●連載◯309監修=稗田牧神谷和孝309.近視LASIK後の眼内レンズ度数計算西恭代慶應義塾大学医学部眼科学教室LASIK後眼では眼内レンズ度数計算の予測性が低くなることが知られているが,従来から用いられているCBarrettTrue-K式やCHaigis-L式に加え,角膜後面を考慮したCTK(TotalKeratometry)/PK(PosteriorCKera-tometry)導入式や人工知能を活用した計算式が登場し,予測精度が向上している.●はじめに従来の眼内レンズ(intraocularlens:IOL)度数計算式はClaserCinCsitukeratomileusis(LASIK)後眼で不正確になることが知られているが,近年,角膜屈折矯正手術後に特化した補正式,角膜後面を考慮した手法,さらに人工知能(arti.cialintelligence:AI)を応用した新世代の計算式が登場している.本稿では,近視CLASIK後眼におけるCIOL度数計算の現状を概説する.C●2025JSCRSClinicalSurvey2025年の日本白内障屈折矯正手術学会(JapaneseCSocietyCofCCataractCandCRefractiveSurgery:JSCRS)によるCClinicalSurveyによると1),過去C1年間でもっとも近視CLASIK後のCIOL度数計算に使用された計算式はCBarrettTrue-K式であり,米国白内障屈折矯正手術学会(AmericanCSocietyCofCCataractCandCRefractiveCSur-gery:ASCRS)のCPostCRefractiveCIOLCalculator,Haigis-L式と続いており,術前データが不要なものが主流となっている.C●角膜屈折矯正手術後補正式近視CLASIK後のCIOL度数計算式として,術前データを用いない「nohistory式」としてCHaigis-L式やCBar-rettTrue-K式が広く用いられてきたが,光学式眼軸長測定装置CIOLMaster700(CarlCZeissMeditec社)によるCsweptCsourceCopticalCcoherenceCtomography(SSOCT)の情報から角膜後面を算出した値を加味した角膜全屈折力(totalkeratometry:TK)や,その他の機器による後面角膜屈折力(posteriorCkeratometry:PK)を測定できるようになり,さまざまな計算式においてCTKあるいはCPKを導入した改良式の報告が増えて(67)C0910-1810/26/\100/頁/JCOPYきている.C●Hiagis-L式/HaigisTK式Haigis-L式は術後角膜屈折力,眼軸長,術前前房深度から術後前房深度を予測する角膜屈折矯正手術後眼に対する専用式であり,IOLMaster700に搭載されている.Lanzaらは,近視屈折矯正手術後のCIOL度数計算において,BarrettTrue-K式,Haigis-L式,ASCRSCPostCRefractiveCIOLCalculatorの平均値等の予測精度を比較し,眼軸長C30Cmm以上およびケラトメータ値(以下CK値)がC35D以下の群では,どの式においても遠視にずれる傾向があり,またCK値がC35D以下ではCBar-rettTrue-K式よりCHaigis-L式の精度が高いことを報告している2).HaigisTK式はCHaigis-L式にCTKを導入した改良版であり,従来式を上回る精度が報告されている3).C●BarrettTrue-K式/BarrettTrue-KTK式現在国内でもっとも頻用されているCBarrettTrue-K式は,BarrettCUniversalII式を基盤とした理論式で,多くの光学的眼軸長測定装置に搭載されている.Bar-rettCTrue-KTK式はCBarrettK値としてCTKを組み込むことで,従来のCBarrettTrue-Kを上回る精度が報告されている3).C●EmmetropiaVerifyingOpticalFormula(EVO式)/EVOPK式2016年には新しいCIOL度数計算式として,正視化理論に基づいて開発されたCEmmetropiaVerifyingOpticalFormula(EVO式)が発表された.Web上で利用可能であり,2025年C10月現在はCver.2.0が公開されている.近視CLASIK術後眼に対してはCPostCLASIK/PRK/RKあたらしい眼科Vol.43,No.2,2026185表1各計算式の特徴と予測精度(自験例,n=56)計算式特徴C±0.25D以内(C%)C±0.50D以内(C%)C±1.00D以内(C%)CBarrettTrue-KBarrettTrue-KTKHaigis-LHaigis-TKEVOEVOPKPearl-DGSHo.erQSTHo.erQSTPKBarrettUniversalII基盤角膜屈折矯正手術後補正式C上記にCTKを導入C角膜屈折矯正手術後補正式上記にCTKを導入C固有のCEmmetropia係数を導出C上記にCPKを導入厚肉レンズ理論,AIベースCHo.erQ式を発展,AIベースC上記にCPKを導入C48.2C33.9CC*C26.848.2C32.1CC*C58.939.3C35.7C46.4C82.1C71.4C57.1C73.2C66.1C80.4C66.1C57.1C66.1C92.9C92.9C85.7C92.9C87.5C94.6C91.1C78.6C89.3Cp=0.0001EVOPK式がもっとも高精度であり,BarrettTrue-KTK式やCHaigisTK式も良好な成績を示した.(文献C3より改変引用)の項目を選択し,従来のCK値を用いた計算に加え,PK値を使った計算も可能である.C●ASCRSPostRefractiveIOLCalculatorASCRSのウェブサイトでは,角膜屈折矯正手術後眼に対するCIOL度数計算ツールであるCPostCRefractiveCIOLCalculatorを利用可能である.現在はCver.4.9が公開されている.C●AIを応用した計算式近年はCAIを活用したCIOL度数計算式が登場してきている.以下は角膜屈折矯正手術後眼に対応している計算式であり,いずれもCWeb上で利用可能である.CPearl-DGS式:厚肉レンズの理論に基づき,機械学習モデルを使用し,角膜後面の曲率半径と角膜後面からIOL前面間の距離であるCtheoreticalCinternalClensCposi-tion(TILP)を予測する4).CHo.erQST式:1993年に発表されたCHo.erQ式の発展版であり,AIを活用して術後前房深度を予測する.C●術中波面収差解析そのほか,近視角膜屈折矯正手術後眼において術中波面収差解析がCBarrettTrue-K式と同等あるいは高い精度をもつとする報告がある5).C●臨床応用の実際筆者の施設を含む多施設共同研究3)では,近視LASIK後のC56眼においてC9種類の計算式を比較した.その結果,EVOPK式が最小の中央絶対誤差(0.20D)と最高の予測値から±0.25D以内の割合(58.9%)を示C186あたらしい眼科Vol.43,No.2,2026し,もっとも高精度であった.BarrettTrue-KTK式やCHaigisTK式も良好な成績を示した一方で,Haigis-L式は誤差が大きく,現状では第一選択にはなりにくいことが示された(表1).現時点での近視CLASIK後のCIOL度数計算の臨床応用の実際としては,PK/TK値を測定可能である場合はCBarrettTrue-KTK式またはCEVOPK式,補助手段としてCHaigisTK式を併用することが推奨される.角膜後面屈折値を使用しない場合は,BarrettTrue-K式を主体に,ASCRSCPostCRefractiveCIOLCalculator,Hai-gis-L式を併用し,その際,眼軸長やCK値に基づき,各計算式の誤差傾向を参照してCIOL度数を選択することが望ましい.いずれの場合も,複数の計算式を横断的に確認することが,大きな度数ずれを予防するために有用であると考えられる.文献1)三好政輝,田淵仁志,田邉真生ほか:2025JSCRSClinicalSurvey(総説).IOL&RSC39:348.365,C20252)LanzaCM,CRuggieroCA,CHaCJCetal:AccuracyCofCformulasCforintraocularlenspowercalculationaftermyopicrefrac-tivesurgery.JRefractSurgC38:443.449,C20223)GettingerK,MasuiS,OmotoMetal:Accuracyofrecentintraocularlenspowercalculationmethodsinpost-myopicLASIKeyes.SciRepC14:26560,C20244)DebellemaniereCG,CDuboisCM,CGauvinCMCetal:TheCPEARL-DGSformula:theCdevelopmentCofCanCopen-sourceCmachineClearning-basedCthickCIOLCcalculationCfor-mula.AmJOphthalmolC232:58.69,C20215)FramCNR,CDavidsonCJ,CGuCXCetal:RefractiveCpredictionCaccuracyusingintraoperativeaberrometryversusBarrettTrue-Kformulafollowingcornealrefractivesurgery.ClinOphthalmolC18:3871.3879,C2024(68)