シリーズ⑲シリーズ⑲タブレット型PCの眼科領域での応用三宅琢(TakuMiyake)永田眼科クリニック第19章人をつなぐデジタルコミュニケーションツール■想いをつなぐコミュニケーションツールとしての意義第19章で取り上げる端末は,私が代表を務めるGiftHandsの活動や外来業務で扱っているタブレット型PC“iPadRetina”ディスプレイモデルと“iPadmini”“iPhone5s”(いずれも米国AppleInc)のiOSバージョン7.0.3です.この章ではタブレット型PCやスマートフォンの視覚障害者と視覚障害者の家族との間におけるデジタルコミュ二ケーションツールとしての活用法とその意義について,視覚障害者の声とともに紹介していきます.■家族間のコミュケーションツールとしての活用法タブレット型PCやスマートフォンの登場とその普及に伴い,人々のコミュケーションの形は大きく変化しつつあります.社会的ネットワークをインターネット上で構築するサービスであるソーシャル・ネットワークキングシステムの普及もあり,写真や動画を用いたインターネット上での情報共有という行為は,現代人のコミュニケーションツールとして確立されつつあります.また,タブレット型PCやスマートフォンに音声によるテキスト入力システムやテキストデータの音声読み上げシステムが標準的に搭載されるようになったことは,視覚障害者がスマートフォンやタブレット型PCを利用するうえでとても重要な要素であります.しかし,現状の音声入力・読み上げシステムには,漢字の変換ミスや音読み訓読みの誤りなど改善すべき問題が残されているのも事実です.そんななか,最近ではより機能を特化することでシンプルになったアプリケーションソフトウェア(以下アプ(73)0910-1810/13/\100/頁/JCOPYリ)が多数登場してきて,視覚障害者を取り巻くソフトウェア環境は大きく変化しつつあります.以下に,実際に私の外来に通う視覚障害者が利用しているコミュケーションアプリの活用法とその意義について紹介していきます.①音声メール,音声付き画像メッセージの活用音声データで直接相手とやりとりのできる音声メールのアプリや,静止画像に音声データをつけて相手に送ることができるアプリなどを利用する患者の声はつぎのようなものです.「音声メールのほうが家族の声も聞けるし,メッセージを送るときも受けるときも,文字を目で確認する必要がないので,とても便利です.」「送られてくる写真を拡大して見ることができるし,音声での説明や雰囲気も伝わってくるから,とても嬉しいです.」簡単なメッセージを送る際のテキスト化という行程を排除することで,より自然な意志の疎通が可能となり,画像に音声の説明が補助データとして付加されることで,視覚障害者にとって受け取った情報へのアクセス性と理解度は大きく向上すると考えられます(図1).②手書きメール,手書き文字認識アプリの利用手書きの文字をテキストデータに変化させることが可能なアプリや,手書きの文字をそのまま画像データとして送ることのできるアプリを利用する視覚障害者もいます.これらのアプリは,キーボードによるテキスト入力が困難な視覚障害者にはとても便利です(図2).タッチパネル式の端末の操作における最大の難所でああたらしい眼科Vol.30,No.12,20131721図1画面下部の大きなアイコンを押して音声を入力し,音声メールとして相手に送信することが可能(HeyTell:開発元Voxilate)るテキスト入力に,手書き入力を用いることで,文字入力に関するハードルは大きく低下します.これらの情報端末を用いて情報発信を望む視覚障害者は非常に多く,これまで最大の問題点であった文字入力を,外付けのキーボードなどを用いずに,単一の端末上で完結することができます.このことは持ち運ぶ必要のあるエイドの軽減にもつながり,これらのデバイスが実際に使い続けられるエイドとなるうえでとても重要です.③インターネットテレビ通話アプリFaceTime(AppleInc.)やSkype(MicrosoftCorp.)に代表されるインターネットテレビ通話の普及は視覚障害にとっても大きな変化の一つです.スマートフォンとタブレット型PCとの間では,携帯電話回線を利用してインターネットテレビ通話を利用することが可能です.通話頻度の高い連絡先をショートカットアイコンとしてホーム画面に作成することが可能なアプリなどを利用する視覚障害者の言葉はつぎのようなものでした.「道に迷ったらすぐに家族や友人にテレビ通話をして,道案内をしてもらっています.困ったときにテレビ通話ができる友人が,まるでポケットの中にいてくれるよう図2下段の枠内にフリーハンドで記載した文字が,リアルタイムにテキストデータへと変化するアプリ(7notesforiPad:開発元7KnowleCorporation)で,とても安心です.」デジタル端末によるロービジョンケアにおいてもっとも大切なことは,人とのつながりの構築であると私は考えます.■患者間のコミュニケーションツールとしてのデジタルデバイス導入の意義テキストを介さない音声による意志疎通や,端末のカメラが介助してくれる友人の目として機能する時代,視覚障害者が情報障害者とならないために大切なことは,各個人に合った不便さを感じることのないコミュケーション法の確立にあると私は考えます.デジタルデバイスをとおして,人と人とが障害を超えてつながることで,初めてデジタルデバイスは本当の意味でのデジタルロービジョンエイドとして機能しはじめると私は信じています.本文の内容や各種セミナーの詳細に関する質問などはGiftHandsのホームページ「問い合わせのページ」よりいつでも受けつけていますので,お気軽に連絡ください.GiftHands:http://www.gifthands.jp/1722あたらしい眼科Vol.30,No.12,2013(74)