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強度近視眼に生じる網膜疾患による視野障害 1.後部ぶどう腫

2018年2月28日 水曜日

強度近視眼に生じる網膜疾患による視野障害1.後部ぶどう腫RefractiveScotomainEyeswithPosteriorStaphyloma森山無価*はじめに後部ぶどう腫は眼球の一部分が後方に突出している状態であり,病的近視診断の重要な所見である(図1)1,2).強度近視眼では網脈絡膜萎縮や視神経症など視野障害をきたすさまざまな疾患が生じ,視野検査の重要性は非常に高い3).しかしながら,後部ぶどう腫を合併した症例では,そういった疾患が生じていなくても視野検査で異常を呈することがある.以前より傾斜乳頭症候群など眼球形状異常を呈する症例では,通常の矯正レンズでは眼球変形領域でのピントが合わず,正確な視野が測定できないことが報告されている(図2)4,5).この現象については正確な屈折矯正を行わないことによる暗点や沈下なので,広義の屈折暗点とよんでもよいのかもしれない.傾斜乳頭症候群と同様に眼球形状異常である後部ぶどう腫でも同じような屈折暗点が生じる可能性があり,本稿ではこの後部ぶどう腫による屈折暗点について症例を提示して解説する.CI後部ぶどう腫の分類Curtinによって後部ぶどう腫の形状はC10種類に分類されている6).さらに大野らはこれを単純化し,「広域で黄斑を含む後部ぶどう腫」をタイプCI,「狭域で黄斑を含む後部ぶどう腫」をタイプCII,「視神経乳頭周囲後部ぶどう腫」をタイプCIII,「鼻側後部ぶどう腫」をタイプCVI,「下方ぶどう腫」をタイプCVとし,それに「その他」を加えたC6型と分類している(図3)7).図1後部ぶどう腫の3DMRI3DMRIで撮影し,側方から観察した眼球(Ca:正視眼,b:病的近視眼).病的近視眼では眼球の後方が突出しており,後部ぶどう腫を呈している.眼球下方の変形網膜に焦点が合っていない図2眼球形状変化による屈折暗点の模式図眼球下方の形状変化の部分では黄斑部と焦点位置が異なる.(文献C5より引用)*MukaMoriyama:南城眼科,東京医科歯科大学眼科〔別刷請求先〕森山無価:〒901-0615沖縄県南城市玉城堀川C695南城眼科0910-1810/18/\100/頁/JCOPY(41)C201タイプⅠタイプⅡタイプⅢタイプⅣタイプⅤ黄斑広域型黄斑限局型乳頭周囲型鼻側型下方型その他図3後部ぶどう腫の分類(文献C6,7より引用)図5図4の症例の3DMRIa:側方からの像.眼球上方()に内側に凸な形状変化がある.b:下方からの像.眼球鼻側,耳側()に内側に凸な形状変化がある.図4内側に凸な眼球形状変化を有する強度近視眼①60歳,眼軸長C29.0Cmm.黄斑部を含んだ後部ぶどう腫が下方に広がっており,後部ぶどう腫縁が後極部上方に明瞭に認められる().acbd図6図4の症例の補正レンズ加入前後の視野の変化a,b:動的視野の変化(a:加入前,b:加入後).通常の度数にさらに+12.0D加入することで,赤線で示す部分に変化が認められ,+6.0D加入することで青線で示す部分に変化が認められた.Cc,d:静的視野の変化(c:加入前,d:加入後).+12.0D加入することで下方視野に改善がみられる.図8図7の症例の3DMRIa:側方からの像.眼球上方()に内側に凸な形状変化がある.b:下方からの像.眼球耳側()に内側に凸な形状変化がある.Ca図7内側に凸な眼球形状変化を有する強度近視眼②64歳,眼軸長C29.5Cmm.黄斑部を含んだ後部ぶどう腫が眼球鼻側および下方に広がっており,後部ぶどう腫縁が後極部上方から耳側に認められる().図10外側に凸な眼球形状変化を有する強度近視眼71歳,眼軸長C28.2mm.鼻側になだらかな後部ぶどう腫が広がっている.b図9図7の症例の補正レンズ加入前後の動的視野の変化a:加入前,Cb:加入後.通常の度数にさらに+5.0D加入することで,赤線で示す部分に変化が認められた.図11図10の症例の3DMRIa:側方からの像.眼球下方()に外側に凸な形状変化がある.b:下方からの像.眼球鼻側()に外側に凸な形状変化がある.ab-図12図10の症例の補正レンズ加入前後の動的視野の変化a:加入前,Cb:加入後.通常の度数にさらにC.4.0DD加入することで,赤線で示す部分に変化が認められた.

強度近視眼における視神経乳頭OCT angiographyイメージング

2018年2月28日 水曜日

強度近視眼における視神経乳頭OCTangiographyイメージングEvaluationofOCTangiographyDiscImagesinHighlyMyopicEyes新田耕治*はじめに光干渉断層計(opticalcoherencetomography:OCT)は,その革命的な進化により眼科のさまざまな分野において疾患の診断や治療効果判定などに有用であり,眼科の日常診療にて今やOCTは必須アイテムである.さらに連続的に網脈絡膜をOCT撮影することで,その間の血管内の位相変化や信号強度の変化を血流情報として抽出して画像化したOCTangiography(OCTA)は,非侵襲的に網脈絡膜微小循環の三次元情報が得られるため,近視の領域でも近視性脈絡膜新生血管の検出1~3),近視性黄斑症4)やintrachoroidalcavitation5)での病態分析などにおいてその有用性が報告されている.一方,近視は緑内障発症の危険因子の一つとされているが,近視眼特有の乳頭の傾斜・回旋・乳頭周囲脈絡網膜萎縮(parapapillaryatrophy:PPA)拡大などの近視性構造変化と乳頭陥凹,rimnotching,網膜神経線維層欠損(retinalnerve.berlayerdefect:RNFLD)などの緑内障性構造変化はオーバーラップする面があり,両者を明確に区別することが困難なことが多い.本稿では,強度近視眼における視神経乳頭のOCTAイメージングと題し,強度近視非緑内障眼と強度近視緑内障眼に分けて,視神経乳頭のOCTAイメージングなど強度近視眼におけるOCTA撮像の有用性について紹介する.IOCTangiographyの原理わが国に多い正常眼圧緑内障(normaltensionglauco-ma:NTG)は,発症や進行に乳頭出血(dischemor-rhage:DH)や多様な危険因子が報告されており,そのなかでも最近はとくに眼血流の関与に対する関心が高まっている.その一つの理由はOCTAの登場にあるといえよう6~11).OCTAは非侵襲的に即座に網膜の各層でsegmentationし,各層における毛細血管の分布を表示でき,まるで蛍光眼底造影写真(.uoresceinangiogra-phy:FA)を見ているかのような画像が得られるので,無灌流野を有する糖尿病網膜症には正常眼(図1)と比較して図2のようにフルオレセインを使用していなくても無灌流野がきれいに描出されている.また,機種によっては毛細血管の分布密度を定量化できることが特徴である.筆者はOCTA撮像にOptovue社RTVueRXRAvan-tiTMwithAngiovueTM(2015年1月発売)およびNIDEK社RS3000advance(2015年11月にOCTA撮影プログラム搭載)を使用している.RS3000advanceでは,OCTAのパノラマ撮影が可能であることが魅力的であるが,2015年3月より使用しているRTVueRXRAvantiTMwithAngiovueTMは使用経験が長いので本稿ではRTVueRXRAvantiTMwithAngiovueTMを中心述べることとする.この機種が日本にはOCTAとして最初に登場した.眼底内の静止している部分(組織)*KojiNitta:福井県済生会病院眼科〔別刷請求先〕新田耕治:〒918-8503福井市和田中町舟橋7-1福井県済生会病院眼科0910-1810/18/\100/頁/JCOPY(27)187図1正常眼OCTangiographyパノラマ写真乳頭篩状板内の毛細血管網や乳頭から黄斑部にかけての毛細血管網がはっきりと描出されている.図2増殖糖尿病網膜症OCTangiographyパノラマ写真まるで蛍光眼底造影写真のように無灌流野が描出されている.と動きのある部分(血流)を判別するsplit-spectrumamplitude-decorrelationangiographyalgorithm原理を用いて,これまで観察できなかった網膜や篩状板内の毛細血管網をきれいに描出できるのが特徴である.特定の深さまでの設定した範囲の毛細血管網を描出することができるが,nervehead:撮影画面上端~内境界膜150μm下方まで,vitreous:撮影画面上端~内境界膜50μm下方まで,放射状乳頭周囲毛細血管層(radialperi-papillarycapillaries:RPC):内境界膜~網膜神経線維層まで,choroid/disc:網膜色素上皮より75μm下方~撮影画像下端までの4区画がセクターごとにデフォルトでangio.owdiscとして表示される(図3).RPC表示では視神経乳頭内では解析領域がない設定となっており,黒く映る.一方,nervehead表示では視神経乳頭内には撮影画面上端から自動的に150μm下方までが撮像されるので,篩状板内の毛細血管網が表示され有用である.Choroid/discは網膜色素上皮より75μm下方~撮影画像下端までの撮像範囲を有しているので,実質,脈絡膜を中心とした毛細血管網が映し出されるはずであるが,実際には全体的に白黒の濃淡が広がっているだけで血管影がほとんど表示されないことが多いので,cho-roid/disc表示画面の解釈には注意を要する.Optovue社RTVueRXRTMAvantiTMにてOCTAを撮像すると,Cscan断層画像であるenface画像も描出される.Enface画像は多周波の赤外線を利用して短時間に生体の断層画像を短時間に高分解取得できる技術であり,網膜・脈絡膜を前方からの視点で眼底写真をみるように,しかも任意の深さで描出できる.網膜の各層を自動segmentationすることにより,それぞれ分離して正面から見たように表示できるので,enface画像を利用すればRPCの脱落部位に一致してくさび状のdarkareaが観察でき,この部位はRNFLD部位と一致するので緑内障の診断にも有用である(図3).本機器の3mm×3mmのOCTA画像では良質な各層の画像が得られるので,ライブ画像を観察しながら固視目標を移動させ,何枚も撮影し手動で貼り合わせることによりFAのパノラマ眼底写真のような広角画像を作成することができる.正常眼のOCTAパノラマ写真では網膜神経線維に沿って走行する毛細血管網が密に存在していることが観察できる(図1).ニデック社製RS-3000Advanceなどではすでに自動パノラマ撮影機能が搭載されており,撮影に時間を要するが,それぞれの写真を貼り合わせなくても自動で合成できるようになっている.しかもこの機種は今後カラーマップ表示ができるようになるので,OCTにおける黄斑部の網膜内層解析と同様に,黄斑部の浅層毛細血管の密度の低下部位がより明瞭に確認できるようになる(図4).IIOCTangiographyのアーチファクトOCTA撮影にはさまざまなアーチファクトが出現する12).Projectionartifactは血管部のシグナル変化の対象となる血球が動くとそれに連動して動く影によるartifactで,OCTAにて血管組織のない部位でもシグナル変化が抽出され描出される可能性がある.このpro-jectionartifactはとくに網膜色素上皮を光が通過した際に生じることが多く,血管を通過する光は常に変化し,その光の反射が血球の流れとよく似た影を別の層に映し出すことがある.広範なコーヌスを伴うPPAを伴った乳頭は,機器が予測した網膜のsegmentationからはずれ,画像が黒く抜けるsegmentationerrorが起こりやすい(図5).また,同様の理由から,毛細血管密度測定プログラムにおいて,自動にてdrawingされる視神経乳頭のcontourlineが実際とは大きくずれることがしばしばあり,今後の改良が必要である.Motionartifactは眼球が動くと画像に横や縦の線が入ってそこを境に画像がぶれてしまう.Motioncorrec-tiontechnologyにより画像ブレがかなり修正できるが,再現性の欠如した画像となることがある.眼球運動だけでなく,脈拍,呼吸,振戦などでも生じ,その点を解決するために最近ではトラッキングシステムを搭載したOCTAも登場している.しかし,トラッキングシステムにより撮影時間がさらに延長し,被検者に苦痛をもたらしている面もある.良好なOCTAの画質を得るためには強い強度のシグナルが必要となる.シグナル強度の弱い領域では,ノイズの変動により一つの画像が次の画像と比較される際に,血流に関する誤った所見を生み出すfalse.owarti-(29)あたらしい眼科Vol.35,No.2,2018189ab図3OCTangiographyでの各層における毛細血管の分布非侵襲的に網膜の各層をsegmentationし,各層における毛細血管の分布を表示される.a:緑内障初期.b:緑内障後期.緑内障後期眼では乳頭を中心に全周の浅層毛細血管が脱落している.ab図4OCTangiographyパノラマ写真のカラーマップ表示2症例ともにGCCmapにて菲薄化領域は同様であるが,a:視野での感度低下を認める.b:視野変化が出現していない前視野緑内障の状態である.OCTangiographyパノラマ写真のカラーマップ表示にて,a:GCCmapに一致した浅層毛細血管網の脱落を認める.b:カラーマップ表示にてGCCmapに一致するような浅層毛細血管網の脱落を明瞭に観察できない.ab図5Segmentaionerror広範なコーヌスを伴う乳頭周囲脈絡網膜萎縮を伴った乳頭は,画像が黒く抜けるsegmentationerrorが起こりやすい.量的に画像を評価するために良好な画質を得ることが簡単かどうか検証してみた.その結果,OCTAの画質自体の問題となった比率は,シグナル強度が弱くて画質が暗く撮像されたのが40/197(20.3%),segmentationerrorが12/197(6.1%),motionartifactが8/197(4.1%)であった.RTVueRXRAvantiTMwithAngiovueTMは,2017年にソフトが大幅に改良され,OCTAの画質がさらに良質となった.新たなソフトで69例に撮像してみた結果,シグナル強度が弱くて画質が暗く撮像されたのが4/69(5.8%),segmentationerrorが5/69(7.2%),motionartifactが5/69(7.2%)であった.画質が改善されたが,トラッキングシステムがないために被検者に固視不良などの問題がある際には良質な画像が得られないことが多く,さらなる改良が求められる.III強度近視非緑内障眼の乳頭周囲OCTangiographyイメージング強度近視眼非緑内障の2症例を呈示する.1例目は16歳の女性で,眼軸長26.57mm,乳頭面積3.851mm2,乳頭傾斜角3.13°,乳頭縁の高低差0.258mmの症例である.同心円状に浅層毛細血管網が描出されており,深層毛細血管網はPPA部位でも太い血管の隙間にきれいに描出されている.2例目は62歳男性で,眼軸長28.68mm,乳頭面積1.122mm2,乳頭傾斜角47.16°,乳頭縁の高低差0.934mmと乳頭傾斜の強い症例である.浅層および深層毛細血管網ともに黄斑部に向かって直線的に描出されており,深層毛細血管網は耳側PPA部位でその密度がやや低下していることが観察できる(図6).Moら13)は,正視45眼(等価球面度数±0.5D)と強度近視(等価球面度数≦.6D,病的近視所見なし)41眼と病的近視(等価球面度数≦.6D,眼軸長≧26.5mm,病的近視所見あり)45眼の3群に分け,OCTAを撮像し,RPC密度を測定した.3群の年齢は正視群38.3±13.1歳,強度近視群33.3±15.0歳,病的近視群38.0±11.7歳で,眼軸長は正視群23.19±0.58mm,強度近視群25.93±0.58mm,病的近視群29.55±1.73mmであった.RPCは各々65.42±2.30%,62.71±3.64%,52.70±6.00%,乳頭耳側の血管密度は各々67.24±3.02%,63.79±8.27%,56.73±9.56%であり,ともに正視群より強度近視群,強度近視群より病的近視群と血管密度は有意に低下したと報告した.Sungら14)は,bPPAを有する正常近視150眼(平均眼軸長26.05±1.25mm)の楕円率,乳頭回旋角度,bPPA面積を測定し,OCTAによる乳頭周囲の浅層および深層毛細血管の減少に関連する因子を解析した.その結果,平均浅層毛細血管密度は62.14±5.47%,33眼(22.0%)で浅層毛細血管密度の減少を認めた.眼軸長が長いこと,乳頭周囲網膜神経線維層厚の減少が,浅層毛細血管密度の減少と有意に関連していた.平均深層毛細血管密度は73.76±4.02%,26眼(17.33%)で深層毛細血管密度の減少を認めた.楕円率が大きいこと,下方への乳頭回旋が強いことが深層毛細血管密度の減少と有意に関連していた.このことより,正常近視眼では眼軸長の延長は浅層毛細血管の密度低下に影響するが,深層毛細血管密度には関連せず,深層毛細血管密度は,楕円率や回旋率など眼軸長とは独立した別の要素が影響している可能性があると報告した.IV強度近視眼のgPPA部位におけるOCTangiographyイメージングOCTAは3D撮像が可能なので表層のみならず深層とくに脈絡膜層の描出も可能である.深層領域は,短後毛様動脈由来のZinn-Haller動脈輪(Zinn-Hallerarteri-alcircle:ZHAC)から分岐した毛細血管が隣接する視神経乳頭篩状板を栄養している.OCTAを使用して強度近視眼のZHACの可視化について検討した報告15)では,gPPA領域にZHACを確認できたのが253眼のうち26眼(10%)であった.ZHACの形態が輪状を呈した症例が18眼(69%),三角形状を呈したのが4眼(15%),不規則形状が4眼(15%)であった.インドシアニングリーン蛍光造影でのZHACの描出と同等であり,眼底写真での検出よりも有意に優れていたのでOCTAを使用してZHACを評価することが,緑内障性視神経症のような病態でも興味深い知見が得られる可能性がある.強度近視眼早期緑内障(ref<.6.0D,MD≧.6dB)の40%以上にpapillo-macularbundle領域にNFLDを認め,非近視眼緑内障と比較して有意に高率であるとの(33)あたらしい眼科Vol.35,No.2,2018193ab図6強度近視非緑内障眼の乳頭周囲OCTangiographya:16歳,女性.眼軸長26.57mm,乳頭面積3.851mm2,乳頭傾斜角3.13°,乳頭縁の高低差0.258mmの強度近視眼.同心円状に浅層毛細血管網が描出されており,深層毛細血管網はPPA部位も太い血管の隙間にきれいに描出されている.b:62歳,男性.眼軸長28.68mm,乳頭面積1.122mm2,乳頭傾斜角47.16°,乳頭縁の高低差0.934mmと乳頭傾斜の強い強度近視眼.浅層および深層毛細血管網ともに黄斑部に向かって直線的に描出されており,深層毛細血管網は耳側PPA部位でその密度が低下している.図7近視眼緑内障のmicrovasculaturedropout自験例の近視眼緑内障の中には,bPPA部位の深層毛細血管網が部分的に脱落している(.)症例が存在する.脱落部位では過去に乳頭出血を繰り返していることが多い.ab図8楔状NFLDを有する正常眼圧緑内障の乳頭周囲OCTangiography楔状CNFLD(.)を有する正常眼圧緑内障症例にCOCTAを乳頭中心に撮像してみると,NFLDにほぼ一致した部位のRPC密度低下(.)を認め,RPC密度低下領域と視野障害部位もほぼ一致していることがわかる.===非近視群(10年視野生存率:46.3C±5.8%)と比べて視野障害の悪化を認めた症例が有意に低率であった(Log-rankCp=0.0311).また,DH出現回数は,近視群(0.93C±2.13回)が非近視群(1.60C±3.04回)と比較して有意に低率であった(p=0.0311).Kaplan-Meier生命表解析を用いてCDHの累積出現確率を近視群と非近視群で比較したところ,近視群(10年CDH出現率:26.4C±5.4%)は非近視群(10年CDH出現率:47.2C±6.6%)と比べて有意にCDHの出現が低率であった(Log-rankp=0.0413).これらの筆者らの検討から,強度近視眼緑内障をC10年以上観察した場合にはCDHの出現頻度が低く,視野障害の悪化率が低率である可能性が示唆された22).CVI強度近視緑内障眼の乳頭周囲OCTangiographyイメージング楔状CRNFLDを有するCNTG症例にCOCTAを乳頭中心に撮像してみると,RNFLDにほぼ一致した部位のRPC密度低下を認め,RPC密度低下領域と視野障害部位もほぼ一致していることがわかる(図8).OCTAを使用した解析では,緑内障眼では病期の進行とともにRPCの血管密度がびまん性に脱落しており,前視野緑内障>初期緑内障>中期~後期緑内障の順に毛細血管は減少していた23).その他,緑内障診断や進行評価にOCTAを使用した解析報告が相次いでおり,その有用性が確認されている24~28).一方,強度近視緑内障眼の場合は,乳頭傾斜や回旋,後部ぶどう腫の形成などによる近視性の構造変化に伴うと思われる乳頭周囲毛細血管網の脱落を浅層のみならず深層に認め,乳頭面積や乳頭傾斜の程度,眼軸長など非近視緑内障眼よりもさまざまな要素が上述の固視点近傍の視野障害に影響を及ぼしていると考えられる(図9).そこで筆者らは,良好な画質のCOCTAを撮像できた緑内障眼C71例C108眼の眼軸長,乳頭傾斜角度絶対値,乳頭面積,垂直Ccup/disc(CD)比,乳頭縁の高低差,HFA30-2のCmeandeviation(MD),HFA10-2のMD,乳頭周囲浅層耳側毛細血管密度,乳頭周囲深層耳側毛細血管密度などの項目について解析し,緑内障眼におけるHFA10-2のCMDの感度低下に関与する因子を検討した.HFA10-2のCMDの感度低下と単相関を示したのは,浅層および深層毛細血管密度および耳側浅層および深層毛細血管密度であった(相関係数は,それぞれCr=0.733,r=0.561,r=0.733,r=0.596).多変量解析の結果,HFA10-2のCMDの感度低下に関与する因子としてあがったのは,乳頭面積(係数C1.460,95%信頼区間下限C0.437上限C2.483,p=0.005),垂直CCD比(係数C.14.786,95%信頼区間下限C.23.098上限C.6.475,p=0.001),HFA30-2のCMD(係数C0.684,95%信頼区間下限C0.570上限C0.798,p=0.0001),乳頭周囲浅層耳側毛細血管密度(係数C0.164,95%信頼区間下限C0.067上限0.260,p=0.001),乳頭周囲深層耳側毛細血管密度(係数C0.271,95%信頼区間下限C0.130上限C0.411,p=0.0001)であった.よって眼軸長,乳頭傾斜角度絶対値,乳頭面積,乳頭縁の高低差など近視眼による乳頭の変形に伴う視標との関連性は今回の検討では見いだせなかった.これは近視による乳頭の傾斜や回旋方向は後部ぶどう腫の形成位置とも関連し,必ずしも耳側や耳下方向に傾斜や回旋するものばかりでなくさまざまなパターンが混在しているためと思われる.また,仮に傾斜が強くても乳頭耳側周囲に血流をもたらす毛細血管が脱落していない症例も多いために,乳頭の傾斜などの要素がHFA10-2の視野感度低下と関連しないのではないかと思われる.今後はCOCTAを使用した緑内障眼における深層の毛細血管網に関するさらなる検証も必要と考えられる.近視乳頭を有する正常眼圧緑内障と年齢マッチングした非緑内障近視乳頭コントロールのCOCTAを撮像して,PPA面積とCOCTAのCPPACsuper.cialCchoroidalCimageintensity(PPA-CI)をCimageCJを使用して計算し,LSFG-NAVIにて解析した乳頭耳側の組織血流(MT),standardCautomaticCperimetry(SAP)にて測定された固視点近傍のC4点の平均網膜感度,乳頭黄斑線維側のGCC厚(PMB-GCCT)などの臨床因子と比較検討した.その結果,NTGはコントロールと比較して固視点近傍のC4点の平均網膜感度やCPMB-GCCTが有意に低値でPPA面積は有意に広かった.傍中心暗点を有するCNTGの鑑別に対するCAUCは耳側CMTがC0.76,PPA-CIが0.85,PMB-GCCTがC0.87でCPPA-CIの精度はかなり良好であった.多変量解析の結果,PPA-CIに影響する(37)あたらしい眼科Vol.35,No.2,2018C197ab図9強度近視緑内障眼の乳頭周囲OCTangiographya:66歳,女性.眼軸長C28.83mm,乳頭面積C0.988CmmC2,乳頭傾斜角C11.59°,乳頭縁の高低差C0.621Cmmの強度近視緑内障眼.GCCmapの菲薄化領域に一致して深層の毛細血管網の脱落を認め,浅層では鼻側の毛細血管網の脱落を認める.Cb:56歳,男性.眼軸長28.16Cmm,乳頭面積C1.706CmmC2,乳頭傾斜角C16.43°,乳頭縁の高低差C0.457Cmmの強度近視緑内障眼.視野障害部位に一致して浅層毛細血管網の脱落を認め,深層毛細血管網はCPPA部位にCmicrovasculaturedropoutを認める.Cc:48歳,男性.眼軸長C28.81Cmm,乳頭面積C1.615CmmC2,乳頭傾斜角C37.59°,乳頭縁の高低差C1.063Cmmの強度近視緑内障眼.浅層毛細血管網は全周性に高度に脱落し,深層毛細血管網はCPPA部位に広範囲のCmicrovasculaturedropoutを認め,中心視野がとくに障害されている症例である.C—-

近視・緑内障と視神経乳頭周囲脈絡網膜萎縮

2018年2月28日 水曜日

近視・緑内障と視神経乳頭周囲脈絡網膜萎縮Myopia,GlaucomaandParapapillaryAtrophy(PPA)三木篤也*はじめに視神経乳頭周囲脈絡網膜萎縮(parapapillaryCatroC-phy:PPA)は,その名のとおり,視神経乳頭周囲にみられる網膜および脈絡膜の組織異常である.PPAの頻度,大きさが緑内障と相関することは,古くから報告がある.しかし,PPAと緑内障の相関についての病理学的な意義はまだ十分に解明されていない.しかも,PPAは緑内障以外の疾患でもみられる.代表的なものは近視である.近視は緑内障発症のリスクファクターでもあるので,近視眼におけるCPPAは近視性の障害を反映するのか,緑内障の合併を意味するのかの判断はむずかしい.最近になって,光干渉断層計(opticalCcoherencetomography:OCT)によるCPPAの細かい分類が,緑内障性のCPPAと近視性のCPPAの鑑別に役立つ可能性があることが報告された.本稿では,症例を通じてCPPAの眼底所見,OCT所見の読み方と臨床診断への生かし方について,最近の研究結果に基づいて解説する.CIPPAの眼底所見眼底所見上,PPAは網膜側のCaゾーンと乳頭側のCbゾーンに分類される(図1).aゾーンは,眼底所見では網膜色素の不整として観察される.一方,Cbゾーンは網膜色素の減少により脈絡膜血管や強膜が透見できる部位として観察される.組織学的には,Caゾーンが網膜色素上皮の不整であるのに対し,Cbゾーンは網膜色素上皮の完全消失または高度萎縮と脈絡膜毛細血管板の高度萎縮である.PPAのCaゾーン,Cbゾーンともに疾患に特異的な所見ではなく,Caゾーンはほとんどの正常眼に認めるし,CbゾーンもC15~20%の正常眼にみられると報告されている.正常眼では両ゾーンとも耳側にもっとも多く認められる.CIIaゾーン,bゾーンと緑内障PPAが緑内障と関連することは,これまでいろいろな角度から検証されてきた.たとえばCPPACaゾーン,Cbゾーンの大きさと,bゾーンの頻度は,緑内障の有無,あるいは視神経乳頭リムや視野感度などの緑内障パラメータと相関する.しかし,両ゾーンともに正常眼でもみられるため,PPAがあるからといって緑内障だとはいえない.ゆえに,緑内障の確定診断をするうえではPPAはリム欠損,網膜神経線維層欠損(retinalCnerve.berlayerdefect:RNFLD),特有の視野障害などの緑内障に特徴的な所見ではなく,参考所見の一つと考えるべきである.一方で,緑内障と他の視神経症の鑑別や,緑内障の詳細な病態把握にはCPPAはしばしば有用な情報をもたらす.両ゾーンともに,虚血性視神経症などの非緑内障性視神経症では拡大しないことが知られているので,(近視性を除く)他の視神経症と緑内障の鑑別において*AtsuyaMiki:大阪大学大学院医学系研究科眼科学教室〔別刷請求先〕三木篤也:〒565-0871大阪府吹田市山田丘C2-2大阪大学大学院医学系研究科眼科学教室0910-1810/18/\100/頁/JCOPY(21)C181図1正常眼圧緑内障眼(右眼)PPAの眼底所見図2図1と同一症例の広角眼底写真乳頭周囲にみられる半月状の色素脱失部位(青点)がCPPAのCbPPAの上端とCRNFLDの上端(),下端とCRNFLDの下端ゾーンであり,脈絡膜の色調が透見される.Cbゾーンの周囲を()がほぼ一致している.取り巻く色素がやや過剰な部位がCaゾーン()であり,黒っぽく見えることが多いが,色にムラがある場合もある.図3図1と同一症例の静的視野検査結果PPAの位置と視野障害の位置がほぼ一致している.図4近視を伴う正常眼圧緑内障眼(左眼)PPAのOCT水平断面視神経乳頭周囲に,網膜色素上皮とCBruch膜の双方を欠損するCgゾーン()と,網膜色素上皮を欠損するがCBruch膜は残存するCbゾーン()を認める.Bruch膜の断端は比較的視認しやすいが,網膜色素上皮はCBruch膜と複合体を形成しているので,断端の同定は症例によっては困難である.しかし,OCT上でCbゾーンでは脈絡膜や視細胞層の高度の萎縮を伴っていることを参考にしたり,眼底写真との部位的な一致をみたりすることで,ほとんどの症例で網膜色素上皮の断端を同定することができる.表1PPAbゾーンとgゾーン図5図4と同一症例の眼底写真gゾーンに相当する乳頭に近い部位では強膜を透見し,脈絡膜血管のパターンがみられないが,Cbゾーンに相当する網膜側の部位では,Cgゾーンよりも灰色がかった色調で,脈絡膜血管を透見することで,眼底所見でもある程度CbゾーンとCgゾーンの差を認めるが,眼底写真だけで鑑別するのはむずかしい.ないない相関しない,または負の相関正の相関報告により異なる

強度近視眼に生じる視神経乳頭とその周囲組織の構造異常

2018年2月28日 水曜日

強度近視眼に生じる視神経乳頭とその周囲組織の構造異常StructuralAbnormalitiesinandaroundOpticNerveHeadofHighlyMyopicEyes吉田武史*はじめに日本を含む東アジア諸国を中心に全世界において近視患者数は急速に増加している.なかでも深刻な視力・視野障害をもたらすさまざまな合併症をしばしば生じさせる強度近視患者の増加は大きな社会的懸念となっている.合併症のなかでももっとも頻度の多い合併症の一つが緑内障様視野障害である.これまでの筆者らの研究では屈折度.8.0D未満もしくは眼軸長C26.5Cmm以上の強度近視で,絶対暗点の原因となりうる網膜萎縮病変や黄斑部新生血管病変を有せず軽度びまん性網膜萎縮病変までの患者をC5年以上経過観察したところ,13%の症例で網膜病変では説明のできない有意な視野障害を生じることを報告している1).通常の緑内障性視神経症の視野変化は,Bjerrum領域の暗点,鼻側階段であるが,強度近視眼ではそれらに加えて耳側欠損および中心視野領域の欠損が生じやすいことが報告されている2).さらに強度近視眼では検眼鏡的視神経乳頭所見と視野障害パターンが一致しない症例が非常に多く,強度近視眼の緑内障性視野障害患者の診療に際し,その診断と治療方針の決定は非常にむずかしいものとなる.そもそも強度近視眼に生じる緑内障性視野障害は,はたして眼圧依存性の緑内障なのかという疑問が常につきまとう.近視の原因は眼軸延長によるものであり,とくに強度近視眼では後部ぶどう腫のような過度で不均一な眼軸延長が生じ,網膜だけでなく視神経乳頭やその周囲組織に発生する慢性的な機械的ストレスに伴う構造変化が生じると考えられてきたが,病態は明らかになっていなかった.近年のCOCTの発達により,これまでわからなかった視神経乳頭やその周囲組織におけるいくつかの構造異常が明らかになってきている.本稿では強度近視眼にみられる特徴的な構造異常・病態と緑内障視野変化の関連について述べる.CIIntrachoroidalcavitation(ICC)ICCは強度近視眼のおもに視神経乳頭下方にみられる黄色~オレンジ色の三日月状病変として確認されるものである(図1a,矢頭).OCTの観察では脈絡膜内の洞様変化であることがわかる(図1b,*印).強度近視眼の約C14%にCICCは合併する.ICC部位では強膜が後方に偏位することによりCICCが生じると考えられている.ICCのエッジにはしばしば網膜全層欠損を伴い,硝子体腔とCICCが交通し,欠損部位の神経線維は断裂されるため(図2a,b),断裂部位に一致する視野障害を生じる(図2c).また,全層欠損に至らない菲薄化した状態でもその部位に一致した網膜感度の低下がみられることがある.ICCから網膜全層欠損に至れば視野障害の進行は通常みられない.これはCICCの網膜全層欠損により,強膜の後方へのテンションから網膜が解放されたことにより,それ以上の網膜病変の進行を認めないためと思われる.*TakeshiYoshida:東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科眼科学分野〔別刷請求先〕吉田武史:〒113-8519東京都文京区湯島C1-5-45東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科眼科学分野0910-1810/18/\100/頁/JCOPY(17)C177図1視神経乳頭周囲のintrachoroidalcavitation(ICC)a:眼底写真.視神経乳頭周囲にCICCが観察される().b:OCT.矢印方向でCOCT撮影すると脈絡膜内に洞様変化が観察される(*印).図2視神経乳頭下方のintrachoroidalcavitation(ICC)a:眼底写真.視神経乳頭下方にCICCがみられる.Cb:OCT.矢印方向で撮影すると脈絡膜内の同様変化(*)に加え網膜全層欠損()がみられる.Cc:HumphreyC30-2視野検査.図3視神経乳頭内ピットa:眼底写真.b:矢印方向にCOCTで撮影すると視神経乳頭下極にピットがみられる(*印).ピット部位の網膜神経線維は消失している.c:Goldgmann視野検査で病変に対応する視野欠損を認める.ac図4篩状板局所欠損a:強度近視眼における篩状板局所欠損をCOCTにて観察().b:拡大図において点線で示す部分が篩状板局所欠損部位.Cc:HumphreyC30-2視野検査にて視野障害を認める.c図5Ridge患者a:眼底写真.b:OCT画像.Cc:視野検査.

病的近視眼における視神経乳頭の検眼鏡的特徴

2018年2月28日 水曜日

病的近視眼における視神経乳頭の検眼鏡的特徴FunduscopicFindingsofOpticNerveHeadinPathologicMyopia丸山勝彦*はじめに近視よる眼軸長延長の結果生じる眼球の変形により,視神経乳頭,ならびにその周囲組織には多彩な構造変化がもたらされる.その多くは光干渉断層計(opticalcoherencetomography:OCT)をはじめとする画像診断装置によって近年病態が明らかにされてきているが,日常診療ではこれらの検眼鏡的所見を把握しておくことは重要である.本稿では,「病的近視眼」を後部ぶどう腫に伴い眼球形態が変化した近視眼のみならず,視機能低下をきたしうる疾患(緑内障を含む)を合併した近視眼と解釈し,病的近視眼における視神経乳頭と乳頭周囲の検眼鏡的特徴を述べる.I視神経乳頭所見1.乳頭面積正常眼と同様,病的近視眼でも乳頭面積には個体差があり,microdiscから巨大乳頭macrodiscまで,さまざまな症例が存在する.このなかで,強度近視眼でみられる大乳頭は縦長の楕円形であるものが多く,近視が強いほど乳頭面積が大きくなるのに対し,非強度近視眼ではほぼ正円であることが多く,乳頭面積は屈折や眼軸長に関連しないとされる点で異なっている.2.傾斜,回転眼軸長の伸長により視神経乳頭の傾斜や回転が多くみられるが,大きく二つに分類することができる.一つ目は乳頭の垂直方向の軸に沿って回転した乳頭で,verticallyrotateddiscとよばれる(図1).この変化は,近視による眼軸長延長の影響で乳頭耳側の強膜が後極側に伸展し,それに伴って乳頭が回転するために生じる.非立体的な眼底検査では視神経乳頭の水平径が小さく,縦長に観察される.もう一つは矢状軸に沿って回転した乳頭で,傾斜乳頭(tilteddisc)とよばれる(図2).傾斜乳頭の発生はver-ticallyrotateddiscと異なり,屈折誤差や眼軸長には依存しない一方で,角膜乱視や弱視に関連するとされている.なお,傾斜乳頭に他の特徴的な所見を伴うものを傾斜乳頭症候群(用語解説参照)とよぶ.3.辺縁部と陥凹強度近視眼での辺縁部と陥凹の判別は,視神経乳頭の伸展により辺縁部の高さと陥凹の深さとの差が減少しているため,正常眼より困難な場合が多い.また,強度近視眼では,辺縁部の組織が薄く篩状板組織が透見されること,辺縁部の毛細血管の密度や血流供給が減少していることなどから,辺縁部のピンク色の色調が正常眼より薄くなる傾向がある.かつ,乳頭が全体的に蒼白化している場合が多く,結果として辺縁部と陥凹の色調のコントラストが低下し,両者の判別が困難な症例も少なくない(図3a).そのような症例に対しても接触型前置レンズによる立*KatsuhikoMaruyama:東京医科大学眼科学分野〔別刷請求先〕丸山勝彦:〒160-0023東京都新宿区西新宿6-7-1東京医科大学眼科学分野0910-1810/18/\100/頁/JCOPY(9)169図1Verticallyrotateddisc図2傾斜乳頭垂直方向を軸に回転した乳頭,眼軸長27.09mm.矢状軸に沿って下方に回転した乳頭,眼軸長27.15mm.視神経乳頭下方にコーヌスやぶどう腫,網脈絡膜萎縮もみられる.ab図3強度近視,非緑内障眼の視神経乳頭(左眼)a:眼軸長32.19mm.辺縁部と陥凹の判別は一見困難である.b:接触型前置レンズを用いた立体観察による陥凹の範囲.「ISNTの法則」が保たれており,垂直C/D比は水平C/D比を超えない.図4強度近視,緑内障眼の視神経乳頭a:眼軸長C28.34mm.Cb:接触型前置レンズを用いた立体観察による陥凹の範囲.「ISNTの法則」がくずれ,上下方向に陥凹が拡大している.垂直CC/D比が水平CC/D比より大きい.図5Verticallyrotateddisc,緑内障眼眼軸長C30.94Cmm.鼻側の辺縁部が隆起し,耳側の辺縁部は消失して陥凹底はスロープ状になっている.下方に乳頭出血を認める.b図6乳頭内ピットa:眼軸長C26.91Cmmの強度近視眼.下極付近に乳頭内ピットを認める().b:同症例のCOCT所見,乳頭内ピットを認める().図7強度近視眼の視神経乳頭にみられた乳頭周囲脈絡網膜萎縮a:眼軸長C27.19Cmm.Cb:最外側に色素ムラとして観察される幅の細い領域がCaゾーン().c:検眼鏡的にはCbゾーンとCgゾーンは鑑別できないが,実線の断面をCOCTで観察すると,矢印の間にはCBruch膜が存在し,同領域はCbゾーンであることがわかる.d:この症例のCOCT像,矢印の間にはCBruch膜が存在する.b図8強度近視眼の視神経乳頭にみられたintrachoroidalcavitationa:眼軸長C27.02mm,乳頭下方半周の橙色,三日月状の領域にCintrachoroidalcavitationが存在する.Cb:同症例のCOCT所見.洞様の脈絡膜分離を認める().■用語解説■傾斜乳頭症候群(tilteddiscsyndrome):眼杯裂の閉鎖不全により生じる乳頭先天異常と考えられており,有病率はC1.2%とされ,多くは両眼性にみられる.検眼鏡的には,乳頭は横長で水平方向を軸に下方が後方に傾斜していることが多く,他にも視神経乳頭下方のコーヌス,下方ぶどう腫,下方強膜の菲薄化,網脈絡膜萎縮,血管逆位などがみられるが,眼杯裂の閉鎖不全の程度に個体差があるため,症例によって所見はさまざまである.-

強度近視眼における視野障害の特徴と鑑別診断

2018年2月28日 水曜日

強度近視眼における視野障害の特徴と鑑別診断CharacteristicsofVisualFieldDefectinHighMyopia川瀬和秀*はじめに強度近視は.6.0D以上の近視を示すことが多く,強度近視眼は大きく二つに分けられる.屈折がマイナスであり眼底には小乳頭や豹紋状眼底をきたす単純近視と,屈折が強度近視で脈絡膜障害を認める病的近視あるいは変性近視である.強度近視がある場合,網脈絡膜の変化や眼球の変形などにより視野に異常を認めることが少なくない.しかし,近視眼底は乳頭部が傾斜してCOCTによる視神経や網膜神経線維層の判定もむずかしく,緑内障などの他疾患による障害と近視による障害の線引きは非常にむずかしい.とくに日本人は近視の頻度が高く,日常診療において近視特有の視野障害について理解し,近視による変化と他疾患による視野障害を可能な限り分離して検査や治療を行うことが大切である.CI単純近視による視野変化(表1)1)C1.Goldmann動的視野計佐藤らは,暗点,Mariotte盲点の拡大や周辺狭窄の他にも内部イソプタの求心性狭窄や部分的沈下を認めると報告している2).C2.Humphrey静的視野計近視の度数増加に伴い視野全体での感度低下をきたしやすく,Humphrey静的視野計ではC.4D以上の近視眼で1Dの近視増加につき平均0.20dBのmeanCdefect(MD)の低下がみられる.Humphrey静的視野計では屈折暗点とよばれる局所的な感度低下がみられる場合がある.典型的にはCMariotte盲点上方の楔状領域で浅い暗点や沈下として現れる.しかし,Mariotte盲点上方周辺部(とくに上耳側)だけでなく,下方や固視点周辺にみられる場合もある.これらは通常のセクター型のような明瞭なパターンではなく,矯正方法により消失するとの報告もある3~5).CII病的近視による視野変化近視がより強度になり,眼底に斑状やびまん性の網脈絡膜変性が出現すると,これに伴う視野異常が合併する.Goldmann動的視野計では,単純近視と同様な所見がみられるが異常の程度は単純近視に比べ高くなり,Humphrey静的視野計でも,眼底病変が高度になるにつれて多彩な様式の欠損が出現する.一方で,これらの視野所見と眼底病変の分布とが厳密に対応しないことも多い.基本的に変性近視では,後局部を中心に種々の視野異常を呈する.びまん性網脈絡膜萎縮を伴うものでは,網膜機能は完全に消失しておらず,絶対暗点が検出されることは稀である6).限局性網脈絡膜萎縮を伴う斑状変化では,病変に一致して視細胞が消失しており,ほぼ全例に視野異常があり,絶対暗点を示す頻度が高い7).強度近視の視野所見に影響する要因は,眼球自体によるものと測定手技によるものとに分けられる(表2)1).*KazuhideKawase:岐阜大学大学院医学系研究科神経統御学講座眼科学分野〔別刷請求先〕川瀬和秀:〒501-1194岐阜市柳戸C1-1岐阜大学大学院医学系研究科神経統御学講座眼科学分野0910-1810/18/\100/頁/JCOPY(3)C163表1単純な強度近視でみられる視野所見報告者対象屈折度(D)視野計(プログラム)見られうる異常所見佐藤ら2)C.8.25~.36.0CGoldmann・内部イソプタの求心性狭窄・内部イソプタの部分的沈下・暗点・周辺狭窄・Mariotte盲点拡大黄4)C.8.25~.14.5Octopus(31)・全体的感度低下・上方の感度低下(とくに上耳側)・中心C10°からC20°の同心円領域の感度低下Rudnickaら5)+4.3~.20.3CHumphrey(C30-1,C30-2)・全体的感度低下・局所的感度低下(上方,上方周辺部,上耳側,固視点周辺など多様)・Mariotte盲点拡大・明らかな弓状や鼻側くさび状の欠損はないAungら3)C.0.5~.14.0CHumphrey(C24-2)・MDの低下・純粋に近視性の局所欠損はまれ(0C.7%)(文献C1より引用)表2強度近視の視野所見に影響しうる要因(文献C1より引用)図1病的近視のひょうたん型視野図2コーヌス内ピット様裂隙を認める症例の視野(文献C10より引用)傍中心暗点を認める.(文献C10より引用)表3病的近視による視野変化(文献C6を改変引用)図3近視性乳頭における緑内障性変化(文献C11より引用)近視性変化のみで周辺視野が侵されることはほとんどないが,内部イソプタの変化はあり得ることを報告している.Rudnichaらは,Humphrey静的視野計を用いた研究で,眼軸長C26Cmm異常,C.5Dより強い近視を有する症例では局所的視野変化の強さの指標であるCPSD(pat-ternCstandardCdeviation)やCCPSD(correctedCPSD)が眼軸長と屈折度に相関して大きくなることを示している.しかも,眼軸長C28Cmm異常,C.10D以上の近視でその傾向が強く,GHT(glaucomaChemi.eldCtest)の異常を示す症例がでるが,典型的な緑内障性視野変化(弓状暗点,傍中心暗点,鼻側階段)のパターンは認めなかったとしている.また,新田らはCPPAを有する眼では眼軸長が延長するにつれて中心部,Bjerreum領域で有意に感度が減少することを示している.また,黄らは屈折度C.8.25D以上,豹紋状眼底以外には眼底病変のない高度近視眼において,眼軸長に比例して全体の感度低下に加え,上耳側およびCBjerreum領域での局所的な感度低下を報告している.つまり,眼軸長延長の著しい高度近視眼では,MD値の低下に加えて緑内障性変化に似た局所感度低下を生じることを念頭に置くことが必要である4,15~17).CVMariotte盲点の拡大や傍中心暗点を認める他の疾患Mariotte盲点の拡大や傍中心暗点は,強度近視眼に限った所見ではない.視神経に接する脈絡膜萎縮やコロボーマや朝顔症候群は眼底に対応したCMariotte盲点の拡大を示す.また,巨大乳頭や視神経乳頭の一部に深く陥凹を認める神経乳頭ピット,視神経乳頭が上下方向に傾斜するCtiltedCdiscCsyndromeでは,これに伴う視野異常を認める.これらの先天異常は乳頭小窩黄斑症候群などの例外を除いては停止性である.それに対し,両眼のMariotte盲点の拡大があり,眼底にうっ血乳頭を認めれば,頭蓋内圧亢進をきたしている可能性が高い18).中心暗点をきたす疾患は視神経疾患と黄斑病変であることから,対光反応を確認した後に散瞳して眼底の観察と画像解析を行う.対光反応が不良(relativeCa.erentpupillaryCdefectが陽性)で,網膜に大きな変化がない場合は視神経疾患を考える.代表的な疾患は視神経周囲組織の炎症の波及,圧迫と特発性視神経症である18).眼球運動痛や,運動や体温上昇により視力低下が増悪する(Uhtho.現象)場合は視神経炎が疑われ,基礎疾患に高血圧や糖尿病があると虚血性視神経症が疑われる.球後視神経炎では眼底はまったく正常であり,MRIにより初めて確認される.比較的若年者に認められる視神経炎の原因の一つは多発性硬化症(multipleCsclero-sis:MS)であり,耳鳴りなどの視神経症状や髄液検査,MRIにおけるCMSCplaqueの有無などの検査が必要となる.炎症の確認には造影検査が必須である.片眼の中心暗点は,脳腫瘍や副鼻腔の粘液腫などの圧迫病変が原因のこともある.両眼の中心暗点は急性に発症したものを除けば中毒性視神経症,遺伝性視神経萎縮があり,病歴や詳しい問診で診断可能である.対光反応が良好な視神経疾患にはCLeber病,優性遺伝性視神経症,心因性視覚障害がある18).おわりに強度近視眼において視力障害や視野障害を認めた場合,まずは対光反応や限界フリッカ値(criticalC.ickerfrequency:CFF)などの眼科的な検査を行い,他の疾患を鑑別する必要がある.とくに,視力障害や視野障害に進行を認める場合は,MRIを含めた詳細な鑑別診断を行い,頭蓋内病変などの重篤な疾患を除外する必要がある.そのうえで強度近視による視野障害と他の疾患による視野障害を可能な限り分けて,適切な治療を行う.文献1)山崎斉:OneCPointCAdvice強度近視の視野.眼科プラクティスC15視野(根木昭編),p268-269,文光堂,20072)佐藤百合子:病的近視の視野異常について.日眼会誌C88:C977-982,C19843)AungCT,CFosterCPJ,CSeahCSKCetCal:AutomatedCstaticperimetry:theCin.uenceCofCmyopiaCandCitsCmethodCofCcor-rection.COphthalmologyC108:290-295,C20014)黄世俊:強度近視の視機能の初期変化─COctopus自動視野計による測定分析─.日眼会誌C97:881-887,C19935)RudnickaCAR,CEdgarCDF:AutomatedCstaticCperimetryCinCmyopesCwithCperipapillaryCcrescents-PartCII.COphthalmicCPhysiolOpt16:416-429,C19966)鈴村弘隆:検査法.視野.眼科診療プラクティスC67変性近(7)あたらしい眼科Vol.C35,No.2,2018C167’

序説:強度近視眼における視野障害を考える

2018年2月28日 水曜日

強度近視眼における視野障害を考えるUpdatesonVisualFieldDefectsDuetoPathologicMyopia大野京子*山本哲也**吉田武史*強度近視の本態は眼軸延長であり,屈折度C.8.0D未満もしくは眼軸長C26.5Cmm以上と定義されている.近年,日本を含む東アジアの諸国を中心に全世界における近視患者数の急速な増加が社会問題になっているが,それに伴い強度近視患者数も増加しており,大きな社会懸念の一つとなっている.というのも,強度近視眼に生じる過度で不規則な眼軸の延長は,眼鏡やコンタクトレンズ装用が必須となる生活上でのCQOLの低下だけにはとどまらず,網膜から視神経に至る眼球のほとんどすべての組織に影響を及ぼし,重篤な視野異常を伴うさまざまな合併症を引き起こすことが非常に多く,かつそれらが不可逆的な病変であるからである.実際,われわれ眼科医が強度近視眼の診療において目にするもっとも頻度の高い合併症が視野異常である.強度近視眼の視野異常は,視野異常の由来から大きく分けて,①緑内障様視野障害,②網膜病変による視野障害,③中枢性などその他に分類される.実際には複数の合併症を同時にもつ症例が多々みられるため,視野障害の診断はさらに複雑になり,視野障害の進行判定の際には,どの病変の進行であるのか理解するのが非常に困難になる.強度近視眼における緑内障様視野障害の有病率は約C20%といわれおり,5年以上の経過観察ではC4人のうちC3人に有意な視野障害進行を認めることがわかっている.これを非強度近視眼における緑内障と比較すると,有病率は非常に高く,進行ははるかに早いことが明らかである.強度近視眼の視野障害の特徴としては,通常の緑内障性視野障害が鼻側の視野欠損として描出されることが多いのに対し,耳側視野が障害されるパターンや,耳側視野障害に加え鼻側視野障害と合わせたひょうたん型の視野パターン,ときには中心暗点で発症するパターンなどバリエーションが多く,通常の緑内障のパターンとは異なることが多い点があげられる.また,強度近視眼では視神経乳頭は傾斜し,さまざまな方向に引き伸ばされていることが多いが,ときには巨大乳頭や小乳頭であったりと形状は多種多様であり,乳頭陥凹の評価も非常に困難となり,乳頭所見から視野障害パターンを推測することはきわめてむずかしい.近年の研究では,緑内障性視野障害の症例のうち視神経乳頭所見と一致しない視野障害パターンをもつ症例はC31%にのぼることが報告1)されていることからも,強度近視眼の緑内障性視野障害の診療のむずかしさが改めて示唆された.これらの理由から強度近視眼の緑内障性視野障害を通常の緑内障ととらえてよいのか,強度近視眼に特有なものであり緑内障とは違う病態としてとらえるべき*KyokoCOhno-MatsuiC&*TakeshiYoshida:東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科眼科学分野**TetsuyaYamamoto:岐阜大学大学院医学系研究科神経統御学講座眼科学分野0910-1810/18/\100/頁/JCOPY(1)C161

フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ球性白血病の眼内浸潤の1例

2018年1月31日 水曜日

《原著》あたらしい眼科35(1):152.155,2018cフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ球性白血病の眼内浸潤の1例杉本恭子眞下永春田真実下條裕史大黒伸行独立行政法人地域医療機能推進機構大阪病院眼科COcularIn.ltrationinaPatientwithPhiladelphiaChromosomePositiveAcuteLymphocyticLeukemiaKyokoSugimoto,HisashiMashimo,MamiHaruta,HiroshiShimojyoandNobuyukiOhguroCDepartmentofOphthalmology,JapanCommunityHealthCareOrganizationOsakaHospitalフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ球性白血病(Ph+ALL)の眼内浸潤症例を経験したので報告する.患者は55歳,男性.Ph+ALLに対し血液学的寛解とされていたが,左眼霧視を自覚し,2014年C3月に当院を紹介受診した.左眼には前房細胞,角膜後面沈着物および前房蓄膿を認めたが網膜病変を認めなかった.1週間後に前房蓄膿は自然消退していた.4月に左眼に網膜前蓄膿を認めたがC1カ月後に自然軽快した.8月に左眼に前房蓄膿が再発し,軽快せず眼圧上昇をきたしたため,前房洗浄,および前房水の細胞診を施行した.BCR/ABL陽性の幼弱なリンパ球(フィラデルフィア染色体陽性)を認め,Ph+ALLの眼内浸潤と診断した.メトトレキサート硝子体注射を複数回施行し症状は軽快した.眼内浸潤およびその自然消退を繰り返す疾患にはCBehcet病があるが,本症例のように急性白血病の眼内浸潤でも自然消退することがありうる.CAC55-year-oldCmale,CinChematologicCremissionCphaseCofCPhiladelphiaCchromosomeCpositiveCacuteClymphocyticleukemia(Ph+ALL)wasCreferredCtoCourChospitalCwithCblurredCvisionCinChisCleftCeyeCinCMarchC2014.CTheCleftCeyeChadaqueouscells,keraticprecipitatesandhypopyon,butnoretinallesions.Oneweeklater,thehypopyonhaddis-appearedbyitself.InApril,preretinalabscessinthelefteyewasrevealed,butitagaindisappearedspontaneously1CmonthClater.CHeCrelapsedCwithCanteriorCuveitisCandChypopyonCinCtheCleftCeyeCinCAugust.CTheChypopyonCwasCnotCrelieved.CConsequently,CintraocularCpressureCincreased.CAnteriorCchamberCirrigationCwithCaqueousC.uidCcytologyCwasperformed,andBCR/ABL-positiveleukemiccellsconsistentwiththediagnosisofPh+ALLweredetected.HereceivedCmultipleCintravitrealCmethotrexateCinjectionsCandCtheCsymptomCwasCrelieved.CSpontaneouslyCresolvingCattacksofhypopyonuveitisarehighlycharacteristicofBehcet’sdisease.However,inthiscasetheacuteleukemiamustbeconsideredthecauseoftheattacks.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)35(1):152.155,C2018〕Keywords:フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ球性白血病,前房蓄膿,網膜前蓄膿,メトトレキサート,自然消失.Philadelphiachromosomepositiveacutelymphocyticleukemia,hypopyon,preretinalabscess,methotorex-ate,spontaneouslyresolving.Cはじめにこれまで,急性リンパ球性白血病の眼内浸潤の報告例は散見される.しかし,フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ球性白血病(PhiladelphiaCchromosomeCpositiveCacuteClym-phoblasticleukemia:Ph+ALL)の眼内浸潤の報告例は非常にまれである.Ph+ALLは急性リンパ球性白血病のC15.30%を占め,その他の急性リンパ球性白血病に比べて予後不良とされている1).今回,筆者らは,Behcet病における眼発作のごとく,眼内浸潤およびその自然消失を繰り返すCPh+ALL症例を経験したので報告する.〔別刷請求先〕杉本恭子:〒553-0083大阪府大阪市福島区福島C4-2-78独立行政法人地域医療機能推進機構大阪病院眼科Reprintrequests:KyokoSugimoto,M.D,,DepartmentofOpthalmology,JapanCommunityHealthCareOrganizationOsakaHospital,4-2-78Fukusima,Fukusima-ku,Osaka-city,Osaka553-0083,JAPAN152(152)I症例患者:55歳,男性.主訴:左眼の霧視.現病歴:2014年C1月中旬左眼に霧視を自覚.2月上旬に他院血液内科より眼科に院内紹介された.左眼に前房細胞C2+,前房蓄膿,微細な角膜後面沈着物を認めるも後眼部には炎症所見を認めなかった.ステロイド頻回点眼および結膜下注射を数回施行するも症状は改善しなかったため,同年C3月中旬CJCHO大阪病院に紹介受診となった.既往歴:Ph+ALLに対し同種造血幹細胞移植(2013年C7月),高血圧,小児喘息.経過:初診時,視力は右眼C0.1(1.2C×sph.2.50D(cyl.1.00DCAx80°),左眼0.07(1.0C×sph.3.00D(cyl.0.75DAx140°)で,眼圧は右眼C15mmHg,左眼C15mmHgであった.陰部潰瘍,口腔粘膜のアフタ性潰瘍,皮膚症状は認めなかった.左眼細隙灯顕微鏡検査では,微細な細胞が角膜後面に付着し,前房細胞C3+であった.前房蓄膿を認めたが(図1a),前房蓄膿は頭位によって可動性を有さなかった.そのためCBehcet病のような可動性を有する好中球主体の前房蓄膿とは異なると診断した.眼底写真は前房炎症により軽度透見不良を認めたが,この時点で網膜や硝子体に明らかな病巣は認めず,視神経にも異常を認めなかった.前房水の細胞診を予定していたが,1週間後再受診したとき,前房蓄膿は自然に消退していたため,前房水の細胞診は中止となり経過観察となった(図1b).また,このとき,前房の細胞浸潤は自然に消退していた.4月受診時,網膜前にニボー様の白色塊の形成を認めたが,網膜脈絡膜病巣を認めず硝子体混濁も認めなかった(図2a).感染性ではないと判断し,経過観察したところ,1カ月後に自然消退していた(図2b).8月,左眼に再度前房蓄膿が出現したが,前回自然に消退したため自然消失する可能性を考え経過観察となった.しかし,今回は前房蓄膿が自然消失せず,徐々に増悪し,9月上旬には瞳孔領にかかるほど増悪した.また,左眼の眼圧も徐々に増悪し,47CmmHgまで上昇した(図3a).入院のうえ,左眼前房水の細胞診および前房洗浄を施行し,術中メトトレキサート(MTX)硝子体注射を行った.術中,虹彩に線維性増殖膜の付着を認め,.離除去を試みたが癒着が強く一部は残存した.細胞診の結果,classVで幼弱なリンパ球を認め,FISH法による染色体解析を行ったところ,BCR/ABL転座(フィラデルフィア染色体陽性)を認め,CPh+ALL眼内浸潤と診断した.術後,線維性増殖膜の残存部に合致して虹彩ルベオーシスが存在し,左眼にベバシズマブ硝子体注射を施行した.その後も左眼にCMTX硝子体注射を週C2回施行した.5回目のCMTX投与後,副作用による角膜上皮障害を認めたものの,前房蓄膿,虹彩ルベオーシスは軽快したためC9月下旬に退院となった(図3b).その後眼症状の再発なく,全身病状も安定していたが,2015年C5月四肢に皮膚結節,頸部に軟部腫瘤が出現し,前医にて皮膚生検の結果CPh+ALLの浸潤病巣と診断された.その後骨髄,末梢血にも白血病細胞が出現したため,9月より化学療法を開始した.同年C10月右眼に前房蓄膿を認めたためC11月入院のうえ,右眼に計C3回CMTX硝子体注射施行し,MTXによる角膜上皮障害を認めたものの,前房蓄膿は軽快し退院となった.その後眼症状の再発は認めなかったが,Ph+ALLの全身症状が増悪し,前医にてC2度目の同種造血幹細胞移植を施行された.最終受診日(2016年C6月)の視力は右眼(1.2C×sph.2.50D(cyl.1.00DCAx75°),左眼(1.2C×sph.3.5D(cyl.2.0DAx15°)で眼圧は右眼13mmHg,左眼C15CmmHgであった.CII考察前房蓄膿が生じるぶどう膜炎としてCBehcet病,急性前部ぶどう膜炎が代表的であるが,その他に潰瘍性大腸炎,糖尿病など全身疾患に伴うぶどう膜炎,眼内炎,腫瘍による仮面症候群などでも生じる.経過中前房蓄膿,眼底病変が出現し自然消失するぶどう膜炎の鑑別疾患としてCBehcet病が重要である.本症例で眼内浸潤が経過観察にて自然軽快し,繰り返した点についてはCBehcet病に類似している2).しかし,今回の症例では初診時,有痛性口腔内アフタ性潰瘍,結節性紅斑などの皮疹,陰部潰瘍などCBehcet病を疑う全身症状は認めなかった.また,本症例で出現した前房蓄膿はCBehcet病に特徴的なニボーを形成したが,体位変換などで移動する前房蓄膿ではなかった点で異なっていた.白血病における眼内病変には,網膜への浸潤による網膜出血,綿花状白斑,脈絡膜浸潤による網膜.離,硝子体混濁,貧血・血小板減少・白血球増多などの造血障害により生じる網膜症,中枢性白血病に二次的に生じる乳頭浮腫や視神経萎縮などの視神経症,また日和見感染など多彩な症状があげられる.しかし,虹彩に浸潤しぶどう膜炎症状を呈することは比較的まれであるとされている.Rothovaらは仮面症候群において前房内浸潤は全体のC12%程度だと報告している3).白血病に伴うぶどう膜炎の診断は,眼所見から仮面症候群を疑い,前房穿刺,骨髄穿刺などを行い確定される.白血病の寛解期に眼症状が全身症状に先発して現れることが少なくないため,白血病の既往をもつ患者にぶどう膜炎症状が出現した場合は注意が必要である.CPh+ALLの眼内浸潤に関しては滲出性網膜.離が生じた症例や前房蓄膿が出現した症例が報告されている4,5).また,今回の筆者らの報告と同様にCPh+ALLに合併した眼症状として全身症状に先立ち前房蓄膿が生じ,前房水の細胞診によ図1a2014年3月初診時:左眼細隙灯顕微鏡写真図1b2014年3月(初診から1週間後):左眼細隙灯顕微鏡写真前房蓄膿を認める.前房蓄膿は自然消退している.図2a2014年4月:左眼眼底写真図2b2014年5月:左眼眼底写真網膜前蓄膿の出現を認めた.網膜前蓄膿はC1カ月後自然消退した.図3a2014年9月初旬:左眼細隙灯顕微鏡写真図3b2014年9月下旬:左眼細隙灯顕微鏡写真前房蓄膿が増悪し,瞳孔領にかかっている.前房蓄膿,前眼部炎症は消退し,虹彩ルベオーシスも改善している.りCPh+ALL再発が指摘された症例が報告されている5).全身所見が出現していない時点で自然消退する前房蓄膿をきたした場合,Behcet病だけでなくCALLの可能性も考慮してその後の経過を注意深くみていく必要があると思われる.以前から成人の急性リンパ球性白血病の再発・難治症例対して大量のCMTX療法が救助療法として行われてきた.最近では,成人の急性リンパ球性白血病に対する寛解後療法に大量のCMTXを用いた治療プロトコールも増えている.今回全身の眼以外でのCALLの明らかな再発がなかったため,眼内浸潤に対して局所療法(MTX硝子体注射)を複数回施行した結果,著効した.前房蓄膿によりCPh+ALLの再発を指摘された症例の報告はあるが,この報告では治療について言及されておらず6),Ph+ALLの眼内病変に対して,MTX硝子体注射により治療した報告は見つからなかった.ALLの眼浸潤で全身化学療法をしない場合(眼局所治療の場合),放射線治療が一般的であるが,今回の経験により,原発性眼内悪性リンパ腫と同様に,ALLの眼内浸潤に対してもCMTXの硝子体注射で制御できる可能性があるのではないかと考えられた.今回の症例の大きな特徴は,経過観察中に一度前房蓄膿および網膜前蓄膿が自然に改善したことである.自然消退するメカニズムはよくわかっていないが,自然消失した理由としてCgraftCversusCleukemia(GVL)効果の関与がありうる.GVL効果とは,移植されたドナーの骨髄中のCT細胞がレシピエントの白血病細胞を傷害する有益な免疫拒否反応のことである.本症例ではCPh+ALLに対しCHLA半合致骨髄移植されていた.寛解期にCPh+ALLが再発し,白血病細胞の眼内浸潤により前房蓄膿,網膜前蓄膿が出現したが,GVL効果により白血病細胞の浸潤がいったん抑えられ,自然消失した可能性が考えられる.その後炎症の改善に伴いCGVL効果が減弱し,前房蓄膿が再度出現したと推論できる.本症例はCPh+ALLの寛解期とされながらも眼内浸潤を認めた.前房蓄膿や網膜前蓄膿が自然消退する代表疾患にはBehcet病があるが,本症例のようにCALLの眼内浸潤により生じる蓄膿も自然消退することがありうるため,鑑別疾患として留意する必要がある.また自然消退しない場合,MTX眼局所治療が原発性眼内悪性リンパ腫と同様に選択肢となりうることが示された.文献1)OttmannCOG,CWassmannCB:TreatmentCofCPhiladelphiaCchromosome-postiveCacuteClymphoblastiClukemia.CHema-tologiyAmSocHematolEducProgram1:118-122,C20052)鈴木潤:前房蓄膿.所見から考えるぶどう膜炎(園田康平,後藤浩編),p81-88.医学書院,20133)RothovaCA,COoijmanCF,CKerkho.CFCetCal:UveitisCMas-queradeSyndoromes.Ophthalmology108:386-399,C20014)YiCDH,CRashidCS,CCibasCESCetCal:AcuteCunilateralCleuke-micChypopyonCinCanCadultCwithCrelapsingCacuteClympho-blasticleukemia.AmJOphthalmolC139:719-721,C20055)KimCJ,CChangCW,CSagongCM:BilateralCserousCretinalCdetachmentCasCaCpresentingCsignCofCacuteClymphoblasticCleukemia.KoreanJOphthalmolC24:245-248,C20106)Hurtado-SarrioM,Duch-SamperA,Taboada-EsteveJetal:AnteriorCchamberCin.ltrationCinCaCpatientCwithCPh+acuteClymphoblasticCleukemiaCinCremissionCwithCimatinib.CAmJOphthalmolC139:723-724,C2005***

バルベルト緑内障インプラント手術を行った虹彩角膜内皮症候群の1例

2018年1月31日 水曜日

《原著》あたらしい眼科35(1):149.151,2018cバルベルト緑内障インプラント手術を行った虹彩角膜内皮症候群の1例福戸敦彦木内良明広島大学大学院医歯薬保健学研究院統合健康科学部門視覚病態学CBaerveldtGlaucomaImplantSurgeryforIridocornealEndothelialSyndromeAtsuhikoFukutoandYoshiakiKiuchiCDepartmentofOphthalmologyandVisualScience,GraduateSchoolofBiomedicalScicnces,HiroshimaUniversity複数回の線維柱帯切除術を行ったが,良好な眼圧コントロールが得られずバルベルト緑内障インプラント手術を行った虹彩角膜内皮(ICE)症候群のC1例を経験したので報告する.症例はC66歳,男性.線維柱帯切開術をC1回,線維柱帯切除術をC3回,濾過胞再建術をC4回行ったが,眼圧コントロール不良であり,視野障害が進行し当科紹介となった.左眼CCogan-Reese症候群による続発緑内障と診断し,バルベルト緑内障インプラント手術を行った.術後C1年以上C22mmHg未満の眼圧を維持している.バルベルト緑内障インプラント手術はCICE症候群による続発緑内障に対して有効であった.CWereportthecaseofapatientwhounderwentBaerveldtglaucomaimplantsurgeryforiridocornealendothe-lialCsyndromeCbecauseCgoodCintraocularCpressureCcontrolCwasCnotCprovidedCbyCrepeatedCtrabeculectomy.CTheCpatient,a66-year-oldmale,hadundergonetrabeculotomyonce,trabeculectomythreetimesandblebrevisionfourtimesinhislefteye.Sincethoseprocedureshadbeenine.ectiveinreducinghisintraocularpressureandleftvisu-al.eldhadsubsequentlydeteriorated,hewasreferredtoourhospital.WediagnosedsecondaryglaucomaduetoCogan-ReeseCsyndromeCandCthereforeCperformedCBaerveldtCglaucomaCimplantCsurgery.CIntraocularCpressureCwasCmaintainedatlessthan22CmmHgforover12monthssincethelastsurgery.Baerveldtglaucomaimplantsurgeryseemstobee.ectiveinglaucomasecondarytoiridocornealendothelialsyndrome.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C35(1):149.151,C2018〕Keywords:虹彩角膜内皮症候群,Cogan-Reese症候群,バルベルト緑内障インプラント.ICEsyndrome,Cogan-Reesesyndrome,Baerveldtglaucomaimplant.Cはじめに虹彩角膜内皮(iridocornealCendothelial:ICE)症候群は片眼性で角膜内皮異常,周辺虹彩前癒着,虹彩異常,続発緑内障を特徴とする疾患である.ICE症候群による緑内障はしばしば難治性で,点眼による眼圧コントロールが困難となった場合にはおもに線維柱帯切除術が行われてきた.一方,従来の緑内障手術が実施困難な症例や施行したものの奏効しなかった症例などに限定して,チューブシャント手術がわが国でも近年承認された.今回,複数回の緑内障手術を行ったが良好な眼圧コントロールが得られず,バルベルト緑内障インプラント手術を行ったCICE症候群のC1例を経験したので報告する.CI症例66歳,男性.主訴は左眼の視野狭窄である.左眼開放隅角緑内障と診断されC2005年までに白内障手術をC1回,線維柱帯切開術をC1回,線維柱帯切除術をC3回,濾過胞再建術を4回行ったが,2015年C5月から眼圧がC20CmmHgを超え,視野も悪化したためC2015年C9月に広島大学病院眼科に紹介されて受診した.初診時の視力は右眼C1.0(1.2C×sph+1.25D(cyl.0.5DAx80°),左眼C0.3(0.5C×sph.0.75D(cyl.1.75DCAx90°)〔別刷請求先〕福戸敦彦:〒734-8551広島市南区霞C1-2-3広島大学大学院医歯薬保健学研究院統合健康科学部門視覚病態学Reprintrequests:AtsuhikoFukuto,M.D.,DepartmentofOphthalmologyandVisualScience,GraduateSchoolofBiomedicalSciences,HiroshimaUniversity,1-2-3Kasumi,Minami-ku,Hiroshima734-8551,JAPAN0910-1810/18/\100/頁/JCOPY(149)C149図1初診時左眼前眼部写真6時にきのこ状の虹彩結節がある.図3術後前眼部写真チューブの先端は後房に位置している.で,眼圧は右眼C14CmmHg,左眼C18CmmHgであった.右眼は前眼部,中間透光体および眼底に特記すべき所見はなかった.左眼は角膜に混濁や浮腫はなく,前房は正常深度で炎症細胞はなかった.瞳孔の偏位はなく,ぶどう膜外反もなかった.下方の虹彩表面に亜有茎性の結節があったが,萎縮巣や孔形成はなかった(図1).下方隅角に広範な周辺虹彩前癒着があった.左眼視神経乳頭は蒼白で陥凹拡大があった.スペキュラーマイクロスコープ検査では角膜内皮細胞密度は右眼2,222個/mmC2,左眼C1,541個/mmC2と左眼で減少していた.左眼の内皮細胞は大小不同があり,細胞内に暗調な部分があった(図2).視野は湖崎分類で右眼Ia,左眼CIIIaであった.経過:左眼CCogan-Reese症候群による続発緑内障と診断し,2015年C11月左眼耳下側にバルベルト緑内障インプラントCBG101-350を挿入した.結膜切開は円蓋部基底で行い,プレートを下直筋と外直筋の下に挿入し,7-0シルクで固定図2左眼スペキュラーマイクロスコープa:右眼.Cb:左眼.左眼の角膜内皮細胞は境界が不鮮明で大小不同が目立ち,細胞内にCdarkareaがある.Cした.術直後の低眼圧を予防するためC3-0ナイロン糸をチューブ内に留置した.チューブを後房に挿入しC8-0バイクリル糸で結紮し,SherwoodCslitを作製した(図3).8-0バイクリル糸で結膜縫合し閉創した.術後C22日でチューブ内の3-0ナイロン糸を抜去した.術後C1年が経過し,ビマトプロスト点眼,ブリンゾラミド・チモロール配合剤点眼,ブリモニジン点眼の併用で左眼眼圧はC16.19CmmHgとコントロール良好であった.また術後合併症としてチューブの露出や閉塞はなく,術後の角膜内皮細胞密度はC1,770個/mmC2と減少していなかった.CII考按ICE症候群は,異常な角膜内皮細胞が増殖膜となり前房隅角を障害する開放隅角緑内障や,増殖膜の収縮により幅広い周辺虹彩前癒着を形成する閉塞隅角緑内障が起こり,高率に緑内障を合併する1).Cogan-Reese症候群,Chandler症候群,進行性虹彩萎縮の三つのサブタイプが存在し,Cogan-Reese症候群は虹彩表面の結節を伴い,Chandler症候群は虹彩にほとんど異常を示さず,進行性虹彩萎縮は虹彩の萎縮が強く,孔形成を伴う2).本症例は角膜内皮細胞の減少と形態異常に加えて,片眼性の虹彩結節が観察されたためCCogan-Reese症候群と診断した.典型例では色素を伴った結節が虹彩表面に多数観察されるが,本症例では虹彩の変化は比較的軽微であった.また初診時には虹彩の異常がなくCChandler症候群と診断されたが,経過観察中に虹彩結節が出現し150あたらしい眼科Vol.35,No.1,2018(150)Cogan-Reese症候群と診断が変更された症例も報告されており3),本症例も前医ではCCogan-Reese症候群との診断に至らなかったと思われた.Cogan-Reese症候群は異常な角膜内皮細胞が線維柱帯に限局するCChandler症候群と比べて緑内障が重症化しやすく,また線維柱帯切除術による眼圧コントロールが困難であると考えられている4).ICE症候群による緑内障は難治性で薬物療法にしばしば抵抗を示し,マイトマイシンCC併用線維柱帯切除術が行われてきた5).その後チューブシャント手術が登場し,ICE症候群に続発する緑内障に対する代謝拮抗薬(マイトマイシンCCもしくはC5-FU)併用線維柱帯切除術とチューブシャント手術の術後成績を比較し,1年生存率はほぼ同等だがC3年生存率やC5年生存率といった長期予後はチューブシャント手術が有意に良好であったと報告されている4).わが国においてCICE症候群に対しチューブシャント手術を行ったという報告は少ないが,Chandler症候群に対して線維柱帯切除術併用バルベルト緑内障インプラント手術を行った報告があり,術後経過観察期間はC5カ月と短期ではあるが十分な眼圧下降が得られている6).今回すでに複数回の線維柱帯切除術や濾過胞再建術を行っており,またCICE症候群のなかでも眼圧コントロールが困難なCCogan-Reese症候群であることからチューブシャント手術を選択した.バルベルト緑内障インプラントには前房挿入型のCBG103-250,BG101-350と硝子体切除を要する毛様体扁平部挿入型のCBG102-350がある.浅前房や角膜移植後といったチューブを前房に挿入すると角膜内皮代償不全を起こしやすい症例に対してチューブを後房に挿入すると,角膜内皮保護に有効であったと報告されている7).本症例も角膜内皮細胞数がやや少ない症例であり,チューブが角膜内皮に接触するのを防ぐため,本来前房に挿入するCBG101-350のチューブを後房に挿入した.術後C1年の経過観察で,良好な眼圧コントロールが得られており,角膜内皮も減少しなかった.しかし,ICE症候群は進行性の疾患であり,周辺虹彩前癒着が拡大して隅角閉塞を起こし眼圧が上昇してくる可能性がある.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)LaganowskiHC,KerrMuirMG,HitchingsRA:GlaucomaandCtheCiridocornealCendothelialCsyndrome.CArchCOphthal-molC110:346-350,C19922)ShieldsMB:Progressiveessentialirisatrophy,Chandler’ssyndrome,andtheirisnevus(Cogan-Reese)syndrome:aspectrumofdisease.SurvOphthalmolC24:3-20,C19793)WilsonCMC,CShieldsCMB:ACcomparisonCofCtheCclinicalCvariationsCofCtheCiridocornealCendothelialCsyndrome.CArchCOphthalmolC107:1465-1468,C19894)DoeEA,BudenzDL,GeddeSJetal:Long-termsurgicaloutcomesCofCpatientsCwithCglaucomaCsecondaryCtoCtheCiri-docornealCendothelialCsyndrome.COphthalmologyC108:C1789-1795,C20015)LanzlIM,WilsonRP,DudleyDetal:Outcomeoftrabec-ulectomywithmitomycin-Cintheiridocornealendothelialsyndrome.OphthalmologyC107:295-297,C20006)川守田珠里,濱中輝彦,百野伊恵:高度の高眼圧を示す症例に対する線維柱帯切除術併用チューブシャント手術─病理学的検査から判明したCChandler症候群.あたらしい眼科C31:1215-1218,C20147)WeinerCA,CCohnCAD,CBalasubramaniamCMCetCal:Glauco-maCtubeCshuntCimplantationCthroughCtheCciliaryCsulcusCinCpseudophakiceyeswithhighriskofcornealdecompensa-tion.JGlaucomaC19:405-411,C2010***(151)あたらしい眼科Vol.35,No.1,2018C151

点状表層角膜症を有する緑内障患者における実用視力

2018年1月31日 水曜日

《原著》あたらしい眼科35(1):144.148,2018c点状表層角膜症を有する緑内障患者における実用視力湖崎淳前田直之湖崎亮湖崎眼科CFunctionalVisualAcuityofGlaucomaPatientswithSuper.cialPunctateKeratopathyJunKozaki,NaoyukiMaedaandRyoKozakiCKozakiEyeClinic目的:緑内障点眼は長期にわたり使用し,点状表層角膜症(SPK)が起こる可能性が高い.そこで,SPKが視機能にどのように影響するかを,緑内障点眼を使用しCSPKのみられたC22名C40眼で調査した.方法:視機能を評価するため,実用視力を測定し,スタート時視力より何段階低下したかで評価した.SPKの及ぶ範囲で,中央群と非中央群のC2群に分けた.結果:中央群はC19眼で非中央群はC21眼であった.中央群のうちスタート時視力に対して,実用視力がC3段階低下したものがC78.9%,4段階低下したものがC78.9%,5段階低下したものがC57.9%であった.平均低下はC4.6段階であった.非中央群ではそれぞれC47.6%,33.3%,4.8%であり,平均低下はC2.7段階であった.結論:SPKが強い場合や角膜中央部に及ぶ場合は,実用視力が低下する可能性がある.視力や視野がそれほど悪くなくても,視機能低下を訴える患者の場合は,角膜上皮障害にも注意を払い,点眼を選択する必要があると思われた.TheCe.ectCofCsuper.cialCpunctateCkeratopathy(SPK)onCfunctionalCvisualCacuity(FVA)wasCevaluatedCinC40Ceyesof22glaucomapatientswhohadSPKduetoglaucomaeyedrops.In19eyes,SPKwasfoundatthecentralzoneofthecornea(Centergroup)andoutsidethecentralzonein21eyes(Non-centergroup).TheincidencesoflossofaverageFVAat3,4and5linesormorefromthebaselinewere78.9,78.9and57.9%intheCentergroup(Meanloss:4.6lines),and47.6,33.3and4.8%intheNon-centergroup(Meanloss:2.7lines),respectively.TheresultsCsuggestCthatCFVACeasilyCdeterioratesCwhenCSPKCisCinCtheCcentralCzoneCofCtheCcornea.CAttentionCshouldCbeCpaidCtoCtoxicCkeratopathyCwhenCpatientsCclaimCdeteriorationCofCvisionCwithoutCtheClossCofCvisualCacuityCorCvisualC.eld.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)35(1):144.148,C2018〕Keywords:緑内障点眼,点状表層角膜症,視機能,実用視力.glaucomaeyedrops,super.cialpunctatekeratop-athy(SPK),visualfunction,functionalvisualacuity.はじめに緑内障点眼は長期にわたり使用するため,薬剤による細胞毒性や組織毒性により点状表層角膜症(super.cialpunctatekeratopathy:SPK)が生じる可能性が高い1.6).以前,筆者が調査したところ,緑内障点眼を使用している患者C882眼のうちC47.5%にCSPKがみられた4).そのほとんどがCAD分類7)でA+D<3の軽症例であったが,A+D>4の重症例は12.8%にみられた4).SPKの影響として,異物感,易感染性,そして視機能障害が考えられる.SPKが広範囲や高密度に発生している例では高次収差の悪化がみられるが(図1),視力への影響は不明である.SPKによる視機能障害のなかには通常の視力検査では検出できない実用視力の低下がある.人が集中してものを見るとき,瞬きが抑制される.このような状態での視機能を評価しようとしたのが実用視力である8).通常の視力検査で得られた視力をスタート時視力とし,1.5秒ごとに視標が提示される.正答誤答によって視標の大きさが変わりC1分間の平均視力と視力維持率が測定される.これは,注視していると徐々に視力が低下することを評価している.実用視力の経時的な低下は,新聞などを見ていると霞んでくる,などの自覚症状に該当し,実臨床の現場でしばしば遭遇する.SPKが広範囲,高密度のドライアイ眼では高次収差の悪化,実用視力の低下がみらることが報告さC〔別刷請求先〕湖崎淳:〒545-0021大阪府大阪市阿倍野区阪南町C1-51-10湖崎眼科Reprintrequests:JunKozaki,M.D.,Ph.D.,KozakiEyeClinic,1-51-10Hannan-cho,Osaka545-0021,JAPAN144(144)れている9.11)が緑内障眼での報告はない.そこで,今回は緑内障点眼を使用しCSPKが発生している患者の実用視力について調査した.CI対象および方法平成C28年C10月からのC1カ月間で,当院で緑内障点眼を投与しCSPKのみられたC22例C40眼(平均年齢C69.8C±10.6歳,男性C4例,女性C18例,MD:C.5.34±4.64CdB)の実用視力を測定した.症例内訳は原発開放隅角緑内障C14人,正常眼圧緑内障C7人,高眼圧症C1人であった.視力はすべて矯正0.9以上で,視機能に影響を及ぼす可能性のある緑内障手術後,角膜混濁のある症例,眼圧がC20CmmHg以上の症例は省いた.実用視力はコーワ社製特殊視力検査装置CAS-28を用いて測定した8).この装置は視力の経時的変動を記録し,1分間の平均視力を表示する.視標の提示時間はC3秒とした.通常の視力検査で得られた矯正視力をスタート時視力として入力した.SPKの及んでいる範囲で,中央群と非中央群に分けて検討した.CII結果予備調査として,緑内障点眼を使用しているがCSPKがない緑内障症例C13眼(平均年齢C69.0C±8.4歳,平均CMD:C.10.78±6.70dB,スタート時視力:1.0.1.2,平均C1.2C±0.06)の実用視力を測定した.SPKがみられない群での視野障害(Humphrey視野計の)MD値とスタート時視力と平均視力の低下段階との決定係数はCrC2=0.011で,中心視野障害がなく,SPKのみられない緑内障患者においては,視野障害と実用視力の低下の間には有意な相関を認めなかった.角膜中央部にCSPKが及んでいない症例(非中央群)はC21眼(平均年齢C67.9C±10.6歳,MD:C.5.44±5.15CdB,スタート時視力:0.9.1.2,平均C1.1C±0.1),角膜中央部にCSPKが及んでいる症例(中央群)はC19眼(69.8C±9.7歳,MD:C.5.23CdB±3.90CdB,スタート時視力:0.9.1.2,平均C1.1C±0.1)であった.スタート時視力は両群に差はなかった.非中央群のうち,平均視力がスタート時視力よりC3段階以上低下している症例はC10眼C47.6%,4段階以上低下がC7眼C33.3%,5段階低下がC1眼C4.8%であった.非中央群の代表症例を図2と図3に示す.中央群ではC3段階以上低下している症例はC15眼C78.9%であった.4段階以上低下もC15眼C78.9%,5段階低下はC11眼C57.9%であった.中央群の代表症例を図4と図5に示す.いずれも,両群間に有意差がみられた(Fisher検定).また,平均視力低下量は非中央群ではC2.7段階,中央群ではC4.6段階で両群間に有意差がみられた(Mann-WhitnetUtest)(表1).両群のスタート時視力と平均視力の分散図を図6に示す.C6秒7秒8秒9秒10秒RMS:rootmeansquare:収差量を数量的に表示図1SPK発症例の高次収差68歳,女性.プロスタグランジン製剤点眼使用.10秒後の高次収差が悪化.CIII考按緑内障点眼を使用している患者にはCSPKがよくみられる4).原因は緑内障点眼なのか,ドライアイが影響しているのかは不明であるが,緑内障点眼が悪化要因にはなっていると思われる.緑内障点眼によりCSPKが発生または増悪すると,涙液層に異常をきたし,涙液層の安定性が低下すると考えられる.その視機能を評価するのに高次収差の連続測定が有用であるとCKohら9)は報告している.しかし,高次収差は視機能の質の評価はできても,視力の変動を直接測定することはできない.今回筆者らは,視機能の動的な変動を評価するために実用視力を用いた.実用視力は,ドライアイによる角膜障害のみならず,他の疾患の視機能の評価にも応用されている12).今回の測定で,毎回の視標の提示時間はC3秒とした.日常視においては視力検査時のように目標物を固視することは少なくC2.3秒ごとに視線が動いていると考えたからである.その結果,角膜中央にCSPKのある症例では,実用視力がより低下する傾向があった.Kohら10)も角膜中央にCSPKのある例は,中央にCSPKのない例より高次収差は大きいと報告している.また,Kaidoら11)はドライアイの症例で角膜染色が高度になるに従って実用視力は低下し,視力維持率も低下するとしている.今回の筆者らの緑内障の症例でも,角膜中央にCSPKのある症例ではC78.9%でC4段階の視力低下,57.9%でC5段階の視力低下がみられた.緑内障点眼で図2非中央群の代表症例65歳,女性,プロスタグランジン製剤点眼,炭酸脱水酵素阻害薬/Cb遮断薬配合剤を両眼に使用.SPKは中央部に及んでいない.図3非中央群の代表症例(図2)の平均視力右眼スタート視力C1.2,平均視力C1.16.左眼スタート視力C1.2,平均視力C1.12.スタート時視力と平均視力の差はない.図4中央群の代表症例62歳,男性.プロスタグランジン製剤点眼,アドレナリンCa2受容体作動薬点眼,炭酸脱水酵素阻害薬/Cb遮断薬配合剤を両眼に使用.SPKは中央部に及んでいる.図5中央群の代表症例(図4)の平均視力右眼スタート視力C1.0,平均視力C0.46.左眼スタート視力C1.0,平均視力C0.54.右眼はC5段階低下.左眼はC4段階低下.C表1スタート視力と平均視力(実用視力)との差3段階以上視力低下4段階以上視力低下5段階視力低下平均低下段階非中央群2C1眼中央群1C9眼10眼C47.6%15眼C78.9%p<C0.05Fisher検定7眼3C3.3%15眼C78.9%p<C0.01Fisher検定1眼C4.8%11眼C57.9%p<C0.01Fisher検定C2.7段階4.6段階p<C0.05Mann-WhitneyUtest平均視力非中央群と中央群では視力低下に有意差がみられる.1.210.8中央群0.6非中央群0.40.2000.20.40.60.811.2スタート時視力図6中央群と非中央群のスタート時視力と平均視力の分散図中央群(◆)のほうが,非中央群(〇)より平均視力の低下していることがわかる.SPKが発生しても,ドライアイと同じようにCSPKによる収差ないし散乱が増加したためと思われた.緑内障患者で視力や視野が良好でも,なんとなく風景が霞んで見えたり,物を見つめていると視力が下がったような気がする患者には,角膜上皮障害にも注意を向け,薬剤毒性角膜症による視機能への影響を考え,防腐剤フリーの点眼に変更するか,配合剤に変更し点眼本数を減らすなどを考慮する必要があると思われた.利益相反:利益相反公表基準に該当なし文献1)高橋信夫,佐々木一之:防腐剤とその眼に与える影響.眼科31:43-48,C19892)小室青,横井則彦,木下茂:ラタノプロストによる角膜上皮障害.日眼会誌104:737-739,C20003)湖崎淳,大谷伸一郎,鵜木一彦ほか:トラボプロスト点眼液の臨床使用成績―眼表面への影響―.あたらしい眼科C26:101-104,C20094)湖崎淳:抗緑内障点眼薬と角膜上皮障害.臨眼C64:729-732,C20105)山崎仁志,宮川靖博,目時友美ほか:トラボプロスト点眼液の点状表層角膜症に対する影響.あたらしい眼科C27:C1123-1126,C20106)薮下麻里江,三宅功二,荒川明ほか:角膜上皮に対するタフルプロスト点眼液の影響.臨眼67:1129-1132,C20137)宮田和典,澤充,西田輝夫ほか:びまん性表層角膜炎の重症度の分類.臨眼48:183-188,C19948)海道美奈子:新しい視力計:実用視力の原理と測定方法.あたらしい眼科24:401-408,C20079)KohCS,CMaedaCN,CHiroharaCYCetCal:SerialCmeasurementsCofChigher-orderCaberrationsCafterCblinkingCinCnormalCsub-jects.InvestOphthalmolVisSciC47:3318-3324,C200610)KohCS,CMaedaCN,CHiroharaCYCetCal:SerialCmeasurementsCofhigher-orderaberrationsafterblinkinginpatientswithdryeye.InvestOphthalmolVisSciC49:133-138,C200811)KaidoCM,CIshidaCR,CDogruCMCetCal:TheCrelationCofCfunc-tionalCvisualCacuityCmeasurementCmethodologyCtoCtearCfunctionsandocularsurfacestatus.JpnJOphthalmolC55:C451-459,C201112)石田玲子:実用視力の臨床応用:ドライアイから白内障まで.あたらしい眼科24:409-413,C2007***