0910-1810/12/\100/頁/JCOPY障学会緑内障診療ガイドライン2)によると,小児緑内障は発達緑内障と続発緑内障に大別され,さらに発達緑内障は早発型発達緑内障(原発先天緑内障),遅発型発達緑内障,他の先天異常を伴う発達緑内障(続発先天緑内障)に分類される.発達緑内障とは,隅角の発育異常に起因する緑内障で,早発型の約80%は生後1歳までに発症し,牛眼を呈することが多い.治療の第一選択は手術であり,線維柱帯切開術(トラベクロトミー)または隅角切開術(ゴニオトミー)が選択される3,4).遅発型は隅角異常の程度が軽く,10?20歳代で発症する.一般に3歳以降に発症する発達緑内障は,牛眼を呈さず自覚症状に乏しいため発見が遅れがちである.特に遅発型では続発緑内障との鑑別診断が重要である.病期に応じて成人同様にまず薬物治療を試みるが,眼圧下はじめに小児緑内障の頻度は概して少なく,わが国の先天緑内障の発症頻度は約3万人に1人と報告されている1).しかし,小児の生涯にわたる重篤な視覚障害の原因となりうる代表的な疾患であり,早期発見と迅速な診断・治療,弱視訓練の適否が予後を大きく左右する.発見から長期管理を含めて,眼科医の果たす役割は多大である.本稿では,小児緑内障の病型ごとに治療の基本方針を述べたい.さらに成人とは異なる特徴をもつ小児の続発緑内障について自験例を示して解説し,今後の課題をあげたい.I小児緑内障の分類と治療方針(表1)小児緑内障の病型は成人と異なり,先天素因に起因するもの,多様な疾患を背景とするものが多い.日本緑内(7)7*SachikoNishina&NoriyukiAzuma:国立成育医療研究センター眼科〔別刷請求先〕仁科幸子:〒157-8535東京都世田谷区大蔵2-10-1国立成育医療研究センター眼科特集●小児と高齢者の緑内障:ここがポイントあたらしい眼科29(1):7?12,2012小児の緑内障治療TreatmentforPediatricGlaucoma仁科幸子*東範行*表1小児緑内障の分類と治療方針分類治療方針発達緑内障隅角発育異常に起因早発型生後1歳までに約80%が発症①手術治療トラベクロトミー,ゴニオトミー遅発型隅角異常軽度,10~20歳代で発症①薬物治療②手術治療他の先天異常を伴う無虹彩症,Sturge-Weber症候群,Axenfeld-Rieger症候群など発症時期・機序によって手術治療または薬物治療続発緑内障手術・外傷,ステロイド,水晶体起因性,網膜硝子体疾患,腫瘍,ぶどう膜炎など①原因疾患の治療②薬物治療または手術治療8あたらしい眼科Vol.29,No.1,2012(8)良好で,手術回数1?3回によって成功率は約90%である.効果の持続も良好であり,生命表分析で20年後の眼圧調整成功率は80.8%と報告されている6).しかし角膜径が極度に増大した進行例ではSchlemm管の同定がむずかしくなる.ゴニオトミーは,手技の習得がむずかしい術式であるが,結膜を温存できるという利点がある.しかし角膜の浮腫混濁が強い例では,隅角が透見できず施行困難であるため,適応が限られている.他の先天異常を伴う発達緑内障では成功率が劣るが,やはり手術治療の第一選択はトラベクロトミーである4,6).高度の隅角癒着を生じている例では難治である.2.再手術初回のトラベクロトミーが十分に奏効しない場合には,部位を変えて2回,3回までロトミーで再手術を行う.初回が耳上側であれば,2回目は耳下側,3回目は鼻側となる.ロトミーを3回実施しても眼圧が再上昇して視神経乳頭陥凹が拡大する場合には,線維柱帯切除術(トラベクレクトミー)の適応となるが,小児でも濾過胞維持のためマイトマイシンCを併用せざるをえない.できるだけ2歳までは,ロトミー施行後の眼圧再上昇に対し,薬物治療を併用して視神経障害の進行を防止し,降が十分に得られず視神経障害が進行する場合には,余命が長いことからも,原因治療として速やかに手術を行う必要がある5).他の先天異常を伴う発達緑内障とは,無虹彩症,Sturge-Weber症候群,Axenfeld-Rieger症候群,Peters異常などの疾患に併発する緑内障である.発症時期が出生時から成人まで多岐にわたり,眼圧上昇機序も異なるため,治療方針は一定ではない2).高度の隅角発育異常に起因する早発型に対しては,手術治療が第一選択となるが,原発性に比べて難治である.小児期以降の発症では薬物治療を第一選択とする.続発緑内障に対しては,原因疾患の治療が第一であり,つぎに発症機序に応じた薬物治療・手術を検討する.II発達緑内障の治療1.手術治療早発型発達緑内障に対しては早急な手術治療が必要であり,トラベクロトミーまたはゴニオトミーが第一選択となる.トラベクロトミーは発達緑内障のすべてに適応となる術式である(図1).いわゆる原発性に対する手術成績はabc図1生後2カ月男児,早発型発達緑内障a:術前右眼前眼部所見.角膜径増大11.5×12.5mm,角膜浮腫,眼圧30mmHg,トラベクロトミー1回施行にて眼圧コントロール良好,乳頭陥凹なし,速やかに角膜は透明化した.b:術前左眼前眼部所見.角膜径増大12×13mm,Descemet膜破裂を伴う高度角膜浮腫,眼圧30mmHg,トラベクロトミー1回施行にて眼圧コントロール良好,乳頭陥凹なし,角膜混濁が残存した.c:術後5カ月の左眼前眼部所見.角膜浮腫は消退したがHaabstriaeを認める.健眼遮閉および屈折矯正による弱視治療を行い,6歳の視力は右眼1.5,左眼0.2となった.(9)あたらしい眼科Vol.29,No.1,20129児の続発緑内障の治療戦略.第34回日本眼科手術学会総会,京都,2011).2.病態と治療続発緑内障143眼のうち,手術治療を要したものは68眼(48%)であった.原因疾患別(図3)では,ステロイドは手術治療に至ったものが13%に留まっていたが,その他の原因疾患では手術治療の頻度が高く,ROP65%,先天白内障術後49%,PHPV・FEVRなど69%,腫瘍100%,その他は86%であった.治療方針は原因疾患と病態により異なる.以下,代表的な疾患を取り上げて当院における手術治療を述べ,今後の課題をあげたい.a.ROP(表2)ROP続発緑内障24例31眼は,いずれも網膜症治療後の症例であり,他院で光凝固・冷凍凝固,輪状締結術レクトミーを回避したい.レクトミーも2?3回は施行可能であるが,小児では濾過胞の管理がむずかしく,術後出血,過剰濾過による視力低下,術後感染の危険性などに十分な注意を要する.わが国での報告は少ないが,難治例にはインプラント手術が試みられることがあり,最終的に毛様体破壊術の適応となるものもある.3.薬物治療4)遅発型の発達緑内障や続発緑内障では,一般に薬物治療から開始する.またトラベクロトミー施行後の眼圧再上昇に対して,薬物治療が併用されることも多い.小児に対する安全性が確認されている緑内障点眼薬はないため,必要性,有効性を十分検討し,全身副作用に注意して投与すべきである.プロスタグランジン関連薬,炭酸脱水酵素阻害薬の点眼薬は,比較的副作用が少なく,点眼回数が少ないため使用しやすいが,プロスタグランジン関連薬は成人よりもノンレスポンダーが多い.b遮断薬は呼吸器・循環器系に対する副作用を誘発するため要注意である.III続発緑内障の治療1.小児続発緑内障の原因小児の続発緑内障は原因疾患,臨床像とも多種多様であり,成人とは異なる特徴をもつ.自覚症状に乏しく早期発見がむずかしいが,重篤な視覚障害をきたしやすいため,原因と病態を迅速に診断し,治療方針を決定する必要がある.特に発達緑内障との鑑別に注意を要する.国立成育医療研究センター(以下,当院)において2002?2010年に診療した続発緑内障99例143眼の臨床像は,性別:男児59例(60%),女児40例(40%),患側:片眼性55例(56%),両眼性44例(44%),発症年齢:生後1カ月?17歳8カ月(平均4歳9カ月),うち0?5歳が67%,6?10歳が20%を占めていた.乳幼児期の重症眼疾患が背景にあるため低年齢層が多いと思われる.原因疾患は,未熟児網膜症(ROP:網膜硝子体手術,光凝固・冷凍凝固術後)24%,先天白内障術後23%,ステロイド23%,第一次形成遺残(PHPV)・家族性滲出性硝子体網膜症(FEVR)など16%,腫瘍8%,その他6%であり,内訳は図2に示した(仁科幸子:小ROP24%腫瘍8%先天白内障術後23%ステロイド23%PHPVFEVRなど16%その他6%Lensectomy21ネフローゼ15IOL2血液疾患4ぶどう膜炎2その他2PHPV/PFV8FEVR5網膜ひだ2色素失調症1網膜芽細胞腫3若年性黄色肉芽腫3脈絡膜血管腫1網膜血管閉塞3,網膜変性1ぶどう膜炎2,外傷1網膜硝子体手術後15光凝固・冷凍凝固後9(例数)図2小児続発緑内障の原因疾患(国立成育医療研究センター,n=99例)01020304050ステロイドその他腫瘍PHPV/FEVR先天白内障術後ROP(眼数)65%■:手術治療,総計68眼(48%)■:非手術治療49%69%13%86%100%図3小児続発緑内障の手術治療(国立成育医療研究センター,n=143眼)10あたらしい眼科Vol.29,No.1,2012(10)眼〔うち4眼は他院IOL(眼内レンズ)手術後〕,開放隅角32眼(水晶体・前部硝子体切除術後)であった.開放隅角のうち15眼は点眼薬にて眼圧コントロール良好であるが,17眼(53%)は手術治療を要した(図4).しかし手術治療例のうち9眼(53%)は予後不良であった.当院の先天白内障術後の症例には,術後10年以上の長期にわたり経過観察中の例が多く含まれており,緑内障の発症頻度,手術治療の頻度が高いと考えられる.先天白内障術後の緑内障の危険因子として,小角膜/小眼球,persistentfetalvasculature(PFV),超早期手術,IOL手術などがあげられるが,今回の症例のうち24眼65%は小角膜/小眼球を合併していた.特に小角膜を伴う先天白内障では,隅角形成異常を合併しやすいため,手術侵襲・術後炎症が契機となって緑内障が発症する可能性がある.しかし大部分の開放隅角緑内障は,術後数年以上たって発症しており,その機序は依然としを実施した例,あるいは当院で硝子体手術(水晶体切除併施)を実施した例である.病態で分類すると血管新生4眼,瞳孔ブロックや水晶体前方移動による閉塞隅角9眼,開放隅角18眼であった.活動期ROPに続発する血管新生緑内障は,手術治療(光凝固追加,ロトミー,レクトミー,硝子体手術)を施行しても予後不良であり,重症網膜症の治療・血管活動性の制御によって緑内障の発症を予防することが重要と考えられる.一方,閉塞隅角,開放隅角緑内障では手術治療を行った例の83%が奏効した.いずれも瘢痕期に10歳を超えて発症する例もあることから,重症網膜症治療後の晩期合併症として,網膜?離のみではなく続発緑内障も念頭に置いて長期管理を行うべきことが示された.b.先天白内障術後(表3)先天白内障術後の続発緑内障23例37眼は,病態で分類すると,瞳孔ブロックや術後出血による閉塞隅角5表2ROP続発緑内障の治療(n=24例31眼)病態治療歴発症年齢手術治療手術効果血管新生4眼光凝固不足2~5カ月光凝固追加+ロトミー+レクトミー1硝子体手術1奏効0(0%)不良2閉塞隅角9眼瞳孔ブロック水晶体前方移動光凝固輪状締結術2カ月~12歳7カ月水晶体切除4ロトミー2(+周辺虹彩切除1+レクトミー1)奏効5(83%)不良1開放隅角18眼硝子体手術後硝子体手術水晶体切除併施4カ月~16歳2カ月点眼薬で軽快*6ロトミー7MMCレクトミー4レクトミー1奏効10(83%)不良2*:非手術治療眼.表3先天白内障術後緑内障の治療(n=23例37眼)病態治療歴発症年齢手術治療(初回)手術効果閉塞隅角5眼瞳孔ブロック4術後出血1IOL4水晶体+前部硝子体切除13カ月~8カ月瞳孔形成1他院で緑内障手術(詳細不明)4奏効1(20%)不良2不明2開放隅角32眼水晶体+前部硝子体切除3カ月~12歳5カ月点眼薬で軽快*15ロトミー10レクトミー3MMCレクトミー2ロトミー+レクトミー2奏効8(47%)不良9*:非手術治療眼.(11)あたらしい眼科Vol.29,No.1,201211と同様に,血管活動性のある網膜症を早期に発見して光凝固治療を実施することが重要である.また眼球打撲や目押しによる網膜?離の発症を予防することが重要な疾患群であるが,水晶体に起因する緑内障が晩期に起こりうることも念頭に置いて眼科的管理を行う必要がある.おわりに小児の緑内障には,続発性であっても手術治療を要する病型が多い.小児に特有な眼疾患の管理・治療をよりよく行うことで緑内障の発症を防止することが当面の課題である.緑内障の治療に際しては,病態を迅速に診断して手術適応・術式を選択するために全身麻酔下検査が欠かせない.成人に比べ,全身疾患に伴う緑内障の頻度て明らかでない.先天白内障術後の長期的な管理は必須であるが,緑内障の発症防止,より効果的な治療法の確立が今後の課題である.c.PHPV・FEVRなど(表4)PHPV,FEVR,網膜ひだ,色素失調症を含む網膜硝子体疾患の続発緑内障16例16眼は,病態で分類すると,血管新生5眼,水晶体前方移動や瞳孔ブロックによる閉塞隅角8眼,術後出血に起因すると考えられたものが3眼であった.この疾患群では片眼性のため手術治療の適応とならなかったものもある.手術治療を行った閉塞隅角5眼はすべて手術が奏効した(図5).しかし,活動期に起こる血管新生,あるいは術後出血による緑内障では,手術治療が奏効したものは50%であった.ROP表4PHPV・FEVR続発緑内障の治療(n=16例16眼)病態治療歴発症年齢手術治療手術効果血管新生5眼水晶体・硝子体術後2眼2カ月~17歳8カ月毛様体冷凍凝固3硝子体手術1奏効2(50%)不良2閉塞隅角8眼水晶体前方移動瞳孔ブロック3カ月~9歳5カ月適応なし*3水晶体切除2水晶体切除+ロトミー1瞳孔形成+ロトミー1増殖膜切除1奏効5(100%)術後出血3眼PHPV術後1眼硝子体術後2眼2カ月~9歳9カ月点眼薬で軽快*1MMCレクトミー1ロトミー+レクトミー1奏効1(50%)不良1*:非手術治療眼.abc図42歳11カ月男児,ダウン症,先天白内障術後の続発開放隅角緑内障両眼先天白内障に対し生後3カ月で経角膜輪部水晶体・前部硝子体切除術施行した.a,b,cの所見から緑内障の発症を診断し,点眼薬による治療を開始.しかし4歳8カ月時に手術治療(トラベクロトミー)を要した.現在点眼薬併用にて眼圧コントロール良好である.a:右眼前眼部所見.軽度の角膜浮腫を認める.b:右眼眼底所見.急に近視化して乳頭陥凹が顕著となった.c:右眼UBM所見.前房が深く開放隅角緑内障の発症と考えられた.12あたらしい眼科Vol.29,No.1,2012(12)第2版.日眼会誌110:784-804,20063)永田誠:発達緑内障臨床の問題点.あたらしい眼科23:505-508,20064)根木昭:小児緑内障の治療.日本の眼科80:443-447,20095)山田裕子:発達緑内障.眼科プラクティス20,小児眼科診療,p152-158,文光堂,20086)IkedaH,IshigookaH,MutoTetal:Longtermoutcomeoftrabeculotomyforthetreatmentofdevelopmentalglaucoma.ArchOphthalmol102:1122-1128,2004も高いため,全身麻酔下検査,薬物治療に際して小児科との連携が不可欠である.難治性緑内障に対するよりよい治療法の開発が今後の課題である.文献1)石川伸子,白土城照,安達京ほか:先天緑内障全国調査結果(1993年度).あたらしい眼科13:601-604,19962)日本緑内障学会:日本緑内障学会緑内障診療ガイドラインbca図55歳8カ月女児,網膜ひだに続発した緑内障(右眼)a,b,cの所見から増殖組織の収縮牽引に伴う水晶体前方移動による続発閉塞隅角緑内障と診断し,水晶体・前部硝子体切除術を施行,経過良好である.a:前眼部所見.毛様充血,角膜浮腫,浅前房を呈し,眼圧32mmHgであった.b:眼底所見.耳下側の線維増殖組織に向かう網膜ひだを認める.c:UBM所見.水晶体前方移動による閉塞隅角緑内障と考えられた.