提供コンタクトレンズセミナー読んで広がるコンタクトレンズ診療3.ソフトコンタクトレンズの素材糸井素啓京都府立医科大学大学院医学研究科■はじめに1960年代に,Wichterleが高分子ゲルのメタクリル酸2-ヒドロキシエチル(2-hydroxyethylmethacry-late:2-HEMA)を素材としたコンタクトレンズの開発に成功し,ソフトコンタクトレンズ(SCL)が誕生した.その後,素材・デザイン・製造法の点で目覚ましい進歩を遂げ,多くの種類のSCLが登場した.その結果,数多くのSCLの中から患者に最適なCLを処方するために,各レンズの特徴を正しく把握することが重要となっている.本稿では素材に基づいたSCLの特徴をわかりやすく解説する.■ハイドロゲルレンズとシリコーンハイドロゲルレンズ現在普及しているSCLは,1972年以降に発売されたハイドロゲルレンズ(以下,HyCL)と,2004年以降に発売されたシリコーンハイドロゲルレンズ(以下,SiHyCL)の2種類に大別される.HyCLは,含水性のポリマーを主成分としたレンズで,ポリマー内の水分を介して酸素を透過するため,酸素透過係数(Dk値)は含水率に依存する.しかし,含水率が高いレンズは,乾燥に伴ってレンズが変形しやすくなるため,良好な酸素透過性と乾燥による装用感悪化の防止を両立させるのはむずかしい.また,酸素透過を水分に依存するため,水の酸素透過性80×10.11(cm2/sec)(mlO2/ml×mmHg)を超えることができないという限界がある.一方,SiHyCLは上述の含水性ポリマーに,高い酸素拡散係数を有するシリコーンを組み合わせたレンズである.シリコーンは含水性ポリマーより高い酸素透過性を有するため,SiHyCLは含水率が低いほど酸素透過性が高い.そのため,SiHyCLは,シリコーンの高い酸素透過性と,低含水率ハイドロゲルの乾燥に強く装脱が容易という,それぞれの素材のメリットが両立している.しかし,撥水性のシリコーンを含むため化粧品などの脂質汚れが付着しやすく,HyCLに比較して硬度(ヤング率:Young’smodulus)が高いレンズが多いため,角膜上方周辺部の弧状角膜上皮障害であるsuperiorepitheli-alarcuatelesions(SEAL’s)(図1)やムチンボールなど(61)0910-1810/22/\100/頁/JCOPY視覚再生機能外科学道玄坂糸井眼科図1弾性率が高いシリコーンハイドロゲル装用者にみられたSEAL's上方の角膜輪部に沿った弓状の角膜上皮障害を認める.の合併症が出現することがある.また,一部の消毒成分(塩酸ポリヘキサニド)と相性が悪い製品があり,注意を要する1).かつてはレンズの種類が少ないという問題があったが,現在は乱視用,サークルレンズ,多焦点レンズなどさまざまなデザインが揃っている.また,近年は,表面加工により脂質汚れがつきにくいレンズや,以前より含水率が高く弾性率が低いレンズ(表1),従前よりも安価なレンズなど,これまでのSiHyCLの短所を改善した新しいSyHiCLが登場しており,SiHyCLはより処方しやすくなっている.■FDA分類米国食品医薬品局(FoodandDrugAdministration:FDA)は,SCLの素材をその特徴に応じて大きく5グループに分類している(表2,3).ハイドロゲル素材は,含水率と素材のイオン性によってグループI~IVに分類される.一般に,ハイドロゲルレンズの含水率とイオン性は,レンズの汚れやすさ,柔軟性,酸素透過性,乾燥感に関係する.レンズ汚れの主要因である蛋白質は,イオン性素材に吸着しやすく,また含水性の高い素材ほど蛋白質が素材内部に侵入しやすいとされる.そのたあたらしい眼科Vol.39,No.11,20221501表1シリコーンハイドロゲル素材の含水率と弾性率表3FDA分類別の代表的なソフトコンタクトレンズ素材名Dk値含水率弾性率(Mpa)日本での発売年lotra.lconA14024%1.42004年bala.lconA9136%1.12004年seno.lconA10338%0.722007年nara.lcone10046%0.712010年com.lconA9055%0.62011年dele.lconA14033~80%0.72014年ste.lconA8054%0.42016年somo.lconA6056%0.52021年kali.lconA13455%0.52022年Dk値の単位:10.11(cm2/sec)・(mlO2/ml×mmHg)(文献2より改変引用)表2FDAによるSCLの分類グループ名素材IIIIIIIVハイドロゲルレンズ低含水・非イオン性高含水・非イオン性低含水・イオン性高含水・イオン性Vシリコーンハイドロゲルレンズ低含水:含水率50%未満,高含水:含水率50%以上め,グループIV(高含水・非イオン性)のレンズがもっとも蛋白質を吸着しやすく,グループI(低含水・イオン性)のレンズが蛋白汚れに抵抗性がある.一方,含水率が高いほど,柔軟性に優れるため装用感がよく,酸素透過性が高いが,乾燥感を生じやすくなる.SiHyCLは,ハイドロゲルレンズと性質が異なるため,グループVとして独立して分類されている.現在,乾燥対策に保存液や表面加工に工夫をしたレンズもあり,必ずしもFDA分類とレンズの性質が一致するわけではないが,上述の基本的な考え方を理解しておきたい.ちなみに,論文などに記載されているeta.lconAなどの名称はレンズの名称ではなく,FDAに登録されている素材名である.グループレンズ名メーカー名I1dayFineUVplusシードIIプロクリアワンデーデイリーズアクア・アクアコンフォートプラスバイオトゥルーワンデーダリストワンデープラスMagicクーパービジョンアルコンボシュロムボシュロムメニコンIIIなしIVワンデーバイオメディックスEVワンデーアキビューモイスト1dayPureうるおいプラスメニコンワンデークーパービジョンジョンソン・エンド・ジョンソンシードメニコンVワンデーアキュビューオアシスデイリーズトータルワンマイデイボシュロムアクアロックスワンデーUVシンジョンソン・エンド・ジョンソンアルコンクーパービジョンボシュロム■おわりに現在もなお,SCLの開発は積極的に続けられており,新しい素材・機能・装用スケジュールのレンズが次々に登場している.その結果,SCLは急速に多様化しており,そのレンズごとの特徴を把握するのは以前に比較してむずかしくなっている.そのため,素材ごとにレンズの特徴を整理し,各種レンズの適応を把握することで,適切なレンズ選択による安全なコンタクトレンズ診療を行いたい.文献1)PaughJR,NguyenAL,HallJQJretal:Apreliminarystudyofsiliconehydrogellensmaterialandcaresolutionbioincompatibilities.Cornea30:772-779,20112)BennettES,HenryVA:Clinicalmanualofcontactlenses.5thed,Kindleed,WoltersKluwerHealth,20193)BinderPS:Complicationsassociatedwithextendedwearofsoftcontactlenses.Ophthalmology86:1093-1101,1979