斜視と弱視のABC監修/佐藤美保7.調節性内斜視の治療柿原寛子かきはら眼科クリニック調節性内斜視の治療の基本は眼鏡常用である.調節麻痺剤点眼下の屈折検査にて眼鏡を処方する.弱視の有無・眼位・両眼視・眼鏡の装用状態の経過観察を行う.必要に応じ眼鏡を更新する.乳幼児期から学童・思春期と長期間の経過観察が必要であり,患児・保護者が不安なく治療に取り組めるよう,説明・指導も大切である.調節性内斜視の治療対しては市販製剤の1%アトロピン点眼液を院内にて生調節性内斜視のうち屈折性調節性内斜視は,1歳半以理食塩水で希釈し,0.5%アトロピン点眼液として使用降に発症することが多い.遠視があり注視時に内斜視とする.なるが,眼鏡装用にて眼位は改善する.治療の基本は眼小児は調節力が強いため,屈折検査結果に調節が介入鏡常用である.非屈折性調節性内斜視は,遠視の矯正でしているかどうか,検査結果をみて判断する必要があは眼位の改善は得られず,高AC/A比(調節性輻輳/調る.たとえ調節麻痺剤点眼後であっても,点眼時に泣い節刺激量)を伴い,治療は二重焦点眼鏡が基本である.た場合など薬剤の効果が不十分なことがある.小児の屈折検査には検影法を用いるのが望ましいが,実際には屈折検査オートレフラクトメータで測定している現場も多いと思調節麻痺下に屈折検査を行い,遠視度数を測定する.われる.図1にオートレフラクトメータの測定結果の例調節麻痺剤には1%アトロピン点眼液または0.5%アトを示す.図1aは,一連の測定中に調節の介入により屈ロピン点眼液,もしくはサイプレジン点眼液を用いる.折値が変動している.図1bの測定では,比較的安定しアトロピンは調節麻痺作用が強い利点があるが,副交感た屈折値を示している.神経遮断薬であり,発熱・顔面紅潮などの副作用をきた複数のオートレフラクトメータがある場合は,機種にす可能性があるのが欠点である.このため,低年齢児によっても屈折測定結果に違いがみられるので,日頃の使ab—REF—VD=12.00mm〈R〉SCA[R]SPHCYLAX+4.25-0.75829+4.75-0.5078+4.75-0.5066+5.00-0.75889+5.50-1.0093+6.00-0.50819+4.25-0.2577+6.25-0.50809+4.25-0.2577+6.00-0.50849+4.50-0.5077+4.75-0.2572〈+6.00-0.5082〉+4.75-0.2579KM(Phi=3.3)mmDdeg図1オートレフラクトメータの測定記録例*+4.75-0.25777〈R17.8343.008〉a:手持ち型オートレフ(レチノマックス)で測定.〈R27.8143.2598〉+1.25〈AVG7.8243.25〉①の部分で測定値の変動が大きく,このとき調節が介[L]SPHCYLAX+3.25〈CYL-0.258〉入していたと考えられる.b:据え置き型オートレフ①+3.25〈L〉SCAで測定.とくに②の左眼は測定値の変動が少ない.+3.00+6.00-0.25899+2.75+6.75-0.75919+2.50②+6.50-0.50929①’+2.00-0.25161+1.75-0.25162〈+6.50-0.5091〉KM(Phi=3.3)*+2.757mmDdeg〈R17.6644.000〉〈R27.6544.0090〉〈AVG7.6644.00〉〈CYL-0.000〉PD52(89)あたらしい眼科Vol.34,No.3,20173950910-1810/17/\100/頁/JCOPY図2初回眼鏡処方時の説明の様子実物の小児眼鏡フレームを見せることで,保護者に眼鏡装用をより具体的に指導できる利点がある.用経験をもとに各々の特性を把握しておくとよい.また,同一患者の調節麻痺剤使用前後での測定は,同一機種で行えば調節麻痺剤の効果を確認することができる.さらに,自覚的視力検査が困難な小児では,他覚的に測定した屈折値をもとに完全屈折矯正眼鏡を処方するため,点眼後には複数機種で屈折測定を行うことは正確な処方に役立つ.眼鏡処方と装用指導治療用眼鏡は実際に装用してこそ効果が得られるものであり,幼児に眼鏡を常用させるためには保護者の理解と協力が欠かせない.初回の眼鏡処方時には,眼鏡の必要性を説明するとともに,装用させることへの保護者の不安を取り除くよう心がける.屈折性調節性内斜視は眼鏡装用下に眼位の改善が得られるので,眼鏡の必要性は示しやすい.それでも「子どもに眼鏡をかけさせては,かわいそう」「外見が悪いのでは」「どんな眼鏡を買えばいいのか」など不安に思う保護者は多い.当院では,実際の小児用眼鏡フレームを手に取って見てもらい,眼鏡装用の具体的なイメージをもってもらうと同時に,フレーム選択やフィッテイングのポイント(レンズの大きさ・鼻パッドの位置・テンプルの長さなど)を説明している(図2).子どもに好きなフレームの色・テンプルの模様を尋ねたり,フレームをかけさせて「かわいいね」と声をかけたりして,患児と家族が前向きに治療に取り組んでいけるよう支援する工夫も大切である.そのうえで,購入の具体的な方法・療養費給付制度について説明を行う.経過観察眼鏡処方後は約1カ月以内に再診し,できあがり眼鏡チェック・視力検査・眼位検査を行う.レンズメータでの度数チェック・フィッティングの確認を行い,不良の場合は再調整を依頼する.眼鏡装用下に残余内斜視を認める場合は,さらに遠視が隠れていないか,期間をあけてアトロピンでの屈折検査を再検する.乳幼児では,アトロピンを用いていても初回の検査時には調節が取り切れず,十分な遠視を引き出すことができていない可能性もあるためである.部分調節性内斜視・非屈折性調節性内斜視であれば,プリズム装用・斜視手術・二重焦点眼鏡など検討する.弱視合併例では,家庭での健眼遮蔽訓練・通院時訓練を行う.治療開始後,経過観察中に弱視が明らかになる症例もある.眼鏡非装用下の眼位検査で優位眼が決まっている症例・低年齢で視力検査が不完全な症例などは,慎重なフォローが求められる.弱視の合併がない場合,その後の経過観察は2~3カ月ごとに行っている.成長に伴い,およそ1~2年程度で眼鏡の更新が必要になる.屈折の変化・レンズ・フレームの傷み・瞳孔間距離の変化のほか,療養費の支給を受けるには前回処方から一定期間が経っている必要があることも考慮する.経過良好例では,眼鏡更新時の屈折検査は必ずしもアトロピン下である必要はない.視力・眼位・両眼視機能検査にもとづいて,必要十分な検査を行い処方する.文献1)佐藤美保:目でみる斜視検査の進めかた.金原出版,20142)丸尾敏夫,深井小久子,久保田伸枝編:視能学.増補版,文光堂,2008☆☆☆396あたらしい眼科Vol.34,No.3,2017(90)