●連載◯307監修=稗田牧神谷和孝307.SMILE術後の白内障手術磯谷尚輝名古屋アイクリニックレーザー屈折矯正手術後に白内障手術を行う際,眼内レンズ(IOL)度数の正確な算出は容易ではない.これは,レーザー屈折矯正手術後の角膜が正常の形状から変化しているためであり,従来のCIOL計算式では誤差が生じやすく,専用の計算式が必要となる.SMILE術後眼は,LASIK術後眼とは少し異なる特性をもつため,より慎重な対応が求められる.●はじめにSmallCincisionClenticuleextraction(SMILE)は,2011年にフェムトセカンドレーザーCVisuMax(CarlCZeissMeditec社)とCReLExSMILE技術が欧州でCCEマークを取得している.2024年末時点で世界における施術件数は累計C1,000万件を超えており,レーザー屈折矯正手術の一手法として広く普及してきた.一方,わが国ではC2023年に認可されたばかりで,SMILE術後に白内障手術を受ける患者数は現時点では少ない.しかし,術後C10年以上が経過する患者の増加に伴い,その数は確実に増加すると予想される.したがって,SMILE術後における眼内レンズ(intraocularlens:IOL)度数の正確な算出方法について,あらかじめ理解を深めておくことが今後重要となる.C●LASIK術後のIOL度数計算LaserCinCsitukeratomileusis(LASIK)では,角膜前面の中心部をエキシマレーザーで蒸散・平坦化することにより,角膜前面の曲率(K値)が大きく変化し,非球面性(Q値)も顕著に正方向(oblate)へと移行する.このような角膜形状の変化により,IOL度数の算出には複数の課題が生じる.第一に,角膜中心屈折力の推計誤差である.多くのケラトメータでは角膜中心部のCK値を測定できず,傍中心部から算出する.角膜中心部と傍中心部の屈折力分布が異なると,角膜中心の屈折力を正確に評価することが困難になる.第二に,角膜前面と後面の曲率比が術前とは異なるバランスになることで,角膜前面から推計される角膜全体の屈折力の算出に誤差が生じやすくなる.これらの問題に対応するため,角膜トモグラフィなどを用いて角膜前後面の情報を含めた屈折力(63)評価を行うことが有効であり,さらに,Haigis-L式やCBarrettTrue-K式,AI技術を応用した補正式など,術後の角膜形状変化に対応したCIOL計算式も開発され,一定の予測精度が得られている1,2).C●SMILE術後とLASIK術後の角膜形状の違いエキシマレーザーによる角膜切除は,角膜中心部ほど切除効率が高く,周辺部はレーザーが斜めに当たるため,切除効率が低下する.一方フェムトセカンドレーザーを用いるCSMILE手術では,角膜周辺部まで狙った厚みで角膜切除が可能である.実際にCSMILE眼とLASIK眼の角膜中心部から周辺部に欠けた屈折矯正の効果を詳細に検討した研究では,フェムトセカンドレーザーを用いるCSMILEはエキシマレーザーを用いるLASIKよりも角膜周辺部の矯正効率が高いことが示されている3).また,LASIKでは角膜フラップを作製することで角膜の中でもっとも強度が高い角膜表層のコラーゲン線維が切断され,角膜生体力学特性の減弱化によって角膜中央部が平坦化し,周辺部が相対的に急峻となる.この変化によってCQ値は術前よりも大きく変化し,角膜はoblate形状(正のCQ値)に近づく傾向がある.一方,SMILEでは,角膜表層のコラーゲン線維をある程度温存するため,角膜剛性の低下が小さく,非球面性の変化は比較的小さく,とくに矯正量が少ない場合には術後もprolate形状(負のCQ値)を比較的維持しやすい傾向にある(図1).Liらの報告4)においても,SMILE術後ではCQ値の変化が小さく,結果としてCLASIK術後よりも術後の光学特性が良好である可能性が示唆されている.このような特性を踏まえると,LASIK後に最適化されたCIOL計算あたらしい眼科Vol.42,No.12,202515410910-1810/25/\100/頁/JCOPYSMILEにおける角膜Q値の変化LASIKにおける角膜Q値の変化-0.170.01-0.150.57術前術後術前術後図1SMILEとLASIKの術前後におけるQ値の変化同じ矯正量.3.0DにおけるCSMILEとCLASIKの角膜非球面性(Q値)の変化を示す.LASIKに比べてCSMILEのほうがCQ値の変化量は少ない.式をそのままCSMILE術後に適用することには,慎重な検討が必要である.C●SMILE術後のIOL度数計算式現在,SMILE術後のCIOL度数計算に特化したアルゴリズムは確立されておらず,どの計算式がもっとも有効であるかについては,世界で研究が進められている.Liらの報告によれば,理論モデルを用いたシミュレーションではあるが,BarrettTrue-K式はCSMILE術後においても一定の予測精度を示すものの,LASIK術後と比較すると誤差のばらつきがやや大きく,SMILE特有の角膜形状変化を十分に反映できていない可能性が指摘されている5).また,症例数は少ないものの,SMILE術後に白内障手術を施行した眼の検討では,光線追跡法がもっとも良好な成績を示し,ついでCPotvin-Hill式およびCBarrettTrue-K式も良好な結果を示したとCLischkeらが報告している6).このような背景から,SMILE術後のCIOL計算においては,以下のような対応が推奨される.①術前の情報がない場合には光線追跡法,術前の屈折値やCK値などのデータが取得可能な場合にはCHistory法を活用し,BarrettTrue-K式(Historyモード)やMasket法などの補正式を検討する.②CCASIA2などの角膜トモグラフィ装置や,IOL-Master700で取得可能なCTK値(TotalKeratometry)を用いて角膜全体の屈折力を評価し,IOL計算式と併せて活用する.③既存のCLASIK術後向けCIOL計算式では,一定の誤差が生じる可能性があることを術前に患者に十分説明し,必要に応じてCIOLの交換やタッチアップなど,段C1542あたらしい眼科Vol.42,No.12,2025階的な追加矯正の選択肢を考慮する.C●おわりにSMILE術後のCIOL計算は,LASIKと比較して角膜構造の温存性に優れる一方で,従来の計算式をそのまま適用するには一定の限界があるとされている.ただし,光線追跡法などの実理論に基づいた計算方法や,Bar-rettTrue-K式など既存の補正式を用いた場合でも,一定の予測精度が得られる可能性が報告されており,実臨床において有用性が認められる場面も少なくない.今後は,SMILE特有の角膜特性をより的確に反映したCIOL度数計算アルゴリズムのさらなる開発と,それに基づく予測精度の検証が期待される.文献1)HaigisW:Intraocularlenscalculationafterrefractivesur-geryCformyopia:Haigis-LCformula.CJCCataractCRefractCSurgC34:1658-1663,C20082)PanX,WangY,LiZetal:mntraocularlenspowercalcu-lationCinCeyesCafterCMyopicClaserCrefractiveCsurgeryCandCradialkeratotomy:BayesianCnetworkCmeta-analysis.CAmJOphthalmol262:48-61,C20243)KataokaCT,CNishidaCT,CMurataCACetal:Control-matchedCcomparisonCofCrefractiveCandCvisualCoutcomesCbetweenCSMILECandCfemtosecondCLASIK.CClinCOphthalmolC12:C819-825,C20184)LiM,ChenY,WangJetal:Comparativechangeinante-riorCcornealCasphericityCafterCFS-LASIKCandCSMILECforCmyopia.JRefractSurgC37:158-165,C20215)LiL,YuanL,YangKetal:ComparativeanalysisofIOLpowerCcalculationsCinCpostoperativeCrefractiveCsurgerypatients:aCtheoreticalCsurgicalCmodelCforCFS-LASIKCandCSMILEprocedures.BMCOphthalmol23:416,C20236)LischkeR,EppigT,BruennerHetal:IOLpowercalcula-tionsCandCcataractCsurgeryCinCeyesCwithCpreviousCsmallCincisionlenticuleextraction.JClinMedC11:4418,C2022(64)