新しい治療と検査シリーズ203.網膜視力計(RetinalAcuityMeter:RAM)プレゼンテーション:大林知央井手武南青山アイクリニックコメント:前田直之大阪大学大学院視覚情報制御学寄附講座.バックグラウンド矯正視力0.5で白内障や後発白内障患者が加療目的で来院した状況で白内障手術やYAGレーザーによる治療をある程度自信をもって薦めることができるだろうか?このように,白内障などの中間透光体の混濁が存在する状況では,術前矯正視力が低く術後の視力向上が得られるか予想困難な状況に遭遇することがある.そこで筆者らは,網膜視力計(RetinalAcuityMeter:RAM,AMAOPTICS社,USA)を導入したので,その使用経験を報告する..新しい治療法または検査法(原理)網膜視力計(RetinalAcuityMeter:RAM)はバックライト付き近方視力計と+2.5D加入レンズ付きピンホールクリップがセットになっている(図1).ピンホールクリップには8個の穴が開いており,被検者には自覚的に一番見やすい穴から見てもらう.測定方法は40cmの測定距離から通常の視力検査のように視力検査を行う.この機械はピンホールから網膜へ光を通すことにより,中間透光体混濁や眼疾患がある状態でも3つの原則により網膜視力を測定することができる1.3).1.ピンホール効果と近見矯正効果.ピンホール効果図1網膜視力計(RetinalAcuityMeter:RAM)の写真長さ10.1cm,幅2.2cm,高さ6.4cmで,重さは156g(a).40cmの距離から通常の近見視力と同様に測定する(b).…………………………………………………………abにより焦点距離が深くなることに加えて,+2.5Dの近用加入が近見の見え方が向上する.2.文字の視角を矯正できる.40cmの視距離と標準化された文字サイズにより適切な視角度が得られる.3.明るく均一に補正された照明.白内障やピンホールでさえぎられた光も8,200cdの照明によって補正することができる..使用方法検査は以下の手順で行う.①背面に単三電池を2本セットし,本体スイッチを入れ,バックライトが点灯したのを確認する.②検査眼でないほうの眼はしっかり遮閉する.③検査眼は近見にピントが合うように矯正し,通常の検眼枠にはめ込んで使用する.遠方視力が良好な被検者には付属の眼鏡フレームと+2.5D加入レンズ付きピンホールクリップを使用する.④RAMを持った状態で巻き取り式40cmテープを伸ばし,被検者の額に当て距離を一定に保つ.検査中もときどき正しい距離が保たれているか確認する.⑤被検者にいくつかのピンホールから見やすい穴を(59)あたらしい眼科Vol.28,No.12,201117210910-1810/11/\100/頁/JCOPYa.術前BCVAvs術後BCVAb.術前RAMvs術後BCVA1.21.2110.80.8y=0.1709x-0.0934R2=0.1626y=0.307x-0.090nR2=0.1885術BCVA0.60.40.2術BCVA0.60.40.200-0.2-0.2-0.4-0.4-0.4-0.200.20.40.60.811.2-0.4-0.200.20.40.60.811.2術前BCVA術前RAM図2術前矯正視力と術後1カ月での矯正視力(a)および術前RAM視力と術後1カ月での矯正視力(b)(logMAR視力)(BCVA:最良矯正視力)探してもらい,その穴から見るように指示する.⑥0.1の視標から開始し,見えなくなった一つ前の視力をRAM視力とする.<ランプ照度のチェック>・スイッチを入れると照明がつき,1秒後にさらに明るさが増す.この2段階で明るくなる現象を確認する(HyperIllmination).・この現象が起きなくなった時点で,電池を交換する(単三アルカリ電池2本)..本方法の良い点本方法の良い点はまず持ち運べることである.156gと軽量で,取り扱いが容易で,車椅子,寝たきりの被検者にも使用可能である.実際の臨床上での使用方法だが,術前矯正視力が不良な患者の術後の視力予後を予測するためには,術前に中間透光体の混濁の影響を除いた網膜レベルでの視力を確認できることが望ましい.当クリニックの白内障連続120症例で術前矯正視力,術前RAM視力と術後1カ月の矯正視力の相関を見たところ,通常視力検査方法による術前視力良好例では,術前後の矯正視力値に大きな乖離はないが,術前の矯正視力不良例においては術後矯正視力値との間に乖離がみられる(図2a).一方,RAMを用いた方法では,術前視力と白内障手術後の矯正視力は図2aと比較して乖離が少ないのがみて取れる(図2b).RAM視力はより術後矯正視力に近い値を示している.RAMは通常の視力検1722あたらしい眼科Vol.28,No.12,2011査で視力値が低くなる要因(中間透光体,瞳孔,明るさ)に影響を受けにくいため,高い視力値を示すと考えられる.白内障眼において,RAM視力が過大評価されている訳ではなく,通常の眼鏡での矯正視力値が白内障により過小評価されているといえる.しかし,バックライトで輝度を上げ,ピンホールを通すことにより日常視の状態と異なるため,被検者が普段感じている見え方とは異なり,あくまでも手術後の予想視力の目安だという点に注意する必要があり,通常の視力検査としては使用できない.加えて,自験例で手術前にRAM視力が低い場合でも,まれに白内障後に高い視力値が出る症例があるので,参考程度に考える必要がある.しかし,機械本体が小さくコンパクトなため,いろいろな場所で検査を行うことが可能であり,これまでの通常測定法と同等もしくはそれ以上の視力を示すことができた.網膜機能をある程度予想できるRAMは有用であり,多くの眼科医に普及することを期待する.文献1)HofeldtAJ,WeissMJ:Theilluminatednearcardassessmentofacuityineyeswithcataract.Ophthalmology105:1531-1536,19982)ChangMA,AirianiS,MieleDetal:Acomparisonofthepotentialacuitymeter(PAM)andtheilluminatednearcard(INC)inpatientsundergoingphacoemulsification.Eye20:1345-1351,20063)ParkJI,OhSH,KimJHetal:Thepotentialroleoftheretinalacuitymeterforpredictingvisualoutcomeaftercataractsurgery.JKoreanOphthalmolSoc48:898-904,2007(60).本方法に対するコメント.白内障手術の進歩によって,患者サイドの術後視機術前視力より「術前RAM視力」が良好であれば手能に対する要求が高まっている.術後視力不良による術の必要性を支持する所見となるし,逆に術前RAMトラブルを回避するためには術前に視力障害の原因を視力が不良な場合には,黄斑疾患,視神経・中枢神経特定し,術前にインフォームド・コンセントを行うこ疾患,あるいは角膜疾患などの精査を行うべきで,簡とが重要である.便なスクリーニング検査といえる.ただし,図2に示本装置は,ピンホールによって白内障による前方散されているように,術前RAM視力と術後視力の相関乱や不正乱視を,照度を上げることにより後方散乱にはそれほど強くなく,著者が述べているようにあくまよる透過率低下を軽減させ,得られた「RAM視力」で参考所見である.今後より良い装置の登場が望まれと通常の視力の差により,中間透光体が視力に及ぼする.影響を評価している.☆☆☆年間予約購読ご案内眼における現在から未来への情報を提供!あたらしい眼科2012Vol.29月刊/毎月30日発行A4変形判総140頁定価/通常号2,415円(本体2,300円+税)(送料140円)増刊号6,300円(本体6,000円+税)(送料204円)年間予約購読料32,382円(増刊1冊含13冊)(本体30,840円+税)(送料弊社負担)最新情報を,整理された総説として提供!眼科手術2012Vol.25■毎号の構成■季刊/1・4・7・10月発行A4変形判総140頁定価2,520円(本体2,400円+税)(送料160円)年間予約購読料10,080円(本体9,600円+税)(4冊)(送料弊社負担)日本眼科手術学会誌【特集】毎号特集テーマと編集者を定め,基本的事項と境界領域についての解説記事を掲載.【原著】眼科の未来を切り開く原著論文を医学・薬学・理学・工学など多方面から募って掲載.【連載】セミナー(写真・コンタクトレンズ・眼内レンズ・屈折矯正手術・緑内障など)/新しい治療と検査/眼科医のための先端医療/インターネットの眼科応用他【その他】トピックス・ニュース他■毎号の構成■【特集】あらゆる眼科手術のそれぞれの時点における最も新しい考え方を総説の形で読者に伝達.【原著】査読に合格した質の高い原著論文を掲載.【その他】トピックス・ニューインストルメント他http://www.medical-aoi.co.jpお申込方法:おとりつけの書店,また,その便宜のない場合は直接弊社あてご注文ください.メディカル葵出版株式会社〒113.0033東京都文京区本郷2.39.5片岡ビル5F振替00100.5.69315電話(03)3811.0544(61)あたらしい眼科Vol.28,No.12,20111723