0910-1810/10/\100/頁/JCOPYPediatricEyeDiseaseInvestigatorGroup(PEDIG:http://public.pedig.jaeb.org/)が1997年に結成された.このグループによって弱視に関する研究が精力的に進められて現在(2010年11月)までに40篇以上の原著論文が出版された.それらの多くは,多施設共同研究であり,無作為化されているために,科学的根拠が強いと考えられる.その結果は,これまで行われてきた治療方法を否定するものではないが,弱視治療についてエビデンスに基づいた指針を提示することとなった.このうち最も重要なものとして,1)屈折矯正だけでも視力は向上する,2)一日2時間の健眼遮閉でも弱視治療としては効果的である,3)10歳以上であっても,弱視治療は効果がある,4)アトロピンペナリゼーションと健眼遮閉は同等に視力改善に効果がある,を取り上げる.I眼鏡のみでも弱視眼の視力は向上する健眼遮閉やペナリゼーションの治療効果をみるためには,眼鏡だけでどれだけ視力が良くなるか,ということを区別する必要があった.3歳から7歳までの中等度弱視(小数換算視力0.2.0.5)の患者に屈折矯正だけで視力の経過をみたところ,30%以上は眼鏡だけで治癒に至った1).そして視力改善がプラトーに達するまでにおよそ4カ月必要で,4カ月たって視力改善がみられなくなったら健眼遮閉を開始すればよい,という判断がなさはじめに弱視の治療は,従来屈折矯正と健眼遮閉あるいはペナリゼーションが中心であるが,具体的な方法は医師の判断に頼っていた.特にそれぞれの医師が若い頃に受けた教育に強く影響されるため,米国内でも地域によって遮閉時間の決め方が異なっていた.このような経験に基づく医療からエビデンスに基づく医療に移行するために,米国の小児眼科医を中心とした小児眼科研究者グループ:(9)1641*MihoSato:浜松医科大学眼科学講座〔別刷請求先〕佐藤美保:〒431-3192浜松市東区半田山1-20-1浜松医科大学眼科学講座特集●弱視斜視診療のトレンドあたらしい眼科27(12):1641.1643,2010弱視治療のエビデンスEvidenceofAmblyopiaManagement佐藤美保*図1弱視治療の方法(WilsonME,SaundersRA,TrivediRH:PediatricOphthalmology.Springer,2009,p39,Fig.4.3より改変)一日2時間の健眼遮閉または週末のアトロピン視力改善視力不変アドヒアランス良好アドヒアラ治癒ンス不良治療漸減治療終了2年間モニター治療時間増加治療方法変更弱視残存治療の変更,追加,強化1642あたらしい眼科Vol.27,No.12,2010(10)遮閉時間を評価すると,logMAR(logarithmicminimumangleofresolution)視力が二段階改善するために必要な総遮閉時間は,4歳で治療を開始した場合170時間,6歳で開始した場合236時間必要であり,治療時間と視力の改善が直線的に関係していることが明らかになった8).それでは,遮閉効果があがる最短の遮閉時間はどれだけかというと,眼鏡装用をし続けて視力改善がプラトーに達してから,一日2時間の遮閉を行ったところ,さらに視力が上がったとの結果がでている.したがって,眼鏡装用で不十分な場合の遮閉時間は最短2時間で良い,ということになる9).III10歳以上であっても,弱視治療は効果がある視覚感受性期間はこれまで,ほぼ10歳ごろまでとされており,これ以降に弱視起因となる疾患があっても弱視にはならず,またこの年齢を過ぎると弱視治療にも反応しないとされていた.しかし,弱視患者が加齢黄斑変性のために健眼であったほうの眼の視力が低下したときにたとえ成人であっても,弱視眼の視力が改善することがあるという報告がなされた.そのため,視覚感受性期間が従来考えられていたよりも長いのではないかと考えられるようになった.さらに,弱視の治療開始時の年齢が10歳を超えた場合に治療に反応するかどうかについても,調査がなされた.その結果,7歳から17歳で治療を開始した弱視患者の24%は眼鏡装用で視力が改善し,12歳以下の53%が健眼遮閉やペナリゼーションに反応した.13歳以上では25%が健眼遮閉やペナリゼーションに反応したにすぎなかったが,これまでに治療歴のない弱視患者では47%が治療に反応したとの報告が得られた10).したがって,治療開始時期が遅れた患者に対して,まったく治療効果がないからとあきらめるのではなく,特に治療経験がない場合には,きちんと対応することが重要である.IVペナリゼーションについて弱視治療方法として,健眼遮閉のほかにアトロピン硫酸塩による調節麻痺を用いたペナリゼーション法がある.ペナリゼーションは遮閉に比べると,アドヒアランれた.また,両眼性の屈折異常性弱視に関しては,+4D以上の遠視の3歳から10歳の小児に対する治療効果を多施設で研究したものが報告された.それによると,大部分の10歳以下の症例では1年以内に視力が0.8以上に改善することが示された2).眼鏡を装用しはじめるということは小児本人や家族にとっては相当の精神的ストレスである.当初から眼鏡と健眼遮閉を実行するのは容易ではない.また眼鏡装用で,ある程度視力が改善してから健眼遮閉を導入するほうが実施しやすい.しかし,重度の弱視患者や年長者において,早期に遮閉訓練を開始することを否定するものではない.II一日2時間の健眼遮閉でも弱視治療としては効果的である健眼遮閉の時間については,部分遮閉と終日遮閉で意見が分かれていた.終日遮閉のほうが部分遮閉より視力改善効果が強いという意見がある一方で,両眼視機能の低下につながるという恐れから部分遮閉を主張するグループとに分かれていた.PEDIGの研究結果で,終日遮閉と6時間遮閉で最終視力に差がないこと3)や,6時間の遮閉と2時間の遮閉で最終視力に差がない4),との報告がなされた.長時間の遮閉治療は,患者や家族に精神的ストレスを与えること5)や,終日遮閉によって内斜視の発症がしばしば報告されていることのために,同等の治療効果であれば遮閉時間は短いほど良いと考えるのは当然である.しかし,これらの研究の大きな問題点は,指示した遮閉時間と実際に遮閉が実行された時間との間に誤差があることである.そこで,実施された遮閉時間を正確に記録するために開発されたモニター付きアイパッチ6)を利用して,実際に行われた遮閉時間と視力改善の関係が検討された.それによると,3時間の遮閉を指示された者は平均1時間45分しか実行しておらず,6時間の指示をされた者は平均2時間33分しか実行していないことが明らかになった.そして,遮閉をしない群と比べて有意に視力が改善するためには3時間以上の遮閉の実行が必要であることが示された7).さらに,モニターされた(11)あたらしい眼科Vol.27,No.12,20101643trialofpatchingregimensfortreatmentofmoderateamblyopiainchildren.ArchOphthalmol121:603-611,20035)HolmesJM,BeckRW,KrakerRTetal:Impactofpatchingandatropinetreatmentonthechildandfamilyintheamblyopiatreatmentstudy.ArchOphthalmol121:1625-1632,20036)SimonszHJ,PollingJR,VoornRetal:Electronicmonitoringoftreatmentcomplianceinpatchingforamblyopia.Strabismus7:113-123,19997)AwanM,ProudlockFA,GottlobI:Arandomizedcontrolledtrialofunilateralstrabismicandmixedamblyopiausingocclusiondosemonitorstorecordcompliance.InvestOphthalmolVisSci46:1435-1439,20058)StewartCE,StephensDA,FielderARetal:Modelingdose-responseinamblyopia:towardachild-specifictreatmentplan.InvestOphthalmolVisSci48:2589-2594,20079)PediatricEyeDiseaseInvestigatorGroup:Arandomizedtrialtoevaluate2hoursofdailypatchingforstrabismicandanisometropicamblyopiainchildren.Ophthalmology113:904-912,200610)PediatricEyeDiseaseInvestigatorGroup:Randomizedtrialoftreatmentofamblyopiainchildrenaged7to17years.ArchOphthalmol123:437-447,200611)PediatricEyeDiseaseInvestigatorGroup:Arandomizedtrialofatropinevs.patchingfortreatmentofmoderateamblyopiainchildren.ArchOphthalmol120:268-278,200212)RepkaMX,HolmesJM,MeliaBMetal:Theeffectofamblyopiatherapyonocularalignment.JAAPOS9:542-545,200513)RepkaMX,CotterSA,BeckRWetal:Arandomizedtrialofatropineregimensfortreatmentofmoderateamblyopiainchildren.Ophthalmology111:2076-2085,2004スが高いという利点はあるが,その効果は遮閉治療より低いと考えられていた.また,健眼の弱視化という問題もある.しかし,アトロピン点眼によるペナリゼーションと最低一日6時間の健眼遮閉を比較したところ,同等に効果的であったと報告された11).アトロピン治療を受けたものも,遮閉治療を受けたものも,眼位に関しては最終的に差がなく,弱視治療によって眼位が改善するものもあった12).また,アトロピン点眼の回数については,毎日の点眼と週末だけの点眼で結果に差がないことが示された13).このように,アトロピンペナリゼーションは健眼遮閉と遜色がないことが明らかになったが,先にも述べたように,6時間の健眼遮閉の指示に対して,本当に6時間の遮閉が実行されたかどうかは不明であった.そこで,本人や家族に対しては,治療方法を最初に選択させるというのが推奨されている.文献1)CotterSA,EdwardsAR,WallaceDKetal:Treatmentofanisometropicamblyopiainchildrenwithrefractivecorrection.Ophthalmology113:895-903,20062)WallaceDK,ChandlerDL,BeckRWetal:Treatmentofbilateralrefractiveamblyopiainchildrenthreetolessthan10yearsofage.AmJOphthalmol144:487-496,20073)RepkaMX,BeckRW,HolmesJMetal:Arandomizedtrialofpatchingregimensfortreatmentofmoderateamblyopiainchildren.ArchOphthalmol121:603-611,20034)RepkaMX,BeckRW,HolmesJMetal:Arandomized