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眼瞼・結膜:コンタクトレンズとドライアイ

2018年6月30日 土曜日

眼瞼・結膜セミナー監修/稲富勉・小幡博人39.コンタクトレンズとドライアイ東原尚代ひがしはら内科眼科クリニック,京都府立医科大学眼科渡辺彰英京都府立医科大学眼科ソフトコンタクトレンズ(SCL)装用に伴う眼乾燥感には,さまざまな要因が関与する.眼瞼・結膜においては結膜上皮の病理学的変化だけでなく,SCL表面と眼瞼,SCLエッジと球結膜の摩擦や,結膜弛緩症との関連が注目されている.摩擦軽減をめざしたレンズ素材やデザインの選択が眼乾燥感の症状改善に期待できる.●はじめにコンタクトレンズ(CL)を装用すると,結膜上皮の扁平上皮化生やゴブレット細胞数の減少が生じる.近年,ソフトコンタクトレンズ(SCL)装用時の眼乾燥感は,SCL表面と眼瞼,エッジと球結膜の摩擦や,結膜弛緩症と関連することが注目されている.ここではCSCL装用時の眼乾燥感について,眼瞼と結膜に焦点をあてて概説する.C●SCL装用で生じる摩擦SCLを装用すると,涙液はCSCLの上と下に分断される.インターフェロメトリーを用いてCSCL上と下の涙液厚を計測すると,SCL上の涙液は装用直後から薄くなることが知られている1).その結果,SCL表面とClid-wiper,SCLエッジと球結膜との摩擦が増加して眼乾燥感と影響することが示されている2).一般に球結膜は角膜よりも知覚神経の密度が低いが,Cochet-Bonnet知覚計を用いた検討3)では,眼瞼結膜辺縁部の知覚は角膜に近い閾値を示すことが報告されている点は大変に興味深い.また,SCLの摩擦係数はメーカーによって大きく異なり,SCL自体に親水性をもたせた素材ほど摩擦係数は低く,摩擦係数とC1日終わりの装用感との間には相関関係があることが報告されている4).第三世代のシリコーンハイドロゲルCSCLは高い酸素透過性を有しながら,ハイドロゲル素材に近い柔らかさがある.SCL装用時の眼乾燥感の対策として,摩擦係数が低いCSCL素材を選ぶことがポイントになるだろう.C●コンタクトレンズと結膜弛緩症結膜弛緩症は高齢者に高頻度にみられ,加齢や瞬目による機械的影響を背景に結膜の弾性線維の断裂が発症に(89)0910-1810/18/\100/頁/JCOPY図1結膜弛緩症のElasticavanGieson染色所見フラグメント様に変化したコイル状の短い弾性線維所見が特徴である.関与する5,6)(図1).一方,若年でもCCL装用者では結膜弛緩症の頻度が高く7),CL装用者で眼不快感を有する人は無症状の人と比較して結膜弛緩症の重症度が有意に高いと報告されている8).C●結膜・眼瞼から考えるSCL装用時の眼乾燥感対策症例はC31歳,男性.トーリックCSCL(高含水ハイドロゲル素材,ダブルスライブオフ)装用時の眼乾燥感があり,鼻側および耳側の結膜弛緩症とその部位に一致してClid-wiperCepitheliopathy(LWE)を認めた(図2).トーリックCSCLは単焦点CSCLより直径が大きく,レンズ周辺部の厚みがあるため,球結膜への圧迫が生じやすい(図3).この症例では,低含水で摩擦係数の少ないシリコーンハイドロゲル素材(プリズムバラストデザイン)に変更したところ,LWEは軽減し自覚症状も改善した(図4).あたらしい眼科Vol.35,No.6,2018C797図2症例(31歳,男性,トーリックSCL装用)のフルオレセイン染色所見a:耳側の球結膜に結膜弛緩症を認める.b:ダブルスライブオフデザインはC3-9時方向の厚みが強く,球結膜への圧迫所見が生じやすい.結膜弛緩症の部位に一致した上下のCLWEを認めた.図3SCL装用時の球結膜への圧迫所見レンズサイズの大きなトーリックCSCL(とくにダブルスライブオフデザイン)だけでなく,強度近視でもレンズ周辺の厚みが強いために球結膜への圧迫が生じやすい.●おわりにSCL関連の眼乾燥感について眼瞼・結膜から考えてみた.SCL装用でいったん結膜弛緩症が生じると改善はむずかしいが,SCL素材やデザインを見直すことで球結膜および眼瞼結膜への摩擦が軽減され,眼乾燥感の改善が期待できる.それでもなお残る症状には,ドライアイ点眼を考慮するとよい.文献1)NicholsCJJ,CKing-SmithCPE:ThicknessCofCtheCore-andCpost-contactClensCtearC.lmCmeasuredCinCvivoCbyCinterfer-ometry.IOVSC44:68-77,C20032)横井則彦:涙液からみたコンタクトレンズ.日コレ誌C57:C222-235,C2015798あたらしい眼科Vol.35,No.6,2018図4トーリックSCLデザイン見直し後のフルオレセイン染色(図2と同一症例)低含水のシリコーンハイドロゲル素材で,かつ,6時方向に厚みのあるプリズムバラストデザインに変更したところ,LWE所見は改善した.C3)Navascues-ComagoCM,CMaldonado-CodinaCC,CMorganPB:Mechanicalsensitivityofthehumanconjunctiva.Cor-nea33:855-859,C20144)ColesCCML,CBrennanCNA:Coe.cientCofCfrictionCandCsoftCcontactClensCcomfort.COptomCVisCSciC2012:e-abstractC1256035)渡辺彰英,横井則彦,木下茂ほか:結膜弛緩症における弛緩部結膜の病理組織学的検討.あたらしい眼科C17:585-587,C20006)WatanabeA,YokoiN,KinoshitaSetal:Clinicopathologicstudyofconjunctivochalasis.CorneaC23:294-298,C20047)MimuraT,UsuiT,YamamotoHetal:Conjunctivochala-sisCandCcontactClenses.CAmCJCOphthalmolC148:20-25,C20098)PultCH,CPurslowCC,CBerryCMCetCal:ClinicalCtestsCforCsuc-cessfulCcontactClensCwear:relationshipCandCpredictiveCpotential.OptomVisSci85:E924-929,C2008(90)C

抗VEGF治療:滲出型加齢黄斑変性における個別化治療・私のこだわり

2018年6月30日 土曜日

●連載監修=安川力髙橋寛二53.滲出型加齢黄斑変性における佐々木真理子国家公務員共済組合連合会立川病院眼科個別化治療・私のこだわりVEGF阻害療法の登場により,滲出型加齢黄斑変性の視力予後は大きく改善した.しかし,治療はしばしば長期にわたるため,再燃を防ぎ,再燃時には速やかに治療し鎮静化を得る維持期の治療が重要である.理想的には,個々の症例の再発間隔に応じた“個別化治療”が望ましく,より良い治療レジメンが模索されている.C長期の視力維持には,可能なかぎり再燃を防ぎ,再燃現在までの治療レジメンの流れと問題点時に速やかに治療し鎮静化を得る維持期の治療が重要で滲出型加齢黄斑変性(age-relatedCmacularCdegenera-ある.この点,投与回数が多いことは有利だが,血管内皮tion:AMD)に対するラニビズマブの毎月投与により,増殖因子(vascularendotherialgrowthfactor:VEGF)ETDRS視力がC6~10文字改善し,2年間視力を維持し阻害薬投与は全身および局所合併症や治療費を含めた患うることが,MARINA,ANCHOR試験で示された.者負担などの問題があり,必要最小限の投与が望ましその後,PrONTO試験ではラニビズマブC3回投与(導い.このため,理想的には個々の症例の再発間隔に応じ入期)後に毎月経過観察を行い,再発時に投与するCproて治療を行う個別化治療が望まれる.PRN法は再発間renata(PRN)法が試みられ,投与回数が少なく視力成隔に応じ治療する個別化治療だが,厳密に行われないと績が毎月投与と同等なため広く行われた.しかし,実臨過少治療による視力低下を避けられない.そこで,再燃床に近い形のCPRN法で行われたCSEVEN-UP試験では,前の投与と個別化治療の両立をめざし,投与時に滲出が治療開始からC7.3年で治療開始時よりCETDRS視力でなければ次回までの投与間隔を延長し,再燃があれば短8.6文字悪化し,厳密に行われないCPRN法では長期間縮するCtreatandextend(TAE)法が考案された.の視力維持が困難なことが明らかとなった.一方,TAE法は,投与間隔を個々の再発間隔に近づけるこVIEW試験でのアフリベルセプトの連続C3回投与後のC2とができ,治療回数,受診回数は毎月投与より少なく,カ月毎投与によるC1年後の視力は,ラニビズマブの毎月視力改善維持効果は毎月投与と同等とされる.しかし,投与と同等であった.SUSTAIN試験では,ラニビズマブのC3回連続投与後,図1再発頻度の低い症例・ポリープ状脈絡膜血管症3回の連続投与後,視力は(0.03)から(1.0)に改善.以後C4年間再発していない.Ca:治療前眼底写真,Cb:フルオレセイン蛍光眼底造影,Cc:インドシアニングリーン蛍光眼底造影,Cd:OCT,Ce:OCT(3回連続投与後),f:OCT(4年後).(87)あたらしい眼科Vol.35,No.6,2018C7950910-1810/18/\100/頁/JCOPY図2再発頻度の高い症例・1型脈絡膜新生血管TAE法でC8週間隔の治療では網膜下液は消失するが,10週に延長すると再発を繰り返す.8週での固定投与とした.Ca:治療前眼底写真,Cb:フルオレセイン蛍光眼底造影,Cc:インドシアニングリーン蛍光眼底造影,d:OCT,e:OCT(8週間隔),f:OCT(10週間隔).PRN法でC1年目に追加投与を要しなかった症例はC20.5%,1~2回要したものはC33.2%で,これらC53.7%では改善した視力は維持されており,1年目に最低C4回以上の追加投与を要するCTAE法では,最低C50%以上の症例で過剰投与の可能性がある.より良い治療レジメンをめざしてこれらの点を克服するため,さまざまな治療レジメンが提案された.Observeandplan法,最初の再発時からCTAE法を開始する関西医大法1),安川らのCPRNの反応で治療方針を修正する方法2)は,いずれも連続投与後の再発間隔により,以後の治療を個々の疾患活動性に合わせ行う方法で,再発間隔が長い症例への過剰投与を抑え,本来の再発間隔に近い治療を早期に実現できる.さらに病態から最適な治療法を推測するために,Ashraf3)らは文献的考察から,3回投与後の滲出性変化の状態と,滲出の状態,色素上皮.離,後部硝子体.離などの形態学的特徴を組み合わせ,TAE法の投与間隔延長速度を調整するレジメンを提唱した.筆者らも形態学的特徴や連続投与後の反応,後述の色素上皮下病変の変化から再発頻度を推察し,連続投与終了後に患者個別にレジメンの選択肢を提示している.再発が頻繁でないと予想されれば,初期に再発間隔を確認後,PRN法もしくはその間隔からのCTAE法とする(図1).頻繁な再発や治療への抵抗が予想されれば,活動性が十分低下するまで連続投与しCTAE法とする.再発頻度が高い場合は,治療間隔の延長は急がず,延長時の増悪を避けるため,固定投与を選択する(図2).視力予後796あたらしい眼科Vol.35,No.6,2018をもっとも重視するが,患者の背景(唯一眼,通院,年齢,経済,全身状態,QOL)も勘案し,患者と納得のいく治療法を選択するよう努めている.今後は脈絡膜病態についても加味する必要があるだろう.おわりに再発間隔に応じた個別化治療を行うため,レジメンの改良とともに,活動性を反映し,再発を予測するバイオマーカーの探索も行われている.最近では,光干渉断層計(OCT)angiographyと疾患活動性の関連が検討されているが,筆者らも,導入期終了後早期の色素上皮下面積・体積を定量し,その増大がC6カ月以内の再発に関連することを報告している4).文献1)OhnakaCM,CNagaiCY,CShoCKCetCal:ACmodi.edCtreat-and-extendregimenofa.iberceptfortreatment-naivepatientsCwithneovascularage-relatedmaculardegeneration.Grae-fesArchClinExpOphthalmol255:657-664,C20172)YasukawaT:Response-basedindividualizedmedicineforneovascularage-relatedmaculardegeneration.ExpertRevOphthalmolC10:105-112,C20153)AshrafCM,CSoukaCA,CAdelmanCRA:Age-relatedCmaculardegeneration:usingCmorphologicalCpredictorsCtoCmodifycurrenttreatmentprotocols.ActaOphthalmol2017[Epubaheadofprint]4)SasakiCM,CKatoCY,CFujinamiCKCetCal:AdvancedCquantita-tiveanalysisofthesub-retinalpigmentepithelialspaceinrecurrentCneovascularCage-relatedCmacularCdegeneration.CPLoSOneC12:e0186955,C2017(88)C

緑内障:器具を留置する流出路再建術

2018年6月30日 土曜日

●連載216監修=岩田和雄山本哲也216.器具を留置する流出路再建術庄司信行北里大学医学部眼科緑内障の分野でもインプラントは広まりつつあり,2012年に認可されたC3種のチューブシャントに続き,2017年には,これらとは使用目的の異なる第C4のインプラント,iStent(Glaukos社,米国)が使用できるようになった.低侵襲緑内障手術(MIGS)の主流ともいえる「器具を留置する流出路再建術」について述べる.C●術式の淘汰最近は米国食品医薬品局(FoodandDrugAdminis-tration:FDA)の審査が厳しくなり,米国での緑内障関連学会よりもヨーロッパでの緑内障関連学会のほうが,新しい技術,製品に触れる機会が増えた.筆者は2012年にグラスゴウで開催された第C6回国際緑内障手術会議(6thCICGS)に参加したが,そのときにはこれまで見たこともないインプラントや術式が紹介されていた.それらのなかから,安全性が高く,操作性も良好で洗練された術式が導入されてきているように思われる.C●Schlemm管に留置するデバイス・iStentトラベキュラーマイクロバイパスステントシステム(iStent)1,2)米国ではC2012年C6月に,わが国ではC2016年C12月に認可を受けたチタン製の眼内ステントで,長さC1.0Cmm,高さC0.33Cmm,シュノーケルの長さC0.25Cmm,内径C120μmのヘパリンでコーティングされている.L字型をしており(図1),長い部分をCSchlemm管に挿入し,留置する.短いシュノーケルが前房側に露出し,その開口部図1iStentの外観L字型の長い部分(ハーフパイプ)をCSchlemm管に挿入する.前房内に露出した短い部分(シュノーケル)から房水がCSchlemm管に流入する.(Glaukos社提供)(85)0910-1810/18/\100/頁/JCOPYから房水がステント内を通り,Schlemm管に流入するようになっている.専用のインサーターとセットで右眼用と左眼用がある.図2は左眼に対してCiStentの挿入を行う直前の写真である.現在,日本眼科学会の指導の下で行われているCiStent講習会を受講し,その後,模擬眼へのインプラントなどのハンズオンや,手術症例の立ち会いを経て使用することができるようになる.適応に関しては,白内障手術併用眼内ドレーン使用要件等基準3)に則って選択されなければならない.海外では複数個の挿入も検討されている2)が,わが国では,水晶体再建術時にC1個だけと定められている.挿入後のCiStentの位置は隅角鏡により確認できるが,当院では前眼部COCT(CASIA2,トーメーコーポレーション)に搭載されているCblebrastermodeのCEn-face画像でも位置を確認することができた(図3).位置の経時的な観察に応用できるのではないだろうか.なお,iStentはすでに第二世代(iStentCinject,図4)が開発されていて,こちらは最初からC2個の挿入用に作図2iStent挿入左眼用のCiStentを挿入するところ.Schlemm管に挿入後,インサーターからリリースし,Schlemm管内にCiStentを留置する.あたらしい眼科Vol.35,No.6,2018C793図3iStentの前眼部OCTによるEnface画像前眼部COCT(CASIA2)に搭載されたCblebrastermodeのCEn-face画像.赤丸で囲まれた部分にCiStentが観察される.られている.・HydrusMicrostent(Hydrus)2,4)Sca.ord-likeimplant,つまり足場のような構造をし,少し弯曲した筒状のインプラントである.ニッケルとチタンの合金で全長がC8Cmmもあり,時間でいえばC3時間分の長さである.それだけCSchlemm管を拡張しても,眼圧下降効果は他のデバイスとほぼ同等のようである4).発売元のCIvantis社(米国)から,2017年C4月に進行例や単独手術(つまり白内障と併用しない)の臨床試験を開始する許可がCFDAから得られたとアナウンスされた.Schlemm管の弯曲に対してうまく収まるのか,とくに,眼圧が下がって眼球が多少歪みやすくなった状況で,ステントの先が線維柱帯や強膜を傷つけ,位置が移動することはないのか,などの懸念はある.その点,ポリイミド製の軟らかいCStegmannCCanalCExpander(OPHTHALMOS社,スイス)5)は,ファイルノートのバインダーのような形状をしており,全長C9mmでHydrusより少し長いものの,Schlemm管内に留置後の安定性はよいのではないだろうか?ヨーロッパでは2012年にCCEマークを取得している.ただし,ホームページ上の手術ビデオでは,眼外からのCcanaloplastyに続けて挿入する方法が紹介されている.C●脈絡膜下腔への流出をうながすインプラント毛様体解離後の低眼圧にヒントを得て開発された方法で,以前はCGoldCMicro-Shunt(SOLX社,米国)1)が注目を集めていたようだが,やはり最近はより小型で挿入も容易なステント類に取って代わられたようである.Cy794あたらしい眼科Vol.35,No.6,2018図4iStentinjectiStentの第二世代にあたるCiStentinjectインサーターには,最初からC2個のCiStentCinjectが装着されている.(Glaukos社提供)PassCMicro-Stent(TranscendCMedical社,米国)1,2,6),iStentSupra(Glaukos社)1,2)が注目されている.C●まとめわが国でC2010年にCTrabectome手術の認可がおりてから,徐々にCMIGSに対する関心が高まり,器具を留置する術式としてCiStentがその先陣を切った.今後,さまざまな術式(デバイス)が控えているが,本当に眼圧下降術が必要なのかどうか,適応は慎重に判断してほしい.と同時に,隅角や房水流出の主経路に関する理解とともに,これらの領域のさらなる研究の進歩を期待したい.文献1)庄司信行:緑内障の新手術C2:MIGSとこれに関連した新しい術式.あたらしい眼科32:813-820,C20152)LaviaCC,CDallortoCL,CMauleCMCetCal:Minimally-invasiveglaucomaCsurgeries(MIGS)forCopenCangleCglaucoma:ACsystematicCreviewCandCmeta-analysis.CPLoSCOneC12:Ce018314,C20173)白内障手術併用眼内ドレーン会議:白内障手術併用眼内ドレーン使用要件等基準.日眼会誌120:494-497,C20164)FeaAM,RekasM,AuL:EvaluationofaSchlemmcanalsca.oldCmicrostentCcombinedCwithCphacoemulsi.cationCinroutineCclinicalCpractice:Two-yearCmulticenterCstudy.CJCataractRefractSurgC43:886-891,C20175)GrieshaberCMC,CGrieshaberCHR,CStegmannCR:ACnewCexpanderCforCSchlemmCcanalCsurgeryCinCprimaryCopen-angleCglaucoma-interimCclinicalCresults.CJCGlaucomaC25:C657-662,C20166)VoldCS,CAhmedCII,CCravenCERCetCal;CyPassCStudyGroup:Two-yearCCOMPASSCtrialCresults:SupraciliaryCmicrostentingCwithCphacoemulsi.cationCinCpatientsCwithCopen-angleCglaucomaCandCcataracts.COphthalmologyC123:C2103-2112,C2016(86)

屈折矯正手術:Epi-onクロスリンキング

2018年6月30日 土曜日

監修=木下茂●連載217大橋裕一坪田一男217.Epi.onクロスリンキング愛新覚羅維アイクリニック大井町東京大学医学部眼科学教室角膜クロスリンキング(CXL)はC2003年にドイツのCWollensak,Seilerらにより開発された治療法で,長波長紫外線(UVA)に対するリボフラビン感受性を利用し,角膜実質コラーゲン線維の架橋を強め,剛性を高める方法である.現在まで世界中でC20万眼以上施術されており,円錐角膜,LASIK後角膜拡張症,ペルーシド角膜辺縁変性などの進行性角膜拡張疾患の進行を抑制するための治療法として有効性と安全性が確立されてきた.近年,合併症がさらに少ないCEpi-on法も開発され,新たな可能性が期待されている.●角膜クロスリンキング(cornealcrosslinking:CXL)の原理370Cnmの長波長紫外線(ultravioletCA:UVA)で励起された光感受性物質であるリボフラビン(ribo.avin)が酸素分子との反応により,活性酸素の一種である一重項酸素を産生する.その結果,角膜実質コラーゲン線維の架橋(crosslink)結合が増加し,角膜全体の強度が高まる(図1).C●標準法の術式Wollensakらが提案したドレスデン法(DresdenCproto-col)は標準法として広く使われている1).手順は図2aに示す.リボフランビンを実質内に浸透させるために,バリア機能の強い角膜上皮を.離する必要があることと,UVAによる角膜内皮障害を予防するために最薄部角膜厚がC400Cμm以上であることが重要なポイントになる.C●Epi.on法の術式標準法の短所として角膜上皮掻爬に伴う疼痛,易感染図2標準法とEpi.on法の比較Epi-on法では角膜上皮を.離する代わりに,強化リボフラビンを用い,リボフラビンを実質内に浸透させる.また,最薄部角膜厚がC380Cμm以上あれば施術可能であり,術後治療用ソフトコンタクトの装用が不要である.a標準法・点眼麻酔・角膜上皮.離性などの合併症があげられ,これを改善させるためにLeccisottiらがC2010年にCEpi-on法(epithelium-onCXL:Epi-onCCXL,transepithelialCCXL:TE-CXL)を開発した.それに対して上皮を.ぐ従来法はCEpi-o.法とよばれるようになった.・等張性0.1%リボフラビン点眼30分・角膜厚測定.400μm以上の場合等張性0.1%リボフラビン点眼.400μm未満の場合低張性0.1%リボフラビン点眼を400μm以上になるまで継続・紫外線照射装置にて370nmのUVAを3mW/cm2の照射強度で30分間照射・治療用コンタクトレンズ装着(83)あたらしい眼科Vol.35,No.6,2018C7910910-1810/18/\100/頁/JCOPY筆者の施設で行っているCEpi-on法のフローチャートを図2bに示す(紫外線照射時は高速法も併用している).Epi-on法では角膜上皮を.離する代わりに,角膜上皮のバリアを破壊し,薬剤の浸透性を上げるケミカルエンハンサーを添加した強化リボフラビンを用い,リボフラビンを実質内に浸透させる.代表的な強化リボフラビン製剤としてCParaCel(Avedro,CUSA)やCRICROLINTE(SOOFT,CItaly)があげられる.筆者は通常,強化リボフラビンをC4分間点眼後,ピュアのリボフラビンを6分間点眼する.また,角膜上皮厚を含めうるため,UVA照射前の最薄部角膜厚はC380Cμm以上あれば施術が可能である.Epi-on法では角膜上皮.離を行わないため,リボフラビンの浸透性がCEpi-o.法よりやや低いが,術後治療用ソフトコンタクトの装用が不要で,低力価ステロイド点眼の短期間使用のみで管理できる.筆者は通常,フルオロメトロンC0.1%とレボフロキサシンC1.5%点眼をC1日C4回,1~2週間使用する.また,適応はC380μm以上(メーカー推奨ではC330Cμmまで可能)と拡大できるため,Epi-o.法で角膜厚がたりない進行症例も適応になる場合がある.さらに,角膜上皮.離に伴う合併症が認められず,術後疼痛も少ないため,視力が良好な初期症例や小児への応用も期待できる.近年,角膜実質へのリボフラビンの浸透性をさらに上げるためにイオン導入法(iontophoresis-assistedCCXL)も開発された.リボフラビンは水溶性の小分子で生理的PH下では陰性に荷電しており,角膜表面に陰性電極,他の部位に陽性電極を置き,弱い電流をかけることによって,リボフラビン分子を角膜実質深層へ浸透させる方法である(図3).C●Epi.on法の適応最薄部角膜厚がC380Cμm以上である必要がある.ただ792あたらしい眼科Vol.35,No.6,2018し,未満の場合は手術時に低張リボフラビンあるいは蒸留水点眼で角膜を膨潤させ,術中測定にてC380Cμm以上に達する場合は適格とする.C●Epi.on法の治療成績Epi-on法は術後回復が早く,合併症もほとんど認められないが,臨床成績は報告によってさまざまである.Epi-onとCEpi-o.を比較したC3年間の無作為比較化試験(randomizedCclinicalCtrial:RCT)では術後C1年では両群間で有意差があるものの,ともに有意な改善,術後C3年ではCEpi-o.群は進行なし,Epi-on群は角膜最大屈折力の進行を認めた2).一方,別のC2年間のCRCTでは両群間で有意差があるものの,ともに術前より有意な改善を認めた3).筆者らはCEpi-on法で治療したC30眼の成績を報告した4).術後合併症はなく,術後C1年の時点で疾患の進行が抑制されたうえに,角膜最大屈折力,角膜平均屈折力,矯正視力の有意な改善も認め,既報の標準法の治療成績に匹敵するものであった.イオン導入法に関して,術後C1年では標準法とほぼ同等な効果が得られた報告がある5).まだ歴史の浅いCEpi-on法の長期成績について,さらなる検証が必要と考えられる.C●おわりにCXLの登場により円錐角膜をはじめとする進行性角膜拡張疾患の治療概念に大きなパラダイムシフトが生まれた.Epi-on法は標準法と比べて効果がやや弱いが,術後合併症および疼痛が少なく,適応もC380Cμm以上と広いため,視力が良好な初期症例,角膜厚が薄い進行症例,小児などへの応用も期待されている.文献1)WollensakG,SpoerlE,SeilerT:Ribo.avin/ultraviolet-a-inducedcollagencrosslinkingforthetreatmentofkerato-conus.AmJOphthalmol135:620-627,C20032)AlCFayezCMF,CAlfayezCS,CAlfayezCY:TransepithelialCver-susCepithelium-o.CcornealCcollagenCcross-linkingCforCpro-gressiveCkeratoconus:ACprospectiveCrandomizedCcon-trolledtrial.CorneaC10:S53-56,C20153)RushCSW,CRushCRB:Epithelium-o.CversusCtransepithelialCcornealcollagencrosslinkingforprogressivecornealecta-sia:aCrandomisedCandCcontrolledCtrial.CBrCJCOphthalmolC101:503-508,C20174)AixinjueluoCW,CUsuiCT,CMiyaiCTCetCal:AcceleratedCtran-sepithelialCcornealCcrosslinkingCforCprogressiveCkeratoco-nus:aCprospectiveCstudyCofC12Cmonths.CBrCJCOphthalmolC101:1244-1249,C20175)VinciguerraP,RomanoV,RosettaPetal:TransepithelialiontophoresisCversusCstandardCcornealCcollagenCcross-link-ing:1-yearCresultsCofCaCprospectiveCclinicalCstudy.CJRefractSurgC32:672-678,C2016(84)

眼内レンズ:バックフローハイドロダイセクション

2018年6月30日 土曜日

眼内レンズセミナー監修/大鹿哲郎・佐々木洋379.バックフローハイドロダイセクション廣田篤広田眼科カニューラを用いたハイドロダイセクション(従来のハイドロ)は,白内障手術を安全で確実に行うために,非常に重要な手技である.しかし従来のハイドロは,手動でシリンジを押すことにより灌流圧を発生させる旧態依然の方法で,それに関連した合併症の報告も多い.より安全で確実に水流.皮質,層間分離を行うバックフローハイドロダイセクションを報告する.●従来のハイドロダイセクション(以下,ハイドロ)従来のハイドロは,効率よく水流.皮質,層間分離を行うために,1992年にCFineが報告した手技である1).しかし,閉鎖空間で灌流圧を手動で発生させるため,前房圧が予想以上に高くなり2),灌流液が後方にトラップされてCcapsularCblockCsyndrome(CBS)を生じたり3),前部硝子体膜(anteriorChyaloidCmembraneCtear:AHMT)を破って前房の細菌などが後方に入り,眼内炎の原因となること4)が報告されている.また従来のハイドロでは,虹彩下に灌流水が迷入して創口から虹彩脱出が起こることがあり,術後の瞳孔不整や虹彩萎縮を引き起こすことがある.とくに術中虹彩緊張低下症候群(intraoperativeC.oppyCirisCsyndrome:IFIS)や浅前房の症例では,虹彩が脱出しやすく,水流.皮質,層間分離が不十分であったり,縮瞳が生じたり,さらなる虹彩脱出が起こり,手術自体がむずかしくなる.C●灌流ハイドロダイセクションとSleevedハイドロダイセクション従来のハイドロの欠点を補うために,いくつかの方法が考案された.2014年にCMasudaらは従来のハイドロを行わないhydrodissection-freeCphacoemulsi.cationCsurgery(灌流ハイドロ)を報告した.Divide&Conquer法で核を2分割した後に,スリーブからの灌流で水晶体後部から水流.皮質分離を行う方法で,眼圧の上昇がなく,従来のハイドロに関連した合併症を回避できる5)としている.2016年に禰津は,IAやCUSで使用するシリコンスリーブをハイドロカニューラに被せて,水流.皮質,層間分離を行うCSleevedハイドロを報告した.IAやCUS時のようにスリーブで創口を塞ぐことができ,虹彩が創(81)0910-1810/18/\100/頁/JCOPY図1バックフローハイドロダイセクションの接続方法と手術写真上:洗浄用のコネクター(.)で白内障手術装置の灌流チューブを従来のCIAハンドピースの吸引側につなぐ.従来の灌流側は開放したままとする.中:通常の接続(左)ではスリーブ先端から灌流液が排出されるが,コネクターを使った接続(右)では従来の吸引口から灌流液(.)が勢いよく排出される.下:IAハンドピースのチップ先端の吸引口を前.切開縁の内側にあて,下方から水晶体赤道部方向に灌流を行って,水流.皮質,層間分離を行う.青色の矢印まで水流分離が進んでいる.口から出にくくなり,さらにスリーブの内腔を通って眼内の余分な灌流液や粘弾性物質が排出されて自己閉鎖機序が起こらず,眼圧の上昇や従来のハイドロに関連したあたらしい眼科Vol.35,No.6,2018C789側面から見たシェーマ前面から見たシェーマ図2バックフローハイドロダイセクションの灌流のシェーマAIハンドピースの先端(従来の吸引口)からの灌流()で水流.皮質,層間分離が生じ,余分な灌流液はスリーブの側面(従来の灌流口)から排出される().合併症がなくなる6)としている.C●バックフローハイドロダイセクション筆者は,より簡便で確実な水流.皮質,層間分離法として,バックフローハイドロを考案した.IAハンドピースの後方の吸引側に,本来洗浄のときに用いるコネクター(いわゆるメス・メス)を用いて灌流チューブを接続する.IAハンドピースの従来の灌流側はフリーにして何もつながない(図1).連続円形前.切開後に,このCIAハンドピースのチップ先端の本来の吸引口を前.切開縁の内側に当てて,下方~水晶体赤道部方向に向けて灌流を行い,水流.皮質,層間分離を行う.このとき,スリーブの内腔を通って眼内の余分な灌流液や粘弾性物質はCIAハンドピース後方から排出される(図2).灌流圧は重力落下ではC100Ccm,空気加圧システムを用いる場合はC60~80CmmHg+重力落下C30Ccmで行った.バックフローハイドロには以下のような利点が考えられる.①洗浄用のコネクター以外に特別な準備は必要なく,手術の流れを変えることがない.②フットスイッチで灌流をコントロールできるため,手元が安定する.③十分な灌流であるにもかかわらずスリーブの内腔を通して余分な灌流液が排出されるため,眼内圧が上昇せず,従来のハイドロに関連した合併症は生じない.吸引口と排液するスリーブ先端の開口部の大きさを比べると,バックフローハイドロ中に眼内圧は上昇しないと考えられるが,実際に術中に前房が急に深くなったり,眼圧上昇による痛みを訴える症例はなかった.④スリーブが存在するために,創口からの虹彩脱出の危険性がない.⑤前房中の粘弾性物質を残すことができる.C●まとめバックフローハイドロは,従来のハイドロやその他の方法に比べ簡便であること,十分な灌流で確実にハイドロができること,眼内圧が上がらず安全であることなどから,有用な水流.皮質,層間分離法と考えられる.ハイドロが困難な角膜混濁の症例や小瞳孔の症例,IFISや浅前房など虹彩が脱出しやすい症例などにも有効で,手術初級者からベテランまで幅広い術者に推奨する.文献1)FineCIH:CorticalCcleavingChydrodissection.CJCCataractCRefractSurgC18:508-512,C19922)KhngCC,CPackerCM,CFineCIH:IntraocularCpressureCduringCphacoemulsi.cation.CJCCataractCRefractCSurgC32:301-308,C20063)MiyakeCK,COtaCI,CIchihashiCSCetCal:NewCclassi.cationCofCthecapsularblocksyndrome.JCataractRefractSurgC24:1230-1234,19984)KawasakiCS,CTasakaCY,CSuzukiCTCetCal:In.uenceCofCele-vatedintraocularpressureontheposteriorchamber-ante-riorhyaloidmembranebarrierduringcataractoperations.ArchOphthalmolC129:757-757,C20115)MasudaY,TsuneokaH:Hydrodissection-freephacoemul-si.cationsurgery:mechanicalcorticalcleavingdissection.JCataractRefrectSurgC40:1327-1331,C20146)禰津直久:Sleevedハイドロダイセクション.あたらしい眼科33:61-62,C2016

コンタクトレンズ:コンタクトレンズ装用とQOV

2018年6月30日 土曜日

提供コンタクトレンズセミナーコンタクトレンズ処方さらなる一歩監修/下村嘉一44.コンタクトレンズ装用とQOV高静花大阪大学大学院医学系研究科視覚先端医学寄附講座●はじめに屈折異常の矯正手段であるコンタクトレンズ(CL)に求められるものとして,安全性,利便性,視機能があげられる.このなかでも,安全性,利便性については,開発当初に比べかなりの進歩が認められるが,視機能については,大部分のCCL装用者で良好な矯正視力が得られているということもあり,その次として考えられることが多かった.CLは眼表面上で動く光学デバイスであり,装用時の視機能にはさまざまな因子が影響する.従来,CL装用時の見え方の評価は視力検査のほか,自覚症状に基づいて行われるものが多かったが,各種視機能検査の発展により,従来の視力検査では検出できない微妙な視機能評価や他覚的評価が可能になった.評価項目として,従来の視力のほかにコントラスト感度,波面センサーによる高次収差,角膜トポグラファーによる角膜不正乱視,前方散乱,実用視力などがあげられる.以下にレンズの水濡れ性・素材とソフトコンタクトレンズ(SCL)装用時の視機能評価法を紹介する.C●CL装用とQOVSCL装用者のC50~80%以上が,装用時の乾燥感や見えにくさなどのドライアイ症状を訴えることが国内外よ瞬目(sec)1234従来型レンズ保湿型レンズり報告されている.レンズの水濡れ性低下は乾燥感症状をもたらし,また眼光学的特性の低下にもつながり,それは「見えにくい」という症状をもたらす.各レンズメーカーの努力があって,水濡れ性を向上させたレンズが登場した.保湿成分を添加したレンズ,シリコーンハイドロゲルレンズである.図1に,従来型ハイドロゲルレンズ「ワンデーアキュビューCR」(素材:eta.lconCA,ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社ビジョンケアカンパニー)装用時と,保湿成分添加型ハイドロゲルレンズ「ワンデーアキュビューCRモイストCR」(素材:eta.lconCA,ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社ビジョンケアカンパニー)装用時の見え方を示す.波面センサーを用いて高次収差連続測定したところ,従来型レンズ装用時には瞬目後,時間が経過とともに見え方が悪化しているのに対し,保湿成分添加型レンズ装用時には瞬目後の見え方が安定している.また,図2にハイドロゲルレンズ「2ウィークアキュビューR」(素材:eta.lconA,ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社ビジョンケアカンパニー)装用時と,シリコーンハイドロゲルレンズ「アキュビューCRオアシスCR」(素材:seno.lconCA,ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社ビジョンケアカンパニー)装用時の見え方を示す.ハイドロゲルレンズ装瞬目56789図1従来型のハイドロゲルレンズ(従来型レンズ)装用時と保湿成分添加型ハイドロゲルレンズ(保湿型レンズ)装用時の高次収差および網膜像の変化(文献C1から引用)(79)あたらしい眼科Vol.35,No.6,2018C7870910-1810/18/\100/頁/JCOPY瞬目(sec)1234ハイドロゲルレンズシリコーンハイドロゲルレンズ用時には瞬目直後からシミュレーションの網膜像がぼけているのに対し,シリコーンハイドロゲルレンズ装用時には見え方が安定しているのがわかる.このように,レンズの保湿成分,素材は視機能に影響する1).さらに,架橋剤の増加や製造方法の最適化によりレンズの水濡れ性の改善を図った毎日交換型シリコーンハイドロゲルレンズ「ワンデーアキュビューCRオアシスCR」(素材:seno.lconCA,ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社ビジョンケアカンパニー)について,従来のC2週間交換型の同素材レンズ「アキュビューCRオアシスR」との比較をコントラスト感度の測定により行ったところ,毎日交換型のほうが有意に高かった.また,両者のコントラスト感度の差は,屈折度数でC1段階程度(0.25D)の改善を示したことから,レンズの配合比率や製造方法の最適化は自覚的な見え方の質の改善として認知されることが示唆される.そのほか,カラーCCL装用時の視機能をクリアCCL装用時と比較した研究2)によれば,暗所時ではカラーCCL装用時の高次収差が有意に高いこと,またカラーCCLのフィッティングが悪いと明所時でも高次収差が有意に高くなることが報告されている.また,SCLの球面収差補正効果を,球面レンズと非球面レンズにおいて度数別に調べた研究3)によれば,球面レンズ装用時には+1.0D瞬目よりプラス寄りで「正」,+1.0Dよりマイナス寄りで「負」の球面収差補正量を示したのに対し,非球面レンズ装用時にはレンズ度数で大きく変わらなかった.このことから,球面レンズではレンズ度数により球面収差補正効果が変化し,とくに遠視や強度近視で顕著になるが,非球面レンズではレンズ度数で大きく変わらないといえる.C●おわりにこのように,CL装用時に影響を及ぼす多様な因子について,各種視機能検査を用いてさまざまな評価がなされている.今後,装用者の眼の健康を守り,ライフスタイルに合わせて良好な視機能が得られるCCLを処方していくうえで,各種CCLの視機能評価は重要と考えられる.文献1)KohCS,CHigashiuraCR,CMaedaCN:OverviewCofCobjectiveCmethodsforassessingdynamicchangesinopticalquality.EyeContactLensC42:333-338,C20162)TakabayashiCN,CHiraokaCT,CKiuchiCTCetCal:In.uenceCofCdecorativeClensesConChigher-orderCwavefrontCaberrations.CJpnJOphthalmolC57:335-340,C20133)KohCS,CMaedaCN,CHamadaCTCetCal:E.cacyCofCsphericalCaberrationCcorrectionCbasedConCcontactClensCpower.CContLensAnteriorEye37:273-277,C2014CPAS106

写真:画像鮮明化ソフトによる涙液層破壊パターンへの応用

2018年6月30日 土曜日

写真セミナー監修/島﨑潤横井則彦409.画像鮮明化ソフトによる涙液層福岡秀記横井則彦京都府立医科大学大学院医学研究科破壊パターンへの応用視覚機能再生外科学dimplebreakspotbreakareabreak図1画像鮮明化ソフトウェア処理前の画像dimplebreakspotbreakareabreak図2ドライアイ患者のフルオレセイン染色画像(画像鮮明化ソフトウェア処理後)多数の涙液層破壊像を認める.画像鮮明化ソフトウェア処理後の画像では,角膜全面の涙液層破壊像のほか,結膜の皺襞や角膜輪部と瞼裂斑部の点状表層角膜症が明確になった.C眼裂斑部のSPK涙液破壊像SPK結膜皺襞涙液破壊像角膜全面のSPK図3図2のシェーマ点状表層角膜症(super.cialpunctatekeratopathy:SPK)C(77)あたらしい眼科Vol.35,No.6,20187850910-1810/18/\100/頁/JCOPY016年にドライアイの定義および診断基準の改定が発表された1,2).その改定には,涙液層破壊時間(break-uptime:BUT)短縮型ドライアイに代表されるように,涙液層の安定性の低下こそがドライアイの本質であるという考え方がベースにある.涙液層の安定性の評価にはフルオレセインのCbreak-uptimeの測定が重要である.改定には含まれていないものの,涙液層の破壊パターンの評価からドライアイのサブタイプを診断する眼表面の層別診断(tear.lmori-entedCdiagnosis:TFOD)と層別治療(tearC.lmCorient-edtreatment:TFOT)の重要性が提唱されている.涙液層の液層には,ゴブレット細胞から分泌されるMUC5ACを主体とする分泌型ムチンが水分を保持する形で混じり,涙液層の安定性向上にかかわり,角結膜上皮細胞表面の膜型ムチンは眼表面の水濡れ性維持にかかわり,なんらかの原因によりバランスが崩れたときに涙液破壊が生じるとされる.この涙液層の破壊パターンは,通常広く臨床で用いられているフルオレセイン染色による観察が主である.フルオレセイン染色には最大吸収波長がC494Cnm(青色),励起蛍光波長がC521Cnm(緑色)のフルオレセインナトリウムを用いる.ドライアイにおいては,バリア機能の低下した角膜上皮の障害部位や角結膜の点状表層角膜症(super.cialCpunctateCkeratopathy:SPK)が検出できるほか,涙液層の液層の厚みやその動態観察が可能である.角結膜上皮の障害部位や涙液層の破壊パターンの観察には,強い青色波長の光の照射が必要となる3).それに加え,涙液層の破壊パターンは開瞼後のフルオレセインで染色された液層の動態のなかで鑑別されるものであり,熟練した技術が必要である.今回,画像鮮明化ソフトウェア「softDEF」(ロジックアンドシステムズ)によるドライアイ患者の眼表面の上皮障害や涙液層破壊パターン鮮明化技術の可能性を示した(図1~3).画像鮮明化処理ソフトウェアとは,デジタルの画像からオリジナリティを保持した状態で画像にソフト独自の処理を行うことで,画像全体を人間の眼に見えやすいように強調する技術である.具体的には,霧や煙の除去のほか,監視カメラの不得意とする暗所映像,逆光や半逆光映像の鮮明化など,さまざまな領域で応用され,他の領域への転用も期待される技術である.ドライアイの涙液層破壊パターンは大きく五つに分類できる.角膜上皮の水濡れ性低下によると考えられる開瞼直後にみられる類円形のCspotCbreak,水濡れ性低下により角膜上方への涙液の移動途中でみられるCdimplebreak,高度の涙液減少によると考えられる開瞼直後より涙液層の形成が得られないCareaCbreak,軽症から中等症の涙液減少によると考えられる角膜下方にみられる線状の涙液層破壊であるClinebreak,涙液の水分の蒸発亢進によると考えられ開瞼後に涙液層が完全に形成されてからその破壊がみられるCrandombreakである4).画像鮮明化ソフトウェアにより涙液層の破壊部位が明瞭に区別されるため,ドライアイ症例の涙液層破壊パターンの分類にこの処理は有用であると筆者らは考えている.文献1)島﨑潤,横井則彦,渡辺仁ほか:日本のドライアイの定義と診断基準の改定(2016年版).あたらしい眼科C34:C3-8,C20162)TsubotaK,YokoiN,ShimazakiJetal:NewperspectivesonCdryCeyeCde.nitionCandCdiagnosis:ACconsensusCreportCbytheAsiaDryEyeSociety.OculSurfC15:65-76,C20173)BadaroE,NovaisEA,PenhaFMetal:Vitaldyesinoph-thalmology:ACchemicalCperspective.CCurrCEyeCResC39:C649-658,C20144)YokoiCN,CGeorgievCGA,CKatoCHCetCal:Classi.cationCof.uoresceinbreakuppatterns:Anovelmethodofdi.eren-tialCdiagnosisCforCdryCeye.CAmCJCOphthalmolC180:72-85,C2017C

総説:緑内障の薬理学

2018年6月30日 土曜日

あたらしい眼科35(6):775.783,2018c第28回日本緑内障学会須田記念講演緑内障の薬理学PharmacologyofGlaucoma吉冨健志*はじめに日常診療で緑内障患者への薬物治療を考えるときには,眼圧の経過や副作用の状況が臨床家にとっては重要である.そして多くの薬剤の中から患者に最適なものを選択し,病状とともに追加,変更してゆく流れになっている.このように臨床医としての立場からの考え方は,薬剤の作用を考えるときには,薬剤が緑内障の病態とそれに関係する眼の組織にどのように作用するかに集中している.一方で薬理学という学問は生体と薬物の相互作用を調べることが目的で,薬物が疾患にどのように作用するかについてではなく,生体のどの分子(受容体)に作用するかを調べる学問である.したがって,臨床系で考える薬物の作用と副作用という概念は,薬理学にはない.つまり,臨床学的に考えるCb遮断薬の眼圧下降という作用と,点眼によってまれに発症する喘息発作誘発という副作用は,薬理学的には毛様体と気管支平滑筋に存在する同じCb受容体に対する作用であり,基本的に区別はない.筆者は,九州大学院生のときに眼科学教室を離れ,薬理学教室でC3年間研究に没頭した経験がある.臨床では患者の治療に集中し,薬剤の作用も一人一人の患者の症状から考えてゆくが,基礎薬理学は,薬剤について患者ではなく,さまざまな分子,受容体に対する作用を調べてゆく学問である.そして,このような学問が新しい薬剤の開発につながってゆくのであるから,これもまた広い意味で患者の治療につながってゆく学問であるといえる.緑内障の治療薬は多数あり,その作用機序について眼科学の視点からは数多くの知見が得られている.今回は,普段あまり考えない薬理学の視点からみた緑内障治療薬について解説する.CI薬理学研究の原点,ミドリンPRの作用機序平滑筋薬理について世界的研究を行っていた薬理学教室で,筆者が最初に手がけた研究は瞳孔の平滑筋に関与するもので,これが筆者の研究としての原点となっている.眼科学と薬理学からみた薬剤の違いについて瞳孔にかかわるものについて提示する.ミドリンCPCRの作用機序については,散瞳を惹起する薬剤で,フェニレフリン単剤の点眼薬であるネオシネジンRや,トロピカミド単剤の点眼薬であるミドリンCMCRよりも大きな散瞳を惹起するものというのが,眼科学的な見地からの薬剤の理解であると考える.しかし,薬理学的にはトロピカミドは副交感神経遮断薬で,フェニレフリンはCa受容体作動薬である.薬剤の作用を薬理学的に理解するためには,副交感神経とCa受容体が散瞳にどのようにかかわっているかを解明することが重要で,たとえば副交感神経は瞳孔括約筋を収縮させる作用と同時に,筆者の研究で瞳孔散大筋を弛緩させる作用があることが明らかになっている1,2).したがって,副交感神経遮断は,瞳孔括約筋の収縮を抑制すると同時に瞳孔散大筋の弛緩も抑制する.一方で,Ca受容体刺激は瞳孔散大筋を収縮させると同時に瞳孔括約筋への収縮作用もわずかにあることも筆者は明らかにした1,3).したが*TakeshiYoshitomi:秋田大学大学院医学系研究科医学専攻病態制御医学系眼科学講座〔別刷請求先〕吉冨健志:〒010-8543秋田市本道C1-1-1秋田大学大学院医学系研究科医学専攻病態制御医学系眼科学講座0910-1810/18/\100/頁/JCOPY(67)C775図1瞳孔括約筋,瞳孔散大筋の神経支配とa,b受容体の作用ミドリンCPCRは,瞳孔括約筋に対して副交感神経による収縮の抑制とCa受容体刺激によるわずかな収縮,瞳孔散大筋に対しては副交感神経による弛緩の抑制とCa受容体刺激による強い収縮があり,これらの総合作用で散瞳を引き起こす.ってミドリンCPCRは,瞳孔括約筋に対しては副交感神経による収縮の抑制とCa受容体刺激によるわずかな収縮作用,瞳孔散大筋に対しては副交感神経による弛緩の抑制とCa受容体刺激による強い収縮作用があり,これらの総合作用で散瞳を引き起こすわけである(図1).CIIb遮断薬の薬理作用1.b遮断薬の眼圧に対する薬理作用a.眼圧日内変動瞳孔の研究を薬理学教室で行ったのち,筆者はCYale大学のCSears教授の下で眼圧の日内変動に関する研究を行った.眼圧の日内変動は臨床でも重要な要素であり,外来で眼圧測定している時間以外で高眼圧を示す患者の存在は,悩ましい問題である.眼圧に日内変動があることは,1904年にCMaslenikovらによって報告されており,1981年にCRowlandらは眼圧の日内変動に関する動物モデルを始めて報告した4).これはウサギをC12時間暗室,12時間明室というリズムで飼育すると,眼圧は明室で低く,暗室で高いという一定のリズムをもつようになるもので,このリズムは飼育室の明かりをC24時間消しても変化しないので,光に対する反応ではなく,体内時計によって制御されたものである.また,体内時計の中枢は視交叉上核にあるとされている.筆者らはこのモデルを用いて,房水産生の日内変動測定をCJones-Mauriceの方法5)に従ってフルオロフォトメトリーを用いて行った.この結果,房水産生にも眼圧とほぼ同様のリズムがあることが明らかとなった6,7).さらに日内変動と交感神経との関係を調べるために,眼圧や房水産生に対する上頚神経切除(CGX)の影響を検討した.その結果,CGXを行うと眼圧および房水産生の日内変動が著明に抑制された8,9).すなわち,ウサギの眼圧および房水産生の日内変動は,おもに交感神経を介して中枢から伝達されている情報で制御されていると考えられた(図2).Cb.交感神経とb受容体の作用b受容体はアドレナリンなどによって活性化すると,結合しているCG蛋白によって細胞膜にあるCadenylate300.60.4250.2020-0.2-0.415-0.60:006:0012:0018:000:006:0012:0018:00Control眼上頚神経節切除眼眼圧日内変動房水産生日内変動図2ウサギの眼圧と房水産生の日内変動正常眼と上頚神経節切除側眼の比較.(文献C9より引用)cyclaseを活性化させ,cAMPを合成させる(図3).日内変動における交感神経の働きからCb受容体およびadenylateCcyclase系に対する影響を詳しく調べる目的で,房水中のカテコラミンおよびCcAMPの濃度の日内変動を測定し,それに対するCCGX,あるいはチモロール点眼の影響も検討した7,8).房水中のノルアドレナリン(noradrenaline:NA)は日中に低く,夜間に高いが,CGXでどちらも消失したので,交感神経末端由来と考えられた9).房水中のCcAMPも日中に低く,夜間に高いが,CGXおよびチモロールで著明に抑制されたので,交感神経系とCb受容体を介したCadenylateCcyclase系への抑制効果が深く関与していると考えられた9)(表1).すなわち,房水産生についてはCadenylatecyclase抑制によって房水産生が抑制されると考えられた10.12).一方でCadenylatecyclase活性物質であるコレラ毒やForskolinが眼圧を下げるというデータも,同じCYale大学のグループから発表されている13,14).すなわち,ade-nylatecyclase抑制によって房水産生が抑制されるはずであるのに,adenylateCcyclase促進によって眼圧が下降するということで,これについては長年謎であった.Forskolinは緑内障治療薬として一時期臨床治験にまで進んだが,ウサギでは有効だったのに,ヒトではあまり効果がなかったともいわれている.しかし,近年CFor-skolinによる眼圧下降作用のメカニズムとして,線維柱交感神経帯の細胞に作用して眼圧を下げるとする報告が出ており15),再び臨床応用を検討する報告もある16).すなわち,adenylateCcyclase活性によって房水流出はおそらく促進されるが,一方で房水産生も促進するという,眼圧にとっては矛盾する作用をもっていると考えられる.したC表1前房中ノルアドレナリンとcAMP濃度の日内変動前房中CcAMP濃度(pmol/ml)の日内変動01:3C0(明)18:0C0(暗)CControlC12.2±2.014C28.7±2.0上頚神経切除(CGX)C19.6±0.7C16.9±0.4CTimololC17.3±1.8C15.4±2.3Cがって,Cb遮断薬の作用としては,毛様体上皮にあるCb受容体と,線維柱帯にあるCb受容体に対する効果を総合して考える必要がある.このように,Cb遮断薬の眼圧下降効果のメカニズムには,薬理学的にはまだよくわかっていないことが存在する.C2.b遮断薬の血流に対する薬理作用b受容体が毛様体と線維柱帯に存在して,さまざまな機能を有しているとすれば,眼内の他の部分にもCb受容体が存在する可能性がある.そのなかで筆者らは,血管平滑筋にもCb受容体が存在すると考え,既存のCb遮断薬の眼循環にかかわる効果を血管標本を用いた薬理学的実験で検討してきた.この研究は厳密には眼循環を測定するのではなく,血管平滑筋に対する薬剤の薬理作用を調べるものである.摘出血管を用いた研究は眼科以外の領域では広く行われており,たとえば冠動脈を摘出した標本を使って冠動脈スパスムの機序の研究,脳血管を用いた脳血管障害の機序の研究などが行われている17.19).しかし,血管平滑筋の性質には臓器特異性があり,他臓器の結果がそのまま眼の血管に当てはまるとは限らない.実験の具体的手法としては,ウサギの毛様動脈を長さC2Cmmにわたって摘出し,微小血管収縮記録装置(MyographCsystem,CJPCTrading,CDenmark)に設置した後,種々の薬剤,あるいは電気刺激による神経刺激に対する機械的反応を等尺性に測定した20,21)(図4).まず,摘出血管にCa作動薬であるフェニレフリンとCb作動薬であるイソプロテレノールを投与して血管の収縮弛緩を確かめたところ,毛様動脈はフェニレフリンで収縮反応を認めたが,イソプロテレノールでは効果がなかった22).すなわち,基本的にCb受容体は毛様動脈ではあまり機能していないと考えられた.しかし,それにもかかわらず現在までにさまざまなCb遮断薬で眼血流の増加作用が報告されている.レーザースペックルを用いた研究では,カルテオロール,ベタキソロール,ニプラジロール点眼で視神経近傍の眼血流が増加することが報告されている23,24).筆者らはウサギ摘出毛様動脈血管を高カリウム溶液で収縮させた状態でこれらの薬剤を投与した際に,どの程度の弛緩作用をもっているかを評価した(図5).まず,カルテオロールについて検討を行ったが,血管弛緩作用は見いだされなかった22).しかし,この薬剤はCinCvivoでは血流増加作用をもつという報告が多数存在する23.25).もしそれが正しいとすれば,この薬剤の血流に対する作用は血管平滑筋に対する作用ではなく,中枢などを介した間接的な作用と考えられる.ベタキソロールは,毛様動脈を濃度依存性に弛緩させたが,これはこの薬剤のもつCb受容体遮断作用ではなく,カルシウム拮抗薬様の作用のためと考えられた22).チモロールは毛様動脈に対してはベタキソロールと比較すると弱い弛緩作用しかもっていなかった22).ただ,この弛緩作用のメカニズムについては,やはりカルシウム拮抗薬様の作用のためと考えられた26).b遮断作用に関してはチモロールとベタキソロールに大きな差はないと考えられるので,この点からも血管弛緩作用とCb遮断作用が関係のないことが示唆される.ニプラジロールはベタキソロールよりもかなり強い弛緩反応を有しており,その作用機序もまったく異なっている.この薬剤はニトログリセリン様の作用を併せもっており,薬剤に含まれるニトロ基よりCNOを放出するCNO-Donorとして血管弛緩作用を有すると考えられる27).ニプラジロールの血管弛緩作用がL-NAMEでも内皮擦過除去でも抑制されないにもかかわらず,NO除去剤であるCcarboxy-PTIOで抑制されるところから明らかとなっている.さらにこの薬剤はCa受容体拮抗薬としての作用も知られており,これもアドレナリン投与で収縮作用を有するこの血管の性質から,血管弛緩作用に結びつく可能性が示唆される.さらにレボブノロールは,Cb遮断薬のなかでもっとも強力な弛緩反応を示している.この薬剤は,細胞内のCCaC2+濃度に影響を与えることなく,収縮を抑制する作用があるところから,血管平滑筋のCCa感受性を抑制することによる血管弛緩作用をもっていると考えられるが,詳細なメカニズムは不明である28).このように同じCb遮断薬であっても,血管に対する作用はまったく異なる薬理作用にウサギ毛様動脈Mechano-Transducer図4ウサギ毛様動脈を単離して,収縮,弛緩を測定する装置30μM100μM300μM1μM10μM30μMNipradilol100μMCarteolol1mM300μM1mM15min5mN5mN10min30μM100μM300μMBetaxolol1mMLevobunolol30μMHighK+Solution15min5mN1μM10μM100μM30μM100μM300μM300μM1mM5mN15minTimolol15min4mN図5毛様動脈血管平滑筋に対する各種b遮断薬の効果同程度の眼圧下降効果であることが知られているが,血管に対する作用は薬剤間で非常に異なる.よって生じていることが明らかになった.さらにレーザースペックルなどの機器を用いた眼循環に対する薬剤の効果をCinCvivoで検討した報告と,今回のCinCvitroの結果にはいくつか乖離があり,Cb遮断薬の眼循環に対する作用メカニズムも,薬理学的にはまだよくわかっていないことが存在する(表2).CIII毛様動脈血管平滑筋の神経支配ウサギの毛様動脈を電気刺激すると収縮反応が得られる.この収縮はCa1受容体拮抗薬であるブナゾシンの投与によって抑制された.すなわち,電気刺激によって起こるこの収縮は,アドレナリン作動性神経(交感神経)表2各種b遮断薬の血管平滑筋に対する作用機序わずかに収縮Cほとんど効果なしC電位依存性CCaC2+チャネル抑制による弛緩Cnipradilol分子の一部であるCNOによる弛緩とCa遮断作用CCa2+感受性抑制による弛緩Cによるものである.一方,ヒスタミンを投与してこの血管を収縮させた状態で電気刺激を行うと,血管弛緩反応が出現するが,この弛緩反応は血管内皮を除去した状態でもCL-NAME(一酸化窒素(NO)合成阻害薬)を投与することによって消失した.この結果はウサギの毛様動NONA血管平滑筋弛緩収縮aNO血管内皮副交感神経AChLatanoprostUnoprostoneTravoprost1μM3μM10μM1μM3μM1μM3μM10μM30μM10μM30μM30μM4mN10minHigh-KSolutionHigh-KSolutionHigh-KSolutionTa.uprost1μM3μM10μMBimatoprost1μM3μM10μM30μM100μM30μMHigh-KSolutionHigh-KSolution図7毛様動脈に対するPG関連薬の効果これも各薬剤で効果が異なっている.脈がC2種類の神経支配を受けていることを示している29).すなわち,収縮をコントロールする交感神経と,弛緩をコントロールする神経(この神経の起源は明らかではないが,NOを伝達物質とする神経)の二重支配である(図6).このような神経支配はサルの血管でも見いだされている30).このような神経に薬剤が影響して血管平滑筋に作用することもあり,緑内障治療薬の眼循環への作用機序を考えるときには,このようなことも考慮に入れる必要がある.交感神経でも副交感神経でもない神経交感神経図6毛様動脈血管平滑筋の神経支配血管平滑筋は交感神経と正常眼圧緑内障を化学伝達物質とする交感神経でも副交感神経でもない神経に支配されている.CIVプロスタグランジン関連薬の血流に対する薬理作用さまざまなCb遮断薬の血管平滑筋に対する薬理作用を検討してきたので,ウノプロストンを含めたプロスタグランジン関連薬についても検討してみた.血流増加作用については報告もあるが31),血管弛緩作用はやはり薬剤間で差があることがわかった32.35)(図7).興味深いことに,一部のプロスタグランジン関連薬でその代謝物を用いて実験を行ったところ,代謝物は血管弛緩作用をもたないことが明らかになった.角膜を通過するときに薬剤はほとんどすべてが代謝されて代謝物として前房内に存在する.したがって,点眼薬が血流を増加させるとすれば,それは眼球内に存在する代謝物としてではなく,眼球内に入らず結膜から眼球を迂回して非代謝物として後眼部に至るルートが想定される36).さらに,プロスタノイド(FP)受容体をノックアウトしたマウスではプロスタグランジン関連薬の眼圧下降効果はないにもかかわらず,血管に対する作用はあまり影響を受けないところから,これらの薬剤の血管に対する作用機序にCFP受容体が関与しておらず,眼圧下降作用とまったく異なる作用機序であることが明らかになった37).現在はこれらの薬剤の血管弛緩は容量性カルシウムチャネルを介した細胞外のCCa流入阻害によると考えている15).ManometerValve75mmHgBu.erColumn10mmHg35mmHg75mmHgHeightgas101.2cm35mmHgbubble10mmHggas47.2cmbubblegas13.5cmbubble103575mmHg30℃Waterbathラット眼杯標本図8exvivo眼杯標本に対する加圧の効果invivoとCinvitroの中間に位置するCexvivo眼杯標本を作製し,静水圧で加圧すると,10mmHg,35CmmHgで加圧しても変化はないが,75CmmHgで加圧すると,神経節細胞の軸索が腫脹する.(文献C40より引用)AlloP24(S)-HC75mmHg75mmHg75mmHg75mmHgAlloP1μM1μM24(S)-HC図9加圧による軸索腫脹に対するAlloP,24(S).HCの効果75CmmHgで神経節細胞の軸索の腫脹(矢頭)が認められるが,培養液中にCAlloPを添加したものでは,軸索の腫脹が抑制されている.同じようにC1μMのC24(S)-HCを培養液中に添加するとC75CmmHgでみられた軸索の腫脹が抑制されている.(文献C40より引用)CV神経ステロイドの神経保護作用き,加圧で神経節細胞の軸索が腫脹する(図8).神経ステロイド(neurosteroid:NS)は,1980年代に現在,本学の石川誠が中心となって,筆者らはラッE.Baulieuによって命名された,神経系においてコレスト分離眼杯標本を高圧下で培養する実験系(exCvivo加テロールから合成されるステロイド・ホルモンの総称で圧実験系)を独自に開発して,眼圧上昇時における神経ある.中枢神経系における神経伝達においては,興奮性ステロイドの神経保護効果を検討している.ExCvivo眼神経伝達物質であるグルタミン酸と興奮抑制性伝達物質杯標本は,網膜を構成する細胞間のネットワークを保持であるCg-アミノ酪酸(gamma-aminobutylicCacid:し,少なくともC24時間,生理活性を維持することがでCGABA)が主体であり,正常な神経細胞の機能維持のたCめには,グルタミン酸伝達系とCGABA伝達系のバランスが重要と考えられる.神経ステロイドは,これら二つの神経伝達系と密接なかかわりをもち,神経の興奮性を調節することが知られている.網膜においては,グルタミン酸は視覚情報主経路(視細胞-双極細胞-神経節細胞)における主要伝達物質であり,GABAは視覚情報主経路に対して,水平細胞・アマクリン細胞を介して興奮抑制性に作用する.グルタミン酸受容体に作用するCNSの代表がC24S-hydroxycholesterol(24SH)であり,GABA受容体に作用するCNSの代表がCAllopregnano-lone(AlloP)である.これまで緑内障とCNSに関して,24SHについてCFourgeuxらの報告があるのみで38),AlloPについては報告がなかった.加圧で神経節細胞の軸索の腫脹が発生するが,培養液中にC24SHとCAlloPを添加して,網膜神経節細胞に対する効果を検討した.その結果,加圧傷害時におけるC24SH39)とCAlloP40,41)の神経保護作用が明らかとなった.おわりに筆者の緑内障薬理学的研究について述べた.眼科学の発展には臨床的研究と基礎的研究の両輪が必要である.とくに薬理学的研究は,臨床研究で行われる薬剤に関する研究と区別できない点もあり,しかも利益相反にも関与してもっともやりにくい基礎研究分野である.さまざまな薬剤の薬理作用について,患者にどのような影響があり,治療に影響するかを調べるのが臨床的な考え方であるが,対象臓器に存在する受容体や化学物質に対する作用を調べる基礎的な考え方とはまったく異なっている.今回はさまざまな緑内障治療薬の毛様動脈血管平滑筋に対する作用をまとめてみた.それぞれの薬剤が,眼圧下降作用とは関連のない血管平滑筋細胞に存在する受容体やイオンチャネルにどのような作用を示すかを検討してきたが,これが実際の緑内障患者の視野進行や視機能維持にどのくらい役立つかはこれからの課題である.さまざまな緑内障治療薬が眼圧下降効果と異なる機序で視野維持効果を示している臨床研究は,最近注目されている.薬理学的基礎研究は,臨床では,まったく異なる薬剤と思われていたものが,想像できない疾患の治療薬剤として画期的な薬剤の開発につながることがある.筆者の研究ではできなかったが,将来若い先生方が緑内障患者に対する眼圧下降治療以外の治療の開発につながる研究を続けていただきたいと祈念して擱筆としたい.謝辞:薬理学の恩師,栗山熙先生,眼科学の恩師,猪俣孟先生に深謝申し上げるとともに,筆者が在籍してきた九州大学眼科,九州大学薬理,Yale大学眼科,北里大学眼科,和歌山県立医科大学眼科,秋田大学眼科の先輩,同僚,後輩の皆様に厚くお礼申し上げます.本総説は第C28回日本緑内障学会須田記念講演での講演内容に基づいて執筆した.文献1)YoshitomiT,CItoY:DoubleCreciprocalCinnervationsCinCtheCdogCirisCsphincterCandCdilatorCmuscles.CInvestCOphthalmolCVisSci27:83-91,C19862)YoshitomiCT,CItoCY,CInomataCH:AdrenergicCexcitatoryCandCcholinergicCinhibitoryCinnervationsCinCtheChumanCirisCdilator.ExpEyeResC40:453-459,C19853)YoshitomiCT,CItoCY,CInomataCH:FunctionalCinnervationCandCcontractilpropertiesCofCtheChumanCirisCsphincterCmus-cle.ExpEyeResC46:979-986,C19884)RowlandCJM,CPotterCDE,CRiterCRJ:CircadianCrhythmCinintraocularCpressure:ACrabbitCmodel.CCurrCEyeCResC1:C169-173,C19815)JohnsonCF,CMauriceCD:ACsimpleCmethodCofCmeasuringCaqueousChumorC.owCwithCintravitralC.uoresceinatedCdex-trans.ExpEyeResC39:791-805,C19846)SmithCSD,CGregoryCDS:ACcircadianCrhythmCofCaqueousC.owCunderliesCtheCcircadianCrhythmCofCIOPCinCNZWCrab-bits.InvestOphthalmolVisSciC30:775-778,C19897)GregoryDS:TimololreducesIOPinnormalNZWrabbitsduringthedarkonly.InvestOphthalmolVisSciC31:715-721,C19908)GregoryCDS,CAviadoCDG,CSearsCML:CervicalCganglionec-tomyCaltersCtheCcircadianCrhythmCofCintraocularCpressureCinCNewCZealandCwhiteCrabbits.CCurrCEyeCRessC4:1273-1279,C19859)YoshitomiT,GregoryDS:Ocularadrenergicnervescon-tributetocontrolofthecircadianrhythmofaqueous.owinrabbits.InvestOphthalmolVisSciC32:523-528,C199110)YoshitomiCT,CHorioCB,CGregoryCDS:ChangesCinCaqueousCnorepinephrineCandCcyclicCadenosineCmonophosphateCdur-ingCtheCcircadianCcycleCinCrabbits.CInvestCOphthalmolCVisCSciC32:1609-1613,C199111)NiiCH,CIkedaCH,COkadaCKCetCal:CircadianCchangeCofCade-nylateCcyclaseCactivityCinCrabbitCciliaryCprocesses.CCurrCEyeResC23:248-255,C200112)KiuchiCY,CGregoryCDS:RabbitsChaveCaCcircadianCrhythmCofCaqueousChumorCcyclicCAMP.CCurrCEyeCResC11:935-938,C199213)CaprioliJ,SearsM:Forskolinlowersintraocularpressureinrabbits,monkeys,andman.LancetC30:958-960,C198314)GregoryCD,CSearsCM,CBausherCLCetCal:IntraocularCpres-sureCandCaqueousC.owCareCdecreasedCbyCcholeraCtoxin.CInvestOphthalmolVisSciC20:371-381,C198115)WuCJ,CLiCG,CLunaCCCetCal:EndogenousCproductionCofextracellularCadenosineCbyCtrabecularCmeshworkCcells:Cpotentialroleinout.owregulation.InvestCOphthalmolVisSciC53:7142-7148,C201216)MajeedM,NagabhushanamK,NatarajanSetal:E.cacyandCsafetyCofC1%CforskolinCeyeCdropsCinCopenCangleCglau-coma-Anopenlabelstudy.SaudiJOphthalmolC29:197-200,C201517)GawAJ,BevanJA:Flow-inducedrelaxationoftherabbitmiddleCcerebralCarteryCisCcomposedCofCbothCendothelium-dependentand-independentcomponents.StrokeC24:105-110,C199318)SeebeckCJ,CLoweCM,CKruseCMLCetCal:TheCvasorelaxantCe.ectofpituitaryadenylatecyclaseactivatingpolypeptideandvasoactiveintestinalpolypeptideinisolatedratbasilararteriesCisCpartiallyCmediatedCbyCactivationCofCnitrergicCneurons.RegulPeptC107:115-123,C200219)LiCJS,CKnafoCL,CTurgeonCACetCal:E.ectCofCendothelinCantagonismConCbloodCpressureCandCvascularCstructureCinCrenovascularChypertensiveCrats.CAmCJCPhysiol271:H88-H93,C199620)MulvanyMJ,HalpernW:Mechanicalpropertiesofvascu-larCsmoothCmuscleCcellsCinCsitu.CNatureC260:617-619,C197621)MulvanyCMJ,CHalpernCW:ContractileCpropertiesCofCsmallCarterialCresistanceCvesselsCinCspontaneouslyChypertensiveCandnormotensiverats.CircResC41:19-26,C197722)Hayashi-MorimotoCR,CYoshitomiCT,CIshikawaCHCetCal:CE.ectsofbantagonistsonmechanicalpropertiesinrabbitciliaryCartery.CGraefe’sCArchCClinCExpCOphthalmolC237:C661-667,C199923)TamakiCY,CAraieCM,CTomitaCKCetCal:A.CE.ectCofCtopicalCbeta-blockersConCtissueCbloodC.owCinCtheChumanCopticCnervehead.CurrEyeResC16:1102-1110,C199724)KannoM,AraieM,TomitaKetal:E.ectsoftopicalnip-radilol,CaCbeta-blockingCagentCwithCalpha-blockingCandCnitroglycerin-likeCactivities,ConCaqueousChumorCdynamicsCandCfundusCcirculation.CInvestCOphthalmolCVisCSciC39:C736-743,C199825)SteigerwaltRD,LauroraG,BelcaroGVetal:OcularandretrobulbarCbloodC.owCinCocularChypertensivesCtreatedCwithCtopicalCtimolol,CbetaxololCandCcarteolol.CJOculCPhar-macolTherC17:537-544,C200126)DongCY,CIshikawaCH,CWuCYCetCal:E.ectCandCmechanismCofCbetaxololCandCtimololConCvascularCrelaxationCinCisolatedCrabbitciliaryartery.JpnJOphthalmolC50:504-508,C200627)YoshitomiCT,CYamajiCK,CIshikawaCHCetCal:VasodilatoryCe.ectsofnipradilol,ana-andsadrenergicblockerwithnitricCoxideCreleasingCaction,CinCrabbitCciliaryCartery.CExpCEyeResC75:669-676,C200228)DongCY,CIshikawaCH,CWuCYCetCal:VasodilatoryCmecha-nismCofClevobunololConCvascularCsmoothCmuscleCcells.CExpCEyeResC84:1039-1046,C200729)YoshitomiT,ItoY:Functionalinnervationofbovineoph-thalmicCartery.CGraefe’sCArchCClinCExpCOphthalmolC232:C122-126,C199430)TodaN,TodaM,AyajikiKetal:MonkeycentralretinalarteryCisCinnervatedCbyCnitroxidergicCvasodilatorCnerves.CInvestOphthalmolVisSciC37:2177-2184,C199631)TamakiCY,CAraieCM,CTomitaCKCetCal:E.ectCofCtopicalCunoprostoneoncirculationofhumanopticnerveheadandretina.JOculPharmacolTherC17:517-527,C200132)KurashimaCH,CWatabeCH,CSatoCNCetCal:E.ectsCofCprosta-glandinCF(2Ca)analoguesConCendothelin-1-inducedCimpair-mentCofCrabbitCocularCbloodC.ow:comparisonCamongCta.uprost,Ctravoprost,CandClatanoprost.CExpCEyeCResC91:C853-859,C201033)YoshitomiCT,CYamajiCK,CIshikawaCHCetCal:VasodilatoryCmechanismofunoprostoneisopropylonisolatedrabbitcili-aryartery.CurrEyeResC28:167-174,C200434)IshikawaH,YoshitomiT,MashimoKetal:Pharmacologi-calCe.ectsCofClatanoprost,CprostaglandinCE2,CandCF2aonisolatedrabbitciliaryartery.CGraefe’sArchClinCExpOph-thalmol240:120-125,C200235)DongY,WatabeH,SuGetal:Relaxinge.ectandmech-anismCofCta.uprostConCisolatedCrabbitCciliaryCarteries.CExpCEyeResC87:251-256,C200836)MizunoCK,CKoideCT,CSaitoCNCetCal:TopicalCnipradilol:Ce.ectsConCopticCnerveCheadCcirculationCinChumansCandCperioculardistributioninmonkeys.InvestOphthalmolVisSci43:3243-3250,C200237)AbeS,WatabeH,TakasekiSetal:Thee.ectsofprosta-glandinanaloguesonintracellularCa(2+)inciliaryarter-iesCofCwild-typeCandCprostanoidCreceptor-de.cientCmice.CJOculPharmacolTherC29:55-60,C201238)FourgeuxC,MartineL,BjorkhemIetal:Primaryopen-angleCglaucoma:associationCwithCcholesterolC24S-hydroxC-ylase(CYP46A1)geneCpolymorphismCandCplasmaC24-hydroxycholesterolClevels.CInvesCOpthalmolCVisCSciC50:C5712-5717,C200939)IshikawaCM,CYoshitomiCT,CZorumskiCCFCetCal:24(S)C-HydroxycholesterolCprotectsCtheCexCvivoCratCretinaCfromCinjuryCbyCelevatedChydrostaticCpressure.CSciCRepC6:C33886,C201640)IshikawaCM,CYoshitomiCT,CZorumskiCCFCetCal:NeurosC-teroidsCareCendogenousCneuroprotectantsCinCanCexCvivoCglaucomaCmodel.CInvestCOphthalmolCVisCSciC55:8531-8541,C201441)IshikawaCM,CYoshitomiCT,CCoveyCDFCetCal:TSPOCactiva-tionCmodulatesCtheCe.ectsCofChighCpressureCinCaCratCexCvivoCglaucomaCmodel.CNeuropharmacologyC111:142-159,C2016☆☆☆

トクホや機能性食品としてのサプリメント

2018年6月30日 土曜日

トクホや機能性食品としてのサプリメントSupplementsasFoodsforSpeci.edHealthUsesorFoodswithFunctionClaims川崎佳巳*はじめに内閣府の調査では,約C6割の消費者が健康食品を利用しており,高齢化による健康への不安から利用者は増加傾向にある.健康食品には法的定義はなく,「健康に資する」ことを表示して販売される「食品」の総称であり,分類上は医薬品ではない.健康食品のうち,健康維持増進に役立つ機能表示が認められているものを保健機能食品とよび,特定保健用食品(いわゆるトクホ),栄養機能食品,機能性表示食品のC3種類がある.一方,これらに該当せず販売されているものを「いわゆる健康食品」とよぶ.これら健康食品のうち,錠剤やカプセルなど,見かけが薬に近い形状をしているものを,一般的に「サプリメント」とよぶ.われわれ眼科医が患者に健康食品やサプリメントを利用させる場合,その注意点や判断基準となる基礎知識について解説する.CI保健機能食品とその表示1.特定保健用食品(トクホ)その商品に対して,特定の保健効果が期待できる表示を国が許可した製品.区分として,特定保健用食品,特定保健用食品(疾病リスク低減表示),特定保健用食品(規格基準型),条件付き特定保健用食品があり,図1のマークが付けられる.現在許可されているトクホでは,血糖値,体脂肪,お腹の調子,骨粗鬆症のリスク低減などに関する保健効果が表示できるが,現在のところ眼に図1健康保険用食品のマーク関する保健効果は表示できず,「眼の健康によいトクホ」は存在していない.C2.栄養機能食品ビタミンC13種類,n-3系脂肪酸,ミネラルC6種類の計C20種類の成分に関して,国が認めた基準値に適合した成分量を含むもの(表1).表示には国への許可申請や届け出が必要ない.この「栄養機能食品」というお墨付きの表示をつけ,対象となる成分以外に保健機能があるように見せかけ,販売促進に利用する製品も出回っているので,注意が必要である.C3.機能性表示食品2016年から新たに基準を設けて始まった機能性表示食品制度により,事業者の責任において科学的根拠に基*YoshimiKawasaki:かわさき眼科クリニック〔別刷請求先〕川崎佳巳:〒569-1142大阪府高槻市宮田町C1-29-18たかつき宮田町ビルC3Fかわさき眼科クリニック0910-1810/18/\100/頁/JCOPY(61)C769表1栄養機能食品の規格基準栄養成分1日当たりの摂取目安量に含まれる栄養成分量栄養機能表示栄養成分1日当たりの摂取目安量に含まれる栄養成分量栄養機能表示下限値上限値下限値上限値ビタミンCAは,夜間の視n-3系脂肪酸は,皮膚の健力の維持を助ける栄養素でn-3系脂肪酸C0.6CgC2.0Cg康維持を助ける栄養素でビタミンCAC231CμgC600Cμgす.ビタミンCAは,皮膚や粘膜の健康維持を助ける栄養素です.す.亜鉛C2.64CmgC15Cmg亜鉛は,味覚を正常に保つのに必要な栄養素です.亜鉛は,皮膚や粘膜の健康維持を助ける栄養素です.亜鉛は,たんぱく質・核酸の代謝に関与して,健康のビタミンCBC1C0.36CmgC25CmgビタミンCBC1は,炭水化物からのエネルギー産生と皮膚や粘膜の健康維持を助ける栄養素です.維持に役立つ栄養素です.ビタミンCBC2は,皮膚や粘カリウムは,正常な血圧をビタミンCBC2C0.42CmgC12Cmg膜の健康維持を助ける栄養カリウムC840CmgC2,800Cmg保つのに必要な栄養素で素です.す.ビタミンCBC6C0.39CmgC10CmgビタミンCBC6は,たんぱく質からのエネルギーの産生と皮膚や粘膜の健康維持を助ける栄養素です.カルシウムC204CmgC600Cmgカルシウムは,骨や歯の形成に必要な栄養素です.鉄C2.04CmgC10Cmg鉄は,赤血球を作るのに必要な栄養素です.ビタミンCBC12C0.72CμgC60CμgビタミンCBC12は,赤血球の形成を助ける栄養素です.銅C0.27CmgC6.0Cmg銅は,赤血球の形成を助ける栄養素です.銅は,多くの体内酵素の正ビタミンCCは,皮膚や粘ビタミンCCC30CmgC1,000Cmg膜の健康維持を助けるとともに,抗酸化作用を持つ栄常な働きと骨の形成を助ける栄養素です.養素です.マグネシウムは,骨や歯の形成に必要な栄養素です.ビタミンCDは,腸管でのビタミンCDC1.65CμgC5.0Cμgカルシウムの吸収を促進し,骨の形成を助ける栄養素です.マグネシウムC96CmgC300Cmgマグネシウムは,多くの体内酵素の正常な働きとエネルギー産生を助けるとともに,血液循環を正常に保つのに必要な栄養素です.ビタミンCEC1.89CmgC150CmgビタミンCEは,抗酸化作用により,体内の脂質を酸化から守り,細胞の健康維ナイアシンは,皮膚や粘膜持を助ける栄養素です.ナイアシンC3.9CmgC60Cmgの健康維持を助ける栄養素ビタミンCKは,正常な血です.ビタミンCKC45CμgC150Cμg液凝固能を維持する栄養素パントテン酸は,皮膚や粘です.パントテン酸C1.44CmgC30Cmg膜の健康維持を助ける栄養葉酸は,赤血球の形成を助素です.葉酸C72CμgC200Cμgける栄養素です.葉酸は,胎児の正常な発育ビオチンC15CμgC500Cμgビオチンは,皮膚や粘膜の健康維持を助ける栄養素でに寄与する栄養素です.す.(消費者庁ホームページより)表2トクホと機能性食品の類似点と相違点類似点:特定の保健の目的が期待できることを表示できる.相違点トクホ機能性表示食品企業負担大きい小さい表示ができる機能評価方法が未確立のため現時点では限定的トクホでできなかった機能表示が可能(例:肌の水分,視機能など)審査・許可の手続き・国が個別製品毎に審査許可・最終製品で評価・企業責任で科学的根拠を評価・最終製品または機能性関与成分に関する既存文献のレビューでも可能図2機能性表示食品の表示(消費者庁ホームページより)表3三つの違い医薬品サプリメント製品の品質同じ品質のものが製造と流通「同じ名称」でもまったく品質の異なるものが存在エビデンスの量と質病者を対象とした安全性と有効性の試験が実施済試験管内実験や動物実験が主体病者を対象とした試験はほとんどされていない安全性確認の対象者は健常人利用環境医師薬剤師により安全な利用環境が整備あくまで食品,商品の選択と利用は消費者の自由評価機関=評価機関=日本健康・栄養食品協会日本健康食品規格協会図3GMPマーク図5JHFAマーク本認証制度は安全性、品質の確保を実現するために必要となる検証をその時点での知見に基づき確認したもので、その製品の絶対的な安全性を保証するものではありません。QRコードにより品質・安全性情報の閲覧が出来ます。図4ハイクオリティ認証マーク

緑内障におけるサプリメント治療の可能性

2018年6月30日 土曜日

緑内障におけるサプリメント治療の可能性Anti-OxidantTherapymightbeMoreE.ectiveinGlaucomaPatients檜森紀子*中澤徹*はじめに緑内障は40歳以上の約5%,70歳以上では11%が罹患することが明らかになっている.成人の中途失明原因の第1位であり,加齢に伴って有病率の増える疾患である.日本国民の人口動態の急激な変化に伴い,2040年に65歳以上の高齢者の割合は約40%となると推計されており,今後さらに緑内障有病者が増えることが予想されている.視覚は外界からの情報の80%を占めており,生活の質(QOL)や健康寿命を維持するためにも,失明を予防することは重要である.CollaborativeNormal-TensionGlaucomaStudyで提唱された通り,現在,筆者らは視野保持のために眼圧を30%下降させる眼圧下降に重点を置いて治療しているが,眼圧が十分低いのにもかかわらず視野進行を認める症例は少なくないため,病態に即した新しい治療法の開発が望まれている.緑内障の基本病態である網膜神経節細胞死にかかわる障害因子として軸索障害,慢性虚血,グルタミン酸障害,血流障害,一酸化窒素,ミトコンドリア障害,酸化ストレスがあげられる.近年,緑内障の発症,進行に酸化ストレスが関与することが臨床・基礎研究において報告されている.本稿では酸化ストレスと緑内障の関係,酸化ストレスの発生源になっているミトコンドリアについて,サプリメントなどによる抗酸化治療の可能性について述べる.I酸化ストレスとはわれわれヒトは空気中の酸素を体内に取り入れ,酸素によって得たエネルギーを利用して生命を維持する能力を備えている.しかし,喫煙,過度の飲酒,ストレス,老化は血流を低下させ活性酸素を発生させる原因となる.これに対して生体内は多重な防御機構をもち,活性酸素の消去と障害の抑制・修復を行っている.しかし,防御機構が破綻すると,過剰な活性酸素が生体内の重要な構成成分であるDNA(核酸),蛋白,脂肪(脂質)を酸化的修飾し,機能低下が引き起こされる(図1).生体膜は脂質や蛋白で構成されており,活性酸素による障害は生体膜の構造破壊,蛋白質の酵素作用やレセプター機能に大きな障害を与えることになる.また,核酸が障害を受けると発癌や老化が進展すると考えられている.適量の活性酸素は体内に入ったさまざまな外敵(細菌など)を攻撃するために利用されているが,過度の活性酸素に対し抗酸化力のバランスが崩れることを「酸化ストレス」とよんでいる.酸化ストレスがそれに打ち勝つ力を上回ると多くの疾患(中枢神経変性疾患,悪性疾患,糖尿病,高血圧など)の発症・進行をもたらすと考えられている.*NorikoHimori&*ToruNakazawa:東北大学大学院医学系研究科神経感覚器病態学講座・眼科学分野〔別刷請求先〕檜森紀子:〒980-8574宮城県仙台市青葉区星陵町1-1東北大学大学院医学系研究科神経感覚器病態学講座・眼科学分野0910-1810/18/\100/頁/JCOPY(53)761図1生体における活性酸素の作用a.初期・中期・後期NTGb.初期NTG20尿中8-OHdG(ng/mg・creatinine)15105尿中8-OHdG(ng/mg・creatinine)2015105000510152005101520視神経乳頭組織領域血流(AU)視神経乳頭組織領域血流(AU)図2酸化ストレスマーカーと視神経乳頭血流NTG73例で尿中C8-OHdGと視神経乳頭血流は相関を認め,初期CNTGにおいてとくに強い相関を認めた.Ca.65歳以下男女全体b.65歳以下男性c.65歳以下女性網膜神経節細胞数(cells)網膜神経節細胞数(cells)網膜神経節細胞数(cells)図3抗酸化力と緑内障重症度65歳以下の全緑内障患者においては,抗酸化力(BAP)と網膜神経節細胞数は相関を認めないが(Ca),65歳以下の男性緑内障患者においては,BAPと網膜神経節細胞数は負の相関を認める(Cb).一方,65歳以下の女性緑内障患者においては,BAPと網膜神経節細胞数は相関を認めない(Cc).表1抗酸化物質摂取の臨床研究結果ab生存網膜神経節細胞数(cells/mm2)5,0004,0003,0002,0001,0000生存網膜神経節細胞数(cells/mm2)2,0001,5001,0005000vehicleNrf2vehicleNrf2vehicleNrf2活性剤活性剤活性剤野生型マウス野生型マウスNrf2KOマウス図4Nrf2の神経保護効果の検討無処置野生型マウスではCvehicle投与群とCNrf2活性剤投与群の生存神経節細胞数は有意差を認めないが(a),軸索障害においてCNrf2活性剤投与群は有意な神経節細胞保護効果を認めた(Cb).CDNA障害をきたすと考えられる.ATP産生能の低下,カルシウムイオンの恒常性の破状から細胞死が誘導される.したがって,ミトコンドリア由来の活性酸素を減少させるのは,酸化ストレス機構を制御する際に中心となることが考えられるため,ここでミトコンドリアの役割にも注目したい.上述したように抗酸化剤を摂取することは,活性酸素によるミトコンドリア障害を抑え,これが有効な治療法になる可能性となることが考えられる.CoQ10は脂溶性の生理活性物質であり,動物はCCoQ10を生合成しているだけでなく,食事からも摂取している.CoQ10は呼吸鎖電子伝達系の成分としてCATP合成に働き,その抗酸化作用が注目されている.CoQ10はミトコンドリアだけでなく血液脳関門も通過することから,ATP合成を高め,乳頭黄斑神経線維の網膜神経節細胞保護効果をもつことが報告されている34).CoQ10の誘導体に属しているイデベノンは親水性を有するため,CoQ10よりも細胞への取り込みがよく,電子伝達系において呼吸鎖複合体CI-III間の電子運搬を仲介し,ミトコンドリアのCATP産生を助ける役割を担っている.イデベノンはかつて日本で脳代謝薬として販売されたものの,有効性が証明できずC1998年に承認取り消しとなっていたが,Leber遺伝性視神経症(LeberChereditaryCopticCneurop-athy:LHON)に対する有効性が報告されている.CarelliらはCLHON患者においてレトロスペクティブに調査したところ,イデベロン投与群は非投与群と比べて機能が改善する割合が高く,イデベノン投与群のほうが視機能の改善が早まっていた35).これらのことからミトコンドリア障害の強い緑内障患者においてCATP合成を高めることによって,視機能を改善する可能性が考えられることから,今後の緑内障への応用も期待したい.おわりに本稿では酸化ストレスと緑内障の関係,酸化ストレスの発生源になっているミトコンドリアについて,そしてサプリメントなどによる抗酸化治療の可能性について述べた.眼圧下降治療を行ったうえで,追加効果を期待できる神経保護治療が今後展開されることが望まれる.文献1)YukiCK,CTsubotaCK:IncreasedCurinaryC8-hydroxy-2C’-deoxyguanosine(8-OHdG)/creatinineClevelCisCassociatedCwithCtheCprogressionCofCnormal-tensionCglaucoma.CCurrEyeResC38:983-988,C20132)HimoriCN,CKunikataCH,CShigaCYCetCal:TheCassociationCbetweenCsystemicCoxidativeCstressCandCocularCbloodC.owCinCpatientsCwithCnormal-tensionCglaucoma.CGraefe’sArchCClinExpOphthalmolC254:333-341,C20163)NakanoCM,CKawanishiCY,CKamoharaCSCetCal:OxidativeDNACdamage(8-hydroxydeoxyguanosine)andCbodyCironstatus:aCstudyConC2507ChealthyCpeople.CFreeCRadicCBiolCMedC35:826-832,C20034)NucciC,DiPierroD,VaresiCetal:Increasedmalondial-dehydeconcentrationandreducedtotalantioxidantcapac-ityCinCaqueousChumorCandCbloodCsamplesCfromCpatientsCwithglaucoma.MolVisC19:1841-1846,C20135)RokickiCW,CZalejska-FiolkaCJ,CPojda-WilczekCDCetCal:CDi.erencesCinCserumCoxidativeCstatusCbetweenCglaucoma-tousCandCnonglaucomatousCcataractCpatients.CBMCCOph-thalmolC17:13,C20176)YukiK,MuratD,KimuraIetal:Reduced-serumvitaminCandincreaseduricacidlevelsinnormal-tensionglauco-ma.CGraefe’sCArchCClinCExpCOphthalmolC248:243-248,C20107)TanitoCM,CKaidzuCS,CTakaiCYCetCal:StatusCofCsystemicCoxidativeCstressesCinCpatientsCwithCprimaryCopen-angleCglaucomaCandCpseudoexfoliationCsyndrome.CPloSCOneC7:Ce49680,C20128)AsanoCY,CHimoriCN,CKunikataCHCetCal:Age-andCsex-dependencyCofCtheCassociationCbetweenCsystemicCantioxi-dantCpotentialCandCglaucomatousCdamage.CScienti.cCReportsC7:8032,C20179)KangCJH,CPasqualeCLR,CWillettCWCetCal:AntioxidantCintakeandCprimaryCopen-angleCglaucoma:aCprospectiveCstudy.CAmJEpidemiolC158:337-346,C200310)ColemanCAL,CStoneCKL,CKodjebachevaCGCetCal:GlaucomaCriskCandCtheCconsumptionCofCfruitsCandCvegetablesCamongColderwomeninthestudyofosteoporoticfractures.AmJOphthalmolC145:1081-1089,C200811)WangSY,SinghK,LinSC:GlaucomaandvitaminsA,C,andCECsupplementCintakeCandCserumClevelsCinCaCpopula-tion-basedCsampleCofCtheCUnitedCStates.CEye(London)C27:487-494,C201312)ParkCJW,CKwonCHJ,CChungCWSCetCal:Short-termCe.ectsCofGinkgobilobaextractonperipapillaryretinalblood.owinnormaltensionglaucoma.KJOC25:323-328,C201113)HarrisCA,CGrossCJ,CMooreCNCetCal:TheCe.ectsCofCantioxi-dantsonocularblood.owinpatientswithglaucoma.ActaOphthalmol96:e237-e241,C201714)MaekawaCS,CSatoCK,CFujitaCKCetCal:TheCneuroprotectiveCe.ectCofChesperidinCinCNMDA-inducedCretinalCinjuryCacts766あたらしい眼科Vol.35,No.6,2018(58)—-’’