特集●OCTを読むあたらしい眼科31(12):1805.1810,2014特集●OCTを読むあたらしい眼科31(12):1805.1810,2014病的近視の「OCTを読む」OpticalCoherenceTomographyofPathologicMyopia島田典明*大野京子*はじめに病的近視は,眼軸の延長に加えて,後部ぶどう腫や視神経乳頭傾斜のように眼球が形状変化することで病的な状態になったものであり,さまざまな変化が光干渉断層計(opticalcoherencetomography:OCT)で確認できる.また,それらを可視化することが病態解明などに重要である.OCTにより,近視性脈絡膜新生血管や単純型出血の鑑別,黄斑部萎縮の評価,黄斑円孔網膜.離の前段階の近視性牽引黄斑症の診断,dome-shapedmaculaの診断が可能である.さらに近年,硝子体皮質と強膜,眼球後方まで観察することができるようになっている.本稿では,病的近視眼のOCTとして,正視眼と強度近視眼のOCTの違い,びまん性や限局性の近視性網膜脈絡膜萎縮,近視性脈絡膜新生血管,単純型出血,近視性牽引黄斑症や黄斑円孔網膜.離,domeshapedmacula,硝子体,強膜や球後組織について概説する.I軽度近視眼と強度近視眼のOCTの違い軽度近視眼と強度近視眼のOCTを比較すると,強度近視眼では中心小窩以外の網膜の菲薄化,脈絡膜の著明な菲薄化,眼軸延長に伴う強膜カーブの急峻化,強膜や眼球後方の組織などが観察できる(図1).強度近視眼では網膜の伸展や網膜脈絡膜萎縮,強膜カーブに伴う反射の減弱により,視細胞の内節外節接合部(IS/OS)や内境界膜,網膜色素上皮(retinalpigmentepithelium:図1正視眼と強度近視眼のOCT軽度近視眼のOCT(上)と強度近視眼のOCT(下)を比較すると,強度近視眼では,網膜の菲薄化,脈絡膜の極度の菲薄化,強膜カーブの急峻化,強膜全層や眼球後方の組織の一部が観察できる.RPE)の各層が明瞭に描出されにくくなる.II近視性網膜脈絡膜萎縮近視性網膜脈絡膜萎縮は,びまん性萎縮病変と限局性萎縮病変とに分けられる1).びまん性病変は眼底後極部の境界不鮮明な黄色の萎縮病巣としてみられ,OCTで*NoriakiShimada&KyokoOhno-Matsui:東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科眼科学分野〔別刷請求先〕島田典明:〒113-8519東京都文京区湯島1-5-49東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科眼科学分野0910-1810/14/\100/頁/JCOPY(67)1805図2びまん性萎縮病変と限局性萎縮病変のOCT眼底写真では黄斑全体のびまん性萎縮病変と中心窩耳側に限局性萎縮病変を認める.OCTでは,脈絡膜の厚さは極度に菲薄化しているものの,びまん性萎縮部位の網膜外層や網膜色素上皮は比較的保たれているが,限局性萎縮病変の部位では,網膜外層,網膜色素上皮がほぼ消失している.眼底写真の限局性萎縮病変内の黒い部位は,OCTでは網膜下の小さい隆起として描出され,陳旧性の脈絡膜新生血管と考えられる.図3近視性脈絡膜新生血管と単純型出血のOCT近視性脈絡膜新生血管(上段)と単純型出血(下段)は,OCTではともに網膜下の隆起性病変を呈する.近視性脈絡膜新生血管では,出血の中に灰白色の新生血管(上段矢印)を認めることが多いこと,OCTでは隆起病変が活動期では辺縁と内部が不均一であることと,隆起性病変の周囲にときに網膜浮腫や網膜.離を認めることがあることで判別する.単純型出血では出血(下段矢印)の内部は均一で,OCTでは網膜化隆起病変は内部が比較的均一で辺縁が明瞭である.しかしながら,単純型出血様の脈絡膜新生血管もあり,確定診断にフルオレセイン眼底造影検査を要することも多い.図4近視性牽引黄斑症のOCT像症例により網膜分離の範囲や有無,他の合併病変とは異なり,多彩なOCTを示す.表1近視性牽引黄斑症の東京医科歯科大学分類網膜分離の範囲による分類S0分離なしS1分離が中心窩外のみS2分離が中心窩内のみS3分離が中心窩含むが黄斑全体を含まないS4分離が黄斑全体にひろがっている合併病変による分類M黄斑前膜V硝子体黄斑牽引L黄斑内層分層円孔D(1-4)黄斑部網膜.離H全層黄斑円孔A黄斑部萎縮(文献4を改変)図5近視性牽引黄斑症における網膜.離の進行過程(すべて非同一症例)左上:ステージ1.中心窩のIS/OSが牽引により不整もしくは網膜内方へやや上昇.右上:ステージ2.IS/OSに亀裂が生じ(外層分層黄斑円孔)ている.左下:ステージ3.分層円孔周囲に網膜.離が拡大し,網膜分離と.離は共存する.右下:ステージ4.分層円孔の端の網膜外層が網膜内層にくっついて見える状態となる.図6Dome.shapedmaculaのOCT中心窩下強膜厚が肥厚している.この症例では脈絡膜新生血管を合併している.後部皮質前硝子体ポケットもある程度まで観察できる.図7黄斑渦静脈のOCTでの描出左上:眼底では黄斑部に渦静脈(小矢印)がみられる.右上:ICG赤外蛍光眼底造影では渦静脈が黄斑部で膨大部を形成して眼外に流出(矢印)する様子がみられる.左下および右下:渦静脈の分枝は強膜内を走行したのち(矢印),黄斑部付近で強膜を貫いて眼外に流出(矢頭)する.1810あたらしい眼科Vol.31,No.12,2014(72)4)所敬,大野京子:近視─基礎と臨床─.金原出版,20125)ShimadaN,Ohno-MatsuiK,YoshidaTetal:Progressionfrommacularretinoschisistoretinaldetachmentinhighlymyopiceyesisassociatedwithouterlamellarholeforma-tion.BrJOphthalmol92:762-764,20086)SunCB,LiuZ,XueAQetal:Naturalevolutionfrommacularretinoschisistofull-thicknessmacularholeinhighlymyopiceyes.Eye24:1787-1791,20107)GaucherD,ErginayA,Lecleire-ColletAetal:Dome-shapedmaculaineyeswithmyopicposteriorstaphyloma.AmJOphthalmol145:909-914,20088)ImamuraY,IidaT,MarukoIetal:Enhanceddepthimagingopticalcoherencetomographyofthescleraindome-shapedmacula.AmJOphthalmol151:297-302,20119)ItakuraH,KishiS,LiDetal:Vitreouschangesinhighmyopiaobservedbyswept-sourceopticalcoherencetomography.InvestOphthalmolVisSci55:1447-1452,201410)Ohno-MatsuiK,AkibaM,ModegiTetal:Associationbetweenshapeofscleraandmyopicretinochoroidallesionsinpatientswithpathologicmyopia.InvestOphthal-molVisSci53:6046-6061,201211)Ohno-MatsuiK,AkibaM,IshibashiTetal:Observationsofvascularstructureswithinandposteriortoscleraineyeswithpathologicmyopiabyswept-sourceopticalcoherencetomography.InvestOphthalmolVisSci53:7290-7298,2012より観察可能である.病的近視眼の中心窩下強膜厚は,平均227.9±82.0mmであり10),剖検眼での正常眼の強膜厚が660mmであることに比較し著明に菲薄化している.強度近視眼では強膜内の血管および球後の血管もOCTで観察することが可能で11),強膜内を走行する長後毛様動脈や短後毛様動脈,渦静脈(図7)が観察できる.おわりにOCTの登場と進歩により,病的近視眼に生じるさまざまな病変の鑑別は比較的容易になった.さらなる進歩により,病的近視の新たな病態解明や治療効果の向上につながることが期待される.文献1)TokoroT(ed):AtlasofPosteriorFundusChangesinPathologicMyopia.Tokyo,Springer-Verlag,19982)MoriyamaM,Ohno-MatsuiK,ShimadaNetal:Correla-tionbetweenvisualprognosisandfundusautofluorescenceandopticalcoherencetomographicfindingsinhighlymyo-piceyeswithsubmacularhemorrhageandwithoutchoroi-dalneovascularization.Retina31:74-80,20113)PanozzoG,MercantiA:Opticalcoherencetomographyfindingsinmyopictractionmaculopathy.ArchOphthalmol122:1455-1460,2004