:ToCdetermineCtheCcharacteristicsCandCclinicalCtrendsCofCcornealCconjunctivalCamyloidosisCbyCtypingCtheCdiseaseCusingCimmunohistochemistry.CMethods:InCthisCretrospectiveCstudy,CweCinvestigatedCtheCmedicalCrecordsofpatientswithconjunctivalamyloidosisdiagnosedbyapathologicalbiopsyseenatourdepartmentfrom2008to2020,andexaminedandclassi.edeachcaseintoapathologicaltypeviaimmunohistochemistry.Results:Thisstudyinvolved12eyesof12patients(5males,7females;meanage:69.1years[median:66.5years])withconjunctivalamyloidosis.Atinitialpresentation,themostcommonprimarycomplaintwaseyelidswelling,followedbyChyperemia.CImmunostainingCclassi.cationC.ndingsCrevealedamyloidClight-chain(AL)amyloidosisCinCallCcasesCexcept1thatwasdi.culttodetermine,andmchainsaccountedforapproximately80%(i.e.,9of12)ofthecases.Inallcases,thesiteofdepositionwasmostlyintheinferiorconjunctiva(67%),andnotintheauricularconjuncti-va.Conjunctivalclassi.cationwaspalpebralconjunctivain5cases,bulbarconjunctivain4cases,andfornicealcon-junctivain3cases.Ptosiswaspresentin25%ofthepatients,possiblyduetoamyloiddepositionintheuppereye-lid.CIn25%CofCtheCpatients,CpostoperativeCentropionCwasCobserved,CpossiblyCdueCtoCintraoperativeCconjunctivalCsacCshortening.AllcasesreferredtoourDepartmentofInternalMedicinewerelocalized,and1caseofsystemicamy-loidosisCwasCnoted.CConclusions:ConjunctivalCamyloidosis,CasCwellCasCamyloidosisCinCotherCorganCsystems,CisCfre-quentlyCassociatedCwithCALCamyloidosis,CandCourC.ndingsCsuggestCanCassociationCwithCptosisCandCpostoperativeCentropion.Althoughfewcasesareencounteredintheclinicalsetting,furtherstudiesareneededtobetterunder-standandmorecorrectlydiagnoseconjunctivalamyloidosis.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)42(9):1196.1201,C2025〕〔別刷請求先〕福岡秀記:〒606-8566京都市上京区広小路通上ル梶井町C465京都府立医科大学眼科学教室Reprintrequests:HidekiFukuoka,M.D.,Ph.D.,DepartmentofOphthalmology,KyotoPrefecturalUniversityofMedicine,465Kajiicho,Kawaramachi-Hirokoji,Kamigyo-ku,Kyoto-shi,Kyoto602-8566,JAPANC1196(116)Keywords:結膜アミロイドーシス,免疫染色,m鎖,コンゴレッド染色.conjunctivalamyloidosis,Immunohisto-chemistry,mchain,Congoredstaining.CI緒言アミロイドーシスは,折りたたみ異常を起こした不溶性の線維性蛋白質が細胞外に蓄積し,アミロイドとしてさまざまな臓器や組織に異常蓄積する疾患である.進行すると臓器や組織の機能不全をきたす進行性の疾患であり,アミロイドが複数の臓器に沈着する全身性アミロイドーシスと特定の臓器に限局して沈着する限局性アミロイドーシスのC2種類に大別される.アミロイドの証明は,コンゴレッド染色,チオフラビン染色,偏光顕微鏡によるアップルグリーン色の複屈折や電子顕微鏡による線維の確認などで可能である.コンゴレッド染色で判断がむずかしい症例ではCDFS染色も有用である.アミロイド線維形成の原因となる蛋白質はアミロイド前駆体蛋白質とよばれており,アミロイドーシスはアミロイド前駆体蛋白質による病型分類を行うことが一般的である.現時点でC30種類以上の病型が同定されている1)が,実臨床では頻度の高い前駆体蛋白質に対する免疫染色を行って病型分類を行うことが一般的である.眼科領域におけるアミロイドについては,家族性アミロイドニューロパチーの症例における網膜血管へのアミロイド沈着や膠様滴状角膜ジストロフィの症例や眼瞼睫毛乱生における角膜へのアミロイド沈着などが報告されているが,結膜のアミロイドーシス(図1)はまれであり,わが国においては症例報告のみ1,2)で詳細な研究はされていない.また,筆者らが調べる限り,結膜アミロイドーシスについて前駆体蛋白質による病型分類を複数の症例で行った報告を認めなかった.今回,結膜アミロイドーシスと診断された症例に対して,病理学的に前駆体蛋白質による病型分類を行い,臨床的特徴を検討したので報告する.CII対象と方法京都府立医科大学眼科での電子カルテの記載をもとに2008.2020年のC12年間に病理生検でコンゴレッド染色(図2a)もしくは偏光顕微鏡によるアップルグリーン色の複屈折(図2b)により結膜アミロイドーシスと確定診断された症例12例をレトロスペクティブに検討を行った.対象症例について性別,発症時・診断時年齢,初診時の主訴,病型分類,沈着部位,眼瞼下垂の合併の有無,全身性アミロイドーシスや透析の有無について検討した.沈着部位については,左眼,右眼,両眼に加え,結膜における部位を上方,下方,鼻側,耳側のC4方向に分類した(重複する病変の際は主となる部位とした).病型分類については前駆体蛋白質となるトランスサイレチン(transthyretin:TTR),免疫グロブリン軽鎖(Cl,m),血清アミロイドCA(amyloidA:Amy-A),b2ミクログロブリン(Cb2Cmicro-globulin:Cb2MG)を免疫染色で特定し,各前駆体蛋白質に基づいた病型分類を行った.免疫グロブリン軽鎖についてはCl鎖とCm鎖に分けて染色を行っている(図3).免疫染色の陽性結果に応じてCTTR陽性例はCamyloidTTR(ATTR)アミロイドーシス,免疫グロブリン軽鎖(Cl鎖,m鎖)陽性例はAL(原発性)アミロイドーシス,Amy-A陽性例はCAA(続発性)アミロイドーシス,Cb2MG陽性例はCACb2M(透析性)アミロイドーシスと病型分類を行った(表1).なお,当院病理科は厚生労働省アミロイドーシスに関する調査研究班に属しており,TTR,Cm,l抗体は調査研究班より供与頂いたものを使用した.本研究はヘルシンキ宣言に基づき,本学の倫理委員会の承認を得てレトロスペクティブに行った.CIII結果結膜アミロイドーシスC12例の臨床的特徴を表2に示す.性別は,男C5例/女C7例(全C12例C12眼)であり,指摘時の年齢は平均C67.6歳(中央値C66.0歳),診断時年齢は平均C69.1歳(中央値C66.5歳)であった.主訴は眼瞼腫脹がもっとも多く(12眼中C5眼C42%),つぎに充血(12眼中C3眼C25%)であった.眼瞼下垂症状はC1例のみであり(12眼中C1眼C8%),無症状はC2例であった(12例C12眼中C2眼C17%).免疫染色による病型分類では,評価可能であったC11例はすべてCALアミロイドーシス(Cm鎖がC9例,l鎖がC2例)であり,ALアミロイドーシス以外の陽性例はみられなかった.1例は染色結果から評価困難であった.沈着部位は右眼がC3例(25%),左眼がC6例(50%),両眼がC3例(25%)であった.結膜における沈着部位は下方がC8例と多く(12例C12眼中C8眼C67%),上方と鼻側は各C2例で(12例C12眼中各C2眼C17%),耳側にはみられなかった.結膜上の部位別分類では眼瞼結膜C5例/眼球結膜C4例/円蓋部C3例であった.12例中C3例で眼瞼下垂の合併を認め,そのうちC1例で眼瞼にアミロイドの沈着を認めた.12例中C3例(25%)で切除術後に眼瞼内反症を認め,他の合併症は認められなかった.全身性アミロイドーシスの除外については,当科より内科紹介された症例はすべて限局性であったが,すでに全身性ALアミロイドーシスと診断されている症例をC1例認めた(多発性骨髄腫合併CALアミロイドーシス).透析の既往のあ図1結膜アミロイドーシスの前眼部画像a:下方眼球結膜に表面平滑な広範な黄橙色の隆起性病変を認める.Cb:鼻側球結膜優位に黄橙色の隆起性隆起性病変を認める.Cc:下方結膜.に表面が粗雑な黄橙色の隆起性病変を認める.Cd:鼻側球結膜に表面が平滑な黄橙色の病変を認める.図2結膜アミロイド組織を用いた染色a:コンゴレッド染色で結膜上皮下の赤橙色のアミロイド染色を認める.Cb:偏光顕微鏡により,アミロイドはアップルグリーン(緑色)の複屈折を認める.る症例は認められなかった.れる疾患との関連性も指摘されている.CIV考按アミロイドーシスの治療について,全身性アミロイドーシスの場合は病型に応じて多様な治療法が選択される7)が,限アミロイドは全身の臓器に沈着して機能不全を引き起こす局性アミロイドーシスの場合は外科的切除および減量が基本ことから,他分野においてその重要性が指摘されており,的な治療方針となっている8).一方で,同様にアミロイドのCAlzheimer病4)や脳アミロイドアンギオパチー5),プリオン沈着が原因とされるCAlzheimer病に対して近年レカネマブ病6)など,同様に蛋白質のミスフォールディングが原因とさによるアミロイドCb除去など新たな治療法9)が認可されたこ図3前駆物質による代表的な免疫染色写真a:m陽性.b:m陰性.c:l陽性.d:l陰性.アミロイドに一致してCmもしくはCl陽性の所見が得られた.表1前駆体蛋白に対応する病型前駆体蛋白病型トランスサイレチン(TTR)ATTRアミロイドーシス免疫グロブリン軽鎖(Cl,m)AL(原発性)アミロイドーシス血性アミロイドCA(Amy-A)AA(続発性)アミロイドーシスCb2ミクログロブリン(B-MG)CAb2M(透析性)アミロイドーシス表2結膜アミロイドーシス12例の臨床的特徴症例指摘年齢(歳)生検時年齢(歳)性別主訴患眼部位免疫染色沈着様式眼瞼下垂の合併術後内反症の有無C1C52C67女眼瞼腫脹左下方眼瞼結膜Cm不明C2C53C59女眼瞼腫脹両下方結膜.Cl不明+3C58C58男眼瞼下垂左上方眼瞼結膜Cm限局性+4C61C61男眼瞼腫脹右下方眼瞼結膜判別困難限局性C5C65C65女なし右鼻側眼球結膜Cm不明C6C66C66男眼瞼腫脹左下方眼瞼結膜Cm全身性C7C73C76女充血両下方眼球結膜Cm不明+8C76C76女充血右鼻側眼球結膜Cm不明+9C76C76女流涙左下方結膜.Cl限局性+10C81C81男充血左下方眼球結膜Cm不明C11C82C83男なし左下方結膜.Cm限局性C12不明C61女眼瞼腫脹両上方眼瞼結膜Cm不明+とから,今後アミロイドーシスについても新たな治療が出現する可能性がある.結膜アミロイドーシスは黄橙色の隆起性病変を示すことが多いが,検眼鏡的に鑑別は困難で,また,実臨床における頻度もまれであることから,多数の症例を検討した報告は少ない.Leibovitchらによる結膜アミロイドーシスC13例の特徴についての検討で,前駆体蛋白による病型分類は行われていないが,男性C5例/女性C8例で平均年齢はC60歳であった8).今回の研究の男女比は既報と同様であったが,診断時年齢は既報と比較して高齢であった.主訴について,Leibovitchらは腫瘍の増大と眼瞼下垂が多いことを指摘しているが,今回の研究では眼瞼腫脹と充血が最多であった.病型分類については,Biewandらによる全身臓器の限局性アミロイドーシスについての報告において,9例すべてがCALアミロイドーシスであり,内訳はCm鎖が6例,Cl鎖がC3例であった10).また,別の既報における限局性アミロイドーシス(結膜アミロイドーシス以外を含む)132例の検討でもC91%がCALアミロイドーシスであった11).結膜アミロイドーシスについては,6例で免疫染色を行ったところ,染色可能で病型分類を行うことができたのはC1例のみで,軽鎖陽性を認める結果であったとの報告がある12).今回,結膜アミロイドーシスC11例の病型はすべてCALアミロイドーシスであり,限局性アミロイドーシスの既報と一致した.Cm鎖,l鎖の割合についてもCm鎖が約C8割であり,既報と同様の傾向であった.沈着部位については,3例で両眼に結膜アミロイドーシスを認めたが,全身性アミロイドーシスを指摘された症例は左眼に認めたC1例のみであり,両眼性であることから,必ず全身性アミロイドーシスであるとはいえないものと考えられる.結膜における沈着部位は下方に多く,耳側には認められなかった.今回,3例(25%)で眼瞼下垂を合併しており,アミロイドが上方結膜から眼瞼挙筋まで沈着している症例は過去の報告13,14)にあるように,眼瞼挙筋周囲にもアミロイドが沈着することで眼瞼下垂を生じていると考えられた.アミロイドが眼瞼挙筋自体の機能低下を起こすのではなく,眼瞼挙筋周囲に沈着することで二次障害として眼瞼挙筋機能が制限されることが眼瞼下垂の主因ではないかと推察される.病変は完全切除がむずかしく,可能な範囲で部分切除ないし上皮を温存してアミロイド減量を行っているが,切除術後の眼瞼内反症が全体のC25%で認められた.病理学的には,結膜上皮直下までアミロイド沈着が認められ,アミロイド除去の際の広範な結膜切除や炎症などに伴う結膜.短縮が原因で内反症を生じた可能性が考えられた.既報での傾向と同様に,限局性アミロイドーシスがほとんどであったが,片眼例において全身性アミロイドーシスをC1例認めたことにより,診断後は全身疾患の検索の必要性を示す結果となった.まとめると,結膜アミロイドーシスC12例は他臓器と同様にCALアミロイドーシスが多く,また,結膜アミロイドーシスが眼瞼下垂や術後眼瞼内反症と関連する可能性が示された.結膜アミロイドーシスの鑑別疾患としては結膜浮腫,結膜粘膜関連リンパ組織(mucosa-associatedClymphoidCtis-sue:MALT)リンパ腫,結膜反応性リンパ過形成などがあげられるが,検眼鏡的な鑑別は困難であることが多く,また,限局性に関しては原因も不明である.腫瘍性病変を疑い切除を行う際は,病理生検を必ず行うことが全身性アミロイドーシスの発見につながり,とくに重要である.まれな疾患であるが,臨床で遭遇する可能性があり,適切な診断と治療のためにさらなる研究が求められる.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)新井玲,海老原伸行,冨田茂樹:眼瞼下垂により発見された結膜アミロイドーシスのC2症例.日眼会誌C120:797-801,C20162)KonoCS,CLeeCPAL,CKakizakiCHCetal:AmyloidosisCinCtheCpalpebralCconjunctivaCmimickingClymphoproliferativeClesion.CaseRepOphthalmolC12:73-76,C20213)BensonCMD,CBuxbaumCJN,CEisenbergCDSCetal:AmyloidCnomenclature2018:recommendationsbytheInternation-alCSocietyCofAmyloidosis(ISA)nomenclatureCcommittee.CAmyloidC25:215-219,C20184)HaassCC,CSchlossmacherCMG,CHungCAYCetal:AmyloidCbeta-peptideisproducedbyculturedcellsduringnormalmetabolism.NatureC1359:322-325,C19925)VonsattelCJP,CMyersCRH,CHedley-WhyteCETCetal:Cere-bralCamyloidCangiopathyCwithoutCandCwithCcerebralChem-orrhages:aCcomparativeChistologicalCstudy.CAnnCNeurolC30:637-649,C19916)PrusinerSB:NovelCproteinaceousCinfectiousCparticlesCcausescrapie.ScienceC216:136-44,C19827)IhneCS,CMorbachCC,CSommerCCCetal:Amyloidosis-theCdiagnosisCandCtreatmentCofCanCunderdiagnosedCdisease.CDtschArzteblIntC117:159-166,C20208)LeibovitchI,SelvaD,GoldbergRAetal:PeriocularandorbitalCamyloidosisCclinicalCcharacteristics,Cmanagement,Candoutcome.OphthalmologyC13:1657-1664,C20069)SwansonCCJ,CZhangCY,CDhaddaCSCetal:ACrandomized,Cdouble-blind,CphaseC2bCproof-of-conceptCclinicalCtrialCinCearlyCAlzheimer’sCdiseaseCwithClecanemab,CanCanti-Abproto.brilantibody.AlzheimersResTherC13:80,C202110)BiewendML,MenkeDM,CalamiaKT:Thespectrumoflocalizedamyloidosis:aCcaseCseriesCofC20CpatientsCandCreviewoftheliterature.AmyloidC13:135-142,C200611)AryasitCO,CPreechawaiCP,CKayasutK:ClinicalCpresenta-tion,Ctreatment,CandCprognosisCofCperiocularCandCorbitalCamyloidosisCinCaCuniversity-basedCreferralCcenter.CClinCOphthalmolC7:801-805,C201312)SuesskindCD,CZiemussenCF,CRohrbachJM:ConjunctivalamyloidosisC─CclinicalCandChistopathologicCfeatures.CGrae-14)ScuderiG,AbdolrahimzadehS,TroccolaAetal:SurgicalfesArchClinExpOphthalmolC253:1377-1383,C2015Ctreatmentofararecaseofbilateralptosisduetolocalized13)HillCVE,CBrownsteinCS,CJordanDR:PtosisCsecondaryCtoCocularamyloidosis.:SaudiCJCOphthalmolC30:201-203,CamyloidosisCofCtheCtarsalCconjunctivaCandCtarsus.CAmJ2016COphthalmolC123:852-854,C1997***

携帯形微生物観察器を用いて迅速検査を行った アカントアメーバ角膜炎の2 例

2025年9月30日 火曜日

《原著》あたらしい眼科42(9):1191.1195,2025c携帯形微生物観察器を用いて迅速検査を行ったアカントアメーバ角膜炎の2例坂田理恵*1,2外間梨沙*1加藤直子*1,3平山オサマ*1,4平山雅敏*5根岸一乃*1*1慶應義塾大学医学部眼科学教室*2永寿総合病院眼科*3南青山アイクリニック*4東京歯科大学市川総合病院眼科*5福岡大学医学部眼科学教室CTwoCasesofRapidDetectionofAcanthamoebaKeratitisUsingaMobileLaboratoryMicroscopeRieSakata1,2)C,RisaHokama1),CNaokoKato1,3)C,OsamaIbrahimHirayama1,4)C,MasatoshiHirayama5)andKazunoNegishi1)1)DepartmentofOphthalmology,KeioUniversityschoolofMedicine,2)DepartmentofOphthalmology,EijuGeneralHospital,3)MinamiaoyamaEyeClinic,4)DepartmentofOphthalmology,TokyoDentalCollege,IchikawaGeneralHospital,5)DepartmentofOphthalmology,FukuokaUniversityschoolofMedicineC携帯形微生物観察器を使用し,感染性角膜炎の起因微生物の同定を試みたC2例を報告する.症例C1はC66歳,男性.コンタクトレンズ(CL)使用中の眼痛と視力低下で近医を受診し,ヘルペス性角膜炎の診断で加療された.改善がないため慶應義塾大学病院眼科紹介となり,角膜擦過検体のCGram染色検鏡と分離培養検査に加えて,携帯形微生物観察器による観察を行った.携帯形微生物観察器でアメーバシストが観察され,アカントアメーバ角膜炎(AK)治療へ切り替えた.症例C2はC49歳,男性.CL使用中の角膜潰瘍に対して,同様に携帯形微生物観察器でアメーバシストが観察された.携帯形微生物観察器Cmil-kinはスマートフォンのカメラを利用したもち運び可能な簡易顕微鏡で,染色や固定をせずに微生物をC1,000倍の倍率で観察する.しばしば鑑別困難であるCAKにおいてアメーバシストが観察された症例を経験し,感染性角膜炎の診断補助として携帯形微生物観察器が有用であることが示唆された.CPurpose:ToCreportCtwoCcasesCinCwhichCidenti.cationCofCtheCcausativeCmicroorganismsCofCinfectiousCkeratitisCwasobservedusingaportablemicrobialobservationdevice.Cases:Case1involveda66-year-oldmalewhovisit-edanoutsideclinicwithcomplaintsofeyepainwhilewearingcontactlenses.Hewasdiagnosedasherpetickerati-tis,andtreated.However,hisconditiondidnotimprove,sohewasreferredtoourhospital.Atpresentation,asam-plewascollectedviascrapingthecornealulcer.Inadditiontogram-stainingsmearmicroscopyandculturetestinginthehospitallaboratory,wealsousedaPortableMicrobialObservationDevice(mil-ken)thatrevealedAmoebiccysts,CsoCtreatmentCforCAcanthamoebakeratitis(AK)wasCstartedCthatCsameCday.CCaseC2CinvolvedCaC49-year-oldCmalewhowasreferredtoourhospitalforacornealulcerthatdevelopedwhileusingcontactlenses.AsinCase1,thePortableMicrobialObservationDevicerevealedAcanthamoebaCcysts.Conclusion:Themil-kindeviceisapor-tableCsimpleCmicroscopeCthatCusesCaCsmartphoneCcameraCwhichCallowsCmicroorganismsCtoCbeCobservedCwithoutCstainingor.xingsamplesatamagni.cationof1,000times,thusmakingitusefulforassistinginthediagnosisofinfectiouskeratitis.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C42(9):1191.1195,C2025〕Keywords:アカントアメーバ角膜炎,コンタクトレンズ,塗抹鏡検.AcanthamoebaCkeratitis,contactlens,smearexamination.Cはじめには難治性の角膜疾患であり,早期の診断と治療介入が重要でアカントアメーバ角膜炎(Acanthamoebakeratitis:AK)ある.AK患者のうちC85.90%がコンタクトレンズ(contact〔別刷請求先〕外間梨沙:〒160-8582東京都新宿区信濃町C35慶應義塾大学医学部眼科学教室Reprintrequests:RisaHokama,M.D.,Ph.D.,DepartmentofOphthalmology,KeioUniversitySchoolofMedicine,35Shinanomachi,Shinjuku-ku,Tokyo160-8582,JAPANC検体ステージ図1携帯形微生物観察器mil-kinlens:CL)装用者であり,近年ではCCL使用者の拡大に伴い,増加傾向にある1,2).健康な若年者にも発症し,片眼性であることが多い3,4).アカントアメーバは土壌や淡水に生息する単細胞の微生物であり,アカントアメーバが角膜に感染するとCAKを引き起こす5).AKが重症化しやすい理由として,特徴的臨床的所見に乏しいことが多く,他疾患に類似の所見を呈することから,鑑別診断が困難である点があげられる.初期のCAKはヘルペス性角膜炎に類似した偽樹枝状病変を呈し,上皮型ヘルペス角膜炎として治療されることがある.また,完成期の円板状角膜混濁は,角膜真菌症や実質型ヘルペス性角膜炎と鑑別が容易でない場合がある.確定診断前の安易な副腎皮質ステロイド点眼の使用はCAKの治療予後の増悪と関連するほか6),AKの発症C1カ月以内の診断と治療開始が重要なことから,早期診断が課題である7,8).現在CAKの検査として,分離培養,ポリメラーゼ連鎖反応(polymeraseCchainreaction:PCR)検査,レーザー生体共焦点顕微鏡観察,塗抹鏡検(ディフクイック染色,ファンギフローラCY染色)などが行われる7).これらの検査は結果が出るまで時間を要するうえ,検査用設備や機器をもたないクリニックではCAKの早期診断が困難であることが多い.今回,AKの検体観察のために使用した携帯形微生物観察器Cmil-kin(図1)はC1,000倍の光学倍率をもち,観察と撮影にはスマートフォンのカメラを使用する微生物の簡便な観察器械で,染色や固定といった前処理を必要とせずに検体を直接観察することが可能である.検査方法としては,カバーガラスの上に病巣擦過で得た角膜検体を載せてCmil-kinの試料ステージに置き,拡大された像をスマートフォンのカメラ機能を利用して観察する.今回,筆者らは携帯形微生物観察器Cmil-kinを用いて原因微生物の同定を試みたC2症例を報告する.本研究は慶應義塾大学医学部倫理委員会に承認された(慶應義塾大学医学部倫理委員会承認番号C20221067).CI症例[症例1]患者:66歳,男性.主訴:左眼視力低下.現病歴:近視に対してハードCCL(hardCL:HCL)を使用していた.2022年C5月CX日,左眼充血を自覚し,かかりつけ眼科を受診.円板状の角膜実質混濁を認めヘルペス性角膜炎を疑われ,バラシクロビル内服とフルオロメトロンC0.1%点眼液を処方された.症状の改善なく,2024年C5月CX+5日当院を紹介され受診した.CAxC1.50.cyl(5DC.3×.初診時所見:右眼視力0.3(1.2150°),左眼視力=0.01(n.c).眼圧は右眼C14.0CmmHg,左眼C14.0CmmHg(NCT)であった.細隙灯顕微鏡検査では左眼の円板状角膜実質浸潤と一致した部位の角膜上皮浮腫を認めた(図2).mil-kinによる観察と,ディフクイック染色を行った双眼顕微鏡の観察では,ともに二重壁構造を伴うアメーバシストを認め(図3),AKと診断した.経過:初診日より角膜病巣掻把を週C2回行い,クロルヘキシジングルコン酸塩液C0.05%点眼をC1時間ごと,ボリコナゾールC1日C6回,ガチフロキサシン水和物C1日C6回,オフロキサシン眼軟膏C1日C2回の点眼,眼軟膏治療を開始した.前医処方のバラシクロビル内服とフルオロメトロンC0.1%点眼液は中止した.2024年C5月CX+10日の再診時には,前房蓄膿と角膜上皮欠損が新たに出現した.1カ月ほど加療を行い,実質浸潤は瘢痕化し前房炎症は消失したが視力改善は見込まれず,角膜移植手術を行う方針としてドナー待機患者登録を行った.[症例2]患者:49歳,男性.主訴:左眼痛.現病歴:円錐角膜に対してCHCLを使用していた.2022年9月CX日左眼充血を自覚し,かかりつけ眼科を受診.レボフロキサシン水和物点眼を処方され,HCL装用を継続していた.2022年9月X+19日再診時に左眼角膜混濁を指摘され,レボフロキサシン水和物,オフロキサシン,タクロリムス水和物,イブジラスト点眼液を処方され,当院当科を紹介され受診した.初診時所見:右眼視力C1.2CpC×HCL(1.2C×HCL×sph+1.5D(cyl.0.50Ax90°),左眼視力は指数弁10cm/n.d(n.c),眼圧は右眼C5.3mmHg左眼C18.0CmmHg(NCT).細隙灯顕微鏡検査では左眼の著明な毛様充血と,瞳孔領に図2症例1の当院受診時左眼前眼部写真a,b:2022年5月X+10日.Cc:加療後1カ月(2022年6月X+13日).円板状角膜実質浸潤は,加療後に瘢痕化した.図3症例1の観察画像a:mil-kin無染色C1,000倍観察.Cb:ディフクイック染色双眼顕微鏡C400倍観察..はアメーバシスト.図4症例2の当院初診時の左眼前眼部写真当院初診時(2022年C9月CX+19日).毛様充血と辺縁不整の円板状角膜浸潤がみられる.辺縁不整の円板状角膜浸潤を認めた(図4).Cmil-kin無染色日C2回の点眼,眼軟膏治療を開始した.C1週間後に左瞳孔領1,000倍観察とディフクイック染色による双眼顕微鏡C400倍の角膜浸潤は改善し,C1カ月後(図6)に右眼視力=1.2Cp×観察とで二重壁構造を伴うアメーバシストを認め(図5),HCL,左眼視力=(C0.5CpC×sph..C50D(cyl.3.00Ax90°)AKと診断した.へ改善した.経過:角膜病巣掻把を週C2回行い,クロルヘキシジングル今回筆者らが臨床所見からCAKを疑い,検査を行った症コン酸塩液C0.05%をC1時間おき,ボリコナゾールC1日C6回,例を表1に示す.ガチフロキサシン水和物C1日C6回,オフロキサシン眼軟膏C1図5症例2の観察画像a:mil-kin無染色C1,000倍観察.Cb:ディフクイック染色双眼顕微鏡C400倍観察..はアメーバシスト図6症例2の加療後1カ月の左眼前眼部写真加療後1カ月(2022年10月X+19日).瞳孔領の角膜浸潤が改善した.表1患者背景と検査結果年齢性別使用レンズコンタクト保存液アカントアメーバ培養検査病巣擦過検体アカントアメーバ分離培養検査ディフクイック観察mil-kin染色症例C1C66男性CHCL陽性陰性陽性陽性症例C2C49男性CHCL陰性陰性陽性陽性II考察今回筆者らは,携帯形微生物観察器を用いてCAKの病巣擦過物よりアカントアメーバのシストを検出し,診断,治療開始につながったC2症例を報告した.AKは,クロルヘキシジングルコン酸塩液C0.05%やボリコナゾール点眼などの適応外使用の製剤を自家調剤して治療に使用する必要がある.一般の診療所などでは治療がむずかしく,倫理委員会をもつ基幹病院以上の医療施設に紹介する必要がある.初期にステロイドの局所投与が行われると,病態に悪影響を及ぼすこともあり,できるだけ早い確定診断が望ましい.CL装用とCAKの関連C10.13)に関しては周知が進んだものの,その診断に関しては,より簡便で汎用性のあるものが求められる.携帯形微生物観察器は眼科以外では歯科の分野で,口腔細菌を患者とともにリアルタイムに供覧することで歯周病予防に活用されている.携帯形微生物観察器を用いることにより,検体採取から観察まで短時間で簡便な検査が可能となり,スマートフォンカメラで写真や動画を記録することが可能となる.また検査室をもたない医療施設や一般外来診療などで診断補助として使用できる点も利点と考えられる.過去にも加藤らが携帯形微生物観察器を使用し,AKや真菌性角膜炎からの原因微生物の同定を行った報告があり14),診断補助用具としての有用性が示唆される.一方で,表1に示したように今回の携帯形微生物観察器による観察結果は,必ずしも病院検査室の分離培養結果と一致するものではなかった.携帯形微生物観察器の感度や特異度は症例数が増えたところで検討する必要がある.また,携帯形微生物観察器の観察像は基本的に無染色であるため,得られる情報は形態評価のみになることが限界点である.ディフクイック染色など組織染色を行ってから携帯形微生物観察器で観察することも可能であるが,アカントアメーバのシストのサイズはC10.25Cμmと幅があり,観察像からの形態評価はさまざまな検査結果と総合的に判断する必要があると考えられる.本報告では,AKが疑われる症例において携帯形微生物観察器を使用し,無染色でアカントアメーバのシストを確認することにより,早期の診断補助における有用性が示唆された.今後は経験症例を増やし,有用性に関するエビデンスを蓄積していくことが望まれる.文献1)重安千花,山田昌和:コンタクトレンズによる重篤な眼障害の全国調査より得たこと.臨床眼科C76:1193-1199,C20222)感染性角膜炎全国サーベイランス・スタディグループ:感染性角膜炎全国サーベイランス.日眼会誌C110:961-972,C2006C3)島崎潤:角結膜疾患の治療戦略,吉村長久,後藤浩,谷原秀信(編),p220-241,医学書院,20164)井上幸次(編):専門医のための眼科診療クオリファイ角膜混濁のすべて,中山書店,p170-183,20145)小林顕,石橋康久:アカントアメーバ角膜炎.あたらしい眼科19:1005.1010,C20026)平野耕治:急性期アカントアメーバ角膜炎の重症化に関する自験例の検討.日眼会誌115:899-904,C20117)塩田恒三,稲富勉,外園千恵ほか:アカントアメーバ角膜炎C43例の発症後検査までの日数と認めたアカントアメーバの発育ステージとの関係.ClinicalCParasitologyC19:C26-29,C20088)BaconAS,DartJK,FickerLAetal:Acanthamoebakera-titis.CTheCvalueCofCearlyCdiagnosis.COphthalmologyC100:C1238-1243,C19939)薄井紀夫,後藤浩(編):眼感染症診療マニュアル,p220-236,医学書院,201410)YoderJS,VeraniJ,HeidmanNetal:Acanthamoebaker-atitis:thepersistenceofcasesfollowingamultistateout-break.OphthalmicEpidemiolC19:221-225,C201211)CarntN,SamarawickramaC,WhiteAetal:Thediagno-sisandmanagementofcontactlens-relatedmicrobialker-atitis.ClinExpOptomC100:482-493,C201712)RandagCAC,CvanCRooijCJ,CvanCGoorCATCetal:TheCrisingCincidenceCofCAcanthamoebakeratitis:AC7-yearCnation-wideCsurveyCandCclinicalCassessmentCofCriskCfactorsCandCfunctionaloutcomes.PLoSOneC14:e0222092,C201913)HollhumerCR,CKeayCL,CWatsonSL:AcanthamoebaCkerati-tisinAustralia:demographics,associatedfactors,presen-tationCandoutcomes:aC15-yearCcaseCreview.Eye(Lond)C34:725-732,C202014)KatoCN,CShimizuCT,CShimizuCECetal:RapidCdetectionCofCfungiCandCAcanthamoebaCfromCcornealCulcersCusingCaCnovelCmobileClaboratoryCmicroscopeCandCaCsmartphone.Eye(Lond)C37:785-786,C2023***

処方施設より提示されたCL 取り扱い法を遵守している 健常な若年CL 装用者に生じた真菌性角膜炎の2 例

2025年9月30日 火曜日

《原著》あたらしい眼科42(9):1185.1190,2025c処方施設より提示されたCL取り扱い法を遵守している健常な若年CL装用者に生じた真菌性角膜炎の2例吉田真由佐々木香る石本敦子髙橋寛二今井尚徳関西医科大学附属病院眼科CTwoCasesofFungalKeratitisinYoungHealthyContactLensWearersMayuYoshida,KaoruAraki-Sasaki,AtsukoIshimoto,KanjiTakahashiandHisanoriImaiCDepartmentofOphthalmology,KansaiMedicalUniversityC.C目的:装用時間厳守の若年ソフトコンタクトレンズ(SCL)装用者による真菌性角膜炎を報告する.症例:症例C1はC36歳,女性,1日ディスポーザブルCSCL(DSCL)装用者.症例C2はC51歳,女性,頻回交換型CSCL(FRSCL)装用者.CL処方施設提示の装用時間とマルチパーパスソリューション(MPS)洗浄を遵守していた.初診時,充血と表層性の角膜潰瘍を呈したが,前房蓄膿や後面プラークは認めなかった.角膜擦過物の塗抹検鏡から糸状菌が検出され,それぞれCFusariumCsp,Purpureocilliumlilacinumが同定された.考案:装用時間と洗浄方法を厳守していても,若年者のCSCL装用者に真菌性角膜炎は生じる.手指衛生やケースの管理含め,さらに詳細な指導が必要と思われた.また,真菌でも表層性の病巣を呈する場合があり,抗菌薬に無効の場合は積極的な塗抹検鏡が必要と考えられた.CPurpose:Toreporttwocasesoffungalkeratitisinyoungandhealthysoft-contact-lens(SCL)wearerswhostrictlyfollowedtheinstructionsofuse.Cases:Case1involveda36-year-oldfemalewhowore1-daydisposableSCLs.CCaseC2CinvolvedCaC51-year-oldCfemaleCwhoCworeCfrequent-replacementCSCLs.CAtCpresentation,Cslit-lampCexaminationrevealedsuper.cialcornealabscesswithnohypopyonorretrocornealplaqueinbothcases.AlthoughbothCcasesCadheredCtoCtheCmanufacturer’sCwearingCtimeCandCmultipurposesolution(MPS)cleaningCrecommenda-tions,CsmearCexaminationsCofCcornealCspecimensCrevealedC.lamentousfungi(i.e.,CFusariumCsp.CandCPurpureocilliumClilacinum,respectively)C.CConclusions:FungalCkeratitisCcanCoccurCinCyoungCandChealthyCSCLCwearersCevenCwhenCwearingtimeandcleaningmethodsarestrictlyfollowed,thusillustratingthatdetailedinstructiononhandhygieneandcasemanagementisnecessary.Moreover,fungalkeratitiscansometimesappearwithnon-speci.csuper.cial.ndings,soasmearofcornealspecimensisrecommendedwhenantimicrobialagentsareine.ective.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C42(9):1185.1190,C2025〕Keywords:真菌性角膜炎,ソフトコンタクトレンズ,レンズケア,マルチパーパスソリューション,糸状真菌.Cfungalkeratitis,softcontactlens,lenscare,multipurposesolution(MPS)C,.lamentousfungi.CI緒言コンタクトレンズ(contactlens:CL)による感染性角膜炎の代表的な原因微生物は,緑膿菌とアカントアメーバであるとされ,真菌によるものはまれとされる1).これらの微生物がCCLを介して角膜炎を生じる原因には,CLの装用方法や取り扱い方法が適切でないことが報告されている2).たとえば,ディスポーザブルソフトCCL(disposableCsoftCL:DSCL)はC1日で破棄すること,装用前には手指洗浄を行うこと,頻回交換型CSCL(frequentCreplacementSCL:FRSCL)においては,洗浄保存液で洗浄保管すること,こすり洗いを行うことなどが大切といわれている.さらに,レンズケースそのものの汚れにも注意し,ケース保存液を破棄すること,乾燥させること,定期的に交換することなどが肝要とされている1).多くのCCL装用による角膜感染症では,明らかにこれらの事項を守らず,連続装用や期限を超えての使用など3),ずさんな取り扱いをしている若者が多く,しっかり取り扱っている健常者では,まず真菌性角膜炎は考えにく〔別刷請求先〕吉田真由:〒573-1191大阪府枚方市新町C2丁目C3-1関西医科大学附属病院眼科Reprintrequests:MayuYoshida,M.D.,DepartmentofOpthalmology,KansaiMedicalUniversity,2-3-1Shimmachi,Hirakatacity,Osaka573-1191,JAPANCいとされる.しかし,角膜はCCL装用により低酸素環境におかれる4)ことになり,CL装用そのものが一種の免疫抑制状態とも考えられる.そのため,健常若年者であっても,そして装用時間や洗浄方法を守っていても,まれにCDSCL装用者に真菌性角膜炎が生じることが報告されている5).一般的にCCLによる真菌性角膜炎の代表的な起因菌は酵母菌であるカンジダとされており,糸状菌のうちFusariumについては,海外でC2006年にCMPSによるアウトブレイクがあったが6),通常,糸状菌は植物の表面や土壌に生息し,第一次産業従事者などで外傷を契機に発症することが多い.今回,SCLをCL処方施設の指示通りに使用していた健常な若年女性に生じた糸状菌による真菌性角膜炎をC2例経験したので,その所見とともに報告する.CII症例[症例1]患者:36歳,女性.主訴:左眼の疼痛,充血,羞明.現病歴:数年前からCDSCLを使用していた.202X年CY月CZ日に上記主訴を自覚し,3日後に近医を受診した.受診時に角膜上皮欠損があり,オフロキサシン眼軟膏,ヒアルロン酸CNa点眼を処方され,経過をみられていたが,上皮欠損の拡大を認めたためセフメノキシム点眼を追加され,発症10日後に当院に紹介となった.既往歴:なし.家族歴:祖母が胃癌・糖尿病,父親が高血圧,母親が高血圧.職歴:学校教師.CL使用状況:処方施設の指示どおりに,装用前の手指消毒や装用時間,破棄の規則を厳守していた.眼科の定期受診については不明であった.初診時所見:視力・眼圧は測定せず.前眼部所見では傍中心部に角膜浅層に限局した浸潤,毛様充血,微細な角膜後面沈着物を認めた(図1a).やや羽毛状ではあったが,Des-cemet膜雛襞や角膜後面プラークはなく,周囲の角膜は軽度の浮腫のみで,比較的透明で前房蓄膿はなかった.前眼部光干渉断層計(opticalcoherencetomograph:OCT)では,潰瘍は角膜実質C3分のC1層までに限局しており,深層への進展はなかった(図1b).初診時に角膜掻爬を行い,擦過物を塗抹に提出したところ,塗抹検鏡から糸状菌が観察された(図2).真菌による感染性角膜炎と判断し,ボリコナゾール(自家調整1%)点眼C1時間ごと,同内服C400mg/日,同結膜下注射(2mg/ml,0.3Cml),ピマリシン眼軟膏C1日C3回から治療を開始した.その後の漸減含め,詳細については図3に示す.治療経過中に薬剤透過性亢進と壊死産物を除去する目的にて,4回の角膜掻爬を行った.当院初診時よりC9日目には,培養にてFusarium属が同定された.治療を継続し,約C1カ月半で充血や角膜潰瘍については軽快し,その後,抗真菌薬の点眼は,約C4カ月かけて漸減中止したが,中止後も再燃を認めなかった.初診時より約C6カ月後,左眼の矯正視力はC1.2となった(図1c).[症例2]患者:51歳,女性.主訴:左眼の充血.現病歴:数年前からCFRSCLを使用していた.202X年CY月CZ日に上記主訴を自覚し,近医を受診した.角膜浸潤に対し,ガチフロキサシン点眼,フルオロメトロン点眼を処方されたが,浸潤の拡大を認めたため,アカントアメーバ角膜炎を疑われて当院に紹介となった.既往歴:なし.家族歴:なし.職歴:事務職.CL使用状況:CL処方施設で提示されたとおりの装用前の手指消毒や装用時間は厳守していた.また,CLは毎日洗浄していたが,定期受診の有無やCCLケースの乾燥や交換時期については不明であった.初診時所見:左眼視力(1.2C×sph.7.25D(cyl.0.50DAx170°),眼圧は20mmHgであった.細隙灯顕微鏡所見では,2時方向に角膜浅層に限局した浸潤を認めた(図4a).やや羽毛状であったが,角膜後面プラークや前房蓄膿はなく,周辺角膜は透明であった.また,該当する部位の上眼瞼にマイボーム腺機能不全を認めた.臨床経過:初診時の角膜の所見から,CLあるいは黄色ブドウ球菌によるアレルギー性角膜浸潤も疑われ,ガチフロキサシン点眼C1日C2時間毎,トブラマイシン点眼C1日C2回と0.1%フルオロメトロン点眼C1日C2回,さらにクラリスロマイシンC400Cmg/日内服を開始した.初診時からC2日後にCCLの保存液を培養に,潰瘍底の角膜擦過物を塗抹検鏡にそれぞれ提出した.事務処理のトラブルにより,塗抹検鏡の確認が遅れ,初診時からC14日後に真菌が確認され(図5),「カンジダ疑いであるが,糸状菌の可能性もあり」と報告された.そのため,ボリコナゾール(自家調整C1%)点眼C1時間ごと,同結膜下注射(2Cmg/ml,0.3Cml),同全身投与C400Cmg/日およびピマリシン眼軟膏C1日C2回を開始した.27日目にはCCL保存液からCPurpureocilliumlilacinumが同定された.治療を継続し,約C1カ月で充血や角膜潰瘍は軽快した.治療内容の詳細については図6に示す.抗真菌薬の点眼は約C5カ月かけて漸減中止し,初診時より約C5カ月後には淡い混濁を残すものの,矯正視力はC1.2となった(図4b).図1症例1の初診時前眼部所見a:傍中心部に角膜浅層に限局した浸潤を認めた.やや羽毛状であるが,前房蓄膿や角膜後面プラークは認めない.b:症例C1の前眼部COCT.潰瘍は角膜実質C3分のC1層までに限局している.Cc:症例C1の初診時より約C6カ月後,淡い混濁は残すものの左眼の矯正視力は(1.2)を得た.III考按一般的に糸状真菌による角膜炎は第一次産業従事者などのツキ目や免疫抑制状態が背景にあることが多く,高齢者での発生が多い.しかし,筆者らが経験したC2症例とも健常な若年女性であった.いずれも,植物を触る機会はない事務職や教職の女性で,基礎疾患・ステロイド点眼の使用歴はなかった.定期受診やCCLケースの洗浄方法についての実際の確認はできなかったが,CL処方施設から指示されたとおりの装用時間を厳守し,少なくとも期限を超えての使用や夜間装用はなく,手指衛生やCCL洗浄を注意して行っていた患者における発症であった.真菌は日常環境に存在する微生物であり,今回の経験から,定期受診を積極的に促して来院の都度取り扱い方法について指導する必要が再認識された.CL取り扱いの説明については,手指衛生・装用時間の厳守だけではなく,FRSCLの場合,CLケースの洗浄・乾燥やC1.3カ月での交換を含めて,詳細に患者に指導すべきであると思われた.加えて,近年は医師の処方を受けない例や,インターネットでの購入が増えており,適切な指導を受けずに装用している例も多く7),さらに広く行き渡る注意喚起が必要であると考えられた.日本コンタクトレンズ学会では,一般の使用者に向けて,各販売会社のCSCLの正しいケア方法を掲載して啓発に取り組んでいる(http://www.clgakkai.jp/gener-al/scl_care.html).このような資材を積極的に装用者に案内することも処方施設の使命と考える.一方で,筆者ら眼科医も,「健常で取り扱い遵守のCCL装用者だから真菌感染の可能性は少ない」との思い込みで,真図2症例1の角膜擦過物の塗抹検鏡写真(グラム染色)分節をもつ細長い菌糸が確認できる.Bar:20Cμm.菌性角膜炎を除外診断してはいけないことが示唆された.今回経験したC2症例の臨床所見の共通点としては,やや羽毛状ではあるものの,角膜浅層に限局した浸潤で,周辺の角膜は透明あるいは軽度浮腫のみであり,糸状菌による角膜炎の典型所見とされる辺縁不整の羽毛状の角膜病変や角膜後面プラーク,前房蓄膿は認めなかった.角膜真菌症における感染病巣の深さは,原因糸状菌の温度による発育性によって,「全層型」と「表層型」の二つの病型に分けられるとされ,FusariumやCPupureocilliumは全層型に分類される8,9).これまでにも,今回と同様にCFRSCL装用の若年者におい塗抹検鏡にて真菌Fusarium同定02691416212837(日)角膜掻爬VRCZ結注1時間ごと/日VRCZ点眼3回/日PMR点眼PMR眼軟膏3回/日1回/日VRCZ内服(400mg/日)GFLX点眼3回/日AT点眼1回/日2時間ごと/日2回/日VRCZ:ボリコナゾール,PMR:ピマリシン,GFLX:ガチフロキサシン,AT:アトロピン.図3症例1の治療経過図4症例2の初診時前眼部所見a:2時方向の眼瞼と接する部位に,角膜浅層に限局した浸潤を認めた.やや羽毛状であるが,前房蓄膿や後面プラークは認めない.b:症例C2の初診時より約C5カ月後の前眼部写真.淡い混濁を残すものの,矯正視力はC1.2となった.てまれな真菌性角膜炎が報告されている10).NGSを用いた真菌性角膜炎の研究では,colletorichumの検出率が既報と比較して高かったとされており,実際の発生率は過去の報告より高いのかもしれない11).一方,今回深層型のはずのCFusariumまで表層型であったことに関してはとくに注意が必要と考える.詳細な機序は不明であるが,緑膿菌感染においてCCL装用例でのみ鋸歯状の病巣が確認された報告12)などから,CL装用により臨床所見が修飾された可能性がある.したがって,抗菌薬点眼に不応な場合,迅速に塗抹検鏡を施行することが重要と思われた.症例C2で観察された塗抹像では,図5のように楕円形の菌体が多く観察され,酵母菌との鑑別が困難であった.しかし,ところどころ脱色されて白抜き状態の菌糸が見えるため,糸状菌として矛盾はないと判図5症例2の塗抹検鏡写真(グラム染色)楕円形の菌体が多く観察されるが,一部白抜き状態の菌糸(→)が確認できる.Bar:20Cμm.塗抹検鏡にて真菌Paecilomyceslilacinum同定C0C2C5C121416C23C30C37(日)角膜掻爬VRCZ結注VRCZ点眼5回/日1時間ごと/日PMR眼軟膏2回/日VRCZ内服(400mg/日)VRCZ点滴(400mg/日)TOB点眼2回C/日5回C/日3回C/日GFLX点眼3回C/日C2時間ごとC/日3回C/日OFLX眼軟膏3回C/日CAM内服(C400mg/日)FLM点眼2回/日TOB:トブラシン,CAM:クラリスロマイシン,FLM:フルマリン図6症例2の治療経過断された.糸状菌による角膜真菌症C7症例に関しての過去の文献では,Purpureocilliumlilacinum(本文では旧名:Pae-cilomyceslilacinusで記載)のC3症例とも,塗抹検査で酵母菌を疑われたと報告されている13).Purpureocillium属の塗抹画像は一般的に,分生子枝が不規則に枝分かれし,先が細くボーリングのピンのような形をしたフィアライドをつけるのが特徴的である.酵母菌と糸状菌では抗真菌薬の薬剤感受性が異なることも多く,Purpureocillium属の塗抹画像の判定には注意が必要であると思われた.一般的に真菌の培養は時間を要することが多く,今回も,培養の結果判明までの期間は,それぞれC9日・27日であった.早期発見のためには,培養のみでなく,塗抹検査が不可欠であると思われた.今回検出されたCFusarium属およびCPurpureocillium属の起源については不明であるが,地球温暖化の影響から,熱帯地域だけではなく温帯地域でも,日常的に糸状菌感染の発生が増加している14).とくに今回,DSCLにおいてCFusariumが検出されたことから,感染経路としては,緑膿菌やアカントアメーバ同様に着脱する水回り環境による汚染1)が推測されると思われた.今後,従来型CSCLやCFRSCLのみならずDSCL装用者においても,真菌性角膜炎の増加に注意しておく必要があると考えられた.CIV結語CL取り扱いに注意を払っている健常若年者であっても,抗菌薬に不応の場合は,真菌も疑い,早期に角膜擦過物の塗抹検鏡を行うことが重要であると再認識された.(109)謝辞:本論文の作成にあたりご指導ご助言を賜りました大阪大学臨床検査部・砂田淳子先生,関西医科大学臨床検査医学センター・釼祐一郎先生,杠祐樹先生に感謝申し上げます.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)宇野敏彦,福田正彦,大橋裕一ほか:重症コンタクトレンズ関連角膜感染症全国調査.日眼会誌115:107-115,C20112)StapletonF,NaduvilathT,KeayLetal:RiskfactorsandcausiveCorganismsCinCmicrobialCkeratitisCinCdailyCdispos-ablecontactlenswear.PLOSOneC12:0181343,C20173)AlfonsoCEC,CCantu-DibilboxCJ,CMunirCWMCetal:Insur-genceCofCFusariumCkeratitisCassociatedCwithCcontactClensCwear.ArchOphthalmolC124:941-947,C20064)糸井素純:コンタクトレンズと酸素不足.日コンタクトレンズ会誌C50:39-45,C20085)ChoiCDM,CGoldsteinCMH,CSaliernoCACetal:FungalCkerati-tisCinCDailyCDisposableCSoftCContaceCLensCWearer.CCLAOCJC27:111-112,C20016)BernalMD,AcharyaNR,LietmanTMetal:OutbreakofFusariumCkeratitisCinCsoftCcontactClensCwearersCinCSanCFrancisco.ArchOpthalmolC124:1051-1053,C20067)川村洋行,西村知久,駒井潔ほか:コンタクトレンズによる眼障害(重症)アンケート調査の集計結果報告(令和C4年).日本の眼科95:210-215,C20248)宮本仁志:眼科領域の検査と微生物の特徴.日本臨床微生物学会34:91-101,C20249)ShiraishiCT,CAraki-SasakiCK,CMitaniCACetal:Clinicalあたらしい眼科Vol.42,No.9,2025C1189CharacteristicsCofCKeratitisCDueCtoCColletotrichumCgloeo-sporioides.JOculPharmacolandTherC27:487-491,C201110)YildizCEH,CAilaniCH,CHammersmithCKMCetal:AlternariaCandCPaecilomycesCkeratitisCassociatedCwithCsoftCcontactClenswear.CorneaC29:564-568,C201011)WangCW,CGongCH,CYangCXCetal:ColletotrichumCkerati-tis:anCimportantCfungalCinfectionCofCnineChumanCeyes.CDiagnMicrobiolInfectDisC110:116540,C202412)IshikawaE,SuzukiT,YamaguchiSetal:Serratedmar-ginsCinCpseudomonasCaeruginosaCkeratitis.CCaseCRepCinCOpthalmolC4:12-15,C201313)棚町千代子,橋本好司,矢野知美ほか:糸状菌を起炎菌とした角膜真菌症のC7症例の解析.日環境感染会誌C24:271-278,C200914)LingJYM,YeungSN,ChanCCetal:TrendsandclinicaloutcomeCofCfungalCkeratitisCinCanada:aC20-yearCRetro-spectiveCMulticentreCStudy.CAmCJCOptalmolC265:147-155,C2024C***

糖尿病患者が内科から眼科へ紹介される時期についての検討

2025年9月30日 火曜日

《第30回日本糖尿病眼学会原著》あたらしい眼科42(9):1179.1184,2025c糖尿病患者が内科から眼科へ紹介される時期についての検討城光映*1,2澁谷文枝*1金子唯*1下村さやか*1野崎実穂*1*1名古屋市立大学医学部附属東部医療センター眼科・レーザー治療センター*2名古屋市立大学医学部附属東部医療センター看護部CTimingofReferralfromInternalMedicinetoOphthalmologyinDiabeticPatients:ARetrospectiveStudyMitsueJo1,2)C,FumieShibuya1),YuiKaneko1),SayakaShimomura1)andMihoNozaki1)1)DepartmentofOphthalmology,NagoyaCityUniversityEastMedicalCenter,2)NursingDepartment,NagoyaCityUniversityEastMedicalCenterC目的:患者が眼科へ紹介された時期と糖尿病網膜症(DR)の状態を検討した.対象と方法:2022年C1月.2023年7月に当科を受診した糖尿病患者のうち,当院内分泌・糖尿病内科からの紹介で,DRの評価を初めて眼科で受けた患者C92例(男性C82例,女性C10例)について,当院内科初診日から眼科受診までの期間,DRの状態,糖尿病罹病期間,内科受診歴,HbA1c値について検討した.結果:平均年齢はC57.1C±11.5歳,HbA1c値は平均C10.6C±2.5(5.3-16.5)%であった.DRを有していた患者はC58例(63.0%)で,その内訳は,単純CDR(SDR)28例(30.4%),前増殖糖尿病網膜症(PPDR)19例(20.6%),増殖糖尿病網膜症(PDR)11例(12.0%)であった.当院内科初診から眼科受診までの期間は,平均C1.8C±6.2カ月であった.糖尿病罹病期間は平均C6.1C±7.8年で,DRあり群はCDRなし群と比べ,有意に罹病期間が長かった(p=0.02).結論:当院内科から眼科へは速やかに紹介されていたが,糖尿病罹病から眼科受診までにはC6年かかっており,さらなる病診連携と糖尿病患者への教育が重要と考えられた.CPurpose:Toevaluatethetimingandstatusofdiabeticretinopathy(DR)patientsreferredfrominternalmedi-cineCtoCophthalmologyCforCtreatment.CMethods:ThisCstudyCincludedC92CDRpatients(82Cmales,C10females)whoCwerereferredfromtheendocrinologyanddiabetesdepartmenttotheophthalmologydepartmentforinitialevalua-tionbetweenJanuary2022andJuly2023.Theperiodfromtheinitialinternalmedicinevisitsatourhospitaltothe.rstCophthalmologyCvisit,CtheCstatusCofCDR,CtheCdurationCofCdiabetes,CmedicalChistoryCinCinternalCmedicine,CandCHbA1cClevelsCwereCanalyzed.CResults:MeanCpatientCageCwasC57.1±11.5Cyears,CandCtheCmeanCHbA1cClevelCwasC10.6±2.5%(range:5.3-16.5%)C.Ofthe92cases,DRwasobservedin58(63.0%)C,including28(30.4%)simpleDRcases,19(20.6%)pre-proliferativeDRcases,and11(12.0%)proliferativeDRcases.Meantimefrominitialinter-nalmedicinepresentationto.rstophthalmologyvisitwas1.8±6.2months,andmeandurationofdiabeteswas6.1C±7.8Cyears.CPatientsCwithCDRChadCaCsigni.cantlyClongerCdurationCofCdiabetesCcomparedCtoCthoseCwithoutDR(p=0.02)C.CConclusions:AlthoughCreferralsCfromCtheCinternalCmedicineCtoCophthalmologyCdepartmentsCwereCmadeCpromptly,themeandurationfromtheonsetofdiabetestothe.rstophthalmologyvisitwas6years.Strengtheningcollaborationbetweenhospitalsandclinicsandenhancingdiabeteseducationforpatientsareessential.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C42(9):1179.1184,C2025〕Keywords:糖尿病網膜症,眼底検査,内分泌・糖尿病内科,眼科.diabeticretinopathy,fundusexamination,in-ternalmedicine,ophthalmology.Cはじめに併症として糖尿病網膜症(diabeticretinopathy:DR)があ糖尿病患者においては,糖尿病と診断された際に速やかにげられるという報告もある1).しかし,日本における糖尿病眼科を受診し,定期的な眼科検査を受けることの重要性が広患者の眼底検査受診率は,2015年度およびC2017年度の調く啓発されている.また,糖尿病患者がもっとも懸念する合査においていずれもC50%未満にとどまり2,3),適切な眼科受〔別刷請求先〕野崎実穂:〒464-8547愛知県名古屋市千種区若水一丁目C2-23名古屋市立大学医学部附属東部医療センター眼科Reprintrequests:MihoNozaki,M.D.,Ph.D.,DepartmentofOphthalmology,NagoyaCityUniversityEasternMedicalCenter.1-2-23Wakamizu,Chikusa-ku,Nagoya464-8547,JAPANC表1患者背景症例92例眼科受診時の年齢C57.1±11.5歳(C27.C81歳)性別男性C82/女性C10内科初診日から眼科受診までの期間糖尿病罹病期間(n=79)CHbA1c値C1.8±6.2月(0.C60月)C6.1±7.8年(0.C34年)10.6±2.5%(C5.3.C16.5%)内科受診歴近医通院中9(C9.8%)内科治療を自己中断24(C26.1%)糖尿病を放置25(C27.2%)未診断(今回初めて糖尿病の指摘を受けた)34(C36.9%)診が行われていない患者が依然として多い現状が明らかとなっている.実際に,眼科を受診する糖尿病患者のなかには,糖尿病と診断されてから長期間が経過しているにもかかわらず,一度も眼科を受診していない例が少なくなく,受診時にはすでにDRが進行している場合がしばしば見受けられる.そこで本研究では,糖尿病患者が初めて眼科へ紹介された時期と,その時点におけるCDRの重症度を検討したので報告する.CI対象と方法対象は,2022年C1月.2023年C7月に名古屋市立大学医学部付属東部医療センター眼科(以下,当院)を受診した糖尿病患者のうち,当院内科からの紹介でCDRの評価を初めて受けた患者C92例(男性C82例,女性C10例)について検討を行った.検討項目は,当院内科初診から眼科受診までにかかった期間,糖尿病罹病期間,HbA1c値,DRの重症度,内科受診歴とした.DRは,超広角走査型レーザー検眼鏡(OptosCalifornia)によるカラー眼底写真をもとに,Davis分類を用いて判定した.DRあり・なしでC2群に分け,患者背景を比較した.年齢,性別,罹病期間,HbA1c値はCMann-WhitneyU検定,内科継続の有無についてはC|2検定で統計解析を行った.DR重症度と糖尿病罹病期間の比較はCKruskal-Wallis検定を行った.p<0.05で有意差ありと判定した.なお,本研究は名古屋市立大学医学系研究倫理審査委員会の承認を受けた(承認番号C60-24-015).CII結果眼科受診時の平均年齢は,57.1C±11.5歳(27.81歳),当院内科初診から眼科受診までの期間は,平均C1.8C±6.2カ月(最大C60カ月).糖尿病罹病期間は,糖尿病発症時期が判明図1DR重症度の内訳したC79例で検討を行い,平均C6.1C±7.8年(最大C34年)であった.HbA1c値は,平均C10.6C±2.5%(5.3.16.5)であった(表1).内科受診歴は,近医通院中で糖尿病治療を継続できていた患者はC9例(9.8%),内科治療を自己中断した患者は24例(26.1%),糖尿病を放置していた患者はC25例(27.2%),未診断(今回初めて糖尿病の指摘を受けた)患者はC34例(36.9%)であった(表1).今回の検討で,DRがなかった患者はC34例(37%),網膜症を有した患者はC58例(63%)であった.そのうち,単純DR(simplediabeticretinopathy:SDR)28例(30.4%),前増殖CDR(preproliferativeCdiabeticretinopathy:PPDR)19例(20.6%),増殖CDR(proliferativeCdiabeticretinopathy:PDR)11例(12.0%)であった(図1).DRの有無と糖尿病罹病期間について,罹病期間が判明したC79例で検討を行った.未診断(今回初めて糖尿病を指摘された)症例は罹病期間C0とした.DR重症度別の罹病期間は,DRのない患者(32例)ではC3.6C±5.3年,SDR(24例)ではC7.0C±7.8年,PPDR(15例)はC8.3C±9.8年,PDR(8例)ではC9.5C±10.0年で,網膜症の重症度が増すにつれ,糖尿病罹病期間も長くなる傾向にあったが,統計学的に有意な相関は認めなかった(表2).さらに,罹病期間が判明したC79例についてCDRの有無と患者背景を比較した.年齢,性別,HbA1c値,内科継続の有無では,DRなし群とCDRあり群間で有意な差は認めなかったが,DRなし群(32例)の罹病期間C3.1C±5.3年,DRあり群(47例)の罹病期間C7.9C±8.7年(p=0.02)と,DRあり群で有意に罹病期間が長かった(表3).つぎに,代表症例を示す.表2DR重症度と糖尿病罹病期間DR重症度平均罹病期間(年)DRなし(n=32)C3.6±5.3年SDR(n=24)C7.0±7.8年PPDR(n=15)C8.3±9.8年PDR(n=8)C9.5±10.0年表3DRなし群とDRあり群の比較網膜症なし(n=32)網膜症あり(n=47)p値年齢C57.6±12.1歳C57.4±11.6歳C*0.94性別男性C26/女性C6男性C43/女性C4C**0.17罹病期間C3.6±5.3年C7.9±8.7年C*0.02HbA1c値C10.7±2.7%C10.5±2.7%C*0.79内科継続の有無※C1/15C5/28C**0.6※未診断(今回初めて糖尿病を指摘された)を除く*Mann-WhitneyU検定**|2検定[症例]患者:50代,男性.既往歴:30代後半で糖尿病を指摘されるが放置していた.201X年鎖骨骨折のため当院整形外科で手術予定となり,術前採血でCHbA1c10.9%が判明し,血糖コントロールのため,当院内分泌・糖尿病内科に紹介された.栄養指導をうけ,骨折手術後退院,退院後の内科通院歴は不明である.現病歴:201X+5年C2月,下肢に浮腫が出現し近医を受診し,HbA1c13.6%と高値を指摘され,当院内分泌・糖尿病内科へ紹介され,201X+5年C3月に内科から眼科へ紹介された.経過:視力は両眼とも矯正C1.2,両眼に網膜点状─斑状出血および軟性白斑を多数認め(図2a),両眼CPPDRと診断し,蛍光眼底造影検査で,無灌流領域がC3象限に認められたため(図2b),両眼汎網膜光凝固術を施行した.そのC4カ月後,当院内科・眼科とも外来受診しなくなった.201X+6年2月再び下肢に浮腫が出現し,近医受診し当院内科へ紹介された.HbA1c5.9%であった.また両眼視力低下を自覚し,C201X+6年C12月に近医眼科から当科へ紹介.視力は両眼とも矯正C0.6,両眼糖尿病黄斑浮腫を認め(図3),抗血管内皮増殖因子(vascularendothelialgrowthfactor:VEGF)薬治療を開始した.現在は,定期的に内科・眼科受診を継続している.CIII考按本研究では,糖尿病患者が初めて眼科に紹介された時期と,その時点でのCDRの状態を検討した.内科初診から眼科受診までの期間は平均C1.8C±6.2カ月と比較的速やかであったが,糖尿病と診断されてから初めて眼底検査を受けるまでには平均C6.1C±7.8年(最大C34年)を要していた.TheJapanDiabetesComplicationsCStudy(JDCS)は,糖尿病罹病期間がC5年以上経過するとCDR発症リスクが有意に高まると報告しており4),日本人C2型糖尿病患者におけるCDRの発症・進行の決定因子を検討した後ろ向き研究でも,罹病期間が唯一の決定因子であったとされている5).本研究でも,DRのある群が有意に長い糖尿病罹病期間であり,この結果はこれらの先行研究と一致している.一方で,糖尿病罹病期間が長いほどCDRが重症化する傾向は認められたものの,統計学的有意差は得られなかった.本研究では,未診断(今回初めて糖尿病を指摘された)症例を罹病期間C0とカウントしていること,それ以外に罹病期間が判明した症例がC45例と限られていたことから,統計解析の検出能力が十分ではなかった可能性がある.今後は症例数を増加させ,より高い検出能力をもつ解析を行うことで,糖尿病罹病期間とCDRの重症度との関連性についても,さらに詳細に検討したいと考える.本研究において,眼科受診までもっとも長期間を要した症例は,受診後も通院を自己中断していた.この患者は,通院中断の理由として外来の待ち時間が長いことをあげており,他施設の報告でも「多忙」や「待ち時間の長さ」が糖尿病患者の通院中断の要因として指摘されている6).現在,当院では「DRスクリーニング外来」を設置し,待ab図2代表症例(50代,男性)①a:初診時カラー眼底写真.b:初診時フルオレセイン蛍光造影.ち時間の短縮を図るため,眼科の診察枠を効率的に運用している.いる.具体的には,内分泌・糖尿病内科の医師が診察予約を今回の検討では,内科から眼科への紹介が比較的速やかに管理し,眼科外来で無散瞳での超広角走査型レーザー検眼鏡行われている一方で,糖尿病発症から眼底検査までに平均C6による撮影を実施して7),眼科医がCDRの有無をチェックす年かかっている現状が明らかになった.また,内科通院を自るしくみを採用している.これにより,眼科受診のハードル己中断した患者,あるいは糖尿病を指摘されていたが放置しを下げ,患者が気軽に眼底検査を受けられる環境を整備してていた患者が半数以上を占めていた.この結果を踏まえ,今ab図3代表症例(50代,男性)②a:再初診時カラー超広角走査型レーザー検眼鏡所見.b:再初診時光干渉断層計所見.後は地域の医療機関とのさらなる病診連携の強化と,糖尿病患者に対する教育が一層重要であると考えられた.本論文の要旨は第C30回日本糖尿病眼学会で発表した.利益相反:利益相反公表基準に該当なし利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)StrainCWD,CCosCX,CHirstCMCetal:TimeCtoCdomore:CaddressingCclinicalCinertiaCinCtheCmanagementCofCtypeC2CdiabetesCmellitus.CDiabetesCResCClinCPractC105:302-312,C20142)TanakaH,SugiyamaT,Ihana-SugiyamaNetal:Chang-esCinCtheCqualityCofCdiabetesCcareCinCJapanCbetweenC2007CandC2015:ACrepeatedCcross-sectionalCstudyCusingCclaimsCdata.DiabetesResClinPractC149:188-199,C20193)Ihana-SugiyamaCN,CSugiyamaCT,CHiranoCTCetal:PatientCreferral.owbetweenphysicianandophthalmologistvisitsforCdiabeticCretinopathyCscreeningCamongCJapaneseCpatientsCwithdiabetes:ACretrospectiveCcross-sectionalCcohortCstudyCusingCtheCNationalCDatabase.CJCDiabetesCInvestigC14:883-892,C20234)KawasakiCR,CTanakaCS,CTanakaCSCetal:IncidenceCandCprogressionCofCdiabeticCretinopathyCinCJapaneseCadultswithtype2diabetes:8yearfollow-upstudyoftheJapanDiabetesComplicationsCStudy(JDCS)C.CDiabetologiaC54:C2288-2294,C20115)NakayamaCY,CYamaguchiCS,CShinzatoCYCetal:Retrospec-tiveCexploratoryCanalysesConCgenderCdi.erencesCinCdeter-minantsforincidenceandprogressionofdiabeticretinop-athyCinCJapaneseCpatientsCwithCtypeC2CdiabetesCmellitus.CEndocrJC68:655-669,C20216)山田幸男,高澤哲也,鈴木正司ほか:dropCoutが原因で透析・失明に至った患者の実態と予防策.プラクティスC10:C426-431,C19937)野崎実穂:糖尿病診療における合併症の管理糖尿病網膜症.診断と治療110:325-330,C2022***

基礎研究コラム:オートタキシン高発現による開放隅角緑内障の誘導

2025年9月30日 火曜日

オートタキシン高発現による開放隅角緑内障の誘導清水翔太開放隅角緑内障における眼圧上昇機構とオートタキシンの役割開放隅角緑内障における眼圧上昇は,おもに線維柱帯およびCSchlemm管を通る房水流出経路(主流出路)の流出抵抗が増加することにより引き起こされます.流出抵抗の増加には,線維柱帯の機能低下,Schlemm管内皮のバリア機能の亢進や,房水流出経路への細胞外マトリックス(extracellu-larmatrix:ECM)の沈着,線維化などが関与していることが示唆されています.これらのメカニズムにはさまざまな房水中メディエーターが関与していますが,未解明な部分も多く残されています.オートタキシン(autotaxin:ATX)はリゾホスファチジン酸(lysophosphatidicacid:LPA)を産生する分泌型の酵素で,産生されたCLPAは細胞増殖や線維化といった多様な細胞応答を引き起こします.緑内障患者の眼組織中や房水中ではCATX濃度が高く,眼圧と相関しており,また線維柱帯細胞のCECMの発現を増加させることが明らかとなっています1,2).しかし,ATXが実際に生体において,臨床でみられるような慢性高眼圧を引き起こすかはまだ明らかにされていませんでした.CATX発現誘導による眼圧上昇タモキシフェン誘導型CATXトランスジェニック(ATXTg)マウスを用いて,眼内でのCATX過剰発現が眼圧に与える影響を評価しました.ATXTgマウスにタモキシフェンを点眼投与することで,眼組織でCATXの過剰発現が誘導されることを確認しました.ATXTgマウスではコントローC2018東京大学医学部附属病院眼科・視覚矯正科千寿製薬株式会社オキュラーサイエンス研究所ル群と比較して有意に高い眼圧が観察され,房水流出機能の低下が確認されました.発現誘導のC2週間およびC3カ月後には,collagenIやC.bronectinなどが蓄積していることが確認されました(図1)3).これらのことから,ATXの過剰発現が房水流出抵抗を増加させ,マイルドな眼圧上昇を長期間維持することが示唆されました.また,発現誘導からC3カ月後のマウスの網膜辺縁部では網膜神経節細胞数が減少しており,緑内障性視神経症の徴候がみられました.今後の展望本研究で評価したCATXTgマウスは,緑内障病態におけるCATX-LPA経路の詳細な役割や,他のメディエーターとの相互作用を解明するための重要なツールとして活用されることが期待できます.房水流出抵抗の増加に深く関与するATX-LPA経路のメカニズムを明確にすることができれば,緑内障治療における新たな戦略が広がる可能性があります.文献1)HonjoCM,CIgarashiCN,CKuranoCMCetal:Autotaxin.lyso-phosphatidicacidpathwayinintraocularpressureregula-tionandglaucomasubtypes.InvestOphthalmVisSciC59:C693-701,C20182)HonjoM,IgarashiN,NishidaJetal:Roleoftheautotax-in-LPACpathwayCinCdexamethasone-inducedC.broticCresponsesCandCextracellularCmatrixCproductionCinChumanCtrabecularCmeshworkCcells.CInvestCOphthalmCVisCSciC59:C21-30,C20183)ShimizuCS,CHonjoCM,CLiuCMCetal:AnCautotaxin-inducedCocularChypertensionCmouseCmodelCre.ectingCphysiologicalCaqueousbiomarker.InvestOphthalmVisSci65:32,C2024線維柱帯付近のECM評価(3カ月)CollagenIF-actinFibronectin眼圧(mmHg)16141210ATXTgControl蛍光強度(%)300250*n.s.**200150100500864ATXTgControl20タモキシフェン1234567891011121314点眼ATX発現誘導後の週数Fibronectin/DAPI図1ATXの過剰発現による眼圧上昇と隅角ECM発現の上昇左図はタモキシフェン点眼によるCATXの過剰発現誘導後の経時的な眼圧変化を示す.ATX発現誘導により約C4CmmHg程度の眼圧上昇がC2カ月間持続したのち,徐々に低下がみられた.右図は発現誘導からC3カ月後の隅角付近のC.bronectin免疫染色画像と,collagenI,F-actin,.bronectinの画像解析結果を示す.ATX過剰発現の誘導C3カ月後に,隅角周辺にCcollagenIおよび.bronectinが蓄積していることが明らかとなった.(93)あたらしい眼科Vol.42,No.9,2025C11730910-1810/25/\100/頁/JCOPY

硝子体手術のワンポイントアドバイス:268.糖尿病性黄斑偏位(中級編)

2025年9月30日 火曜日

268糖尿病性黄斑偏位(中級編)池田恒彦大阪回生病院眼科●はじめに糖尿病性黄斑偏位は,視神経乳頭近傍の線維血管増殖膜による網膜の接線方向の牽引によって黄斑部が鼻側に偏位し,視力低下,変視症などの症状をきたす病態である1.3).近年は光干渉断層計(opticalCcoherenceCtomog-raphy:OCT)により,偏位の状態が詳細に観察できるようになってきている.C●症例提示44歳,男性.増殖糖尿病網膜症(proliferativediabeticretinopathy:PDR)に対して汎網膜光凝固術が施行されていたが,視神経乳頭鼻側を中心に線維血管増殖膜が発育し,血管アーケードが鼻側に偏位する乳頭逆位の所見を呈するようになってきた(図1a).それとともに矯正視力がC0.2に低下し,変視症も出現してきた.OCTでは.胞様黄斑浮腫に加えて,視神経乳頭上に網膜が乗り上げるような所見を呈していた(図1b).硝子体手術施行後,乳頭逆位は残存したが(図2a),視神経乳頭への網膜の乗り上げの程度は改善し,中心窩と視神経乳頭の距離もやや広がった(図2b).矯正視力はC0.6に改善した.C●糖尿病性黄斑偏位に対する硝子体手術の有用性PDRでCmacularheterotopiaと称される黄斑偏位が形成されることは,古くから報告がある1).網膜の接線方向の牽引による視細胞外節の配列や網膜層状構造の乱れなどが,視力低下や変視症の原因になると考えられる.PackerらはCPDRにおける進行性の黄斑偏位を認めたC4眼に硝子体手術を施行し,視力改善を得たことを報告している2).筆者らは糖尿病性黄斑偏位C13例C14眼に対しb図1術前の眼底写真とOCT視神経乳頭鼻側を中心に線維血管増殖膜が発育し,黄斑部が鼻側に偏位している(a).OCTでは.胞様黄斑浮腫に加えて,視神経乳頭上に網膜が乗り上げるような所見を呈している(b).Cb図2術後の眼底写真とOCT硝子体手術施行後,乳頭逆位は残存したが(a),視神経乳頭への網膜の乗り上げの程度は改善し,中心窩と視神経乳頭の距離もやや広がった(b).て硝子体手術を施行し,黄斑部への網膜硝子体牽引発生からC8週間以内に手術を施行したC8眼ではC7眼(88%)に術後視力改善が得られたのに対して,9週以上経過したC6眼では視力改善例がC2眼(33%)に留まったとして,早期硝子体手術の有用性を報告した3).糖尿病性黄斑偏位の疑われる患者ではCIS/OSラインや網膜層状構造の変化に加えて,中心窩と視神経乳頭の距離を経時的にOCTで観察するとともに,眼底所見に比較して視力低下や変視症が著しい場合には早期に硝子体手術を考慮すべきと考えられる.文献1)BresnickGH,SmithV,PokornyJ:Visualfunctionabnor-malitiesCinCmacularCheterotopiaCcausedCbyCproliferativeCdiabeticretinopathy.AmJOphthalmolC92:85-102,C19812)PackerAJ:VitrectomyCforCprogressiveCmacularCtractionCassociatedCwithCproliferativeCdiabeticCretinopathy.CArchCOphthalmol105:1679-1682,C19873)日下俊次,池田恒彦,田野保雄:糖尿病性黄斑偏位に対する硝子体手術.臨眼45:165-169,C1991(91)あたらしい眼科Vol.42,No.9,202511710910-1810/25/\100/頁/JCOPY

考える手術:Mooren潰瘍の外科的治療

2025年9月30日 火曜日

考える手術.監修松井良諭・奥村直毅Mooren潰瘍の外科的治療四條泰陽東京歯科大学市川総合病院眼科周辺部角膜潰瘍は,感染,自己免疫・炎症性疾患,変性疾患など,さまざまな原因によって発症する.本稿では,その中でもとくに治療に難渋することの多いMooren潰瘍に対する外科的治療について述べる.軽症例では,病変が視軸から離れた部位に限局しているため,ステロイド点眼やシクロスポリン点眼などの薬物療法が主たる治療となる.角膜穿孔がわずかである場合には治療用ソフトコンタクトレンズの装用により改善する例もあるが,重症化する例もあり,進行の抑制が重要である.一方,若年者や両眼性の患者には,局所治療外科的治療には,病巣に隣接する結膜を輪部から約3mm切除する結膜切除術(Brown手術)や潰瘍底の掻爬が標準的な手技とされているが,さらに角膜輪部幹細胞疲弊症をきたすような重症例や再発を繰り返す場合は,角膜輪部移植や角膜上皮形成術の併用が有効であり,長期的な炎症制御と視機能の維持が報告されている.穿孔をきたし前房が消失しているような患者には表層角膜移植も併用する.角膜移植を行う際には,視機能への影響を最小限に抑えるため,移植片のサイズやデザイン(円形,扇形),縫合糸のテンションや方向,さらには切除範囲の決定にも十分配慮する.また,早期に上皮化するように移植片との間に段差が生じないように注意し縫合する.術後は炎症が消退するまでステロイドや,シクロスポリンやタクロリムスなどの免疫抑制薬による局所および全身治療を継続・漸減していくが,その間も緑内障や感染症,全身性副作用,さらには再発に注意しながら慎重に経過観察する必要がある.聞き手:周辺部角膜潰瘍の原因について教えてください.連角膜症(lacrimalCdrainageCpathwayCdisease-associat-四條:周辺部角膜潰瘍の原因は感染性角膜潰瘍,Cedkeratopathy:LDAK)に周辺部角膜潰瘍が発生するMooren潰瘍,膠原病による角膜炎,角膜フリクテンなことが報告されています.これらのように周辺部角膜潰どによる非感染性の炎症性疾患,円錐角膜やCTerrien辺瘍には複数の原因があることを知っておくことが大事で縁角膜変性などの変性疾患など多岐にわたります.ます.た,潰瘍には至りませんが,隆起性構造物(翼状片や濾過胞など)が原因で生じる菲薄性変化(dellen)は鑑別す聞き手:では,Mooren潰瘍の外科的治療について教える必要があります.最近は,涙道閉塞などに伴う涙道関てください.(89)あたらしい眼科Vol.42,No.9,2025C11690910-1810/25/\100/頁/JCOPY考える手術四條:Mooren潰瘍は基本的にステロイドや免疫抑制薬の点眼や全身投与などの薬物療法で疾患の消炎を図ることが第一選択となりますが1),若年で両眼性の場合(atypicalやCmalignantとよばれる)は治療に反応が悪いとされます.そのような患者には薬物療法を併用しつつ,外科的治療も視野に入れます.具体的には,①結膜切除術(Brown手術),②角膜上皮形成術,③表層層状角膜移植術があげられます.聞き手:まずは,Brown手術について教えてください.四條:Brown手術は,病変部に一致した輪部からおおよそC3Cmmの結膜を切除し,強膜を露出させる手技です.結膜血管からの炎症細胞の遊走を物理的に遮断し,角膜組織への接触を抑制します.Brown手術単独では沈静化しないケースも多く,潰瘍底に蓄積した炎症細胞の掻爬や,浸潤を伴った角膜の切除も並行して行われます.手術だけに頼らず,点眼や内服治療も同時に行うことが大切です2).聞き手:次に,角膜上皮形成術に用いる切片の作製について教えてください.四條:上皮形成術に使用するClenticuleには,結膜組織の侵入をブロックする効果があります3).さまざまな作製方法がありますが,ここでは全層移植後の強角膜片からの作製方法を述べます.全層移植後の強角膜片の輪部付近に剪刀やメスでC2mm程度の切れ込みを入れ,Katzin剪刀で輪部に沿って切開をしていきます.その後,実質側を剪刀で押し当てるようにトリミングし,厚みをC1/3程度まで薄くして縫合後にホスト角膜と段差が生じないようにします.このとき,裏表がわからなくならないように皮膚ペンなどで上皮側にマーキングしておきます.また,作業中に角膜が乾燥しないよう粘弾性物質を塗布するなどします.Lenticuleの作製が終わったら縫合ですが,潰瘍部の外周に設置して両端をC10-0ナイロン糸で緩みがないように縫合します.重症なCMooren潰瘍では,全周性に輪部組織が傷害され輪部幹細胞疲弊に至っていることもあります.そのような場合は,上皮供給のために輪部移植片を作製して,掻爬した潰瘍部を覆うように縫着します.聞き手:表層層状角膜移植の際の角膜切除について注意点はありますか?四條:Mooren潰瘍の場合,病変が輪部に沿って広範囲に広がっているケースがほとんどですので,扇形のデザインで表層角膜移植をすることが多いです.まず,手動トレパンを用いて中心側をマーキングして,病変部をすC1170あたらしい眼科Vol.42,No.9,2025べて覆うように扇状に切除範囲を決定します(病変部よりC0.5Cmm以上距離をとります).また,その後の移植片作製のために,カリパーなどで各頂点間の距離を測定しておきます.次にマーキングに沿ってできるだけ垂直にメスを入れ,表層.離刀やゴルフ刀を用いて角膜を切除します.穿孔していても虹彩が嵌頓して前房が形成されていればそのまま処置を行い,前房が保持されていない場合は粘弾性物質を用います.また,顕著な菲薄部や穿孔部周辺の切除はなるべく最後に回して,他の部分からとりかかるといいでしょう.聞き手:扇形の移植片の作製で注意点はありますか?四條:前述したマーキングを参照にして移植片の作製を行います.移植片の作製は可能なかぎり透明な角膜組織部分を用いるようにします.用意した強角膜切片に対して,最初に中心側の円形部分のトリミングから行います.ドナーパンチを用いて角膜裏面から打ち抜く場合は,0.25Cmm大きいサイズで打ち抜きます.穿孔して眼球が虚脱しているような場合はC0.5Cmm大きく打ち抜くこともあります.続いて各頂点間の距離を参考にして,打ち抜いて残った強角膜切片をスプリング剪刀や角膜剪刀を用いてさらにトリミングします.切除部分に合わせて適宜形状や厚みを確認し調整していきます.とくに重要な点は,上皮同士がしっかり合うようにデザインすることです.聞き手:表層層状角膜移植の縫合で注意点はありますか?四條:扇形の移植片の内側からC10-0ナイロン糸を用いて端々縫合していきます.その後,移植片の両端を縫合して周辺側の強膜側という順で縫合していきます.中心側は上皮を合わせること,乱視をできるかぎり惹起しないようにすること,瞳孔に縫合糸がかからないようにすることなどに注意します.周辺部の強膜側の縫合はバイトを長めにして,少し強めに縫うなどすると,上皮が合わせやすくなります.ある程度縫合が終わったら,嵌頓していた虹彩の整復や前房内の粘弾性物質の除去を行います.文献1)木下茂,大橋裕一:Mooren潰瘍の病態と治療.日眼紀C41:2055-2061,C19902)MallemCK,CLibermanCP,CBerkenstockCMKCetal:ClinicalCoutcomesinperipheralulcerativekeratitis.AmJOphthal-molC272:98-105,C20253)KinoshitaS,OhashiY,OhjiMetal:Long-termresultsofkeratoepithelioplastyCinCMooren’sCulcer.COphthalmologyC98:438-445,C1991(90)

抗VEGF治療セミナー:抗VEGF薬硝子体内注射後の網膜色素上皮裂孔

2025年9月30日 火曜日

●連載◯159監修=安川力五味文139抗VEGF薬硝子体内注射後の狩野久美子九州大学医学部眼科網膜色素上皮裂孔新生血管型加齢黄斑変性に対する抗CVEGF治療では,眼局所においてもいくつかの合併症が起こりうる.投与後の細菌感染症や外傷性白内障,薬剤によってはぶどう膜炎・網膜血管閉塞などもあげられるが,今回は網膜色素上皮裂孔を引き起こすリスクに関して述べる.はじめに新生血管型加齢黄斑変性(neovascularCage-relatedCmaculardegeneration:nAMD)に対する治療は,抗VEGF治療が第一選択となっている.2009年に発売されたラニビズマブを筆頭に,現在C6剤の使用が可能な状況である.その中でもブロルシズマブはぶどう膜炎や網膜血管閉塞を起こす可能性があることが報告されているが,現在ではステロイド投与によりその発症をある程度予防できることが知られている1,2).しかし,注射後の細菌性眼内炎や外傷性白内障,網膜色素上皮裂孔(reti-nalCpigmentCepitheliumtear:RPEtear)はどの薬剤でも発症する可能性のある合併症である.とくにCRPEtearは手術などの治療手段もなく,一度発症すると不可逆性で,視力低下の可能性も高い予後不良な合併症である.今回は抗CVEGF治療によるリスクの一つとして,CRPEtearについて述べる.症例患者はC62歳の男性.主訴は右眼歪視,右眼矯正視力は(1.0)であった.右眼に丈が比較的高い大きな網膜色素上皮.離(pigmentCepithelialdetachment:PED)とそれを裏打ちする一部線維化した黄斑新生血管(macu-larneovascularization:MNV)を認めた.周囲には漿液性網膜.離を伴っていた.また,PEDの中に黒く抜ける間隙,いわゆるCcleftサインを認めた(図1).網膜色素上皮下の新生血管であるため,nAMD(typeCIMNV)の診断のもと,右眼にアフリベルセプトC2Cmg硝子体内注射を施行した.注射施行後C4日目から急に暗くなったと投与後C1週間で再来.眼底には大きなCRPEtearを認めた(図2).その後,治療の継続を希望しなかったため経過をみているが,RPEtearは拡大して黄斑部に及び,視力低下をきたした.また,黄斑部にはMNVによる網膜下出血を認め,線維瘢痕化,.胞様黄斑浮腫に至り,最終受診時の右眼矯正視力は(0.06)と著明に低下している.CRPEtear発症リスク軽減のためにはRPEtearは発症を完全にコントロールできる合併症ではないため,投与前の検査でリスクの高い患者をみきわめることが重要になってくる.高リスク要因の一つ目は,大きな丈の高いCPEDがあることである.二つ目はPEDの形状で,裏に新生血管による裏打ちがあるものや,内部にCcleftサインがあるもの,また網膜色素上皮の一部欠損,いわゆるマイクロリップがあるとリスクは高い3,4).RPEtearの発症は,抗CVEGF薬投与によるMNVの収縮による牽引が原因の一因と考えられている.以前は,アフリベルセプト以降の抗CVEGF薬は,VEGF-A以外の因子にも作用するため,VEGF-Aのみを阻害するラニビズマブよりも強い力でCMNV収縮を引き起こし,RPEtearを起こすのではないかと議論されていたが,現在では薬剤による差はないとの報告もされている5).しかし,筆者の病院では,リスクの高い患者に関しては少しでもCMNVの急激な収縮を防ぐため,ラニビズマブCBSの投与から開始し,丈が小さくなる,もしくは導入期のC3回投与でCRPEtearを起こさなかった患者に関しては,他の抗CVEGF薬へスイッチしている.そして万が一CRPEtearが発生した場合には,薬剤投与を中止せずに抗CVEGF薬投与を継続している.その理由は,先に紹介した症例のように,抗CVEGF薬投与を中断することでCMNVの活動性が増悪し,滲出性変化および線維瘢痕化を引き起こし,さらなる視力低下を起こすことが危惧されるためである.(87)あたらしい眼科Vol.42,No.9,202511670910-1810/25/\100/頁/JCOPY図2眼底写真と自発蛍光aは初診時,Cbは網膜色素上皮裂孔(RPEtear)を起こした直後の眼底写真と眼底自発蛍光所見.RPEtear部位はカラー眼底写真では暗くなり,眼底自発蛍光検査では低蛍光になっている.CRPEtearが黄斑部に及ぶか及ばないかで視力予後は大きく変わってくるが,そのリスクを治療前に完全に予測するのはむずかしい.しかし,RPEtearはCMNVが収縮することにより起こる病態と考えられるので,PEDとCMNVの位置からある程度予測を立てることは可能である.PEDとCMNVが黄斑部からはずれている場合はCRPEtearを起こしても黄斑部に影響はない場合が多いが,黄斑部をまたぐようにCPEDとCMNVが存在C1168あたらしい眼科Vol.42,No.9,2025図1初診時OCT網膜色素上皮.離(PED)は,1型黄斑新生血管(MNV)が裏打ちする部分で波打ち(),cleftサイン(内部は輝度が不均一になり黒く抜けている※の部分)を伴っている.する場合は,RPEtearを起こした際に病変が黄斑部に及び視力低下をきたしやすい.だが仮に黄斑部に及んだとしても,病態の活動性が低い場合は,抗CVEGF薬継続により,増殖膜を形成することなくCBruch膜と網膜が直接接着し,ある程度の視力を維持できることもある.ただし病態の活動性が高いと,抗CVEGF薬を継続しても滲出性変化や線維瘢痕化による視力低下をきたす.いずれにしてもCRPEtearは治療前視力良好例にも発症しやすいことから,治療前に必ずリスクを説明しておくことが大事である.文献1)HolzFG,IidaT,MarukoIetal:Aconsensusonriskmit-igationforbrolucizumabinneovascularage-relatedmacu-lardegeneration:PatientCselection,Cevaluation,CandCtreat-ment.RetinaC42:1629-1637,C20222)KataokaK,HoriguchiE,KawanoKetal:Threecasesofbrolucizumab-associatedCretinalCvasculitisCtreatedCwithCsystemicandlocalsteroidtherapy.JpnJOphthalmolC65:C199-207,C20213)NagataJ,ShioseS,IshikawaKetal:Clinicalcharacteris-ticsCofCeyesCwithCneovascularCage-relatedCmacularCdegen-erationCandCretinalCpigmentCepitheliumCtears.CJCClin.CMedC12:5496,C20234)MitchellCP,CRodriguezCF.J,CJoussenCAMCetal:Manage-mentCofCretinalCpigmentCepitheliumCtearCduringCanti-vas-cularCendothelialCgrowthCfactorCtherapy.CRetinaC41:671-678,C20215)AhnJ,HwangDD,SohnJetal:Retinalpigmentepitheli-umCtearsCafterCanti-vascularCendothelialCgrowthCfactorCtherapyforneovascularage-relatedmaculardegeneration.COphthalmologicaC245:1-9,C2022(88)