———————————————————————- Page 11634あたらしい眼科Vol. 26,No. 12,2009(00)0910-1810/09/\100/頁/JCOPYは日常よく使われる検査法であるが,情報が豊富で微妙な判断にヒントを与えてくれる.本稿では,(1)心理物理面から視野という現象を整理し,(2)心の疾患(心因性疾患および詐盲)の疾患概念,(3)診断過程をフローチャートで整理し視野検査の役割を概説,(4)典型的視野の解釈と間違えやすい症例,(5)その後の対応をまとめる.I視野という心理物理学的現象2)視野では「見えている」という主観的感覚を客観的な量として理解するために感覚を定量化しなければならない.そこで用いられるのが,背景光に対して検査光の明るさを弁別する閾値である.ヒトは物理学的に同じ刺激を与えられても同じ感覚量に感じるとは限らず,心理学的反応は光刺激に対する視覚確率であらわされる(図1).網膜の受容できる光のエネルギー(輝度)には上限(刺激頂)と下限(刺激閾)があり,その間に存在する視覚確率 50%の輝度を閾値という.いわゆる感度は閾値の逆数となる(S=1/I).感度を等感度曲線で表現するものが動的視野であり,閾値プロットで表現するのが静的視野である.したがって,視野は「見えている」感覚に影響する因子の影響を受ける.これが本来「見えているはず」の患者が「見えていない」と主張する心因性疾患や詐盲が特徴的視野を呈する理由となる.つまりわれわれは常に心の病が修飾した視野結果を見ている可能性がある.解釈がむずかしいときや信頼性に不安がある場はじめに複雑な社会情勢を反映してかストレスを背景とする疾患が増加しており心身医学が取り上げられるようになっている一方で,悪化する経済事情を反映する詐病も増加している1).心身症の一つである心因性視覚障害は見えていることを自覚できない状態であるのに対し,詐盲は見えていることを自覚しながら意図的に否定することである.見た目の症状は同じであるから器質的疾患がないため「うそをついている」と一くくりにされがちであるが,両者はまったく似て非なるもので対応がまったく異なり初期診断は重要である.神経眼科外来ではしばしば原因不明の視覚障害について診察を依頼されるが,眼科専門医による日常診療で器質疾患が見つからない症例に合理的な診断をつけることは困難なことも多い.逆に器質疾患に心因性疾患と詐盲が合併すると自覚検査が多い眼科において検査の前提となる「意識」に心の問題が影響ししばしば判断に迷う.たちどころに原因がわからない場合,えてしていきなり最新の診断機器に依存することが多いが,まずはしっかりと系統的検査計画を立て視覚障害の発症状況を整理し観察・思考するだけで結論に至ることもある.ただし,先入観から器質的疾患を見逃し心身症と診断してしまうこともあるから,疑わしいときは眼科一般検査および精密検査を再検査することはもとより,脳神経学的検査もときに必要で,可能な場合は最新機器による追加検査も行うといった一連の流れ作業を行う.このなかで精密検査の一つである「視野検査」1634 (58)*Kenji Matsushita:大阪大学大学院医学系研究科眼科学教室〔別刷請求先〕松下賢治:〒565-0871 吹田市山田丘 2-2大阪大学大学院医学系研究科眼科学教室「心の病(心因性疾患と詐盲)」の視野異常Abnormal Visual Field in Psychogenic Disease and Malingering松下賢治*特集●視野が欠ける あたらしい眼科 26(12):1634 1641,2009———————————————————————- Page 2あたらしい眼科Vol. 26,No. 12,20091635(59)である点で詐盲とは異なる.訴える症状は視力,視野とも重篤である.詐盲ははっきりとした目的意識と疾病利得があり,行動パターンが目的により異なるため詳細な観察により心因性疾患から区別できることが多い.著名な眼心身症に心因性視覚障害や心因性盲があるが,器質的障害がない場合一見不定愁訴を訴えているかにみえ,心因性の部分が放置されがちである.一方,逆に器質的疾患の追究を疎かにして安易に心身症と診断されることもある.疑わしいときは検査の再検は必須である(図 3).III診断のフローチャートと視野検査眼科医は心の病に関して行動観察,他覚的視力検査,レンズ打消し法,視野検査,調節検査,色覚検査から出てくる不合理な結果により気づくことも多い.しかし,冷静な判断を下すには心証が出来上がる前に必ず検査結果の検証を行う.つまりすべてのデータを疑うことから合,複数の視野計で再現性を確認することも意味がある(表 1).II心の病の疾患概念(精神病,神経症を 除外する)3,4) 疾患が精神科領域の精神病から一般診療科領域の身体疾患まで一つのスペクトル上に並ぶ(図 2)とすると,神経症の一部は精神病と心身症を含み,心身症の一部は神経症と器質的身体疾患を含む.その主たる疾患を診断するためには,精神病を除外したのちに精神症状・身体症状,心因の有無により神経症・心身症・身体疾患を鑑別することになる.心身医学的アプローチが必要となる眼科領域が眼心身症と考えられる.心因性疾患には身体化障害(表 2),転換性障害,虚偽性障害などがある(表3).虚偽性障害は近年まで詐盲の一種とされていたが,受診や検査をいとわず診療に積極的で,利得が病気によって同情を誘いかまってもらえるという精神的利得のみThreshold視標輝度網膜感度→→→→低高高低100500False( )False( )視覚確率(%)図 1視覚確率曲線〔柏井聡:神経眼科 26:256, 2009, 図 13 より改変〕精神病神経症精神科領域心療内科領域一般診療領域心身医学的アプローチが必要心身症身体疾患図 2疾患スペクトル〔 松下賢治:眼科診療ガイド 17.全身病と眼,p699,図 1,文光堂,2004 より〕表 3精神心理的要因が推定される疾患心因性視覚障害心因性盲虚偽性障害詐盲表 2身体表現性障害身体化障害鑑別不能な身体化障害転換性障害疼痛性障害心気症身体醜形障害特定不能の身体表現性障害表 1視野の測定法主観的測定客観的測定Goldmann PerimetryHumphry Field AnalyzerOctopusMicroperimetry(MP-1)Full eld ERGMulti focal ERG(VERIS)Focal ERGFull eld pattern VEPMulti focal VEP瞳孔視野計———————————————————————- Page 31636あたらしい眼科Vol. 26,No. 12,2009(60)とえば Leber 視神経症,栄養障害性視神経症,アルコール性視神経症)などはきちんと除外する必要がある.特殊な検査として瞳孔反応を客観的な視野に応用した瞳孔視野計がある.瞳孔視野計は視標の呈示によって起こる瞳孔反応を記録することにより視野上の一点における網膜感度を対光反応の大きさから測定するものである.網膜感度と対光反応は直線関係にあるため自動視野計と異なり視標を一点で 1 回刺激すれば測定でき測定時間は大幅に短縮される.客観的視野情報であり,心因性視覚障害や詐盲判定,反応のあいまいな患者,幼児に特に有用である.しかし技術的問題と原理的問題も残っており自覚的視野計に取って代わることは現時点ではできない5).ここで視野検査について考えると検査は患者が診察に入る前から始まっている.日常生活で使われる視野は両眼視野の合計で,上側 60°,下側 70°,右側 110°,左側 110°(耳側 110°,鼻側 60°)である.中央は両眼視されて眼位異常がなければ通常立体視を形成する.このことを念頭に入退室や通院時の行動を観察すると,実際の視野がどの程度あるかがわかり訴えの内容と照らし合わせることができる.たとえば,下方視野障害のある緑内障患者は上方障害の患者よりもしばしば訴えが強く,階段が降りづらいとかデスクワークで気になるといった具体的な訴えをする.視野狭窄のある人は網膜色素変性症など桿体障害があることが多く,明暗変化への追随がむずかしい.部屋を急に暗くしてもすぐに迷わず座ったり,とっさに荷物を確かめる動作が確認されると視野障害が軽度であることがうかがえる.始める.特に,最も重要な矯正視力をまず疑うことになり,ついで視野を疑う.器質疾患がないという診断すら疑う必要があり,一般検査・精密検査を再検する.最新機器を利用可能なら,角膜トポグラフィ,波面センサーにより角膜形状の影響や中間透光体の散乱の影響などを除外し,眼底は OCT(光干渉断層計)により網膜疾患のないことを確かめる.追加検査として頭蓋内疾患を疑う場合は MRI(磁気共鳴画像)や CT(コンピュータ断層撮影)といった神経画像検査を行い,視覚路が中枢まで到達しているか確認したい場合は VEP(視覚誘発電位)を用いる(図 4).自覚検査の多い眼科において心因性疾患・詐盲でも確かである瞳孔反応(おもに対光反応)は有用である.これは客観的で本人も嘘がつきにくい.しかし疾患で瞳孔に影響がある場合は無効であるし,逆に瞳孔線維が障害されず視覚線維だけ障害される病態(た 次的広 のPSD心理的社会因子関与日常行動非生理的眼症状,身体変化医学的に理解可能主訴:眼症状可能生理的(神経症)一次的狭義のPSD身体症状中心診断的面接心理検査環境の情報収集身体所見問診病歴困難(精神病)あり正常身体症状あり精神症状中心ほとんどなし(身体疾患)異常(精神病合併)図 3精神疾患鑑別のフローチャートPSD:psychosomatic disease.〔松下賢治:眼科診療ガイド17.全身病と眼,p699,図 2,文光堂,2004 より〕視診(入退室時, 下での行動観察)一般検査(矯正視力,眼 ,スリット,眼底)追加検査(MRI/CT,VEP)精密検査(視野,ERG,OCT)特殊検査(瞳孔検査)図 4検査のフローチャート———————————————————————- Page 4あたらしい眼科Vol. 26,No. 12,20091637(61)下のことに留意する.①瞳孔径が小さい場合周辺視野が感度低下し求心性視野狭窄する.ピロカルピン使用者は瞳孔径が小さくなり2 m m以下になると回折効果により網膜感度は有意に低下するので注意を要する(図 5).②近視による屈折暗点や③中間透光体混濁の影響は事前に鑑別しなければならない.④学習効果・測定時間・疲労の影響は再現を見ることで確認できる.⑤固視評価は監視法により行われる6).疾患による場合のほか年齢によっても固視不良が起こることがあるので考慮すべきである(図 6)7).静的視野計より Goldmann 視野計がよく使IV典型的視野異常と間違えやすい症例視野検査を読み解く場合,別項で詳述されているように測定におけるアーチファクトを除く必要がある(表4).外部環境(顔の形,眼鏡枠,室内照明)に留意して測定条件は背景を photopic で行う.プロトコールの選択において状況から使用頻度は Goldmann 視野計が多いが,Humphrey視野計であれば中心プログラムC-30-2 や C-24-2 を選択する.しかし,視力障害など中心窩閾値の低下を認める場合上記では見逃す可能性もあり C-10-2 を利用する.さらに範囲が小さければmicroperimetry が有用と思われる.個体条件として以表 4視野測定の条件(1)外部条件:顔の形,眼鏡枠,室内照明(2) 測定条件:背景(photopic),プロトコール(HFA C-30-2/C-24-2/C-10-2)(3) 個体条件:瞳孔径,屈折,中間透光体混濁,学習効果・測定時間・疲労,固視グレイスケール閾値(dB)トータル偏差パターン偏差図 5ピロカルピン点眼の開放隅角緑内障患者Humphrey視野に対する影響上段:サンピロR点眼前,下段:サンピロR点眼 30 分後.〔石川誠ほか:眼科プラクティス 15.視野,p65,図 1 より〕コ カン : ウテンコ テン: チュウ ンコ フリ ウ: 1/13ギ ウセイ: 8%ギインセイ: 1%テスト カン: 04:33チュウ ンカ: 40dB図 6 視野を読む際の信頼性評価〔 柏井聡:神経眼科 26:256,2009,図 3 より〕———————————————————————- Page 51638あたらしい眼科Vol. 26,No. 12,2009(62)われるが,統計処理がある分,静的視野計はより客観的で有用なこともある8).ふつう心因性視覚障害も詐盲も視野は正常であるはずであるが,心因性視覚障害には視力低下とともに特徴ある視野異常が知られる.視覚は精神活動と密接な関係にあり意識障害時には消失し精神的活動低下しているとき,注意力や興味が弱いとき,記憶が障害されているときなども影響して感度低下がみられる.基本的には同じ現象である心因性の易疲労性をみていると考えられる(図 7a f)9,10).一方,詐盲での視野障害の多くは求心性視野狭窄ではあるが,半盲や中心暗点のこともあり特有のパターンはない.片眼性のこともあれば両眼性のこともある.らせん状視野が検出されれば心因性視覚障害である可能性が高いとはいえ視野検査のみから詐盲と心因性視覚障害を鑑別することはできない.「まったく見えません」という症例では視野検査は無効のはずだが,詐盲例で逆に測定できることもある.器質疾患を背景に心図 7a求心性視野狭窄求心性視野狭窄は心因性視覚障害で最も多くみられ,ヒステリーの視野異常として Char-cot により最初に記載され,現在では心因性視覚障害の代表的視野となっている.求心性視野狭窄は動的視野検査である Goldmann視野検査で検出される場合が一般的であるが,静的量的視野検査においても同様に検出される異常であり,中心部の閾値検査,全視野スクリーニング試験でもみられる.〔勝島晴美:心因性眼疾患の視野.眼科 MOOK 36:214-221, 1988 より〕図 7bらせん状視野もう一つの代表例としてらせん状視野がある.動的視野検査の途中でみられる.動的視野計では周辺より中心部固視点に向かって放射線状に視標を動かす.検査の進行とともに固視点に近づき小さくなることでらせん状を呈する.検査中の疲労現象によるものと考えられる.〔山出新一,黄野桃世:心因性視覚障害の静的視野について.眼臨 85:1245-1251, 1986 より〕R.E.図 7c星状視野視標を経線上の 0°→ 180°,45°→ 135°と反対側に移動したときに得られる.〔勝島晴美:心因性眼疾患の視野.眼科 MOOK 36:214-221, 1988より〕———————————————————————- Page 6あたらしい眼科Vol. 26,No. 12,20091639(63)zonal occult outer retinopathy)といった視細胞外節病〕は本当らしい視野異常を示し通常の ERG(網膜電図)が正常でも局所 ERG 異常から判定できるが,最近の解像度の高い OCT の出現で器質異常を検出されるようになった(図 9).Vその後の対応心身症は心身両面からの治療が必要である.身体面での治療内容は身体的疾患の治療と同様である.心理面で因性疾患と詐盲が関与する場合,むずかしい判断が要求されるが,視野情報を病状と付き合わせると理解できることも多い.間違えやすい疾患として Leber 視神経症を忘れてはならない.瞳孔線維のみ侵されないこのような疾患では視力低下と視野における中心暗点のみで行動障害が出ないため詐盲と間違われやすいが,現在では多くの場合,遺伝子診断が可能である(図 8).また,オカルト系疾患〔OMD(occult macular dystrophy)や AZOOR(acute 1m50cm図 7d管状視野平面視野計を用い測定距離を変えても得られる視野の広さの絶対値は変わらない.本来検査距離が伸びると視野の広さの絶対値は拡大し円錐状をとるが,本疾患では距離による広がりがなく円柱状をとるため管状視野といわれ,求心性視野狭窄を示す器質的疾患ではこのような視野は呈さず鑑別できる.図 7f花環状視野静的視野計においてグレイスケールの模様から花環状を呈する視野が観察される.これは心因性の易疲労性により動的視野に比し刺激変数がランダム化されているため視野辺縁部が凹凸の激しい花環状になると推測されている.〔黒田紀子:視野検査.心因性視覚障害(八子恵子ほか編),p37-71,中山書店,1988 より〕図 7e水玉様視野静的視野計で生じる異常で,たとえば Humphrey 自動視野計の全視野 120 点スクリーニング検査を施行すると予測値よりも6 d B以下の測定結果が出ると暗点として示される.強度の異常では求心性視野狭窄として示されるが,暗点が散在性に出現し水玉状を呈する.〔山出新一,黄野桃世:心因性視覚障害の静的視野について.眼臨 85:1245-1251, 1986 より〕———————————————————————- Page 71640あたらしい眼科Vol. 26,No. 12,2009は精神療法を中心にして薬物療法は補助的に用いることになる.心身症学的治療はまず患者の訴えを全部聞いてみるところから始まる.つぎに身体諸検査を十分に行い患者の訴えている身体症状に対して対症的身体療法を開始することが基本である.経過のなかで良好な患者-医師関係を形成し発症に関与する心理問題を探り対応する.しかしながら,早い時期から症状が心身相関的なものであることを理解させようとあせることは禁物である.なぜなら患者の多くは自分の状態を心身症と考えていない.いきなり心身症のメカニズムを説明されたり専門的な心理療法を開始されたりすると強い反感や不信感を抱く結果となる.まず患者の言うことを聞き受容的態度で接する.その雰囲気のなかで生活上の不安葛藤が明らかになり心身相関症状に気づかせ情緒的安定を得る.素直に話を聞くことがりっぱな心理療法となる.人間には自我を防衛する本能があって心身相関症状に気づかせることは困難であるが,そこに気づけば後は次第に症状が消失する.これまでに患者自身で気づかせるためのたくさんの技法が考えられている.具体的には自律訓練法,行動療法,交流分析,家族療法,絶食療法,芸術療法,運動療法,バイオフィードバック療法,カウンセリング,森田療法などが行われることもある.踏み込んだ心理療法や薬物療法を併用する場合は心療内科などと連携したチーム医療を中心において治療プランが必要となる.不安緊張,いらいら不眠などの症状が見られるときは抗不安薬,睡眠薬などの向精神薬を併用すると有効であるが,薬物は補助的役割を果たすものでその場しのぎの投薬を続けることは好ましくない.(64)123電気 動パターン正常型混在型変異型未消化300bp(未消化)255bp(正常型)31bp131, 124bp(変異型)MaeIII消化図 8Leber視神経症の遺伝子診断図 9左眼盲点症状を認めるAZOORのOCT像乳頭黄斑線維に沿って右眼で観察される IS/OS ラインが左眼では消失しており,視細胞外節が不明瞭である.右眼左眼———————————————————————- Page 8あたらしい眼科Vol. 26,No. 12,20091641詐病の場合,疾患が存在しないので治療法はないが,診察していて詐病が判明しても相手の人格は尊重されなければならず,「ほんとうに見えないのですか?」とか,「嘘でしょう」などといってはならない.相手側に診療側が嘘に気づいていてこれ以上嘘をつけないことを自ら悟らせるようにすることが良い.経過については冷静な態度で相手側に診察結果は異常がないので視力に関しては心配ないこと,進行性のものでないことを説明する.相手は必ず診断書を求めてくるが,診断書の対応は注意を要する.しかも期日が迫っているなど発行を早めるよう主張するが,公文書である診断書作成に際しては診療にあたった医師自身が経過観察を含め納得できるまで書くべきではない.しかし,医師法により正当な事由がない限り医師は診断書の発行を拒めないため,どうしても矛盾を解決できないまま診断書を書かねばならない立場に立たされた場合,自覚所見と他覚所見が一致しない旨を記載する.文献 1) 山出新一:眼科からみた特徴.心因性視覚障害(八子恵子ほか編),p1-12,中山書店, 1998 2) 柏井聡:自動静的視野計の読み方.神経眼科 26:243-260, 2009 3) 松下賢治:神経症・心身症.眼科診療ガイド(眼科診療プラクティス編集委員編),p699-701,文光堂,2004 4) 松下賢治:詐病.眼科診療ガイド(眼科診療プラクティス編集委員編),p701-702,文光堂, 2004 5) 吉冨健志:瞳孔視野検査の応用.臨床神経眼科学(柏井聡編),p175-178,金原出版, 2008 6) 杉山和久:測定時間・疲労.眼科プラクティス 15,視野(根木昭編),p72-73,文光堂, 2007 7) 川瀬和秀:固視不良.眼科プラクティス 15,視野(根木昭編),p62-63,文光堂, 2007 8) Flaxel CJ, Samples JR, Dustin L:Relationship between foveal threshold and visual acuity using the Humphrey visual eld analyzer. Am J Ophthalmol 143:875-877, 2007 9) 黒田紀子:視野検査.心因性視覚障害(八子恵子ほか編),p37-41,中山書店, 1998 10) 田淵昭雄:機能的視力視野障害の診断法.臨床神経眼科学(柏井聡編),p156-162,金原出版, 2008(65)