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総説:緑内障性視神経萎縮研究史:軸索輸送,近視,糖尿病の関与と治療

2013年7月31日 水曜日

あたらしい眼科30(7):937.960,2013c総説第23回日本緑内障学会須田記念講演緑内障性視神経萎縮研究史:軸索輸送,近視,糖尿病の関与と治療ReviewofStudiesonPathogenesisofGlaucomatousOpticNeuropathy─WithSpecialReferencetoAxonalTransport,Myopia,DiabetesandTreatment─千原悦夫*要約1977年から2012年の間に行われた1)緑内障性視神脈絡膜萎縮に伴う虚血や脳脊髄液の侵入に伴う酸素分圧経萎縮のメカニズム解明のための研究,2)修飾因子としの低下などであり,第5の要因として本来緑内障とは関ての近視,3)糖尿病との関連についての研究を概説し,係がないはずの近視性視神経症が併存することも近視眼4)最後に筆者の緑内障手術に関する考え方を述べる.における視神経の脆弱性を増悪させる.このような要因1)緑内障による視神経萎縮の機序についてはいくつかが高度近視と緑内障が合併した場合の視野増悪スピードの説があるが,これらのなかでアポトーシスカスケードの亢進,異型緑内障性視神経萎縮や固視点付近の感度低の発端となるイニシエーターカスパーゼの活性化が神経下につながる.栄養因子の途絶で誘発されるという概念は,軸索輸送障3)糖尿病患者はもともと網膜神経線維層に糖尿病神経害の重要性を示すもので,緑内障性視神経萎縮のカギを症による神経線維の脱落があり,しかも眼圧が高いこと握ると考えられる.軸索輸送は1974年に篩状板で障害が知られているので,従来緑内障の危険因子とみなされされることが報告されたが,障害部位はそれだけではなてきた.複数の疫学調査の結果もこの考えを支持していく1981年に乳頭辺縁部でも障害を受けることが明らかるが,しかし最近になってVEGF(血管内皮増殖因子)になり,これは末期緑内障で篩状板が後退したケースやの神経保護作用などが注目されて,糖尿は逆に神経保護高度近視の場合に障害を増悪させる因子と考えられる.因子であるという主張がなされるようになっている.こ2)近年,近視を伴う緑内障眼で視神経の易障害性,あの対立する2説のどちらが正しいのかについては現時点るいは異型の視野欠損の出現が報告されるが,これらのでまだ議論がなされている.原因にはいくつかの要因が絡んでいる.第1の要因は近4)緑内障の治療に関しては神経保護研究の進展が期待視眼における篩状板の変形である.乳頭の形態が変化しされ,またより安全で十分な眼圧下降を得られる治療法た場合篩状板の局所的な脆弱性が増した部位で神経線維が探求され続けている.手術治療において従来結膜下にの局所的な障害が現れる.第2の要因は後極部の拡大に房水を流出する濾過手術とSchlemm管への流出を図る伴う神経線維への伸張(ひっぱり)ストレスが加わるこ流出路手術が主流を占めてきた.しかし,房水の排出路とである.第3の要因は高度近視眼にしばしば合併するはこれら以外に毛様体上腔への排出路がある.このルー乳頭低形成症であり,これらの眼では軸索の数そのものトを活用する術式とチューブシャント手術は今後の発展が少ないので,これに緑内障が合併した場合はより速く,が期待できる分野である.しかも異型の障害が進行する.第4の要因は乳頭周囲のはじめに眼科領域で軸索輸送障害に関する最初の研究報告はAndersonが1974年に行った緑内障篩状板における阻害所見であった.筆者らはその少し後からその研究を始め,最初の報告を1977年に行ったが,研究を始めたのが早かったおかげで研究成果のいくつかを教科書にも引用していただけるという僥倖に恵まれた.軸索輸送は神経栄養因子を輸送することで神経節細胞のアポトーシスを抑制する代表的な神経保護因子であるが,筆者らはその軸索輸送の障害部位は篩状板だけではなく乳頭縁でも*EtsuoChihara:千照会千原眼科〔別刷請求先〕千原悦夫:〒611-0043宇治市伊勢田町南山50-1千照会千原眼科0910-1810/13/\100/頁/JCOPY(55)937 起こること,視神経線維の易障害性に関与するのは単に篩状板のporeの大きさだけではなく,乳頭内にある血管や結合組織の位置や量が関与すること,高度近視では後極部の拡大に伴って乳頭の変形や神経線維の過伸展が起こり,これが近視を伴う緑内障眼における異型の視野欠損に結びつくこと,糖尿病患者では網膜神経線維層に糖尿病神経症による萎縮所見が出現すること,などを報告した.近年,最新の画像診断装置の発展に伴って近視を伴う緑内障眼における神経線維の易障害性,異型性を説明するための乳頭や後眼部における眼球構造異常が解明されつつあり,これらに強い関心が向けられるようになってきている.また,糖尿病と緑内障の関係では網膜神経線維層における糖尿病神経症と緑内障性易障害性ついて熱い議論が戦わされている.今回の須田記念講演ではこれらの研究成果を概括し,過去の研究成果が現在の臨床研究とどのように関連するかについて概説した.I軸索輸送研究の歴史軸索輸送という現象が見つかったのは1948年のWeissとHiscoeの論文に遡る.彼らの研究以前から末梢神経における軸索は途中で挫滅するとそこから末端部が変性する(Waller変性)ことが知られていたが,末梢神経の場合は,その後神経の再生が起こることが知られていた.彼らは末梢神経が再生してくる途中で神経にカフをかぶせてやるとその近位端が膨れてくることを発見し,またこれがある程度膨れたところでカフを外してやると,この膨れた部分がゆっくりと神経末端に向かって移動することを発見した.そこで彼らは神経の中を物質が流れていると考えaxoplasmictransportと命名し,カフの手前の膨大部は流れがせき止められたものと考えてダム化(damming)と命名した1).それからしばらく基礎医学領域で研究が行われていたが,1974年になって眼科領域で重要な報告がなされた.それがAndersonによる緑内障篩状板における軸索輸送障害の報告である.この報告は当時緑内障における神経変性は虚血で起こると考えていたDranceらとの間に議論を巻き起こすこととなり,MincklerやQuigleyなどが論戦に参加して米国における学会議論は大いに盛り上がることになった2.7).筆者はその当時軸索輸送の重要性に気づき,日本にその概念を導入した.最初の報告は1977年に日眼会誌に938あたらしい眼科Vol.30,No.7,2013掲載されている8).しかし,日本ではその当時基礎医学のごく少数の研究者を除くと眼科以外のどこの診療科もその研究をしておらず,軸索輸送という概念すら理解されなかった.筆者らが研究を始めた当初は神経軸索の中をどのようにして物質が輸送されるのかというメカニズムもわかっていなかったのである.ただ,十分な知識が得られていなかったそのころでも微小管とATP(アデノシン三リン酸)がなければ軸索輸送が止まることや,標識蛋白として重要なマーカーである西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP),あるいは神経栄養因子が逆行性輸送されることがわかっていた9).HRPは脳のような複雑RetrogradeCargoCytoplasmicDyneinDynactinMicrotubuleKinesinAnterogradeCargo図1軸索輸送を担当するモーター蛋白の模型右側のキネシンはアミノ末端(.)からカルボキシル末端(+)方向へ,左側のダイニンは逆方向へ輸送する.それぞれ2本脚の先にATPphosphataseがあり,ATPが来るとこれをADPに変換するときのエネルギーで8nm先の微小管のらせん状蛋白に移動する.微小管にはこれを受け入れるフックのような構造がある.キネシン,ダイニンのいずれも頭に当たるところに輸送するべき物質を接着する部位があり,ここにものを載せて運ぶことになる.(DuncanJEetal:PLoSGenet2:e124,2006より許可を得て掲載,文献14参照)図2キネシン(左),キネクチン(右)の超微細構造現在は軸索輸送を担当するモーター蛋白を電子顕微鏡で観察することができる.(文献13,KumarJetal:JBiolChem273:31738-31743,1998より許可を得て複製)(56) な構造をした組織の中で神経核がどことつながっているかを知るうえで重要な手段を提供し,これを使った実験でHubelとWieselが1981年にノーベル賞を受賞した.この時代に話題となっていた神経栄養因子はイタリアのモンタルチーニ(Rita-Levi-Montalcini:1986年ノーベル賞受賞者)が発見したアミノ酸120個からなる蛋白質であるが,その後4種類の神経栄養因子が見つかり今ではneurotrophin1,2,3,4,5と言われるようになっている.軸索輸送についての研究は眼科領域ではその後下火になったが,基礎分野での研究は着実に進歩し,順行性軸索輸送を担当するモーター蛋白であるキネシンは1985年にValeらによって発見され10,11),その4年後には同じグループのSchnappによって逆行性軸索輸送のモーター蛋白であるダイニンが発見された12).これらのモーター蛋白がどのようにして物質を運ぶのかということに関する知識も飛躍的に進歩し,当初筋肉が収縮するときにアクチンとミオシンがATPとカルシウムイオンの存在下で起こす現象と同じような「すべり説」や微小Overview:RegulationApoptosisTNF,FasL,TRAILTNF,FasL,TRAILTrophicFactorsCellCycleCellularStressCytoplasmCytoplasmNucleusERStress[Ca2+]・Cellshrinking・Membraneblebbing図3アポトーシスカスケードの概略図図の左側はアポトーシスを起こす種々の刺激がどのようにしてアポトーシスに至るかを表し,これに対抗する形で図の右側はアポトーシスの抑制系がどのようにして細胞死を防いでいるかを示す.生体内ではこのようにして両者が常にせめぎ合いをしている.〔CellSignalingTechnologyCo.(CSTJapan)社のHPより許可を得て複製〕(57)あたらしい眼科Vol.30,No.7,2013939 管の上をタイヤのような丸い蛋白が転がるという仮説なな物質を結合できる部位をもっており,緑内障にとってどが提唱されていたが,現在ではモーター蛋白が微小管重要な意味をもつ神経栄養因子もここに結合して運ばれにくっついてN末端からC末端に向かってATPの存ると考えられる.在下で「2足歩行」すると考えられている.キネシンや緑内障における視神経萎縮を理解するうえでもう一つミオシンは電子顕微鏡によって分子を見ることができるの重要なポイントはシドニー・ブレナー(SydneyBrenner,ようになっており13),軽鎖,重鎖などの構造も理解され2002年のノーベル賞受賞者)らが解明したアポトーシている(図1,2)14).これらのモーター蛋白はさまざまスのメカニズムに関する知識の向上である.緑内障におInhibitionofApoptosisSurvivalFactors:GrowthFactors,Cytokines,etc.[cAMP]FLIPXIAPA20FASBimBcl-2Bcl-xLApoptosisCytoplasmNucleusCytoplasmTNF-aPIP3図4アポトーシス抑制系の略図アポトーシスの抑制は眼科領域のみならずAlzheimer病のような神経系全般に関係する重要なテーマで,神経保護を目的に英知を結集して研究が行われている.〔CellSignalingTechnologyCo.(CSTJapan)のHPより許可を得て掲載〕940あたらしい眼科Vol.30,No.7,2013(58) ける視神経萎縮がアポトーシスによって起こることは1995年にQuigleyらが報告し,わが国では沖坂らも追認している15,16).よく知られているように網膜における神経節細胞は生涯にわたって分裂再生することがない.ところがヒトの網膜は生きている限り酸化ストレス,光障害をはじめとする種々のストレスにさらされており,常にアポトーシスを起こすように仕向けられているのである.図3に示すように,このアポトーシスはおもに3つのメカニズムで起こるといわれる.1)TNF(腫瘍壊死因子)やFasリガンドなどの細胞外シグナルが細胞体表面の受容体(デスレセプター)に結合しイニシエーターカスパーゼ8,10が活性化され,さらに下流のカスパーゼ3が活性化されて細胞の変形,核の断片化などのアポトーシスカスケードが進行するもの,2)DNAが損傷されることでp53因子が活性化され,Bcl-2などの制御が外れてミトコンドリアからのシトクロムcが漏出しカスパーゼ9の活性化から下流のカスパーゼ3が活性化するもの,3)酸化や虚血などの外部刺激が小胞体にストレスを与え,カルシウムが遊離されて,これがイニシエーターカスパーゼ12を誘発し下流カスパーゼ3を活性化するルートである.眼にとってアポトーシスは悪者のように見えるが,実は全体としてアポトーシスは必ずしも悪者ではなく,体内の痛んだ細胞や癌化した細胞を生体に損傷を与えることなく整然と掃除するスカベンジャー機能の一つなのである.しかし,視神経に関してはこのアポトーシスが暴走すると萎縮に陥り失明に至る.生体の中にはこのアポトーシスが暴走しないように制御する機能があり,その代表的なものが神経栄養(成長)因子(NGF)である(図4).これは種々のストレスによってアポトーシスの引き金が引かれることのないように種々のアポトーシス惹起因子を抑制して綱引きを演じている.眼科に関係が深い神経栄養因子はbrainderivedneurotrophicfactor(BDNF:NT-2)であり,このBDNFはPI3Kを刺激し,生存シグナルで最も重要なAktを活性化する.Aktはプロアポトーシス因子であるBad,Bax,カスパーゼ9,GSK-3,FoxD1をリン酸化して抑制し,ミトコンドリアを保護して細胞毒性の強いシトクロムcの漏出を抑制する.神経栄養因子は軸索の末端や周囲のシュワン(Schwann)細胞などによって合成されるといわれており,これを運ぶのが軸索輸送なのである.このBDNFの軸索輸送が途絶することは緑内障視神経萎縮の成立にも重要な役割を果たしていると理解されている.緑内障以外では,栄養因子の欠乏は糖尿における神経症の発現に重要で,インスリンを投与することでアポトーシスの発端となるp38因子の発現を防ぐことができる17).神経栄養因子以外にもアポトーシスを修飾して細胞死を防ぐことが知られているものがあり,ブリモニディンの登場以来この分野の仕事が近年,注目を集めていることは周知のとおりである.II軸索輸送と疾患との関連ではその軸索輸送は臨床的な疾患とどのように関連してくるのであろうか.軸索輸送に関する研究で,それまで医学の疑問であったことがいくつか明らかになった.たとえば,帯状疱疹で皮膚病変が一つの神経線維の分布領域のみに限局してしかも同時に現れるのは何故か?という謎は軸索輸送の概念が導入されるまでは解けていなかった.従来の説はウイルスが神経周囲の血管やリンパなどを伝わる,あるいはSchwann細胞が順次感染して伝播するというものであったが,そのような概念では顔の反対側に病変が起こらないことや,根本がつながっている三叉神経の第1枝だけに病変が起こることを説明図5左顔面三叉神経第1枝領域における帯状疱疹(herpeszosterophthalmicus)による皮膚病変一つの神経領域に限局した皮膚病変の出現メカニズムは軸索輸送によるヘルペスウイルスの輸送と伝播の概念が導入されて初めて解明された(文献18参照).(59)あたらしい眼科Vol.30,No.7,2013941 図6軟性白斑(a)とその蛍光眼底撮影写真(b)軟性白斑は網膜の虚血領域を括弧状に挟んで出現する.乳頭側にできる綿毛様白斑が逆行性軸索輸送の阻害によるものであり,遠位端にできるものが順行性軸索輸送の阻害によるものである.(文献21,ChiharaE:JpnJOphthalmol27:397-403,1983より許可を得て掲載)順行性軸索輸送障害逆行性軸索輸送障害虚血領域図7網膜虚血領域と軟性白斑の位置関係網膜虚血領域が適当な大きさの場合,典型的な例では虚血領域の乳頭寄りに逆行性輸送の阻害による綿毛様病変が現れ,遠位端には順行性輸送の阻害所見が現れて括弧状になる.ができない.この現象はガッセリ核における潜伏感染と再活性化によるウイルス増殖と,神経線維の中をウイルス粒子が軸索輸送されることがわかって初めて説明できたのである.筆者らがその概念を報告したのはもう30年以上前になる18)(図5).また,うっ血乳頭といわれる臨床像は従来,乳頭の浮腫であると考えられていたが,電子顕微鏡で観察すると細胞間に浮腫はほとんどなく,体積の大部分を占めるのは腫大した軸索そのものである.軸索輸送の考え方が導入されて以後はこれが軸索輸送の障害による「ダム化」現象であり,神経線維の腫大によって起こるということが理解された19).さらに網膜に局所的な虚血領域ができた場合に出現する軟性白斑の病態解明にも進歩があった.軟性白斑はこれまでにcytoidbodyと言われる神経線維が棍棒状に膨942あたらしい眼科Vol.30,No.7,2013図8ダム化を起こした神経線維腫大した軸索質の中には運ばれてきたミトコンドリア,ニューロフィラメントなどがぎっしり詰まっている.(文献231,QuigleyHAetal:InvestOphthalmolVisSci19:137-152,1980,fig5より許可を得て掲載)れたもので形成されることがわかっていたが,電子顕微鏡でこの膨大部を観察するとミトコンドリア,ニューロフィラメントなどがぎっしり詰まった軸索輸送のダム化であることがわかった.軟性白斑は虚血領域の遠位端と近位端に軟性白斑ができるが,乳頭側が逆行性軸索輸送の障害によるものであり,遠位端が順行性軸索輸送によるものだったのである20,21)(図6,7).急性の緑内障においては一過性の乳頭腫脹がみられ,その後に視神経萎縮がみられるが,この場合も眼圧の上昇期に乳頭部で軸索輸送のダム化がみられ,ミトコンド(60) リアやニューロフィラメントが軸索質の中にぎっしりと詰まっている所見がみられる(図8).また,抗癌剤であるビンカアルカロイド(ビンブラスチン,ビンクリスチン)による癌治療を行うと副作用として重篤な神経麻痺が起こることが知られており(vincristineneuropathy),従来その原因はわかっていなかったが,これが軸索輸送の障害によることが理解されたのはこの頃である.筆者らはビンブラスチンを投与した場合の視神経における障害の程度とその回復過程について調べている22).また,水俣病の原因物質であるメチル水銀による神経障害の原因にも軸索輸送障害が関係することがわかっている23).III緑内障と軸索輸送前述したように,筆者らが研究を始めたころAndersonが実験緑内障眼の視神経篩状板で軸索輸送の障害が起こることを報告していた2).そこで筆者らもこのことに興味をもち緑内障眼における軸索輸送の研究を開始することにした.まず病気のないウサギの視神経の軸索輸送を調べたのであるが,ここで意外なことに視神経乳頭以外でも,視交叉,視束管でも生理的なブロックを受けていることを見出して,1979年に最初の英文の論文を書いた8,24).緑内障の研究をするのであれば,視神経を含む眼の構造がヒトに似ているサルを使うことが望ましいが,当時筆者が年間に使えた研究費はわずかで,とても高価なサルは買えなかったのでウサギを使うことにした.ウサギはサルとは違ってコラーゲンで形成されるような篩状板がない.ウサギの視神経乳頭では最初の論文でわかっていたように視神経乳頭では生理的な軸索輸送障害があるが,眼圧を上げて軸索輸送の障害を見てみると,篩状板がないにもかかわらずやはり輸送量の減少が起こる.どこで,軸索輸送の障害が起こっているのかということに興味があり,autoradiographyで調べてみると,面白いことに,ウサギの軸索輸送障害はサルにおけるものとは異なり,視神経乳頭の辺縁部で起こっていた25)(図9).この結果は研究費が乏しかったが故に得られた結果であったが,従来軸索輸送は篩状板で起こると考えられてきた常識に新しい視点を与えるものであった.ウサギの実験を受けて,サルでも同じような結果が得られることを期待して少し研究費に余裕ができてから新しく研究グループに加わった佐久川先生にサルで実験してもらうと(61)図9ウサギ高眼圧眼における軸索輸送障害ウサギ眼には篩状板がなく視神経乳頭縁での軸索輸送障害が起こる.(文献25,ChiharaEetal:ExpEyeRes32:229-239,1981の許可を得て掲載)図10実験的緑内障(サル眼)乳頭縁における軸索輸送障害健康なサル眼で眼圧が上がると篩状板における障害に加え,乳頭縁でも軸索輸送の障害所見がみられる.この所見は後に教科書に引用された.(文献26,SakugawaMetal:GraefesArchKlinExpOphthalmol223:214-218,1985の許可を得て掲載)やはり乳頭の縁で軸索輸送の障害像が出てきた26)(図10).この結果はサルにおける実験でありしかもきれいな画像であったので,後世この論文が教科書に記載されることになった.Shields’TextbookofGlaucoma5thed.2005AllinghamRRed.にはp82に以下のように記載されている“ElevatedIOPinmonkeyeyescauseobstructionofaxoplasmicflowatthelaminacribrosaandtheedgeoftheposteriorscleralforamen(Sakugawaetal).”つまり緑内障眼における軸索輸送障害は篩状板で起こるのみならず乳頭縁などでも起こるということになる.この所見は後世において末期緑内障眼における視神経の易障害性や高度近視眼における神経の障害を理解するうえできわめて重要な所見である.緑内障の進行しあたらしい眼科Vol.30,No.7,2013943 図11末期緑内障(ヒト眼)における乳頭縁での神経線維層末期になると篩状板は後退し,神経線維層は崖に吊り下げられたロープのようにElschnig’sscleralringに押し付けられる.このようになると乳頭縁における軸索輸送障害が強くなると考えられる.た眼で視神経乳頭の辺縁部を見てみると神経線維はここで急激に屈曲し,Elschnig’sscleralringに押し付けられるようになる(図11)232).臨床的に陥凹が大きな眼では眼圧のコントロールができているのになおかつ視野欠損が進行することが知られており,より重症の陥凹をもつものは視野の進行が起こりやすい27.30).たとえば,EarlyManifestGlaucomaTrial27)では視野のMD(平均偏差)値が4dBを超えるか否かという因子は多変量解析で独立した視野進行の危険因子である.陥凹の大きな眼であるほどこの乳頭辺縁部におけるストレスが大きいことを考えると,この辺縁部での軸索輸送障害は末期の緑内障眼ほど重要な意味をもっていると推測される.また高度近視眼ではridgeの盛り上がりで屈曲を受けても同じことが起こるので,この所見は近視眼における易障害性を説明するための一助にもなる31).さらに,高度近視眼では後極部の拡大に伴って神経線維は伸展張力を受けており,その力が集まる乳頭縁での障害が起こることも容易に想像される.軸索輸送が障害されることによって障害部位から離れた網膜にある神経細胞体でアポトーシスが起こることはQuigleyらが報告15,16)したが,そのメカニズムについてはいくつかの議論があった.圧迫あるいは虚血による軸索輸送障害と神経栄養因子の途絶,活性酸素などの酸化ストレス,自己抗体,ミクログリアの活性化による傍乳頭網脈絡膜萎縮(PPA)の形成と組織破壊,過剰グルタミン酸による細胞毒性,一酸化窒素による障害などの説である.それぞれの説にはそれを支える論文があり,そ944あたらしい眼科Vol.30,No.7,2013れをここで議論することは適当ではないが,筆者が今も最も重要と思っているのは神経栄養因子(neurotrophicfactor)の途絶によるカスパーゼ系の活性化とこれに伴うアポトーシスである17).現在5種類発見されている神経栄養因子neurotrophin1,2,3,4,5のうちBDNF:NT-2は上丘に注射されると網膜神経節細胞の死を予防することが知られており32),このBDNFの逆行性輸送が阻害されることが緑内障における視神経萎縮の原因になることを示すいくつかの証拠も見つかっている33,34).もちろんまだ未解決な問題もあり,neurotrophinは神経の支配組織で合成されるが何らかの理由で合成が不十分になり,proneurotrophinのかたちで分泌されると逆にアポトーシスを促進することがあるという35).いずれにしても,乳頭近辺における軸索輸送障害は緑内障における視神経萎縮のメカニズムを知るうえで無視することのできない重要なイベントであり,それが篩状板以外の部位でも起こることは注目に値する.IV近視と緑内障近視進行には遺伝的な要因と環境因子(光遮断など)があり,本稿では記載しないがmatrixmetalloproteinase,crosslinking,TGF(transforminggrowthfactor)bなどの修飾による間質の異常とともにCOL1A1,COL2A1,COL11A1,COL18A1,FBN,PLOD1,lumicanなど遺伝子レベルの研究は膨大である.近視の眼のコラーゲン線維は細く,間質も弱いので組織が脆弱であるということがいわれており36),Stickler症候群やEhlers-Danlos症候群のように結合組織の先天異常が高度近視の要因になることも知られている.近視と緑内障との間には切っても切れない関係がある.近視眼では緑内障になりやすい,あるいは近視が緑内障の危険因子であるとする報告が多数ある37.53).これまでの内外の報告を参考に誤解を恐れずに言うならば近視の眼は緑内障になりやすく,視野進行のスピードが速く,発症すると異型の視野欠損を起こしやすく,固視点が障害されやすい.緑内障における視神経萎縮のメカニズムについては機械的障害説と循環障害説があり,機械的障害説は岩田の総説に詳しい54)が,これら2つの病因論だけで近視眼における易障害性を説明することはむずかしい.以下に近視を伴う緑内障眼における神経線維の易障害性に関与する因子について考按した.(62) 第1の要因は近視眼における乳頭.篩状板の変形である.緑内障で機械的障害による視神経萎縮が起こるメカニズムはさらに2通りに分けられ,一つは篩状板における神経線維の絞扼であり,もう一つは乳頭周囲における屈曲・伸展緊張である.眼圧のストレスによる神経損傷と組織強度との関係は微妙なもので,Quigleyらの報告によると篩状板におけるlaminarporeの大きさが乳頭の上極と下極で大きく,これがブエルム(Bjerrum)暗点や傍中心暗点が起こる原因と言われている55,56).しかし乳頭構造が脆弱性に関与するのはporesizeだけではなく,乳頭内の微小組織である血管がどこにあるかといったことでも影響を受ける57,58).高度近視の乳頭の形について,少数の研究者が近視乳頭の大きさは変わらないとか,形の異常はないといった報告をしたものが散見される59,60)が,その他の多くの報告において高度近視眼の乳頭や篩状板の形状は正視眼におけるそれとはかなり異なり,その変形を報告するものが圧倒的である.近視眼では乳頭サイズが大きく61.64),楕円係数が大きい65,66),回転している67.69)あるいは傾斜しているものが多い70,71)といったことが最近取り上げられ,乳頭の形と神経線維の障害部位との関係が話題になっているが,実は筆者らが20年も前から報告してきたことでもある65,67).さらに最近のOCT(光干渉断層計)による画像診断によると近視眼では篩状板の厚さが薄く72),脈絡膜の厚さが薄いこと73)(非近視眼においても脈絡膜の菲薄化は報告されている74,75)),あるいは脳脊髄液と網膜下腔が連続するものがあることが証明された76).乳頭のサイズが大きければ,物理学的に中央部のたわみは大きくなるし77,78),篩状板や乳頭縁での神経組織にかかるストレスは大きくなるので近視眼における緑内障頻度の上昇や種々の特殊な視野変化を説明するうえでは都合が良い.もし近視眼で乳頭の変形が大きいのであればそこを通る神経線維は屈曲され挫滅されることが考えられる.Quigleyら79)が模型で示すように,乳頭の傾き,拡大,ひっぱり緊張負荷などはそこを通る神経線維の易障害性に大きな影響を与える(図12).MRI(磁気共鳴画像)で見た高度近視眼の眼球の変形は多様で,予想外の所で障害されるということもありうる80).近視眼における後極部組織の変形が定常的に神経線維に伸展や圧迫ストレスを加えているということも考えられている31).NFNFLLLNLL図12乳頭変形に伴う神経圧迫障害模型(文献79,QuigleyHAetal:InvestOphthalmolVisSci19:505-517,1980より許可を得て複製)図13近視を伴う緑内障眼に起こった多発性で乳頭黄斑線維を含む異型の神経線維層欠損を起こした例近視眼では異型の欠損が起こりやすい.(文献108,ChiharaEetal:ArchOphthalmol108:228-232,1990,Fig3より許可を得て掲載).11.8dB程度の中期緑内障眼では篩状板に局所的な欠損がしばしばみられること81),また近視眼では篩状板が薄いという所見と合わせると,近視眼では眼圧による変形が起こりやすく,緑内障になりやすいであろうということが推測される82,83).正視眼では脆弱部位は乳頭の(63)あたらしい眼科Vol.30,No.7,2013945 図14SLOでみた網膜神経線維のひび割れ高度近視では後極部の拡大に網膜神経線維層の可塑性が追い付かず,ひび割れがみえる.ひび割れの中をバラバラになった神経線維層が走っているのがみえる.(文献84,85より)上極と下極であることが知られているが,近視眼ではこのような局所的な脆弱性が異所性に起こることがある.これが近視眼における異型性視野欠損や黄斑部における感度低下につながると考えられる.図13は筆者らが報告した異所性の神経線維層欠損である.第2の要因は近視に伴う後極部の拡大とそれに伴う神経線維層への伸展ストレスである.眼球の拡張に伴う神経線維層のひび割れも見つかっている(図14)84,85)が,このことは高度近視眼の神経線維層に慢性的な伸展ストレスがかかっていることを示している.近視眼では篩状板が薄く,後ろにたわみやすいと考えられているが,「たわみ」が強いと神経線維は乳頭縁でElschnig強膜輪に強く押し付けられて軸索輸送の障害の原因になる25,26).また高度近視でみられるridge形成のような後極部強膜の変形がある場合,その場所での神経が脆弱性をもつ原因になる31).近視眼では網膜神経線維層が薄いという報告もあり,神経線維層が薄いのであれば伸展ストレスに弱いということも考えられるが,これについては異論もあり,むしろ場所によって厚さに違いがあり,薄い部分に脆弱性が出るという理解のほうが正しいのかもしれない86,87).第3の要因は乳頭低形成症などの先天性の要因である.高度近視の眼に乳頭低形成症を伴うものがあることは古くから認識されていた88).近視の遺伝子は緑内障の遺伝子と関連しているという報告がある89).筆者らは20年ほど前,まだ自動計測装置がなかった頃に乳頭の大きさを手動でプラニメーターを用いて計算946あたらしい眼科Vol.30,No.7,201330.028.026.024.022.020.0Discarea(mm2)図15眼軸長と乳頭サイズの相関関係眼軸長が伸びるにつれて乳頭は大きくなる傾向があるが,傾斜乳頭のみは別で,むしろ小さくなる.(文献65,ChiharaEetal:GraefesArchClinExpOphthalmol232:265-271,1994より許可を得て掲載)しLittmann式で補正して調べた.そのときに眼軸が伸びると確かに乳頭は大きくなる傾向があるが,傾斜乳頭では眼軸長が伸びてもサイズが大きくならずむしろ減少気味であることを報告していた65)(図15).このことは最近の報告でも確認されている69,90).高度近視眼では,superiorsegmentoptichypoplasia(SSOH),傾斜乳頭症候群あるいは乳頭低形成症が合併することがありうるし88),倍率を補正するとむしろサイズが小さいとする報告もある91).このことは近視と乳頭の低形成症の間に何らかの関係がある可能性を示唆する.従来の報告をみると傾斜乳頭症候群は近視性乱視を伴うことが多く,SSOHでも近視患者の比率は高い.Ymamaotoらの報告ではSSOHの37眼のうち19眼(51%)が1Dを超える近視であった92).乳頭低形成症の眼では軸索数が正常眼より少ない.このような眼に緑内障が合併すると“視野欠損が出現するといわれる残存軸索数50万本”まで減少するのにかかる時間が短いということが考えられるし,欠損部分に偏りがあれば異型の視野欠損になることが想定される.第4の要因として近視眼にしばしば合併する傍乳頭網脈絡膜萎縮(PPA)の影響も考えなければならない.近視眼ではしばしば乳頭の周囲にコーヌスと言われる網脈絡膜萎縮が起こる93.95).近視眼が緑内障になりやすいことを説明する一つの仮説としては乳頭周囲のコーヌス(PPA)や脈絡膜の菲薄化に伴う酸素分圧の低下の影響ということも考えられるであろう.第5の要因として高度近視眼における近視性神経症の(64)Axiallength(mm)1.002.003.004.00 緑内障頻度(%,MD)問題がある.高度近視眼では最近乳頭のピット96)も見つかっているが,かなり昔から高度近視眼では眼圧が正常で緑内障とは考えにくいにもかかわらず原因不明の視野欠損が起こることについて多くの報告がある97.101).これが正常眼圧緑内障に属するものか近視性神経症とでもいうべき病態なのかについては議論の分かれるところである.正視眼の緑内障における視神経萎縮メカニズムの首座が篩状板における神経線維の絞扼であり,乳頭縁における神経線維の伸展,圧迫は従であると考えられるのに対し,緑内障を伴わない高度近視における神経線維障害は眼球の後極部拡大に伴う神経線維の伸展,乳頭縁での圧迫やコーヌス縁における強膜の段差における神経障害や脈絡膜血流の低下が障害の首座ではないかと推定される.これらは互いに重複して起こりうるものであり,緑内障あるいは近視眼における神経障害のメカニズムを複雑にしている.近視眼に緑内障が合併した場合,異型の視野欠損が多いとか,中心視野が障害されやすいという報告はこれらの複雑な因子を反映したものと考えてよいであろう102.112).近視眼は緑内障の進行が速いのか?さらに話を進めると,近視のほうは緑内障になると視野障害の進行が速いであろうということが推測されるが,筆者らはそのことを世界で最も早く1997年に報告した113).実際にそのことを支持する論文がいくつかあ1510:正視群:軽度近視群:高度近視群500歳児60歳成人視神経障害進行速度図16高度近視,軽度近視,正視眼における視野障害速度の模式図0歳のときに緑内障はほとんどないが,これが60歳になったときに近視群において緑内障に頻度が高いのであればその60年のうちに視神経線維の脱落速度が速かったということでなければ,その高い頻度を説明できない.(65)る46,114.116).疫学的には0.10歳時にはほとんど緑内障がなくて,50.60歳年齢では近視群で緑内障の頻度が高いと言われており,このことを説明するためには,近視眼において緑内障性神経症が速く進むということでなければ説明できないであろう(図16).2012年に発表されたラテン系人種における前向き研究でも近視が視野進行の危険因子であることが示され,近視眼における視神経の脆弱性を示すエビデンスは蓄積されつつある116).近視による乳頭の変形は後天的な異常で7.9歳の学童期から起こってくる117)ということや,緑内障を起こす年齢が近視群のほうが若いという結果,あるいは緑内障患者のなかに近視の人の頻度が高いというデータ118,119)も,近視眼で視野障害進行のスピードが速いという推論を支持する.しかし,このことに関しては反対意見もあり,近視があっても視野障害の進行は速くないという論文も出されている120.122).さらに,近視が緑内障の危険因子ではないという報告も少数ではあるが存在するので,これらの議論が収束するのは少し先になるかもしれない123.125).近視と緑内障の関連でもう一つ見逃してはならない問題は診断のむずかしさである.近年の緑内障診断は単に眼圧値だけではなく視神経乳頭の陥凹や網膜神経線維層あるいは視野によって診断が行われる.ところが高度近視眼の乳頭はしばしば変形しており容易には緑内障の診断がつかない126.130).また,網膜神経線維層の欠損の診断は近視性のコーヌスや豹紋状眼底のために簡単ではない128,129).これに加えて,近視を伴う緑内障眼の視野はしばしば異型であり,視野による診断も容易ではない100,108,109,130.132)ので,近視を伴う原発開放隅角緑内障では相対的に眼圧測定の重要性が増してくる.一方,眼圧値は緑内障の診断という意味だけではなく,緑内障の診断がついた後,治療効果を判定するうえで無視することのできない重要な指標である.ところが,この眼圧を測定するうえで角膜の厚さや剛性が測定値に誤差因子として関与し,われわれが頻用しているGoldmann型圧平眼圧計では正確な眼圧測定ができていないことが知られるようになった.特に,近年盛んになったLASIK(laserinsitukeratomileusis)などの屈折矯正手術の後では眼圧測定値がかなり低くなるということがわかっている133,134).EarlyManifestGlaucomaTrial135)によると,眼圧は平均値が1mmHg高くなると緑内障性視神経萎縮のリあたらしい眼科Vol.30,No.7,2013947 (kD)160.0B(kD)160.0Bスクが10%上がるといわれており,日本人に多い近視を伴う緑内障眼における眼圧の管理は今後の緑内障の治療を考えるうえできわめて重要なことである.緑内障の診断において画像解析技術の進歩は重要な役割を果たしてきた.研究の初期には乳頭の画像解析が主流であり,筆者らも初期にはHRT(HeidelbergRetinalTomography)やTopSS(TopographicLaserScanningSystem)を使って乳頭の画像解析を行ったが,近視眼では乳頭の形態の個人差が大きいので正常と異常の判別は簡単ではない136.138).特に近視眼では乳頭の変形が大きいので,乳頭より乳頭周囲の網膜神経線維層の厚さ(cpRNFL)を調べるという選択肢もある139).ただ,高度近視眼ではcpRNFLも変動が大きくデータの安定性では網膜の厚さほどの信頼性はない.最近では網膜のganglioncellcomplex(GCC)の厚さを解析することの重要性が強調されている.GCCが重要であるとの指摘はTanitoの報告がわが国における研究の嚆矢となったが,近視が強い眼では乳頭の画像解析が信頼性で劣るので,網膜厚の解析が有用ということになる140.142).V糖尿病と緑内障1.網膜における糖尿病神経症従来糖尿病の網膜ではmicroangiopathyとして血管周囲細胞(pericyte)の消失143,144)や血管瘤145),細小血管閉塞や漏出が注目を集めてきたが,糖尿病の眼で起こる異常は血管障害だけにはとどまらず,網膜神経線維層や視神経にも及ぶ.糖尿病の三大合併症の一つは神経症であり,全身的には手足のしびれ,自律神経失調,インポテンツ,性格の変化が起こることが知られており,悪化すれば下肢に壊疽が生じることもあるが,眼においても網膜症の発現の前に色覚の異常146,147),コントラスト視力の低下148),律動様小波の消失149),視覚誘発脳波の異常150),暗順応の低下151)が起こり,網膜神経線維層の菲薄化が起こる.糖尿病の神経症では神経細胞体近傍の軸索の太さは維持されるが,周辺部ではdyingbackと言われる先細りが起こるとともに脱髄が起こる152).Simaらは糖尿病ラットの視神経で視覚誘発脳波の潜時が44%延長し,軸索径は18%減少し網膜神経節細胞が変性することを報告している153).糖尿病の場合軸索輸送がどうなるかは興味あるテーマであり,筆者らは初期の研究において糖尿病では軸索輸送量が減少することを報告した154,155).軸索輸送される948あたらしい眼科Vol.30,No.7,20132009766452920MolecularWeight×10-3図17二次元電気泳動による軸索輸送成分の分離少なくとも80以上のspotがあると考えられている.(文献156,PerryGWetal:JNeurosci10:3439-3448,1990より許可を得て掲載)21.5A:Control39.0B:Diabeticrabbit68.0図18糖尿病ウサギにおける軸索輸送成分の変化を一次元電気泳動で調べたもの糖尿病視神経では単に輸送量が減るだけではなく輸送成分の変化が起こる.(文献157,TsukadaT,ChiharaE:InvestOphthalmolVisSci27:1115-1122,1986より許可を得て掲載)蛋白質(酵素)成分は二次元電気泳動すると少なくとも80以上のスポットが検出される156)(図17)が,そのすべてが均等に減少するのではない.筆者らは軸索輸送の減少は単に量が減少するだけでなく成分(質)の変化(120kDの蛋白量が上昇し,29kDの蛋白量が減少する)を伴(66)A うことを報告した157)(図18).さらに神戸大学のグループでは逆行性軸索輸送の減少も報告されている158,159).軸索輸送量の減少所見は糖尿病神経症を説明するうえでいくつかのカギを提供してくれる.たとえば軸索輸送が神経線維の骨格蛋白の供給源であるので,その減少は軸索径の減少につながることが考えられdyingbackと言われる糖尿病神経症に特徴的な末端軸索の先細りを説明するうえで都合が良い.またneurotrophicfactorの輸送量減少が想定されるところからこれに伴う神経細胞体のアポトーシスを説明できる.前述の緑内障の項目でも触れたが,神経節細胞がアポトーシスカスケードに踏み込まないように制御するうえで神経栄養因子は重要な役割を果たしている.逆行性の軸索輸送では神経栄養因子が運ばれることが知られており,これが減少することは神経細胞体の自殺(アポトーシス)につながる.糖尿病の神経症の発症に神経栄養因子の異常が関与するという研究報告や160),BDNFのような神経保護因子が糖尿病で減少していることが神経障害を受けやすいことと関係するのではないかと推測するものなど161)はこれらの概念を支持するものである.糖尿病の動物あるいはヒトの網膜でTunel染色をしてみるとアポトーシスが約10倍増えており,これは網膜の内層(つまり神経節細胞層)で多く,網膜神経節細胞やアマクリン細胞が減少し網膜神経線維層が20%程度減る162.164).このようなアポトーシスは外胚葉の細胞のみならず血管系の中胚葉の細胞でも起こり全身的な問題でもあるが,この細胞死は糖尿のコントロールができると減少する165,166).アポトーシスの減少はいくつかの要因が関与する可能性があるが,そのなかでも逆行性軸索輸送で運ばれる神経栄養因子がneuroprotectivemechanismを発動することは重要である.Zhangらによって報告された逆行性軸索輸送の減少はこの意味で重要である158,159).糖尿病網膜症の発現は糖尿病発病から10年以上の長い月日を要するが,律動様小波消退をはじめとする神経系の機能異常は網膜症に先行することが知られており,これらのことを考えると糖尿病患者では網膜症の発症前に網膜神経線維層に糖尿病神経症が起こると考えられるのである.筆者らは世界で初めて糖尿病患者における網膜神経線維層の欠損を報告した167)が,その後多くの論文で網膜神経線維層の欠損もしくは菲薄化が証明された168.174).後年になって中村は網膜神経線維層と視神経乳頭内のアクアポリン0と9の発現の違い(67)図19糖尿病患者における網膜神経線維層欠損(矢印)糖尿病網膜症が具現化する前に出現することがある.(文献167参照)を発見し,緑内障と糖尿病における神経障害の機序が異なることを推論している175).さらに近年のscanninglaserpolarimeter(GDx)やOCTなどの検査機器の進歩によって臨床的に糖尿病患者の網膜神経線維層に血管障害が起こる前から神経線維層の器質的な欠損や菲薄化が発見された(図19,20).糖尿病における神経線維層欠損は,乳頭の陥凹を伴わないので見逃されやすいが,糖尿病神経症の具現形であり,臨床的には末期の糖尿病網膜症眼における蒼白な乳頭として認識されることもある176,177).硝子体手術を行わなければならないような重症糖尿病網膜症患者ではしばしば重篤な視神経萎縮を伴うが,その発症には血管障害とともに神経症が関与することを忘れてはならない.あたらしい眼科Vol.30,No.7,2013949 80NDR(n=50)7070■mildNPDR(n=33)■mode-NPDR(n=50)6060NFLT(mm)50p=0.016p=0.008p=0.003p<0.001p=0.039p=0.024p<0.00150404030302020101000TSNITave.Superiorave.Inferiorave.NFIp=0.0019p=0.0045p=0.0010p=0.001■PDR(n=20)NFIscoreNFLT:nervefiberlayerthickness,NFI:nervefiberindicator,NDR:non-diabeticretinopathy,NPDR:nonproliferativediabeticretinopathy,mode-NPDR:moderatetosevereNPDR,PDR:proliferativediabeticretinopathy.図20GDxでみた網膜神経線維層の厚さ網膜神経線維層は糖尿病網膜症が進行するほど薄くなるが,網膜症が出現する前でもすでに菲薄化が始まっていることがわかる.(文献169,TakahashiHetal:AmJOphthalmol142:88-94,2006より許可を得て掲載)2.論争の気配:糖尿病は緑内障の危険因子か?それとも保護因子か?糖尿病患者の眼ではもともと網膜神経線維の減少や神経層の菲薄化があるが,これに眼圧のストレスが加わってくれば,神経障害は起こりやすいであろうと考えられ,実際そのような視点に立った報告もなされている178.180).これに加えて糖尿病では線維柱帯における糖蛋白の糖化が起こり,クロスリンキングが増え,またムコ多糖代謝に異常が起こることが知られているのでSchlemm管とぶどう膜強膜路における房水流出抵抗が上がることが推定され,実際に多くの論文で糖尿病患者では眼圧が高いことが示されている181.184).これらのことから類推すると,糖尿病では基本的に神経線維の脱落や菲薄化が起こっており,さらに眼圧も高いので,糖尿病患者では緑内障が起こりやすいであろうということが推測される.Kanamoriの報告では糖尿病状態でさらに眼圧を上げるといっそう多くのアポトーシスが起こる179).これらの推論を支持するかのようにBlueMountainStudyなどいくつかの疫学的な研究とケーススタディで糖尿病が緑内障の危険因子であるとする報告がみられる184.191).糖尿病の患者は網膜症の健診のために診察機会が多いということを差し引いても,眼圧の高い患者が多く,緑内障のリスクが高いのではないかという推論はそれなりの根拠をもっているし,EMGT(EarlyManifestGlaucomaTrial)やAGIS(AdvancedGlaucomaInterventionStudy)では糖尿病患者は緑内障が進行しやすいという前向き研究の報告もなされている188,192).3.反論:糖尿病は神経保護作用をもつのか?ところが,2002年になって発表されたOHTS(OcularHypertentionTreatmentStudy)で,糖尿病群においては眼圧が高いことが確認されるにもかかわらず,緑内障の発症頻度が低い〔hazardratio0.37(range0.15.0.90,p<0.05)〕という結果が発表され,糖尿病は緑内障に対して神経保護的に働くということが報告された193).このOHTSの結果は2008年になってGordon自身が糖尿病の検出率に問題があったことを認め有意差はなかったと修正されたが,それでも眼圧が高いにもかかわらず発症頻度に有意差がないということは糖尿病が神経保護的に作用するのであろうと解釈された194).さらに,OHTSの発表と相前後していくつかの疫学的な調査で糖尿病と緑内障の関係について懐疑的な報告195)や関係を否定する報告183,196)が発表され,2009年にはQuigleyのような大物が糖尿病は緑内障の危険因子ではないとして論陣を張るに至った197).Quigleyの論点は糖尿病患者において緑内障が多いのは高眼圧が多いからであるとし,糖尿病患者は検診を受ける機会が多く,眼圧も高いので緑内障が発見される率は高いが,糖尿病そのものは逆に神経保護的に作用する可能性があるとするもので,以下の3つの論点を強調し950あたらしい眼科Vol.30,No.7,2013(68) た.1)糖尿病患者におけるバリアの破綻に伴って細胞間に漏出するVEGF(血管内皮増殖因子)には神経保護作用があるということ198),2)中枢神経において前虚血状態にさらされた神経組織はサバイバル機構が働くようになることを例にとって,網膜でも神経が緑内障性視神経障害に対する防御機能を備える可能性があるということ199),3)糖尿病患者においてはコラーゲンのクロスリンキングが起こるので角膜や強膜組織の強化が起こり,視神経篩状板が強化されてストレスに耐えやすい視神経乳頭ができるというものである.実際にそのことを示すような報告もなされている200).そして実験的に糖尿病になったラットに高眼圧負荷をかけても視神経萎縮の脱落は糖尿病のほうが少ないという報告が現れている201).これまで,糖尿病と緑内障の関係について日本では糖尿病は緑内障の危険因子であるとする論調が強かった.糖尿病で神経症が網膜神経線維層に起こるということについては間違いがないと思われるが,緑内障の危険因子であるかについては今後の展開がどうなるのか興味深い.もし,糖尿病が本当に神経保護的に働くのであれば,これまで,どうしてもきっかけをつかむことができなかった神経保護の研究に一石を投じるであろう.VI緑内障の治療緑内障にかかわる医師の夢は緑内障性視神経萎縮の根絶である.眼圧が高くても神経細胞や軸索が脱落しないのであれば治療は完璧である.緑内障における神経細胞の脱落はアポトーシスによるが,このアポトーシスを抑制するためのいくつかの因子のなかで最も重要なものが神経栄養因子であることは前述した.臨床応用が可能なのであればBDNFを直接投与することで神経脱落を防止するということも考えられるかもしれない32,202).しかし,緑内障患者に蛋白製剤を持続的に眼内に注入し続けることは現実的ではない.神経保護の本道を行くなら,神経栄養因子の供給を増やし,神経脱落を防ぐということが考えられる.筆者らはメチルB12が緑内障の視神経萎縮を軽減するのではないかと考え,研究を行ったこともあるが成果を上げることがむずかしかった203).全国規模で行った臨床研究でメチルB12が視野障害進行を防止できるかどうかを調べたが,これも統計学的な有意差を得ることがむずかしかった.その時点ではやはり眼圧を下げるしかないというのが正直な印象であっ(69)た204,205).神経細胞のアポトーシスを誘発するもう一つの重要因子は細胞内カルシウムを司るカルシウムチャンネルである.カルシウム濃度が上がればカスパーゼ12が活性化されるので,それを防ぐためにはカルシウムチャンネルのブロックが望ましい.このような考え方に基づく研究は日本が先導しており,その内容は新家の総説に詳しい.まだ異論はあるようであるが,臨床的にも有効性が示されていることは心強いことである206).その他にもブロッコリーに含まれるスルフォラファンやカルボシアニン色素など有効性が示唆されているものがいくつかあり,これらが臨床応用できるほどになる日が来ることが望まれる207).しかしながら,2012年現在では緑内障の治療において“エビデンスがある”有効な治療法となると眼圧を下げることのみであり,それ以外で神経の萎縮を防ぐことができるというエビデンスのある治療法は乏しい.眼圧を下げるための手段は投薬と手術があるが,このうち手術的な治療法は眼科医にとってどうしても避けて通れない重要なテーマで,合併症を起こすことなく眼圧を下げるために先人が積み重ねてきた苦労は並々ならぬものである.緑内障の手術治療として2012年現在最も普及している術式はCairnsの報告したtrabeculectomyである208).この手術は元々Sugarが線維柱帯を切除してその断端にできるSchlemm管の開口部から房水がSchlemm管に入ることを想定した流出路手術として報告209)された.しかし,Cairnsはtrabeculectomyが有効なものには濾過胞が形成されていることを報告してその後はガードのある濾過手術として40年にわたり一世を風靡している.この手術に関してはおびただしい修飾・工夫がなされ,手術成績に関する報告も多い.基本的には適度の大きさの濾過胞が形成され,房水の漏れ,感染,白内障の進行,低眼圧黄斑症などが起こることなく,lowteenの眼圧が維持されることが理想であろう.筆者らは創傷治癒のモデレーターであるTGF-bを抑制する薬剤に興味をもち,トラニラストを使うことで瘢痕の防止と上皮の再生という2兎を追えるのではないかと考え報告した210,211).しかし,そのような工夫をしても術後の濾過胞の感染,低眼圧黄斑症,白内障の進行などの問題を根絶することはむずかしく,また術後の眼圧をtargetpressureあたらしい眼科Vol.30,No.7,2013951 Lectpost-opIOP2522.52017.51512.5107.552.51015202530354045505560Lectpre-opIOP図21Trabeculectomyの術後濾過胞がある眼について術前眼圧と術後6カ月の眼圧の相関関係をプロットしたものTrabeculectomyでは全体としては29.4±8.2mmHgから14.1±4.5mmHgへと良好な眼圧下降を示すが,この眼圧をみると1桁のものから20mmHgを超えるものまで幅が広く,なかなかtargetpressureを達成することがむずかしい.(文献212,ChiharaEetal:JpnJOphthalmol55:107-114,2011より許可を得て掲載)にもってゆこうとしても,ばらつきが大きく想定された範囲内に眼圧を収めることは至難の業である(図21)212).眼圧コントロールの質を上げるという意味では流出路手術に勝るものはない.Trabeculotomy,viscocanalostomyなどの手術は術後の眼圧が術前の眼圧と線形的に相関しており,術前に術後の眼圧値をある程度予測することができる212.221).また,術後の合併症の頻度は低く,術後視力も優れている.白内障の手術と合併することによって相乗効果による眼圧下降を得られるというメリットもある.近年米国ではこのような長所が見直されてMIGS(micro-invasiveglaucomasurgery)としてiStent,Hydrus,CyPass,trabecutome,excimerlasertrabeculostomy(ELT)などが話題になっている222).しかしながら,trabeculotomyやviscocanalostomyの眼圧下降効果はtrabeculectomyと比べると弱く26mmHgを超える術前眼圧のものには推奨しかねるところがある.最近話題になるMIGSについても,個人的な感想としてSchlemm管を扱うものはtrabeculotomyの筆者らの従来の経験213.215)を大きく凌駕する成績は得られていないと感じている.これに対して術前眼圧が26mmHgを超え,しかも濾過胞によるトラブルを避けたい場合に使われることを想定して筆者らが導入したのがdeepsclerectomyである223).これは強膜内にlakeといわれる空間を作り,lakeから毛様体上腔への房水流出を可能としたもので,ヨーロッパではコラーゲンイ952あたらしい眼科Vol.30,No.7,2013図22Modifieddeepsclerectomyの模式図この手術で房水は前房からlakeに入り,lakeの底に形成される開窓部から毛様体上腔に流れる.ンプラントを併用しているが筆者らはこのようなインプラントを用いず,代わりに毛様体上腔への開窓術を加えることで中等度の重症度の緑内障を克服してきた224,225).この手術は濾過手術と流出路手術の両方の性格を兼ね備えているのでhybridsurgeryと考えてよい(図22).Trabeculectomy,trabeculotomy,viscocanalostomy,deepsclerectomyの4つの術式を駆使すると大抵の開放隅角緑内障を治療することができるが,これらでも手におえない重症の緑内障眼は存在する.これら究極の難治性緑内障にどう対処するかは難題であったが,2012年4月にチューブシャント手術が保険収載され,この分野で大きな進歩がみられた.筆者らは以前からチューブシャントによる治療の可能性について検討してきており226,227),25年前にはWhitepumpshunt,ACTSEB(anteriorchambertubeshunttoanencirclingband)を前房に挿入することによる治療を試み,何例かは眼圧のコントロールに成功したが,同時に浅前房,虹彩癒着,出血,虹彩炎,チューブの露出など多くの合併症に悩まされた.しかし近年はBaerveldt,Ahmed,エクスプレスなどの新しいデザインのチューブが発売され,デザインの改善とトラブルに対する知識と対処法の進歩によって手術成績は格段に改善された228).今後はこの手術が次第に国内でも浸透するものと思われる.チューブシャント手術の長期的な合併症としては角膜内皮損傷の問題が気になるところである229,230).日本ではlaseriridotomyの後でも水疱性角膜症の頻度が高いことが知られており,チューブが角膜内皮にあたる場合には特に注意が必要である.この問題を解決するために(70) はチューブを硝子体腔に差し込むことが良い解決方法になった228).この手術のキーポイントは手術直後の低眼圧や高眼圧をどのようにして防ぐかであり,特に術後早期に起こることのある低眼圧にまつわる脈絡膜.離,浅前房の克服と術後高眼圧期の克服がこの手術の定着の是非を決める重要なポイントである.チューブシャントの手術成績や内皮を始めとする眼合併症については緑内障学会を中心として前向き研究を始めており,緑内障術者の協力を得てこの問題に取り組むことが大切である.おわりに緑内障性視神経萎縮の原因を探求するうえで軸索輸送に関する知識は欠かせない.軸索輸送はヘルペスウイルスの伝播,軟性白斑の形成,うっ血乳頭の形成にかかわるとともに,その障害は神経栄養物質の途絶や蛋白輸送の途絶によって緑内障性視神経萎縮と糖尿病視神経症の原因になると考えられる.本稿では軸索輸送研究を中心とした神経障害機序の研究過程と得られた結果について概説した.緑内障における軸索輸送障害はAndersonらが報告した篩状板と筆者らが報告した乳頭縁の2カ所で起こることが報告されてきたが,高度近視眼のように乳頭の形が変形している場合はさらに篩状板に部分的な脆弱性を生じ,眼球の拡大による神経線維の伸展ストレスが加わることと,乳頭低形成症,網脈絡膜萎縮や,近視性視神経症などの修飾を受けることで異型の視野欠損発現や神経線維の易障害性が出現すると推測される.糖尿病患者では網膜症のない時点から視神経症が起こっており,網膜神経線維層の菲薄化が起こっているが,これに高眼圧が加わることで緑内障のリスクが上昇することが考えられる.しかし,これに反対する学説もあり,このことに関する最近の論文を紹介した.最後に緑内障の治療として手術方法の改善に関する筆者らの考え方を述べた.文献1)WeissP,HiscoeHB:Experimentsonthemechanismofnervegrowth.JExpZool107:315-395,19482)AndersonDR,HendricksonA:Effectofintraocularpressureonrapidaxoplasmictransportinmonkeyopticnerve.InvestOphthalmol13:771-783,19743)MincklerDS,TsoMO,ZimmermannLE:Alightmicroscopicautoradiographicstudyofaxoplasmictransportintheopticnerveheadduringocularhypotony,increasedintraocularpressureandpapilledema.AmJOphthalmol82:741-757,19764)QuigleyH,AndersonDR:Thedynamicsandlocationofaxonaltransportblockadebyacuteintraocularpressureelevationinprimateopticnerve.InvestOphthalmol15:606-616,19765)MincklerDS,BuntAH,JohansonGW:Orthogradeandretrogradeaxoplasmictransportduringacuteocularhypertensioninthemonkey.InvestOphthalmolVisSci16:426-441,19776)MincklerDS,BuntAH,KlockIB:Radioautographicandcytochemicalultrastructuralstudiesofaxoplasmictransportinthemonkeyopticnervehead.InvestOphthalmolVisSci17:33-50,19787)QuigleyHA,GuyJ,AndersonDR:Blockadeofrapidaxonaltransport;effectofintraocularpressureelevationinprimateopticnerve.ArchOphthalmol97:525-531,19798)千原悦夫:正常白色家兎の視路におけるorthogradefastaxoplasmictransportの動態.日眼会誌81:1488-1493,19779)千原悦夫,本田孔士:眼科学における軸索輸送(総説).日眼会誌84:331-349,198010)ValeRD,SchnappBJ,ReeseTSetal:Organelle,bead,andmicrotubuletranslocationspromotedbysolublefactorsfromthesquidgiantaxon.Cell40:559-569,198511)ScholeyJM,PorterME,GrissomPMetal:Identificationofkinesininseaurchineggs,andevidenceforitslocalizationinthemitoticspindle.Nature318:483-486,198512)SchnappBJ,ReeseTS:Dyneinisthemotorforretrogradeaxonaltransportoforganelles.ProcNatlAcadSciUSA86:1548-1552,198913)KumarJ,EricksonHP,SheetzMP:Ultrastructureofthe120-kDaformofchickkinectin.JBiolChem273:3173831743,199814)DuncanJE,GoldsteinLS:Thegeneticsofaxonaltransportandaxonaldisorders.PLoSGenet2:e124;12751284,200615)QuigleyHA,NickellsRW,KerriganLAetal:Retinalganglioncelldeathinexperimentalglaucomaandafteraxotomyoccursbyapoptosis.InvestOphthalmolVisSci36:774-786,199516)OkisakaS,MurakamiA,MizukawaAetal:Apoptosisinretinalganglioncelldecreaseinhumanglaucomatouseyes.JpnJOphthalmol41:84-88,199717)KummerJL,RaoPK,HeidenreichKA:Apoptosisinducedbywithdrawaloftrophicfactorsismediatedbyp38mitogen-activatedproteinkinase.JBiolChem272:2049020494,199718)ChiharaE:Axoplasmictransportblockagetherapyinherpeszosterophthalmicus.GraefesArchKlinExpOphthalmol211:183-186,197919)TsoM,FineBS:Electronmicroscopicstudyofhumanpapilledema.AmJOphthalmol82:424-434,197620)McLeodD,MarshallJ,KohnerEMetal:Theroleofaxoplasmictransportinthepathogenesisofretinalcotton-woolspots.BrJOphthalmol61:177-191,197721)ChiharaE:Pathogenesisofcottonwoolpatches;aclinicalstudy.JpnJOphthalmol37:397-403,198322)ChiharaE,SakugawaM,EntaniS:Recoveryoffastaxonaltransportandretinalproteinsynthesisintherabbitsafterintraocularadministrationofvinblastine.Brain(71)あたらしい眼科Vol.30,No.7,2013953 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Myopicdiscenlargementanddistortionoflaminartissuemayleadtofocalvulnerabilityofnervefibersandtoatypicalvisualfielddefects.Myopicectasiaoftheposteriorsegmentoftheeyecausesstretchingstressinnervefibers.Hereditaryassociationofhypoplasiaandhighmyopiamayleadtoinitialfewernervefibers,andatypicalvisualfielddefects.Myopicparapapillarychorioretinalatrophymayleadtoischemiaofadjacentganglioncellsandretinalnervefiberlayer.Intrachoroidalcavitationmayleadtolowoxygentensionandinsulttonervefibers.Finally,associationofmyopicneuropathyandglaucomatousneuropathymayenhancenervedamageinhighmyopia.Thesekindsofparametersmayexplainatypicalnervefiberlayerdefectsandthevulnerabilityofnervefibersineyeswithhighmyopiaandglaucoma.3)Indiabeticpatients,diabeticnervefiberloss(diabeticneuropathyintheretinalnervefiberlayer)istheretobeginwith.Glycationofmeshworkproteinsmayleadtoocularhypertension.Theassociationofdiabeticneuropathyandocularhypertensionindiabeticsmaybeariskfactorfornerveloss.Ontheotherhand,leakageofvascularendothelialgrowthfactorfromocularvesselsmayprotectneuronsfromapoptosis.FurtherstudiesarerequiredtoclarifywhetherornotdiabetesisariskfactorforGON.4)Concerningthetreatment,neuroprotectionisapromisingsubjectforstudy.Practicallysurgicalreductionoftheintraocularpressure(IOP)viaSchlemm’scanalordrainagetothesubconjunctivalspace(includingtubesurgery)istheprocedureofchoiceatthepresenttime.Thethirdroute,however,viasuprachoroidalspace,showspromiseasanewrouteandrequireselucidation.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)30(7):937.960,2013〕Reprintrequests:EtsuoChihara,M.D.,Sensho-kaiEyeInstitute,50-1Minamiyama,Iseda,Uji-shi,Kyoto611-0043,JAPAN☆☆☆960あたらしい眼科Vol.30,No.7,2013(78)

涙道閉塞と視機能

2013年7月31日 水曜日

特集●涙道領域―最近の話題あたらしい眼科30(7):929.936,2013特集●涙道領域―最近の話題あたらしい眼科30(7):929.936,2013涙道閉塞と視機能LacrimalDuctObstructionandQualityofVision井上康*はじめに涙道閉塞による眼脂や流涙は強い不快感の原因となる.涙.鼻腔吻合術や涙管チューブ挿入術が奏効すれば,これらの症状が消失し,高い患者満足度が得られる.同時に自覚的な視力の改善を申告する症例を経験することも多い.点眼液を使用した直後に一時的な霧視が生じることを考えれば,過剰な涙液が視機能を障害することは容易に想像できる.また,読書など近方視時には高い涙液メニスカスが光学特性を悪化させることも納得できる.しかし,一般に涙道閉塞が視機能を障害する疾患であるとの認識は薄く,涙道閉塞と視機能に関する報告も数少ない.近年,波面センサーの眼科領域への導入により,眼高次収差の定量的かつ動的な測定が可能となり,さまざまな涙液動態における眼高次収差の変化について検討が行われている1.4).本稿では,総涙小管閉塞および鼻涙管閉塞の症例に対する涙道内視鏡下涙管チューブ挿入術前後の眼高次収差の変化について提示する.I測定および解析方法眼高次収差の測定は術前と術後に,短焦点高密度波面センサー(トプコン)を用いて10秒間の開瞼の間,連続的に行った.瞳孔径4mmにおける術前後の全高次収差,コマ様収差および球面様収差の平均値,術前後のFluctuationIndex(総高次収差のばらつき),StabilityIndex(総高次収差の傾き)および全高次収差の経時的変化を「安定型」「動揺型」「のこぎり型」「逆のこぎり型」に分類し5),(,)術前後で比(,)較した.図1に(,)各型の典型例を示す.正常例では安定型ないしは動揺型を示すことが多く,のこぎり型はBUT(涙液層破壊時間)短縮型ドライアイに,逆のこぎり型は流涙症に認められることが多いと考えられている6).術後検査は術後4週のチューブ挿入中と術後8週のチューブ抜去後に行った.閉塞部の開放はシース誘導内視鏡下穿破法(sheathguidedendoscopicprobing:SEP)7)を用いて,チューブ挿入はシース誘導チューブ挿入法(sheathguidedintubation:SGI)8)を用いて行った.チューブはポリウレタン製PFカテーテルR(東レ)を使用した.II視力検査Landolt環を用いた視力検査の結果は,両群ともに術前後での有意差を認めなかった(図2)が,自覚的な見え方に関するアンケート調査では,見え方が改善したという回答が総涙小管閉塞群において70.9%,鼻涙管閉塞群において72.4%で得られた(図3).III涙液メニスカス高涙液メニスカス高は,総涙小管閉塞群において術前0.59±0.26mmから術後4週目のチューブ挿入中0.37±0.21mm,チューブ抜去後0.41±0.21mm,鼻涙管閉塞群において術前0.61±0.32mmから術後4週目のチュ*YasushiInoue:井上眼科〔別刷請求先〕井上康:〒706-0011岡山県玉野市宇野1-14-31井上眼科0910-1810/13/\100/頁/JCOPY(47)929 安定型動揺型全高次収差(4mm)y=-0.0007x+0.1200全高次収差(4mm)y=0.0103x+0.6860.50r2=0.05892.00r2=0.03660.400.300.201.601.20高次収差(μm)高次収差(μm)高次収差(μm)高次収差(μm)0.800.100.40001234567891012345678910測定回数測定回数のこぎり型逆のこぎり型全高次収差(4mm)y=0.0351x+0.091全高次収差(4mm)y=-0.0507x+0.7740.50r2=0.8194r2=0.80271.000.400.300.200.800.600.400.100.20012345678910測定回数0123図1眼高次収差連続測定の代表的パターン456測定回数78910LogMAR鼻涙管閉塞群LogMAR総涙小管閉塞群-0.057.9%9.3%64.5%61.6%27.9%27.6%-0.05■:悪化した■:著明に悪化した00.05:著明に改善した■:改善した■:不変-0.25-0.25NS-0.2NS-0.2-0.15-0.15-0.1-0.1術前術後0.1術前術後0.11.2%図2涙管チューブ挿入術前後の視力検査の結果(pairedt-test)鼻涙管閉塞群総涙小管閉塞群(n=79)(n=89)ーブ挿入中0.39±0.26mm,チューブ抜去後0.42±図3見え方に関する術後アンケートの結果0.22mmと有意に低下していた.図4に術前後の涙液メニスカス高の変化を示す.930あたらしい眼科Vol.30,No.7,2013(48) 鼻涙管閉塞群(n=79)1.5総涙小管閉塞群(n=89)1.5****涙液メニスカス高(mm)術前チューブチューブ術前チューブチューブ****1.31.31.11.1涙液メニスカス高(mm)0.90.90.70.70.50.50.30.30.10.1-0.1-0.1挿入中抜去後挿入中抜去後図4涙液メニスカス高の変化**:p<0.01,Friedman検定多重比較Scheffe.IV眼高次収差の変化波面センサーを用いた眼高次収差の変化については,全高次収差,コマ様収差および球面様収差の平均値は,両群ともに術前に比べ術後有意に減少していた(図5).全高次収差の経時的変化については,術前には瞬目後にピークを示し,その後徐々に低下する「逆のこぎり型」を総涙小管閉塞群の33.0%に,鼻涙管閉塞群の47.6%に認めた.術後「逆のこぎり型」を示した症例は総涙小管閉塞群の17.0%,鼻涙管閉塞群の18.3%であった.また,術後は「安定型」を示す症例が総涙小管閉塞群では13.6%から25.0%に,鼻涙管閉塞群では7.3%から19.5%に増加していた(図6).眼高次収差のばらつきを示す指標であるFluctuationIndexは両群において術後は有意に低下していた.傾きを示す指標であるStabilityIndexについても鼻涙管閉塞群において術後は有意に低下していた(図7).涙液メニスカス高と涙液メニスカス曲率半径の間には相関があり9),さらに涙液メニスカス曲率半径は涙液貯留量と相関することが報告されている10).したがって,術後の涙液メニスカス高の低下は涙液貯留量の減少を示していると考えられる.涙道閉塞により増加した涙液は瞬目直後に不均一な涙液層を形成し,高い眼高次収差の原因となり,経時的変化のパターンも「逆のこぎり型」を示す症例が多い.涙液貯留量の正常化によって,術後は各高次収差の平均値の減少,経時的変化のパターンの「逆のこぎり型」から「安定型」への移行およびFluctuationIndex,StabilityIndexの低下が得られた.瞬目直後の不均一な涙液層に起因する高い眼高次収差を減少させることで視機能が改善すると考えられる6).V涙液の質と高次収差の変化鼻涙管閉塞群では,術前の涙液に粘液もしくは膿が含まれており,総涙小管閉塞群の涙液と比較して粘性が高いことが推測される.粘度の高いチモロールイオン応答性ゲル化製剤(チモプトールRXE)の正常眼への点眼により,全高次収差および球面様収差が有意に増加することが報告されており11),鼻涙管閉塞群における眼高次収差の変化には涙液の粘性が関与している可能性もある.そこで今回,全症例のうち涙液メニスカス高の低下が(49)あたらしい眼科Vol.30,No.7,2013931 ************************総涙小管閉塞群(n=89)鼻涙管閉塞群(n=79)0.70.70.60.6RMS(μm)************0.50.5RMS(μm)0.40.40.30.30.20.10Total100%90%80%70%60%50%40%30%20%10%0%0.20.10ComalikeSphericallikeTotalComalikeSphericallike:術前■:チューブ■:挿入中チューブ抜去後図5眼高次収差の平均値の変化**:p<0.01,Friedman検定多重比較Scheffe.RMS:rootmeansquare.鼻涙管閉塞群(n=79)総涙小管閉塞群(n=89)100%90%80%70%60%50%40%30%20%10%0%:のこぎり型■:安定型■:動揺型■:逆のこぎり型術前術後術前術後図6眼高次収差の連続測定パターンの変化得られた症例を選択し,涙液メニスカス高の減少率と眼高次収差の平均値の減少率について検討してみた.涙液メニスカス高の減少率=(術前涙液メニスカス高.術後涙液メニスカス高)/術前涙液メニスカス高,眼高次収差(平均値)の減少率=(術前高次収差.術後高次収差)/術前高次収差として鼻涙管閉塞群と総涙小管閉塞群を比較検討した.図8に示すように,鼻涙管閉塞群と総涙小管閉塞群の涙液メニスカス高の減少率には有意な差はなかったが,全高次収差の減少率は鼻涙管閉塞群において有意に高かった.涙液量の減少に加えて涙液の質的な改善が高い高次収差減少率につながったと考えられる.932あたらしい眼科Vol.30,No.7,2013(50) 0.12鼻涙管閉塞群(n=79)0.10.1*FluctuationIndex0.120.020.020術前チューブチューブ0術前チューブチューブ挿入中抜去後挿入中抜去後総涙小管閉塞群(n=89)***図7aFluctuationIndexの変化*:p<0.05,**:p<0.01,Friedman検定多重比較Scheffe.0.080.08FluctuationIndex0.060.060.040.04鼻涙管閉塞群(n=79)0.0050.005チューブチューブ術前挿入中抜去後00StabilityIndex総涙小管閉塞群(n=89)チューブチューブ術前挿入中抜去後-0.01-0.01NS****-0.015-0.015図7bStabilityIndexの変化**:p<0.01,Friedman検定多重比較Scheffe.StabilityIndex-0.005-0.005VIチューブ抜去前後の比較チューブ抜去後に比べて,チューブ挿入中の涙液メニスカス高は低い傾向があったという報告もあり,チューブ挿入により導涙機能が増強されるのではないかという(51)疑問がある12).実際の臨床でも図9に示すように,涙道閉塞のない流涙症に対して行った涙管チューブ挿入術により,チューブ挿入中のみ流涙症が改善する症例を経験している.チューブにより涙点のアライメントが矯正されることが一つの要因であることは予測されるが,そのあたらしい眼科Vol.30,No.7,2013933 (%)涙液メニスカス高の減少率(%)眼高次収差の減少率8080NS7070NS*NS60504030201006050403020100TotalComalikeSphericallike:鼻涙管閉塞群(n=68)■:総涙小管閉塞群(n=73)図8涙液メニスカス高の減少率(左)と眼高次収差(平均値)の減少率(右)(*:p<0.05,t-test)術前術後0.50r2=0.29800.50全高次収差(4mm)y=-0.0092x+0.272全高次収差(4mm)y=0.0009x+0.160r2=0.03770.100.10001234567891012345678910測定回数測定回数図9涙道閉塞のない流涙症に対する涙管チューブ挿入術(症例:76歳,男性,左眼)術前後の涙液メニスカス高(左)と高次収差連続測定パターンの変化(右).934あたらしい眼科Vol.30,No.7,2013(52)高次収差(μm)0.40高次収差(μm)0.400.300.300.200.20 (mm)涙液メニスカス高FluctuationIndexFluctuationIndex0.80.0600.7NS0.0500.60.0400.50.40.0300.30.0200.20.0100.10.00.000*:チューブ挿入中(n=141)■:チューブ抜去後(n=141)図10チューブ抜去前後の涙液メニスカス高の比較(左)とFluctuationIndex(右)の比較(*:p<0.05,pairedt-test)他のメカニズムに関しては今のところ不明である.鼻涙管閉塞群と総涙小管閉塞群のすべての症例について,チューブ挿入中とチューブ抜去後の涙液メニスカス高を比較してみた.涙液メニスカス高はチューブ挿入中のほうが低いが,有意な差は得られなかった.しかし,眼高次収差の比較では,FluctuationIndexのみではあるが有意な減少が認められた.これらの変化を図10に示す.もしもチューブが導涙機能を増強しているのであれば,閉塞部の再癒着を防止するためのステントとする従来の捉え方から,導涙機能を増強するためのデバイスとして認識することが必要になってくる.さらには原因不明の流涙症に対する診断的治療として発展する可能性も考えられる.この点は今後の大きな課題である.おわりに白内障手術および屈折矯正手術のみならず多くの眼科手術において,良い術後視力が期待できる時代になってきた.一方で,術後視力には満足しているが,ドライアイも含めた涙液に関わる愁訴を訴える症例が増加してきているようにも感じる.また,薬物療法の領域においてもanti-VEGF(血管内皮増殖因子)の登場により視力の改善を目指した治療が始まってきている.これらにより(53)得られた結果を最大限に生かし,治療に対する満足度を高めるためには涙液量を適正に管理することが必要である.ぜひ涙道領域の情報に興味をもち,日常診療に取り入れていただきたいと願っている.文献1)KohS,MaedaN,KurodaTetal:Effectoftearfilmbreak-uponhigher-orderaberrationsmeasuredwithwavefrontsensor.AmJOphthalmol134:115-117,20022)KohS,MaedaN,HirobaraYetal:Serialmeasurementsofhigher-orderaberrationsafterblinkinginnormalsubjects.InvestOphthalmolVisSci47:3318-3324,20063)KohS,MaedaN,NinomiyaSetal:Paradoxicalincreaseofvisualimpairmentwithpunctualocclusioninapatientwithmilddryeye.JCataractRefractSurg32:689-691,20064)KohS,MaedaN,HirobaraYetal:Serialmeasurementsofhigher-orderaberrationsafterblinkinginpatientswithdryeye.InvestOphthalmolVisSci49:133-138,20085)高静花:涙液と高次収差.あたらしい眼科24:14611466,20076)井上康,下江千恵美:涙道閉塞に対する涙管チューブ挿入術による高次収差の変化.あたらしい眼科27:1709-1713,20107)杉本学:シースを用いた新しい涙道内視鏡下手術.あたらしい眼科24:1219-1222,20078)井上康:テフロン製シースでガイドする新しい涙管チュあたらしい眼科Vol.30,No.7,2013935 ーブ挿入術.あたらしい眼科25:1131-1133,20089)OguzH,YokoiN,KinoshitaS:Theheightandradiusofthetearmeniscusandmethodsforexaminingtheseparameters.Cornea19:497-500,200010)YokoiN,BronAJ,TiffanyJMetal:Relationshipbetweentearvolumeandtearmeniscuscurvature.ArchOphthalmol122:1265-1269,200411)平岡孝浩:点眼薬と高次収差.あたらしい眼科24:14891495,200712)鈴木亨:光干渉断層計を用いた涙小管閉塞症術前後の涙液メニスカス断面積の測定.臨眼65:641-645,2011936あたらしい眼科Vol.30,No.7,2013(54)

光干渉断層計(OST)を用いた涙液メニスカス高(TMH)の評価

2013年7月31日 水曜日

特集●涙道領域―最近の話題あたらしい眼科30(7):923~928,2013特集●涙道領域―最近の話題あたらしい眼科30(7):923~928,2013光干渉断層計(OCT)を用いた涙液メニスカス高(TMH)の評価TearMeniscusHeight(TMH)EvaluationUsingOpticalCoherenceTomography(OCT)inLacrimalSurgery鈴木亨*はじめに眼表面の涙液は,その75~90%が上下の涙液メニスカスに分布するとされる1).上下のメニスカスのうち下方は涙道閉塞で著明に増大する場合があるのに対し,上方は重力によってある程度制限され,下方ほどの大きな変化はみられない.眼表面全体の涙液量を推察する手がかりとしては,下方涙液メニスカスの大きさを調べるのが合理的であろう.もちろん,流涙症状のすべてが眼表面の涙液量の問題だけで説明できるものではない.しかし少なくとも,下方の涙液メニスカスが涙道手術後に変化する現象は手術の涙液排出効果をよく反映すると考えられ,この経過を調べることは手術効率の他覚的評価の一助となりうる2).本稿では,普及型の後眼部用光干渉断層計(OCT)に前眼部アタッチメントを装着し,この下方涙液メニスカスの断面の高さ(tearmeniscusheight:TMH)を調べる簡便な方法と,その臨床応用例について述べる.I撮影の注意点とTMHの測り方1.撮影後眼部用OCTに前眼部用アタッチメントを装着し,涙液メニスカス断面を撮影する.筆者はフーリエドメインOCTRTVue(Optovue社)を使用しているが,各社で専用の前眼部用アタッチメントが用意されている.図1に実際の撮影の様子を示した.一般眼科診療では視力・眼圧検査が最初に行われるこ図1OCTを用いた涙液メニスカス撮影撮影は暗室でなくてもよい.被検者に向かってエアコンの気流が当たらないように配置する.とがルーチンとなっている場合があるが,TMH計測はすべての検査に優先して最初に行われなければならない.他の検査の刺激によるTMH変化を除外する必要がある.また,実際の測定では,患者に自然な瞬目を続けるように指示する.強制開瞼時や瞬目直後の像は本来のメニスカスといえない.検者は角膜の中央を通る切片で撮影できるようにセッティングを行い,画面で瞬目による涙液メニスカスの動きを観察しながらタイミングよく撮影する.患者のなかには,涙を拭いて眼科検査に備える習慣のある者も多数存在する.したがって,眼を拭かないで検査を受けるような指示も重要である.*ToruSuzuki:鈴木眼科クリニック〔別刷請求先〕鈴木亨:〒808-0102北九州市若松区東二島4-7-1鈴木眼科クリニック0910-1810/13/\100/頁/JCOPY(41)923 895μm図2TMHの測り方OCTで撮影できたメニスカス断面の上下いずれかの頂点から垂線を引き,その線の他方の頂点の高さまでの長さを測定する.Optovue社の機種の画面では縦横が反転して像が表示されるため,垂線は横方向となる.OCT検査後,細隙灯顕微鏡下に極小量フルオレセインで染色して眼表面を観察し,OCTで得られたTMHの値が実際に観察できるメニスカス像やその左右差と一致していることを確認する気配りも必要である.結膜弛緩が著明な症例ではTMHが測れないか,測れても値の再現性は低くなる.当院でこの検査を始めた当初は細隙灯顕微鏡所見と一致しない症例が多かったが,検査スタッフが慣れるに従って不一致症例は減少した.患者誘導に関して検者のラーニングカーブがあると考えられる.2.計測OCT画像では涙液メニスカス断面は歪んで写っている可能性があり,三角形の辺の長さを直接計測しても真のTMHとは限らない.眼球の前に想定した垂直面に投影される涙液メニスカス断面の高さをTMHと定義すべきである(図2).Optovue社の機種では,画面上で動かせる任意の2点間距離や面積の計測ソフトが内蔵されているので便利である.II日本人高齢者におけるTMHの分布白内障手術直前の高齢者日本人の226例419眼(平均年齢73歳)について,下方TMHの分布を調べた.検査はOCTで1回だけ行い,測定値の再現性や信頼性は無視してそのまま採用した.結膜弛緩症は対象に含まれているが,手術で問題となるような炎症性眼疾患や重症ドライアイ,涙洗で診断した涙道閉塞などは除外されて924あたらしい眼科Vol.30,No.7,2013TMH(μm)2,000n=4191,8001,6001,4001,2001,0008006004002000図3日本人高齢者のTMH分布p=0.1500,Kolmogorov’sDtest:対数正規分布の適合度を検定するものでp値が小さい場合に対数正規分布からのデータという仮説が棄却される.対象419眼の平均年齢:73.3±7.9歳.男女比:1対1.2.箱ひげ図の中のひし形印が平均値を示す.おり,結果は軽症ドライアイを含む標準的な日本人高齢者集団についてのものと考えてよい.1.全体の分布図3に全体の結果を示した.高齢者集団の生理的TMH分布は対数正規分布であった.正規分布を前提とした平均値は331μmであるが,実際のデータ分布のピークは200μm台前半にあるので,日本人高齢者のTMHは約200μmといってもよい.この平均値と分布ピークのずれを知っておくことは,TMHの解析結果を判断するときに重要である.単純計算によるTMH平均値は実際に多くみられるデータの代表的数値ではなく,それよりも高い値と考えるべきである.合わせて示した箱ひげ図で判断すると,自然なTMH分布範囲は約62~632μmであった.これを超えて高いTMH(外れ値,すなわち統計的に不自然な範囲に分布するデータ)は14個存在したが,そのうち9眼で著明な結膜弛緩症や涙洗時の強い逆流がみられた.これらで説明のつかない外れ値を示したのは5眼で全体の1.2%と少なかった.(42) p<0.0001,ANOVA2,000n=6231,0001,8008001,6001,4001,200TMH(μm)600術前TMH(μm)4001,0002008000600女性男性図4男女別のTMH分布TMH平均値は男性で343.4±140.0μm,女性で286.1±142.5μm.2.男女差図4に男女別の結果を示した.TMHの分布には男女差がみられた(p<0.0001,ANOVA:analysisofvari4002000図5涙道疾患のTMH分布p=0.1323,Kolmogorov’sDtest.治療前のTMH平均値は603±308μm.02004006008001,0001,2001,4001,6001,8002,000n=623単涙小管閉塞近位涙小管閉塞遠位涙小管閉塞涙内癒着鼻涙管閉塞機能性流涙術前TMH(μm)ance).対象にはドライアイ治療中の症例も含まれているが,白内障手術が困難なほどの重症例はない.高齢者のドライアイおよびその疑い有病率は高く,また一般にドライアイが女性に多いことがTMH分布の男女差に影響したと考えられる.III涙道疾患におけるTMHの分布当施設で2010年5月から2013年1月までに治療した連続症例涙道疾患のうち,治療前にTMHが記録されていた471例623眼について,その値の分布を調べた.図6閉塞病型別のTMHそのなかで,治療後の経過良好例でTMH記録のある174例216眼について,治療前後のTMH分布を比較した.治療内容は,軽症例に対する涙石の洗浄除去から重症例に対する涙.鼻腔吻合術まで,涙.摘出以外の全種類の涙道治療を含む.1.治療前TMHの分布図5に治療前の全体の結果を示した.涙道疾患におけるTMHの分布は最大1,870μmまで記録されており,全体では生理的な場合と同様に対数正規分布となった.データ分布のピークは300~600μmの範囲に存在した.2.病型別にみた治療前TMHの分布病型別ごとのTMH分布を図6に示した.全体の比較(43)p=0.3522,ANOVA.閉塞病型は術中所見を考慮に加えて分類した.図中に各群の平均を結んだ線を示した.単涙小管閉塞:上下どちらかの涙小管のみ機能している44例,近位涙小管閉塞:涙点閉鎖を含むGrade3の26例,遠位涙小管閉塞:Grade1と2の252例,涙.内癒着:総涙小管まで異常がなく,かつ術中に涙.内腔の内腔が確認できなかった9例,鼻涙管閉塞:涙点・涙小管に異常がなく,かつ術中に涙.内腔が確認できた264例,機能性流涙:内視鏡検査で涙道内に有意な狭窄がみられなかった31例,その他:涙小管外傷1例と涙小管炎1例.でTMH分布には有意差はみられなかったが,鼻涙管閉塞群と他の群との個別比較においても有意差はみられなかった.上田らはメニスコメータを用いて涙道閉塞におけるメニスカス解析を行い,涙小管閉塞では鼻涙管閉塞よりメニスカスが大きいと報告(涙道閉塞部位の涙液メあたらしい眼科Vol.30,No.7,2013925 p<0.001,pairedt-test涙管チューブ挿入術(NLDI)の術後経過を比較した.2001,000900n=2167006005004003002001000治療前治療後図7治療前後でのTMH平均値変化800TMH(μm)TMH平均値は治療前596±311μm,治療後最終観察時321±139μm.2.患者選択と研究方法先に図5でTMH分布を示した涙道疾患対象群のなかから,涙点・涙小管に異常のない鼻涙管閉塞症を選択し,術後6カ月以上観察できた124眼の経過記録を調べた(ただし早期再発症例は含めた).術式はXDCR24例,EDCR61例,NLDI39例であった.まず術後の通水か通色素検査の記録を調べ,涙道開存性について調べ1.00.80.60.4生存率0.20.0術後観察日数図8術式別の術後涙道開存率:XDCR24例,:EDCR61例,:NLDI39例.XDCR,EDCR,NLDIの3つの術式においてチューブを使用した症例数はそれぞれ3例,28例,39例で,平均留置期間はそれぞれ69日,36日,62日であった(p<0.0001,ANOVA).術後平均観察期間は,それぞれ349日,331日,306日で有意差はなかった.術後開存率には3群間で有意差があった(p<0.0001,log-ranktest).700600*0100200300400500600700800900500TMH(μm)400300ニスカスに及ぼす影響:第62回日本臨床眼科学会抄録集,p.215,2009)しており,今回の結果と異なる.結果の不一致は対象の違いによると考えられる.上田らの対象が涙管チューブ挿入術で対応できた軽症例に限定しているのに対し,今回の対象にはDCRとその類の手術で対応せざるをえなかった重症例が630例中251例含まれている.鼻涙管閉塞では,涙.内の貯留粘液が重症度に応じたさまざまな程度に涙小管に逆流してきている.重症例では,涙小管にも粘液による塞栓があると考えられ,したがって重症例を多数含むとTMH分布には涙小管閉塞と差がみられなくなると考えられる.3.治療前後でのTMH分布比較図7に,涙道治療後に6カ月以上観察して経過良好と判断した216眼の治療前後でのTMH比較を示した.TMH平均値は,術前に596μmであったものが術後最終観察時に321μmとなり有意に減少した(p<0.0001,pairedttest).先に図3で示した日本人高齢者のTMH平均値331μmとほぼ同等の値が得られた.涙道治療が奏効すると,TMHが正常化することが示された.*p=0.0110,ANOVA100IVTMH推移からみた鼻涙管閉塞症治療経過の検討1.目的鼻涙管閉塞症に対する3つの治療法,涙.鼻腔吻合術鼻外法(XDCR),涙.鼻腔吻合術鼻内法(EDCR),鼻926あたらしい眼科Vol.30,No.7,20130術前1W1M3M6M術後観察日数図9術後開存例における術式別TMH平均値の推移:XDCR17例,:EDCR41例,:NLDI13例.TMH平均値の3群間比較では術前から術3カ月後までは差がなかったが,術6カ月後では有意な差があった(p=0.0110,ANOVA).(44) た.つぎに,涙道の開存を確認できた症例について,術前と術後1回目再来時(5~7日目),術1カ月後,術3カ月後,術6カ月後のTMH記録すべてに欠損データのない71眼のTMH平均値推移を調べた.3.結果図8に術後の涙道開存性を示した.結果として,NLDI群で最も開存率が悪かった(p=0.0001,log-ranktest).しかし,図9に示した術後TMHの推移ではNLDIで最も早い改善がみられており,術後6カ月目の3群間比較ではNLDI群のTMHが240μmで有意に低かった(p=0.0110,ANOVA).これは日本人高齢者の生理的TMH平均値331μmより低い.4.結論と考察涙小管に異常のない鼻涙管閉塞症における治療法の比較では,NLDIの術後開存率は不良であった.しかし,開存している症例に限ってみればNLDI後のTMHは,XDCRやEDCRの後と比較して有意に低かった.説明理由には2つ考えられる.一つにはNLDIでは涙.が保存されるため,涙.ポンプ作用のため眼表面の涙液排出力が強い可能性がある.もう一つには,NLDI奏効例ではもともとドライアイの後に鼻涙管閉塞となった症例が多数あった可能性があり,したがって治療後にドライアイの傾向が再現されたのではないかと考えられる.ただし症例選択にはバイアスがある.筆者は,おもにmicrorefluxtest3)陽性の症例にDCRを,陰性の症例にNLDIを適用しているので,DCR群では涙.が拡張している症例が多くNLDI群では涙.の拡張がない症例が多い.おわりに涙液メニスカスに関するパラメータ解析はMainstoneによって始められた4).Mainstoneは涙液メニスカスの断面写真を撮って,その奥行(TMW)や面積(XSA),高さ(TMH),前方面の曲率(TMC)を計測してドライアイの診断に役立てようとした.その結果,ドライアイの診断指標としてTMCが最も優れることが示され,横井のメニスコメトリー5)へと道を開いた.メニスコメトリーは信頼性が高く,ドライアイのみならず流涙症状の解析においても優れる可能性がある.しかし検査機器が一般販売されていないので,特定の施設以外では検査の実施が困難である.一方,Mainstone以降は涙液メニスカスのパラメータ解析にOCTが導入されるようになり,普及型の眼科一般検査機器でTMHを計測できる方法へと道を開いた.筆者は,当初はXSAを指標としてメニスカス解析を試みたが,サンプル集団のXSA値の偏りが不自然で解析が複雑になることや,XSA値から直感的に涙液メニスカスの様子を想像できないことなど,日常の臨床では困難があった2).その点TMH値は,本編で示したようにデータ群が綺麗な対数正規分布に従うので取り扱いが容易なこと,細隙灯顕微鏡で観察できるメニスカスの様子を直感的に表現してわかりやすいことなどの利点がある.また何より,眼科スタッフなら誰でも検査ができ,視力検査のように医師は結果をみるだけでよいという大きな利便性がある.この方法の欠点としては,瞬目の影響や結膜の弛緩状態など測定誤差要因が多く,測定精度に関する検証も行われていないことがあげられる.しかしこの方法で,健常眼や涙道疾患を伴う眼のTMH分布の知見が得られた.また,涙道手術後のTMH経過からこれまで知られていなかった術式の特性も明らかにすることができた.結果の妥当性から,日常臨床での眼表面涙液量の解析には,この方法で十分と考えられる.今後はこの方法でさまざまな涙道治療効果の客観的評価が行われ,さらにはその結果から術式選択に際して参考となる新しい知見が得られることが期待される.流涙症には,眼表面涙液量が増加して涙が眼瞼縁を超えて零れ落ちる症状以外にも,さまざまな感覚異常が含まれている.涙液量は増加していなくても,涙液自体の質的な問題(眼脂による涙液の粘稠性)や,結膜.が涙液以外のものに占拠される不快感,あるいはマイボーム腺の異常に起因する眼瞼縁の不快な感覚なども含んでいるとみられる.したがって,TMH計測だけから流涙症を診断することはできない.あくまでも,眼表面涙液量が涙道の異常や治療介入で変化する様子を捉えるだけである.OCTで調べたTMHがドライアイ並みに低いからといって,流涙症を否定するようなことがないように配慮したい.(45)あたらしい眼科Vol.30,No.7,2013927 文献1)ShenM,LiJ,WanJetal:Upperandlowertearmenisciinthediagnosisofdryeye.InvestOphthalmolVisSci50:2722-2726,20092)鈴木亨:光干渉断層計を用いた涙小管閉塞症術前後の涙液メニスカス断面積の測定.臨眼65:641-645,20113)CamaraJG,SantiagoMDD,AtebaraNH:Themicrorefluxtest:Anewtesttoevaluatenasolacrimalductobstruction.Ophthalmology106:2319-2321,19994)MainstonJC,BruceAS,GoldingTR:Tearmeniscusmeasurementinthediagnosisofdryeye.CurrEyeRes15:653-661,19965)YokoiN,BronAJ,TiffanyJMatal:Reflactivemeniscometry:anon-invasivemethodtomeasuretearmeniscuscurvature.BrJOphthalmol83:92-99,1999928あたらしい眼科Vol.30,No.7,2013(46)

抗がん剤S-1による涙道閉塞・狭窄

2013年7月31日 水曜日

特集●涙道領域―最近の話題あたらしい眼科30(7):915.921,2013特集●涙道領域―最近の話題あたらしい眼科30(7):915.921,2013抗がん剤S-1による涙道閉塞・狭窄LacrimalDrainageObstructionandStenosisAssociatedwithAnti-CancerDrugS-1柏木広哉*はじめにがん患者の増加や化学療法の進歩により,抗がん剤使用数は増加している.それに伴い眼部副作用(眼障害)も増加傾向にある.しかしながら,処方医,眼科医,患者のこの副作用の認知度は高くない.そのために重症化して,日常生活に支障をきたすことがある.経口抗がん剤のティーエスワン(TS-1R,以下S-1と略す)による涙道閉塞や狭窄は流涙症を生じさせ,眼科医のなかでは数年前から問題視されていた.しかしながら有効な予防法がないこと,製薬会社の注意勧告が2013年まで出されなかったことにより,重症化して後遺症に悩んでいる患者も多い.また,がんセンターでのS-1処方数は,一般病院と比べて大量にあるにもかかわらず,眼科常勤医がいる施設がきわめて少ない(4施設)問題もある.当院では3年9カ月(2008年4月.2011年12月)で,この副作用を149例293側(S-1投与前に他の抗がん剤使用症例を除外した113例223側)経験した(表1).この経験をもとにして,この副作用について述べる.なお,TS-1Rは商品名であるため,今後S-1と統一されるほうが望ましいと考える.IS-1とは一般名はテガフール・ギメラシル・オテラシルカリウムで,製造発売元は大鵬薬品工業.経口抗がん剤(3種類の合剤)であり,以下の作用機序をもつ.テガフール:5-フルオロウラシル(5-FU)のプロドラッグで,DNAの生合成を阻害.さらに5-FUの代謝物もRNA機能を阻害する.ギメラシル:5-FUの血中濃度維持を保つ.オテラシルカリウム:5-FUの消化器への毒性を軽減する.1999年に認可され,胃がん術後の補助療法,進行胃がん,膵臓がん,胆.がん,胆管がん,肺がん(非小細胞がん),大腸がん,乳がんや頭頸部がんなどに幅広く使用されている.なお,2012年の年間処方数はメーカー推定13万件である.早期胃がん術後補助療法ではS-1単独療法が多く,胃がん進行例ではS-1+シスプラチン点滴療法がメインである.その他のがんではS-1投与以前に他の抗がん剤(GEM:ゲムシタビンなど)を使用している症例が多い(35例,約23%).S-1の規格は100mg,120mgであり,錠剤,細粒と両方ある(図1).1日2回投与で1日総量は80.120mgが一表1当院眼科3年9カ月間における,S-1使用による涙道閉塞や狭窄の疾患別症例数(S-1投与前に他の抗がん剤使用35例を含む)疾患胃がん膵臓がん肺がん胆.・胆管がん膵臓がん大腸がん食道がん原発不明がん合計(例)閉塞狭窄数(側)計98251642211149293*HiroyaKashiwagi:静岡県立静岡がんセンター眼科〔別刷請求先〕柏木広哉:〒411-0934静岡県駿東郡長泉町下長窪1007静岡県立静岡がんセンター眼科0910-1810/13/\100/頁/JCOPY(33)915 図1S-1内服薬25mgと20mgがあり,細粒(左),錠剤(右)がある.般的である(副作用が強いときには50mgに減量することもある).内服方法は,4週投与(投)-2週休薬(休),3投-1休,2投-2休などである.胃がん術後補助療法では,10カ月から12カ月間内服することが一般的であるが,進行がんでは2.3年服用することがある,なお,S-1使用のおもな国は,日本,中国,韓国,デンマーク,ドイツなどである.II涙道通過障害による流涙症流涙症は軽視されやすいが,視力のQOL(qualityoflife)を低下させ日常生活のレベルの低下を起こす.また,抗がん剤治療のストレスも加わり,精神的苦痛を伴う.以前よりタキサン系(パクリタキセル1),ドセタキセル2))や5-FU3)などの抗がん剤による涙道閉塞の報告がある.S-1に関しては,2005年Esmaeliら4)が初めて報告して以来,わが国でも報告例5.11)が続いている.発症頻度は,内科の立場よりKoizumiら12)が,S-1単独療法で16%,S-1+シスプラチン点滴併用で18%,流涙症が生じると報告している.眼科からは,発症頻度は,9.8%8),10.8%9),18.0%13),発症時期は,投与後4.5±3.8カ月9)や3カ月11)と報告されている.症例数の違いや胃がん補助療法に絞った報告13)など母集団の条件が同じではなく,今後の検討が必要と考える.また,シスプラチン併用で,発症時期が早くなるとの報告がある9).S-1によるこの涙道障害は,ドセタキセルと同様な機序(血漿から涙液中に薬剤が移行し,涙道壁に直接接し内腔上皮の肥厚と間質の線維化をきたす14))と,考えられている.しかし,血行性の影響や涙腺や結膜,涙液の性状との関係も考慮すべきである.5-FU点滴やゼローダR(同じ5-FU系経口抗がん剤)と比べ,S-1による副作用が圧倒的に多いのは,5-FUの血中濃度の半減期が長いことが原因なのではないかと考えられている.よって涙液中や血清中の5-FUの濃度測定が必要と考えられるが,手技やコストの問題でなかなか施行できない.1.診断と治療当院では,化学療法中の患者に眼症状がでた場合,速やかに眼科医の受診依頼をするシステムが確立されている.眼科諸検査の他にSchirmer試験,涙液メニスカス高の測定に,外来ベッド上での涙管通水検査(図2)を行う.4%点眼キシロカインR麻酔の後,二段針(その他の涙道洗浄針でも構わない)を付けた2.5mlのシリンジを用いて,生理食塩水を涙点から注入する.涙点や涙道の通過状態で障害の状態を判断する.必要があれば,ブジーによる涙小管閉塞部位の確認も行う.涙点(図3),涙小管の障害が約60%との報告があり9),当院でも同様な傾向がある.さらにS-1に曝露された涙液をwashoutする目的で防腐剤非添加の人工涙液を1日6回点眼するように指導している.この点眼薬は薬価の関係で院内処方できない.さらに処方医受診時(1.3週ごと)に通水検査を行う.通水処置の間に病状が進行する症例もあるが,それでS-1を中止することは皆無である.916あたらしい眼科Vol.30,No.7,2013(34) 2.50%以上を占める進行例には早急に涙管チューブ挿入術(表2)軽症例はS-1服用終了で流涙症は改善するが,進行図2通水検査涙管通水検査の実際(外来顕微鏡を用いて施行)(a).午前外来開始前に外来看護師がその日必要な症例数を準備している(b).涙道洗浄針は二段針を使用している.それ以外の涙道洗浄針でも構わない(c).例(閉塞や強い狭窄が考えられる症例)は症状に改善は望めず,早急な涙管チューブ挿入術が必要とされる.ただし,盲目的なブジーや涙管チューブ挿入は,仮道形成を起こす場合があり,慎むべきである.基本は,涙道内視鏡,鼻内視鏡を併用した涙管チューブ挿入術である.麻酔は,皮下浸潤麻酔,涙道内麻酔,滑車下神経麻酔,眼窩下神経麻酔,などを用いる.閉塞部(図4)の開放は,内視鏡的直接穿破法(directendoscopicprobing:DEP)15)を基本に,シース誘導内視鏡下穿破法(sheathguidedendoscopicprobing:SEP)16)を施行している.涙管チューブはNS-チューブR,ラクリファーストR(シリコーン製:カネカメディクス)(図5),PFカテーテルR11cm,5cm(ポリウレタン製:東レ)を用いている.PFカテーテルRの5cmタイプは,涙.上部の閉塞が開放できない場合,涙小管だけは保護する目的で挿入している.しかし,抜けやすい傾向がある.上下一方の涙小管しか開放できない場合は,Eagle涙道チューブR(シリコーン製,Eagle社)17)を挿入している.このチューブにはプラグが装着してあり,涙点部で固定できるよ図3右下涙点の線維化による閉塞(左)とその拡大図(右)表2S-1単独およびS-1+シスプラチン点滴療法のみに絞った113例の内訳(軽症例と進行例)疾患軽症進行合計胃がん405595膵臓がん8311肺がん213胆.・胆管がん011肝臓がん000大腸がん101食道がん011原発不明がん011合計(例)5162113閉塞狭窄数(側)102121223(35)あたらしい眼科Vol.30,No.7,2013917 図4涙道内視鏡で観察できた総涙小管閉塞うな構造になっている(図6).しかし,チューブ本体は柔らかく,蛇腹状態になる欠点があり,もう少し強度があると理想的である.上記3種類のチューブはS-1終了3カ月後に抜去している(S-1終了後3カ月後に角膜障害が生じた事例があったためである).3.治療成績(S-1単独療法,S-1+シスプラチン療法に絞って)涙管チューブの留置完了率は,坂井らの報告では93.1%9),当院では75.6%(84/111側:S-1単独療法,S-1+シスプラチン療法のみ),体調不良で処置不可能が5例10側あった.非完了症例は,高度な涙小管閉塞をきたしたものが多かった.涙小管閉塞に関しては,矢部・鈴木分類改訂版18)があるが,そのGrade3(涙点から5.6mm以下の部位より遠位側が閉塞)では,全例図5涙管チューブヌンチャク型シリコーンチューブ(ラクリファーストR)全長11cm(a).右眼に装用された状態(b).このチューブはNSチューブと異なり,先端からの突き抜け防止のためのストッパーが装着されている(c).涙管チューブ挿入は不可能であった.進行した涙小管閉塞には,涙小管形成手術(canaliculoplasty:CP),結膜涙.鼻腔吻合術(conjunctiva-dacryocystorhinostomy:C-DCR)が必要となるが,このGrade3に対してのCPの適応は限定的である19).チューブ抜去後の再閉塞は8側あり,涙管チューブの再挿入を試みたが挿入不可能な症例もあった.当院での最終的な流涙症の評価は,S-1先端プラグホルダー図6Eagle涙管チューブ左上涙点から挿入されたEagle型涙管チューブ(左).Eagle涙管チューブの構造図(右).918あたらしい眼科Vol.30,No.7,2013(36) 終了3.5カ月後(ごく一部の長期服用者は2012年12月の段階で評価)とし,流涙症改善(50%以上流涙が減少)率は74.4%(166/223側)であった.4.その他の副作用(角膜上皮障害,眼瞼色素沈着,鼻汁)角膜上皮障害5,7,9,11,20),眼瞼色素沈着,鼻汁などの副作用もあるが,この角膜障害による視力低下は,失明の恐怖感を生じさせることが多い.角膜上皮障害(クラック状,点状表層角膜炎型,シート状型)は,涙液に移行した5-FUの長期曝露が原因ではないかと考えられ,流涙症患者の25.30%に生じている9,11).当院では投薬開始から1.3カ月で生じ,点眼加療では改善しなかった.よって服薬中止を処方医に指示し,2.3カ月服用を中止することで全例改善した.ヒアルロン酸の点眼は,その粘稠性の高さから5-FU含有の涙液の長期駐留を起こして,角膜上皮障害を増悪させるので,使用しないことも重要である.5.対策と留意点処方医は流涙症状が出た場合,早急に眼科に紹介させることを徹底させる.初期検査後,必要があれば涙道外来を行っている施設および医師に紹介する(涙道外来を行っている施設および医師は,日本涙道・涙液学会ホームページ(URL/http://www.lacrimal-tear.jp/)に掲載されている.防腐剤非添加の人工涙液の使用説明では,これで涙が減少して症状が改善するわけではないこと,なぜドライアイ用点眼を使うのかを十分説明しておくことが重要である.さらに,水道水で眼を洗う患者も多い傾向があるので,水道水は滅菌水ではないことを十分認識させる.また,副作用冊子は,処方医,患者,眼科医の眼部副作用の認識を上昇させる意味で重要である.現図7当院で製作した抗がん剤眼副作用冊子第3版(16ページで構成)(37)あたらしい眼科Vol.30,No.7,2013919 図8当院電子カルテの抗がん剤と涙道関係のテンプレート在,当院作成の眼部副作用の冊子改訂3版(図7)や涙道・涙液学会,角膜学会監修の冊子がある.6.その他近年電子カルテ診療が普及しつつあり,当院でも抗がん剤関係のテンプレートを作製した(図8).また,処方医のカルテを検索するときに,がん専門の略語が多く苦労するため,重要な略語の意味や日本語訳を知っておくと便利である(表3).2009年米国NationalCancerInstitute(NCI)のCancerTherapyEvaluationProgram(CTEP)が公表したCommonTerminologyCriteriaforAdverseEvents(CTAG:有害事象共通用語規準)に関して,JapanClinicalOncologyGroup/日本臨床腫瘍研究グループ)による日本語訳がある.そのなかには,涙目のグレード分類が1.3まであり,1:治療を要さない,2:治療を要する,3:外科的治療を要すると分類されている.眼科医の立場から考えると,グレード1には違和感がある.IIIまとめ筆者はこの1年間で日本眼科手術学会,日本涙道・涙液学会,日本癌治療学会,日本緩和医療学会,日本がん看護学会,「がんの社会学」に関する合同班会議,患者家族集中勉強会などで講演してきたが,この副作用の認920あたらしい眼科Vol.30,No.7,2013表3抗がん治療関連略語とその日本語訳略語フルネーム日本語訳などAdjAdjuvanttherapy補助療法CDDPcis-Diaminedichloroplatinumシスプラチン(薬剤名)CPT-11Camptothecin11イリノテカン(薬剤名)CTCAECommonTerminologyCriteriaforAdverseEvents有害事象共通用語規準GEMGemcitabineゲムシタビン(薬剤名)ジェムザール(商品名)NACNeoadjuvantchemotherapy術前化学療法PDProgressivedisease進行PRParticalresponse部分寛解SDStabledisease不変CRCompleteresponse完全寛解著効知度は十分ではないと考える.また,当院のように緩和医療が充実した施設の場合,終末期まで通水処置を行うことも多い.さらに,早期胃がん術後補助療法における使用例での生存率は高いだけに,後遺症に悩みながら生活している患者も多い.それだけ患者にとって,この副作用の苦痛が大きく治療への願望も強いことを,十分認識しておくことが必要である.今後さらなる情報伝達,予防法の確立などが求められる.文献1)McCartneyE,ValluriS,RushingDetal:Upperandlowersystemnasolacrimalductstenosissecondarytopaclitaxel.OphthalPlastReconstrSurg23:170-171,20072)加藤秀紀,尾本聡,久保寛之ほか:ドセタキセルによって涙道閉塞をきたした3例.臨眼58:1463-1466,20043)AgarwalMR,EsmaeliB,BurnstineMA:Squamousmetaplasiaofthecanaliculiassociatedwith5-fluorouracil:aclinicopathologiccasereport.Ophthalmology109:23592361,20024)EsmaeliB,GolioD,LubeckiLetal:Canalicularandnasolacrimalductblockage:anocularsideeffectassociatedwiththeanti-neoplasticdrugS-1.AmJOphthalmol140:325-327,20055)栗原勇大,平岡孝浩,坂田典繁ほか:経口抗癌薬S-1内服に伴う角膜表面と涙液の評価.眼臨紀1:701-705,20086)塩田圭子,田邊和子,木村理ほか:経口抗癌薬TS-1投与後に発症した高度涙小管閉塞症の治療成績.臨眼63:1499-1502,2009(38) 7)細谷友雅:抗癌剤による角膜および涙道の障害.眼科54:27-32,20128)SasakiT,MiyashitaH,MiyanagaTetal:Dacryoendoscopicobservationandincidenceofcanalicularobstruction/stenosisassociatedwithS-1,anoralanticancerdrug.JpnJOphthalmol56:214-218,20129)坂井譲,井上康,柏木広哉ほか:TS-1による涙道障害の多施設研究.臨眼66:271-274,201210)井上康:TS-1による涙道閉塞.眼科手術25:391-394,201211)柏木広哉:外来化学療法における副作用対策(6)眼障害.コンセンサス癌治療11:224-226,201212)KoizumiW,NaraharaH,HaraTetal:S-1pluscisplatinversusS-1aloneforfirst-linetreatmentofadvancedgastriccancer(SPIRITStrial):aphaseIIItrial.LancetOncol9:215-221,200813)KimN,ParkC,ParkDJetal:LacrimaldrainageobstructioningastriccancerpatientsreceivingS-1chemotherapy.AnnOncol23:2065-2071,201214)EsmaeliB,BurnstineMA,AhmadiMAetal:Docetaxelinducedhistologicchangesinthelacrimalsacandthenasalmucosa.OphthalPlastReconstrSurg19:305-308,200315)鈴木亨:内視鏡を用いた涙道手術(涙道内視鏡手術).眼科手術16:485-491,200316)杉本学:シースを用いた新しい涙道内視鏡下手術.あたらしい眼科24:1219-1222,200717)五嶋麻理,杉原紀子,松原正男:Eagle涙道チューブ使用例の検討.臨眼65:949-952,201118)加藤愛,矢部比呂夫::涙.鼻腔吻合術における閉塞部位別の術後成績.眼科手術21:265-268,200819)鈴木亨:涙小管閉塞症の顕微鏡下手術における術式選択.眼科手術24:231-236,201120)ChikamaT,TakahashiN,WakutaMetal:NoninvasivedirectdetectionofocularmucositisbyinvivoconfocalmicroscopyinpatientstreatedwithS-1.MolVis15:2896-2904,2009(39)あたらしい眼科Vol.30,No.7,2013921

涙道内視鏡

2013年7月31日 水曜日

特集●涙道領域―最近の話題あたらしい眼科30(7):909.913,2013特集●涙道領域―最近の話題あたらしい眼科30(7):909.913,2013涙道内視鏡LacrimalEndoscope杉本学*はじめに涙道内視鏡・鼻内視鏡を用いた涙管チューブ挿入術がはじまって,10年が経過した.本来の涙道内腔を開放して確実にチューブを留置できれば涙管チューブ挿入術の治療成績が向上することが期待された.まず,鈴木により,閉塞部を観察し,閉塞部を内視鏡の先端で穿破する内視鏡直接穿破法(directendoscopicprobing:DEP)1)が報告された.涙道内を観察して穿破する画期的な方法であるが,穿破時の穿破状況は観察不能であった.そのため,本来の涙道内腔を開放できているかどうか不明であった.観察下での開放をめざしてシース誘導内視鏡下穿破法(sheath-guidedendoscopicprobing:SEP)2)が開発され,穿破時の観察も可能になった.また,閉塞部を開放後のチューブ挿入も,開放部に確実に一対のチューブを留置できるシース誘導チューブ挿入術(sheath-guidedintubation:SGI)3)が開発され盲目的な操作はほぼなくなった.これら涙道内視鏡・鼻内視鏡を用いた涙管チューブ挿入術については,本誌Vol.29(7),2012の特集「眼科小手術PearlsandPitfalls」に詳しく述べたので,こちらを参照4)のこと.手術方法の変更はないが,今まで,シース誘導プロービング(sheathguidedprobing:SHIP)とよんでいた手技を,シース誘導非内視鏡下プロービング(sheath-guidednon-endoscopicprobing:SNEP)とよぶことになった.SHIPという名称では,SEPとの違いがわかりにくく,SNEPのほうが手技をよく表現できているので,改称することになった.さて,SEPによる開放でも,本来の涙道内腔を開放できているかどうかの道しるべは,いまだ確立されていない.道しるべの確立のためには,眼科手術が顕微鏡および周辺機器の改良により進歩してきたように,まず観察系の改良が必須である.本特集では,ファイバーテック社製涙道内視鏡が改良され,涙道内視鏡像が少し鮮明になって手術がしやすくなったことを述べる.また,今まで認可を受けた涙道内視鏡はファイバーテック社製のみであったが,町田製作所製も使用できるようになった.同一症例を観察した映像を比較してみた.涙道内視鏡・鼻内視鏡を用いた涙管チューブ挿入術のチューブ抜去後2,000日の成績は,涙小管閉塞症では90%を超えるものの,鼻涙管閉塞単独症では70%であり5),涙道内視鏡を使用しない涙管チューブ挿入術より成績は向上したが満足できるものではない.ただ,通水不良例は涙.鼻腔吻合術(dacryocystorhinostomy:DCR)しか残されていないのだろうか.チューブ抜去後,再狭窄・再閉塞を起こしてきたがDCRを希望しない,あるいは適応困難な症例に,筆者が行ってきたDCR以外の対処方法について提案する.I涙道内視鏡の改良ファイバーテック社製涙道内視鏡は,今まで観察系のファイバー数が6,000本であったが,10,000本に増加した製品が発売された.ファイバー数が大幅に増えたも*ManabuSugimoto:すぎもと眼科医院〔別刷請求先〕杉本学:〒719-1134総社市真壁158-5すぎもと眼科医院0910-1810/13/\100/頁/JCOPY(27)909 10,000画素6,000画素10,000画素6,000画素10,000画素6,000画素図1ファイバーテック社製:新製品と従来品の比較映像10,000画素6,000画素図2ファイバーテック社製:新製品と従来品のクラッドの比較赤丸内を比較するとクラッドの違いがわかりやすい.のの,涙道内視鏡プローブの外径は0.9mmのままで,涙道内視鏡の操作性は従来品と変わりなかった.新製品と従来品の映像を比較したものが図1である.第一の違いは,中央部分の映像が少し鮮明になったことである.これにはファイバー数が増えたことと,ファイバー1本1本の径が微妙に違うため,クラッドとよばれるファイバー1本1本の輪郭が目立ちにくくなったことが寄与している(図2).第二の違いは,観察視野が少し広がったことである.これは,涙道内をより広角に観察できるため,見落としを少なくできる利点がある.図3に同一症例の涙小管ポリープを新製品と従来品で観察比較したものを示す.DVDから静止画を落としているため少しわかりづらいが,新製品のほうが少し鮮明に観察される.特に,ポリープのネック部分を比較するとわかっていただけると思う.動画では両者の違いがよ910あたらしい眼科Vol.30,No.7,2013図3ファイバーテック社製:新製品と従来品の涙小管ポリープの比較映像りよくわかる.また,従来品は焦点深度が5mm設定の1種類であったが,新製品は焦点深度が3mm,5mm,15mmの3種類から選択できる.図4にチャート位置を内視鏡先端から2mmに設定して,3種類の焦点深度の内視鏡映像を示す.設計どおりに焦点深度3mmの映像が一番観やすい.筆者は,SEPでは,シースを涙道内視鏡先端より1.2mm伸ばした状態で穿破していくため,2.3mm前方が詳しく観察されることが重要であると考えている.焦点深度3mmの涙道内視鏡を用いた,鼻涙管閉塞症に対するSEPの実際映像を図5に示す.閉塞部のくぼみ(ディンプル)を同定し(図5a),ディンプルめがけてSEPすると一番表面の粘膜が破れる(図5b).そのままSEPを進めると,本来の内腔であったところと思われる,疎な粘膜下組織部分となり(中央の3カ所暗い部分)(図5c),お迎えの穴が見つかる(図5d).お迎えの穴に向かって進んでいく(図5e.g)と,大きな内腔に達する(図5h).従来の涙道内視鏡では,ここまで穿破の様子が詳しく観察できなかったため,お迎えの穴・裂孔形成に気づくことが遅れがちであった.ファイバー数10,000本・焦点深度3mmの涙道内視鏡を使用するようになって有利になった点をあげると,第一に,SEP中に裂孔形成すると,急に血管が見え映像が変わったことに早く気づく.出血を最小限に抑えることができて,リカバリーしやすくなった.第二に,SEPでの本来の内腔と考えられる部位の開放に自信がもてるようになったため,滑車下神経ブロック麻酔を併用し,患者の痛みを軽減することに積極的になった.今(28) 3mm5mm15mm図4ファイバーテック社製新製品:3種類の焦点深度の比較映像sssssss図5ファイバーテック社製新製品(焦点深度3mm)による鼻涙管閉塞に対するSEPa:ディンプルの同定,b:表層の粘膜が穿破されるところ,c:疎な粘膜下組織部分,d:お迎えの穴の発見,e.g:お迎えの穴に向かって進めていく,h:大きな内腔.S:シース,黒矢印:ディンプル,黄矢印:お迎えの穴,緑矢印:お迎えの穴が拡がっていくところ.まで,筆者は,本来の内腔かどうかの指標の一つとし塞では,SEP・SNEPで穿破できているのかどうかわかて,患者の痛みを利用してきた.そのため滑車下神経ブらないことがあったが,比較的薄い硬い膜が残っているロック麻酔はなるべく行わず,涙道内麻酔で開放を行っ場合,膜を透して涙.鼻側粘膜血管が見える感じがわかてきたが,今後は,患者の疼痛と術者の負担の軽減できり,穿破の判断ができるようになった.る,滑車下神経ブロック麻酔を併用することを推奨すつぎに,ファイバーテック社製(ファイバー数10,000)る.第三に,従来品では,涙.の小さい硬い総涙小管閉と,町田製作所製(ファイバー数6,000)で同一症例の(29)あたらしい眼科Vol.30,No.7,2013911 下涙小管,涙.粘膜を観察した映像を示す(図6).鮮明さはファイバーテック社製がよく,町田製作所製はクラッドがはっきりわかり,色調も少し緑がかった感じであった.町田製作所製の内視鏡プローブの外径は0.9mmでファイバーテック社製と変わりなく,操作性に違いは感じられなかった.町田製作所製の内視鏡プローブの根元は,ファイバーテック社製のように太くなっていないため,涙道シースストッパー(はんだや)が固定されずファイバーテック社製10,000町田製作所製6,000下涙小管下涙小管涙.粘膜涙.粘膜図6ファイバーテック社製品と町田製作所製品の比較映像回旋してしまう.町田製作所仕様のものを作製する必要がある.II鼻涙管の再狭窄・再閉塞の対処法鼻涙管閉塞症に対して涙道内視鏡・鼻内視鏡を併用した涙管チューブ挿入術を行って,通水不良になった症例でDCRを勧めても,希望される方は筆者の施設では少ない.そこで2006年6月.2013年1月に鼻涙管閉塞症(涙小管閉塞症,総涙小管閉塞症の合併例は除く)に対し,SEP・SNEPおよびSGIを行い,チューブ抜去後2カ月以上経過観察できた,143例174側を,レトロスペクティブに解析してみた.24例25側が通水不良例(15%)であった.25側のうち,5側に2度目のSEPおよびSGIを行っていた.2度目の留置チューブ抜去後の通水不良例は今のところ見られなかった.残りの20側に関しては,涙道内視鏡下でシースを使って,再狭窄部を削って拡張するscraping(図7)で通水を回復していた.Scrapingは3.6カ月に一度施行することで,通水を維持することができていた.鈴木は,このように鼻涙管閉塞症に対するチューブ留置術後の再狭窄・再閉塞に対してscrapingで通水維持することを,Javateが実施しているassistedpatency6)の日本版と提唱している.涙道内視鏡が全国に普及し,涙道内視鏡術者が増えれば,鼻涙管閉塞症に対する涙管チューブ挿入術後の再狭窄・再閉塞の対応として,DCRの希望がない,もしくは適応困難な症例に対して,2度目の涙管チューブ挿入s図7Scrapinga:scraping前,b:scraping中,c:scraping後.S:シース.赤矢印:削り取られている部分.912あたらしい眼科Vol.30,No.7,2013(30) 術を行うか,scrapingでフォローすることも選択肢になると考えている.おわりにファイバーテック社製涙道内視鏡が改良されて少し鮮明に観察できるようになったが,多くの眼科医はこの映像ではまだ満足できないのではないだろうか.認可を受けた涙道内視鏡が2社使用可能になったことにより,今後の涙道内視鏡の改良がよりスピーディーに進んでいくことが期待される.病変および手術過程を鮮明に観察することができれば,新しい知見が得られるようになるので,病態の解明や手術方法の改善につながっていく.涙道内視鏡を併用した診療は,まだまだ進歩していく可能性が大きい.涙道内視鏡併用涙管チューブ挿入術が普及し,再狭窄・再閉塞症例もscrapingでフォローできれば,DCRを施行する症例が減少することが予想される.しかし,骨性鼻涙管が閉塞している症例など,DCRでないと治療できない症例は必ずある.今後はDCRができる術者の教育と普及も重要になってくる.文献1)鈴木亨:内視鏡を用いた涙道手術(涙道内視鏡手術).眼科手術16:485-491,20032)杉本学:シースを用いた新しい涙道内視鏡下手術.あたらしい眼科24:1219-1222,20073)井上康:テフロン製シースでガイドする新しい涙管チューブ挿入術.あたらしい眼科25:1131-1133,20084)杉本学:涙管チューブ挿入術.あたらしい眼科29:933940,20125)杉本学,井上康:鼻涙管閉塞症に対する涙道内視鏡下チューブ挿入術の長期成績.あたらしい眼科27:12911294,20106)JavateRM,PamintuanFG,CruzRTJr:Efficacyofendoscopiclacrimalductrecanalizationusingmicroendoscope.OphthalPlastReconstrSurg26:330-333,2010(31)あたらしい眼科Vol.30,No.7,2013913

先天鼻涙管閉塞

2013年7月31日 水曜日

特集●涙道領域―最近の話題あたらしい眼科30(7):903.907,2013特集●涙道領域―最近の話題あたらしい眼科30(7):903.907,2013先天鼻涙管閉塞CongenitalNasolacrimalObstruction廣瀬美央*はじめに先天鼻涙管閉塞は眼脂・流涙を生じる病態のなかで最多の疾患である.日常の臨床において頻繁に遭遇する疾患だけに,その治療時期・方法については十分な理解が必要である.I病態生理涙道は胎生期に顔面の発生とともに形成され,鼻涙管尾側は出生頃に下鼻道外側壁に開口するが,これが生後も開口されず閉塞したままのものを先天鼻涙管閉塞という.出生児の数%から20%に認められ,生後1年までに約90.95%の症例で自然治癒が見込まれる1)ので,いわば発生過程の途中にある状態と考えてもよい.顔面の形成は胎生5週頃から始まり,同時に鼻涙管から涙.も形成される.このため,胎生初期での発生異常では顔面の形成異常に付随し骨性の閉塞を伴うことがあり,成長後に涙.鼻腔吻合術などの涙道再建を要することになる.症状は生後まもなくからの眼脂・流涙で,涙.部圧迫や涙管通水検査による貯留物の逆流,色素残留試験陽性(図1)などから診断は容易である.慢性炎症で経過することが多く経過観察のみでよいが,急性涙.炎を生じることがあるので,家人に涙.部の腫脹や発赤が生じないか観察を喚起する必要がある.図1色素残留試験フルオレセイン試験紙を結膜.に接触させ,5分後の色素残留を観察する(この症例では左側の色素残留が著明である).年長児など通水検査が困難なときに簡便である.II治療方針初期治療としては,観察や涙.マッサージのみを基本とし,流涙・眼脂は家人に拭き取ってもらうだけとする.近年,眼科領域でのメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)やペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)の検出が増加傾向であり小児においても例外ではない2.5).眼脂が出ていると家人が心配し抗菌薬の点眼を希望されることが多いが,抗菌薬の点眼は眼脂が著明であるときに短期間(数日間)使用し,常用させないことが耐性菌を生じさせないために重要であることを丁寧に説明し,適正*MiouHirose:兵庫県立尼崎病院眼科〔別刷請求先〕廣瀬美央:〒660-0828尼崎市東大物町1丁目1-1兵庫県立尼崎病院眼科0910-1810/13/\100/頁/JCOPY(21)903 な使用を促すことも眼科医に求められる対応であると考える.家人が涙.マッサージをする際は力加減や圧迫する部位を間違わないように施行者に直接指導をする.先天鼻涙管閉塞で自然治癒されない場合や急性炎症を生じる場合はプロービングにより閉塞の解除を行う.プロービングなどの外科的治療を行う時期は議論の余地があるが,治療に伴う合併症を鑑みて,急性炎症が生じなければ生後6カ月まではプロービングせず観察することが望ましい.生後1歳までは局所麻酔下でよいが,1歳を過ぎてからは全身麻酔下でのプロービングを行う.菌血症を伴う急性涙.炎に対しプロービングを行う場合は,抗菌薬の全身投与を行わないと成功率が低いとの報告もあり,抗菌薬の静脈内投与など事前の対処が必要である6).III治療方法局所麻酔下でのプロービングでは患児の固定が重要となる.体幹をバスタオルやタオルケットなどで包み込むが,腕が術野に出てこないようにして巻き込むとよい.介助者は患児の顎から側頭部を拇指と手掌でしっかり固定する(図2).点眼麻酔後,必要に応じて涙点拡張針で涙点を拡張する.涙点部の操作は下涙点が簡単であるが,プロービング自体は上涙点からのほうが施行しやすい.涙小管水平部を長軸方向に(耳側に)引き延ばすようにすることで正しく涙小管が拡張される.方向を間違えば涙小管損傷によりその後のプロービングが困難になるとともに,医原性涙小管閉塞をきたすことがあるので注意が必要である.図2患児頭部の固定法介助者は患児の顎を拇指で支え,側頭部を手掌で包み込むようにしっかり固定する.図3プローブの動き左上:涙小管垂直部に挿入.上涙点の場合は上眼瞼を翻転すると入れやすい.右上:涙小管を長軸方向に引き伸ばすように眼瞼を外側に引いた状態で涙.まで進める.左下:骨性の感触があれば涙.内に挿入されているためゆっくりとプローブを立てる.右下:鼻翼外側(鼻孔の外側)に向け涙.から鼻涙管へ滑らせるように進める.904あたらしい眼科Vol.30,No.7,2013(22) 図4プローブの方向(正面)鼻涙管内でプローブの先端は鼻翼外側に向いている.プロービングにはバンガーター(Bangerter)針などの先端が鈍になった涙洗針または金属プローブ(いわゆるブジー)を使用する.弱弯曲のプローブを用いる施設もあるが,涙道内でのオリエンテーションがつかなくなると不用意な操作で粘膜を損傷することになるため,初心者は特に直針を用いたほうがよい.バンガーター針などであればプロービング後の通水確認が器具の出し入れをせずにそのままできるので簡便である.涙点拡張針と同様に涙小管を長軸方向に引き伸ばすように眼瞼を外側に引いた状態で涙.まで進める.骨性の感触があれば涙.内に挿入されているのでゆっくりとプローブを立てて鼻翼外側(鼻孔の外側)に向け涙.から鼻涙管へ滑らせるように進めていく(図3).先天鼻涙管閉塞は鼻涙管開口部での閉塞がほとんどであるので,鼻涙管内はプローブを抵抗なく進められる.鼻涙管内にあるプローブの方向は通常プローブの先端が鼻翼外側に向き,プローブの根元は眉毛部に当たるくらいの水平であることが多い(図4,5).十分な深さまで到達しないうちに抵抗がある場合は鼻涙管の走行が耳側や背側に変位している可能性があるので,少し引き戻して角度を変えて挿入してみる.閉塞部まで到達すれば軽く押し込むようにプローブを進めて穿破する.通水が確認されない場合は後日再度プロービングを試みてもよいが,その際にも治癒できない場合は複数回繰り返さずに,生後1歳を過ぎてから全身麻酔下で涙道内視鏡検査を施行するのが望ましい.涙道内視鏡検査では,閉塞部を涙道内から確認することが図5プローブの方向(側面)プローブの根元が眉毛部に当たるくらい,顔面に水平に寝かせた状態となる.でき,内視鏡で直接または内視鏡に被せたシースを利用して閉塞部の穿破をすることが可能であり,盲目的治療が困難な症例では大変有効なツールである.(涙道内視鏡の金属部は一般的なプローブや涙洗針より柔らかく,局所麻酔下で行う場合に患児の急な動きで破損する可能性があるので注意が必要である.)IV合併症急性涙.炎・蜂窩織炎先天鼻涙管閉塞でもときに急性化し急性涙.炎や,蜂窩織炎が生じることがある.乳幼児の涙.炎の代表的起因菌には,インフルエンザ菌,肺炎球菌,黄色ブドウ球菌,表皮ブドウ球菌があげられる.治療開始前に涙.貯留物の培養・感受性試験を施行しておくのが望ましいが,治療に間に合わない場合は広域抗菌スペクトラムの抗菌薬で経験的薬物治療(empirictherapy)が行われる.その場合も起因菌の同定がされれば狭域抗菌スペクトラムの抗菌薬に変更して継続する治療(de-escalation)を行う.V鑑別疾患乳幼児に眼脂・流涙をきたす疾患として鑑別すべき疾患をあげる.(23)あたらしい眼科Vol.30,No.7,2013905 1.先天涙.ヘルニア先天涙.ヘルニアは鼻涙管開口部の閉塞と内総涙点の機能的閉塞により涙.と下鼻道の閉塞部鼻粘膜がそれぞれ拡張したもので,拡張した涙.部は皮膚を透過して暗青色の腫瘤に見える(図6).その色調から血管腫と間違われることがあるが,副鼻腔のX線CT(コンピュータ断層撮影)検査により涙.から下鼻道につながる拡張した涙道が認められることで診断できる(図7,8).急性炎症により自然治癒することもある7)が,新生児は鼻呼吸をしているため,下鼻道に拡張した鼻涙管粘膜が鼻道を閉塞し呼吸困難を生じる場合,または急性炎症により蜂窩織炎が懸念される場合は可及的速やかに下鼻道の鼻粘膜を開放する.膿を含んだ多量の貯留物の誤嚥を避ける意味で全身麻酔下での治療が望ましい.図6先天涙.ヘルニア左側先天涙.ヘルニアの症例.内眼角部にやや暗青色の腫瘤が認められ(←部),左眼は耳上側に圧排・偏位している.図8先天涙.ヘルニアのCT(冠状断)拡張した開口部粘膜を伴う腫瘤で左側下鼻道が占拠されている(↑部).下鼻甲介が鼻上側に圧排・偏位している.図7先天涙.ヘルニアのCT(水平断)涙.から鼻涙管,下鼻道に連続する占拠性病変を認める(↑部).906あたらしい眼科Vol.30,No.7,2013(24) 図9先天涙.皮膚瘻成人例.左側内眼角下方に涙.からの瘻管が開口している.フルオレセインで染色した生理食塩水で涙.洗浄を行うと瘻管から漏出するのが確認できる(↑部).2.先天涙.皮膚瘻涙.から皮膚に瘻管が形成されているもので,発症率は比較的高く1%程度ともいわれる8).内眼角部下方に臍状にくぼみが見られる.鼻涙管閉塞を合併していなければ自覚症状はないことが多いので,治療を必要としない.鼻涙管閉塞を合併する症例では瘻管から涙.貯留物が漏出する(図9).漏出点の焼灼や瘻管の結紮のみでは再開通することが多いので,根治治療としては瘻管を摘出する.3.涙点閉鎖流涙を主訴とする.先天涙点閉鎖では膜状の閉塞であることが多く閉塞部を穿孔することで完治するが,涙乳頭を伴わない場合は意図的涙小管断裂を作製し造袋術が必要となる.結膜炎などの炎症後に発症した後天涙点閉鎖では涙小管を含め広範な閉塞が認められることがある.4.結膜炎生後数日から2週間以内に発症する結膜炎では出生時の産道感染が考えられ,クラミジア感染症や淋菌感染症の可能性がある.妊婦健診を受けている産婦であれば出産前に診断・治療されていることが多いが,妊婦健診を受けていない場合は注意が必要である.若年者の性感染症が増加傾向であることから新生児の結膜炎では念頭に置くべきであり,特に淋菌感染は急速に進行し角膜穿孔など重症化するので見逃してはならない.5.先天緑内障出生10,000例に対し1例の発症率で,流涙や羞明を主訴とし角膜径の拡大を認める.手術を要する病態である.文献1)YoungJD,MacEwenCJ:Managingcongenitallacrimalobstructioningeneralpractice.BMJ315:293-296,19972)大石正夫,宮尾益也,阿部達也:ペニシリン耐性肺炎球菌による眼科感染症の検討.あたらしい眼科17:451-454,20003)今泉利雄,松野大作,神光輝ほか:ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)による涙.炎の3症例.あたらしい眼科17:87-91,20004)児玉俊夫,宇野俊彦,山西茂喜ほか:乳幼児および成人に発症した涙.炎の検出菌の比較.臨眼64:1269-1275,20105)後藤美和子,菅原美香:先天鼻涙管閉塞による涙.炎の起炎菌と薬剤感受性.眼臨紀1:365-367,20086)BaskinDE,ReddyAK,ChuYIetal:Thetimingofantibioticadministrationinthemanagementofinfantdacryocystitis.JAAPOS12:456-459,20087)松本直,権田恭広,杤久保哲男ほか:急性涙.炎により自然寛解した涙.ヘルニア.臨眼65:1501-1504,20118)飯田文人:先天性外涙.瘻の小学校健診における発現率.臨眼59:1299-1301,2005(25)あたらしい眼科Vol.30,No.7,2013907

涙嚢鼻腔吻合術:鼻内法

2013年7月31日 水曜日

特集●涙道領域―最近の話題あたらしい眼科30(7):897.901,2013特集●涙道領域―最近の話題あたらしい眼科30(7):897.901,2013涙.鼻腔吻合術:鼻内法Dacryocystorhinostomy:EndonasalDCR宮崎千歌*はじめに涙.鼻腔吻合術(dacryocystorhinostomy:DCR)は鼻涙管閉塞の手術治療としての基本的な術式である.DCRは涙道と鼻腔との交通を新たに作製する方法である.鼻涙管と鼻腔の間には薄い骨があり,バイパスを作製するため,ドリル,ノミなどで切除する.骨を切除するには,皮膚を切開して鼻外から骨を切除する鼻外法と,鼻内視鏡下に鼻腔内から骨を切除する鼻内法がある.眼科医にとってなじみの少ない鼻腔との吻合を形成する術式であるため,敬遠されがちではあったが,術式の改良とともに,DCRは馴染みやすいスマートな手術となってきている.19世紀末にKillian1)Caldwell2)らによってEn(endonasal)-DCRが行われ,(,)20世紀末にMcDonoghら3)によって鼻内視鏡を用いた近代的な鼻内法が行われるようになった.一方,鼻外法は20世紀はじめにToti4)によって行われ,1921年にはDupuy-Dutemps5)によって改良され,現在の鼻外法になっている.しばらくDCRは鼻外法が主流であったが,2000年代に入ると内視鏡の導入,ドリル6,7),ケリソンロンジャー8),レーザー9)などの手術器具の登場により鼻内法の手術方法が改良され,術後成績も改善している.中鼻道の涙道周囲の上顎骨,涙骨,症例によっては鈎状突起,篩骨を切除するには,道具はどれを使っても良いわけである.鼻内法では,鼻外法に比べて顔面に傷を作らず,骨切除量が少ない.鼻出血の管理が可能であれば,日帰りでの手術も可能である.鼻腔内での操作は鼻内視鏡と器具を双手で持つため,鼻腔内操作に慣れることが大切である.鼻内法は内視鏡観察により鼻腔内で手術を施行するが,モニターの画面は二次元画像である.平面の画像を自分のなかで三次元の構築をしながらの手術操作が必要であり,鼻腔からみて涙道の位置を把握することが大切である.そのためには,涙道周囲の解剖学的知識の理解が必須である.鼻外法,鼻内法にかかわらず,鼻涙管閉塞に対するDCRの治癒率は高い.抗生物質点眼,内服を継続することによって,眼分泌物からの多剤耐性菌検出率が高くなり,起炎菌となる場合には治療に難渋する場合もあるため,漫然と保存的治療を続けないことが大切である.I必要な解剖鼻内視鏡で鼻腔を観察すると,中鼻道には,中鼻甲介,中鼻道外壁,下鼻甲介,鼻中隔が観察できる(図1).涙道は中鼻甲介の付着部から下方,上顎骨のふくらみをもった鼻粘膜のライン上(maxillaryline)に存在し,maxillaryline上に涙道内視鏡の透過光が観察される.涙道周辺の骨は,顔面正面では鼻骨(nasalbone),上顎骨(maxilla)が存在する(図2).鼻腔内では中鼻甲介(middlenasalconcha),下鼻甲介(inferiornasalconcha),鼻中隔(nasalseptum)が観察される(図3).眼窩右側方から涙道周辺を観察すると,前方から鼻骨,*ChikaMiyazaki:兵庫県立塚口病院眼科〔別刷請求先〕宮崎千歌:〒661-0012尼崎市南塚口町6丁目8-17兵庫県立塚口病院眼科0910-1810/13/\100/頁/JCOPY(15)897 上顎骨,前頭骨(frontalbone),涙骨(lacrimalbone)篩骨(ethmoidbone),頬骨(zygomaticbone)から構(,)成されている.涙道前方の上顎骨のふくらみを上顎骨前涙.稜(anteriorlacrimalcrest),涙道後方の涙骨のふくらみを涙骨後涙.稜(posteriorlacrimalcrest)といい,涙道鼻中隔側は,涙骨上顎骨縫合である(図4).骨性涙道は,上顎骨前頭突起(frontalprocess),涙骨,下鼻甲介から構成されている.上顎骨前頭突起は涙.溝(lacrimalgroove),涙.結節(lacrimaltubercle)を,涙骨は涙.溝,涙骨鈎(lacrimalhamulus),下行突起(descendingprocess)を,下鼻甲介は涙骨突起(lacrimalprocess)をそれぞれ有する.骨性鼻涙管の薄い骨(上顎骨前頭突起と涙骨)の部分にDCRの骨窓を作製する.涙骨上顎骨縫合(maxillarylineとよばれ手術の際の目印となる)より後方の涙骨は大変薄い.涙骨から後方に中鼻甲介涙道内視鏡の透過光鼻中隔下鼻甲介図1鼻内視鏡で鼻腔を観察(右)は鈎状突起(uncinateprocessofethmoidbone),半月裂孔(similunarhiatus),篩骨胞(ethmoidbulla)がある(図5).涙骨も含め大変薄い骨になっている.篩骨の耳側には眼窩が位置し,その境界は篩骨眼窩板(orbitalplateofethmoidbone)や紙様板(図6)とよばれ副鼻腔の内視鏡手術の際に,注意すべき部位ではある.紙様板の耳側は眼窩であり,眼球周辺脂肪組織,内直筋,眼球が存在する.DCRの手技で篩骨眼窩板(orbitalplateofethmoidbone)まで手術操作が及んではいけないが,内視鏡観察下の手術は二次元での手術であり,自分が思ったより背側に器具が入ってしまうこともあるため,器械が背側に行きすぎないように注意する必要がある.鼻中隔中鼻甲介下鼻甲介上顎骨鼻骨図2涙道周辺の骨上顎骨前頭突起中鼻甲介篩骨蜂巣涙骨涙骨上顎骨縫合図3涙道周辺の骨(鼻腔から右眼窩方向)鼻骨前頭骨頬骨篩骨涙骨後涙.稜上顎骨前涙.稜涙骨上顎骨縫合上顎骨涙骨図4涙道周辺の骨(眼窩右側方から涙道周辺を観察)898あたらしい眼科Vol.30,No.7,2013(16) 鈎状突起篩骨胞半月裂孔下鼻甲介中鼻甲介外す涙道図5鼻腔(右側)―中鼻甲介を切離鈎状突起篩骨胞半月裂孔下鼻甲介中鼻甲介外す涙道図5鼻腔(右側)―中鼻甲介を切離II手術適応鼻涙管閉塞は,涙道内視鏡で観察すると,灌流下に涙.は大きく腫脹し,閉塞部位は穿破できないか,穿破できたとしてもピンホール様で小さい.涙点閉塞,涙小管閉塞に鼻涙管閉塞を伴っている症例に対しては,涙道再建術の一部として本術式が必要である.III手術器具ジャクソン(Jackson)スプレー,鼻用タンポンガーゼ,カテラン針,硬性鼻内視鏡(外径4mm,仰角0°または30°,鼻腔が狭い場合は外径2.7mm),涙道内視鏡,光源ファイバー(硝子体手術用など),ドリル,またはノミ,調骨器,鼻鏡,鼻用鑷子,白内障手術用スリットナイフ,涙道洗浄針,涙点拡張針,彫骨器,鉗子,凝固器,吸引管,ステント,手術顕微鏡.(下記「手術方法」ではドリルで記載する.)IV手術方法1.麻酔①局所麻酔での手術が可能であるが,無痛での手術はむずかしい.静脈確保をし,ドルミカムR1mg,ソセゴンR3mgを術直前に初回投与.ドルミカムR0.5mg,ソセゴンR1.5mgを以後5分おきに追加投与し,骨窓(17)涙道図6篩骨紙様板篩骨蜂巣を除くと眼窩内からの透過光が見えるほど薄い.形成終了時まで継続する.腎機能低下者,透析患者,高齢者(70歳以上)にはドルミカムRを半量とする.②中鼻道に2%キシロカインRとボスミン液Rを1対1で混合した液を鼻腔に噴霧する.同液に浸したタンポンガーゼを,吻合孔を作製する予定の中鼻甲介付着部周辺から前方に5枚挿入する.数分待ち鼻粘膜を収縮麻酔する.③2%キシロカインRで前篩骨神経ブロック麻酔,滑車下神経ブロック麻酔をし,2%キシロカインRを涙道内に注入し涙道内を麻酔する.2.手術方法①涙道内視鏡を涙点から挿入し涙道閉塞部位を確認する.場合によっては涙小管にシースを留置しておき,光ファイバーが挿入しやすいようにする.②硝子体用光ファイバーを涙点から挿入し,総涙小管の高さに固定する.③鼻内視鏡にて中鼻道に見える透過光を確認し骨窓作製部位の目安とする.④鼻内視鏡は左手に持ち,鼻孔の腹側に当て固定しておく.器具は右手に持ち,鼻内視鏡の下から出し入れをする.鼻粘膜に器具が触れると,出血,腫脹するため,手術と関係のない粘膜に極力触れず,器具の出し入れの回数は少なくし,余分な出血を避ける.術中視野を広く保つために術前処置の工夫や手術時間を短縮する.あたらしい眼科Vol.30,No.7,2013899 上顎骨耳側鼻中隔上顎骨耳側鼻中隔上顎骨耳側鼻中隔図7右鼻腔骨窓を作製する部位の鼻粘膜に麻酔する.★:中鼻甲介,■:鈎状突起.涙道上顎骨耳側鼻中隔図9上顎骨から涙骨にかけての骨をカーブダイアモンドDCRバーで削り骨窓を作製上顎骨が削れたところには涙道が見えてくる.★:中鼻甲介.⑤涙道は上顎骨のカーブに沿って存在する.中鼻甲介の付け根から上顎骨のカーブに沿って切除する予定の鼻粘膜を2%キシロカインRでカテラン針にて麻酔する.鼻粘膜と上顎骨の間に2%キシロカインRを注入しておくと,鼻粘膜を骨から.離しやすい(図7).⑥透過光を目安に鼻粘膜をドリルシステム(メドトロニック社)のトライカットブレードで切除する.フットペダルにより回転数は変動させることが可能である(図8).⑦骨壁が露出したら,先端をバーに変更し,涙道内視鏡または涙道内に挿入された光を目安に,涙道に沿う感じで骨を削って骨窓を作製する(図9).使用時は900あたらしい眼科Vol.30,No.7,2013図8骨窓作製部位の鼻粘膜をトライカットブレードで切除★:中鼻甲介.上顎骨耳側鼻中隔図10涙道周囲に鈎状突起がある場合は切除★:中鼻甲介,■:鈎状突起.6,000.10,000rpmに設定し,フットペダルにより回転数は変動させることが可能である.涙点から挿入している光源をほぼ水平とし,その位置が上顎骨を削る上端とする.下端は可能であれば,下鼻甲介の付け根まで削る.背側は涙骨を除去する.涙道の展開がむずかしい場合には鈎状突起を場合によっては除去する(図10).ドリル,ノミ,調骨器を使用し,涙道周辺の骨をできるだけ残さないように除去する.⑧露出した涙.および鼻涙管を穿刀(スリットナイフなど)で切開する(図11).余分な涙道壁をトライカットブレードや鉗子を使用して処理し,涙道内腔を露出する.それだけでも十分であるが,上端および下端で水平(18) ★鼻中隔耳側涙道鼻中隔耳側涙道★上顎骨ステント鼻中隔耳側図11涙.および鼻涙管を切開黄点線:涙道.★★:中鼻甲介.方向に切開を加え,観音開きとしてもよい.涙.内腔に涙石などが残存していないか確認し,涙石が存在するときには,鼻腔から鑷子,鉗子を用いて排出する.⑨上下涙点からステントを挿入する(図12).⑩抵抗なく通水できることを確認し手術を終える.3.術中術後の出血への対応手術中の出血に対しては,出血部にボスミン液Rに浸したタンポンガーゼを当て,5分程度待つ.それでも止血できないときには,凝固器を使用する.術後の出血に対しては,挿入したタンポンガーゼを抜き,再度鼻腔内を観察し,出血点を見きわめ,上記と同様の処置をし,ベスキチンや軟膏を塗布したタンポンガーゼを創部周辺に挿入圧迫する.4.術後処置ベスキチン,ガーゼ類の鼻腔パッキングは2日後に抜去する.ステントは鼻粘膜が再生していれば,1カ月半程度で抜去する.図12涙点からステントを挿入し,鼻腔側から鑷子でステントを引き,位置を調整★:中鼻甲介.文献1)KillianJ:DiskussionzuSeifertsVortrag.6.Versamml,Suddeutsch,Laryngologen,18892)CaldwellGW:Twonewoperationsforobstructionsofthenasalductwithpreservationofcanaliculi,andanincidentaldescriptionofanewlacrimalprobe.NYMedJ57:581,18933)McDonoghM,MeiringJH:Endoscopictransnazsaldacryocystorhinostomy.JLaryngolOtol103:585-587,19894)TotiA:Nuovometodoconservatoredicuraradicaledellesoppurazionicronichedelsaccolacrimale(dacriocistorinostomia).ClinModerna10:385-387,19045)Dupuy-DutempsL,BourguetJ:Procedeplastiquededacryocystorhinostomyetsesresultats.AnnOcul158:241-261,19216)TsirbasA,WormaldPJ:Mechanicalendonasaldacryocystorhinostomywithmucosalflaps.BrJOphthalmol87:43-47,20037)松山浩子,宮崎千歌:涙.鼻腔吻合術鼻内法の手術成績.眼科手術24:495-498,20118)CodereF,DentonP,CoronaJ:Endonasaldacryocystorhinostomy:Amodifiedtechniquewithpreservationofthenasalandlacrimalmucosa.OphthalPlastReconstrSurg26:161-164,20109)ChristenburyJD,CharlotteNC:Transcanalicularlaserdacryocystorhinostomy.ArchOphthalmol110:170-171,1992(19)あたらしい眼科Vol.30,No.7,2013901

涙嚢鼻腔吻合術:鼻外法

2013年7月31日 水曜日

特集●涙道領域―最近の話題あたらしい眼科30(7):891~896,2013特集●涙道領域―最近の話題あたらしい眼科30(7):891~896,2013涙.鼻腔吻合術:鼻外法Dacryocystorhinostomy:ExternalDCR上笹貫太郎*嘉鳥信忠*はじめに涙道閉塞には先天性,後天性を含めさまざまな原因があるが,特に多いのは原発性後天性鼻涙管閉塞である.原因は明らかではないが,涙道内に加齢などによる涙液の停滞や感染,炎症が慢性的に生じ,涙道粘膜上皮の病的変化から閉塞につながると推測されている1).このような病態で,涙管チューブ挿入術などの術式では改善に至らない症例に対し,涙.鼻腔吻合術(dacryocystorhinostomy:DCR)が用いられる.DCRには,大きく分けて鼻外法(externalDCR)と鼻内法(endonasalDCR)がある.鼻外法は皮膚切開によるアプローチのため,術野が直視下で確保しやすく,骨窓の作製および粘膜の切開を大きく行うことができる.そのため,鼻内法の成功率が63~90%であるのに比較し,鼻外法は85~95%と高い確率で改善している2,3).近年,術式の進歩により鼻内法の成功率は上昇し,皮膚切開創が残らないことから鼻内法が広く用いられるようになってきたが,鼻腔内の形状などによっては鼻内法の適応外となる症例もあり,鼻外法は現在も必要とされる術式である.本稿では,当科において行われている鼻外法の術式について解説する.I適応涙道通水検査で上下涙小管の交通が確認できたうえで,鼻涙管の穿破が不可能な強固な閉塞が疑われる症例が適応となる.また,涙.炎を合併した流涙を認める症例や,鼻腔が狭く鼻内法が困難である症例なども適応となる.術前にはX線computedtomography(CT)検査を行い,涙道内腫瘍や涙道を圧排するような涙道周囲病変,骨性鼻涙管閉塞などの有無を確認することが望ましい.これらが発見された場合は,DCR以外の治療法を選択する場合がある.さらに鼻腔内における篩骨蜂巣の張り出しの程度も確認し,骨窓を作製する位置を検討できる利点もある.II手術器具おもな手術器具を図1に示す.鼻外法に特徴的な器具としては,骨窓形成のための骨膜.離子(図1-⑭)やソノペット(図1-⑯)などがある.ソノペット以外に骨ノミおよびハンマー,彫骨器,電動ドリルなどを用いる施設もある.ソノペットは超音波の振動によって1方向にのみ作用するため,ドリル使用時に懸念される周囲組織の巻き込みの心配がなく,軟部組織の損傷が少ない.III涙道内視鏡検査まずは涙道内視鏡で涙道内を確認する.涙道チューブでは改善が困難な涙.または鼻涙管の狭窄や閉塞を認めた場合,DCRを選択する.IV切開線のデザイン・局所麻酔当科では全身麻酔下で手術を行うが,局所麻酔下で行*TaroKamisasanuki&NobutadaKatori:聖隷浜松病院眼形成眼窩外科〔別刷請求先〕上笹貫太郎:〒430-0906浜松市中区住吉2-12-12聖隷浜松病院眼形成眼窩外科0910-1810/13/\100/頁/JCOPY(9)891 ①②③④⑤⑥⑦⑧⑨⑨⑩⑪①②③④⑤⑥⑦⑧⑨⑨⑩⑪⑫⑬⑭⑮⑯⑯⑯ソノペット先端側面ソノペット先端正面図1鼻外法に用いるおもな手術器具.①:ピオクタニンエタノール液と竹串,②:定規,③:硝子棒,④:持針器,⑤:スプリング剪刀,⑥:有鈎鑷子,⑦:形成剪刀,⑧:メス(15c番および11番)⑨:釣り針鈎+ペアン,⑩:バイポーラ,⑪:モスキート,⑫:形成用弯曲ハサミ(鈍),⑬:雑用剪刀,⑭:骨膜.離子,⑮:涙道チューブ(PFカテーテルR),⑯:ソノペット(超音波手術器).う施設も多い.局所麻酔で行う場合は,エピネフリン含有キシロカインRやカルボカインRを用いて滑車下神経麻酔を併施する.本稿では全身麻酔下での手技について説明する.前準備として,骨窓を作製する予定の鼻堤付近に5,000倍希釈ボスミンRガーゼを挿入し,鼻粘膜の出血を予防する.つぎに皮膚切開線のデザインを行う.内眼角の形状や触診からmedialcanthaltendon(MCT)と骨性鼻涙管移行部を確認する.そして,MCT付着部の上方から涙.骨移行部外側まで皮膚割線に沿って弓状に切開線をデザインする.そのラインは約20mmとなる(図2).さらにエピネフリン含有キシロカインR局所麻酔を,切開予定線上に行う.V皮膚切開デザインに沿って皮膚を切開する.切開は皮膚に対して垂直に行う.皮膚から眼輪筋までの切開は少しずつ進める.眼輪筋層に達したら,形成剪刀などを用いてMCT上から眼輪筋を左右に分けるようにすると,上顎骨前頭突起上の骨膜まできれいに展開できる.892あたらしい眼科Vol.30,No.7,2013涙.MCT皮膚切開線Surgeon’sview図2右鼻外法手術症例(70歳,女性)の皮膚切開上縁がMCT上縁の高さになるように皮膚切開線をデザインする(約20mm).VI骨膜切開骨窓作製予定部位の骨膜切開を行う.骨膜切開線は,MCTの下端から無名血管溝に沿って長軸方向に約10mmの長さの線を描き,骨膜が展開しやすいように両端に切り込みを入れてI字型にデザインする(図3).骨膜切開前に骨膜上の血管を凝固止血しておくと切開時の出血をある程度防止できる.骨膜をきれいに展開するには1回で骨膜全層を切開する必要があるが,骨上でのメスの操作は刃が流れやすいため,皮膚を傷つけないように注意する.つぎに骨膜.離子などで骨膜を.離していく.鼻側は無名血管溝から1~2mm内側まで,眼窩内は後涙.稜まで十分に骨膜を.離し,涙.をしっかりと.離する(図4).骨を貫通する血管からの出血はこの段階で十分に止血しておく.VII骨窓の作製骨窓の作製は,鼻外法の成功率を左右する最も重要な手技である.まず骨の削る部位をマーキングする.長軸方向は血管溝部に沿って4)MCT下縁まで,上下の短軸方向のラインは体に対して水平に描くようにする.つぎにソノペットや骨ノミ,電動ドリルなどを用いてマーキングした範囲の骨を削っていく(図5).当科では,粘膜の損傷が少ないことや,骨を削る際の効率性からソノ(10) 骨膜切開線骨膜切開線無名血管溝図3骨膜切開上縁がMCT下縁になるようにできるだけ大きく骨膜切開線をデザインする.ペットを採用している.最初に浅部から削ると術野が広がり深部の操作がしやすくなる.深部は後涙.稜まで,鼻側へは上顎骨前頭突起の裏までを削っておく.鼻粘膜に付着した骨片は粘膜を傷つけないように鑷子などで除去する.骨窓の角が残っていると眼鏡を使用した際に痛みを感じることがあるので,骨窓の表面,特に角の部分はなるべく滑らかにしておく.ソノペットを使用する際には,吸引管で術野を確保しながら行うが,吸引管の先を傷つけないようにネラトンチューブを装着しておくとよい.また,ソノペットは熱をもち,皮膚熱傷の原因となる.作業は迅速に行い,作業中は皮膚などに接触しないように注意する.VIIIフラップの作製(2フラップ法)吻合孔作製についてはさまざまな術式が報告されている5,6)が,ここでは2フラップ法を解説する.吻合孔は涙.側フラップ(後弁)と鼻粘膜側フラップ(前弁)で作製するが,涙.の大きさには個人差があったり,涙.内の癒着によって大きなフラップが作製できなかったりするため,前弁の位置や大きさを変えなければならなくなることがある.そこで,まずは後弁から作製する.内総涙点から最短の部位での吻合孔作製が理想的であることから,上涙点から金属ブジーを挿入して涙.を張らせ,11番メスで長軸方向に切開する(図6).続いてスプリ(11)図4骨膜の.離骨窓作製予定部位の骨膜を.離し,さらに涙.を涙.窩内まで十分に.離する.骨窓作製範囲図5骨窓作製骨窓作製範囲をデザインし(約10mm),ソノペットなどで削る.ング剪刀などで短軸方向へ切開を加える.いずれもブジー先端が切開部から出ているのを確認しながら涙.全層を一刀で切開する.最終的にフラップはコの字型になる.後弁が完成したら鼻粘膜側に開いて,前弁の位置,大きさを決める.今度は,鼻粘膜の奥側を長軸方向に11番メスで切開し,さらに両端を上顎骨前頭突起側へ切り開く(図7).前弁が開くと,鼻内にボスミンRガーゼが見える.もしガーゼが確認できなかったら篩骨蜂巣へ侵入している可能性がある.その場合は,確実に鼻腔内に到達するように骨窓を拡大するか,篩骨蜂巣をさらあたらしい眼科Vol.30,No.7,2013893 ブジーで盛り上がった涙.壁ブジーで盛り上がった涙.壁涙.側フラップ鼻粘膜図6後弁の作製金属ブジーで涙.壁を盛り上げた状態で涙.側フラップ(後弁)を作製する.鼻粘膜図7前弁の作製涙.側フラップ(後弁)の大きさに合わせて鼻粘膜を切開し,鼻粘膜側フラップ(前弁)を作製する.に開放する.鼻粘膜内に到達したら,枚数を確認してボスミンRガーゼを抜いておく.IX吻合孔の作製最初に涙.側フラップ(後弁)の縫合を行う.後弁を後涙.稜に被せるように開き,鼻腔粘膜へ7-0ポリプロピレン糸などで数カ所縫合する(図8).後弁を縫合したのち,外鼻孔から鼻腔内へシリコーンスポンジを挿入して骨窓から引き出す.シリコーンスポンジを固定するためにスポンジとMCTを縫合する.シリコーンスポン894あたらしい眼科Vol.30,No.7,2013図8後弁の縫合涙.側フラップ(後弁)と鼻粘膜を縫合する.MCTシリコーンスポンジ鼻粘膜側フラップ図9シリコーンスポンジの固定涙.側フラップ(後弁)を鼻粘膜と縫合した後,鼻腔よりシリコーンスポンジを挿入し,MCTに縫合固定する.必要に応じて涙道チューブも挿入し,鼻腔内へ通す.ジは留置するが,鼻腔より抜去しやすいようにシリコーンスポンジは角を少しすくう程度,MCTは全層をしっかり通糸するようにしておく(図9).さらに涙小管狭窄や閉塞などを合併しているときは,涙管チューブを上下涙点から挿入し,骨窓から鼻腔内へ留置する.シリコーンスポンジを縫合したら,シリコーンスポンジを骨窓側へ押し付けるように外鼻孔よりゲンタシンR軟膏付きガーゼを2~3枚つめてパッキングする.これでシリコーンスポンジの固定と術後の鼻出血を防止することができる.最後に鼻粘膜フラップ(前弁)と涙.を数カ所縫合(12) 鼻粘膜側フラップ涙.鼻粘膜側フラップ涙.図10前弁の縫合鼻腔より挿入したガーゼをシリコーンスポンジの周辺に留置し,鼻粘膜側フラップ(前弁)を涙.壁と縫合する.する(図10).粘膜はもろく切れやすいので,きつく締めすぎないようにする.X閉創吻合孔が完成したら,6-0ポリプロピレン糸などで骨膜縫合および必要に応じて眼輪筋縫合,皮下縫合を行う.最後に皮膚を7-0ポリプロピレン糸などで縫合する.死腔予防と血腫による瘢痕形成予防のために術創に沿って固く丸めたガーゼを当て,さらに上から圧迫眼帯をしておく.外鼻孔にはガーゼを当てるか,綿球を詰めて手術を終了する.XI術後管理外鼻孔の綿球はすぐに汚れるため,毎日交換する.圧迫眼帯は翌日には解除し,抗生物質点眼およびステロイド点眼を開始する.術創部の死腔予防のガーゼは翌々日まで残しておく.術後3~4日目に鼻ガーゼを抜去するが,鼻出血を認めたときは綿球を詰めておく.術後5~6日目に抜糸し退院となる.外来では点眼の継続とともに定期的に涙.洗浄を行い,術後約1カ月で鼻腔よりシリコーンスポンジを抜去する.涙管チューブを挿入した場合はさらに術後1カ月半から2カ月で涙管チューブを抜去する.図11鼻外法の術後経過鼻外法術後1年(代表症例の左側).シリコーンスポンジの大きさで吻合孔(矢印)が形成されている.XII術後経過術後1~2週間で吻合孔はほぼ完成するとされ,長期にわたりその形態を維持するとされている7).留置材料の表面に沿った術後の上皮化によって吻合孔は形成されるため,吻合孔の大きさは留置材料の種類と留置の仕方によって異なる.最も大きなものはガーゼを使用した場合で,骨窓とほぼ同じ大きさを維持できる.シリコーンスポンジや涙管チューブを使用した場合はその大きさの吻合孔となるが,当科で使用しているシリコーンスポンジでも長期経過での再発率は低い(図11).吻合孔への留置が不十分であれば,吻合孔は収縮し,炎症や肉芽形成によって再閉塞する可能性がある.XIII合併症の管理鼻外法は比較的安全な手術であるが,血流の豊富な涙.粘膜や鼻粘膜への操作が不可欠であるので,出血の管理が重要である.術中の出血は手術時間に影響し,術後の出血は癒着による再閉塞を誘発する.特に局所麻酔下で出血の処理に手間取ると患者を不安にさせる.鼻外法において出血しやすいポイントは,皮膚から骨膜に至るまでの切開によるもの,骨膜.離によるもの,涙.粘膜や鼻粘膜切開によるもの,術後の吻合孔からの(13)あたらしい眼科Vol.30,No.7,2013895 出血,局所麻酔下ではさらに骨窓作製時の疼痛,血圧上昇によるものが含まれる.対策としては,まず術前の抗血栓剤内服の一時休止,滑車下神経麻酔,鼻粘膜浸潤麻酔があげられる.全身麻酔下でも局所麻酔と鼻処置は必要である.当科では,皮膚切開部への局所麻酔と鼻腔内へのボスミンRガーゼ挿入を行っている.術中は,皮膚切開を内眼角動静脈が傷つかないように少しずつ進め,こまめに止血する.骨膜.離時には骨を貫通する血管を見つけ次第,ちぎらずに凝固止血して切離する.ちぎれてしまうと血管の断端が骨内に潜りこみ,凝固できなくなる場合がある.その場合は骨蝋を詰めて止血する.骨窓作製時は骨または傷ついた鼻粘膜から出血しやすい.骨からの出血は凝固や骨蝋で止血する.鼻粘膜からの出血は骨窓作製時に傷つけないように注意すべきであるが,ソノペットを使用すると骨からの出血を止血しつつ軟部組織の損傷を防止できる.鼻粘膜切開時の出血は術前の鼻処理が適切ならすぐに止血するが,誤って中鼻甲介を傷つけると止血が困難である.鼻粘膜切開時にメスを深く入れないこと,または高周波メスなどの使用で出血を予防できる.術後は吻合孔周囲の止血の確認と,抗生物質軟膏付きガーゼの留置,さらに帰室後のヘッドアップまたは座位で出血を予防する.術後2週間程度は頭位を極端に下げたり,鼻をかんだりといった行為を避けるように指導する.文献1)上岡康雄:涙.鼻腔吻合術鼻外法の位置づけと必要な手技.涙.鼻腔吻合術と眼瞼下垂手術I(栗橋克昭編著),p7786,メディカル葵出版,20082)HartikainenJ,AntilaJ,VarpulaMetal:Prospectiverandomizedcomparisonofendonasalendoscopicdacryocystorhinostomyandexternaldacryocystorhinostomy.Laryngoscope108:1861-1866,19983)AnijeetD,DolanL,MacEwenCJ:Endonasalversusexternaldacryocystorhinostomyfornasolacrimalductobstruction.CochraneDatabaseSystRev19:1-17,20114)柿﨑裕彦,岩城正佳,浅本憲ほか:涙.鼻腔吻合術鼻外法における適切な初期骨窓作製のための解剖学的根拠.日眼会誌112:39-44,20085)PandyaVB,LeeS,BengerRetal:Theroleofmucosalflapsinexternaldacryocystorhinostomy.Orbit29:324327,20106)SerinD,AlagozG,KarslogluSetal:Externaldacryocystorhinostomy:double-flapanastomosisorexcisionoftheposteriorflaps?.OphthalPlastReconstrSurg23:28-31,20077)上岡康雄:涙.・鼻涙管閉塞の標準的治療(涙.鼻腔吻合術:DCR鼻外法).眼科手術24:160-166,2011896あたらしい眼科Vol.30,No.7,2013(14)

涙道の解剖

2013年7月31日 水曜日

特集●涙道領域―最近の話題あたらしい眼科30(7):885.889,2013特集●涙道領域―最近の話題あたらしい眼科30(7):885.889,2013涙道の解剖AnatomyoftheLacrimalSystem宮久保純子*はじめに近年,涙道閉塞の治療は,従来のブジーで閉塞部を開放する方法から涙道内視鏡で涙道内の閉塞部を観察し,鼻内視鏡で鼻腔内を観察しながら手術をする方法へと進歩してきているが,解剖を熟視することが重要なことに変わりはない.内視鏡を使用せずに治療せざるをえない場合は,なおさら解剖の知識が重要となる.涙道は涙点から下鼻道の外側壁にある鼻涙管下部開口までをさす(図1).涙点から涙小管垂直部,涙小管水平部,総涙小管,内総涙点までは眼瞼組織の中を走り,可動性,伸縮性がある部位である.涙管洗浄や,涙道内視鏡検査,チューブ挿入術施行時には,十分に眼瞼を外方に進展,固定させ,長さを考えて施行する必要がある.外傷性涙小管断裂では,周囲組織との関係を知ることが役立つ.涙.窩に位置する涙.,骨性鼻涙管の中を走る膜性鼻涙管骨内部(以下,鼻涙管骨内部),下鼻道外側壁を前方に走る膜性鼻涙管下鼻道部(以下,鼻涙管下鼻道部)は固定された組織である.涙道内視鏡検査,チューブ挿入術施行時には,その長さと傾きを考えて施行する必要があり,涙.鼻腔吻合術では涙.窩と鼻腔との関係を知る必要がある.涙.摘出では涙.周囲組織の解剖の知識が役立つ.本稿では以上の観点から,涙道閉塞治療において参考となる解剖について解説する.I涙道の長さと傾き栗橋1)は,日本人の成人の涙道の各部の長さは,涙点から内総涙点までが平均11mm,涙.の左右径が平均3mm(内腔は1.2mm),涙.の長さは平均10mm,鼻涙管全長は平均17mmと述べている(図1).成岡ら2)は成人の頭部を正面から見た場合,涙.は正中線に対し涙小管水平部(10mm)涙小管垂直部(2.4mm)総涙小管内総涙点涙.(3×10mm)中鼻甲介下鼻甲介下鼻道下部開口鼻涙管下鼻道部鼻涙管骨内部17mm涙点図1涙道涙道は涙点から下鼻道の外側壁にある鼻涙管下部開口までをさす.日本人の涙点から内総涙点までは平均11mm,涙.の左右径が平均3mm,涙.の長さは平均10mm,鼻涙管全長平均17mmである.*SumikoMiyakubo:宮久保眼科〔別刷請求先〕宮久保純子:〒371-0044前橋市荒牧町2-3-15宮久保眼科0910-1810/13/\100/頁/JCOPY(3)885 正中線鼻涙管は涙.に対し内方に傾き正中線に対し外方に傾くものが63%正中線鼻涙管は涙.に対し内方に傾き正中線に対し外方に傾くものが63%涙.は正中線に対し25°外方に傾く鼻涙管は涙.に対し上方に傾くものが80%図2涙道の傾きa:正面図.涙.は正中線に対し外方に平均25°傾く.鼻涙管は涙.に対しては内方に傾き,そのうちの約37%は正中線に対し内方に傾き,約63%は外方に傾く.b:側面図.鼻涙管は涙.に対して前方に傾斜しているものが80%と述べている.(NariokaJetal:OphthalmicSurg39:167-170,2008より)外方に平均25°傾く.鼻涙管は涙.に対しては内方に傾き,そのうちの約37%は正中線に対し内方に傾き,約63%は外方に傾くと述べている.頭部を横から見た場合,鼻涙管は涙.に対して前方に傾斜しているものが80%と述べている(図2).II涙点から総涙小管まで上,下涙点は眼瞼縁のやや内側にあり,少し隆起している涙乳頭の中心にある.涙乳頭は血管が少なく結合組織が多く白っぽく見え,この結合組織は瞼板に連続し,涙点は瞼板に固定されている.涙点の奥には平均2.4mm図4内総涙点右眼の解剖写真(涙道以外の軟部組織は除去し,涙.を切開した).内総涙点は涙.壁のやや前方に位置している.総涙小管には粘膜襞があるが,内総涙点より粘膜隆起が見える.の涙小管垂直部があり,ときに膨大している(図3a,b).涙点は加齢とともに変化し,狭小化,膜の被覆,壁の肥厚,前方への突出(クチバシ状隆起)などが見られる3).涙小管水平部は眼瞼縁のすぐ下の眼輪筋の中を内眼角に向かう.涙点から内眼角部までの眼瞼縁は瞼板,マイボーム腺はなく,ここを眼瞼のlacrimalportionとよび(図3a),内眼角腱までは皮膚,眼輪筋,涙小管,眼窩隔膜,結膜などで構成された弱い部位で,外傷により眼瞼を強く前方や外方に引く力が加わると,内眼角腱を残して容易に断裂する.図3涙点・涙小管a:涙点は少し隆起している涙乳頭の中心にある.涙乳頭は血管が少なく結合組織が多いため白っぽくみえる.涙小管水平部は眼瞼縁のすぐ下の眼輪筋の中を内眼角に向かう.涙点から内眼角までの眼瞼は瞼板,睫毛,マイボーム腺がなく,眼瞼のlacrimalportionとよぶ.b:涙乳頭の結合組織は瞼板に続いており,涙点は瞼板に固定されている.涙点の奥には平均2.4mmの涙小管垂直部があり,ときに膨大している.886あたらしい眼科Vol.30,No.7,2013(4) 図5涙道内視鏡写真(左眼の上涙小管)a:涙小管水平部は平滑な内腔表面の管構造で,断面は円または楕円形をしている.b:総涙小管は複雑な形をした管構造で,粘膜襞があり断面は不整形である.上下涙小管は多くの場合,内眼角部で合流し総涙小管となり,涙.を貫いて内総涙点より涙.に入る(図4).涙小管の涙.への開口方向は,後方から前方に向かっていることが多く,内総涙点は涙.壁のやや前方に位置している.総涙小管が広く大きい場合があり,これをマイエル(Maier)洞とよぶ.涙小管水平部は平滑な内腔表面の管構造で,断面は円または楕円形をしている(図5a).涙小管垂直部,水平部の内腔面は重層扁平上皮でその外側に弾性線維層があり,それを眼輪筋が取り巻いている(図3b).III眼輪筋眼輪筋は瞼裂を中心に同心円状に走る薄いシート状の筋である.瞼裂から近い部を眼瞼部(palpebralpart)の瞼板前部(pretarsalmuscle)といい,内眼角部で瞼板前部浅層筋と深層筋〔ホルネル(Horner)筋〕に分かれ,浅層筋は内眼角腱となり,眼窩の内側部に付着している.瞼板前部深層筋(ホルネル筋)は,内眼角部で浅層筋と分かれて後方に向かい,上眼瞼のホルネル筋と下眼瞼のホルネル筋が交差するように重なり後涙.稜に付着している.筋幅は5.10mm近くあるしっかりした筋である(図6).浅層筋が内眼角腱となり涙小管を上方に固定し,深層筋(ホルネル筋)は涙小管を後方に引っ張る.瞬目時に眼輪筋の中の涙小管垂直部と水平部は,水平かつ後方に引かれることになり,この動きが導涙機構に関与してい図6眼輪筋眼瞼部瞼板前部の深層筋(ホルネル筋)(右眼)右眼の上下眼瞼の眼輪筋眼瞼部瞼板前部の深層筋(ホルネル筋)を残し周囲組織を除去し,反転して眼球側から観察した写真(矢印は上下涙点).深層筋(ホルネル筋)は筋幅が5.10mmあるしっかりした筋で,浅層筋とともに涙小管を囲み,内眼角部で浅層筋と分かれて後涙.稜に付着する(点線).ると推察される.涙小管断裂時に涙小管鼻側断端を探す場合,浅層筋と深層筋(ホルネル筋)が分かれるより眼球側で断裂した場合は,鼻側断端は浅層筋で内眼角腱にも引かれているので,傷の浅い部位にある.しかし,断裂により浅層筋と深層筋(ホルネル筋)のつながりが絶たれると,涙小管鼻側断端は深層筋(ホルネル筋)に引かれて,傷の後方の深い部位にいく.IV涙.涙.は,眼窩の内下側に位置する涙.窩にある(図4,7).涙.窩は薄い涙骨と上顎骨前頭突起の骨で構成されている.涙.窩の前縁を前涙.稜,後縁を後涙.稜とよぶ(ホルネル筋の付着部).涙.窩は鼻側壁の骨を隔てて鼻腔があるものと,骨の中に前篩骨洞が介在しているもの,鼻腔側で中鼻甲介の根元がかかるものなどがあり,骨の厚さもさまざまである.涙.の断面は左右径が平均3mm,前後径が平均7.5mmと前後に長い楕円形をしている.内腔の左右径が1.2mmと非常に狭く,スリット状のこともある.(5)あたらしい眼科Vol.30,No.7,2013887 前涙.稜後涙.稜涙.窩前涙.稜後涙.稜涙.窩図7涙.窩(左眼)左眼の眼窩の写真.眼窩の内下方に位置する涙.窩に涙.がある.涙.窩の前方の縁は上顎骨前頭突起の前涙.稜で,後方の縁は涙骨の後涙.稜である.V膜性鼻涙管膜性鼻涙管は骨性鼻涙管の中を走り,下鼻道に抜け,多くは下鼻道外側壁を前下方に走って下鼻道に開口している(図8a.c,9).骨性鼻涙管の中の部分を鼻涙管骨内部(interosseousportion),下鼻道の部分を鼻涙管下鼻道部(intermeatalportion),下鼻道の鼻涙管出口を下部開口とよぶ4).多くの場合,長さはさまざまであるが鼻涙管下鼻道部があり,下鼻道側の管の壁は薄い膜状図9鼻涙管骨内部と下鼻道部右眼の膜性鼻涙管を鼻腔から見た解剖写真(下鼻甲介は除去し,鼻涙管は切開し開放してある).膜性鼻涙管骨内部(黒矢印)は下鼻道に出たところで,前方に屈曲し,下鼻道外側壁を前方に向かう鼻涙管下鼻道部(点線矢印)となる.青点線がスリット状の下部開口.で,下部開口はスリット状をしている(図8c,9).鼻涙管骨内部は下鼻道に出たところで前方に屈曲し,下鼻道外側壁を前下方に向かう形態は,チューブ挿入術時の仮道形成好発部位となり,注意が必要である.鼻涙管骨内部が下鼻道にそのまま開口し,鼻涙管下鼻***図8鼻腔の鼻内視鏡写真(右眼)a:中鼻甲介の付け根あたりの鼻堤の外側に涙.があり,鼻堤の下方にあるmaxirallylineとよばれる縁(点線)の後方に,薄い骨または薄い骨と篩骨蜂巣を介して涙.と鼻涙管がある.*は中鼻甲介.b:鼻涙管下鼻道部は下鼻甲介(*)外方の下鼻道外側壁にある.c:鼻涙管骨内部は骨性鼻涙管から下鼻道に出たところで前方に屈曲し,鼻涙管下鼻道部(点線)は下鼻道外側壁を前方に向かう.多くの場合下部開口はスリット状である(*).888あたらしい眼科Vol.30,No.7,2013(6) 道部がなく,円形の大きな下部開口のものが10%くらいある5).下部開口が閉塞または狭窄し,鼻涙管下鼻道部が広く拡張しているもの,下部開口より下方にも鼻涙管下鼻部が伸び先で盲端になっているものなどもある.鼻涙管骨内部の断面の形態は多くは円形.楕円形で,節状の粘膜襞が見られるものもある.いずれもHasner弁やRosenmuller弁とよばれる本当の弁構造はない.VI鼻腔鼻腔側から見ると,中鼻甲介の付け根あたりの鼻堤の外側に涙.があり,涙.鼻腔吻合術鼻外法の吻合孔のおよその位置である.鼻堤の下方にあるmaxirallylineとよばれる縁の後方に,薄い骨または薄い骨と篩骨蜂巣を介して鼻涙管がある(図8a).Maxirallylineは涙.鼻腔吻合術鼻内法や経涙小管レーザー涙.鼻腔吻合術の吻合孔作製位置の目安となる.VII涙.,鼻涙管の壁構造涙.や鼻涙管の壁構造は,内腔粘膜は多列円柱上皮で,その外側に静脈叢やリンパ球を含む疎な海綿体組織の層(上皮下結合組織層)があり,さらに外側はらせん状配列した結合組織線維層で厚い構造をしている.海綿体組織は流れる血流により体積が変わり,涙道内腔の広さが変わるといわれている.また,らせん状配列の線維層の収縮は,導涙作用に影響しているといわれている.多列円柱上皮細胞の間に杯細胞(gobletcell)がみられ,ムチンや免疫に関係するTFF(trefoilfactorfamily)peptideが分泌される.電子顕微鏡写真では,多列円柱上皮は絨毛(microvilli)をもつ細胞の間に線毛(cilia)をもつ背の高い細胞があり,線毛をもつ細胞は粘液層を鼻涙管下方に運ぶ粘液線毛輸送機能を有し,絨毛(microvilli)をもつ細胞は涙液を再吸収する1,6).原発性後天性鼻涙管閉塞(primaryacquirednasolacrimalductobstruction:PANDO)では,閉塞が長期に続くと,上皮や上皮下構造に組織的な変化が起こり,多列円柱上皮は扁平上皮化し,粘膜下は線維化するといわれている6,7).文献1)栗橋克昭:涙.鼻腔吻合術と眼瞼下垂症手術Ⅰ涙.鼻腔吻合術.涙.鼻腔吻合術─涙道疾患,眼瞼下垂症,交感神経過緊張,セロトニン神経─.眼科診療プラクティス80,p1-10,文光堂,20082)成岡純二:ヌンチャク型シリコーンチューブ挿入術のための臨床解剖の重要性.ヌンチャク型シリコーンチューブ─私のポイント─涙道手術と眼瞼下垂症手術(栗橋克昭編),p61-67,メデイカル葵出版,20063)大野木淳二:涙道の臨床解剖─ヌンチャク型シリコーンチューブ挿入時の注意点.ヌンチャク型シリコーンチューブ─私のポイント─涙道手術と眼瞼下垂症手術(栗橋克昭編),p68-73,メデイカル葵出版,20064)OlverJM:Anatomyandphysiologyofthelacrimalsystem.ColourAtlasofLacrimalSurgery,p2-27,ButterworthHeinemann,Italy,20025)大野木淳二:鼻内視鏡による鼻涙管下部開口の観察.臨眼55:650-654,20016)WeberRK,KeerlR,SchaeferSDetal:PathophysiologicalaspectsofPANDO,dacryolithiasis,dryeye,andpunctumplugs.AtlasofLacrimalSurgery.p15-27,Springer,NewYork,20077)宮久保純子:涙道閉塞の病態生理学.眼科最新手術(澤充,谷原秀信,坪田一男ほか編),眼科53(臨増):13411347,2011(7)あたらしい眼科Vol.30,No.7,2013889

序説:涙道領域─最近の話題

2013年7月31日 水曜日

●序説あたらしい眼科30(7):883.884,2013●序説あたらしい眼科30(7):883.884,2013涙道領域─最近の話題CurrentTopicsontheLacrimalPassage井上康*白石敦**涙道領域における最近の大きな出来事としては,平成23年10月に日本涙道・涙液学会が設立されたことがあげられる.涙道領域においては,長年にわたり涙道疾患の治療にかかわる眼科医らによって積極的な臨床・学会活動が行われてきたが,核となる専門学会が存在せず,診療指針の確立がなされてこなかった.また,閉塞性涙道疾患の主症状である流涙は閉塞性涙道疾患に限らず,さまざまな眼瞼および眼表面疾患で起こる.流涙を主訴とする患者を診察するに当たり,流涙に対する的確な診断と原因別の治療指針の確立が重要であるという考えに基づき,学会名を,日本涙道・涙液学会と決定した.今後,涙道領域の診断・治療指針の確立とともに広く関連分野からの知見を集積し,流涙への的確な対応を可能にする体制が整いつつあると考えている.今回の特集では,「涙道領域─最近の話題」として涙道・涙液領域について,それぞれの分野における専門家の先生方に最新の知見を交えた解説をお願いした.すべての外科的治療および内視鏡検査を行う前には,涙道周辺の解剖について正しく理解しておく必要がある.まず,本特集内容への理解を深めるために,宮久保純子先生に涙道の解剖について詳しく解説していただいた.涙道閉塞に対する涙.鼻腔吻合術(dacryocystorhinostomy:DCR)鼻外法は100年以上の歴史のある術式であり,わが国においても改良が加えられ洗練された術式として普及している.さらに近年では,鼻内視鏡を用いて鼻内からアプローチするDCR鼻内法が広まりつつある.上笹貫太郎先生・嘉鳥信忠先生にはDCR鼻外法を宮崎千歌先生にはDCR鼻内法について,それぞれの術式の特徴,適応症例,最近の術式や工夫について解説していただいた.先天鼻涙管閉塞は涙道専門家でなくとも日常臨床において頻繁に遭遇し,涙道ブジーを中心に治療を行ってきた疾患であるが,その治療方針についてはいまだ結論が出ていないのが現状である.先天鼻涙管閉塞に対しての治療方針の確立は,日本涙道・涙液学会のさしあたっての責務と思われる.本特集では廣瀬美史先生に先天鼻涙管閉塞の現状について解説していただいた.わが国では涙道内視鏡が導入され約10年が経過したが,他の臓器では造影検査に加え内視鏡検査が導入されることにより飛躍的な診断能力の向上と,内視鏡下治療の発展を経験してきた.涙道領域においても同様に,涙道内視鏡の導入以来,診療内容に大きな変化がみられ,今後さらなる発展を続けていくと思われる.杉本学先生には,涙道内視鏡導入以後の涙道診療の変化と涙道内視鏡を用いた診断・*YasushiInoue:井上眼科**AtsushiShiraishi:愛媛大学大学院感覚機能医学講座視機能外科学分野(眼科学)0910-1810/13/\100/頁/JCOPY(1)883 治療の現状について解説していただいた.最近の話題の一つとして,抗がん剤S-1による眼障害があり,おもに角膜および涙道に発症する.特に涙道狭窄・閉塞は治療の難易度の高い涙点・涙小管に発症し,不可逆的であるため,涙道領域の副作用としては看過できない問題であり,日本涙道・涙液学会でも学会をあげてこの問題に取り組んでいる.本特集では多くの症例の治療経験をお持ちの柏木広哉先生に抗がん剤S-1による眼障害について,その現状,問題点,治療,対策法について解説していただいた.従来,閉塞性涙道疾患の診療では,術前診断は細隙灯顕微鏡によるtearmeniscusheight(TMH)および涙管通水検査で行われ,術後経過も通水が良好であるか否かで判断されてきており,評価方法の統一性が曖昧であった.今後,本疾患に対する診断・治療指針を確立するためには,術前術後の客観的な評価方法の導入が必須となる.本特集ではTMHの評価方法として,最近では一般眼科でも導入が進んでいる光干渉断層計(opticalcoherencetomography:OCT)を用いた評価方法について鈴木亨先生に解説していただいた.また,閉塞性涙道疾患の主症状は流涙であるが,同時に視機能異常を訴える症例もしばしば経験する.このような症例の治療後には自覚的な視機能の改善を認めることも珍しくない.閉塞性涙道疾患の視機能異常の改善に対するメカニズムについて井上が波面センサーを用いた眼高次収差の解析結果から解説させていただいた.最後に,今回特集した情報が明日からの診療や手術技術のアップデートにつながることを切望し,序言にかえさせていただく.884あたらしい眼科Vol.30,No.7,2013(2)