特集●ドライアイの新しい治療あたらしい眼科32(7):965.971,2015特集●ドライアイの新しい治療あたらしい眼科32(7):965.971,2015炎症抑制による治療法TreatmentofDryEyeDiseaseviatheRegulationofInflammation小川葉子*はじめに近年,ドライアイのリスクファクターとして炎症の役割が注目されている.炎症を制御する代表的な薬剤はステロイド剤であり,ついでシクロスポリン,タクロリムスがあげられる.欧米ではドライアイに対する治療の第一選択薬としてシクロスポリン点眼が用いられているが,涙液を層別に診断することが推奨されているわが国の観点からは,より詳細な涙液層別の治療法が推奨されている.近年,臨床応用となったレバミピド点眼に抗炎症効果があるとされている.ジクアホソル点眼にも別のメカニズムで抗炎症効果を担う可能性が見出されている.トラニラスト点眼は薬剤のもつ抗炎症および抗線維化効果により炎症が主体をなす移植片対宿主病(graftversushostdisease:GVHD)によるドライアイに有効であることが示されている.本稿では炎症制御の観点からドライアイの治療法を解説する.Iドライアイを引き起こすリスクファクタードライアイは不快感,視覚障害,涙液層の不安定性,眼表面障害を伴う多因子疾患であり,慢性GVHD(図1)やSjogren症候群(図2)を含む多くの自己免疫疾患に合併することが知られている.わが国では炎症はドライアイのリスクファクターとされている.炎症は広く生体に対する刺激の防御反応とされる.紫外線,酸化ストレス,老化,免疫応答の持続的な刺激から慢性炎症に至るとドライアイが惹起されると考えられる.軽症から重症まで幅広いドライアイのタイプがあるが,自己免疫疾患など全身疾患に伴うようなドライアイは,涙腺,結膜,マイボーム腺を主体とした眼表面組織の免疫応答の破綻により慢性炎症に至り重症型を呈する場合が多い.このような慢性炎症がドライアイの中心的役割をなすタイプのドライアイにはSjogren症候群,Stevens-Johnson症候群,眼類天疱瘡,慢性GVHDがあげられ,治療に苦慮しているのが現状である.本稿では炎症を主体とする重症ドライアイに対する治療のひとつとして炎症制御をとりあげ,各治療法について作用機序を中心に解説する(表1).IIステロイド剤ドライアイへの抗炎症治療のために,現在用いられている各種ドライアイ点眼治療薬に加えて,低力価ステロイド点眼による加療が日本ドライアイ研究会からTearFilmOrientedTherapy(TFOT)としてで推奨されている(http://www.dryeye.ne.jp/tfot/index.html).スロイド剤は症状に応じて短期治療とし,漸減後中止することが望ましい.Sjogren症候群,慢性GVHDなどの免疫応答の異常が関与するドライアイにはステロイド点眼治療が有効であるが1),全身治療やGVHD予防としてステロイドの全身投与をすでに受けているため,白内障,緑内障などの副作用予防のため,点眼投与量,投与期間は最小限に抑える.全身ステロイド漸減時期にドライアイが発症し*YokoOgawa:慶應義塾大学医学部眼科学教室〔別刷請求先〕小川葉子:〒160-8582東京都新宿区信濃町35慶應義塾大学医学部眼科学教室0910-1810/15/\100/頁/JCOPY(43)965966あたらしい眼科Vol.32,No.7,2015(44)た場合,眼科的に低力価ステロイド点眼を使用し,可能な限り短期間で免疫抑制薬の点眼にスイッチする.薬剤の治療開始,漸減,中止について内科と眼科の綿密な連携が大切である2).Stevens-Johnson症候群によるドライアイはステロイド全身投与により治療するが,発症早期から眼局所にべタメサゾン眼軟膏を抗菌薬眼軟膏とともに1日4回眼表面に点入することが推奨されている.ステロイドには免疫抑制作用と抗炎症作用の二面性がある.サイトカインの産生抑制やアラキドン酸代謝にかかわる酵素の発現抑制によりプロスタグランジン(PG)産生を抑制する3).細胞膜にあるリン脂質がアラキドン酸になるときのホスホリパーゼA2に作用するため,ロ図1GVHDのドライアイの涙腺組織像ヘマトキシリンエオジン染色所見.中等度の導管周囲に浮腫状の線維化と著しい炎症細胞浸潤を認め,浮腫状線維化(B.図の中央領域)に隣接した高度な線維化部位(B.図の右側領域)が認められる.原倍率A:100倍.B:200倍.AB図2Sjogren症候群によるドライアイの涙腺組織図GreenSpan分類Grade4Sjogren症候群をはじめとした重症ドライアイでは涙腺に著しいリンパ球浸潤が生じ,導管,腺房が破壊される.T細胞,B細胞に加えてマクロファージも重要な役割を担う.原倍率100倍.表1抗炎症効果が期待される既存薬と将来の治療薬既存薬作用ステロイド炎症細胞浸潤抑制,マクロファージの機能抑制,サイトカインやケモカインの産生抑制,プロスタグランジンなどの炎症メディエーターの産生抑制,血管透過性抑制により広範囲な抗炎症作用シクロスポリンT細胞の活性化抑制レバミピドT細胞,単球の活性化抑制,免疫担当細胞,上皮細胞のサイトカイン産生抑制ジクアホソル?涙液サイトカイン,障害関連分子のwashout?タクロリムスT細胞の活性化抑制トラニラストCD4陽性T細胞におけるSTAT1-CXCL9の活性化抑制将来の治療薬作用オメガ3抗炎症効果アンギオテンシンタイプ1受容体阻害薬炎症細胞抑制,線維芽細胞活性化抑制IL-1a受容体阻害薬眼表面炎症抑制IL-6受容体阻害薬自己免疫応答カスケードの抑制DNAase非感染性炎症の抑制図1GVHDのドライアイの涙腺組織像ヘマトキシリンエオジン染色所見.中等度の導管周囲に浮腫状の線維化と著しい炎症細胞浸潤を認め,浮腫状線維化(B.図の中央領域)に隣接した高度な線維化部位(B.図の右側領域)が認められる.原倍率A:100倍.B:200倍.AB図2Sjogren症候群によるドライアイの涙腺組織図GreenSpan分類Grade4Sjogren症候群をはじめとした重症ドライアイでは涙腺に著しいリンパ球浸潤が生じ,導管,腺房が破壊される.T細胞,B細胞に加えてマクロファージも重要な役割を担う.原倍率100倍.表1抗炎症効果が期待される既存薬と将来の治療薬既存薬作用ステロイド炎症細胞浸潤抑制,マクロファージの機能抑制,サイトカインやケモカインの産生抑制,プロスタグランジンなどの炎症メディエーターの産生抑制,血管透過性抑制により広範囲な抗炎症作用シクロスポリンT細胞の活性化抑制レバミピドT細胞,単球の活性化抑制,免疫担当細胞,上皮細胞のサイトカイン産生抑制ジクアホソル?涙液サイトカイン,障害関連分子のwashout?タクロリムスT細胞の活性化抑制トラニラストCD4陽性T細胞におけるSTAT1-CXCL9の活性化抑制将来の治療薬作用オメガ3抗炎症効果アンギオテンシンタイプ1受容体阻害薬炎症細胞抑制,線維芽細胞活性化抑制IL-1a受容体阻害薬眼表面炎症抑制IL-6受容体阻害薬自己免疫応答カスケードの抑制DNAase非感染性炎症の抑制あたらしい眼科Vol.32,No.7,2015967(45)期,中止時期の判断などに精通している必要がある.きめ細かく投与量の決定と副作用のチェックが必要なので,患者には投与量と通院時期を遵守していただく.IIIシクロスポリンシクロスポリンは,欧米では抗炎症効果の有効性が認められており,広くドライアイの治療薬として使用されている.しかし,わが国ではドライアイに対しては保険適用となっていない.シクロスポリンはT細胞の細胞質内にあるカルシュニューリンに結合して,サイトカインの産生を抑制する.GVHDにおいては,T細胞による免疫応答がドライアイ発症の中心メカニズムであることが古くから知られている.慢性GVHDによるドライアイでは,T細胞が結膜基底細胞や涙腺上皮の筋上皮細胞を標的にして眼表面の障害をきたす.また,間質では導管や毛細血管の周囲にヘルパーT細胞が活性化して,多様なサイトカインが分泌される.シクロスポリン点眼でT細胞の活性化を抑制することにより,結膜基底細胞が保護され,結膜上皮およびゴブレット細胞結膜の再生をうながし,眼表面上皮障害の改善につながり,有効性が認められている.ムチンの産生の改善が認められる.また,シクロスポリンはT細胞の遊走を制御し,涙腺,眼表面に存在する抗原提示細胞との相互作用によるT細胞の活性化を阻害し,病態を制御する効果がある(図3A~D)5).しかしながら,GVHDによるドライアイに対しては免疫抑制薬治療のみでは病態制御は不十分であり,さらなる特異的な治療法の開発が望まれる.免疫抑制薬のその他の作用としてT細胞はIgEを産生するB細胞の産生を抑制し,マスト細胞が脱顆粒する上流で免疫応答を抑制することができる.線維芽細胞の活性化を抑制し,細胞外器質の産生を抑制する.好酸球の活性化を抑制して,角膜上皮障害を予防するという効果がアレルギー性結膜炎で認められている.IVトラニラストトラニラストはアントラニル酸誘導体で,必須アミノ酸のトリプトファンの免疫抑制異化代謝産物と構造的にも機能的にも相同性があり,広域な免疫抑制作用を示すイコトリエンの産生も阻害し広域の抗炎症効果が期待される.眼科では眼疾患に対してステロイド剤を局所で投与できる特徴があり,高濃度のステロイド剤を病変部に到達させることが可能である.局所で投与された場合も全身投与と同様に,肥満細胞や好酸球,リンパ球などの炎症細胞の浸潤抑制,マクロファージの機能抑制,サイトカインやケモカインなどの産生抑制,PG・ロイコトリエン・ブラジキニン・ヒスタミンなどの炎症メディエーターの産生抑制,血管透過性抑制などにより広範囲の抗炎症作用をもつ.眼科用ステロイド局所外用剤には前眼部疾患に対する点眼,眼軟膏,局所注射がある.徐放剤を含む局所注射には眼瞼結膜下,眼球結膜下,Tenon.下投与がある.眼科用ステロイド局所投与の利点は,病変部に直接届き,全身への副作用が避けられる点であり,全身療法や最新の局所外科的治療の組み合せにより,治療の相乗効果や副作用を避けることが望める.重症ドライアイでは輪部機能不全をきたしている症例の頻度が多く,ときに病態の活動化により角膜の結膜化,結膜組織の線維化,線維性血管膜の増殖が認められる.このような場合に局所注射が有効であると考えられる.前眼部疾患に対する眼科的なステロイド外用剤には点眼薬,眼軟膏,徐放剤を含む局所注射薬(眼瞼結膜下,眼球結膜下投与,Tenon.下投与)があり,疾患や重症度に応じて内服,点滴投与を組み合わせ,それぞれの薬剤を単独または併用して使用する4).ステロイド使用症例では頻繁に眼圧を測定し,眼科的な副作用をチェックする.とくに全身投与との併用時にはさらなる注意が必要である.眼局所投与された薬剤は,点眼後眼表面および鼻涙管の粘膜などから吸収され,全体量の1/10程度のみ移行するとされ,眼局所投与での全身への副作用の懸念は少ないが,長期投与,大量投与は極力さけ,眼所見が軽快した時点で漸減,中止をする.他の最新の治療法との併用で治療の相乗効果が得られた場合や,必要なときのみステロイド局所投与を併用し,角膜組織の瘢痕などの副作用を残さず治癒することがある.ステロイド剤の局所投与,全身療法の適応となる疾患に対してステロイド剤の剤型,濃度,投与開始時期,投与期間,漸減開始時968あたらしい眼科Vol.32,No.7,2015(46)ている.筆者らの予備的な検討で,トラニラスト点眼は眼慢性GVHDの進行を予防した7).トラニラストは慢性GVHD抑制薬として期待される.トラニラストの作用には抗炎症作用,抗線維化作用および抗上皮間葉転換作用があることが前臨床試験で確認された.現在トラニラスト内服によるGVHD治療効果について臨床登録試験中であり,慢性GVHDドライアイおよび全身治療に対する適応拡大をめざしている.Vジクアホソル近年,わが国で開発されたジクアホソル点眼薬は,P2Y2レセプター作動薬であり,結膜上皮および杯細胞に発現している.ジクアホソルはG蛋白が惹起するホスホリパーゼCとイノシトールの活性化にかかわり,ことが知られている.動物モデルでの間接リウマチやTh1優位CD4陽性T細胞惹起性自己免疫疾患に有効性が示されている.また,トラニラストはCXCL9のリガンドであるSTAT1リン酸化を抑制することによりヒト末梢血におけるT細胞の活性化を抑制することが示されている6).同種骨髄移植では,免疫反応に基づくGVHDによるドライアイが生じ,涙腺,結膜をはじめとした多くの標的臓器に炎症・線維化を中心としたさまざまな組織障害を誘発し,患者のQOL(qualityoflife)を著しく低下させる.活性化免疫細胞から分泌されるサイトカイン,ケモカインなどの液性因子によって,宿主細胞に高度の炎症と線維化が誘発されることが原因のひとつである(図1).トラニラストはすでに抗炎症作用と抗線維化作用により,瘢痕性ケロイドとアレルギー性結膜炎に使用されABCD図3シクロスポリン点眼前後のGVHDドライアイインプレッションサイトロジー所見A,B:PAS染色所見.治療前(A).治療後(B).PAS染色陽性像(紫)を示す結膜杯細胞.C,D:MUC5AC免疫染色所見.治療前(C)治療後(D).MUC5AC陽性像(茶色),.:MUC5AC免疫染色所見..:ムチンピックアップ(ムチンが結膜上皮上に豊富に分泌された所見).シクロスポリン点眼治療開始1カ月後に著明な杯細胞密度の改善と分泌型ムチン(MUC5AC)の産生改善を認める.(Ogawa,Yetal:BoneMarrowTransplant41:293-302,2008より転載)ABCD図3シクロスポリン点眼前後のGVHDドライアイインプレッションサイトロジー所見A,B:PAS染色所見.治療前(A).治療後(B).PAS染色陽性像(紫)を示す結膜杯細胞.C,D:MUC5AC免疫染色所見.治療前(C)治療後(D).MUC5AC陽性像(茶色),.:MUC5AC免疫染色所見..:ムチンピックアップ(ムチンが結膜上皮上に豊富に分泌された所見).シクロスポリン点眼治療開始1カ月後に著明な杯細胞密度の改善と分泌型ムチン(MUC5AC)の産生改善を認める.(Ogawa,Yetal:BoneMarrowTransplant41:293-302,2008より転載)あたらしい眼科Vol.32,No.7,2015969(47)受容体であるTNF受容体細胞外ドメインが受容体から遊離して涙液中に増加し,眼表面におけるTNF受容体の構造変化により受容体からのシグナル伝達を抑制し,抗炎症効果をもたらすと報告している11).眼表面炎症をきたす他のドライアイに対してもジクアホソルの抗炎症としての効果が期待される.VIレバミピドレバミピド点眼は角結膜上皮細胞のムチン遺伝子発現を亢進し,細胞内および培養上清中のムチン量を増加させる.角膜上皮細胞の増殖を促進し,結膜杯細胞を増加させる.涙液中の酸化ストレス物質を除去する作用があるとされ,角膜上皮バリア機能およびタイトジャンクションを保護するとされる8,12).分泌型ムチンと膜型ムP2Y2レセプターを介して結膜上皮からの水分分泌と結膜杯細胞からのムチンの分泌を促すとされる8,9).ジクアホソルの抗炎症効果を示す報告は少ない.しかし,慢性GVHDによるドライアイでは,筆者らの施設において短期臨床登録試験が行われた結果,著明な改善効果が認められた(図4A~D)(論文投稿中).この作用機序としては,GVHD症例の角膜知覚と涙液クリアランスが改善したことにより,涙液中のサイトカインがwashoutされた可能性が考えられる.また,GVHDでは涙液中に障害関連分子のひとつであるextraDNAが著明に上昇していることが報告されており10),これらがwashoutされることにより,tolllikereceptorを介する非感染性炎症が抑制された可能性もある.崎元らは,P2Y2agonist投与により可溶性tumornecrosisfactor(TNF)ABCD図4ジクアホソル点眼前後の眼表面所見A,B:ジクアホソル点眼前の慢性GVHDによるドライアイ所見.フルオレセイン染色像(A)とローズベンガル染色像(B).C,D:点眼治療後の所見.フルオレセイン染色像(C)とローズベンガル染色像(D).炎症像を示す充血も改善している.ABCD図4ジクアホソル点眼前後の眼表面所見A,B:ジクアホソル点眼前の慢性GVHDによるドライアイ所見.フルオレセイン染色像(A)とローズベンガル染色像(B).C,D:点眼治療後の所見.フルオレセイン染色像(C)とローズベンガル染色像(D).炎症像を示す充血も改善している.970あたらしい眼科Vol.32,No.7,2015(48)の部位からの神経伝達物質が放出され神経原性炎症が惹起される.このような神経原性炎症はドライアイの複雑な自覚症状に関連するとされ,神経原性炎症の制御は複雑多岐なドライアイの不快感を緩和することにつながる18).有田らによりn-3系脂肪酸の代謝バランスと抗炎症作用について新しい観点から分子メカニズムの解明が進められ,今後の新規治療薬の開発が期待される19).おわりに今後疾患の病態解明がさらに進み,難治性ドライアイに対する新規治療法の開発が進むことが期待される.文献1)FoulksGN,ForstotSL,DonshikPCetal:Clinicalguide-linesformanagementofdryeyeassociatedwithSjogrendisease.OculSurf13:118-132,20152)OgawaY,OkamotoS,KuwanaMetal:Successfultreat-mentofdryeyeintwopatientswithchronicgraft-ver-sus-hostdiseasewithsystemicadministrationofFK506andcorticosteroids.Cornea20:430-434,20013)QuaxRA,ManenschijnL,KoperJWetal:Glucocorticoidsensitivityinhealthanddisease.NatRevEndocrinol9:670-686,20134)神野英生:副腎皮質ステロイド局所投与法バリエーション.ぶどう膜炎を斬る!2012(園田康平・大鹿哲郎・大橋雄一編),専門医のための眼科診療クオリファイ13,p115-118,中山書店,20125)WangY,OgawaY,DogruMetal:Ocularsurfaceandtearfunctionsaftertopicalcyclosporinetreatmentindryeyepatientswithchronicgraft-versus-hostdisease.BoneMarrowTransplant41:293-302,20086)HertensteinA,SchumacherT,LitzenburgerUetal:Sup-pressionofhumanCD4+Tcellactivationby3,4-dime-thoxycinnamonyl-anthranilicacid(tranilast)ismediatedbyCXCL9andCXCL10.Biochem.Pharmacol82:632-641,20117)OgawaY,DogruM,UchinoMetal:TopicaltranilastfortreatmentoftheearlystageofmilddryeyeassociatedwithchronicGVHD.BoneMarrowTransplant45:565-569,20108)DogruM,NakamuraM,ShimazakiJetal:Changingtrendsinthetreatmentofdry-eyedisease.ExpertOpinInvestigDrugs22:1581-1601,20139)MatsumotoY,OhashiY,WatanabeHetal;DiquafosolOphthalmicSolutionPhase2StudyGroup:Efficacyandsafetyofdiquafosolophthalmicsolutioninpatientswithdryeyesyndrome:aJapanesephase2clinicaltrial.Oph-thalmology119:1954-1960,2012チンの双方の産生を促進することが報告されている.酸化ストレス物質除去効果や抗炎症効果があるとされる.レバミピドの抗炎症効果には単球やT細胞の活性化の抑制,粘膜上皮からのIL-6の産生抑制,免疫担当細胞からのIL-2やIFN-gの産生抑制効果が報告されている13,14).ドライアイの慢性炎症に対して有効であると考えられる.とくに慢性GVHDによるドライアイには免疫応答と急性および慢性炎症が深く関与しているが,筆者らの施設における短期臨床登録試験(論文投稿準備中)および長期使用の症例において有効性が認められた15).VII羊膜移植による抗炎症効果羊膜は抗炎症効果,抗線維化効果,抗血管新生効果をもつことが報告されている.上皮成長因子,ケラチノサイト成長因子を含み,免疫抑制効果のあるIL-10を含有しているとされている.TGF-bシグナルを抑制することにより抗線維化効果が認められており,難治性眼表面炎症と線維化をきたすStevens-Johnson症候群,眼類天疱瘡,眼GVHDの高度な線維化に対する治療に用いられている16).VIII将来の治療法谷口らは涙腺に局所のレニンアンジオテンシンシステムが存在することを見出し,GVHDモデルマウスの涙腺における炎症と線維化がアンギオテンシンタイプ1受容体阻害薬で抑制されることを見出した.今後新規治療法として有望な薬剤である.生物学的製剤では小集団において抗CD20抗体のSjogren症候群に対する効果を示した報告がある17).その他欧米ではIL-1a受容体阻害薬のドライアイ治療への応用が報告されている.自己免疫疾患の免疫機序としてIL-6の上昇とそれに引き続くTh17細胞の上昇および制御性T細胞の減少が生じる.臨床ではIL-6受容体阻害薬による免疫制御の治療のほか,眼科的にも将来的に有効であると考えられる.ラパマイシンによる免疫抑制も効果的と考えられる.ドライアイによる眼表面障害により角膜上皮内に存在する神経末端が露出される.角膜にはnociceptorやcoldthermoreceptorが存在し,そ’-