0910-1810/10/\100/頁/JCOPYとの間にスペースが形成され,ここに涙液が貯留することからtearreservoirzoneともよばれる.このスペースは中央の角膜上皮が再分布するために重要な領域であると考えられ,後述するような上皮の厚み変化が生じる空間を確保している.このRCの設置により短時間で効はじめにオルソケラトロジーとは特殊なデザインを施したハードコンタクトレンズ(HCL)を使用して角膜の形状を意図的に変化させ屈折矯正を行うことであり,近年,乱視や遠視用のオルソケラトロジーも臨床応用されているが,一般に普及しているのは近視矯正であるため,ここでは近視用オルソケラトロジーの矯正原理と角膜形状変化について概説する.I近視矯正を目的としたオルソケラトロジー基本的にはフラットなベースカーブで角膜中央部の形状を平坦化させることにより,角膜屈折力を減少させて近視を矯正するとの考え方である.この基本的概念に基づき古くからさまざまなレンズデザインが考案され試されてきたわけであるが,現在,最も効果的と考えられ臨床応用されているのは,レンズ内面が4カーブ(もしくは5カーブ)で構成されるリバースジオメトリーレンズである.中央から周辺に向かって①ベースカーブ(basecurve:BC),②リバースカーブ(reversecurve:RC),③アライメントカーブ(alignmentcurve:AC),④ペリフェラルカーブ(peripheralcurve:PC)の4つの同心円状カーブから構成される(図1).BCはレンズ中心部,直径約6mmの部分であり,角膜の曲率よりもフラットに設計されており角膜中央部を平坦化させる役割を担う.RCはBCを取り囲む非常にスティープなカーブである.BCとACをつなぐ溝状の構造をなし,角膜(11)1493*TakahiroHiraoka:筑波大学大学院人間総合科学研究科疾患制御医学専攻眼科学〔別刷請求先〕平岡孝浩:〒305-8575つくば市天王台1-1-1筑波大学大学院人間総合科学研究科疾患制御医学専攻眼科学特集●オルソケラトロジー診療を始めるにあたってあたらしい眼科27(11):1493.1499,2010オルソケラトロジーの原理と角膜形状変化PrinciplesofOrthokeratology;CornealShapeChangesafterOrthokeratology平岡孝浩*ペリフェラルカーブ(PC)アライメントカーブ(AC)リバースカーブ(RC)ベースカーブ(BC)図1代表的なリバースジオメトリーレンズのデザイン中央から周辺に向かって以下の4つのカーブから構成されている.レンズ直径は10~11mmで,通常のハードレンズより大きい.①ベースカーブ(オプティカルゾーン):角膜よりもフラットに設計されたカーブであり角膜中央部を圧迫し扁平化する.直径6mm前後.②リバースカーブ:ベースカーブを取り囲む非常にスティープなカーブで,角膜との間にスペース(tearreservoirzone)を形成する.これは中央の角膜上皮が再分布するために重要な領域であると考えられている.幅0.6mm程度.③アライメントカーブ:角膜曲率とパラレルなカーブで,センタリングを良好にする.幅1.2~1.3mm程度.④ペリフェラルカーブ:いわゆるエッジリフト.レンズ下の涙液交換を促し,レンズの固着を防ぐ.幅0.4mm程度.1494あたらしい眼科Vol.27,No.11,2010(12)論である.特に角膜中央部と中間周辺部(RC部)のレンズ下に形成されるそれぞれの涙液層の厚みとそれらの差が重要で,これらを巧みに設定することにより目標の矯正効果を得ようとする手法で,現在もTLT(tearlayerthickness)フィッティング法として数社のレンズで応用されている.目標の矯正効果(角膜形状変化)を達成するために必要なレンズ後面の涙液層の厚みを個々の角膜形状データをもとに設定し,コンピュータソフトウェアを用いてレンズをデザインするというシステムであるが,現時点で完成された方法とは言い難く,さらに改良・洗練される必要がある.矯正精度をさらに高めるために,オルソケラトロジーによる角膜形状変化を物理学的または数学的に説明する試みもなされてきた.コンタクトレンズに作用する力としては,重力,眼瞼圧,表面張力,涙液圧搾力(レンズ下の涙液層が生みだす陰圧,ベクトルでいえば眼球に向かってレンズを引っ張る方向に作用する)などがあるが,それぞれが複合的に作用し合っており,これらの力の関係を単純な数式で表わすのは困難である.これまでに涙液圧搾力や静水力学的圧力に基づいた理論や有限要素解析などが提唱されているが,いずれも実測値ではなく相対値に基づいたモデルであり,形状変化を説明するための仮説にすぎない.つまり,実測値に基づく物理学的・数学的モデルとして確立されたものはない.このほか,サグ原理,一定表面積原理などさまざまなフィッティング原理があるが,それぞれ単独ですべてを説明できるような単純なものではない.以上をまとめると,オルソケラトロジーの矯正原理はいまだ発展途上であり確立されたとは言い難い.さまざまな仮説や理論が存在するため系統だった理解をするのは困難であるが,これはオルソケラトロジーがコンタクトレンズによる角膜の圧迫といった単純なものではなくきわめて複雑なメカニズムにより角膜形状変化を生じているということを示している.それぞれの仮説や理論をすべて知る必要はないが,オルソケラトロジーの臨床(特に不成功症例)を理解するうえで役立つことが多い.それぞれの原理や理論は非常にむずかしいので詳細は他に譲るが,JohnMountfordらによる成書1)に詳しく記されているので,興味のある方は一読することをお薦め果的な形状変化が達成できるようになった.ACは角膜とほぼパラレルとなるように設計され,角膜上のセンタリングを保持し十分な屈折矯正効果を得るための役割を果たす.PCはレンズ最周辺部のカーブであり,適度なエッジリフトにより涙液交換を促進し,レンズの固着を防止する役割を果たす.このレンズを装用することにより,中央部の角膜上皮の菲薄化と中間周辺部の角膜厚増加がもたらされ,その結果近視が軽減し裸眼視力の向上が得られると考えられている.ただし,非観血的な治療であるがゆえ矯正効果には限界があり高度近視には不向きである.レンズ素材は通常のガス透過性HCLとほぼ同様であるが,就寝時に装用するためDk(酸素透過係数)値100以上のものが用いられている.リバースジオメトリーという用語の意味は,従来の標準レンズは周辺カーブがベースカーブよりフラットであるのに対して,これとは正反対の構造,つまり周辺カーブが中央のベースカーブよりもスティープであるということを意味する.特に第2カーブを非常にスティープにデザインするという斬新なアイデアにより,オルソケラトロジーの矯正効果は飛躍的に向上した.また,センタリングを良好にするために第3のアライメントカーブが設けられるようになり,より精度の高い矯正が可能となった.II矯正原理上記のように,リバースジオメトリーレンズを装用することにより非常に効果的な角膜形状変化が得られることが経験的にわかってきたわけであるが,詳細な矯正原理については,古くからさまざまな説が提唱され議論されてきた.当初(1960年代)はcornealmolding(角膜塑造)という概念,すなわち眼瞼圧によって(レンズを介して)角膜中央に圧力がかかる結果,レンズ後面の形状に沿って角膜が形作られるという仮説に基づき,少しずつレンズをフラット化しながら目標の屈折値に近づけていく手法がとられた.その後,Tabbは流体力学を応用し,レンズ下の涙液層における流体の力により角膜形状変化がもたらされるという理論を提唱した.つまりレンズによる直接的な圧迫ではなく,涙液層から生み出される圧力(陰圧や陽圧)により角膜が変形するという理(13)あたらしい眼科Vol.27,No.11,20101495のか?もしくはanteriorcornealsurfacechangeといって角膜前面のみが変化するのか?という議論がなされてきた.Swarbrickら2,3)は光学的角膜厚測定装置を用いて,治療による中央角膜上皮の菲薄化と中間周辺部の肥厚を確認し,さらにトポグラフィのデータとともにMunnerlynの公式へ当てはめたところ,この公式から計算される予測屈折矯正量と実際に達成された屈折矯正量は非常によく相関すると報告した(図3).Munnerlynの公式とは,角膜屈折矯正手術で用いられている切除の深さ(角膜厚の変化)とトリートメントゾーンの直径と屈折矯正量の関係を表す公式であるが,角膜後面カーブに変化がないことを前提とした公式であるので,オルソケラトロジー後の屈折変化は角膜後面ではなく前面の厚み変化で十分に説明できるということを間接的に示したのである2).つまり,overallcornealbendingを否定している.一方,Owensら4)はビデオPurkinjeイメージ法を用いて,治療開始後早期には角膜後面も有意にフラット化することを報告し,その原因としてレンズのオーバーナイト装用がもたらす角膜浮腫によるのではないかと推察する.III角膜の非球面性が重要通常,角膜は非球面でありprolate型といって中央の屈折力が周辺よりも強い形状をしている.オルソケラトロジーを開始すると,角膜中央がフラット化することにより屈折力は弱まり,逆に中間周辺部の屈折力は強くなるので,つまり角膜形状は徐々に球面へと近づいていく.そして球面形状を通り越してさらに中央が扁平化すると周辺部の屈折力が中央よりも強くなるoblate型となる(図2).古くは角膜が完全に球面化したところが矯正の終点と考えられていたが,最近の研究では角膜中央よりも中間周辺部のほうが屈折力が大きくなることが判明し,LASIK(laserinsitukeratomileusis)などの屈折矯正手術後と同様にoblate形状へと変化しうることが確認されている.したがって,もともとの角膜形状が球面に近い症例よりもprolate型が強い(非球面性が高い)症例のほうが,球面化そしてoblate形状へと変化していく余地が大きいため,オルソケラトロジーの効果がでやすいと考えられている.IV角膜前面変化or全層変化?オルソケラトロジー治療後には,overallcornealbendingといって角膜後面も含めて角膜全体が屈曲するProlate型中心がスティープ周辺がフラットOblate型中心がフラット周辺がスティープ図2Prolate形状とoblate形状角膜は非球面であり,通常prolate型といって角膜中央が周辺よりもスティープである.オルソケラトロジーを開始すると,角膜中央がフラット化することにより屈折力は弱まり,逆に中間周辺部の屈折力は強くなるので,つまり角膜形状は徐々に球面へと近づいていく.そして球面形状を通り越してさらに中央が扁平化すると周辺部が中央よりもスティープとなり,屈折矯正手術後と同様のoblate型となる.1.001.502.002.503.00PredictedchangeinRx(D)MeasuredchangeinRx(D)3.504.004.504.504.003.503.002.502.001.501.00図3Munnerlynの公式から計算される予測屈折矯正量(横軸)と実際に達成された屈折矯正量(縦軸)の相関関係屈折矯正手術で用いられるMunnerlynの公式t=.S2×D/3〔tは切除の深さ(角膜厚の変化),Sはトリートメントゾーンの直径,Dは屈折量変化〕をオルソケラトロジーに当てはめてみても,予測屈折変化量と達成屈折変化量がよく相関することが判明.この公式は角膜後面に変化がないことを前提として成り立っているので,オルソケラトロジーにおいても角膜後面には変化を生じないことが間接的に証明された.(文献3より)1496あたらしい眼科Vol.27,No.11,2010(14)V組織変化角膜厚が変化するメカニズムの一つとして,epithelialredistribution(上皮再分配)が提唱されている.角膜中央のBCの部分では上皮の厚みが薄くなり,それを取り囲むRC部分(tearreservoirzone)へと上皮細胞が移動することにより中間周辺部の上皮が肥厚するという考えである.はたしてヒト眼においてこのような変化が本当に起きているのであろうか?これまでにさまざまな光学機器を用いて中央角膜上皮の菲薄化を確認した報告は多数なされている3,7,8)が,組織変化としては動物実験でしか確認されていない.Matsubaraら9)は家兎眼にレンズを1カ月間連続装用している.Joslinら5)は,オルソケラトロジー後の眼球収差の増大は角膜収差の増大より大きく,内部収差の増大も伴わないと説明できないと報告し,内部収差増大は角膜後面の変化に起因することを示唆している.このように角膜後面変化を支持する報告も散見される.さらに最近になって,Tsukiyamaら6)はScheinpflug像の解析により,角膜後面の曲率半径と前房深度はオルソケラトロジー前後で変化がみられなかったことから,overallcornealbendingを否定する報告をしている.これまでに上記のようなさまざまな報告がなされ,角膜後面の変化については結論を得るには至っていないが,角膜前面での形状変化が主体であるという点に関してはコンセンサスが得られている.コントロールオルソケラトロジー後4時間オルソケラトロジー後8時間オルソケラトロジー後14日midperipheralcentralmidperipheralmidperipheralcentralmidperipheralmidperipheralcentralmidperipheralmidperipheralcentralmidperipheral図4ネコ眼での組織変化ネコ眼にオルソケラトロジーレンズを装用させたのちの経時的組織学的変化.コントロールと比較して早期から中央角膜上皮での菲薄化が認められる.その主要な反応は細胞の圧縮変形であり明らかな細胞層数の減少は認められない.特に基底細胞が通常の細長い形状ではなく,圧縮というべき押し潰されたような形状に変化している.一方,中間周辺部においてはレンズ装用後早期(4時間)では基底細胞の伸長が主体であるものの,8時間後にはわずかではあるが上皮細胞層数の増加がみられるようになり,14日後には基底細胞の伸長は目立たず,むしろ上皮細胞層数の増加が主体となっている.(文献10より)(15)あたらしい眼科Vol.27,No.11,20101497試みも行われてはいるが,約50μmの厚みしかない上皮の変化では強度近視を矯正することは理論的に不可能である.実質にも相当の変化を生じる,もしくは角膜全体の屈曲が起きる必要があり,強度近視眼において本当にこのような変化が起きうるのかについては今後検証される必要がある.VIIトポグラフィでの角膜形状変化前述したような角膜上皮の変化を主体として角膜厚の部位別変化が生じ,その結果屈折の変化と裸眼視力の向上が得られる.そしてこれらの角膜形状変化はトポグラフィ上で明瞭に確認できるようになる.理想的な変化はブルズアイ(bull’seye)パターンといい,すなわち角膜中央部に良好にセンタリングした円形のフラット化領域がみられ,その周囲をスティープな領域が囲む.さらに周辺部の形状にはほとんど変化がみられない状態である(図5).レンズがフラット過ぎると上方へ偏位しやすく,その結果スマイリーフェイス(smileyface)パターンといって,下方に三日月状のスティープな領域が現れる(図6).この領域が笑っている口のように見えることからこのようによばれるが,明らかに扁平化領域が偏心しさせたのちの組織変化を検討し,角膜中央のBCに対応する部位では角膜上皮は菲薄化,RCに対応する中間周辺部においては上皮が肥厚化すると報告した.特に中間周辺部での肥厚に関しては,重層扁平上皮である角膜上皮層の数が治療前よりも増加することに加えて上皮基底細胞の丈が長くなることにより達成されており,実質の肥厚はみられなかったとしている.Chooら10)はネコ眼にレンズを装用させ2週後までの角膜組織変化を検討している.その結果,中央角膜上皮での菲薄化が認められたが,その主要な反応は細胞の圧縮変形であり明らかな細胞層数の減少は認められなかったと報告した.特に基底細胞が通常の細長い形状ではなく,圧縮というべき押し潰されたような形状に変化していた.一方,中間周辺部においてはレンズ装用後早期(4時間)では基底細胞の伸長が主体であるものの,8時間後にはわずかではあるが上皮細胞層数の増加がみられるようになり,14日後には基底細胞の伸長は目立たず,むしろ上皮細胞層数の増加が主体となった(図4).この解釈として,治療後早期は細胞内の内容液が細胞間を移動するため細胞自体の圧縮(中央)や伸長(周辺)が主体となるが,時間が経過するにつれ細胞の分裂や脱落,アポトーシスのバランスが変化するほか,細胞自体の移動(再分配)などが関与して上皮細胞層数の増加をもたらす可能性が示唆されている.実質については,光学的角膜測定により確認された中間周辺部の実質肥厚2,3)に対して,組織学的に証明した報告はみられない.つまり,角膜上皮細胞層の厚みの変化に関しては確実にエビデンスがあるものの,角膜実質の形状や組織学的変化については一定の見解は得られていない.VI矯正の限界上記のように角膜前面,特に角膜上皮の厚み変化が主体となって屈折変化を生みだしているため,当然矯正効果には限界がある.もちろん症例により異なるが,通常は.4D程度までの近視がよい適応とされる.それよりも近視が強くなると効果の発現に時間がかかるだけでなく効果が不十分・不安定となりやすい.強度近視眼に対しては処方を段階的に強めることによって適応を広げる図5経過良好例のトポグラフィ所見(ブルズアイ)中央部に寒色(緑色)系の領域が認められ,治療により角膜中央部がフラット化したことが明確に判断できる.また中間周辺部は暖色(オレンジ)系となりスティープ化していることがわかる.さらに周辺ではほとんど変化がみられない.扁平化領域が偏心しておらずブルズアイ(bull’seye)とよばれる良好な所見である.1498あたらしい眼科Vol.27,No.11,2010(16)扁平化領域が中央から偏心するに従って高次収差が増大し,コントラスト感度が低下することが報告されている11)ので,レンズのセンタリングに留意し角膜の扁平化領域を中央に保つことがきわめて重要である.VIII角膜不正乱視・眼球高次収差本治療は積極的に角膜形状を変化させるため,各種の角膜屈折矯正手術と同様に角膜不正乱視や高次収差の問題は避けて通れない.たとえレンズのセンタリングが良好でも球面収差の増加は避けられず,レンズが偏心すればコマ様収差の増加へとつながる.しかし,これらの変化は近視矯正量に相関することが報告されており12,13),過度の矯正をしなければ不正乱視や高次収差の増加も許容できる範囲となることが多い.また不正乱視や高次収差は明視時の視機能だけでなく薄暮時の視機能とも関連している14,15)ので,視機能を類推するうえでも役に立つ.図7,8に実際の解析結果を提示するが,角膜トポグラフィでのFourier解析プログラムや波面センサーを用いてこれらを定量評価することは,治療効果の客観的判定を容易にするばかりでなく患者のさまざまな訴えを理解するうえでもきわめて有用である.ており,単眼複視やグレアの原因となるなどqualityofvisonが低下するため処方変更が必要となる.逆にレンズがスティープ過ぎる場合は下方に偏位しやすい.角膜図6経過不良例のトポグラフィ所見(スマイリーフェイス)レンズがフラット過ぎると上方へ偏位しやすく,トポグラフィ上では寒色の扁平化領域が上方へ偏位し,下方に三日月型の暖色域が現れる.この領域が笑っている口のように見えることから,スマイリーフェイス(smileyface)パターンとよばれる.図7Fourier解析による角膜不正乱視の定量化トポグラフィデータをFourier解析することにより,角膜不正乱視の定量化が可能であり,治療効果を把握するのに非常に有効である.非対称成分と高次不正乱視成分をあわせて広義の不正乱視とよんでいる.この症例ではいずれの不正乱視成分も強く,処方交換が必要である.左上図:オリジナルマップ.トリートメントゾーンが上耳側に偏位している.中央上図:球面成分.角膜中央は扁平化しているが,非常に狭い範囲の変化である.右上図:正乱視成分.2D程度の斜乱視が惹起されている.中央下図:非対称成分.きわめて強い非対称性が確認できる.右下図:高次不正乱視成分.高次不正乱視も著しい.あたらしい眼科Vol.27,No.11,20101499文献1)MountfordJ:Amodelofforcesactinginorthokeratology.Orthokeratology:PrinciplesandPractice.MountfordJetaleds,p269-301,ButterworthHeinemann,Oxford,20042)SwarbrickHA,WongG,O’LearyDJ:Cornealresponsetoorthokeratology.OptomVisSci75:791-799,19983)AlharbiA,SwarbrickHA:Theeffectsofovernightorthokeratologylenswearoncornealthickness.InvestOphthalmolVisSci44:2518-2523,20034)OwensH,GarnerLF,CraigJPetal:Posteriorcornealchangeswithorthokeratology.OptomVisSci81:421-426,20045)JoslinCE,WuSM,McMahonTTetal:Is“wholeeye”wavefrontanalysishelpfultocornealrefractivetherapy?EyeContactLens30:186-188,20046)TsukiyamaJ,MiyamotoY,HigakiSetal:Changesintheanteriorandposteriorradiiofthecornealcurvatureandanteriorchamberdepthbyorthokeratology.EyeContactLens34:17-20,20087)NicholsJJ,MarsichMM,NguyenMetal:Overnightorthokeratology.OptomVisSci77:252-259,20008)SoniPS,NguyenTT,BonannoJA:Overnightorthokeratology:visualandcornealchanges.EyeContactLens29:137-145,20039)MatsubaraM,KameiY,TakedaSetal:Histologicandhistochemicalchangesinrabbitcorneaproducedbyanorthokeratologylens.EyeContactLens30:198-204,200410)ChooJD,CarolinePJ,HarlinDDetal:Morphologicchangesincatepitheliumfollowingcontinuouswearoforthokeratologylenses:apilotstudy.ContLensAnteriorEye31:29-37,200811)HiraokaT,MihashiT,OkamotoCetal:Influenceofinduceddecenteredorthokeratologylensonocularhigher-orderwavefrontaberrationsandcontrastsensitivityfunction.JCataractRefractSurg35:1918-1926,200912)HiraokaT,FuruyaA,MatsumotoYetal:Quantitativeevaluationofregularandirregularcornealastigmatisminpatientshavingovernightorthokeratology.JCataractRefractSurg30:1425-1429,200413)HiraokaT,MatsumotoY,OkamotoFetal:Cornealhigher-orderaberrationsinducedbyovernightorthokeratology.AmJOphthalmol139:429-436,200514)HiraokaT,OkamotoC,IshiiYetal:Contrastsensitivityfunctionandocularhigher-orderaberrationsfollowingovernightorthokeratology.InvestOphthalmolVisSci48:550-556,200715)HiraokaT,OkamotoC,IshiiYetal:Mesopiccontrastsensitivityandocularhigher-orderaberrationsafterovernightorthokeratology.AmJOphthalmol145:645-655,2008(17)図8波面センサーによる高次収差の定量化左下に表示されているハルトマン(Haltman)像の歪みから,治療により扁平化した領域が上方へ偏位していることがわかる.カラーマップの右上が角膜の高次収差,右下が眼球の高次収差であり,暖色と寒色が入り混じっていることから高次収差が増大していることがわかる.また各収差成分の定量化された数値がマップの下方に表示されている.本症例ではコマ様収差も球面様収差も増大しており,右図のLandolt環シミュレーションでは三重視のような所見を呈している.視機能が低下していることが容易に想像できる.