●連載監修=安川力髙橋寛二56.網膜静脈分枝閉塞症に伴う黄斑浮腫に対する抗VEGF療法の早期導入の有用性安田優介平野佳男名古屋市立大学大学院医学研究科視覚科学教室網膜静脈分枝閉塞症(BRVO)における視力低下の主因は黄斑浮腫である.抗CVEGF療法の登場で劇的な治療効果が得られているが,再発例,遷延例などでたびたび苦渋する.本稿では,BRVOの黄斑浮腫遷延の原因解明とそれに対する治療への応用に関して,筆者らの見解を概説する.BRVOにおける黄斑浮腫の遷延と毛細血管瘤抗血管内皮増殖因子(vascularCendothelialCgrowthfactor:VEGF)療法の登場で,網膜静脈分枝閉塞症(branchCretinalCveinCocclusion:BRVO)の黄斑浮腫治療は一変した1).抗CVEGF療法は非常に有効であるが,再発と遷延化,それに伴う頻回の通院と注射が問題である.筆者らはCBRVOの黄斑浮腫の遷延に毛細血管瘤形成が関与することを報告した2).また,抗CVEGF療法がステロイド治療よりも毛細血管瘤形成を抑制すること,抗CVEGF療法を発症後C3カ月以内の早期に開始することで毛細血管瘤形成や黄斑浮腫遷延が抑制されることも報告した2).以前の動物実験の報告3)では,VEGF蛋白を硝子体内に投与することで毛細血管瘤や網膜無灌流領域が形成されることが示唆されており,VEGFが毛細血管瘤などの微小血管障害に関与している可能性がある.さらに,BRVOにおいて毛細血管瘤が形成された症例では抗CVEGF療法が効きにくいとの報告4)もあり,毛細血管瘤が形成される前にCVEGFをしっかりと抑制することが,黄斑浮腫の遷延化には有効である可能性がある.以下に実際の症例を提示する.対象BRVOに伴う黄斑浮腫に対し,ラニビズマブ硝子体内注射を導入期なしで必要時に投与し,12カ月間経過観察可能であったC2症例について提示する.診断後C1カ月以内にラニビズマブ硝子体内注射を施行し,その後毎月診察し,中心網膜厚(centralCretinalCthickness:CRT)がC250Cμm以上か,黄斑部の滲出性変化残存を再投与基準とした.症例142歳,女性.高血圧治療中.1カ月前から右眼の視力低下を自覚し,当院を受診.初診時右眼矯正視力は0.1で,右眼の前眼部,中間透光体に特記すべき異常はなく,眼底検査で網膜出血,軟性白斑,黄斑浮腫を認めた(図1a).光干渉断層計検査で.胞様黄斑浮腫と漿液性網膜.離を認め,CRTはC699Cμmであった(図1c).フルオレセイン蛍光眼底造影(.uoresceinCangiogra-phy:FA)では網膜血管からの著明な蛍光漏出と網膜無灌流領域と思われる低蛍光がみられた(図1b).以上よりCBRVOと診断し,発症後C1.5カ月でラニビズマブ硝子体内注射を行った.治療後C12カ月で右眼矯正視力は1.2に改善した.網膜出血と軟性白斑は減少し(図1d),黄斑浮腫も消失した(図1f,CRTはC225Cμm).眼底後極部には毛細血管瘤の形成は認めなかった(図1e).その間,ラニビズマブ硝子体内注射をC3回施行し,その他の治療は行わなかった.早期の治療介入により,毛細血管瘤の形成を認めず,比較的少ない注射回数で視力改善が可能であった.症例271歳,女性.既往歴なし.4カ月前から右眼の視力低下を自覚し,当院を受診.初診時右眼矯正視力はC0.6で,両眼ともに軽度の白内障があり,右眼の眼底所見は網膜出血と黄斑浮腫であった(図2a).光干渉断層計検査で黄斑浮腫を認め,CRTはC513Cμmだった(図2c).FAで網膜血管からの蛍光漏出と網膜出血による蛍光遮断を認めたが,網膜無灌流領域と思われる所見はみられなかった(図2b).以上よりCBRVOと診断し,発症後4.5カ月でラニビズマブ硝子体内注射を行った.3回注射後に一時黄斑浮腫は消退したものの(図2f),治療後12カ月で黄斑浮腫の再発がみられた(図2g,CRTは269Cμm).矯正視力はC1.0に改善し,網膜出血は減少していた(図2d).FAでは,眼底後極部に毛細血管瘤の形成とそこからの蛍光漏出を認めた(図2e).12カ月間でラニビズマブ硝子体内注射をC7回施行し,その他の治療は行わなかった.治療介入が遅れ,毛細血管瘤が形成され,視力は改善したものの黄斑浮腫が遷延し,多くの注射回数を必要とした.(93)あたらしい眼科Vol.35,No.9,2018C12490910-1810/18/\100/頁/JCOPY図1症例1:早期治療介入例(majorBRVO)a:初診時の眼底所見.Cb:初診時のフルオレセイン蛍光眼底造影(FA)所見.後期像.Cc:初診時の光干渉断層計所見.Cd:12カ月後の眼底所見.Ce:12カ月後のCFA所見.早期像.Cf:12カ月後の光干渉断層計所見.発症後C12カ月で,毛細血管瘤の形成は認めず黄斑浮腫は消退した.C図2症例2:治療介入遅延例(macularBRVO)a:初診時の眼底所見.Cb:初診時のフルオレセイン蛍光眼底造影(FA)所見.後期像.Cc:初診時の光干渉断層計所見.Cd:12カ月後の眼底所見.Ce:12カ月後のCFA所見.早期像.Cf:3回ラニビズマブ硝子体注射後の光干渉断層計所見.Cg:12カ月後の光干渉断層計所見.3回ラニビズマブ注射後に黄斑浮腫は一時消退したものの,発症後C12カ月で後極部に毛細血管瘤が形成され,同部からの蛍光漏出所見を認め,黄斑浮腫は残存した.おわりにBRVOにおける黄斑浮腫に対する抗CVEGF療法早期導入の有用性について,代表症例を提示して説明した.BRVOにおける黄斑浮腫の遷延化抑止,患者の負担軽減につながることを期待する.文献1)CampochiaroCPA,CHeierCJS,CFeinerCLCetCal:RanibizumabCformacularedemafollowingbranchretinalveinocclusion.1250あたらしい眼科Vol.35,No.9,2018Six-monthprimaryendpointresultsofaphaseIIIstudy.OphthalmologyC117:1102-1112,C20102)TomiyasuT,HiranoY,YoshidaMetal:MicroaneurysmscauseCrefractoryCmacularCedemaCinCbranchCretinalCveinCocclusion.CSciRep6:29445,C20163)TolentinoCMJ,CMillerCJW,CGragoudasCESCetCal:Intravitre-ousCinjectionsCofCvascularCendothelialCgrowthCfactorCpro-duceretinalischemiaandmicroangiopathyinanadultpri-mate.Ophthalmology103:1820-1828,C19964)HasegawaT,KawanoT,MarukoIetal:Clinical.ndingsofCeyesCwithCmacularCedemaCassociatedCwithCbranchCreti-nalCveinCocclusionCrefractoryCtoCranibizumab.CRetinaC38:C1347-1353,C2018(94)C