特集●神経眼科MinimumRequirementsあたらしい眼科30(6):745.751,2013特集●神経眼科MinimumRequirementsあたらしい眼科30(6):745.751,2013甲状腺眼症を疑ったならWhenThyroid-AssociatedOphthalmopathy(TAO)IsSuspected鈴木康夫*はじめに1835年,ダブリン(Dublin,アイルランド)の内科医Gravesは,甲状腺腫と動悸をきたした3症例中の1例に眼球突出を認めたことを報告した.ついで,1840年にはメルゼブルグ(Merseburg,ドイツ)の開業医Basedowが,甲状腺腫,動悸,眼球突出を3主徴(メルゼブルグ3徴)とする4症例を報告した.欧米では,この疾患群にGravesの名を冠することが多いのだが,かつてドイツ医学が主流であった日本では,Basedow病の名が定着し,現在に至っている.このため,眼球突出を主体とした甲状腺機能亢進症に伴う眼症状は,「甲状腺眼症(thyroid-associatedophthalmopathy:TAO)」,「Basedow病眼症」「眼Graves病」「悪性眼球突出」など種々の名称でよば(,)れている.しかし(,),その病態が甲状腺機能そのものとは直接の関連をもたない独立した自己免疫異常であり,眼球突出以外にも多彩な眼症状があるのみならず,眼球突出を生じない症例が半数以上あることが明らかとなった現代では,その病態を正しく示した「甲状腺眼症(TAO)」が最適な病名とされている.甲状腺眼症は決してまれな疾患ではない.この疾患特有のいくつかのポイントをつかんでしまえば神経眼科を専門としない眼科医であっても,容易に高い精度で診断を行うことができる.本稿では,当センターで用いている甲状腺眼症診断・治療マニュアルをもとに,甲状腺眼症診療を「疑う」「診断」「検査オーダ」「治療」「他科連携」の項目に分(,)け,各々(,)3つのポイント(,)を抽出(,)し,表1甲状腺眼症MinimumrequirementsⅠ疑うポイント1.上方視時に悪化する垂直複視2.角膜上方輪部結膜の露出3.眼瞼腫脹Ⅱ診断のポイント1.眼球運動は頭部を固定して評価する2.眼球突出の左右差を評価する3.外眼筋(眼球運動時痛),眼瞼・結膜(発赤,浮腫)の炎症を評価し,病期(急性/慢性)を判断するⅢ検査オーダのポイント1.眼窩CT2.血液検査3.眼窩MRIⅣ治療のポイント1.禁煙指導,分煙指導を第一に行う2.急性期は,ステロイド薬の内服(3カ月以上かけて漸減)か,ステロイドパルス治療(終了後,内服漸減へ移行)を選択する3.慢性期は,対症療法を行いながら経過観察し,手術治療の適応を検討するⅤ他科連携のポイント1.ステロイドパルス治療は甲状腺機能に影響を与える可能性がある2.放射線ヨード治療は,TAO悪化(急性転化)の危険性を高める3.妊娠はTAOに関与しないが,出産直後はTAO悪化の危険性が高まる「甲状腺眼症のMinimumrequirements」(表1)として解説する.*YasuoSuzuki:手稲渓仁会病院眼窩・神経眼科センター〔別刷請求先〕鈴木康夫:〒006-8555札幌市手稲区前田1条12丁目1-40手稲渓仁会病院眼窩・神経眼科センター0910-1810/13/\100/頁/JCOPY(23)745I甲状腺眼症を疑うポイント1.上方視時に悪化する垂直複視TAOにおける眼球運動障害の原因は自己免疫に起因する炎症によって肥厚した外眼筋に伸展障害が生じることにある.また,複視は,眼球運動障害に左右差があるときに生じる.原因は明らかではないがTAOの外眼筋肥厚は下直筋から生じることが非常に多く,その程度に左右差がある場合がほとんどである.このため,初発症状が上転障害(内上方視よりも外上方視の制限が強くなる)による垂直複視であることが多い.この垂直複視は上方視によって悪化することが特徴であり,上方視時にのみ生じることも多い.垂直複視を認めたときにすぐに思いつく疾患名は「滑車神経麻痺」であろうが,「滑車神経麻痺」による垂直複視は下方視で悪化する.よって,上方視で悪化する垂直複視はTAOの可能性が高い.2.角膜上方輪部結膜の露出健常者の上眼瞼は,正面視に際して,瞳孔領を隠さない程度に上方角膜を覆っている.上眼瞼を挙上する上眼瞼挙筋は,上直筋とともに動眼神経上枝に支配されており,垂直眼球運動に際して上直筋と同様に収縮,弛緩し,眼瞼が視線を遮ったり,過度に球結膜が露出したりすることを防いでいる.TAOでは上眼瞼挙筋が肥厚し伸展障害が生じたり,交感神経の過緊張が上瞼板筋の過収縮を生じたりすることで,正面視時に上眼瞼縁が上方角膜輪部より拳上したり(眼瞼後退,lidretraction,Dalrymple徴候),下方視時に眼瞼縁の下降が眼球運動に遅れて瞼裂開大が生じたり(眼瞼遅動,lidlag,Graefe徴候)する.もちろん,下瞼板筋の過緊張による下眼瞼後退も生じるが,下眼瞼縁は正常者でも下方角膜輪部より下降していることも多く,診断意義は高くはない.3.眼瞼腫脹眼瞼内や眼窩縁に腫瘤を触知せず,かつ垂直眼球偏位を認めない眼瞼腫脹は,TAOの可能性がある.TAOの筋肥厚は筋腹が主体であり,眼球に接した部分の肥厚は軽度のことが多いので眼球突出は生じても,眼球を圧排し,水平,垂直方向に偏位させることはまれである.746あたらしい眼科Vol.30,No.6,2013これに対し,腫脹した涙腺や涙腺部を主とした筋円錐外腫瘍は眼窩縁で触知できたり,眼球が圧排され対側へ偏位していたりする可能性が高い.TAOで認める眼瞼腫脹はうっ血の影響を受けやすく,起床時に悪化するものが多い.その場合,就寝時の枕を少し高くすることで起床直後の自覚症状を軽減できることもある.また,眼瞼そのものの腫脹のみではなく,眼球突出を伴っている場合も多い.II診断のポイント1.眼球運動は頭部を固定して評価する(図1)眼球運動制限,複視の評価は,空間に対して頭部が動かないことを確認しながら行う必要がある.特に垂直眼球運動の評価は,介助者に患者の頭部を固定してもらいながら行うことが望ましい.なぜなら,日常の視線の動きは眼球運動と頭部運動の加算として生じており,視標を追わせて眼球運動を評価する際,頭部が動くと眼球運動制限,複視の有無が不明瞭になる.水平頭部運動は気付きやすいが,垂直頭部運動は自然に生じるので意識していなければ見逃す可能性がある.また,頭部を動かさないように依頼しても垂直方向の頭部運動を抑制できない患者も多い.特に,上方視時の垂直複視が徐々に進行した症例では,本人も気付かぬうちに上方視に際して複視を抑制するための顎上げ(chinup)頭部運動が自然と生じるようになっていることもある.2.眼球突出の左右差を評価する眼球突出度はHertel眼球突出計で測定することが一般的であるが,健常者の眼球突出度は顔つきによって異なり(日本人健常者の分布,8.22mm1)),また,眼球突出計の「Base(両側眼窩外側縁間距離)」の取り方,眼窩縁への押し付け方によってもその絶対値は変動する.同一患者であれば,「Base」を固定して,同一検者が測定を行うことにより経時的な変動の有無を適切に評価することができるが,よほどの極端な眼球突出でない限り,その絶対値のみから病的眼球突出との診断を下すことはむずかしい.しかしながら,健常人の眼球突出度に1.5mm以上の左右差をみることはごくまれ(3%未満)1)であり,明らかな左右差を認めた場合はTAOを(24)A:正面視B:下方視図1眼球運動は頭部を固定して評価する頭部を固定しないと「顎上げ」により上C:上方視(顎上げなし)D:上方視(顎上げあり)転制限が不明瞭となる(図3D).A:閉瞼B:開瞼図2視診による眼球突出の左右差の評価被検者の正面に立ち,上方から両眼の角膜頂点位置を比較することで左右差の有無は評価できる.Bのように開瞼時でC:開瞼D:上眼瞼挙上も,角膜頂点が見えない場合は(C),上眼瞼を挙上して比較する(D).疑い原因検索を行うべきである.眼球突出度計がない場合は,被検者の正面に立ち,上眼瞼を挙上し,上方から両眼の角膜頂点位置を比較することで左右差の有無は評価できる(図2).また,眼球突出度の短期間での悪化(2mm以上/3カ月)も病的状態を示唆する.なお,上眼瞼の強い腫脹や皮膚弛緩のため角膜頂点がHertel眼球突出計で確認できない場合は,上眼瞼耳側をテープで挙上して測定すると良い.瞼を大きく開けるように指示することは輻湊が生じたり,眼窩内圧の変動に伴う眼球突出度の変動が生じたりするのでお勧めできない.3.外眼筋,眼瞼・結膜などの炎症を評価し,病期(急性.慢性)を判断する(図3)TAOは急性期と慢性期で治療法が異なることから,(25)あたらしい眼科Vol.30,No.6,2013747的確な病期判断が重要である.急性期は眼窩内に自己免疫異常に由来する炎症が生じており,炎症の5徴候のなかの疼痛,発赤,浮腫(他の2つは熱感と機能障害)が眼瞼,結膜,眼窩内軟部組織に生じる.1989年にMouritsにより提唱されたClinicalactivityscore(CAS)2)では,疼痛は「球後痛」と「眼球運動時痛」の2項目,発赤も「眼瞼」と「結膜」の2項目,浮腫は「結膜」,「涙丘」「眼瞼」「眼球突出(2mm以上/3カ月)」の4項目に分(,)けられて(,)いる(表2).陽性が1項目(Score1点)以下を慢性期,2項目(Score2点)以上を急性期と診断し,4項目以上陽性(Score4点以上)でステロイドパルス治療の適応と判断する.III検査オーダのポイント1.眼窩CT(コンピュータ断層撮影)(図3E,F)初診時に,軟部組織(腹部)撮影条件で軸断(axial)と冠状断(coronal)を撮影する.被検者が正面視をした状態で撮影するよう依頼する.外眼筋肥厚は筋腹の肥厚が主であり,紡錘状を呈し,視神経よりも厚い場合を陽ABCDEF表2ClinicalactivityscoreofTAO1)痛み球後痛眼球運動時痛2)発赤眼瞼発赤結膜充血3)浮腫結膜浮腫涙丘浮腫眼瞼浮腫眼球突出(3カ月で2mm以上悪化)4)機能異常視力低下(3カ月で1段階以上低下)眼球運動制限(3カ月で5°以上悪化)(文献2より改変)性とする.肥厚した筋と複視の生じ方を照らし合わせ,複視が肥厚した筋の伸展障害によるものか否かを判断する.筋の断面のCT値がまだらな場合は活動性の浮腫が疑われる.初診時にCTではなく,より多くの情報が得られ,放射線被曝の心配のないMRI(磁気共鳴画像)で画像診断図3急性期TAOに対するステロイドパルス治療の消炎効果治療前の前眼部所見(A,C)と外眼筋所見(E)とを,3クールのステロイドパルス治療直後の所見(B,D,F)と対比して提示した.冠状断CTは,軟部組織撮影条件にて,できるだけ薄いスライスで撮影した軸断を,再構成したものである.748あたらしい眼科Vol.30,No.6,2013(26)することももちろん有用である.しかし,固定不良やアーチファクトがある場合,外眼筋肥厚の判断がむずかしく,当科では,CTを初診時の画像診断の第一選択としている.2.血液検査内科での診断,加療が行われていない場合は,甲状腺機能〔(Free-T3,Free-T4,TSH(甲状腺刺激ホルモン)〕をTAO関連抗体〔TPO(サイロイドペルオキシダーゼ)抗体,TG(サイログロブリン)抗体,TSH受容体抗体〕とともに採血し,内科への紹介の必要性を検討する.あくまでも,甲状腺機能障害とTAOとは別個の自己免疫性疾患であり,TSH受容体抗体がTSH受容体を介して甲状腺機能に影響する性質(刺激性であれば機能亢進,抑制性であれば機能低下)をもっていなければ甲状腺機能は障害されない.また,TAOに関連する自己抗体はすべてがわかっているわけではなく,現在見出されている抗体がすべて陰性であっても,TAOを否定する根拠にはならず,他の臨床症状から確定診断することもある.3.眼窩MRI頻回の経過観察の必要性が見込まれる場合や急性期の活動性把握が重要な場合は当初からMRI撮影を選択す図4治療戦略のフローチャートTAOの診断開始(START)から安定した慢性期(GOAL)へ持ち込むための治療戦略をフローチャートで示した.太い矢印は「圧迫性視神経症」をきたした際の治療戦略を,破線矢印は「再発」を示している.CAS(Clinicalactivityscore)は表2を参照のこと.ることもある.CTと同様に,正面視時の軸断(axial)と冠状断(coronal)を撮影するよう依頼する.T1強調画像にて,外眼筋肥厚の有無を判断する.T2強調画像にては外眼筋の浮腫の活動性を評価する.外眼筋肥厚の活動性評価が重要な場合はSTIR(short-T1inversionrecovery)法冠状断を併用する.IV治療のポイント(図4)1.禁煙指導,分煙指導を第一に行う1993年に,オランダから喫煙によって甲状腺眼症の発症率は8倍になり,重症化傾向も高まることが報告された3).これ以降,他の多くの国,施設からも,喫煙がTAOの発症率を高めるのみならず,悪化の危険因子,治療の妨げであることが報告されている4).当センターにおいても,重症例には喫煙者が多く,難治症例にも禁煙未達成者が多い.ニコチンのみならず副流煙に含まれる有害物質も悪化要因とされており,現在進行形の喫煙も危険因子となる.甲状腺眼症の治療の第一歩は,喫煙者には禁煙を,非喫煙者にも分煙を勧めることである.2.急性期は,ステロイド薬の内服か,ステロイドパルス治療を選択する急性期でCASが4点以上の場合,もしくは機能異常(視力低下,眼球運動制限の発症,悪化)を認めたときSTART病期判定禁煙・分煙指導急性期慢性期(CAS>4)機能異常(CAS=2,3)(CAS=0,1)GOAL経過観察3月以上対症療法(点眼加療)ステロイド内服漸減投与ステロイドパルス治療圧迫性視神経症の改善緊急眼窩減圧手術放射線治療(再治療不可)斜視,眼瞼手術眼窩減圧手術圧迫性視神経症慢性化YESNO経過観察YESNO急性転化悪化(27)あたらしい眼科Vol.30,No.6,2013749ABCDE図5両側の圧迫性視神経症に対する経涙丘眼窩内壁減圧手術術前(A,C),術後(B,D)の眼窩CT所見および,術後の術創所見(E,赤矢印).右は術後1カ月,左は術後6カ月経過している.皮膚切開は加えず,球結膜近傍の涙丘上で縦切開を入れる.下方球結膜へ伸ばした長さ12mm程度の創口から篩骨紙様板に到達し,紙様板を除去する.クールのパルス治療を行っても十分な視機能の回復が得られない場合や,パルス治療により回復した視機能がステロイド薬漸減中に再度悪化した場合は,緊急眼窩減圧手術の適応となる(図4の太矢印).その場合は眼窩手術の十分な経験をもつ医師への紹介を検討する.眼窩減圧手術には眼窩内壁,下壁,外壁を減圧対象とする種々の手術法があるが,当科では,皮膚切除を必要とせず,動脈損傷の危険も少なく,眼球運動制限,複視などの合併症がほとんどない「経涙丘眼窩内壁減圧手術」を第一選択としている(図5).3.慢性期は,対症療法を行いながら経過観察し,手術治療の適応を検討する慢性期の対症療法は,角膜障害に対する点眼が主となる.高眼圧の既往があり,眼瞼後退や眼瞼遅動が目立つ場合は交感神経a受容体遮断作用のある点眼薬(ニプラジロールなど)を試みてもよい.眼瞼症状が上瞼板筋過緊張に起因する場合は症状の軽減が得られる.また,正面視時の偏位量が少なく安定した垂直複視に対しては,Fresnel膜を含むプリズム眼鏡装用が自覚症状改善に貢(28)はステロイドパルス治療(メチルプレドニゾロン1gの点滴を3日間,その後4日間のプレドニゾロン30mg内服で1クール,以下パルス治療)を3クール行い,その後,3カ月以上かけて漸減投与する.症状の改善,副作用の有無により1クール,もしくは2クールで終了することもあるが,3クール投与を原則とする.初回治療から放射線治療をパルス治療と併用することを勧める成書もあるが,放射線治療の安全な照射量(晩期障害を避けうる累積線量)は治療部位ごとに生涯にわたって一定であり,パルス治療のように副作用の回復を待っての再加療はほぼ不可能である.このため,当科にては初回治療に際してはパルス治療単独を第一選択とし,パルス治療による難治例,再発例に対し,放射線治療の適応を検討している.急性期でCASが2.3点で,視機能,眼球運動障害に悪化を認めない場合は外来でのステロイド薬治療を選択する.ブレドニゾロン30mg/日の内服から開始し,症状の改善を確認しながら3カ月以上かけて漸減する.原則として,急性期には眼科手術治療を行うべきではないが,圧迫性視神経症を生じている場合は異なる.3750あたらしい眼科Vol.30,No.6,2013献することも多いので,斜視手術を選択する前に試みるべき慢性期の対症療法である.慢性期が3カ月以上経過した場合は,複視に対する斜視手術,眼瞼手術,眼球突出に対する(圧迫性視神経症に対する場合とは異なる)眼窩減圧手術などの手術治療が可能となる.ただし,術後にTAOが再燃する可能性があり,慎重な経過観察が欠かせない.合併症の心配がない場合は,予防的なステロイド薬投与(CASが2.3点の場合に準じる)を併用するとよい.V他科連携のポイント1.ステロイドパルス治療は甲状腺機能に影響を与える可能性があるパルス治療は免疫抑制作用があり,自己抗体全般を抑制する.TSH受容体に興奮性,抑制性に作用する抗体が高値の患者の場合,治療により甲状腺機能が著明に変動する可能性がある.治療中は,甲状腺機能の定期的なチェック,動悸などの全身状態への注意が必要である.2.放射線ヨード治療は,TAO悪化(急性転化)の危険性を高める放射線ヨード治療は,観血的な甲状腺摘出手術とは異なり,一時的に大量の自己抗体を全身に拡散してしまう可能性がある.治療によってTAOが悪化する可能性が高まるため,予防的なステロイド薬投与が勧められている.当科にてはプレドニゾロン30mg(内服)を初回量とし,3カ月以上をかけての漸減投与を基本として行っている.3.妊娠はTAOに関与しないが,出産直後はTAO悪化の危険性が高まる妊娠はTAOの明らかな危険因子ではなく,パルス治療の前後を除き,避妊の必要はない.少量のプレドニゾロン,メチルプレドニゾロンを投与したままでの妊娠継続,出産も可能であるが,ステロイド薬は乳汁に分泌されるため,授乳を控えていただかねばならない可能性がある(注:デキサメタゾン,ベタメタゾンは胎盤を通過し胎児に移行するので用いない).また,出産後に自己免疫能が亢進することが誘因となり,Basedow病と同様にTAOが悪化する可能性もあり,出産後は特に注意深い経過観察が必要となる.文献1)中山智彦,若倉雅登,石川哲:今日の日本人の眼球突出度について.臨眼46:1031-1035,19922)MouritsMP,KoornneefL,WiersingaWMetal:ClinicalcriteriafortheassessmentofdiseaseactivityinGraves’ophthalmopathy:Anovelapproach.BrJOphthalmol73:639-644,19893)ThorntonJ,KellySP,HarrisonRAetal:Cigarettesmokingandthyroideyedisease:asystematicreview.Eye(Lond)21:1135-1145,20074)PrummelMF,WiersingaWM:SmokingandriskofGraves’disease.JAMA269:479-482,1993(29)あたらしい眼科Vol.30,No.6,2013751