あたらしい眼科Vol.28,No.8,201111330910-1810/11/\100/頁/JCOPY有水晶体眼内レンズは,LASIK(laserinsitukeratomileusis)では不適応となるような角膜が薄い症例や強度近視例,強度乱視例に対しても適応となり,高い安全性と有効性が報告されている1).LASIKと違って角膜屈折矯正手術ではないため,近視の戻り(regression)や一過性のドライアイ,エクタジアといった合併症もみられない.最近,有水晶体眼内レンズはLASIKより術後の視機能や矯正精度において優れているという報告がなされていて2,3),その長期成績も報告されている4).さらに強度近視だけでなく,軽度から中等度近視においても良好な手術成績が報告されている3).現在使用されている有水晶体眼内レンズには前房型(ArtisanR:OphtecBV社)と後房型(ICLTM:STAARSurgical社)の2種類があり,どちらも乱視矯正が可能である.バプテスト眼科クリニック(以下,当院)ではtoricICLTMの挿入術を2006年から施行しており,筆者らは以前に,その良好な手術成績を報告した5).今回その長期経過をもとにトーリック有水晶体眼内レンズの有効性を示す.対象は,2006年11月から2011年6月までに当院でtoricICLTM挿入術を行い,術後3カ月以上経過観察できた症例39例67眼(男性16例,女性23例),平均年齢33.9±7.4歳,術前平均裸眼視力はlogMAR1.70±0.22(小数視力0.02),術前平均矯正視力はlogMAR?0.04±0.10(小数視力1.10),術前平均等価球面度数は?9.69±4.84D,術前平均乱視量は2.13±1.15Dであった.筆者らは耳側3mm角膜切開で手術を行っており,1D以上,もしくは0.75D以上の直乱視症例にtoricICLTMを挿入している.手術結果を示す.平均裸眼視力は術翌日からlogMAR?0.06±0.11(小数視力1.14)と1.0以上の視力を獲得しており,高度乱視例であっても早期から長期にわたって良好な成績を示した(図1).また,矯正視力が1段階以上改善した症例は47.8%,不変・改善を合わせると98.5%であり高い安全性を示した(図2).1段階以上悪化した症例は白内障を合併した症例であった.つぎに術前後の乱視量変化について示す(図3).術前平均乱視量2.13±1.15Dが術後最終観察時では0.32±0.37Dとなり,有意に乱視量の改善を認めた.術後残余乱視量が1.0D以内であったものは89.6%,0.5D以内であったものは50.7%であり,良好な乱視矯正効果を示した.軸ずれ結果を示す(図4).軸ずれは2倍角座標を用いて計算した.5°以内が82.1%,10°以内が94.0%であった.(73)屈折矯正手術セミナー─スキルアップ講座─●連載135監修=木下茂大橋裕一坪田一男135.トーリック有水晶体眼内レンズの有効性北澤耕司稗田牧京都府立医科大学大学院医学研究科視覚機能再生外科学有水晶体眼内レンズは,LASIK(laserinsitukeratomileusis)などの角膜屈折矯正手術とは異なり,強度の近視性乱視症例に対しても高い安全性と有効性があることが報告されている.後房型レンズは球面矯正のみではあるが,2010年2月から厚生労働省の認可を得て,一般に使用可能となっている.pre1D1W1M3M6M1Y1.5Y2Y2.5Y3Y3.5Y4Y観察期間小数視力0.11.00.01図1平均裸眼視力術翌日より改善しており,全経過観察期間中,安定していた.(眼)35302520151050>-0.1±0.10.1<0.2<0.3<最終観察時n=67(logMAR)悪化不変改善図2矯正視力の変化最終観察時,98.5%の症例で矯正視力は不変・改善を示した.1134あたらしい眼科Vol.28,No.8,2011後房型有水晶体眼内レンズ挿入術後の合併症には,角膜内皮細胞減少,眼圧上昇,虹彩炎,術後眼内炎,網膜?離,白内障などがある.今回,大幅な角膜内皮細胞密度の減少や治療が必要となる虹彩炎,術後眼内炎の症例は1例もなかった.海外では眼内炎の発症頻度は約6,000眼中1眼と報告されており6),白内障術後眼内炎より低い頻度である.術後1週間以内に著明な眼圧上昇をきたした症例が3例あった.2例は虹彩切除が不十分であり,虹彩再切除もしくはYAGレーザーの施行により改善した.1例は著明な眼内炎症に対して前房洗浄を施行した.網膜?離は1眼に術後9カ月の時点で認めたが,硝子体手術により網膜は復位して現在1.5の視力を維持している.後房型有水晶体眼内レンズの最大の問題は白内障の出現である.筆者らは67眼中1眼(1.5%)で白内障の出現を認めて矯正視力が0.5まで低下したため白内障手術を施行した.この症例は年齢が42歳で,かつlowvaulting(水晶体とレンズとの距離が狭い)であり,年齢が40歳以上の症例には注意が必要である.しかし,有水晶体眼内レンズは可逆的な矯正方法であり,たとえ白内障になったとしても白内障手術を施行すれば十分満足が得られることが報告されている7).FDA(米国食品医薬品局)で行われた長期成績(平均4.7年)では526眼中31眼(5.9%)に前?下混濁を認め,臨床的(2段階以上の視力低下やグレアの増加,白内障手術を施行されたなど)に7眼(1.3%)に白内障を認めたと報告しており8),今後も長期的に経過をみる必要がある.文献1)SandersDR,SchneiderD,MartinRetal:Toricimplantablecollamerlensformoderatetohighmyopicastigmatism.Ophthalmology114:54-61,20072)SandersDR:MatchedpopulationcomparisonoftheVisianimplantablecollamerlensandstandardLASIKformyopiaof?3.00to?7.88diopters.JRefractSurg23:537-553,20073)SandersDR,SandersML:ComparisonofthetoricimplantablecollamerlensandcustomablationLASIKformyopicastigmatism.JRefractSurg24:773-778,20084)KamiyaK,ShimizuK,IgarashiAetal:Four-yearfollowupofposteriorchamberphakicintraocularlensimplantationformoderatetohighmyopia.ArchOphthalmol127:845-850,20095)北澤耕司,稗田牧,岩間亜矢子ほか:乱視矯正有水晶体眼内レンズの術後成績.IOL&RS24:279-285,20106)AllanBD,Argeles-SabateI,MamalisN:EndophthalmitisratesafterimplantationoftheintraocularCollamerlens:Surveyofusersbetween1998and2006.JCataractRefractSurg24:566-570,20087)KamiyaK,ShimizuK,IgarashiAetal:ClinicaloutcomesandpatientsatisfactionafterVisianImplantableCollamerLensremovalandphacoemulsificationwithintraocularlensimplantationineyeswithinducedcataract.Eye24:304-309,20108)SandersDR:Anteriorsubcapsularopacitiesandcataracts5yearsaftersurgeryinthevisianimplantablecollamerlensFDAtrial.JRefractSurg24:566-570,2008(74)☆☆☆■:5°≧■:10°≧■:15°≧■:20°≧術後3カ月n=67図4軸ずれ術後3カ月において,軸ずれが5°以内は82.1%,10°以内は94.0%であった.(眼)35302520151050最終観察時n=67<0.50.5≦1≦1.5≦2≦3≦4≦■:術後■:術前(D)図3残余乱視量術後残余乱視量が1.0D以内であったものは89.6%,0.5D以内であったものは50.7%であった.