●シリーズ後期臨床研修医日記大阪市立大学大学院医学研究科視覚病態学米田茉莉子吉本公美子米本千穂(執筆順)大阪市立大学大学院医学研究科視覚病態学では,前期研究医として,現在5名が働いています.白木邦彦教授をはじめ,教育熱心な先生方のもと,日々一人前の眼科医になるべく,学んでいます.今回は,外来・病棟・手術の面から,私たちの日々の仕事をご紹介します.外来編私たちは,外来で処置係や再診係,造影検査,レーザー治療などを行っています.処置係では,初診で来られた患者さんの予診を取り,上級医の先生の診察に必要な検査を決めます.早く検査に回ってもらうために必要な情報を得て,いかに早く予診室から出て行っていただくかが勝負です.また,OCT,超音波検査(Amode,Bmode,UBM)や結膜下注射などの処置も行います.初診の患者さんが多い日や,処置に時間がかかると,予診室に戻った頃には,上級医の先生自ら,予診を取ってくださっている姿が…….大変申し訳ない気持ちでいっぱいです.医学部5回生の学生さんが実習で予診を見学に来るのですが,余裕がある時は,彼らに検査の説明をし,予診を取らせてあげます.ただ余裕のないときは,彼らに構った分,上級医の先生にご迷惑がかかるため,忙しそうな背中を見せて医者の仕事というものを学んでもらっています.白木教授のご専門が黄斑疾患であるため,造影検査は,FA検査とIA検査の両方が必要な患者さんが,山ほど来られます.眼底カメラが2台,自発蛍光用の眼底カメラ,HRAが1台ずつ,これらを駆使して,同時進行で何人もの患者さんを撮影していきます.テンポ良く,どの機械も稼働していない時間がないように,効率良く撮影します.当初,つぎにどの機械の前に患者さんを座らせれば良いのか,つぎにHRAを使うのはどの患者さんなのか,混乱してはテンポを乱し,怒られていました.特に木曜日の午前は,15人前後の患者さんのFA・IA検査を同時施行するため,緊張感に満ちた雰囲気に包まれています.▲ORTさんとの合同勉強会にて下段左から3番目より,筆者の米田,米本,吉本.上段左から5番目が,講師の山本先生.(109)あたらしい眼科Vol.30,No.2,20132430910-1810/13/\100/頁/JCOPY〈プロフィール〉(50音順)吉本公美子(よしもとくみこ)平成21年大阪市立大学医学部卒業.ベルランド総合病院で初期臨床研修.平成23年4月より大阪市立大学大学院医学研究科視覚病態学前期研究医.米田茉莉子(よねだまりこ)平成21年大阪市立大学医学部卒業.大阪警察病院で初期臨床研修.平成23年4月より大阪市立大学大学院医学研究科視覚病態学前期研究医.米本千穂(よねもとちほ)平成21年金沢医科大学卒業.大阪市立大学医学部附属病院で初期臨床研修.平成23年4月より大阪市立大学大学院医学研究科視覚病態学前期研究医.レーザー治療は,眼球が動かず,白内障がなく,とても打ちやすい患者さんにあたるとすごく上手になった気分にひたれます.ですが,1発打つごとに疼痛にもだえる硝子体出血がある増殖糖尿病網膜症の患者さんなどにあたると,長い勝負となります.レーザーの必要性も高く,パワーを落とすこともできず,赤でしか入らず,疼痛に対して応援しかできません.一勝負終わった後には,ぐったりした気分になり,上級医の先生のように素早く打てるように精進することが必要と痛感します.(米田茉莉子)病棟編大阪市立大学病院の眼科病棟は,病院の12階にあり昼間は天王寺動物園が見下ろせ,夜にはイルミネーションに輝く通天閣を間近に見ることができる都会のど真ん中にあります.そんな眼科病棟はだいたい40床程度で,日々さまざまな患者さんが入院されてこられます.特に身体はいたって健康な患者さんが大半を占めているので,時折談話室はものすごい盛り上がりをみせています.眼科の入院期間は短いことが多いので1週間おきくらいに病棟や各部屋の雰囲気は変わっていきます.気の合う患者さん同士が相部屋になった時や,阪神ファンが談話室前のテレビに集まって野球中継を見ている時などはびっくりして振り返ってしまうほどの歓声が聞こえ,まるで学生の合宿所のような雰囲気です.女子部屋で同年代の患者さんが集まったときにはガールズトークに花が咲くようで,時には『○○先生かっこいい』とか,『いや○○先生のほうがかっこいいわよぉー』といった女子高生のような244あたらしい眼科Vol.30,No.2,2013会話もあるとか.私たちが病棟で仕事をするのはもっぱら朝と夕方の時間帯です.診察室は4診あり,3診が通常診察を行うもの,あとの1診が感染疾患を扱うものです.そのほかにレーザー室,視力検査などを行うことのできる検査室があります.朝一の時間帯などは,診察室の前に術後の患者さんたちが並び,診察室はとても賑やかになります.朝の混み合う時間帯を過ぎると私たち医師はそれぞれ外来,手術へと仕事の場を移すので,それからの病棟は主に看護師さんたちが患者さんたちとかかわる時間帯へと変わります.術直後や自己点眼が困難な患者さんには,看護師さんたちが時間ごとに部屋を回りながらきっちりと点眼管理を行っていきます.私たちがクラビットR点眼1日4回などの指示を出していてもきっちり点眼液が眼の中に入っていなければ意味がありません.なかにはとっても点眼が下手な患者さんもおられるようで,1回につき何滴も落としているのにまったく眼の中に点眼液が入っていないこともあります.けれど,本人はいたって真面目にきっちりとされている!と思っていらっしゃるようで…….看護師さんたちには,そういった私たちが見ていない患者さんの素の状態をみて看護をしてくださるのでとても助かっています.看護師さんはじめ,私たちが使ってぐちゃぐちゃにした診察室をきれいに掃除して整理整頓してくださるエイドさん,お掃除の方など,いろんなスタッフに日々支えてもらいながら,眼科病棟はまわっていっているんだなぁーと思い,感謝しながら明日からもがんばろうと思います.(吉本公美子)手術編大阪市立大学での手術についてご紹介します.手術日は木曜日以外の平日で,火曜日のみ外来手術も行っています.内容的には白内障手術,硝子体手術,斜視手術,緑内障手術が主です.外来手術では,当大学で年間最も手術件数の多い,ルセンティスRやアバスチンRの硝子体内注射を行っています.眼底疾患を主な専門としていることから,年間2,000~2,500件程度の硝子体注射を施行しており,眼内炎防御のため,前例クリーンルームでの処置で行っています.1件目の手術は朝8時50分からです.全身麻酔の手術の場合は8時30分からです.1件目から手術が入っ(110)ている場合は,病棟で必要のある患者さん(術後など)の診察を済ませ,手術室へ向かいます.まず,顕微鏡・モニター・機械類などの準備をします.準備忘れがないか頭の中で確認しますが,あわてていると何か忘れたりするもので,清潔になってしまってから看護師さんにすいませんとお願いすることも…….その前の朝の病棟診察にて患者さんに何か問題が生じていたりすると準備忘れが出やすいような……,いつも冷静に正確にと心がけていますがまだまだだなと実感させられます.入局2年目の私にとっては,どの症例も勉強になるものばかりです.特に白内障手術は執刀もさせていただいているので,上の先生の見事な手術には眼が釘付けになります.参考書からだけでは学べない実際の手技を見て,盗めるところはないかと必死です.手術助手時は次に執刀医がどうしたいかを常に考え,少しでもスムーズに手術が進むように心がけていますが,逆に足を引っ張っているのではないかと不安にもなります.顕微鏡から見える世界は本当に興味深い世界で,やはり手術は楽しいなと感じています.1日の手術は緊急手術がなければ,だいたい17時ごろには終わります.緊急手術がある場合は予定の後に入るので,夜遅くなることもありますが(だいたい21~22時ごろ),不思議と遅くても苦には感じません.いつも日々の仕事に追われ,手術のみに関して考えることはなかったのですが,この原稿を書いてみて,やはり私は眼科手術という空間が好きだなぁと実感させられました.まあ,他の部門の原稿担当だったら,その部分が好きと感じていたと思うのですが…….結局,いつも感じていることは診察技術や手術手技など,日々の少しの成長がすごく励みになるということです.こんな感じで,眼科入局2年目の私は飽きることなく,2cmちょっととすごく小さな世界と格闘し,毎日楽しく頑張っています.(米本千穂)指導医からのメッセージて,医者は初期の研修が大事とは良くいわれます.教育というものを考える立場になり,個性を尊重するのか,はたまた和を大事にするのか,本当に難しいと実感させられています.指導を行いながら私自身もそれが刺激になり,追いつかれないように,負けないように自分を高めていければと思っています.これからも一緒に自分の目指す理想の眼科医に向かって,精進していきましょう.(大阪市立大学大学院医学研究科視覚病態学・講師山本学)2011年4月に3名の先生に入局していただき,早1年半が過ぎました.眼科医不足が叫ばれるなか,当科もご多聞にもれず,2012年は新入局員0という厳しい状況です.今年は1人でも多くの先生に来てもらいたいところですが,そのような環境のなかで,この3人の先生は病棟に外来に手術にと,良く頑張ってくれていると思います.私もまだまだ人を指導するような年齢ではないと思いつつも,気付けば眼科医歴10年を数え,後輩もそれなりに増えました.眼科も含め☆☆☆(111)あたらしい眼科Vol.30,No.2,2013245